説明

車体後部構造

【課題】ダンパーハウジングに入力される上下の力をルーフサイドレールに効率よく伝達し、ダンパーハウジングから車両後方のリヤサイドフレームの上下振動を抑えた車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部構造11は、リヤピラー55を中空とし、リヤピラー55の後端61をダンパーハウジング53の上部62に結合し、センターピラー46、47からダンパーハウジング53の上部62まで中空のクォーターロアメンバー56を延ばして後端63を結合している。リヤピラー55の後端61から車両12後方へ延びるリヤアッパーメンバー57が、リヤサイドフレーム33、36の後端38に設けられたエンドクロスメンバー41に、中空を保持して結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクルームにリヤサスペンション装置用のダンパーハウジングを設けている車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造には、車室の後部に補強部材を設けているものがあり、例えば、乗客室とトランクルームの間に給油管を配管し、且つ、補強用の支柱部材を立て、支柱部材の上部に結合部材を介してルーフの左右のルーフサイドレールをそれぞれ結合し、さらに、結合部材間に左右に延ばした横ビームを結合することで、後突時の荷重配分を行い、給油管の損傷を防止しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)では、トランクルームにリヤサスペンション装置のダンパーを支持するダンパーハウジングが設けられ、アルミニウム合金を採用した場合に、ダンパーからの力が効率よく分散されるようにすることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1361140号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ダンパーハウジングに入力される上下の力をルーフサイドレールに効率よく伝達し、ダンパーハウジングから車両後方のリヤサイドフレームの上下振動を抑えた車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、乗降口の上部をなすルーフサイドレールに連続してリヤボデーへ延びるリヤピラーと、リヤボデーのトランクルームの床の左右に位置して車両の後部まで延びるリヤサイドフレームと、乗降口の後部をなすセンターピラーと、トランクルーム内に設けたリヤサスペンション装置用のダンパーハウジングと、を備えた車体後部構造において、リヤピラーを中空とし、その後端をダンパーハウジングの上部に結合し、リヤピラーの下方にセンターピラーからダンパーハウジングの上部まで中空のクォーターロアメンバーを延ばして後端を結合していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、リヤピラーの後端から車両後方へ延びるリヤアッパーメンバーが、中空に形成されて、前端をダンパーハウジングの上部に結合し、後端をリヤサイドフレームの後端に設けられて車幅方向へ延びるエンドクロスメンバーに、中空を保持して結合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、乗降口の上部をなすルーフサイドレールに連続してリヤボデーへ延びるリヤピラーを中空とし、その後端をダンパーハウジングの上部に結合し、リヤピラーの下方にセンターピラーからダンパーハウジングの上部まで中空のクォーターロアメンバーを延ばして後端を結合しているので、リヤサスペンション装置のダンパーからダンパーハウジングに入力される上下の力をルーフサイドレールに効率よく伝達することができる。
つまり、ダンパーハウジングに発生する応力を効率よく小さくすることができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、リヤピラーの後端から車両後方へ延びるリヤアッパーメンバーが、中空に形成されて、前端をダンパーハウジングの上部に結合し、後端をリヤサイドフレームの後端に設けられて車幅方向へ延びるエンドクロスメンバーに、中空を保持して結合しているので、ダンパーハウジングから車両後方のリヤサイドフレームの上下振動を抑えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る車体後部構造の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る車体後部構造の側面図である。
【図3】実施例1に係る車体後部構造の力を分散する機構を説明する第1図である。
【図4】実施例1に係る車体後部構造の力を分散する機構を説明する第2図である。
【図5】本発明の実施例2に係る車体後部構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2で詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る車体後部構造11は、図1、2に示すように、車両12に採用され、リヤサスペンション装置13から入力される力に対し、アルミニウム合金を用いた車体14の後部15の強度を確保している。以降で具体的に説明していく。
