車体後部構造
【課題】フロアパネル後部の強度を十分に向上できるようにする。
【解決手段】フロアパネル1の下面に、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレーム10が接合されると共に、左右一対のリヤサイドフレーム同士10を連結するクロスメンバ11〜13が接合される。フロアパネル1の上面には、前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレール20が固定される。各外側シートスライドレール20は、平面視において各リヤサイドフレーム10と重なるように配設されて、平面視においてクロスメンバ11〜13と重なる位置においてフロアパネル1に対して固定される。左右一対の外側シートスライドレール20同士が、クロスメンバ12とは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材50によって連結される。
【解決手段】フロアパネル1の下面に、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレーム10が接合されると共に、左右一対のリヤサイドフレーム同士10を連結するクロスメンバ11〜13が接合される。フロアパネル1の上面には、前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレール20が固定される。各外側シートスライドレール20は、平面視において各リヤサイドフレーム10と重なるように配設されて、平面視においてクロスメンバ11〜13と重なる位置においてフロアパネル1に対して固定される。左右一対の外側シートスライドレール20同士が、クロスメンバ12とは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材50によって連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルの下面、特に後端部付近での下面には、車体の強度確保のために、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームが接合されると共に、左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバが接合されるのが一般的である。
【0003】
一方、フロアパネルの上面には、シートを前後方向にスライド案内するために、前後方向に伸びるシートスライドレールが固定される。1ボックスカーや1.5ボックスカーさらにはワゴン車等で多く見られるように、運転席の後方に配設される後席シートとして、最後方シートと最後方シートの直前方に配設される前方シートとを有して、全体として前後方向にシートを3列に配設したものが多くなっている。特許文献1には、フロアパネルの上面に配設した左右一対のシートスライドレールを、車室後端部付近にまで後方へ十分長く延長して、この長い左右一対のシートスライドレールを、上記最後方シートと前方シートとの両方のシートに対するガイド用として兼用したものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−336131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両、特に車体後端部付近にシートが位置される車両にあっては、フロアパネル後部の強度を向上させて、ねじり剛性の向上やNVHを低減することが強く望まれるものである。このような観点から、既存のリヤサイドフレームやクロスメンバの断面積を大きくすることも考えられるが、このような手法のみでは十分な強度向上を図ることが難しいものとなる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、フロアパネル後部の強度を十分に向上できるようにした車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、シートスライドレールが十分な強度を有している点に着目して、このシートスライドレールを車体後部の強度向上のための部材として積極的に利用するようにしてある。具体的には、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
フロアパネルの下面に接合されると共に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームと、車幅方向に伸びると共にフロアパネルの下面において前記左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバと、フロアパネルの上面に固定されると共に前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールと、を備えた車体後部構造であって、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記各リヤサイドフレームと重なるように車幅方向外端部寄りの位置に配設され、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記左右一対の外側シートスライドレール同士が、前記クロスメンバとは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材によって連結されている、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、平面視において各リヤサイドフレーム上にシートスライドレールが重なるように位置されて、リヤサイドフレームとシートスライドレールとによって前後方向に伸びる一種の補強ユニットが構成されることになる。そして、左右一対のリヤサイドフレームはクロスメンバによって連結されると共に、左右一対のシートスライドレール同士はクロスメンバとは前後方向に離間された関係にある連結部材とによって連結されているので、全体として、平面視において方形の枠形が構成されることとなって、フロアパネルの後部の強度が大幅に向上されることとなり、ねじり剛性の向上やNVHの低減の上で極めて効果的な構造が得られることになる。勿論、後方衝突時には、リヤサイドフレームの他にシートスライドレールも衝突の衝撃を受け持つことになり、後方衝突対応という点でも好ましいものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
フロアパネルの上面に、前記左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において、前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記各内側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記各内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、上述した平面視において構成される方形の枠形が、内側シートスライドレールによってさらに補強されて、フロアパネル後部の強度をさらに十分に向上させることができる。
【0010】
前記フロアパネルの後部に、前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記左右一対の外側シートスライドレールは、前記収納凹部の左右に位置するように後方に長く形成され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端よりも前方位置で、かつ平面視において前記収納凹部の前端部と重なる位置とされ、
