説明

車体床部構造

【課題】床部に設けられる要保護対象部品を保護し、レイアウトの自由度を向上させることが出来る車体床部構造を提供する。
【解決手段】シートマウントブラケット部材6のシート固定面部6a下方で、外側フランジ部6c形成位置よりも、車幅方向内側の入隅部6dには、脆弱部7が形成されている。
脆弱部7は、サイドシル部4の車両内部方向への進行により、このシートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aが、車幅方向外側に向けて、上面側を傾斜させながら、このシートマウントブラケット部材6の屈曲変形が促進されるように、車両前後方向に沿った鉛直断面形状が、車幅方向で急激に変化する段差を有している。
側溝部3eには、ガセット部材8、エクステンションフロントサイドメンバ部材9及びカバー部材10が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体床部構造に関し、特に、側部からの荷重入力に対して、床部に設けられる要保護対象部品を、保護することが出来る車体床部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体床部構造としては、車両の側部からの荷重入力に対して、センタピラー部材の車室内への侵入を抑制する為、サイドシルの倒れ込み変形を、このサイドシルの内側に設けられたフロアパネル部材の屈曲による変形と合わせて行わせるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3198960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の車体床部構造においては、乗員室内のシートをフロアパネル部材に固定するシートマウンティングブラケット近傍は、比較的強固に構成されている。
【0005】
このため、前記サイドシルの倒れ込み変形や、前記フロアパネル部材の屈曲による変形によって、このシートマウンティングブラケットが、フロアパネル部材の上面で、車両内部方向に移動して、このフロアパネル部材の上面側に設けられたバッテリや、燃料タンク等の要保護対象部品に干渉する虞があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、床部に設けられる要保護対象部品を保護し、レイアウトの自由度を向上させることが出来る車体床部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、フロアパネル部材の車幅方向両端部に、車両前後方向に沿って、長手方向を延設するサイドシル部を有し、該フロアパネル部材の中央部に、要保護対象部品が配置された車体床部構造において、車両側方からの荷重入力方向で、前記サイドシル部と、前記要保護対象部品との間の位置に、シートマウントブラケット部材を設け、該シートマウントブラケット部材は、前記サイドシル部の車両内部方向への進行により、該シートマウントブラケット部材のシート固定面部が、車幅方向外側に向けて屈曲変形を促進する脆弱部を有する車体床部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両側方からの荷重入力が、前記サイドシル部に加わると、前記要保護対象部品に伝達される前に、まず、サイドシル部と、要保護部品との間の位置に存在するシートマウントブラケット部材に伝達される。
【0009】
該シートマウントブラケット部材では、前記脆弱部が座屈変形することによって、前記シート固定面部が、車幅方向外側に向けて、傾きながら、変形が促進されて、前記要保護対象部品方向への進行が緩和される。
【0010】
このため、該要保護対象部品に、シートマウントブラケット部材のシート固定面部が、干渉する虞を減少させることができる。
【0011】
従って、前記フロアパネルの床部に設けられた要保護対象部品を、車両側方からの荷重入力に対して、保護することが出来、レイアウト自由度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の車体床部構造で、要部の一部断面斜視図である。
【図2】実施の形態の車体床部構造で、自動車の全体の構成を説明す分解斜視図である。
【図3】実施の形態の車体床部構造で、要部の構成を説明し、図1中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図4】実施の形態の車体床部構造で、荷重入力Fが加わった要部を説明し、図1中A−A線に沿った位置に相当する位置での断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1の車体床部構造で、要部の一部断面斜視図である。
