車体加速度センサの故障診断装置、アンチロック・ブレーキ・システム
車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて出力が変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの故障診断による車両用アンチロック・ブレーキ・システムの制御処理負荷を低減させる。車両速度が既定速度γ(4m/s)以上になった時点から(符号T1で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T2で示したタイミング)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの故障診断を行う車体加速度センサの故障診断装置、該車体加速度センサの故障診断装置を備えるアンチロック・ブレーキ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロック・ブレーキ・システム(以下、ABSとする)の制御に必要な車輪減速度信号は、非駆動輪のある2輪駆動自動車では容易に得ることが可能である。しかし、4輪駆動自動車において、センターディファレンシャル及び後輪軸ディファレンシャルがロックされ、4つの車輪が直結状態におかれた場合、すべての車輪が慣性モーメントの大きいエンジンに連結されるため、ブレーキトルクの変化に対する車輪の応答速度が著しく低下する。このため、車輪減速度信号を得ることがほとんど不可能であり、それによって、車輪はロックすることになる。このような問題を解決するための手段の1つとして、一般的に4輪駆動自動車には車体加速度センサが搭載されている。この車体加速度センサで、車体の進行方向の車体加速度を計測し、ブレーキ制動時の減速度が一定値より小さければ摩擦抵抗値μの低い路面(以下、低μ路面という)であると判定する。そして、摩擦抵抗値μの高い路面(以下、高μ路面という)用のスリップ制御ロジックから低μ路面用のスリップ制御ロジックに切り換えて制御精度を高めることによって、車輪のロックを防いでいる。したがって、この車体加速度センサは、特に4輪駆動自動車のABSにおいて欠かせないものであり、車体加速度センサが故障した場合は、スリップ制御が不可能となり、車輪がロックする虞が生じる。そのため、車体加速度センサの故障検出は、不可欠なものであるといえる。車体加速度センサの故障モードは、いくつかの故障モードが想定されるが、その1つとして、一定の車体加速度信号を出力したまま車体の加速度に追従して車体加速度出力信号が変化しなくなってしまう出力固着故障がある。
【0003】
この車体加速度センサの出力固着故障を検出する従来技術の一例としては、アンチロック・ブレーキ制御の非制御時において、車輪速センサから演算した車体加速度と、車体加速度センサが検出した車体加速度とを比較し、その差が所定値以上であるときに車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献1を参照)。或いは、十分大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に想定される重力によって車体に作用する車体加速度をしきい値に設定し、車輪速センサから演算した車体加速度がこのしきい値より大きく、かつ車体加速度センサが検出している車体加速度がこのしきい値より小さい場合に、車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献2を参照)。さらには、車輪速度から演算した論理的車体加速度と、車体加速度センサが検出した物理的車体加速度との相対的な加速度差を演算し、その加速度差が既定値を超えた状態の継続時間を計測し、その加速度差が既定値を超えた状態である間に物理的車体加速度の最小加速度と最大加速度を記憶し、加速度差が既定値を超えた状態の継続時間が既定時間を超えた時点で、記憶した最小加速度と最大加速度との差が一定の差以下である場合に車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献3を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−195168号公報
【特許文献2】特開平8−184610号公報
【特許文献3】特開2003−63375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な自動車の車両用ABSは、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)と呼ばれる車両制御装置を備えている。ECUは、車輪速センサから伝達される交流信号を入力して車輪速度を演算し、それを基にしてスリップ率や車輪加減速度を算出する演算機能、算出したスリップ率や車輪加減速度を論理的に組み合わせてブレーキ圧力に対するアンチロック・ブレーキ制御命令を発生し、液圧ユニットに伝達する制御機能、及び各構成部品やシステム全体の機能チェックと監視を行い、それらに欠陥が生じた場合には、警報ランプや警報ブザー等によって、運転者に警報した上で、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させるとともに、通常ブレーキの動作を可能にするシステムモニタ機能等を有しており、車体加速度センサの出力固着の故障検出等もECUで実行される。自動車の走行中においてECUは、常時様々な車両状態情報から多種多様な演算処理、及びその演算処理に基づくアンチロック・ブレーキ制御等の様々な制御処理等を実行しなければならず、そのため、自動車の走行中に車体加速度センサの出力固着故障検出を常時実行することによって、ECUの制御処理負荷が増大し、自動車の走行状態によっては、演算処理、制御処理等に遅延が生じて所望のアンチロック・ブレーキ制御性能が十分に得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて出力が変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの故障診断による車両用アンチロック・ブレーキ・システムの制御処理負荷を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、車両に搭載された車体加速度センサと、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車体加速度センサの出力変動幅を演算する車体加速度センサ出力変動幅演算手段とに基づいて、前記車体加速度センサの故障診断を行う故障診断装置であって、前記車両速度検出手段により検出された車両速度が所定速度以上であって、かつ、前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段により演算された前記車体加速度センサの出力変動幅が、所定値以上になるまでの間、作動することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置である。
【0008】
車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断は、車体加速度センサの出力信号がほとんど変化しない状態が継続した場合に車体加速度センサの出力信号の出力固着故障によるものなのか、検出対象の状態がほとんど変化しないことによるものなのかを車両の他の状態情報等から推測するものであるから、所定速度以上の車両速度で走行中において、車体加速度センサの変動幅が所定値以上で変動したということは、少なくとも車体加速度センサの出力固着故障等は生じていないのであり、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行う必要がない状態であると言える。
【0009】
したがって、所定速度以上の車両速度で走行中に車体加速度センサの出力値の変動幅が所定値以上になった時点で、車体加速度センサの出力固着故障等が発生していないと判定し、以降は、車両速度が所定速度未満に低下するまで車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行わないようにすることによって、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行う必要がない状態において車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行わないようにすることができる。
【0010】
それによって、車両の走行中において車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を必要がある状態においてのみ車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行うようにすることができるので、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が車両の走行中に常時行われなくなり、車両の走行中における車両用アンチロック・ブレーキ・システムの制御処理負荷を大幅に低減させることができるという作用効果が得られる。
尚、所定速度は、可能な限り低い速度に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサの出力固着故障等が発生していた場合には、車両が走行を開始した直後に出力固着故障等を検出することができる。また、車体加速度センサの出力変動幅の所定値は、車体加速度センサの電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサの出力固着故障等を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が行われる時間を最小限に短縮することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、さらにタイマ手段を備えることにより、車両速度が所定速度以上の状態が長時間継続した場合に所定時間の間隔で定期的に車体加速度センサの出力固着故障検出等の故障診断をすることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、記憶更新手段を備え、本発明の第4の態様は、リセットされることによって、再度車両速度が所定速度以上になった時点から車体加速度センサの出力値の変動幅が新たに測定され、その時点から車体加速度センサの出力変動幅が所定値以上になるまでの間、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が行われるようにすることができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、車体加速度演算手段と比較計測手段とを備え、車体加速度センサが出力固着故障していれば、車体加速度センサの出力する車体加速度は変動しないはずであり、車体加速度センサが正常な状態で大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際は、車体加速度センサの出力する車体加速度は大きく変動することによって判断することができるものである。大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際等に、車体加速度センサが正常であるにもかかわらず誤って出力固着故障を検出することなく、かつ車体に作用する車体加速度が小さい状況においても的確に車体加速度センサの出力固着故障の検出をすることが可能になる。
【0014】
本発明の第6の態様は、前述した第1の態様〜第5の態様のいずれかに記載の車体加速度センサの故障診断装置は、アンチロック・ブレーキ制御を行う制御装置に含まれており、前記制御装置と、該制御装置から出力されるブレーキ信号に基づきブレーキ力の制御を行う液圧制御ユニットと、該液圧制御ユニットからの出力を受け作動するブレーキ装置とを備える車両用アンチロック・ブレーキ・システムであり、車両用アンチロック・ブレーキ・システムにおいて、前述した第1の態様〜第5の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車体加速度センサを備えた本発明に係る車両用ABSのシステム構成を示した概略のブロック図である。