前記連結部材が、前記収納凹部の直前方位置において車幅方向に伸ばして配設されている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、後方に長く伸びる左右一対の外側シートスライドレール間のスペースを収納凹部として有効に利用することができ、しかも収納凹部を形成することによって、フロアパネルを平板状のままとしておく場合に比して剛性を向上させることができる。さらに、内側シートスライドレールを収納凹部の前端部にまで延長させて、この内側シートスライドレールによってガイドされるシートを十分に後方に位置させるようにする上で好ましいものとなる。さらにまた、内側シートスライドレールの後端部は、収納凹部の前端部上に片持ち式に延長されることになるが、収納凹部の直前方に配設される連結部材によって内側シートスライドレールが支承されることになるので、収納凹部内に内側シートスライドレールの後端部を支承するための支承部材を別途設けることが不用になり、しかもこの支承部材を収納凹部内に設ける必要がないということは、収納凹部を収納用として極力広く有効に利用するという点でも好ましいものとなる。
【0011】
シートとして、最後方に位置されると共にシートクッションが車幅方向において一体の構造とされた最後方シートと、前記最後方シートの直前方に位置されると共に左側分割シートと右側分割シートとの分割構成とされた前方シートとを有し、
前記各外側シートスライドレールによって、前記最後方シートがガイドされ、
左側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記左側分割シートがガイドされ、
右側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記右側分割シートがガイドされる、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、外側シートスライドレールを、最後方シート用と前方シート用との共通用として利用することができる。また、前方シートについては、その左右の分割シートの前後位置を相違させた状態として使用することが可能となる。
【0012】
前記クロスメンバは、フロアパネルに対して重なるように配設されるフランジ部を有して、該フランジ部においてフロアパネルに対して接合されており、
前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールはそれぞれ、前記フランジ部の位置においてフロアパネルに固定されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、クロスメンバが通常有しているフランジ部を有効に利用して、クロスメンバに対してシートスライドレールを固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロアパネルの後部の強度を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
車両Vは、そのフロアパネル1上に、前後方向に隔置された3列のシート2,3,4を有する。第1列目のシート2は、運転席シート2Aと助手席シート2Bとの左右の分割構成とされている。2列目のシート3は、左右の分割構成とされて、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとから構成されている。ただし、右側分割シート3Bの車幅方向幅が、左側分割シート3Aの車幅方向幅よりも若干大きくされて、互いに前後方向位置を同じに設定したときに、左右位置の他に中央部にも着座可能な3人掛けとして利用できるようになっている。3列目のシート4は、少なくともそのシートクッションが車幅方向において一体の構造とされて、3人掛け用として設定されている。
【0015】
フロアパネル1のうち、2列目および3列目のシート3,4が位置されるその後部部分の構造の詳細について、図3以下を参照しつつ説明する。まず、フロアパネル1の下面には、前後方向に伸びる強度部材としての左右一対のリヤサイドフレーム10が接合されている(図3、図4参照)。このリヤサイドフレーム10は、断面略ハット状とされて、フロアパネル1と共働して閉断面を構成している(図5参照)。リヤサイドフレーム10は、フロアパネル1の車幅方向外端部付近に位置されて、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置され、その前端は、サイドシル5に連結されている。なお、リヤサイドフレーム10とサイドシル5との接合部位は大きな閉断面を有するように設定されて、サイドシル5とリヤサイドフレーム10との間で前後方向の大きな衝撃が効果的に伝達されるように設定されている。
【0016】
フロアパネル1には、リヤサイドフレーム10の間において、下方へ突出されて、上方に向けて開口された大きな収納凹部6が形成されている(図3,図4,図9参照)。この収納凹部6は、スペアタイヤや工具等が収納されるもので、その前端部の形状は、略円弧状とされて、その半径は、スペアタイヤの半径よりも若干大きくなるように設定されている。この収納凹部6は、フロアパネルの後端に向けても開口されている。
【0017】
図3に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム10同士は、車幅方向に伸びる第1〜第3の複数のクロスメンバ11,12,13によって連結されている。もっとも前方に位置される第1クロスメンバ11は、リヤサイドフレーム10の前端部同士を連結している。もっとも後方に位置される第3クロスメンバ13は、収納凹部6の前端の直前方を通るように配設されている。ただし、第3クロスメンバ13は、リヤサイドフレーム10に対する連結部位は、収納凹部6の前端よりも若干後方位置とされて、その車幅方向中間部が、収納凹部6の略円弧状とされた前端部形状に沿うように湾曲形成されている。第1クロスメンバ11と第3クロスメンバ13との間に位置される前後方向中間位置に配設された第2クロスメンバ12は、第1クロスメンバ11よりも第3クロスメンバ13に近い位置に配設されている。そして、第1クロスメンバ11と第2クロスメンバ12は、直線的に伸びている。なお、第1クロスメンバ11の前方には、左右一対のサイドシル5同士を連結するクロスメンバが別途設けられているものである。
【0018】
各クロスメンバ11〜13は、その車幅方向端部に形成されたフランジ部11a、12aあるいは13aを、リヤサイドフレーム10の内側面や下面に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3,図5参照)。また、各クロスメンバ11〜13は、フロアパネル1に対しては、そのフランジ部11b、12bあるいは13bを、フロアパネル1に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3,図6参照)。このように、フロアパネル1の下面には、左右一対のリヤサイドフレーム10を、前後方向に離間された複数のクロスメンバ11〜13で連結することにより、強度向上が図られている。また、収納凹部6の形成によって、フロアパネル1の後端部は、平板状あるいはほぼ平板状の状態である場合に比して、強度向上が図られることになる。
【0019】
図4に示すように、フロアパネル1の上面には、夫々前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレール20と、左右一対の内側シートスライドレール30とが配設されている。左右一対の外側シートスライドレール20は、最後方シートとなる3列目シート4の他に、2列目シート3をも前後方向にガイドするようになっており、このため前後方向に極めて長くなるように設定されている。より具体的には、外側シートスライドレール20は、その前端位置がリヤサイドフレーム10とサイドシル5との連結部位付近に位置され(2列目シート3の前端位置に対応した位置)、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置されている(3列目シート4の最後方位置に対応)。この外側シートスライドレール20の後端部は、収納凹部6を左右から挟むように配設されて、平面視において、リヤサイドフレーム10と重なるように設定されている(図4,図8参照)。
