説明

車体構造

【課題】 ピラー部材に入力した衝突荷重に対して、ピラー部材の車室内方への変形を抑制しつつ、衝突エネルギーを効率良く吸収させることができる車体構造の提供を図る。
【解決手段】 センタピラー3の上部3aを上部支持湾曲部材20を介してルーフ部骨格部材Rbに連結し、ピラー部材3の下部3bを下部支持湾曲部材21を介してフロア部骨格部材Fbに連結することにより、側面衝突荷重Fによりセンタピラー3に上下方向に発生した軸力f1,f2を、上部・下部支持湾曲部材20,21に荷重分散して反力の立ち上がりを促進し、かつ、該反力を持続させてセンタピラー3の車室内方への変形を抑制しつつ、エネルギー吸収量を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突荷重を車体側面のピラー部材で受けるようにした車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の側面衝突に対応させた車体構造としては、センタピラー等のピラー部材全周を閉断面構造化するとともに、そのピラー部材の下方に積極的に強度不連続部を設け、側面衝突時において同部位で的確に内側に折れ曲がるように変形させることにより、ピラー部材の中央部分と上方部分での局部的な折れ曲がりを防止し、ピラー部材を略均一に内側に変位させるとともに、その内側への変形量を比較的少なくするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−72740号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の車体構造では、衝突初期にピラー部材下部を車室内方に折り曲げてしまうが故に、車体の強度はその折れ曲がり強度によって支配されてしまい、大幅な強度向上を期待することが困難になってしまう。
【0004】
そこで、本発明はピラー部材に入力した衝突荷重に対して、ピラー部材の車室内方への変形を抑制しつつ、衝突エネルギーを効率良く吸収させることができる車体構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にあっては、ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、車体内方に湾曲してピラー部材の上部とルーフ部骨格部材とを連結する上部支持湾曲部材と、車体内方に湾曲してピラー部材の下部とフロア部骨格部材とを連結する下部支持湾曲部材と、前記上部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する上部連結部材と、前記下部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する下部連結部材と、を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、側面衝突によりピラー部材に衝突荷重が入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのピラー部材には圧縮方向の軸力が上下方向に発生し、上方に作用する軸力はピラー部材上部を上方に変位させるとともに、下方に作用する軸力はピラー部材下部を下方に変位させて衝撃を緩和し、かつ、ピラー部材上部では上部支持湾曲部材に荷重分散するとともに、ピラー部材下部では下部支持湾曲部材に荷重分散して反力の立ち上がりを促進し、ピラー部材の車室内方への変形を抑制する。
【0007】
そして、この上部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する上部連結部材、および下部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する下部連結部材により、ピラー部材の上部および下部の変形を許容しつつ、反力を維持してエネルギー吸収量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1〜図3は本発明にかかる車体構造の第1実施形態を示し、図1は車体の骨格構造の斜視図、図2は車体片側の骨格部材の分解斜視図、図3は側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示すピラー部材の正面図である。
【0010】
この第1実施形態の車体構造は、図1に示すようにルーフ部Rfの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレール1と、フロア部Frの車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシル2と、上下に対向する前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2とを連結するピラー部材としてのセンタピラー3と、を備えており、このセンタピラー3は全体的に車体外方に湾曲形成してあり、その最大曲率部3Tがセンタピラー3の下部、つまり、側面衝突される相手車両のバンパー位置に略対応する部位に形成されている。
【0011】
