説明

車体構造

【課題】エネルギー吸収メンバによるエネルギー吸収量の減少を防止する。
【解決手段】固定板31に設けられた支持板32に、固定部33より車両前方FRへ向けて水平に延出する第1延出面34と、第1延出面34先端より上方へ向けて延出する第2延出面35を設ける。固定板31に左右メインメンバ41,42を固定する。両メインメンバ41,42を、支持板32の第2延出面35に設けられた各挿通穴51,52に挿通して車両前方FRへ延出し、各挿通穴51,52の開口縁部を、各メインメンバ41,42の側面に溶着する。衝撃入力時には、第1延出面34が折れ曲がることによって両メインメンバ41,42の潰れ方向への変形を許容する一方、潰れ方向に対して交差した横方向への変形は第1延出面34によって防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を構成する車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前部には、バンパーが設けられており、該バンパーは、エネルギー吸収メンバに接続されている。
【0003】
これにより、衝突時には、前記エネルギー吸収メンバが長さ方向に潰れ変形することによって、衝撃エネルギーを吸収できるように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の車体構造にあっては、エネルギー吸収量を増大する為にエネルギー吸収メンバを長く設定すると、該エネルギー吸収メンバが折れ曲がる恐れがある。
【0005】
この場合、前記エネルギー吸収メンバによるエネルギー吸収量が設計値より小さくなる恐れがある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、エネルギー吸収メンバによるエネルギー吸収量の減少を防止することができる車体構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車体構造にあっては、衝撃入力時に潰れ変形するエネルギー吸収メンバを備えた車体構造において、前記エネルギー吸収メンバに、該エネルギー吸収メンバの潰れ方向への変形は許容する一方、該潰れ方向に対して交差する交差方向への変形は防止する変形方向規制手段を設けた。
【0008】
すなわち、衝突時等において、エネルギー吸収メンバが潰れ変形する方向に衝撃力が入力された場合、その入力方向によっては、前記衝撃力の分力が前記エネルギー吸収メンバが折れ曲がる方向に作用することがある。
【0009】
このとき、前記エネルギー吸収メンバには、変形方向規制手段が設けられており、この変形方向規制手段によって、前記エネルギー吸収メンバの潰れ方向に対する交差方向への変形が防止される。
【0010】
また、請求項2の車体構造においては、前記変形方向規制手段を、前記エネルギー吸収メンバに沿って基端側から先端側へ向けて水平に延在する支持板で構成するとともに、該支持板の先端部を前記エネルギー吸収メンバに接続した。
【0011】
すなわち、前記変形方向規制手段は、前記エネルギー吸収メンバに沿って基端側から先端側へ向けて水平に延在する支持板で構成されており、該支持板の先端部は、前記エネルギー吸収メンバに接続されている。
【0012】
これにより、前記エネルギー吸収メンバは、横方向への変形が防止される。一方、前記支持板は、折れ方向への剛性が低く、前記エネルギー吸収メンバは、先端側から基端側へ潰れ変形する際に前記支持板が折れ曲がることによって、前記エネルギー吸収メンバの潰れ方向への変形が許容される。
【0013】
さらに、請求項3の車体構造では、前記エネルギー吸収メンバを離間して並設されたメンバで構成する一方、前記支持板に、前記両メンバの基端側から先端側へ向けて延出する第1延出面と、該第1延出面の先端より前記両メンバ側へ向けて延出した第2延出面とを設定するとともに、該第2延出面に前記両メンバが各々挿通する挿通穴を設けた。
【0014】
すなわち、前記エネルギー吸収メンバは、離間して並設されたメンバで構成されており、前記支持板には、前記両メンバの基端側から先端側へ向けて延出する第1延出面が設けられている。そして、この第1延出面の先端には、前記両メンバ側へ向けて延出する第2延出面が設けられており、前記両メンバは、前記第2延出面に設けられた挿通穴を挿通するように構成されている。
【0015】