【0020】
内側シートスライドレール30は、左右一対の外側シートスライドレール20の車幅方向内側に配設されて、外側シートスライドレール20よりも短くされている。より具体的には、内側シートスライドレール30の前端位置は、外側シートスライドレール20の前端位置と同じに設定されているが、その後端位置が、収納凹部6の直前方位置に設定されている。この左右一対の内側シートスライドレール30は、2列目シート3を前後方向にガイドするための専用とされている。
【0021】
左右一対の外側シートスライドレール20には、それぞれ、前アジャスタ41と後アジャスタ42との2つのアジャスタが摺動自在に係合されている。左右一対の内側シートスライドレール30には、それぞれ1つのアジャスタ43が摺動自在に係合されている(図7参照で、図7では円滑な摺動を確保するためのベアリングは図示を略してある)。外側シートスライドレール20に設けた左右一対の後アジャスタ42は、3列目シート4専用で、3列目シート4(のシートクッション)が取付けられる。左側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と左側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち左側分割シート3A専用で、左側部分割シート3A(のシートクッション)が取付けられる。右側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と右側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち右側分割シート3B専用で、右側部分割シート3B(のシートクッション)が取付けられる。このように、最後方シートとなる3列目シート4は、その前後方向位置が、常に一体として調整される。また、2列目シート3は、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとで別個独立して前後方向位置が調整可能である。
【0022】
左右一対の外側シートスライドレール20同士は、車幅方向に伸びる連結部材50によって連結されている(図4参照)この連結部材50は、クロスメンバ11〜13と同様に、フロアパネル1と共働して閉断面を構成していて(図10参照)、例えば、そのフランジ部を利用してシートスライドレール20の内側面や上面に対して溶接等により接合されると共に、そのフランジ部を利用してフロアパネル1にも溶接等により接合されている。このような連結部材50の前後方向位置は、収納凹部6の前端付近に設定されて、平面視において第3クロスメンバ13の車幅方向中間部と重なるようにされている。
【0023】
内側シートスライドレール30の後端部は、図10に示すように、左右一対のL字形とされた連結ブラケット35及び取付ボルト36を利用して、上記連結部材50に対して連結されている。すなわち、内側シートスライドレール30の後端を連結部材50の前面に当接させた状態でもって、互いに固定されている。なお、連結ブラケット35としては、図11に示すように平板状のものを利用する等、適宜のものを利用することができ、また溶接等によって内側シートスライドレール30と連結部材50とを固定することもできる。
【0024】
左右一対の外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30は、それぞれ、前後方向複数箇所(実施形態では3箇所)においてフロアパネル1に固定されている。外側シートスライドレール20は、前端部と後端部と前後方向中間部との3箇所で、例えばボルト、ナット等の固定具によってフロアパネル1に固定される。より具体的には、外側シートスライドレール20のフロアパネル1に対する固定位置は、第1クロスメンバ11(のフランジ部11b)とフロアパネル1との接合部位、第2クロスメンバ12(のフランジ部12b)とフロアパネル1との接合部位、および外側シートスライドレール20の後端部位置である(後端部位置ではクロスメンバが存在しないので、フロアパネル1に対してのみ固定される)。
【0025】
図8に示すように、外側シートスライドレール20に対して溶接等により固定された固定用のブラケット22が、ボルト23、ナット24を利用してフロアパネル1に固定される。この固定部位では、固定用ブラケット22とリヤサイドフレーム10のフランジ部10bと第2クロスメンバ12のフランジ部12bとフロアパネル1とが重合された4枚重ねの状態で行われている。なお、このような4枚重ね状態での固定手法は、外側シートスライドレール20の前端部の固定部位についても同様である。なお、図9において、25は位置決めピンである。
【0026】
図9に示すように、内側シートスライドレール30の後端部のフロアパネル1に対する固定部位において、内側シートスライドレール30に溶接等により固定された固定用ブラケット32が、フロアパネル1と第3クロスメンバ13のフランジ部13bとに対して3枚重ねとされた状態で、ボルト33,ナット34を利用して固定されている。図9に示すような3枚重ねの状態での固定は、内側シートスライドレール30の前端部や前後方向中間部の固定部位についても同様である。
【0027】
以上のような構成において、特に、図3,図4から容易に理解されるように、フロアパネル1の後部には、車幅方向外端部寄りに位置される前後方向に伸びる強度部材として、リヤサイドフレーム10の他に、平面視においてリヤサイドフレーム10と重なる外側シートスライドレール20が位置されて、このリヤサイドフレーム10と外側シートスライドレール20とによって前後方向に伸びる強固な補強ユニットが構成される。そして、平面視において、左右一対の上記補強ユニットのうち下方に位置する左右一対のリヤサイドフレーム10同士が第2クロスメンバ12によって連結される一方、上方に位置する左右一対の外側シートスライドレール20同士が連結部材50によって連結されており、しかも左右一対の外側シートスライドレール20は第2クロスメンバ12のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されている。これにより、平面視において、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレーム10と外側シートスライドレール20、車幅方向に伸びる第2クロスメンバ12および連結部材50によって、強固な方形の枠形が構成されることになり、フロアパネル1の後端部付近の強度が飛躍的に向上されることになる。
【0028】
連結部材50の下方には、第3クロスメンバ13も位置されるので、より一層フロアパネル1の後端部の強度が向上される。さらに、左右一対の外側シートスライドレール20の前端部も、第1クロスメンバ11のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されるので、外側シートスライドレール20の前端部付近にまでフロアパネル1の強度向上が図れることになる。
【0029】
さらに、内側シートスライドレール30が、第2クロスメンバ12のフロアパネル1への接合部位でもってフロアパネル1に固定され、また内側シートスライドレール30の後端部が、連結部材50に連結されると共に、第3クロスメンバ13のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されるので、フロアパネル1の後端部の強度がさらにより一層向上されることになる。勿論、内側シートスライドレール30の前端部も、第1クロスメンバ11のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して接合されるので、シートスライドレール20、30の前端部付近にまで十分に強度を図る上で極めて効果的となっている。
