説明

車体後部構造

【課題】後面衝突時における衝撃荷重を、リヤサイドメンバの後部範囲において効率的に吸収でき、乗員への影響が極めて少ない車体後部構造を提供する。
【解決手段】リヤサイドメンバ11の後部に前後方向に延在して取り付けられる取付部42および取付部から下方に延在して形成された突出部43を有する折れ促進部材41と、突出部43と対向する当接部32を備えるトレーラヒッチブラケット31を有するトレーラヒッチ30とを有し、トレーラヒッチブラケット31に後方から衝撃荷重が入力されるとトレーラヒッチブラケット31の当接部32が突出部43に当接して取付部42の前端に対応するリヤサイドメンバ11の第1屈曲誘起部15を屈曲変形させ、更に該第1屈曲誘起部15の屈曲変形に伴って揺動する折れ促進部材41の突出部43の先端43aがリヤサイドメンバ11の第2屈曲誘起部16に当接して該部を屈曲変形して衝撃荷重を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体後部構造、特に、後面衝突時等にリヤサイドメンバを屈曲変形して衝撃荷重を吸収する車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体幅方向両側に沿って前後方向に延在する一対のリヤサイドメンバを有する車体後部構造では、車両が後面衝突を受けた際に、リヤサイドメンバの屈曲変形をコントロールすることによって衝撃荷重を吸収する技術が知られている。
【0003】
特許文献1として、車体後方から衝撃荷重が入力されたときに、リヤサイドメンバを複数箇所で屈曲変形させて衝撃荷重を吸収する車体後部構造が提案されている。この特許文献1で開示される車体後部構造の概要を、図8に基づいて説明する。
【0004】
図8は、燃料タンクが配置されたリヤサイドメンバが後面衝突を受けた場合の屈曲変形状態を示す側面図である。図示のように、リヤサイドメンバ100は、前後方向に延在するフロント部101と、フロント部101の後端から第1屈曲部102を介して上方に傾斜して延在する傾斜部103と、傾斜部103の後端から第2屈曲部104を介して後方向に延在する水平部105が連続形成されている。そして、水平部105の後部下面には燃料タンク106が取り付けられている。リヤサイドメンバ100における燃料タンク106の後端部106bと後端部110との間にガイド部109が設けられ、後端部110には、バンパステー111を介してバンパ112が取り付けられている。このバンパ112は、リヤサイドメンバ100の軸心から下方にオフセットして取り付けられている。
【0005】
リヤサイドメンバ100は、その全域に亘って上方が開放された断面コ字状で形成されている。また、リヤサイドメンバ100は、断面形状の変化等によって第1屈曲部102、第2屈曲部104、燃料タンク106の前端部106a及び後端部106bに対応する部分107及び108に剛性が不連続となる変化部分が生じる。
【0006】
これによりリヤサイドメンバ100の断面形状の変化による剛性の連続する範囲は、フロント部101の前端部101aから第1屈曲部102の範囲、第1屈曲部102から第2屈曲部104の範囲、第2屈曲部104から部分107の範囲、該部分107から位置108の範囲、部分108からリヤサイドメンバ100の後端部110の範囲となる。
【0007】
この構造によると、車体の後方からバンパ111に衝撃荷重が入力されると、バンパ112が、リヤサイドメンバ100の軸心に対して下方にオフセットして設置されているので、衝撃荷重はリヤサイドメンバ100の後端部110を下側へ押し下げて回転させるように作用する。従って、リヤサイドメンバ100は後端部110から最初に剛性が変化する部分108で屈曲変形し、次に剛性が変化する部分107で屈曲変形する。この部分108、107が屈曲変形すると水平部105の前部105aが上方に持ち上げられ、それに伴って第1屈曲部102で屈曲変形する。
【0008】