車両用ABSの基本構成は、「車両速度検出手段」としての車輪速センサ4と、本発明に係る「車体加速度センサの故障診断装置」としてのECU2と、液圧ユニット3とから成る。車輪速センサ4は、車輪41とともに回転する歯車42の歯を検出することによって、車輪41の回転速度に比例した周波数の交流信号を発生するものである。ECU2は、「車体加速度センサ出力変動幅演算手段」及び「車体加速度変動幅演算手段」としての演算ブロック21を備えている。演算ブロック21は、車輪速センサ4から伝達される交流信号を入力して車輪速度を演算し、それを基にしてスリップ率や車輪加減速度等のアンチロック・ブレーキ制御に必要な演算機能を有する。また、演算ブロック21は、車輪速センサ4(車両速度検出手段)の出力信号に基づいて車体加速度(後述する論理的車体加速度)を演算する(車体加速度演算手段)。
【0016】
ECU2は、演算ブロック21が算出したスリップ率や車輪加減速度を入力し、論理的に組み合わせてブレーキ圧力に対する制御命令を発生し、液圧ユニット3に伝達するアンチロック・ブレーキ制御機能を有する制御ブロック22を備えている。ECU2は、各構成部品やシステム全体の機能チェックと監視を行い、それらに欠陥が生じた場合には、警報ランプ5や図示していない警報ブザー等によって、運転者に警報した上で、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させるとともに、通常ブレーキの動作を可能にするシステムモニタ機能を有するモニタブロック23を備えている。
【0017】
液圧ユニット3は、マスタシリンダ6とホイールシリンダ44との間に配設され、ブレーキペダル7の踏み力によるブレーキディスク43に対するブレーキ圧の増減とは別に、ECU2からの制御命令を受けて、電磁弁31や図示していないポンプ、モータ等を駆動することにより直接又は間接的にブレーキ圧力を増減させる。車体加速度センサ1は、進行方向の加速度を検出するセンサである。そして、車体加速度センサ1の出力する車体加速度は、ECU2の演算ブロック21に入力され、車体加速度センサ1が検出した減速度が一定値より小さければ低μ路面であると判定する。そして、制御ブロック22は、高μ路面用のスリップ制御ロジックから低μ路面用のスリップ制御ロジックに切り換えて制御精度を高めることによって、車輪41のロックを防いでいる。また、車体加速度センサ1は、モニタブロック23に故障監視(故障診断)される。また、当該実施の形態において、車体加速度センサ1は、アナログ式Gセンサである。アナログ式Gセンサは、ホール素子を利用した電子回路で構成されており、細かいステップで車体に作用する前後方向の加速度を検出して出力可能なものである。尚、車体加速度センサ1は、特にアナログ式Gセンサに限定されるものではなく、他の方式による車体加速度センサ1であっても本発明の実施は可能である。
【0018】
つづいて、「車体加速度センサの故障診断装置」としてのECU2における車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第1実施例について、図2〜図6を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、出力固着故障検出停止フラグがONか否かを判定する(ステップS1)。この出力固着故障検出停止フラグは、後述する車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順を実行するか否かを選択するためのフラグであり、この出力固着故障検出停止フラグがOFFである間のみ、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われ、このフラグがONである間は、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は行われない。出力固着故障検出停止フラグがOFFである場合には(ステップS1でNo)、つづいて、車両速度が「所定速度」としての既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS2)。既定速度γは、当該実施例においては、約4m/sに設定されており、可能な限り低い速度に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障が発生していた場合には、車両が走行を開始した直後に出力固着故障を検出することができる。車両速度が既定速度γ未満である場合には(ステップS2でNo)、車両が停止している状態であると判定してそのまま当該手順を終了する。車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS2でYes)、車両が走行中であると判定し、つづいて、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が「車体加速度センサの出力変動幅の所定値」としての既定変動幅δ以上か否かを判定する(ステップS3)。既定変動幅δは、当該実施例においては、約0.59m/s2に設定されており、車体加速度センサ1の電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサ1の出力固着故障検出が行われる時間を最小限に短縮することができる。
【0020】
車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ未満である場合には(ステップS3でNo)、つまり、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できない場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じている可能性があるので、前述した出力固着故障検出停止フラグをONせずに、そのまま当該手順を終了する。一方、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上である場合には(ステップS3でYes)、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できた場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていない状態であるから出力固着故障を検出する必要がないと判定し、前述した出力固着故障検出停止フラグをONにして当該手順を終了する(ステップS4)。そして、出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS1でNo)、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS5)。車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS5でYes)、車両が走行中であると判定して出力固着故障検出停止フラグをONのまま維持して当該手順を終了し、車両速度が既定速度γ未満に低下している場合には(ステップS5でNo)、車両が停止している状態であると判定し、出力固着故障検出停止フラグをOFFにして当該手順を終了する(ステップS6)。
【0021】
図3及び図4は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第1実施例である。
運転者によって車両の電源スイッチがONされると車両の各部に電力が供給されるようになり、ECU2による車両の制御が開始されるとともに、車体加速度センサ1やその他の各センサも機能し始める(符号Sで示したタイミング)。車体加速度センサ1の出力電圧が0Vから加速度0の状態での出力電圧である約2.3Vまで上昇し、そこから符号TSで示した時間(約0.5秒)経過後に車体加速度センサ1の出力値が安定して、車両の車体加速度を検出可能な状態になる。運転者によってエンジンが始動され、車両の走行が開始されると車両速度が上昇し始め、車体加速度センサ1の出力電圧が車両に作用する車体加速度に応じて変動するようになる。車両速度が既定速度γ(4m/s)以上になった時点から(符号T1で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T2で示したタイミング)。また、車両速度が既定速度γ(4m/s)以下になった時点で(符号T3で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになるとともに、いったん記憶されている最大値Gmax、及び最小値Gminがクリアされた後、再び車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が行われる。これにより、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は、出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている間のみ行われることになる。したがって、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することによるECU2の処理負荷を低減させることができる。
【0022】
図5は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出のタイミングを示したタイミングチャートである。
符号Aで示した曲線は、車輪速度から演算した車体加速度(論理的車体加速度)を示した論理的車体加速度曲線である。符号Bで示した曲線は、車体加速度センサ1にて検出された車体加速度(物理的車体加速度)を示した物理的車体加速度曲線である。また、Amaxで示した破線の曲線は、図示の通り、論理的車体加速度曲線に既定値αを加算した車体加速度曲線であり、Aminで示した破線の曲線は、図示の通り、論理的車体加速度曲線から既定値αを減算した車体加速度曲線である。ここで、既定値αは、車体加速度センサ1が正常に機能している限りにおいて、継続的に生じる可能性のある論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差の最大値に設定され、実験等により求められる値である。尚、この既定値αは、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り小さいほうが好ましく、高い感度で出力固着故障の検出が可能になる。したがって、物理的車体加速度曲線が、Amaxの車体加速度曲線とAminの車体加速度曲線との間の領域を推移している間は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。尚、当該実施の形態において既定値αは、約1.47m/S2に設定されている。また、図示していないが、上記車体加速度の曲線は、縦軸を車体加速度、横軸を時間軸とした曲線である。
【0023】
フェールカウンタは、物理的車体加速度曲線が、Amaxの車体加速度曲線とAminの車体加速度曲線との間の領域の外を連続して推移している間の継続時間をカウントする。つまり、論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差が、既定値αを超えた間の継続時間を計測するものである。また、フェールカウンタにて、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた間の継続時間をカウント中は、暫定故障検出フラグをセットする。この暫定故障検出フラグは、上記相対的な加速度差が既定値αを超えたことを示すものであり、車体加速度センサ1に出力固着故障が発生した可能性のある上記相対的な加速度差が生じたことを示すものである。したがって、この暫定故障検出フラグを成立させた時点では、まだ車体加速度センサ1が出力固着故障であるという判定はしない。そして、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間以下だった場合には、暫定故障検出フラグをリセットする。ここで、既定時間は、車体加速度センサ1が正常に機能している限りにおいて、論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差が既定値αを継続的に越える可能性のある時間より長い時間に設定され、実験等により求められる値である。つまり、符号F1で示したように、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間である1秒間以下の場合には、例えば、路面の段差等によって、瞬間的に強い車体加速度が車体に作用したことによるものと判定し、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障の検出処理を継続する。