【0030】
図12は、本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付して、その重複した説明は省略する。本実施形態では、
内側シートスライドレール30の後端位置を、収納凹部6の前端位置よりも若干後方位置にまで延長させて、平面視において、内側シートスライドレール30の後端部と収納凹部6の前端部とが重なるようにしてある。そして、内側シートスライドレール30の後端部の下方に、車幅方向に伸びる連結部材50が位置されて(内側シートスライドレール30と連結部材50とはその交差する部分で互いに固定されている)、連結部材50によって内側シートスライドレール30の後端部を支承するようにしてある。これにより、2列目シート3をより十分に後方へ位置させることが可能となり、しかも内側シートスライドレール30の後端部が連結部材50によって支承されるので、内側シートスライドレール30の後端部が片持ち式に収納凹部6内に向けて突出しても、内側シートスライドレール30が2列目シート3からの大きな荷重によって曲げ変形される等のことも確実に防止される。なお、内側シートスライドレール30の後端部(特に後端)を、収納凹部6内に別途設けた支承部材でもって支承することも考えられるが、この場合は、収納凹部6の収納スペースが小さくなってしまう。なお、図12の実施形態では、連結部材50の車幅方向端部が、外側シートスライドレール20の内側面に当接した状態とされているが、外側シートスライドレール20の下方に連結部材50が位置されるような設定であってもよい。
【0031】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。シートは、全体として2列シートとしてもよく(特に全長の小さい車両の場合)、この場合は、外側シートスライドレール20は、最後方シートとしての2列目シート用とされ、外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30が、1列目シート(運転席用および助手席用)用として利用されることになる。シートスライドレール20あるいは30のフロアパネル1に対する固定部位を、クロスメンバ11〜13のフランジ部11b〜13b以外の部分(クロスメンバ本体部分)としてもよい。収納凹部6が存在しないものであってもよく、この場合、連結部材50を、外側シートスライドレール20の後端部同士を連結するようにしてもよく、あるいは図4に示す連結部材50に加えてさらにその後方に別途連結部材を設けるようにしてもよい(外側シートスライドレール20同士を連結する連結部材を複数に設定する)。内側シートスライドレール30が存在しないものであってもよい。連結部材50の前後方向位置は適宜選択できるが、リヤサイドフレーム10の前後方向略中間部同士を連結しているクロスメンバよりも後方に位置させるのが好ましい(フロアパネル1の後端部の補強のため)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用される車両の一例を示すもので、車両後部の状態を示す簡略側面図。
【図2】図1に示すシートの配列状態を示す斜視図。
【図3】フロアパネルの下面の構造を示す平面図。
【図4】フロアパネルの上面の構造を示す平面図。
【図5】図3のX5−X5線相当断面図。
【図6】図3のX6−X6線相当断面図。
【図7】図4のX7−X7線相当断面図。
【図8】図4のX8−X8線相当断面図。
【図9】図4のX9−X9線相当断面図。
【図10】内側シートスライドレールと連結部材との連結部位の一例を示す要部斜視図。
【図11】内側シートスライドレールと連結部材との連結部位の別の例を示す要部斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態を示すもので、図4に対応した平面図。
【符号の説明】
【0033】
V:車両
1:フロアパネル
2:1列目シート
3:2列目シート(前方シート)
3A:左側分割シート
3B:右側分割シート
4:3列目シート(最後方シート)
6:収納凹部
10:リヤサイドフレーム
11:第1クロスメンバ
11b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
12:第2クロスメンバ
12b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
13:第3クロスメンバ
13b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
20:外側シートスライドレール
22:固定用ブラケット(外側シートスライドレール用)
23:ボルト
24:ナット
30:内側シートスライドレール
32:固定用ブラケット(内側シートスライドレール用)
33:ボルト
34:ナット
41:前アジャスタ(2列目シート用)
42:後アジャスタ(3列目シート用)
43:アジャスタ(2列目シート用)
50:連結部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルの下面、特に後端部付近での下面には、車体の強度確保のために、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームが接合されると共に、左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバが接合されるのが一般的である。
【0003】
一方、フロアパネルの上面には、シートを前後方向にスライド案内するために、前後方向に伸びるシートスライドレールが固定される。1ボックスカーや1.5ボックスカーさらにはワゴン車等で多く見られるように、運転席の後方に配設される後席シートとして、最後方シートと最後方シートの直前方に配設される前方シートとを有して、全体として前後方向にシートを3列に配設したものが多くなっている。特許文献1には、フロアパネルの上面に配設した左右一対のシートスライドレールを、車室後端部付近にまで後方へ十分長く延長して、この長い左右一対のシートスライドレールを、上記最後方シートと前方シートとの両方のシートに対するガイド用として兼用したものが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−336131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両、特に車体後端部付近にシートが位置される車両にあっては、フロアパネル後部の強度を向上させて、ねじり剛性の向上やNVHを低減することが強く望まれるものである。このような観点から、既存のリヤサイドフレームやクロスメンバの断面積を大きくすることも考えられるが、このような手法のみでは十分な強度向上を図ることが難しいものとなる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、フロアパネル後部の強度を十分に向上できるようにした車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、シートスライドレールが十分な強度を有している点に着目して、このシートスライドレールを車体後部の強度向上のための部材として積極的に利用するようにしてある。具体的には、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