これにより、並設された両メンバは、両メンバの基端側から先端側へ向けて延出する第1延出面によって潰れ方向への変形は許容される一方、該潰れ方向に対する交差方向への変形は防止される。
【0016】
また、並設された両メンバは、前記支持板の前記第2延出面で連結されている。これにより、両メンバの並び方向の剛性が、さらに高められる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明の請求項1の車体構造にあっては、エネルギー吸収メンバに変形方向規制手段を設けることによって、前記エネルギー吸収メンバの潰れ方向に対する交差方向への変形を防止することができる。
【0018】
このため、衝突時等において、エネルギー吸収メンバに衝撃力が加えられた際に、その衝撃力が前記エネルギー吸収メンバを折り曲げる方向に作用した場合であっても、当該エネルギー吸収メンバの折れ曲がりを防止することができ、前記エネルギー吸収メンバの潰れ方向の変形を促進することができる。
【0019】
したがって、前記エネルギー吸収メンバが折れ曲がり、設計通りのエネルギー吸収量が得られない恐れがある従来と比較して、前記エネルギー吸収メンバによるエネルギー吸収量の減少を防止し、設計通りのエネルギー吸収量を得ることができる。
【0020】
また、請求項2の車体構造においては、支持板をエネルギー吸収メンバに沿って水平に延設するとともに、前記支持板の先端部を、前記エネルギー吸収メンバに接続することによって、前記エネルギー吸収メンバの横方向への変形を防止することができる。
【0021】
一方、前記支持板は、折れ方向への剛性が弱い為、前記エネルギー吸収メンバが先端側から基端側へ潰れ変形する際には、前記支持板が折れ曲がることによって前記エネルギー吸収メンバの潰れ方向への変形を許容することができる。
【0022】
さらに、請求項3の車体構造では、前記エネルギー吸収メンバを、離間して並設されたメンバで構成する一方、前記支持板に、前記両メンバの基端側から先端側へ向けて延出する第1延出面と、該第1延出面の先端より前記両メンバ側へ向けて延出する第2延出面とを設けるとともに、前記両メンバを、前記第2延出面に設けられた挿通穴に挿通した。
【0023】
これにより、前記支持板の前記第1延出面によって並設された前記両メンバの潰れ方向への変形を許容しつつ、該潰れ方向に対する交差方向への変形を防止することができる。
【0024】
また、並設された両メンバを、前記支持板の前記第2延出面で連結することによって、両メンバの並び方向の剛性を、さらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる車体構造を備えた車両1を示す図である。この車両1では、軽量化を図る為の設計が行われている。
【0026】
この車両1のフレーム11には、車両後部に配置された左右のリアタイヤ12と、車両前部に配置された左右のフロントタイヤ13とが設けられており、当該車両1は、各タイヤ12,13で支持されている。また、前記フレーム11には、前記フロントタイヤ13より車両前方FRへ延出するエネルギー吸収メンバ14が設けられており、車両衝突時には、当該エネルギー吸収メンバ14が潰れ変形することによって衝撃エネルギーを吸収できるように構成されている。
【0027】
前記エネルギー吸収メンバ14は、図2に示すように、前記フレーム11のフロントクロスメンバの左寄りに固定される左固定メンバ21と、前記フロントクロスメンバの右寄りに固定される右固定メンバ22とを備えており、前記各固定メンバ21,22は、基端部に設けられた固定片23,・・・が前記フロントクロスメンバに面接された状態で固定されることによって前記フレーム11に支持されている。
【0028】
前記両固定メンバ21,22の前端には、車幅方向に横長の固定板31が固定されている。前記固定板31には、支持板32が設けられており、該支持板32は、前記固定板31の下縁部に面接した状態で固定される固定部33と、該固定部33より車両前方FRへ向けて水平に延出した第1延出面34と、該第1延出面34の先端より上方へ向けて垂直に延出した第2延出面35と、該第2延出面35の上縁が車両後方RRへ向けて折曲された折曲面36とによって構成されている。そして、前記第2延出面35は、前記固定板31と平行するように設けられている。
【0029】
前記固定板31の左方には、左メインメンバ41が前記左固定メンバ21の延長上に設けられており、前記左メインメンバ41は、その基端が前記固定板31に溶接され固定されている。前記固定板31の右方には、右メインメンバ42が前記右固定メンバ22の延長上に設けられており、前記右メインメンバ42は、その基端が前記固定板31に溶接され固定されている。