【図6】実施例1の車体床部構造で、要部の構成を説明し、図5中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図7】実施例1の車体床部構造で、荷重入力Fが加わった要部を説明し、図5中B−B線に沿った位置に相当する位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の車体床部構造を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1乃至図7は、この発明の実施の形態の車体床部構造を示すものである。
【0015】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車体床部構造では、図2に示すような自動車1の床部2には、略平板形状のフロアパネル部材としてのフロントフロアパネル部材3が、敷設されている。
【0016】
このフロントフロアパネル部材3の下面側には、上方に凸で、下方に凹状を呈する収納部空間3bを有する部品収納凹部3cが、中央部に形成されていて、この部品収納凹部3c内に、要保護対象物品であるバッテリBが、収納保持されている。
【0017】
また、このフロントフロアパネル部材3の車幅方向の両端部3a,3aに、車両前後方向に沿って、長手方向を延設するサイドシル部4,4が、各々設けられている。
【0018】
このサイドシル部4は、図1に示す様に、サイドシルインナ部材4aと、サイドシルアウタ部材4bとを有し、これらのサイドシルインナ部材4aと、サイドシルアウタ部材4bとを、車幅方向で接合することにより、内部に中空断面形状の中空部4cが形成されている。
【0019】
更に、このフロントフロアパネル部材3の中央部には、車幅方向に長手方向を沿わせて、セカンドクロスメンバ部材5が延設されている。
【0020】
そして、図1中白抜き矢印で示す車両側方からの荷重入力方向Fで、前記サイドシル部4のサイドシルインナ部材4aと、前記バッテリBが収納される収納部空間3bとの間の位置には、前記セカンドクロスメンバ部材5の車幅方向両側に、左,右一対のシートマウントブラケット部材6,6が設けられている。
【0021】
このシートマウントブラケット部材6には、図示省略の座席の下部フレーム材を、ボルト部材等が、略中央部に開口形成された固定孔部6eに挿通されて、締結されることにより、固定支持する所定の剛性を有するシート固定面部6aが、設けられている。
【0022】
また、このシートマウントブラケット部材6は、内側縁6bを、前記セカンドクロスメンバ部材5の外側縁部5aの内面側下方から、重合させて接合されている。
【0023】
そして、このセカンドクロスメンバ部材5の車幅方向車両中央部寄りには、上面側に、前記固定孔部6eと対を構成して、座席を固定するシート固定面部としての固定孔部5eが開口形成されている。
【0024】
更に、このシートマウントブラケット部材6は、前記シート固定面部6aから一段、車両上下方向で低い位置に外側フランジ部6cを一体に突設させて、前記サイドシルインナ部材4aの上面部4dに、この外側フランジ部6cを車両上下方向で、上方から重合されて、接合されている。
【0025】
そして、このシートマウントブラケット部材6のシート固定面部6a下方で、前記外側フランジ部6c形成位置よりも、車幅方向内側の入隅部6dには、脆弱部7が形成されている。
【0026】
この実施の形態の脆弱部7は、図4中実線位置で示すように、前記サイドシル部4の車両内部方向への進行により、このシートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aが、車幅方向外側に向けて、上面側を傾斜させながら、このシートマウントブラケット部材6の屈曲変形が促進されるように、車両前後方向に沿った鉛直断面形状が、車幅方向で急激に変化する段差を有して、主に構成されている。
【0027】
また、この実施の形態では、このサイドシル部4のサイドシルインナ部材4aと、前記バッテリBが収納される収納部空間3bとの間の位置には、前記フロントフロアパネル部材3の車幅方向の両端部3a,3aに沿って、上方を開放する凹状に形成された側溝部3e,3eが、車両前後方向に、長手方向を沿わせて一対形成されている。
【0028】
そして、この側溝部3eには、ガセット部材8、エクステンションフロントサイドメンバ部材9及びカバー部材10が設けられている。
【0029】
このうち、前記ガセット部材8は、前記サイドシルインナ部材4aの側面部4eの上端縁に接合される外側接合フランジ部8aと、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9の水平上面側9aの外縁に沿って接合される内側水平フランジ部8bと、上面側8dを車幅方向内側に向けて傾斜させて、これらの外側接合フランジ部8a及び、内側水平フランジ部8b間を一体に接合する平板状の傾斜面部8cとを有して、主に構成されている。