【特許文献1】特開平8−175421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載されたリヤサイドメンバ構造は、後端部からリヤサイドメンバのフロント部の広範囲に亘って複数箇所で屈曲変形することとなり、衝撃荷重の入力によって屈曲変形する範囲が大きくなり、リヤサイドメンバの上方に配置される車室内の乗員に影響を及ぼすことが懸念される。また、同様にリヤサイドメンバ間に配置された燃料タンクに影響を及ぼすことが懸念される。
【0010】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、後面衝突時における衝撃荷重を、リヤサイドメンバの後部範囲において効率的に吸収でき、乗員や燃料タンクへの影響が極めて少ない車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する請求項1に記載の発明による車体後部構造は、車体の車幅方向両側部に沿って前後方向に延在する一対のリヤサイドメンバを備えた車体後部構造において、前記リヤサイドメンバの後部に前後方向に延在して取り付けられる取付部および該取付部から下方に延在して形成された突出部を有する折れ促進部材と、前記突出部と対向する当接部を備えると共に後端部が前記リヤサイドメンバの後端より後方に突出する衝撃荷重伝達部材とを有し、該衝撃荷重伝達部材に後方から衝撃荷重が入力されると前記当接部が前記突出部に当接して前記取付部の前端に対応する前記リヤサイドメンバの第1屈曲誘起部が屈曲変形し、更に該第1屈曲誘起部の屈曲変形に伴って揺動する前記折れ促進部材の前記突出部の先端が前記第1屈曲誘起部より前方の前記リヤサイドメンバの第2屈曲誘起部に当接して該部を屈曲変形することを特徴とする。
【0012】
この発明によると、リヤサイドメンバにおける折れ促進部材の取付部前端に対応する第1屈曲誘起部の屈曲変形により衝突荷重を吸収し、第1屈曲誘起部の屈曲変形による衝撃吸収が吸収できない大きな衝撃荷重が作用したときは、更に折れ促進部材の突出部先端が当接する第2屈曲誘起部を屈曲変形することによって衝撃荷重を吸収する。特に、後面衝突時における衝突荷重をリヤサイドメンバの後部における第1屈曲誘起部及び第2屈曲誘起部の屈曲変形による極めて短いストロークで効率的に吸収することができるので、車室内の乗員に影響を及ぼすことがなく、安全性の向上を図ることができる。また、折れ促進部材の取り付けにより剛性が不連続となる第1屈曲誘起部が形成され、かつ突出部先端の当接により第2屈曲誘起部を屈曲変形させるので、安定したリヤサイドメンバの屈曲変形を得ることができる。更に、折れ促進部材を取り付けるだけの簡単な構成であり、構成部材が少なく、車両の軽量化を図りつつ製造コストを抑えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明による車体後部構造は、請求項1に記載の車体後部構造において、前記リヤサイドメンバは、底面部と両側面部を備えた前後方向に延在する断面形状を有し、前記折れ促進部材は、前記リヤサイドメンバの両側面部にそれぞれ前後方向に延在して取り付けられる側部取付部及び該側部取付部の後端から下方に延在する側部突出部を有する一対の側部折れ促進部材と、前記リヤサイドメンバの底面部に前後方向に延在して取り付けられる下部取付部及び該下部取付部の後端から下方に延在すると共に前記両側部突出部に結合される下部突出部を有する下部折れ促進部材とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明によると、両側部折れ促進部材の側部取付部の取り付けによりリヤサイドメンバの各側面部に剛性の不連続部分が形成され、下部折れ促進部材の下部取付部の取り付けによりリヤサイドメンバの底面部に剛性の不連続部分が形成されてリヤサイドメンバの両側面部及び底面部に連続する剛性の不連続となる第1屈曲誘起部が形成される。従って、第1屈曲誘起部の屈曲変形に偏りがなくなり、車体後方から入力された衝撃荷重を効率的に吸収することができる。これにより、請求項1に係る発明の目的を効果的に達成できる。
【0015】
請求項3に記載の発明による車体後部構造は、請求項1または2に記載の車体後部構造において、前記衝撃荷重伝達部材は、前記各リヤサイドメンバの後端にそれぞれ取り付けられると共に前記突出部と対向配置された一対のトレーラヒッチブラケットと、該トレーラヒッチブラケット間に架設されたクロスメンバと、