前記ルーフサイドレール1と前記サイドシル2との間には、センタピラー3の車体前方に所定間隔をあけてフロントピラー4が配置されるとともに、センタピラー3の車体後方に所定間隔をあけてリアピラー5が配置される。
【0012】
前記左,右のルーフサイドレール1は前記センタピラー3の連結部分でルーフメンバ6が連結されるとともに、前記左,右のサイドシル2は上記センターピラー5の連結部分でフロアメンバ7が連結される。
【0013】
また、前記左,右のルーフサイドレール1の車体前端部間にはフロントルーフボウ8が連結されるとともに、車体後端部間にはリアルーフボウ9が連結され、かつ、前記左,右のサイドシル2の車体前端部間にはフロントクロスメンバ10が連結されるとともに、車体後端部間にはリアクロスメンバ11が連結される。
【0014】
そして、本発明では図3(a)〜(c)に示すように、側面衝突荷重Fの入力を、車体外方に湾曲させたセンタピラー3の上下方向の軸力f1,f2に変換するとともに、車体内方に湾曲してセンタピラー3の上部3aおよび下部3bに連結した上部支持湾曲部材20および下部支持湾曲部材21により、センタピラー3の軸力f1,f2をルーフ骨格部材Rbおよびフロア骨格部材Fbに分散させるようにしている。
【0015】
つまり、本実施形態ではセンタピラー3の上部3aを上部支持湾曲部材20を介してルーフ部骨格部材Rbに連結するとともに、センタピラー3の下部3bを下部支持湾曲部材21を介してフロア部骨格部材Fbに連結し、かつ、前記上部支持湾曲部材20の中間部分とセンタピラー3とを上部連結部材22で連結するとともに、前記下部支持湾曲部材21の中間部分とセンタピラー3とを下部連結部材23で連結してある。
【0016】
前記上部支持湾曲部材20は、図2にも示すように、センタピラー上部3aに対して車内側に配置されて車体内方に湾曲形成されるとともに、前記下部支持湾曲部材20はセンタピラー下部3bに対して車内側に配置されて車体内方に湾曲形成される。
【0017】
前記ルーフ部骨格部材Rbは、ルーフ部Rfを構成する骨格部材で、ルーフサイドレール1やルーフメンバ6,フロントルーフボウ8,リアルーフボウ9等で構成され、本実施形態ではルーフメンバ6を選定して、このルーフメンバ6に上部支持湾曲部材20を連結してある。
【0018】
また、前記フロア部骨格部材Fbは、フロア部Frを構成する骨格部材で、サイドシル2やフロアメンバ7,フロントクロスメンバ10,リアクロスメンバ11等で構成され、本実施形態ではサイドシル2を選定して、このサイドシル2の外側面2aに下部支持湾曲部材21を連結してある。
【0019】
従って、前記上部支持湾曲部材20は、ルーフサイドレール1を跨いでセンタピラー上部3aとルーフメンバ6とを連結してあり、センタピラー上部3aの強度を上部支持湾曲部材20よりも大きくしてある。
【0020】
また、センタピラー下部3bはセンタピラー3と別体に形成して、該センタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21との連結部分に、センタピラー3に作用する軸力をセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21とに分散する分岐部材24を設けるとともに、分岐したこれらセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21とをサイドシル2の外側面2aに連結し、下部支持湾曲部材21の強度をセンタピラー下部3bよりも大きくしてある。
【0021】
前記ルーフサイドレール1,サイドシル2,センタピラー3,ルーフメンバ6およびフロアメンバ7は、図2に示すようにそれぞれが断面矩形状の中空部材で形成され、車体外方に湾曲形成したセンタピラー3は、その上端部がセンタピラー上部3aとなるとともに、その先端部を絞って縮径し、この縮径部3a′をルーフサイドレール1の外側面に形成した開口部1aに挿入して、この開口部1aの両側に切り起こしたフランジ1a′を縮径部3a′の側面に溶接してある。
【0022】
また、ルーフサイドレール1の内側面には、前記開口部1aに対向した位置に同様の開口部を形成し、この開口部にルーフメンバ6の車幅方向端部6aに形成した縮径部6a′を挿入して溶接固定してある。
【0023】
そして、断面矩形状の中空部材で形成した前記上部支持湾曲部材20の車体外方端部20aにフランジ20a′を形成してあり、このフランジ20a′をセンタピラー下部3aの下側に溶接する一方、上部支持湾曲部材20の車体内方端部20bに同様にフランジ20b′を形成してあり、このフランジ20b′をルーフメンバ6の下側に溶接してある。
【0024】
更に、前記センタピラー3の下端部3cは上端部同様に縮径して、この縮径部3c′を前記分岐部材24の基部24aに挿入して溶接してある。
【0025】
分岐部材24は、前記基部24aから車室内方に向かってそれぞれが斜め下方に傾斜する下方分岐口24bおよび上方分岐口24cが形成され、下方分岐口24bにはセンタピラー下部3bの車体外方端部の縮径部3b′を挿入して溶接するとともに、上方分岐口24cには前記下部支持湾曲部材21の車体外方端部21aに形成した縮径部21a′を挿入して溶接してある。