【0024】
一方、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間を超えた場合には、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた間の物理的車体加速度の最大値と最小値との差を演算して算出し、既定値βと比較する。ここで、既定値βは、車体加速度センサ1が出力固着故障している状態において車体加速度センサ1が出力しうる加速度変動幅の最大値に設定され、実験等により求められる値である。つまり、符号F2で示したように、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が既定時間である1秒間を経過した時点で、既定値αを超えた上記相対的な加速度差が、車体加速度センサ1の出力固着故障によるものであるかを判定するものである。尚、当該実施の形態において既定値βは、約0.98m/S2に設定されている。また、既定時間は、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り短いほうが好ましく、より短い時間で出力固着故障の検出が可能になる。また、既定値βは、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り小さいほうが好ましく、高い精度で出力固着故障の検出が可能になる。尚、当該実施の形態において既定時間は、約1秒に設定されている。
【0025】
そして、上記物理的車体加速度の最大値と最小値との差が、既定値β以下である場合には、車体加速度センサ1の出力が変動しないまま固着した出力固着故障であると判定し、暫定故障検出フラグをリセットするとともに故障検出フラグを成立させる。出力固着故障と判定し、故障フラグを成立させた時点で、車内の警報ランプ5を点灯させるとともに、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させ、通常ブレーキの動作を可能にする。また、図示していない不揮発性記憶媒体に車体加速度センサ1の出力固着故障の故障コードを記憶する。一方、符号Cで示した破線のように、上記物理的車体加速度の最大値と最小値との差が既定値βを越えている場合には、例えば、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、重力によって車体に作用する車体加速度の変動によるものであると判定し、故障検出フラグは成立させない。また、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障の検出処理を中止する。
【0026】
図6は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、前述した車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONになっているか否かを判定する(ステップS11)。車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS11でYes)、そのまま当該手順を終了するので、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は行われない。一方、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている場合には(ステップS11でNo)、つづいて、ブレーキシステムに対してアンチロック・ブレーキ制御が実行されているか否かを判定する(ステップS12)。アンチロック・ブレーキ制御中であれば(ステップS12でNo)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。一方、アンチロック・ブレーキ制御中でなければ(ステップS12でYes)、つづいて、車両が一定の速度以上で走行中か否かを判定する(ステップS13)。車両が一定の速度以上で走行中でない、つまり停車中であれば(ステップS13でNo)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。一方、車両が一定の速度以上で走行中であれば(ステップS13でYes)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を行う。
【0027】
つづいて、車輪速度から演算した論理的車体加速度と車体加速度センサ1が出力する物理的車体加速度との相対的な差を求め、前記既定値αと比較する(ステップS14)。論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値α以下の時は(ステップS14でNo)、車体加速度センサ1は正常とみなし、既定値αを越えたときは(ステップS14でYes)、その時点、前述した暫定故障検出フラグを成立させ、フェールカウンタのカウントアップを開始する(ステップS15)。また、フェールカウンタのカウントアップが開始された時点からの、物理的車体加速度の最小値と最大値を常に更新しながら記憶していく。そして、論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値αを越えている間のフェールカウンタの値が、1秒以下の時は(ステップS15でNo)、前述したように、瞬間的に強い車体加速度が車体に作用したことによるものと判定し、暫定故障検出フラグをリセットする。
【0028】
一方、論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値αを越えている間のフェールカウンタの値が、1秒を越えた時は(ステップS15でYes)、つづいて、記憶したその間の物理的車体加速度の最大値と最小値とを取得し(ステップS16)、その差を演算して算出し、前記既定値βと比較する(ステップS17)。その最大値と最小値との差が、既定値β以上の時は(ステップS17でNo)、前述したように、例えば、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、重力によって車体に作用する車体加速度の変動によるものであると判定し、車体加速度センサ1の出力固着故障検出フラグは成立させない。また、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障検出処理を中止する(ステップS18)。そして、その最大値と最小値との差が、既定値β未満の時は(ステップS17でYes)、車体加速度センサ1の出力が変動しないまま固着した出力固着故障であると判定し、暫定故障検出フラグをリセットするとともに出力固着故障検出フラグを成立させる(ステップS19)。これにより、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、車体加速度センサ1が正常であるにもかかわらず誤って出力固着故障を検出することなく、かつ車体に作用する車体加速度が小さい状況においても的確に車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することが可能になる。
【0029】
このようにして、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて出力が変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサ1の出力固着故障検出によるECU2(車両制御装置)の処理負荷を低減させることができる。
【0030】
つづいて、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第2実施例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第2実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
当該実施例に示した手順は、前述した車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例において、車両の走行中には、所定時間経過毎に出力固着故障検出停止フラグをOFFにして、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を実行するか否かを判定するようにしたものである。ステップS21〜S24については、図2に示したフローチャートのステップS1〜S4と同様なので説明は省略する。出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS21でNo)、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定し(ステップS25)、車両速度が既定速度γ未満に低下している場合には(ステップS25でNo)、車両が停止している状態であると判定し、出力固着故障検出停止フラグをOFFにして当該手順を終了する(ステップS26)。一方、車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS25でYes)、つづいて、出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過したか否かを判定する(ステップS27)。出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過していない場合には(ステップS27でNo)、出力固着故障検出停止フラグをONのまま維持して当該手順を終了する。そして、出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過している場合には(ステップS27でYes)、出力固着故障検出停止フラグをONからOFFにして当該手順を終了する(ステップS26)。
【0031】
図8は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第2実施例である。
走行中に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T4で示したタイミング)。出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点からタイマによる計時が行われ、車両速度が既定速度γ以上のまま出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点からの経過時間が所定時間(符号TRで示した時間)以上になった時点で最大値Gmax及び最小値Gminの記憶・更新がリセットされ、いったん記憶している最大値Gmax及び最小値Gminがクリアされる(符号T5で示したタイミング)。最大値Gmax及び最小値Gminがいったんクリアされると、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmaxと最小値Gminとの差が既定変動幅δ未満となり、それによって、出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになる。その時点から車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が再び開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が再び既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなると同時にタイマによる計時が開始される(符号T6で示したタイミング)。このようにして、既定速度γ以上で走行中の間、所定時間毎に車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を行うことができる。