該クロスメンバの車幅方向中央部から後方に突出して取り付け支持されたヒッチボールとを備えたトレーラヒッチであることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、衝撃荷重伝達部材がトレーラヒッチにより構成され、後面衝突時における衝撃荷重を受けた際に、リヤサイドメンバ後端に取り付けられたトレーラヒッチブラケットの間に車幅方向に延在して取り付けられるクロスメンバの車幅方向中央部に設けられたヒッチボールに衝撃が入力されると、トレーラヒッチブラケットが揺動して折れ促進部材の突出部に当接して衝撃荷重を折れ促進部材に衝撃荷重を伝達する。
【0017】
請求項4に記載の発明による車体後部構造は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造において、前記リヤサイドメンバは、該リヤサイドメンバにおける第1屈曲誘起部および第2屈曲誘起部に、車幅方向に延在するビードを形成したことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、衝撃荷重によってリヤサイドメンバにおける第1屈曲誘起部および第2屈曲誘起部で屈曲変形が生じると、当該部位にビードが形成されているので、リヤサイドメンバの屈曲変形を確実にし、効率的に衝撃荷重が吸収できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、後面衝突時における衝撃荷重をリヤサイドメンバの後部における極めて小さい範囲での屈曲変形により効率的に吸収することができるので、車室内の乗員や燃料タンクに影響を及ぼすことなく、安全性の向上を図ることができる。また、折れ促進部材の取り付けにより剛性が不連続となる第1屈曲誘起部が形成され、かつ突出部先端の当接により第2屈曲誘起部を屈曲変形させるので、安定したリヤサイドメンバの屈曲変形を得ることができる。更に、折れ促進部材を取り付けるだけの簡単な構成であるので、車両の軽量化を図りつつ製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明による車体後部構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1は、車体後部の概要を示す斜視図であり、図2は側面図、図3はリヤサイメンバの後部及び折れ促進部材並びに及びトレーラヒッチブラケットの概要を示す斜視図である。図示のように車体後部10は、車体の車幅方向両側部に沿って左右一対のリヤサイドメンバ11がそれぞれ車体前後方向に延在している。
【0022】
各リヤサイドメンバ11は、側面部11A及び11Bと、底面部11Cを備えた上方が開放された断面コ字状で前後方向に延在している。側面部11A及び11Bの上端縁に沿ってそれぞれフランジ12が折曲形成されている。このフランジ12によってフロアパネル(図示しない)の下面に結合される。
【0023】
この一対のリヤサイドメンバ11の後端部13には、後述する衝撃荷重伝達部材となるトレーラヒッチ30を構成するトレーラヒッチブラケット31を介在して一対のバンパステー21が取り付けられており、両バンパステー21間に車幅方向に延在する断面矩形のバンパビーム22が架設される。このバンパビーム22を介してバンパ23が車幅方向に延在して取り付けられている。
【0024】
左右のリヤサイドメンバ11の前方部に車幅方向に延在するクロスメンバ25及びリヤサスペンションを支持するリヤサスペンション支持サブフレーム26が架設されている。また、クロスメンバ25の前方において左右のサイドメンバ11間に図示しない燃料タンクが配設される。
【0025】
トレーラヒッチ30は、図1及び図2に示すように左右のリヤサイドメンバ11の後端部13とバンパステー21との間に介在するトレーラヒッチブラケット31と、左右のトレーラヒッチブラケット31間に架設されるクロスメンバ35と、クロスメンバ35の車幅方向中央部から後方に突出して取り付けられるヒッチボール39を備える。
【0026】