【0030】
また、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9は、前記側溝部3eの底面に固定される底面固定フランジ部9bと、この底面固定フランジ部9bに連設されて、前記水平上面側9aの外縁に略直交して接続される縦壁部9cと、前記水平上面側9aの内側縁に設けられて、前記部品収納凹部3cの車幅方向の外側面3dに接続される収納側固定フランジ部9dとを有して主に、構成されている。
【0031】
更に、前記カバー部材10は、前記水平上面側9aの収納側固定フランジ部9dが形成された位置よりも車幅方向外側に接続される下面水平フランジ部10aと、前記フロントフロアパネル部材3の部品収納凹部3cの車幅方向外側縁上面側に、上方から重合されて接合される上面水平フランジ部10bと、これらの下面水平フランジ部10a及び上面水平フランジ部10b間を一体に接続すると共に、前記バッテリBが収納された収納部空間3bの車幅方向の外側面3dを覆う側面カバー体本体10cとを有して、車幅方向縦断面形状が略コ字状となるように構成されている。
【0032】
そして、この実施の形態では、このカバー部材10が、前記シートマウントブラケット部材6の下面側に予め固着されていて、このシートマウントブラケット部材6の車体床部への取付と同時に、車体への装着が完了するように構成されている。
【0033】
更に、このカバー部材10は、車体への装着状態で、前記フロントフロアパネル部材3の部品収納凹部3cの外側面3dとは、車幅方向で、一定の間隔を有して構成されている。
【0034】
また、前記サイドシル部4を構成するサイドシルインナ部材4a,サイドシルアウタ部材4b、前記ガセット部材8、セカンドクロスメンバ部材5、エクステンションフロントサイドメンバ部材9は、前記フロントフロアパネル部材3に対して、比較的、高い強度を有して構成されている。
【0035】
次に、この発明の実施の形態の車体床部構造の作用効果について説明する。
【0036】
この実施の形態の車体床部構造では、図1中白抜き矢印で示す様に、車両側方からの荷重入力Fが、前記サイドシル部4に加わると、前記バッテリBが収容される収納部空間3bに、この荷重入力Fが伝達される前に、まず、サイドシル部と、要保護部品との間に位置して、存在するシートマウントブラケット部材6に伝達される。
【0037】
このシートマウントブラケット部材6では、この荷重入力Fが、前記外側フランジ部6cから、車幅方向内側に向けて加わると、この外側フランジ部6c形成位置よりも、車幅方向内側の入隅部6dに設けられた脆弱部7が、図4中二点鎖線で示す位置から、実線で示すように、座屈変形する。
【0038】
このため、この脆弱部7の座屈変形によって、前記シート固定面部6aが、車幅方向外側に向けて、傾きながらの屈曲変形が促進されて、図4中二点鎖線で示す位置から、前記要保護対象部品方向への進行が緩和される。
【0039】
この際、荷重入力Fの作用開始から、座屈後まで、前記バッテリB及び前記部品収納凹部3cの外側面3dに、入力が伝わりにくくなり、前記シートマウントブラケット部材6の変形による衝撃エネルギーの吸収と、前記ガセット部材8の支持反力で、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9の方向に向かって、荷重伝達が行われる。
【0040】
エクステンションフロントサイドメンバ部材9は、比較的高い剛性を有しているので、前記ガセット部材8よりも下方に位置する前記フロントフロアパネル部材3の側溝部3eが、先に座屈変形を開始する。
【0041】
この際、従来の様に、サイドシル部4が車両内側へ倒れ込み変形して、前記フロントフロアパネル部材3が屈曲変形する場合よりも、移動する距離当たりのエネルギ吸収量の多い座屈変形が、このフロントフロアパネル部材3の側溝部3eに誘発されて、良好な効率で、荷重入力Fを吸収することができる。
【0042】
また、前記フロントフロアパネル部材3のうち、前記側溝部3eは、車幅方向に圧壊して、前記サイドシル部4が、図4中転び方向Rへ変形すること無く、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9方向へ向けて、前記シートマウントブラケット部材6の下側から潜り込むように、変形する。
【0043】
このため、前記シートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aを、車幅方向外側に向けて、傾かせることが出来る。