フロアパネルの下面に接合されると共に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームと、車幅方向に伸びると共にフロアパネルの下面において前記左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバと、フロアパネルの上面に固定されると共に前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールと、を備えた車体後部構造であって、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記各リヤサイドフレームと重なるように車幅方向外端部寄りの位置に配設され、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記左右一対の外側シートスライドレール同士が、前記クロスメンバとは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材によって連結されている、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、平面視において各リヤサイドフレーム上にシートスライドレールが重なるように位置されて、リヤサイドフレームとシートスライドレールとによって前後方向に伸びる一種の補強ユニットが構成されることになる。そして、左右一対のリヤサイドフレームはクロスメンバによって連結されると共に、左右一対のシートスライドレール同士はクロスメンバとは前後方向に離間された関係にある連結部材とによって連結されているので、全体として、平面視において方形の枠形が構成されることとなって、フロアパネルの後部の強度が大幅に向上されることとなり、ねじり剛性の向上やNVHの低減の上で極めて効果的な構造が得られることになる。勿論、後方衝突時には、リヤサイドフレームの他にシートスライドレールも衝突の衝撃を受け持つことになり、後方衝突対応という点でも好ましいものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
フロアパネルの上面に、前記左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において、前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記各内側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記各内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、上述した平面視において構成される方形の枠形が、内側シートスライドレールによってさらに補強されて、フロアパネル後部の強度をさらに十分に向上させることができる。
【0010】
前記フロアパネルの後部に、前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記左右一対の外側シートスライドレールは、前記収納凹部の左右に位置するように後方に長く形成され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端よりも前方位置で、かつ平面視において前記収納凹部の前端部と重なる位置とされ、
前記連結部材が、前記収納凹部の直前方位置において車幅方向に伸ばして配設されている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、後方に長く伸びる左右一対の外側シートスライドレール間のスペースを収納凹部として有効に利用することができ、しかも収納凹部を形成することによって、フロアパネルを平板状のままとしておく場合に比して剛性を向上させることができる。さらに、内側シートスライドレールを収納凹部の前端部にまで延長させて、この内側シートスライドレールによってガイドされるシートを十分に後方に位置させるようにする上で好ましいものとなる。さらにまた、内側シートスライドレールの後端部は、収納凹部の前端部上に片持ち式に延長されることになるが、収納凹部の直前方に配設される連結部材によって内側シートスライドレールが支承されることになるので、収納凹部内に内側シートスライドレールの後端部を支承するための支承部材を別途設けることが不用になり、しかもこの支承部材を収納凹部内に設ける必要がないということは、収納凹部を収納用として極力広く有効に利用するという点でも好ましいものとなる。
【0011】
シートとして、最後方に位置されると共にシートクッションが車幅方向において一体の構造とされた最後方シートと、前記最後方シートの直前方に位置されると共に左側分割シートと右側分割シートとの分割構成とされた前方シートとを有し、
前記各外側シートスライドレールによって、前記最後方シートがガイドされ、
左側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記左側分割シートがガイドされ、
右側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記右側分割シートがガイドされる、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、外側シートスライドレールを、最後方シート用と前方シート用との共通用として利用することができる。また、前方シートについては、その左右の分割シートの前後位置を相違させた状態として使用することが可能となる。
【0012】
前記クロスメンバは、フロアパネルに対して重なるように配設されるフランジ部を有して、該フランジ部においてフロアパネルに対して接合されており、
前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールはそれぞれ、前記フランジ部の位置においてフロアパネルに固定されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、クロスメンバが通常有しているフランジ部を有効に利用して、クロスメンバに対してシートスライドレールを固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フロアパネルの後部の強度を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
車両Vは、そのフロアパネル1上に、前後方向に隔置された3列のシート2,3,4を有する。第1列目のシート2は、運転席シート2Aと助手席シート2Bとの左右の分割構成とされている。2列目のシート3は、左右の分割構成とされて、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとから構成されている。ただし、右側分割シート3Bの車幅方向幅が、左側分割シート3Aの車幅方向幅よりも若干大きくされて、互いに前後方向位置を同じに設定したときに、左右位置の他に中央部にも着座可能な3人掛けとして利用できるようになっている。3列目のシート4は、少なくともそのシートクッションが車幅方向において一体の構造とされて、3人掛け用として設定されている。
【0015】
フロアパネル1のうち、2列目および3列目のシート3,4が位置されるその後部部分の構造の詳細について、図3以下を参照しつつ説明する。まず、フロアパネル1の下面には、前後方向に伸びる強度部材としての左右一対のリヤサイドフレーム10が接合されている(図3、図4参照)。このリヤサイドフレーム10は、断面略ハット状とされて、フロアパネル1と共働して閉断面を構成している(図5参照)。リヤサイドフレーム10は、フロアパネル1の車幅方向外端部付近に位置されて、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置され、その前端は、サイドシル5に連結されている。なお、リヤサイドフレーム10とサイドシル5との接合部位は大きな閉断面を有するように設定されて、サイドシル5とリヤサイドフレーム10との間で前後方向の大きな衝撃が効果的に伝達されるように設定されている。
【0016】
フロアパネル1には、リヤサイドフレーム10の間において、下方へ突出されて、上方に向けて開口された大きな収納凹部6が形成されている(図3,図4,図9参照)。この収納凹部6は、スペアタイヤや工具等が収納されるもので、その前端部の形状は、略円弧状とされて、その半径は、スペアタイヤの半径よりも若干大きくなるように設定されている。この収納凹部6は、フロアパネルの後端に向けても開口されている。