【0013】
車両12は、乗降口18と、車室21と、車室21の後側に設けられたクォーターウィンドウ22と、後部のトランクルーム23と、リヤサスペンション装置13と、車体14と、を有する。
車体14は、アンダボデー25と、サイドボデー26と、ルーフ27と、リヤボデー31と、を備える。
アンダボデー25は、左のサイドシル32と、左のサイドシル32に連なる左のリヤサイドフレーム33と、右のサイドシル35と、右のサイドシル35に連なる右のリヤサイドフレーム36と、リヤサイドフレーム33、36の後端38の上部に取付けたエンドクロスメンバー41と、リヤフロアパネル42と、を備える。
【0014】
ルーフ27は、左端に配置されて車両12前後(X軸方向)に延びる左のルーフサイドレール44と、右端に配置されて車両12前後に延びる右のルーフサイドレール45と、を備える。
サイドボデー26は、左のサイドシル32に立てた左のセンターピラー46と、右のサイドシル35に立てた右のセンターピラー47と、を備え、左のセンターピラー46の上部を左のルーフサイドレール44の後端48に接合し、右のセンターピラー47の上部を右のルーフサイドレール45の後端51に接合している。なお、サイドボデー26は左右がほぼ対称である。
【0015】
リヤボデー31は、左のリヤサイドフレーム33に立てたダンパーハウジング53と、ダンパーハウジング53に連なり、且つ、リヤフロアパネル42に連なるリヤインナパネル54と、左のセンターピラー46の上部に連なりクォーターウィンドウ22の上枠をなしているリヤピラー55と、センターピラー46の中央に連なりクォーターウィンドウ22の下枠をなしているクォーターロアメンバー56と、クォーターロアメンバー56に連続しているリヤアッパーメンバー57と、クォーターロアメンバー56からリヤアッパーメンバー57まで延びてそれら56、57に重なり接合している補強ビーム58と、を備え、左右がほぼ対称である。
【0016】
次に、車体後部構造11を主体に図1、図2で説明する。
車体後部構造11は、乗降口18の上部をなすルーフサイドレール44、45に連続してリヤボデー31へ延びるリヤピラー55と、リヤボデー31のトランクルーム23の床の左右に位置して車両12の後部まで延びるリヤサイドフレーム33、36と、乗降口18の後部をなすセンターピラー46、47と、トランクルーム23内に設けたリヤサスペンション装置13用のダンパーハウジング53と、を備え、リヤピラー55を中空とし、リヤピラー55の後端61をダンパーハウジング53の上部62に結合し、リヤピラー55の下方にセンターピラー46、47からダンパーハウジング53の上部62まで中空のクォーターロアメンバー56を延ばしてクォーターロアメンバー56の後端63をダンパーハウジング53の上部62に結合している。
【0017】
リヤピラー55の後端61から車両12後方へ延びるリヤアッパーメンバー57が、中空に形成されて、前端65をダンパーハウジング53の上部62に結合し、(リヤアッパーメンバー57の)後端66をリヤサイドフレーム33、36の後端38に設けられて車幅方向(Y軸方向)へ延びるエンドクロスメンバー41に、中空を保持して結合している。
【0018】
車体後部構造11は、既に説明したように、トランクルーム23内に配置されたダンパーハウジング53は、強度を高めるために3本の中空フレーム(リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57)に結合され、3本の中空フレーム(リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57)同士もアーク溶接(すみ肉溶接)により直接結合している。そして、クォーターウィンドウ22の上部を通るリヤピラー55及びクォーターウィンドウ22の下部を通るクォーターロアメンバー56は、各前端67をセンターピラー46、47にそれぞれ結合し、各後端61、63をダンパーハウジング53の上部62に結合し、トラス状のフレーム構造を形成し、左右がほぼ対称である。
【0019】
ルーフサイドレール44、45は、アルミニウム合金を閉断面に押し出した押出し材を採用している。
リヤピラー55は、アルミニウム合金を閉断面に押し出した押出し材を採用している。
リヤサイドフレーム33、36は、アルミニウム合金を閉断面に押し出した押出し材を採用している。
クォーターロアメンバー56は、アルミニウム合金を閉断面に押し出した押出し材を採用している。
なお、ここでは「閉断面」は「中空」と同じものである。
【0020】
ダンパーハウジング53は、アルミニウム合金を鋳造したもので、上部62はリヤサスペンション装置13のダンパー68を締結する締結天部71が形成され、締結天部71に結合ラグ72が立設され、結合ラグ72にリヤピラー55の後端61、クォーターロアメンバー56の後端63、リヤアッパーメンバー57の前端65が接合されている。
【0021】
次に、本発明の実施例1に係る車体後部構造11の作用を主に図3、図4で説明する。
車体後部構造11では、リヤサスペンション装置13からの力をダンパーハウジング53の上部62からリヤピラー55に矢印a1のように伝え、リヤピラー55からルーフサイドレール44、45に伝える。