【0044】
この際、シート固定面部6aには、図4中実線で示すように、車両上方方向への荷重入力が加わり、前記セカンドクロスメンバ部材5の外側縁部5aを、内面側下方から、持ち上げるように、変形が促進されつつ、前記脆弱部7は、座屈変形されながら、この比較的剛性の高いシート固定面部6aの下方に向けて、車幅方向内側に移動する。
【0045】
前記外側フランジ部6cの車両上下方向の位置は、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9によって、下方への移動が抑制されるので、このシート固定面部6aを車両上方に向けて移動させながら、車幅方向外側に向けて、傾かせることが出来る。
【0046】
このため、フロントフロアパネル部材3の収納部空間3b内に装着されたバッテリBに、このシートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aが、干渉する虞を、更に減少させることができる。
【0047】
しかも、このシートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aが、上面側を、車幅方向外側に向けて、傾かせるので、フロントフロアパネル部材3のバッテリB上方に位置する部分が、バッテリB方向に向けて、下方へ湾曲するような変形も抑制される。
【0048】
従って、この実施の形態では、前記フロントフロアパネル部材3の床部に、バッテリB等の要保護対象部品を設けても、車両側方からの荷重入力Fによって、周縁の比較的剛性が高い部品が干渉する虞に対して、保護することが出来、自動車の車体におけるバッテリBの配置位置のレイアウト自由度を向上させることが出来る。
【0049】
また、前記サイドシル部4と、前記バッテリBとの間の位置には、前記脆弱部7よりも下側に、ガセット部材8が跨設されている。
【0050】
前記シート固定面部6aは、比較的高い剛性を有しているので、前記脆弱部7に発生した座屈位置を境として、図4に示す様に、前記セカンドクロスメンバ部材5への前記シート固定面部6a側の変形の進行が抑制され、前記ガセット部材8側は、このガセット部材8と、シートマウントブラケット部材6の下側の変形が促進される。
【0051】
このような変形モードにより、前記バッテリB及び前記部品収納凹部3cの外側面3dに、荷重入力Fが伝わりにくくなる効果が得られる。
【0052】
また、前記シート固定面部6aの固定孔部6e及びセカンドクロスメンバ部材5の固定孔部5eの二点間に、車幅方向で、前記セカンドクロスメンバ部材5を、下方のフロントフロアパネル部材3方向に向けて挫屈させる変形方向への変形が回避される。
【0053】
従って、この点においても、収納部空間3b内に装着されたバッテリBに、前記セカンドクロスメンバ部材5が、上方から干渉する虞が、更に減少するので、セカンドクロスメンバ部材5の下方に、バッテリBを収容する収納部空間3bを設けることが出来、レイアウトの自由度を更に向上させることができる。
【0054】
更に、この実施の形態では、前記サイドシル部4のサイドシルインナ部材4aと、前記バッテリBが収納される収納部空間3bとの間の位置には、前記フロントフロアパネル部材3の両側縁部3a,3aに沿って、上方を開放する凹状に形成された側溝部3e,3eが、車両前後方向に、長手方向を沿わせて一対形成されていて、この側溝部3eには、ガセット部材8が、エクステンションフロントサイドメンバ部材9の水平上面側9a及びサイドシルインナ部材4aの側面部4eとの間に、跨設されている。
【0055】
このため、前記ガセット部材8が、前記シートマウントブラケット部材6の脆弱部7よりも、下側に位置して、前記荷重入力Fが、前記外側フランジ部6cから、車幅方向内側に向けて加わっても、この外側フランジ部6c形成位置よりも、下方に向けて、このガゼット部材8の支持反力を発生させることが出来る。
【0056】
従って、荷重入力Fを、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9方向に荷重伝達して、前記シート固定面部6aの変形を抑制しつつ、前記車幅方向内側の入隅部6dに設けられた脆弱部7及び、フロントフロアパネル部材3の側溝部3eを、図4中、実線で示すように、屈曲変形させて、所望のエネルギ量の吸収を行わせつつ、前記バッテリB及び前記部品収納凹部3cの外側面3dに、入力が伝わりにくくなる荷重伝達経路を確保出来る。
【0057】
更に、この実施の形態では、前記ガセット部材8及び前記シートマウントブラケット部材6の脆弱部7が、車幅方向内側に変形移動しても、前記バッテリBが収納された収納部空間3bの車幅方向の外側面3dが、前記カバー部材10の側面カバー体本体10cによって、覆われているので、直接干渉する虞が無く、更に、前記バッテリBを確実に保護することができる。