【0026】
前記センタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21はそれぞれ断面矩形状の中空部材で形成され、それぞれの車体内方端部に形成したフランジ3b″,21bをサイドシル2の外側面2aに溶接してある。
【0027】
また、前記サイドシル2の内側面2bには、前記センタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21の連結部分に対向する位置に、フロアメンバ7の車幅方向端部7aに形成したフランジ7a′を溶接してある。
【0028】
前記上部連結部材22は、その上端部に形成したフランジ22aをセンタピラー上部3aの下側に溶接してあるとともに、下端部に形成したフランジ22bを上部支持湾曲部材20の上面に溶接してある。
【0029】
また、前記下部連結部材23は、その下端部に形成したフランジ23aをセンタピラー下部3bの上面に溶接してあるとともに、上端部に形成したフランジ23bを下部支持湾曲部材21の下面に溶接してある。
【0030】
前記上部連結部材22のセンタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20への連結部位は、これらセンタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20の変曲部付近に設定し、かつ、上部支持湾曲部材20への連結点P2をセンタピラー上部3aへの連結点P1よりも車幅方向内方に配置してある。
【0031】
また、前記上部連結部材20のセンタピラー上部3aへの前記連結点P1は、このセンタピラー3とルーフサイドレール1との連結部Kよりも車幅方向外方に配置し、かつ、上部支持湾曲部材20の変曲部付近としてある。
【0032】
ところで、図3に示すように側面衝突により前記センタピラー3の最大曲率部3Tに衝突荷重Fが入力することにより、この荷重Fはセンタピラー3の上方および下方に軸力f1およびf2として作用し、これら軸力f1,f2は同図(a)〜(b)に示すように、センタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20およびセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21へと作用し、衝突の進行に伴って(c)に示すように下部支持湾曲部材21を折れ変形Bする。
【0033】
このとき、前記下部支持湾曲部材21は、その折れ変形状態でサイドシル2に干渉し、ひいては、フロアメンバ7への荷重伝達経路を形成するようになっている。
【0034】
以上の構成によりこの第1実施形態の車体構造によれば、図3(a)に示すように、側面衝突によりセンタピラー3の最大曲率部3Tに衝突荷重Fが入力すると、全体的に車体外方に湾曲したこのセンタピラー3には圧縮方向の軸力f1,f2が上下方向に発生し、上方に作用する軸力f1はセンタピラー上部3aを上方に変位させるとともに、下方に作用する軸力f2はセンタピラー下部3bを下方に変位させて衝撃を緩和する。
【0035】
ここで、上方への軸力f1はセンタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20に分岐して作用する一方、下方への軸力f2はセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21に分岐して作用するが、センタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20との間を上部連結部材22で連結するとともに、センタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21との間を下部連結部材23で連結してるので、それらセンタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20の耐力、およびセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21の耐力をそれぞれ向上できる。
【0036】
このように耐力が向上されることにより、センタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20への軸力f1の分散効率が高まるとともに、センタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21への軸力f2の分散効率が高まり、これによってセンタピラー上部3aおよびセンタピラー下部3bの反力の立ち上がりを早めることができる。
【0037】
また、衝突荷重Fが継続して入力されることにより、図3(b)に示すように、センタピラー上部3aが略上方に変位するとともに、センタピラー下部3bが略下方に変位し、その際にセンタピラー上部3aでは上部連結部材22による上部支持湾曲部材20の引張り現象が発生するとともに、センタピラー下部3bでは下部連結部材23による下部支持湾曲部材21の引張り現象が発生する。
【0038】