【0032】
また、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例としては、上述した第1実施例又は第2実施例において、車両速度が既定速度γ未満である間に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった場合も以降の車体加速度センサ1の出力固着故障検出を行わないようにするものが挙げられる。車両が停止している状態においても車両への人の乗り降り等で車体加速度センサ1の出力値が変動して、その変動幅が既定変動幅δ以上になる場合もあるので、車両速度が既定速度γ未満である間に、つまり車両がほぼ停止している間に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった場合にも車体加速度センサ1の出力固着故障が発生していないと判定することが可能である。車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていないことをより迅速に検出することができ、車両の走行開始前から車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を行わないようにすることができるので、車両の走行中におけるECU2の処理負荷をさらに低減させることができる。
【0033】
つづいて、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第3実施例について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0034】
図9は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上か否かを判定する(ステップS31)。既定変動幅δは、当該実施例においては、約0.59m/s2に設定されており、車体加速度センサ1の電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサ1の出力固着故障検出が行われる時間を最小限に短縮することができる。車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上である場合には(ステップS31でYes)、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できた場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていない状態であるから出力固着故障を検出する必要がないと判定し、前述した出力固着故障検出停止フラグをONにする(ステップS32)。一方、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ未満である場合には(ステップS31でNo)、つまり、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できない場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じている可能性があるので、前述した出力固着故障検出停止フラグをONせずに、つづいて、車両速度が既定速度ε以下か否かを判定する(ステップS33)。前述した既定速度γと既定速度εとは、ε<γの関係を有しており、当該実施例においては、既定速度γは約4m/s、既定速度εは約0.5m/sに設定されている。車両速度が既定速度ε以上である場合には(ステップS33でNo)、つづいて、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS34)。車両速度が既定速度γ未満である場合には(ステップS34でNo)、そのまま当該手順を終了し、車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS34でYes)、車両が走行中であると判定して車両走行確認フラグをONにする(ステップS35)。一方、車両速度が既定速度ε以下である場合には(ステップS33でYes)、車両が停車中であると判定し、つづいて、車両走行確認フラグがOFFか否かを判定する(ステップS36)。車両走行確認フラグがOFFである場合には(ステップS36でYes)、そのまま当該手順を終了し、車両走行確認フラグがONである場合には(ステップS36でNo)、車両が既定速度γ以上で走行した後に停止した(車両速度が既定速度ε以下に低下した)と判定し、車両走行確認フラグ及び出力固着故障検出停止フラグをOFFにして(ステップS37)、当該手順を終了する。
【0035】
図10及び図11は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第1実施例である。
運転者によって車両の電源スイッチがONされると車両の各部に電力が供給されるようになり、ECU2による車両の制御が開始されるとともに、車体加速度センサ1やその他の各センサも機能し始める(符号Sで示したタイミング)。車体加速度センサ1の出力電圧が0Vから加速度0の状態での出力電圧である約2.3Vまで上昇し、そこから符号TSで示した時間(約0.5秒)経過後に車体加速度センサ1の出力値が安定して、車両の車体加速度を検出可能な状態になる。この時点から(符号T1で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。運転者によってエンジンが始動され、車両の走行が開始されると車両速度が上昇し、車両速度が既定速度γ(4m/s)以上になった時点で車両走行確認フラグがOFFからONになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T2で示したタイミング)。
【0036】
また、車両速度が既定速度ε(0.5m/s)以下になった時点で(符号T3で示したタイミング)、車両走行確認フラグがONからOFFになり、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになる。車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになると、いったん記憶されている最大値Gmax、及び最小値Gminがクリアされた後、再び車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が行われる。これにより、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は、出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている間のみ行われることになる。したがって、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することによるECU2の処理負荷を低減させることができる。
【0037】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。また、出力固着故障を検出する対象としては、特に車体加速度センサ1に限定されるものではなく、例えば、車両が回転する速度を検出するヨーレートセンサやステアリングホイールの回転角度情報を生成する舵角センサ等であっても良く、これらのセンサを出力固着故障の検出対象とした態様においても本発明による作用効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの出力信号に基づいて、車両の制御を実行する車両制御装置、及びアンチロック・ブレーキ制御装置において実施可能であり、このような車両制御装置、及びアンチロック・ブレーキ制御装置に本発明による作用効果をもたらすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】車両用ABSのシステム構成を示した概略のブロック図である。
【図2】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例である。
【図3】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図4】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図5】車体加速度センサの固着故障検出のタイミングチャートである。
【図6】車体加速度センサの固着故障検出手順を示したフローチャートである。
【図7】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第2実施例である。
【図8】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図9】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例である。
【図10】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図11】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの故障診断を行う車体加速度センサの故障診断装置、該車体加速度センサの故障診断装置を備えるアンチロック・ブレーキ・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンチロック・ブレーキ・システム(以下、ABSとする)の制御に必要な車輪減速度信号は、非駆動輪のある2輪駆動自動車では容易に得ることが可能である。しかし、4輪駆動自動車において、センターディファレンシャル及び後輪軸ディファレンシャルがロックされ、4つの車輪が直結状態におかれた場合、すべての車輪が慣性モーメントの大きいエンジンに連結されるため、ブレーキトルクの変化に対する車輪の応答速度が著しく低下する。このため、車輪減速度信号を得ることがほとんど不可能であり、それによって、車輪はロックすることになる。このような問題を解決するための手段の1つとして、一般的に4輪駆動自動車には車体加速度センサが搭載されている。この車体加速度センサで、車体の進行方向の車体加速度を計測し、ブレーキ制動時の減速度が一定値より小さければ摩擦抵抗値μの低い路面(以下、低μ路面という)であると判定する。そして、摩擦抵抗値μの高い路面(以下、高μ路面という)用のスリップ制御ロジックから低μ路面用のスリップ制御ロジックに切り換えて制御精度を高めることによって、車輪のロックを防いでいる。したがって、この車体加速度センサは、特に4輪駆動自動車のABSにおいて欠かせないものであり、車体加速度センサが故障した場合は、スリップ制御が不可能となり、車輪がロックする虞が生じる。そのため、車体加速度センサの故障検出は、不可欠なものであるといえる。車体加速度センサの故障モードは、いくつかの故障モードが想定されるが、その1つとして、一定の車体加速度信号を出力したまま車体の加速度に追従して車体加速度出力信号が変化しなくなってしまう出力固着故障がある。
【0003】
この車体加速度センサの出力固着故障を検出する従来技術の一例としては、アンチロック・ブレーキ制御の非制御時において、車輪速センサから演算した車体加速度と、車体加速度センサが検出した車体加速度とを比較し、その差が所定値以上であるときに車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献1を参照)。或いは、十分大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に想定される重力によって車体に作用する車体加速度をしきい値に設定し、車輪速センサから演算した車体加速度がこのしきい値より大きく、かつ車体加速度センサが検出している車体加速度がこのしきい値より小さい場合に、車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献2を参照)。さらには、車輪速度から演算した論理的車体加速度と、車体加速度センサが検出した物理的車体加速度との相対的な加速度差を演算し、その加速度差が既定値を超えた状態の継続時間を計測し、その加速度差が既定値を超えた状態である間に物理的車体加速度の最小加速度と最大加速度を記憶し、加速度差が既定値を超えた状態の継続時間が既定時間を超えた時点で、記憶した最小加速度と最大加速度との差が一定の差以下である場合に車体加速度センサが出力固着故障していると判定するものが公知である(例えば、特許文献3を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−195168号公報