【0058】
しかも、このカバー部材10が、前記シートマウントブラケット部材6の下面側に予め固着されているように構成すれば、このシートマウントブラケット部材6のフロントフロアパネル部材3への取付と同時に、車体への装着が完了する。
【0059】
従って、別部品で別途固着する構成に比して、組み付け性が良好であり、製造コストの上昇を抑制することが出来る。
【実施例1】
【0060】
図5乃至図7は、この発明の実施の形態の実施例1の車体床部構造を示すものである。
【0061】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0062】
まず、構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例1の車体床部構造では、シートマウントブラケット部材16の下縁部16cが、前記要保護対象物品であるバッテリBを、収納保持する部品収納凹部3cの車幅方向外側面3dに接続されていて、このシートマウントブラケット部材16の上面側を構成するシート固定面部16aの外側縁から、略垂直に延設された縦壁部16eに連設されて、斜めに形成された傾斜側面部16dから一体となるように設けられている。
【0063】
また、前記サイドシル部4と、前記フロントフロアパネル部材3の外側面3d及び、側溝部3eの接続部に設けられた前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9との間には、ガセット部材18が跨設されている。
【0064】
このガセット部材18は、前記サイドシルインナ部材4aの上面部4dの内側縁に接合される外側接合フランジ部18aと、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9の水平上面側9aの外縁に沿って接合される内側水平フランジ部18bと、上面側18dを車幅方向内側に向けて傾斜させて、これらの外側接合フランジ部18a及び、内側水平フランジ部18b間を一体に接合する平板状の傾斜面部18cとを有して、主に構成されている。
【0065】
そして、ガセット部材18は、図5中白抜き矢印で示す、車両側方からの荷重入力方向Fによって、前記床部2の挫屈変形が、図7中、二点鎖線に示す位置から、実線で示すように、進行しても、前記サイドシル部4と、前記シートマウントブラケット部材16とが干渉しないように、一点鎖線で示すようなサイドシル部4の転び方向Rへの変形が抑制されるように構成されている。
【0066】
しかも、この実施例1では、図6に示す様に、このガセット部材18の傾斜面部18cは、前記シートマウントブラケット部材16の前記傾斜側面部16dから、車幅方向で、所定の間隔Wを置いて装着されている。
【0067】
次に、この実施の形態の実施例1の車体床部構造の作用効果について説明する。
【0068】
この実施例1では、前記実施の形態の車体床部構造の作用効果に加えて、更に、図6に示す様に、前記ガセット部材18の傾斜面部18cが、前記シートマウントブラケット部材16の前記傾斜側面部16dから、車幅方向で、所定の間隔Wを置いて装着されている。
【0069】
このため、図7中、二点鎖線で示す位置から、図7中白抜き矢印で示す様に、車両側方からの荷重入力Fが、前記サイドシル部4に加わると、前記バッテリBが収容される収納部空間3bに、この荷重入力Fが伝達される前に、まず、サイドシル部4と、バッテリBとの間に位置して、存在するガセット部材18から、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9が設けられたフロントフロアパネル部材3の部品収納凹部3c下方まで延設された外側面3d及び、側溝部3eの接続部に伝達される。
【0070】
このガセット部材18及び、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9は、比較的高剛性となるように構成されているので、図7中実線で示す様に、前記シートマウントブラケット部材6を移動変形させる前に、この荷重入力Fが、前記フロントフロアパネル部材3の側溝部3eを挫屈変形させる。
【0071】
しかしながら、図7中、二点鎖線に示す位置から、実線で示すように、前記サイドシル部4が、車幅方向内側に、この挫屈変形によって進行しても、前記サイドシル部4及び前記ガセット部材18は、前記シートマウントブラケット部材16と、一定の間隔Wを有して配置されているので、到達しにくく、干渉する虞が少ない。
【0072】