従って、上部・下部支持湾曲部材20,21の引張りによりセンタピラー上部3aおよびセンタピラー下部3bの変形強度が向上するため、局部的な変形を抑制して衝突エネルギーの吸収効率を向上することができる。
【0039】
更に、衝突荷重Fが継続して入力されることにより、図3(c)に示すように、センタピラー上部3aは引き続き略上方に変位しようとするとともに、センタピラー下部3bも引き続き略下方に変位しようとする。
【0040】
このとき、センタピラー上部3aでは上部支持湾曲部材20の剛性により前述のように局部的な変形は発生することなく、荷重がセンタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20で釣り合った状態でルーフメンバ6に荷重伝達する一方、センタピラー下部3bでは、下部支持湾曲部材21に作用する車幅方向入力が増大して、この下部支持湾曲部材21が折れ変形Bしてサイドシル2に干渉Tし、そして、フロアメンバ7への荷重伝達経路が形成されるため、センタピラー3全体での反力を維持することができる。
【0041】
従って、この第1実施形態の車体構造では、側面衝突時にセンタピラー上部3aでは上部支持湾曲部材20に荷重分散するとともに、センタピラー下部3bでは下部支持湾曲部材21に荷重分散して反力の立ち上がりを促進し、センタピラー3の車室内方への変形を抑制することができる。
【0042】
また、上部支持湾曲部材20の中間部分とセンタピラー3とを上部連結部材22で連結するとともに、下部支持湾曲部材21の中間部分とセンタピラー3とを下部連結部材23で連結したことにより、センタピラー上部3aおよびセンタピラー下部3bの変形を許容しつつ、反力を維持することができる。
【0043】
また、本実施形態では上部支持湾曲部材20は、ルーフサイドレール1を跨いでセンタピラー上部3aとルーフメンバ6とを連結し、センタピラー上部3aの強度を上部支持湾曲部材20よりも大きくしたので、センタピラー3の上方への軸力f1を車幅方向に効率良く伝達できるとともに、センタピラー上部3aの強度が上部支持湾曲部材20よりも大きくなっているため、最終的に上方に凸の曲げ変形が発生することによって上部支持湾曲部材20を上向きに変形させ、車室内空間を狭める変形を防止することができる。
【0044】
更に、センタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21との連結部分に、センタピラー3に作用する軸力をセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21とに分散する分岐部材24を設けるとともに、分岐したこれらセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21とをサイドシル2の外側面2aに連結し、下部支持湾曲部材21の強度をセンタピラー下部3bよりも大きくしたので、センタピラー3の下方への軸力f2を分岐部材24によってセンタピラー下部3bと下部支持湾曲部材21とに分散して、効率良く車幅方向に伝達することができる。
【0045】
また、下部支持湾曲部材21の強度をセンタピラー下部3bよりも大きくしたので、最終的に下部支持湾曲部材21が上方に凸の折れ変形Bを発生してサイドシル2と干渉Tすることにより、フロアメンバ7に持続的に荷重伝達して反力の立ち上がりを促進することができるとともに、センタピラー下部3bの下向きの折れ変形を抑制して耐力を高めることができる。
【0046】
更にまた、上部連結部材22のセンタピラー上部3aと上部支持湾曲部材20への連結部位は、これらセンタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20の変曲部付近に設定し、かつ、上部支持湾曲部材20への連結点P2をセンタピラー上部3aへの連結点P1よりも車幅方向内方に配置したので、センタピラー3の上方への軸力f1は上部支持湾曲部材20には主に車幅方向に作用するとともに、センタピラー上部3aには主に上方に作用して荷重分散し、その際に上部連結部材22に対して引張り力が作用する。このとき、上部連結部材22はセンタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20の変曲部付近を連結していることから、それぞれの部材3a,20の変形の起点を拘束できるため、より耐力を向上して反力の立ち上がりの迅速化を達成することができる。
【0047】
また、上部連結部材22のセンタピラー上部3aへの前記連結点P1は、このセンタピラー3とルーフサイドレール1との連結部Kよりも車幅方向外方に配置し、かつ、上部支持湾曲部材20の変曲部付近としたので、センタピラー3の上方への軸力f1によりセンタピラー上部3aは略上位方に変位しようとし、その際に上部連結部材22の引張りにより変形強度が増加し、しかも、前記連結点P1は上部支持湾曲部材20の変形の起点となる変曲部付近としたので、より引張りの効果や耐力増加の効果がある。
【0048】