【特許文献2】特開平8−184610号公報
【特許文献3】特開2003−63375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な自動車の車両用ABSは、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)と呼ばれる車両制御装置を備えている。ECUは、車輪速センサから伝達される交流信号を入力して車輪速度を演算し、それを基にしてスリップ率や車輪加減速度を算出する演算機能、算出したスリップ率や車輪加減速度を論理的に組み合わせてブレーキ圧力に対するアンチロック・ブレーキ制御命令を発生し、液圧ユニットに伝達する制御機能、及び各構成部品やシステム全体の機能チェックと監視を行い、それらに欠陥が生じた場合には、警報ランプや警報ブザー等によって、運転者に警報した上で、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させるとともに、通常ブレーキの動作を可能にするシステムモニタ機能等を有しており、車体加速度センサの出力固着の故障検出等もECUで実行される。自動車の走行中においてECUは、常時様々な車両状態情報から多種多様な演算処理、及びその演算処理に基づくアンチロック・ブレーキ制御等の様々な制御処理等を実行しなければならず、そのため、自動車の走行中に車体加速度センサの出力固着故障検出を常時実行することによって、ECUの制御処理負荷が増大し、自動車の走行状態によっては、演算処理、制御処理等に遅延が生じて所望のアンチロック・ブレーキ制御性能が十分に得られない可能性がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて出力が変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの故障診断による車両用アンチロック・ブレーキ・システムの制御処理負荷を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、車両に搭載された車体加速度センサと、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車体加速度センサの出力変動幅を演算する車体加速度センサ出力変動幅演算手段とに基づいて、前記車体加速度センサの故障診断を行う故障診断装置であって、前記車両速度検出手段により検出された車両速度が所定速度以上であって、かつ、前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段により演算された前記車体加速度センサの出力変動幅が、所定値以上になるまでの間、作動することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置である。
【0008】
車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断は、車体加速度センサの出力信号がほとんど変化しない状態が継続した場合に車体加速度センサの出力信号の出力固着故障によるものなのか、検出対象の状態がほとんど変化しないことによるものなのかを車両の他の状態情報等から推測するものであるから、所定速度以上の車両速度で走行中において、車体加速度センサの変動幅が所定値以上で変動したということは、少なくとも車体加速度センサの出力固着故障等は生じていないのであり、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行う必要がない状態であると言える。
【0009】
したがって、所定速度以上の車両速度で走行中に車体加速度センサの出力値の変動幅が所定値以上になった時点で、車体加速度センサの出力固着故障等が発生していないと判定し、以降は、車両速度が所定速度未満に低下するまで車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行わないようにすることによって、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行う必要がない状態において車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行わないようにすることができる。
【0010】
それによって、車両の走行中において車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を必要がある状態においてのみ車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断を行うようにすることができるので、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が車両の走行中に常時行われなくなり、車両の走行中における車両用アンチロック・ブレーキ・システムの制御処理負荷を大幅に低減させることができるという作用効果が得られる。
尚、所定速度は、可能な限り低い速度に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサの出力固着故障等が発生していた場合には、車両が走行を開始した直後に出力固着故障等を検出することができる。また、車体加速度センサの出力変動幅の所定値は、車体加速度センサの電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサの出力固着故障等を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が行われる時間を最小限に短縮することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、さらにタイマ手段を備えることにより、車両速度が所定速度以上の状態が長時間継続した場合に所定時間の間隔で定期的に車体加速度センサの出力固着故障検出等の故障診断をすることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、記憶更新手段を備え、本発明の第4の態様は、リセットされることによって、再度車両速度が所定速度以上になった時点から車体加速度センサの出力値の変動幅が新たに測定され、その時点から車体加速度センサの出力変動幅が所定値以上になるまでの間、車体加速度センサの出力固着故障等の故障診断が行われるようにすることができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、車体加速度演算手段と比較計測手段とを備え、車体加速度センサが出力固着故障していれば、車体加速度センサの出力する車体加速度は変動しないはずであり、車体加速度センサが正常な状態で大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際は、車体加速度センサの出力する車体加速度は大きく変動することによって判断することができるものである。大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際等に、車体加速度センサが正常であるにもかかわらず誤って出力固着故障を検出することなく、かつ車体に作用する車体加速度が小さい状況においても的確に車体加速度センサの出力固着故障の検出をすることが可能になる。
【0014】
本発明の第6の態様は、前述した第1の態様〜第5の態様のいずれかに記載の車体加速度センサの故障診断装置は、アンチロック・ブレーキ制御を行う制御装置に含まれており、前記制御装置と、該制御装置から出力されるブレーキ信号に基づきブレーキ力の制御を行う液圧制御ユニットと、該液圧制御ユニットからの出力を受け作動するブレーキ装置とを備える車両用アンチロック・ブレーキ・システムであり、車両用アンチロック・ブレーキ・システムにおいて、前述した第1の態様〜第5の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、車体加速度センサを備えた本発明に係る車両用ABSのシステム構成を示した概略のブロック図である。
車両用ABSの基本構成は、「車両速度検出手段」としての車輪速センサ4と、本発明に係る「車体加速度センサの故障診断装置」としてのECU2と、液圧ユニット3とから成る。車輪速センサ4は、車輪41とともに回転する歯車42の歯を検出することによって、車輪41の回転速度に比例した周波数の交流信号を発生するものである。ECU2は、「車体加速度センサ出力変動幅演算手段」及び「車体加速度変動幅演算手段」としての演算ブロック21を備えている。演算ブロック21は、車輪速センサ4から伝達される交流信号を入力して車輪速度を演算し、それを基にしてスリップ率や車輪加減速度等のアンチロック・ブレーキ制御に必要な演算機能を有する。また、演算ブロック21は、車輪速センサ4(車両速度検出手段)の出力信号に基づいて車体加速度(後述する論理的車体加速度)を演算する(車体加速度演算手段)。
【0016】
ECU2は、演算ブロック21が算出したスリップ率や車輪加減速度を入力し、論理的に組み合わせてブレーキ圧力に対する制御命令を発生し、液圧ユニット3に伝達するアンチロック・ブレーキ制御機能を有する制御ブロック22を備えている。ECU2は、各構成部品やシステム全体の機能チェックと監視を行い、それらに欠陥が生じた場合には、警報ランプ5や図示していない警報ブザー等によって、運転者に警報した上で、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させるとともに、通常ブレーキの動作を可能にするシステムモニタ機能を有するモニタブロック23を備えている。
【0017】
液圧ユニット3は、マスタシリンダ6とホイールシリンダ44との間に配設され、ブレーキペダル7の踏み力によるブレーキディスク43に対するブレーキ圧の増減とは別に、ECU2からの制御命令を受けて、電磁弁31や図示していないポンプ、モータ等を駆動することにより直接又は間接的にブレーキ圧力を増減させる。車体加速度センサ1は、進行方向の加速度を検出するセンサである。そして、車体加速度センサ1の出力する車体加速度は、ECU2の演算ブロック21に入力され、車体加速度センサ1が検出した減速度が一定値より小さければ低μ路面であると判定する。そして、制御ブロック22は、高μ路面用のスリップ制御ロジックから低μ路面用のスリップ制御ロジックに切り換えて制御精度を高めることによって、車輪41のロックを防いでいる。また、車体加速度センサ1は、モニタブロック23に故障監視(故障診断)される。また、当該実施の形態において、車体加速度センサ1は、アナログ式Gセンサである。アナログ式Gセンサは、ホール素子を利用した電子回路で構成されており、細かいステップで車体に作用する前後方向の加速度を検出して出力可能なものである。尚、車体加速度センサ1は、特にアナログ式Gセンサに限定されるものではなく、他の方式による車体加速度センサ1であっても本発明の実施は可能である。
【0018】