トレーラヒッチブラケット31は、図3に示すようにリヤサイドメンバ11の側面部11A、11B及び底面部11Cの後端に折曲形成された図示しないフランジに接合されると共に下方に突出する当接部32と、当接部32の両側縁から後方に折曲形成された側部33A、33Bと、当接部32の下縁及び各側部33A、33Bの下縁間を連結する矩形平板状の底部33Cが一体形成され、上方及び後方が開放された剛性に優れたボックス状に形成される。
【0027】
更に、図1及び図2に示すように左右のトレーラヒッチブラケット31の底部33C間に車幅方向に延在する矩形断面形状のクロスメンバ35が架設される。クロスメンバ35の車幅方向中央部から下方にヒッチボール支持アーム36が突設し、ヒッチ支持アーム36の下端間に配設されたヒッチ支持筒37に、ヒッチボール39を支持する支持軸38が挿入して取り付けられる。なお、ヒッチ支持筒37と支持軸38は係止ピン等によって固定される。
【0028】
一方、リヤサイドメンバ11の後部に前後方向に延在する取付部42及び取付部42から下方に延在してトレーラヒッチブラケット31の当接部32と対向する突出部43を有する折れ促進部材41が取り付けられる。
【0029】
折れ促進部材41は、図3に分解斜視図を示すように一対の側部折れ促進部材41A、41B及び下部折れ促進部材41Cによって構成される。
【0030】
側部折れ促進部材41Aは、リヤサイドメンバ11の側面11Aの後部に前後方向に延在して結合される板状の側部取付部42A及びこの側部取付部42Aの後端から下方に延在する側部突出部43Aを有する側面視略L字状に形成され、側部突出部43Aには上下方向に連続して折曲形成されたフランジ43Aaを備える。同様に側部折れ促進部材41Bは、リヤサイドメンバ11の側面11Bの後部に前後方向に延在して結合される板状の側部取付部42B及び側面取付部42Bの後端から下方に延在する側部突出部43Bを有する側面視略L字状に形成され、側部突出部43Bには上下方向に連続して折曲形成されたフランジ43Baを備える。これら側部折れ促進部材41A、41Bの側部取付部42A、42Bにはリヤサイドメンバ11の側面11A、11Bにそれぞれ穿設された取付孔11Aa、11Baに対応して取付孔42Aa、42Baが穿設される。
【0031】
下部折れ促進部材41Cは、リヤサイドメンバ11の底面部11Cの後部に前後方向に延在して結合される下部取付部42C及び下部取付部42Cの後端から下方に折曲して延在する略矩形板の下部突出部43Cを有し、下部突出部43Cの両側に上下方向に連続して前方に折曲形成されたフランジ43Ca、43Cbを有する。この下部折れ促進部材41Cの下部取付部42Cには、リヤサイドメンバ11の底面部11Cに穿設された図示しない取付孔に対応して取付孔42Caが穿設される。
【0032】
このように構成された下部折れ促進部材41Cの下部突出部43Cに形成されたフランジ43Caと側部折れ促進部材41Aの側面突出部43Aを重合して結合すると共に、下部折れ促進部材41Cの下部突出部43Cに形成されたフランジ43Cbと側部折れ促進部材41Bの側部突出部43Bを重合して結合して左右の側部折れ促進部材41A、41B及び下部折れ促進部材41Cを一体化する。これにより側部取付部42A、42B、下部取付部42Cによりリヤサイドメンバ11に結合する取付部42が形成され、かつ互いに結合された側部突出部43A、43B及び下部突出部43Cによって突出部43が形成された折れ促進部材41が構成される。
【0033】
これら側部折れ促進部材41A、41B及び下部折れ促進部材41Cは比較的簡単な形状であり、加工性が良好で容易に製造でき、これらを互いに結合することで容易に折れ促進部材41が形成でき、優れた生産性が確保できる。
【0034】
この折れ促進部材41は、側部取付部42A、42Bをリヤサイドメンバ11の側面11A、11Bに重合し、下部取付部42Cを底面部11Cに重合してリヤサイドメンバ11に嵌合して位置決めされる。この互いに重合する側部取付部42Aとリヤサイドメンバ11の側面11Aが取付孔42Aa、11Aaに挿入される取付ボルト等により結合され、側部取付部42Bと側面11Bが取付孔42Ba、11Baに挿入される取付ボルト等により結合され、下部取付部42Cと底面部11Cが底面部11Cに穿設された取付孔及び42Caに挿入される取付ボルト等により結合される。