【0017】
図3に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム10同士は、車幅方向に伸びる第1〜第3の複数のクロスメンバ11,12,13によって連結されている。もっとも前方に位置される第1クロスメンバ11は、リヤサイドフレーム10の前端部同士を連結している。もっとも後方に位置される第3クロスメンバ13は、収納凹部6の前端の直前方を通るように配設されている。ただし、第3クロスメンバ13は、リヤサイドフレーム10に対する連結部位は、収納凹部6の前端よりも若干後方位置とされて、その車幅方向中間部が、収納凹部6の略円弧状とされた前端部形状に沿うように湾曲形成されている。第1クロスメンバ11と第3クロスメンバ13との間に位置される前後方向中間位置に配設された第2クロスメンバ12は、第1クロスメンバ11よりも第3クロスメンバ13に近い位置に配設されている。そして、第1クロスメンバ11と第2クロスメンバ12は、直線的に伸びている。なお、第1クロスメンバ11の前方には、左右一対のサイドシル5同士を連結するクロスメンバが別途設けられているものである。
【0018】
各クロスメンバ11〜13は、その車幅方向端部に形成されたフランジ部11a、12aあるいは13aを、リヤサイドフレーム10の内側面や下面に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3,図5参照)。また、各クロスメンバ11〜13は、フロアパネル1に対しては、そのフランジ部11b、12bあるいは13bを、フロアパネル1に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3,図6参照)。このように、フロアパネル1の下面には、左右一対のリヤサイドフレーム10を、前後方向に離間された複数のクロスメンバ11〜13で連結することにより、強度向上が図られている。また、収納凹部6の形成によって、フロアパネル1の後端部は、平板状あるいはほぼ平板状の状態である場合に比して、強度向上が図られることになる。
【0019】
図4に示すように、フロアパネル1の上面には、夫々前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレール20と、左右一対の内側シートスライドレール30とが配設されている。左右一対の外側シートスライドレール20は、最後方シートとなる3列目シート4の他に、2列目シート3をも前後方向にガイドするようになっており、このため前後方向に極めて長くなるように設定されている。より具体的には、外側シートスライドレール20は、その前端位置がリヤサイドフレーム10とサイドシル5との連結部位付近に位置され(2列目シート3の前端位置に対応した位置)、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置されている(3列目シート4の最後方位置に対応)。この外側シートスライドレール20の後端部は、収納凹部6を左右から挟むように配設されて、平面視において、リヤサイドフレーム10と重なるように設定されている(図4,図8参照)。
【0020】
内側シートスライドレール30は、左右一対の外側シートスライドレール20の車幅方向内側に配設されて、外側シートスライドレール20よりも短くされている。より具体的には、内側シートスライドレール30の前端位置は、外側シートスライドレール20の前端位置と同じに設定されているが、その後端位置が、収納凹部6の直前方位置に設定されている。この左右一対の内側シートスライドレール30は、2列目シート3を前後方向にガイドするための専用とされている。
【0021】
左右一対の外側シートスライドレール20には、それぞれ、前アジャスタ41と後アジャスタ42との2つのアジャスタが摺動自在に係合されている。左右一対の内側シートスライドレール30には、それぞれ1つのアジャスタ43が摺動自在に係合されている(図7参照で、図7では円滑な摺動を確保するためのベアリングは図示を略してある)。外側シートスライドレール20に設けた左右一対の後アジャスタ42は、3列目シート4専用で、3列目シート4(のシートクッション)が取付けられる。左側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と左側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち左側分割シート3A専用で、左側部分割シート3A(のシートクッション)が取付けられる。右側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と右側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち右側分割シート3B専用で、右側部分割シート3B(のシートクッション)が取付けられる。このように、最後方シートとなる3列目シート4は、その前後方向位置が、常に一体として調整される。また、2列目シート3は、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとで別個独立して前後方向位置が調整可能である。
【0022】
左右一対の外側シートスライドレール20同士は、車幅方向に伸びる連結部材50によって連結されている(図4参照)この連結部材50は、クロスメンバ11〜13と同様に、フロアパネル1と共働して閉断面を構成していて(図10参照)、例えば、そのフランジ部を利用してシートスライドレール20の内側面や上面に対して溶接等により接合されると共に、そのフランジ部を利用してフロアパネル1にも溶接等により接合されている。このような連結部材50の前後方向位置は、収納凹部6の前端付近に設定されて、平面視において第3クロスメンバ13の車幅方向中間部と重なるようにされている。
【0023】
内側シートスライドレール30の後端部は、図10に示すように、左右一対のL字形とされた連結ブラケット35及び取付ボルト36を利用して、上記連結部材50に対して連結されている。すなわち、内側シートスライドレール30の後端を連結部材50の前面に当接させた状態でもって、互いに固定されている。なお、連結ブラケット35としては、図11に示すように平板状のものを利用する等、適宜のものを利用することができ、また溶接等によって内側シートスライドレール30と連結部材50とを固定することもできる。
【0024】
左右一対の外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30は、それぞれ、前後方向複数箇所(実施形態では3箇所)においてフロアパネル1に固定されている。外側シートスライドレール20は、前端部と後端部と前後方向中間部との3箇所で、例えばボルト、ナット等の固定具によってフロアパネル1に固定される。より具体的には、外側シートスライドレール20のフロアパネル1に対する固定位置は、第1クロスメンバ11(のフランジ部11b)とフロアパネル1との接合部位、第2クロスメンバ12(のフランジ部12b)とフロアパネル1との接合部位、および外側シートスライドレール20の後端部位置である(後端部位置ではクロスメンバが存在しないので、フロアパネル1に対してのみ固定される)。
【0025】
図8に示すように、外側シートスライドレール20に対して溶接等により固定された固定用のブラケット22が、ボルト23、ナット24を利用してフロアパネル1に固定される。この固定部位では、固定用ブラケット22とリヤサイドフレーム10のフランジ部10bと第2クロスメンバ12のフランジ部12bとフロアパネル1とが重合された4枚重ねの状態で行われている。なお、このような4枚重ね状態での固定手法は、外側シートスライドレール20の前端部の固定部位についても同様である。なお、図9において、25は位置決めピンである。
【0026】