つづいて、「車体加速度センサの故障診断装置」としてのECU2における車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第1実施例について、図2〜図6を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、出力固着故障検出停止フラグがONか否かを判定する(ステップS1)。この出力固着故障検出停止フラグは、後述する車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順を実行するか否かを選択するためのフラグであり、この出力固着故障検出停止フラグがOFFである間のみ、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われ、このフラグがONである間は、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は行われない。出力固着故障検出停止フラグがOFFである場合には(ステップS1でNo)、つづいて、車両速度が「所定速度」としての既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS2)。既定速度γは、当該実施例においては、約4m/sに設定されており、可能な限り低い速度に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障が発生していた場合には、車両が走行を開始した直後に出力固着故障を検出することができる。車両速度が既定速度γ未満である場合には(ステップS2でNo)、車両が停止している状態であると判定してそのまま当該手順を終了する。車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS2でYes)、車両が走行中であると判定し、つづいて、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が「車体加速度センサの出力変動幅の所定値」としての既定変動幅δ以上か否かを判定する(ステップS3)。既定変動幅δは、当該実施例においては、約0.59m/s2に設定されており、車体加速度センサ1の電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサ1の出力固着故障検出が行われる時間を最小限に短縮することができる。
【0020】
車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ未満である場合には(ステップS3でNo)、つまり、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できない場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じている可能性があるので、前述した出力固着故障検出停止フラグをONせずに、そのまま当該手順を終了する。一方、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上である場合には(ステップS3でYes)、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できた場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていない状態であるから出力固着故障を検出する必要がないと判定し、前述した出力固着故障検出停止フラグをONにして当該手順を終了する(ステップS4)。そして、出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS1でNo)、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS5)。車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS5でYes)、車両が走行中であると判定して出力固着故障検出停止フラグをONのまま維持して当該手順を終了し、車両速度が既定速度γ未満に低下している場合には(ステップS5でNo)、車両が停止している状態であると判定し、出力固着故障検出停止フラグをOFFにして当該手順を終了する(ステップS6)。
【0021】
図3及び図4は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第1実施例である。
運転者によって車両の電源スイッチがONされると車両の各部に電力が供給されるようになり、ECU2による車両の制御が開始されるとともに、車体加速度センサ1やその他の各センサも機能し始める(符号Sで示したタイミング)。車体加速度センサ1の出力電圧が0Vから加速度0の状態での出力電圧である約2.3Vまで上昇し、そこから符号TSで示した時間(約0.5秒)経過後に車体加速度センサ1の出力値が安定して、車両の車体加速度を検出可能な状態になる。運転者によってエンジンが始動され、車両の走行が開始されると車両速度が上昇し始め、車体加速度センサ1の出力電圧が車両に作用する車体加速度に応じて変動するようになる。車両速度が既定速度γ(4m/s)以上になった時点から(符号T1で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T2で示したタイミング)。また、車両速度が既定速度γ(4m/s)以下になった時点で(符号T3で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになるとともに、いったん記憶されている最大値Gmax、及び最小値Gminがクリアされた後、再び車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が行われる。これにより、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は、出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている間のみ行われることになる。したがって、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することによるECU2の処理負荷を低減させることができる。
【0022】
図5は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出のタイミングを示したタイミングチャートである。
符号Aで示した曲線は、車輪速度から演算した車体加速度(論理的車体加速度)を示した論理的車体加速度曲線である。符号Bで示した曲線は、車体加速度センサ1にて検出された車体加速度(物理的車体加速度)を示した物理的車体加速度曲線である。また、Amaxで示した破線の曲線は、図示の通り、論理的車体加速度曲線に既定値αを加算した車体加速度曲線であり、Aminで示した破線の曲線は、図示の通り、論理的車体加速度曲線から既定値αを減算した車体加速度曲線である。ここで、既定値αは、車体加速度センサ1が正常に機能している限りにおいて、継続的に生じる可能性のある論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差の最大値に設定され、実験等により求められる値である。尚、この既定値αは、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り小さいほうが好ましく、高い感度で出力固着故障の検出が可能になる。したがって、物理的車体加速度曲線が、Amaxの車体加速度曲線とAminの車体加速度曲線との間の領域を推移している間は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。尚、当該実施の形態において既定値αは、約1.47m/S2に設定されている。また、図示していないが、上記車体加速度の曲線は、縦軸を車体加速度、横軸を時間軸とした曲線である。
【0023】
フェールカウンタは、物理的車体加速度曲線が、Amaxの車体加速度曲線とAminの車体加速度曲線との間の領域の外を連続して推移している間の継続時間をカウントする。つまり、論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差が、既定値αを超えた間の継続時間を計測するものである。また、フェールカウンタにて、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた間の継続時間をカウント中は、暫定故障検出フラグをセットする。この暫定故障検出フラグは、上記相対的な加速度差が既定値αを超えたことを示すものであり、車体加速度センサ1に出力固着故障が発生した可能性のある上記相対的な加速度差が生じたことを示すものである。したがって、この暫定故障検出フラグを成立させた時点では、まだ車体加速度センサ1が出力固着故障であるという判定はしない。そして、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間以下だった場合には、暫定故障検出フラグをリセットする。ここで、既定時間は、車体加速度センサ1が正常に機能している限りにおいて、論理的車体加速度曲線と物理的車体加速度曲線との相対的な加速度差が既定値αを継続的に越える可能性のある時間より長い時間に設定され、実験等により求められる値である。つまり、符号F1で示したように、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間である1秒間以下の場合には、例えば、路面の段差等によって、瞬間的に強い車体加速度が車体に作用したことによるものと判定し、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障の検出処理を継続する。
【0024】
一方、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が、既定時間を超えた場合には、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた間の物理的車体加速度の最大値と最小値との差を演算して算出し、既定値βと比較する。ここで、既定値βは、車体加速度センサ1が出力固着故障している状態において車体加速度センサ1が出力しうる加速度変動幅の最大値に設定され、実験等により求められる値である。つまり、符号F2で示したように、上記相対的な加速度差が既定値αを超えた継続時間が既定時間である1秒間を経過した時点で、既定値αを超えた上記相対的な加速度差が、車体加速度センサ1の出力固着故障によるものであるかを判定するものである。尚、当該実施の形態において既定値βは、約0.98m/S2に設定されている。また、既定時間は、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り短いほうが好ましく、より短い時間で出力固着故障の検出が可能になる。また、既定値βは、出力固着故障の誤検出の虞がない範囲において、可能な限り小さいほうが好ましく、高い精度で出力固着故障の検出が可能になる。尚、当該実施の形態において既定時間は、約1秒に設定されている。
【0025】
そして、上記物理的車体加速度の最大値と最小値との差が、既定値β以下である場合には、車体加速度センサ1の出力が変動しないまま固着した出力固着故障であると判定し、暫定故障検出フラグをリセットするとともに故障検出フラグを成立させる。出力固着故障と判定し、故障フラグを成立させた時点で、車内の警報ランプ5を点灯させるとともに、アンチロック・ブレーキ制御機能を停止させ、通常ブレーキの動作を可能にする。また、図示していない不揮発性記憶媒体に車体加速度センサ1の出力固着故障の故障コードを記憶する。一方、符号Cで示した破線のように、上記物理的車体加速度の最大値と最小値との差が既定値βを越えている場合には、例えば、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、重力によって車体に作用する車体加速度の変動によるものであると判定し、故障検出フラグは成立させない。また、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障の検出処理を中止する。
【0026】
図6は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、前述した車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONになっているか否かを判定する(ステップS11)。車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS11でYes)、そのまま当該手順を終了するので、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は行われない。一方、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている場合には(ステップS11でNo)、つづいて、ブレーキシステムに対してアンチロック・ブレーキ制御が実行されているか否かを判定する(ステップS12)。アンチロック・ブレーキ制御中であれば(ステップS12でNo)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。一方、アンチロック・ブレーキ制御中でなければ(ステップS12でYes)、つづいて、車両が一定の速度以上で走行中か否かを判定する(ステップS13)。車両が一定の速度以上で走行中でない、つまり停車中であれば(ステップS13でNo)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出は行わない。一方、車両が一定の速度以上で走行中であれば(ステップS13でYes)、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を行う。