【0035】
このリヤサイドメンバ11に取り付けられた折れ促進部材41の突出部43はトレーラヒッチブラケット31の当接部42と若干の隙間を介して対向配置される。
【0036】
一方、折れ促進部材41が取り付けられたリヤサイドメンバ11は、その側面部11A、11B、底面部11Cが折れ促進部材41の側部取付部42A、42B及び下部取付部42Cの取り付けにより該部の剛性が増大し、側部取付部42A、42B及び下部取付部42Cの前端縁に沿って剛性の不連続部分が形成される。この剛性の不連続部分が後述する衝撃荷重によって屈曲付与される第1屈曲誘起部15となる。この第1屈曲誘起部15に対応して各フランジ12に車幅方向に連続するビード15aが形成される。
【0037】
更に、第1屈誘起曲部15より前方で後述する第1屈曲誘起部15の屈曲に伴って揺動する折れ促進部材41の突出部43の先端43aが当接するリヤサイドメンバ11の部位が第2屈曲部16となり、第2屈曲誘起部16に対応して底面部11Cの下面に車幅方向に延在する溝状のビード16aが形成される。
【0038】
次に、以上のように構成された車体後部10に追突等の後面衝突等により衝撃荷重が作用したときの車体後部10による衝撃吸収作用について図2及び図4乃至図6に示す作用説明図を参照して説明する。
【0039】
図2は車体後部10の通常状態を示す。この通常状態において、衝突物、例えば後方から走行する車両による追突等の後面衝突等が発生した場合には、車体後部10に取り付けられたトレーラヒッチ30のクロスメンバ35の車幅方向中央部からヒッチボール支持アーム36を介して垂下されかつ支持軸38によって後方に突出するように配置されたヒッチボール39に車両が衝突する。
【0040】
この衝突によってヒッチボール39に後方から衝撃荷重Pが入力され、その衝撃荷重の入力によって図4に示すようにヒッチボール39が前方に押動されてヒッチボール支持アーム36が前方に揺動する。この揺動するヒッチボール支持アーム36によってクロスメンバ35を介してトレーラヒッチブラケット31の底部33Cが前方に押動されてトレーラヒッチブラケット31が前方に揺動し、トレーラヒッチブラケット31の当接面32がリヤサイドメンバ11から下方に延在する折れ促進部材41の側部突出部43A、43B及び下部突出部43Cによって形成され突出部43に当接する。
【0041】
また、同様に追突する車両がヒッチボール39から車幅方向に偏倚したオフセット衝突の際には、車両がヒッチボール39に当接することなくリヤサイドメンバ12の後端13から後方に突出するトレーラヒッチブラケット31の下部後端、例えば底部33Cの後端33Ca或いはクロスメンバ35の端部近傍に衝突する。この衝突によってトレーラヒッチブラケット31が前方に揺動し、トレーラヒッチブラケット31の当接面32がリヤサイドメンバ11から下方に延在する折れ促進部材41の突出部42に当接する。
【0042】
これら衝突により衝撃荷重によってトレーラヒッチブラケット31が揺動して当接面32が突出部42に当接して突出部42を押動する。突出部42への押動付与に伴って突出部42に入力された衝撃荷重が取付部42を介して取付部42が結合されたリヤサイドフレーム11、より具体的には側部取付部42A、42B及び下部取付部43Cがそれぞれ結合された側面部11A、11B、底面部11Cに荷重伝達され、側部取付部42A、42B及び下部取付部42Cの前端縁に沿って剛性の不連続部分によって形成された第1屈曲誘起部15がリヤサイドメンバ11の後端部13側が下方に押し下げられるように屈曲変形する。この第1屈曲部15の屈曲変形によってリヤサイドメンバ11に入力された衝撃荷重を効率的に吸収して衝撃を緩和する。この第1屈曲誘起部15の屈曲変形にあたり、両側部折れ促進部材41A、41Bの側部取付部42A、42Bの取り付けによりリヤサイドメンバ11の各側面部11A、11Bに形成される剛性の不連続部分及び下部折れ促進部材41Cの下部取付部42Cの取り付けによりリヤサイドメンバ11の底面部11Cに形成される剛性の不連続部分が連続し、かつ第1屈曲誘起部15の屈曲変形に偏りがなくなり、第1屈曲誘導部15に対応して各フランジ12にビード15aが形成されることから第1屈曲誘起部15において確実に屈曲変形し、効率的に衝撃荷重が吸収できる。