更に、下部支持湾曲部材21は、その折れ変形状態でサイドシル2に干渉して、フロアメンバ7への荷重伝達経路を形成するようにしたので、センタピラー3の下方への軸力f2を最終的にフロアメンバ7で強固に受け持つことができるため、センタピラー下部3bの耐力をより高めることができ、従って、センタピラー3全体として車室内方への変形を抑制しつつ、反力の急速な立上がりと、該反力の持続的な維持とによってエネルギー吸収量を増大することができる。
【0049】
図4,図5は第1実施形態のセンタピラー上部3aおよび上部支持湾曲部材20の断面形状の各種変形例を示し、図4に示すようにセンタピラー上部3aをX1に沿った位置で断面とした形状と、上部支持湾曲部材20をX2に沿った位置で断面とした形状と、をそれぞれ図5に示してあり、この図5ではX1位置とX2位置の断面形状をA組,B組,C組の組み合わせで示してある。
【0050】
即ち、A組では、センタピラー上部3aは、前後両側を厚肉化して上下にやや扁平な矩形状に形成される一方、上部支持湾曲部材20は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0051】
また、B組では、センタピラー上部3aは、全周を略均等な肉厚に形成して矩形状の扁平度をやや小さくするとともに、上部支持湾曲部材20は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0052】
更に、C組では、センタピラー上部3aは、前後両側を厚肉化して上下にやや扁平な矩形状に形成され、内部中央に上下方向の仕切壁が設けられる一方、上部支持湾曲部材20は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0053】
図6,図7は第1実施形態のセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21の断面形状の各種変形例を示し、図6に示すようにセンタピラー下部3bをX3に沿った位置で断面とした形状と、下部支持湾曲部材21をX4に沿った位置で断面とした形状と、をそれぞれ図7に示してあり、この図7ではX3位置とX4位置の断面形状をA′組,B′組,C′組の組み合わせで示してある。
【0054】
即ち、A′組では、センタピラー下部3bは、前後両側を厚肉化して上下にやや扁平な矩形状に形成される一方、下部支持湾曲部材21は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0055】
また、B′組では、センタピラー下部3bは、全周を略均等な肉厚に形成して矩形状の扁平度をやや小さくするとともに、下部支持湾曲部材21は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0056】
更に、C′組では、センタピラー下部3bは、前後両側を厚肉化して上下にやや扁平な矩形状に形成され、内部中央に上下方向の仕切壁が設けられる一方、下部支持湾曲部材21は、全周を略均等な肉厚に形成して上下にやや扁平な矩形状に形成される。
【0057】
図8は本発明の第2実施形態を示し、第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図8はセンタピラー下部3bの斜視図である。
【0058】
この第2実施形態では、図8に示すように、下方に湾曲したセンタピラー下部3bの上面に脆弱部30を凹設してある。
【0059】
従って、本実施形態によればセンタピラー下部3bに脆弱部30を形成したので、このセンタピラー下部3bよりも下部支持湾曲部材21の強度を簡易な方法で大きくすることができる。
【0060】
尚、脆弱部30としては薄肉形成や切り込み形成、または低剛性材料等で形成することができる。
【0061】
図9は本発明の第3実施形態を示し、第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図9は上部支持湾曲部材20の斜視図である。
【0062】
この第3実施形態では、図9に示すように、下方に湾曲した上部支持湾曲部材20の上面に脆弱部31を凹設してある。
【0063】
従って、本実施形態によれば上部支持湾曲部材20に脆弱部31を形成したので、上部支持湾曲部材20よりもセンタピラー上部3aの強度を簡易な方法で大きくすることができる。
【0064】
尚、脆弱部31としては薄肉形成や切り込み形成、または低剛性材料等で形成することができる。
【0065】
図10は本発明の第4実施形態を示し、第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図10は(a)に補強部材と(b)にその補強部材を内装したサイドシルとをそれぞれ示す斜視図である。
【0066】
この第4実施形態では、図10(b)に示すようにサイドシル2のセンタピラー結合部位に、図10(a)に示す角形筒状の補強部材40を内装してある。
【0067】
従って、本実施形態によれば補強部材40によってサイドシル2の剛性を高めることができるため、センタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21の結合強度を高めることができるとともに、折れ変形Bした下部支持湾曲部材21からフロアメンバ7に至る荷重伝達経路の強度を増大することができる。