また、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9を介して、前記収納部空間3bの外側面3dが、押圧されても、この外側面3dのバッテリB側側面が、バッテリBの側面B1に面当たりする。
【0073】
このため、荷重入力Fは、比較的広い範囲に分散されて、前記バッテリBを確実に保護することができる。
【0074】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので説明を省略する。
【0075】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0076】
即ち、前記実施の形態で及び実施例1は、前記部品収納凹部3c内に、要保護対象物品としてのバッテリBが、収納保持されているものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、燃料タンクや、電子機器等、要保護対象物品として、フロアパネル部材の中央部に設けられるものであれば、形状、数量及び物品の用途及び種類が、特に限定されるものではない。
【0077】
また、この実施の形態の脆弱部7及び実施例1の間隔Wは、車両前後方向に沿った鉛直断面形状が、車幅方向で急激に変化する段差を有していたり、或いは、傾斜面同士を対向させることにより、主に構成されているが、特にこれに限らず、例えば、脆弱部とする構成は、板厚の減少や、部品間の継ぎ目を用いたり、或いは、スリットを形成することにより、間隔を構成しても良く、前記サイドシル部4の車両内部方向への進行により、シートマウントブラケット部材6のシート固定面部6aの上面が、車幅方向外側に向けて屈曲変形されるように、促進するものであれば、形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【0078】
更に、前記実施の形態及び実施例1の構成に加えて、センタピラー部材が設けられた自動車1では、荷重入力Fが、このセンタピラー部材に加わる際、サイドシルインナ部材4a及び、サイドシルアウタ部材4bによって構成される前記サイドシル部4が、図4中一点鎖線で示す転び方向Rへ変形する方向への荷重伝達を、前記エクステンションフロントサイドメンバ部材9が受け止めて、吸収し、前記バッテリB及び前記部品収納凹部3cの外側面3dに、入力を伝わりにくくすることが出来る。
【0079】
従って、サイドシル部4の断面形状及び、センタピラー部材の有無を含む形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0080】
2 床部
3 フロントフロアパネル部材
4 サイドシル部
6,16 シートマウントブラケット部材
6a,16a シート固定面部
7 脆弱部
8,18 ガセット部材
B バッテリ(要保護対象部品)
W 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル部材の車幅方向両端部に、車両前後方向に沿って、長手方向を延設するサイドシル部を有し、該フロアパネル部材の中央部に、要保護対象部品が配置された車体床部構造において、
車両側方からの荷重入力方向で、前記サイドシル部と、前記要保護対象部品との間の位置に、シートマウントブラケット部材を設け、該シートマウントブラケット部材は、前記サイドシル部の車両内部方向への進行により、該シートマウントブラケット部材のシート固定面部が、車幅方向外側に向けて屈曲変形を促進する脆弱部を有することを特徴とする車体床部構造。
【請求項2】
前記サイドシル部と、前記要保護対象部品との間の位置には、前記脆弱部よりも下側に、ガセット部材が跨設されていることを特徴とする請求項1記載の車体床部構造。
【請求項3】
フロアパネル部材の車幅方向両端部に、車両前後方向に沿って、長手方向を延設するサイドシル部を有し、該フロアパネル部材の中央部に、要保護対象部品が配置された車体床部構造において、
前記サイドシル部と、フロアパネル部材との間には、ガセット部材が跨設されて、該ガセット部材は、車両側方からの荷重入力方向で前記フロアパネル部材の挫屈変形が進行しても、前記サイドシル部と、前記シートマウントブラケット部材とが干渉しないように、該サイドシル部の転び方向の変形を抑制すると共に、前記シートマウントブラケット部材から、車幅方向で、所定の間隔を置いて装着されることを特徴とする車体床部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−163039(P2010−163039A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6671(P2009−6671)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】