【0043】
更に、トレーラヒッチブラケット31に入力される衝撃荷重が大きく、リヤサイドメンバ11の第1屈曲誘起部15の屈曲変形によって衝撃荷重が十分に吸収できないときには、トレーラヒッチブラケット31が相対的に前方移動する車両によって更に前方に押しやられ、第1屈曲誘起部15の屈曲変形と共に折れ促進部材41の突出部43が前方に揺動して図5に示すように突出部43の先端43aがリヤサイドメンバ11の第2屈曲誘起部16における底面部11Cに形成されたビード16aに当接し、トレーラヒッチブラケット31から入力される衝撃荷重により第2屈曲誘起部16を押し上げ、屈曲変形させる。この第2屈曲誘起部16の屈曲変形によって衝撃荷重を効率的に吸収して衝撃を緩和する。この第2屈曲誘起部16の屈曲変形にあたり、第2屈曲誘起部16に対応して底面部11Cに形成されたビード16aに突出部43の先端43aが係止され、突出部43から確実に第2屈曲誘導部16に荷重が伝達され、確実に第1屈曲誘起部15において屈曲変形する。
【0044】
なお、トレーラヒッチブラケット31に入力される衝撃荷重が更に大きく、リヤサイドメンバ11の第1屈曲誘起部15及び第2屈曲誘起部16の屈曲変形においても衝撃荷重が十分に吸収できないときには、図6に示すようにトレーラヒッチブラケット31の底部33Cに架設されたクロスメンバ35がリヤサイドメンバ11の底面部11cに当接し、リヤサイドメンバ11によってクロスメンバ35を受けることによってトレーラヒッチブラケット31を介してリヤサイドメンバ11の後部の変形を阻止し、車室内への影響を抑制する。
【0045】
従って、上記のように構成された本実施の形態によると、後面衝突等、後方から衝撃荷重が入力された際には、リヤサイドメンバ11の後部範囲の第1屈曲誘起部15の屈曲変形により衝撃荷重を吸収し、かつ大きな衝撃荷重で第1屈曲誘起部15の屈曲変形により十分に衝撃荷重が吸収できないときには、更に第2屈曲誘起部16の屈曲変形により効率的に衝撃荷重を吸収することから、衝撃荷重をリヤサイドメンバ11の後部の極めて短いストロークで効率的に衝撃荷重が吸収され、車室内への影響が極めて少なく、乗員の安全性が確保できる。また、同様にリヤサイドメンバ11間に配置された燃料タンクが保護され、燃料の漏れ出し等が防止され、安全性が向上する。
【0046】
また、リヤサイドメンバ11に折れ促進部材41を取り付ける簡単な構成で構成部材の増加を伴うことなく屈曲変形で衝撃荷重を吸収する第1屈曲誘導部15及び第2屈曲誘導部16が設定されて車両の軽量化を図りつつ効率的に衝撃荷重の吸収が可能になり、更に製造コストを抑制することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では側面部11A11B及び底面部11Cを備えた断面コ字状のリヤサイドメンバ11を備えた車体後部構造を例に説明したが断面矩形のリヤサイドメンバを備えた車体後部構造に適用することができる。また、上記実施の形態では側部折れ促進部材41A、41B及び下部折れ促進部材41Cにより折れ促進部材41を形成したが、これら側部折れ促進部材41A、41B及び下部折れ促進部材41Cを一体形成することも可能であり、また、図7(a)で示すように一方の側部折れ促進部材41A或いは41Bと下部折れ促進部材41Cにより折れ促進部材41を構成することも、また図7(b)に示すように下部折れ促進部材41Cのみにより折れ促進部材41を形成することもできる。
【0048】
また、仕様等によりリヤサイドフレーム11の底面部11Cから突出する突出部43の先端43aの長さを変更することで第2屈曲部16の位置を変更調節することができる。
【0049】
また、上記実施の形態では衝撃荷重伝達部材としてトレーラヒッチ30により構成した例について説明したが、リヤサイドメンバ11の後端より後端が後方に突出し、後面衝突の際折れ促進部材41の突出部43を押動する部材、例えばサブバンパ等他の部材により構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車体後部構造の概要を示す斜視図である。