【0027】
つづいて、車輪速度から演算した論理的車体加速度と車体加速度センサ1が出力する物理的車体加速度との相対的な差を求め、前記既定値αと比較する(ステップS14)。論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値α以下の時は(ステップS14でNo)、車体加速度センサ1は正常とみなし、既定値αを越えたときは(ステップS14でYes)、その時点、前述した暫定故障検出フラグを成立させ、フェールカウンタのカウントアップを開始する(ステップS15)。また、フェールカウンタのカウントアップが開始された時点からの、物理的車体加速度の最小値と最大値を常に更新しながら記憶していく。そして、論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値αを越えている間のフェールカウンタの値が、1秒以下の時は(ステップS15でNo)、前述したように、瞬間的に強い車体加速度が車体に作用したことによるものと判定し、暫定故障検出フラグをリセットする。
【0028】
一方、論理的車体加速度と物理的車体加速度との差の絶対値が、既定値αを越えている間のフェールカウンタの値が、1秒を越えた時は(ステップS15でYes)、つづいて、記憶したその間の物理的車体加速度の最大値と最小値とを取得し(ステップS16)、その差を演算して算出し、前記既定値βと比較する(ステップS17)。その最大値と最小値との差が、既定値β以上の時は(ステップS17でNo)、前述したように、例えば、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、重力によって車体に作用する車体加速度の変動によるものであると判定し、車体加速度センサ1の出力固着故障検出フラグは成立させない。また、暫定故障検出フラグをリセットして出力固着故障検出処理を中止する(ステップS18)。そして、その最大値と最小値との差が、既定値β未満の時は(ステップS17でYes)、車体加速度センサ1の出力が変動しないまま固着した出力固着故障であると判定し、暫定故障検出フラグをリセットするとともに出力固着故障検出フラグを成立させる(ステップS19)。これにより、大きな傾斜角を有する坂道を上ったり下ったりする際に、車体加速度センサ1が正常であるにもかかわらず誤って出力固着故障を検出することなく、かつ車体に作用する車体加速度が小さい状況においても的確に車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することが可能になる。
【0029】
このようにして、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて出力が変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサ1の出力固着故障検出によるECU2(車両制御装置)の処理負荷を低減させることができる。
【0030】
つづいて、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第2実施例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
図7は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第2実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
当該実施例に示した手順は、前述した車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例において、車両の走行中には、所定時間経過毎に出力固着故障検出停止フラグをOFFにして、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を実行するか否かを判定するようにしたものである。ステップS21〜S24については、図2に示したフローチャートのステップS1〜S4と同様なので説明は省略する。出力固着故障検出停止フラグがONになっている場合には(ステップS21でNo)、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定し(ステップS25)、車両速度が既定速度γ未満に低下している場合には(ステップS25でNo)、車両が停止している状態であると判定し、出力固着故障検出停止フラグをOFFにして当該手順を終了する(ステップS26)。一方、車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS25でYes)、つづいて、出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過したか否かを判定する(ステップS27)。出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過していない場合には(ステップS27でNo)、出力固着故障検出停止フラグをONのまま維持して当該手順を終了する。そして、出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点から所定時間経過している場合には(ステップS27でYes)、出力固着故障検出停止フラグをONからOFFにして当該手順を終了する(ステップS26)。
【0031】
図8は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第2実施例である。
走行中に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T4で示したタイミング)。出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点からタイマによる計時が行われ、車両速度が既定速度γ以上のまま出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになった時点からの経過時間が所定時間(符号TRで示した時間)以上になった時点で最大値Gmax及び最小値Gminの記憶・更新がリセットされ、いったん記憶している最大値Gmax及び最小値Gminがクリアされる(符号T5で示したタイミング)。最大値Gmax及び最小値Gminがいったんクリアされると、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmaxと最小値Gminとの差が既定変動幅δ未満となり、それによって、出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになる。その時点から車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が再び開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が再び既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなると同時にタイマによる計時が開始される(符号T6で示したタイミング)。このようにして、既定速度γ以上で走行中の間、所定時間毎に車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を行うことができる。
【0032】
また、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例としては、上述した第1実施例又は第2実施例において、車両速度が既定速度γ未満である間に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった場合も以降の車体加速度センサ1の出力固着故障検出を行わないようにするものが挙げられる。車両が停止している状態においても車両への人の乗り降り等で車体加速度センサ1の出力値が変動して、その変動幅が既定変動幅δ以上になる場合もあるので、車両速度が既定速度γ未満である間に、つまり車両がほぼ停止している間に車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった場合にも車体加速度センサ1の出力固着故障が発生していないと判定することが可能である。車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていないことをより迅速に検出することができ、車両の走行開始前から車体加速度センサ1の出力固着故障の検出を行わないようにすることができるので、車両の走行中におけるECU2の処理負荷をさらに低減させることができる。
【0033】
つづいて、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出する手順の第3実施例について、図9〜図11を参照しながら説明する。
【0034】
図9は、車体加速度センサ1の出力固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例を示したフローチャートである。尚、当該手順は、車両の電源が投入されている間、定周期で繰り返し実行される手順である。
まず、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上か否かを判定する(ステップS31)。既定変動幅δは、当該実施例においては、約0.59m/s2に設定されており、車体加速度センサ1の電源電圧の電圧変動による出力値の変動より十分大きい変動幅で、かつ可能な限り小さい変動幅に設定されるのがより好ましく、それによって、車体加速度センサ1の出力固着故障を見落とす虞が生じることなく、かつ、走行中に車体加速度センサ1の出力固着故障検出が行われる時間を最小限に短縮することができる。車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上である場合には(ステップS31でYes)、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できた場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じていない状態であるから出力固着故障を検出する必要がないと判定し、前述した出力固着故障検出停止フラグをONにする(ステップS32)。一方、車体加速度センサ1(Gセンサ)の出力値の変動幅が既定変動幅δ未満である場合には(ステップS31でNo)、つまり、車体加速度センサ1の出力値が明確に変動したことが確認できない場合には、車体加速度センサ1の出力固着故障が生じている可能性があるので、前述した出力固着故障検出停止フラグをONせずに、つづいて、車両速度が既定速度ε以下か否かを判定する(ステップS33)。前述した既定速度γと既定速度εとは、ε<γの関係を有しており、当該実施例においては、既定速度γは約4m/s、既定速度εは約0.5m/sに設定されている。車両速度が既定速度ε以上である場合には(ステップS33でNo)、つづいて、車両速度が既定速度γ以上か否かを判定する(ステップS34)。車両速度が既定速度γ未満である場合には(ステップS34でNo)、そのまま当該手順を終了し、車両速度が既定速度γ以上である場合には(ステップS34でYes)、車両が走行中であると判定して車両走行確認フラグをONにする(ステップS35)。一方、車両速度が既定速度ε以下である場合には(ステップS33でYes)、車両が停車中であると判定し、つづいて、車両走行確認フラグがOFFか否かを判定する(ステップS36)。車両走行確認フラグがOFFである場合には(ステップS36でYes)、そのまま当該手順を終了し、車両走行確認フラグがONである場合には(ステップS36でNo)、車両が既定速度γ以上で走行した後に停止した(車両速度が既定速度ε以下に低下した)と判定し、車両走行確認フラグ及び出力固着故障検出停止フラグをOFFにして(ステップS37)、当該手順を終了する。