【0068】
また、前記補強部材40は角形筒状に限ることなく、サイドシル2の強度を高めることができる構造であればよく、例えば、図11に示す一対のコ字状のリブ部材41で形成することもできる。
【0069】
図12は本発明の第5実施形態を示し、第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図12はセンタピラー下部および下部支持湾曲部材の取付部分の分解斜視図である。
【0070】
この第5実施形態では、図12に示すように、サイドシル2のセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21を結合する部位に、これらセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21を取り付けるための結合部材42を設けてある。
【0071】
前記結合部材42は、サイドシル2の外側面に跨って結合される固定部42aと、センタピラー下部3bの車幅方向内側端部を挿入して固定する下方取付口42bと、下部支持湾曲部材21の車幅方向内側端部を挿入して固定する上方取付口42cとが形成され、その結合部材42を介してセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21とサイドシル2との結合強度を高めてある。
【0072】
従って、本実施形態によれば結合部材42を介してセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21とサイドシル2との結合強度を高めることができるため、センタピラー3の下方への軸力f2に対するサイドシル2の反力をより高めることができるとともに、折れ変形Bした下部支持湾曲部材21からフロアメンバ7に至る荷重伝達経路をより確実に形成することができる。
【0073】
図13は本発明の第6実施形態を示し、第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図13はセンタピラーとその下端部に結合する分岐部材との分解斜視図である。
【0074】
この第6実施形態では、前記第1実施形態と同様に、センタピラー3の下端部に分岐部材24を結合して、この分岐部材24を介して軸力f2をセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21に分岐させるようにしているが、本実施形態では前記分岐部材24の上下壁部を車幅方向に厚肉形成して増強部43を形成してある。
【0075】
従って、本実施形態によれば増強部43によって分岐部材24の断面剛性を高めることができるため、センタピラー3からセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21に効率良く荷重伝達できるので、これらセンタピラー下部3bおよび下部支持湾曲部材21への軸力f2の分散効率を更に高めることができ、ひいては、センタピラー下部3bの反力の立ち上がりをより早めることができる。
【0076】
尚、増強部43としてはリブや補強部材等を設けることによっても構成することができる。
【0077】
ところで、本発明の車体構造は前記第1〜第6実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態における車体の骨格構造の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車体片側の骨格部材の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における側面衝突荷重が入力した時の車体の変形を(a)〜(c)に順を追って示すピラー部材の正面図である。
【図4】第1実施形態の変形例を示すピラー部材と上部支持湾曲部材の斜視図である。
【図5】第1実施形態の変形例を示すピラー部材と上部支持湾曲部材の断面形状の組み合わせをA組〜C組によってそれぞれ示す断面図である。
【図6】第1実施形態の変形例を示すセンタピラー上部および上部支持湾曲部材の斜視図である。
【図7】第1実施形態の変形例を示すセンタピラー上部および上部支持湾曲部材の断面形状の組み合わせをA′組〜C′組によってそれぞれ示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるセンタピラー下部の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態における上部支持湾曲部材の斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態における(a)に補強部材と(b)にその補強部材を内装したサイドシルとをそれぞれ示す斜視図である。
【図11】第4実施形態の変形例を示す補強部材の斜視図である。
【図12】本発明の第5実施形態におけるセンタピラー下部および下部支持湾曲部材の取付部分の分解斜視図である。
【図13】本発明の第6実施形態におけるセンタピラーとその下端部に結合する分岐部材との分解斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ルーフサイドレール