【図2】同じく、車体後部構造の概要を示す側面図である。
【図3】同じく、リヤサイメンバの後部及び折れ促進部材並びに及びトレーラヒッチブラケットの概要を示す斜視図である。
【図4】車体後部による衝撃吸収作用の概要を示す作用説明図である。
【図5】車体後部による衝撃吸収作用の概要を示す作用説明図である。
【図6】車体後部による衝撃吸収作用の概要を示す作用説明図である。
【図7】折れ促進部材の他の例を示す図である。
【図8】従来の車体後部構造の概略を示す側面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 車体後部
11 リヤサイドメンバ
11A、11B 側面部
11C 底面部
12 フランジ
15 第1屈曲誘起部
15a ビード
16 第2屈曲誘起部
16a ビード
30 トレーラヒッチ(衝撃荷重伝達部材)
31 トレーラヒッチブラケット
32 当接部
35 クロスメンバ
39 ヒッチボール
41 折れ促進部材
42 取付部
43 突出部
41A 側部折れ促進部材
42A 側部取付部
43A 側部突出部
41B 側部折れ促進部材
42B 側部取付部
43B 側部突出部
41C 下部折れ促進部材
42C 下部取付部
43C 下部突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両側部に沿って前後方向に延在する一対のリヤサイドメンバを備えた車体後部構造において、
前記リヤサイドメンバの後部に前後方向に延在して取り付けられる取付部および該取付部から下方に延在して形成された突出部を有する折れ促進部材と、
前記突出部と対向する当接部を備えると共に後端部が前記リヤサイドメンバの後端より後方に突出する衝撃荷重伝達部材と、を有し、
該衝撃荷重伝達部材に後方から衝撃荷重が入力されると前記当接部が前記突出部に当接して前記取付部の前端に対応する前記リヤサイドメンバの第1屈曲誘起部が屈曲変形し、更に該第1屈曲誘起部の屈曲変形に伴って揺動する前記折れ促進部材の前記突出部の先端が前記第1屈曲誘起部より前方の前記リヤサイドメンバの第2屈曲誘起部に当接して該部を屈曲変形することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤサイドメンバは、
底面部と両側面部を備えた前後方向に延在する断面形状を有し、
前記折れ促進部材は、
前記リヤサイドメンバの両側面部にそれぞれ前後方向に延在する側部取付部及び該側部取付部の後端から下方に延在して形成された側部突出部を有する一対の側部折れ促進部材と、
前記リヤサイドメンバの底面部に前後方向に延在して取り付けられる下部取付部及び該下部取付部の後端から下方に延在すると共に前記両側部突出部に結合される下部突出部を有する下部折れ促進部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記衝撃荷重伝達部材は、
前記各リヤサイドメンバの後端にそれぞれ取り付けられると共に前記突出部と対向配置された一対のトレーラヒッチブラケットと、
該トレーラヒッチブラケット間に架設されたクロスメンバと、
該クロスメンバの車幅方向中央部から後方に突出して取り付け支持されたヒッチボールとを備えたトレーラヒッチであることを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤサイドメンバは、
該リヤサイドメンバにおける前記第1屈曲誘起部および第2屈曲誘起部に、車幅方向に延在するビードを形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−262660(P2009−262660A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112249(P2008−112249)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】