【0035】
図10及び図11は、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートの第1実施例である。
運転者によって車両の電源スイッチがONされると車両の各部に電力が供給されるようになり、ECU2による車両の制御が開始されるとともに、車体加速度センサ1やその他の各センサも機能し始める(符号Sで示したタイミング)。車体加速度センサ1の出力電圧が0Vから加速度0の状態での出力電圧である約2.3Vまで上昇し、そこから符号TSで示した時間(約0.5秒)経過後に車体加速度センサ1の出力値が安定して、車両の車体加速度を検出可能な状態になる。この時点から(符号T1で示したタイミング)、車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が開始され、最大値Gmaxと最小値Gminとの差、つまり、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になったか否かの判定が行われるようになる。運転者によってエンジンが始動され、車両の走行が開始されると車両速度が上昇し、車両速度が既定速度γ(4m/s)以上になった時点で車両走行確認フラグがOFFからONになる。そして、車体加速度センサ1の出力値の変動幅が既定変動幅δ以上になった時点で車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがOFFからONになり、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出が行われなくなる(符号T2で示したタイミング)。
【0036】
また、車両速度が既定速度ε(0.5m/s)以下になった時点で(符号T3で示したタイミング)、車両走行確認フラグがONからOFFになり、車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになる。車体加速度センサ1の出力固着故障検出停止フラグがONからOFFになると、いったん記憶されている最大値Gmax、及び最小値Gminがクリアされた後、再び車体加速度センサ1の出力値の最大値Gmax、及び最小値Gminの記憶・更新が行われる。これにより、車体加速度センサ1の出力固着故障の検出は、出力固着故障検出停止フラグがOFFになっている間のみ行われることになる。したがって、車体加速度センサ1の出力固着故障を検出することによるECU2の処理負荷を低減させることができる。
【0037】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。また、出力固着故障を検出する対象としては、特に車体加速度センサ1に限定されるものではなく、例えば、車両が回転する速度を検出するヨーレートセンサやステアリングホイールの回転角度情報を生成する舵角センサ等であっても良く、これらのセンサを出力固着故障の検出対象とした態様においても本発明による作用効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、車両に搭載され、車両の走行中に車両の走行状態に応じて変化するセンサ、特に車両の車体加速度を検出する車体加速度センサの出力信号に基づいて、車両の制御を実行する車両制御装置、及びアンチロック・ブレーキ制御装置において実施可能であり、このような車両制御装置、及びアンチロック・ブレーキ制御装置に本発明による作用効果をもたらすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】車両用ABSのシステム構成を示した概略のブロック図である。
【図2】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第1実施例である。
【図3】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図4】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図5】車体加速度センサの固着故障検出のタイミングチャートである。
【図6】車体加速度センサの固着故障検出手順を示したフローチャートである。
【図7】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第2実施例である。
【図8】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図9】固着故障検出を実行するタイミングを規定する手順の第3実施例である。
【図10】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【図11】固着故障を検出するタイミングを示したタイミングチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車体加速度センサと、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車体加速度センサの出力変動幅を演算する車体加速度センサ出力変動幅演算手段とに基づいて、前記車体加速度センサの故障診断を行う故障診断装置であって、
前記車両速度検出手段により検出された車両速度が所定速度以上であって、かつ、前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段により演算された前記車体加速度センサの出力変動幅が、所定値以上になるまでの間、作動することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項2】
請求項1において、さらにタイマ手段を備え、前記車体加速度センサの出力変動幅が所定変動幅以上になった時点から所定時間経過後、再び前記車体加速度センサの出力変動幅が所定変動幅以上になるまでの間作動して、前記車体加速度センサの故障診断を行うことを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値とを記憶及び更新する記憶更新手段を備え、
記憶している前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値との差を前記車体加速度センサの出力変動幅とすることを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項4】
請求項3において、前記記憶更新手段に記憶された前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値は、車両速度が前記所定速度未満に低下した時点でリセットされることを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項5】
請求項1において、前記車両速度検出手段の出力信号に基づいて車体加速度を演算する車体加速度演算手段と、
該車体加速度演算手段の演算値と前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段の出力値との相対的な加速度差が既定値αを超えた状態の継続時間を計測する比較計測手段とを備え、
前記加速度差が既定値αを超えた状態である間の前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値を記憶し、前記加速度差が前記既定値αを超えた状態の継続時間が既定時間を超えた時点で、記憶した前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値との差が既定値β以下である場合に、前記車体加速度センサが出力固着故障状態であると判定することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体加速度センサの故障診断装置は、アンチロック・ブレーキ制御を行う制御装置に含まれており、
前記制御装置と、該制御装置から出力されるブレーキ信号に基づきブレーキ力の制御を行う液圧制御ユニットと、該液圧制御ユニットからの出力を受け作動するブレーキ装置とを備える車両用アンチロック・ブレーキ・システム。
【請求項1】
車両に搭載された車体加速度センサと、前記車両の速度を検出する車両速度検出手段と、前記車体加速度センサの出力変動幅を演算する車体加速度センサ出力変動幅演算手段とに基づいて、前記車体加速度センサの故障診断を行う故障診断装置であって、
前記車両速度検出手段により検出された車両速度が所定速度以上であって、かつ、前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段により演算された前記車体加速度センサの出力変動幅が、所定値以上になるまでの間、作動することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項2】
請求項1において、さらにタイマ手段を備え、前記車体加速度センサの出力変動幅が所定変動幅以上になった時点から所定時間経過後、再び前記車体加速度センサの出力変動幅が所定変動幅以上になるまでの間作動して、前記車体加速度センサの故障診断を行うことを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値とを記憶及び更新する記憶更新手段を備え、
記憶している前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値との差を前記車体加速度センサの出力変動幅とすることを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項4】
請求項3において、前記記憶更新手段に記憶された前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値は、車両速度が前記所定速度未満に低下した時点でリセットされることを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置。
【請求項5】
請求項1において、前記車両速度検出手段の出力信号に基づいて車体加速度を演算する車体加速度演算手段と、
該車体加速度演算手段の演算値と前記車体加速度センサ出力変動幅演算手段の出力値との相対的な加速度差が既定値αを超えた状態の継続時間を計測する比較計測手段とを備え、
前記加速度差が既定値αを超えた状態である間の前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値を記憶し、前記加速度差が前記既定値αを超えた状態の継続時間が既定時間を超えた時点で、記憶した前記車体加速度センサの出力値の最大値と最小値との差が既定値β以下である場合に、前記車体加速度センサが出力固着故障状態であると判定することを特徴とする車体加速度センサの故障診断装置
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車体加速度センサの故障診断装置は、アンチロック・ブレーキ制御を行う制御装置に含まれており、
前記制御装置と、該制御装置から出力されるブレーキ信号に基づきブレーキ力の制御を行う液圧制御ユニットと、該液圧制御ユニットからの出力を受け作動するブレーキ装置とを備える車両用アンチロック・ブレーキ・システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/064350
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516692(P2005−516692)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019544
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/019544
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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