【0030】
これら各メンバ41,42は、矩形筒状に形成されており、その剛性は、前記固定メンバ21,22より低く設定されている。これにより、衝撃入力時には、前記各メンバ41,42の周面が蛇腹状に変形し、各メンバ41,42が長さ方向に潰れ変形することで、その衝撃エネルギーを吸収できるように構成されており、この衝撃エネルギーの前記各固定メンバ21,22側への伝達を阻止できるように構成されている。
【0031】
前記左メインメンバ41は、前記支持板32の前記第2延出面35に設けられた矩形状の左挿通穴51を挿通して車両前方FRへ延出しており、前記右メインメンバ42は、前記支持板32の前記第2延出面35に設けられた矩形状の右挿通穴52を挿通して車両前方FRへ延出している。前記各挿通穴51,52の開口縁部は、前記各メインメンバ41,42の角部を除く側面に溶着されている。
【0032】
これにより、前記支持板32は、その先端部が前記エネルギー吸収メンバ14を構成する前記各メインメンバ41,42に接続されるとともに、前記両メインメンバ41,42は、前記支持板32の前記第2延出面35によって連結されている。
【0033】
前記支持板32の前記第2延出面35より車両前方FRに延出した前記各メインメンバ41,42の前端には、車両前方FRにて車幅方向に延在するバンパ71が固定されており、該バンパ71は、前記両メインメンバ41,42に支持されている。
【0034】
これにより、車両衝突時に前記バンパ71に加えられた衝撃力は、第1段階として前記両メインメンバ41,42の入力されるように構成されており、両メインメンバ41,42が長さ方向へ潰れ変形することにより、衝撃エネルギーを二本のメインメンバ41,42で吸収するように構成されている。
【0035】
このとき、前記両メインメンバ41,42の下部には、その基端側から先端側へ向けて水平に延出する第1延出面34が離間して並設されており、前記両メインメンバ41,42は、前記第1延出面34先端に設けられた前記第2延出面35の各挿通穴51,52を挿通した状態で当該支持板32に接続されている。これにより、前記両メインメンバ41,42は、前記支持板32の前記第1延出面34で支持されており、該第1延出面34が折れ曲がることによって両メインメンバ41,42の潰れ方向への変形が許容される一方、該潰れ方向に対して交差する交差方向への変形は防止できるように構成されている。
【0036】
また、前記バンパ71が前記支持板32の前記第2延出面35まで後退した際には、前記バンパ71に加えられた衝撃力が前記支持板32の前記第2延出面35に入力されるように構成されており、この第2段階では、前記両メインメンバ41,42から離間して設けられた前記支持板32の前記第1延出面34が折曲するように構成されている。
【0037】
以上の構成にかかる本実施の形態では、衝突等によって衝撃エネルギーがバンパ71に加えられ、前記エネルギー吸収メンバ14が潰れ変形する方向に衝撃力が入力された場合、前記バンパ71の左右に加えられる衝撃力の差などによっては、前記衝撃力の分力が前記エネルギー吸収メンバ14のメインメンバ41,42を折り曲げる方向に作用することがある。
【0038】
このとき、前記エネルギー吸収メンバ14の各メインメンバ41,42には、変形方向を規制する為の支持板32が設けられており、この支持板32によって、前記各メインメンバ41,42の潰れ方向に対する交差方向への変形を防止することができる。
【0039】
このため、前記エネルギー吸収メンバ14に衝撃力が加えられた際に、その衝撃力が前記エネルギー吸収メンバ14を構成する各メインメンバ41,42を折り曲げる方向に作用した場合であっても、各メインメンバ41,42の折れ曲がりを防止することができ、前記各メインメンバ41,42の潰れ方向の変形を促進することができる。
【0040】
したがって、前記エネルギー吸収メンバ14が折れ曲がり、設計通りのエネルギー吸収量が得られない恐れがある従来と比較して、前記エネルギー吸収メンバ14によるエネルギー吸収量の減少を防止し、設計通りのエネルギー吸収量を得ることができる。
【0041】
そして、前記各メインメンバ41,42の変形方向を規制する為の変形方向規制構造は、前記エネルギー吸収メンバ14に沿って設けられた前記支持板32の第1延出面34で構成されており、前記支持板32の先端部は、前記各メインメンバ41,42に接続されている。