図9に示すように、内側シートスライドレール30の後端部のフロアパネル1に対する固定部位において、内側シートスライドレール30に溶接等により固定された固定用ブラケット32が、フロアパネル1と第3クロスメンバ13のフランジ部13bとに対して3枚重ねとされた状態で、ボルト33,ナット34を利用して固定されている。図9に示すような3枚重ねの状態での固定は、内側シートスライドレール30の前端部や前後方向中間部の固定部位についても同様である。
【0027】
以上のような構成において、特に、図3,図4から容易に理解されるように、フロアパネル1の後部には、車幅方向外端部寄りに位置される前後方向に伸びる強度部材として、リヤサイドフレーム10の他に、平面視においてリヤサイドフレーム10と重なる外側シートスライドレール20が位置されて、このリヤサイドフレーム10と外側シートスライドレール20とによって前後方向に伸びる強固な補強ユニットが構成される。そして、平面視において、左右一対の上記補強ユニットのうち下方に位置する左右一対のリヤサイドフレーム10同士が第2クロスメンバ12によって連結される一方、上方に位置する左右一対の外側シートスライドレール20同士が連結部材50によって連結されており、しかも左右一対の外側シートスライドレール20は第2クロスメンバ12のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されている。これにより、平面視において、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレーム10と外側シートスライドレール20、車幅方向に伸びる第2クロスメンバ12および連結部材50によって、強固な方形の枠形が構成されることになり、フロアパネル1の後端部付近の強度が飛躍的に向上されることになる。
【0028】
連結部材50の下方には、第3クロスメンバ13も位置されるので、より一層フロアパネル1の後端部の強度が向上される。さらに、左右一対の外側シートスライドレール20の前端部も、第1クロスメンバ11のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されるので、外側シートスライドレール20の前端部付近にまでフロアパネル1の強度向上が図れることになる。
【0029】
さらに、内側シートスライドレール30が、第2クロスメンバ12のフロアパネル1への接合部位でもってフロアパネル1に固定され、また内側シートスライドレール30の後端部が、連結部材50に連結されると共に、第3クロスメンバ13のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して固定されるので、フロアパネル1の後端部の強度がさらにより一層向上されることになる。勿論、内側シートスライドレール30の前端部も、第1クロスメンバ11のフロアパネル1に対する接合部位でもってフロアパネル1に対して接合されるので、シートスライドレール20、30の前端部付近にまで十分に強度を図る上で極めて効果的となっている。
【0030】
図12は、本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付して、その重複した説明は省略する。本実施形態では、
内側シートスライドレール30の後端位置を、収納凹部6の前端位置よりも若干後方位置にまで延長させて、平面視において、内側シートスライドレール30の後端部と収納凹部6の前端部とが重なるようにしてある。そして、内側シートスライドレール30の後端部の下方に、車幅方向に伸びる連結部材50が位置されて(内側シートスライドレール30と連結部材50とはその交差する部分で互いに固定されている)、連結部材50によって内側シートスライドレール30の後端部を支承するようにしてある。これにより、2列目シート3をより十分に後方へ位置させることが可能となり、しかも内側シートスライドレール30の後端部が連結部材50によって支承されるので、内側シートスライドレール30の後端部が片持ち式に収納凹部6内に向けて突出しても、内側シートスライドレール30が2列目シート3からの大きな荷重によって曲げ変形される等のことも確実に防止される。なお、内側シートスライドレール30の後端部(特に後端)を、収納凹部6内に別途設けた支承部材でもって支承することも考えられるが、この場合は、収納凹部6の収納スペースが小さくなってしまう。なお、図12の実施形態では、連結部材50の車幅方向端部が、外側シートスライドレール20の内側面に当接した状態とされているが、外側シートスライドレール20の下方に連結部材50が位置されるような設定であってもよい。
【0031】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。シートは、全体として2列シートとしてもよく(特に全長の小さい車両の場合)、この場合は、外側シートスライドレール20は、最後方シートとしての2列目シート用とされ、外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30が、1列目シート(運転席用および助手席用)用として利用されることになる。シートスライドレール20あるいは30のフロアパネル1に対する固定部位を、クロスメンバ11〜13のフランジ部11b〜13b以外の部分(クロスメンバ本体部分)としてもよい。収納凹部6が存在しないものであってもよく、この場合、連結部材50を、外側シートスライドレール20の後端部同士を連結するようにしてもよく、あるいは図4に示す連結部材50に加えてさらにその後方に別途連結部材を設けるようにしてもよい(外側シートスライドレール20同士を連結する連結部材を複数に設定する)。内側シートスライドレール30が存在しないものであってもよい。連結部材50の前後方向位置は適宜選択できるが、リヤサイドフレーム10の前後方向略中間部同士を連結しているクロスメンバよりも後方に位置させるのが好ましい(フロアパネル1の後端部の補強のため)。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用される車両の一例を示すもので、車両後部の状態を示す簡略側面図。
【図2】図1に示すシートの配列状態を示す斜視図。
【図3】フロアパネルの下面の構造を示す平面図。
【図4】フロアパネルの上面の構造を示す平面図。
【図5】図3のX5−X5線相当断面図。
【図6】図3のX6−X6線相当断面図。
【図7】図4のX7−X7線相当断面図。
【図8】図4のX8−X8線相当断面図。
【図9】図4のX9−X9線相当断面図。
【図10】内側シートスライドレールと連結部材との連結部位の一例を示す要部斜視図。
【図11】内側シートスライドレールと連結部材との連結部位の別の例を示す要部斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態を示すもので、図4に対応した平面図。
【符号の説明】
【0033】
V:車両
1:フロアパネル
2:1列目シート
3:2列目シート(前方シート)
3A:左側分割シート
3B:右側分割シート
4:3列目シート(最後方シート)
6:収納凹部
10:リヤサイドフレーム
11:第1クロスメンバ
11b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
12:第2クロスメンバ
12b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
13:第3クロスメンバ
13b:フランジ部(フロアパネルへの接合用)
20:外側シートスライドレール
22:固定用ブラケット(外側シートスライドレール用)
23:ボルト
24:ナット
30:内側シートスライドレール
32:固定用ブラケット(内側シートスライドレール用)
33:ボルト
34:ナット
41:前アジャスタ(2列目シート用)
42:後アジャスタ(3列目シート用)
43:アジャスタ(2列目シート用)