一方、リヤサスペンション装置13からの力をクォーターロアメンバー56に矢印a2のように伝え、クォーターロアメンバー56からセンターピラー46、47に矢印a3のように伝え、センターピラー46、47からルーフサイドレール44、45に伝える。従って、リヤサスペンション装置13のダンパー68から矢印a4のように入力される力を効率よくルーフサイドレール44、45に伝達することができる。
【0022】
車体後部構造11では、リヤサイドフレーム33、36の後端38に設けられて車幅方向へ延びるエンドクロスメンバー41に上下に振動させる力が生じると、力がリヤアッパーメンバー57に伝わり、リヤアッパーメンバー57はリヤピラー55及びクォーターロアメンバー56に力を分散する。従って、エンドクロスメンバー41の上下方向に対する強度を高めることができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係る車体後部構造11Bを図5で説明する。上記図1〜図4に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0024】
実施例2に係る車体後部構造11Bは、リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57を一体的に接合する補強部材(ガセット)81を備えていることを特徴とする。
補強部材(ガセット)81は、側面視(図5の矢印b1の視点)で、略三角形に形成され、ダンパーハウジング53の上部62に近接して配置され、リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57のそれぞれの端(後端61、後端63、前端65)を一体的に接合している。
【0025】
本発明の実施例2に係る車体後部構造11Bは、実施例1に係る車体後部構造11と同様の作用・効果を発揮する。
加えて、実施例2に係る車体後部構造11Bは、設計の条件、例えば、車体14のデザイン、客室(車室21)空間の大きさ、トランクルーム23の容量(ゴルフバッグなどバッグの収納性)などの条件で、中空フレーム(リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57)の断面サイズが十分に確保できない場合、車体14のデザインなど必要な設計条件を損なうことなく、ダンパー68からダンパーハウジング53に入力される力に対する強度を確保することができる。
【0026】
さらに、実施例2に係る車体後部構造11Bは、補強部材(ガセット)81を採用したことで、ダンパーハウジング53に入力された力を、補強部材(ガセット)81から3本の中空フレーム(リヤピラー55、クォーターロアメンバー56、リヤアッパーメンバー57)にほぼ均等に分散させることができ、より効率よく伝達することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の車体後部構造は、車体の後部に好適である。
【符号の説明】
【0028】
11…車体後部構造、12…車両、13…リヤサスペンション装置、18…乗降口、23…トランクルーム、31…リヤボデー、33…左のリヤサイドフレーム、36…右のリヤサイドフレーム、38…リヤサイドフレームの後端、41…エンドクロスメンバー、44…左のルーフサイドレール、45…右のルーフサイドレール、46…左のセンターピラー、47…右のセンターピラー、53…ダンパーハウジング、55…リヤピラー、56…クォーターロアメンバー、57…リヤアッパーメンバー、61…リヤピラーの後端、62…ダンパーハウジングの上部、63…クォーターロアメンバーの後端、65…リヤアッパーメンバーの前端、66…リヤアッパーメンバーの後端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口の上部をなすルーフサイドレールに連続してリヤボデーへ延びるリヤピラーと、前記リヤボデーのトランクルームの床の左右に位置して車両の後部まで延びるリヤサイドフレームと、前記乗降口の後部をなすセンターピラーと、前記トランクルーム内に設けたリヤサスペンション装置用のダンパーハウジングと、を備えた車体後部構造において、
前記リヤピラーを中空とし、その後端を前記ダンパーハウジングの上部に結合し、前記リヤピラーの下方に前記センターピラーから前記ダンパーハウジングの上部まで中空のクォーターロアメンバーを延ばして後端を結合していることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤピラーの後端から車両後方へ延びるリヤアッパーメンバーが、中空に形成されて、前端を前記ダンパーハウジングの上部に結合し、後端を前記リヤサイドフレームの後端に設けられて車幅方向へ延びるエンドクロスメンバーに、中空を保持して結合していることを特徴とする請求項1記載の車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−247612(P2010−247612A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98061(P2009−98061)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】