【0042】
このとき、前記支持板32の第1延出面34は、面方向への剛性が高い。このため、前記エネルギー吸収メンバ14の各メインメンバ41,42の横方向への変形を防止することができる。
【0043】
一方、前記支持板32の前記第1延出面34は、面方向に対して交差する交差方向への剛性が弱い。このため、前記エネルギー吸収メンバ14が先端側から基端側へ潰れ変形する際には、前記支持板32の前記第1延出面34が折れ曲がることによって、前記各メインメンバ41,42の潰れ方向への変形を許容することができる。
【0044】
さらに、前記エネルギー吸収メンバ14を離間して並設された前記各メインメンバ41,42で構成する一方、前記支持板32に、前記両メインメンバ41,42の基端側から先端側へ向けて延出する前記第1延出面34と、該第1延出面34の先端より前記両メインメンバ41,42側へ向けて延出する第2延出面35とを設けるとともに、前記両メインメンバ41,42を前記第2延出面35に設けられた各挿通穴51,52に挿通することで、前記支持板32の先端部が前記両メインメンバ41,42に接続されている。
【0045】
このため、前記支持板32の前記第1延出面34によって、並設された前記両メインメンバ41,42の潰れ方向への変形を許容しつつ、該潰れ方向に対する交差方向への変形を防止することができる。
【0046】
また、並設された両メインメンバ41,42を、前記支持板32の前記第2延出面35を介して連結することで、両メインメンバ41,42の並び方向の剛性を、さらに高めることができる。
【0047】
なお、本実施の形態にあっては、前記支持板32の前記第1延出面34を、前記両メインメンバ41,42より離間して設けた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、前記第1延出面34を前記両メインメンバ41,42に密着して設けても良い。
【0048】
また、本実施の形態では、前記エネルギー吸収メンバ14を二本のメインメンバ41,42で構成した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、一本のメンバのみで構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同実施の形態のエネルギー吸収メンバを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両
14 エネルギー吸収メンバ
41 左メインメンバ
42 右メインメンバ
32 支持板
34 第1延出面
35 第2延出面
51 左挿通穴
52 右挿通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃入力時に潰れ変形するエネルギー吸収メンバを備えた車体構造において、
前記エネルギー吸収メンバに、該エネルギー吸収メンバの潰れ方向への変形は許容する一方、該潰れ方向に対して交差する交差方向への変形は防止する変形方向規制手段を設けたことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記変形方向規制手段を、前記エネルギー吸収メンバに沿って基端側から先端側へ向けて水平に延在する支持板で構成するとともに、該支持板の先端部を前記エネルギー吸収メンバに接続したことを特徴とする請求項1記載の車体構造。
【請求項3】
前記エネルギー吸収メンバを離間して並設されたメンバで構成する一方、
前記支持板に、前記両メンバの基端側から先端側へ向けて延出する第1延出面と、該第1延出面の先端より前記両メンバ側へ向けて延出した第2延出面とを設定するとともに、該第2延出面に前記両メンバが各々挿通する挿通穴を設けたことを特徴とする請求項2記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−245840(P2007−245840A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70078(P2006−70078)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/高齢運転者に適応した高度運転支援システム技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】