50:連結部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下面に接合されると共に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームと、車幅方向に伸びると共にフロアパネルの下面において前記左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバと、フロアパネルの上面に固定されると共に前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールと、を備えた車体後部構造であって、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記各リヤサイドフレームと重なるように車幅方向外端部寄りの位置に配設され、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記左右一対の外側シートスライドレール同士が、前記クロスメンバとは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材によって連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
請求項1において、
フロアパネルの上面に、前記左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において、前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記各内側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記各内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記フロアパネルの後部に、前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記左右一対の外側シートスライドレールは、前記収納凹部の左右に位置するように後方に長く形成され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端よりも前方位置で、かつ平面視において前記収納凹部の前端部と重なる位置とされ、
前記連結部材が、前記収納凹部の直前方位置において車幅方向に伸ばして配設されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
シートとして、最後方に位置されると共にシートクッションが車幅方向において一体の構造とされた最後方シートと、前記最後方シートの直前方に位置されると共に左側分割シートと右側分割シートとの分割構成とされた前方シートとを有し、
前記各外側シートスライドレールによって、前記最後方シートがガイドされ、
左側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記左側分割シートがガイドされ、
右側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記右側分割シートがガイドされる、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項5】
請求項2において、
前記クロスメンバは、フロアパネルに対して重なるように配設されるフランジ部を有して、該フランジ部においてフロアパネルに対して接合されており、
前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールはそれぞれ、前記フランジ部の位置においてフロアパネルに固定されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項1】
フロアパネルの下面に接合されると共に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームと、車幅方向に伸びると共にフロアパネルの下面において前記左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバと、フロアパネルの上面に固定されると共に前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールと、を備えた車体後部構造であって、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記各リヤサイドフレームと重なるように車幅方向外端部寄りの位置に配設され、
前記各外側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記左右一対の外側シートスライドレール同士が、前記クロスメンバとは前後方向に離間した位置において、車幅方向に伸びる連結部材によって連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
請求項1において、
フロアパネルの上面に、前記左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において、前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記各内側シートスライドレールは、平面視において前記クロスメンバと重なる位置においてフロアパネルに対して固定され、
前記各内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記フロアパネルの後部に、前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記左右一対の外側シートスライドレールは、前記収納凹部の左右に位置するように後方に長く形成され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端よりも前方位置で、かつ平面視において前記収納凹部の前端部と重なる位置とされ、
前記連結部材が、前記収納凹部の直前方位置において車幅方向に伸ばして配設されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
シートとして、最後方に位置されると共にシートクッションが車幅方向において一体の構造とされた最後方シートと、前記最後方シートの直前方に位置されると共に左側分割シートと右側分割シートとの分割構成とされた前方シートとを有し、
前記各外側シートスライドレールによって、前記最後方シートがガイドされ、
左側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記左側分割シートがガイドされ、
右側に位置される前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールによって、前記右側分割シートがガイドされる、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項5】
請求項2において、
前記クロスメンバは、フロアパネルに対して重なるように配設されるフランジ部を有して、該フランジ部においてフロアパネルに対して接合されており、
前記外側シートスライドレールおよび内側シートスライドレールはそれぞれ、前記フランジ部の位置においてフロアパネルに固定されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−62891(P2008−62891A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245674(P2006−245674)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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