2 サイドシル
3 センタピラー(ピラー部材)
3a センタピラー上部(ピラー部材上部)
3b センタピラー下部(ピラー部材下部)
6 ルーフメンバ
7 フロアメンバ
20 上部支持湾曲部材
21 下部支持湾曲部材
22 上部連結部材
23 下部連結部材
24 分岐部材
30 ピラー部材下部の脆弱部
31 上部支持湾曲部材の脆弱部
40 補強部材
41 コ字状部材(補強部材)
42 結合部材
43 増強部
Rf ルーフ部
Rb ルーフ部骨格部材
Fr フロア部
Fb フロア部骨格部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のルーフサイドレールと、
フロア部の車幅方向両側に車体前後方向に延在する左,右一対のサイドシルと、
上下に対向する前記ルーフサイドレールと前記サイドシルとを連結し、全体的に車体外方に湾曲するピラー部材と、
左,右のルーフサイドレールを前記ピラー部材の連結部分で連結するルーフメンバと、
左,右のサイドシルを前記ピラー部材の連結部分で連結するフロアメンバと、を備えた車体構造において、
車体内方に湾曲してピラー部材の上部をルーフ部骨格部材に連結する上部支持湾曲部材と、
車体内方に湾曲してピラー部材の下部をフロア部骨格部材に連結する下部支持湾曲部材と、
前記上部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する上部連結部材と、
前記下部支持湾曲部材の中間部分とピラー部材とを連結する下部連結部材と、を設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
上部支持湾曲部材は、ルーフサイドレールを跨いでピラー部材上部とルーフメンバとを連結し、ピラー部材上部の強度を上部支持湾曲部材よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
ピラー部材下部と下部支持湾曲部材との連結部分に、ピラー部材に作用する軸力をピラー部材下部と下部支持湾曲部材とに分散する分岐部材を設けるとともに、分岐したこれらピラー部材下部と下部支持湾曲部材とをサイドシルの外側面に連結し、下部支持湾曲部材の強度をピラー部材下部よりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項4】
分岐部材の上下壁部に増強部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の車体構造。
【請求項5】
上部連結部材のピラー部材上部と上部支持湾曲部材への連結部位は、これらピラー部材上部および上部支持湾曲部材の変曲部付近に設定し、かつ、上部支持湾曲部材への連結点をピラー部材上部への連結点よりも車幅方向内方に配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項6】
上部連結部材のピラー部材上部への連結点は、このピラー部材とルーフサイドレールとの連結部よりも車幅方向外方に配置され、かつ、上部支持湾曲部材の変曲部付近であることを特徴とする請求項5に記載の車体構造。
【請求項7】
下部支持湾曲部材は、その折曲変形状態でフロアメンバへの荷重伝達経路を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項8】
上部支持湾曲部材に脆弱部を形成して、ピラー部材上部の強度を上部支持湾曲部材よりも大きくしたことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項9】
ピラー部材下部に脆弱部を形成して、下部支持湾曲部材の強度をピラー部材下部よりも大きくしたことを特徴とする請求項3に記載の車体構造。
【請求項10】
サイドシルのセンタピラー結合部位に補強部材を取り付けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項11】
サイドシルのセンタピラー下部および下部支持湾曲部材を結合する部位に、これらセンタピラー下部および下部支持湾曲部材を取り付けるための結合部材を設けたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の車体構造。
【請求項12】
側面衝突荷重の入力を、車体外方に湾曲したピラー部材の上下方向の軸力に変換するとともに、車体内方に湾曲してピラー部材の上部および下部に連結した上部支持湾曲部材および下部支持湾曲部材により、ピラー部材の軸力をルーフ骨格部材およびフロア骨格部材に分散させるようにしたことを特徴とする車体構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−69282(P2006−69282A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252651(P2004−252651)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】