説明

車体用乾燥装置

【課題】低出力のモータでも車体を昇降できる車体用乾燥装置を提供すること。
【解決手段】車体用加熱乾燥装置は、高フロアに設けられたコンベヤに沿って車体を搬送し乾燥させる乾燥ラインと、乾燥ラインに搬入又は搬出される車体を高フロアと低フロアとの間で昇降するドロップリフタ2と、を備える。乾燥ラインの入口61および出口62は隣接して設けられる。ドロップリフタ2は、入口61に搬入される車体Wを保持する保持台31が昇降可能に支持された第1昇降装置3と、この第1昇降装置3に隣接して設けられ、出口62から搬出された車体W´を保持する保持台41が昇降可能に支持された第2昇降装置4と、保持台31,41を昇降するための動力を発生するモータ51と、モータ51で発生する動力と保持台41を車体W´とともに自重下降させる力との合力により、保持台31を上昇させる動力伝達機構52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体用乾燥装置に関する。より詳しくは、車体の塗装ラインに設けられ、塗料が吹き付けられた車体を乾燥させる車体用乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の塗装工程のうち塗料を焼き付ける焼付け工程では、塗料の焼付けを効率的に行うため、塗料が吹き付けられた車体は、高温の乾燥炉内のうち比較的暖かい空気が溜まり易い高フロア側を搬送される。この具体例として、例えば特許文献1には、乾燥ラインの入口側に焼付け前の車体を低フロアから高フロアへ上昇させる昇降装置を設け、乾燥ラインの出口側に焼付け後の車体を高フロアから低フロアへ下降させる昇降装置を設けた車体用乾燥装置が示されている。
【0003】
ところで、特許文献1に示されているように、昇降装置の動力源としてはモータが用いられる場合が多い。しかしながら、車体を低フロアから高フロアに引き上げるには、車体の重量に相応しい高出力のモータが必要になってしまうため、乾燥装置にかかる電力やコストが増加するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献2に示された物品昇降装置を応用して、入口側の昇降装置と出口側の昇降装置を共通のモータで駆動するとともに、入口側の昇降装置における昇動作と出口側の昇降装置における降動作とを同期して行うことが考えられる。これにより、出口側の昇降装置で車体をその自重で下降させたときに発生するエネルギーを利用して、入口側の昇降装置で車体を上昇させることができるので、低出力のモータを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−52781号公報
【特許文献2】特開2005−298155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、塗料を焼き付けは、約140〜180度に熱せられた乾燥ライン内で数十分程度かけて行う必要がある。このため、1つの乾燥ラインでできるだけ多くの車体を乾燥させるためには、乾燥ラインの全長を長くしなければならず、したがって乾燥ラインの入口と出口とが離れてしまう。このように、乾燥ラインの入口と出口とが離れてしまうと、上述の物品昇降装置の技術を応用して、入口側の昇降装置と出口側の昇降装置とを共通の動力源で駆動できるようにするには複雑な装置が必要となる。また、同一の動力源で駆動できたとしても、入口側の昇降装置と出口側の昇降装置とが離れてしまうと、動力の損失が大きくなってしまい、結果として乾燥装置にかかる電力やコストが増加してしまう。
【0007】
本発明は、乾燥ラインの入口と出口で車体を昇降させる車体用乾燥装置であって、低出力のモータでも車体を昇降できる車体用乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、高所(例えば、後述の高フロア)に設けられた搬送経路(例えば、後述のコンベヤ72)に沿って車体(例えば後述の車体W,W´)を搬送し乾燥させる乾燥ライン(例えば、後述の乾燥ライン6)と、前記乾燥ラインに搬入又は搬出される車体を前記高所と低所(例えば、後述の低フロア)との間で昇降するリフタ(例えば、後述のドロップリフタ2,2A)と、を備えた車体用乾燥装置(例えば、後述の加熱乾燥装置1)を提供する。前記乾燥ラインの入口(例えば、後述の入口61)および出口(例えば、後述の出口62)は隣接して設けられ、前記リフタは、前記入口に搬入される車体(例えば、後述の車体W)を保持する保持台(例えば、後述の保持台31)が昇降可能に支持された第1昇降装置(例えば、後述の第1昇降装置3)と、当該第1昇降装置に隣接して設けられ、前記出口から搬出された車体(例えば、後述の車体W´)を保持する保持台(例えば、後述の保持台41)が昇降可能に支持された第2昇降装置(例えば、後述の第2昇降装置4)と、前記第1、第2昇降装置のそれぞれの保持台を昇降するための動力を発生するモータ(例えば、後述のモータ51)と、当該モータで発生する動力と、前記第2昇降装置の保持台を自重下降させる力との合力により、前記第1昇降装置の保持台を上昇させる動力伝達機構(例えば、後述の動力伝達機構52,52A)と、を備える。
【0009】
この発明によれば、乾燥ラインの入口と出口を隣接して設けた。これにより、この入口に搬入される車体を昇降する保持台が支持された第1昇降装置と、出口から搬出された車体を昇降する保持台が支持された第2昇降装置とを、隣接して設けることができる。したがって、第1昇降装置の保持台と第2昇降装置の保持台とを、簡易な構成により共通のモータで昇降することが可能となる。また、第1昇降装置と第2昇降装置とを隣接して設けることにより、共通のモータで発生した動力の損失を小さくすることもできる。
また、この発明によれば、例えば、両方の昇降装置の保持台に車体を搭載し、第2昇降装置で車体を高所から低所へ下降させると同時に、第1昇降装置で車体を低所から高所へ上昇させる場合、第1昇降装置で車体を上昇させるために必要な動力の少なくとも一部を、第2昇降装置の保持台を車体とともに自重下降させる力でまかなうことができるので、低出力のモータでも車体を昇降することができる。また、これにより、従来と比較して車体用乾燥装置にかかるコストや消費電力を低減することができる。
【0010】
この場合、前記動力伝達機構には、前記第1昇降装置の保持台に合わせて昇降する第1カウンターウェイト(例えば、後述の第1カウンターウェイト81)と、前記第2昇降装置の保持台に合わせて昇降する第2カウンターウェイト(例えば、後述の第2カウンターウェイト86)とが断続可能に接続されていることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、第1、第2カウンターウェイトを動力伝達機構に接続することにより、例えば、保持台を自重下降させる力に加えて、これらカウンターウェイトを自重下降させる力を利用して、モータで発生させる動力をアシストすることができるので、さらに低出力のモータを用いることができ、また消費電力をさらに低減することができる。
【0012】
この場合、前記乾燥ラインは、前記入口から前記出口まで平面視で略U字状に延びることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、乾燥ラインを略U字状にすることにより、十分な全長を確保しながら、入口と出口とを隣接させることができる。
【0014】
この場合、前記第2昇降装置で車体を保持せずに、前記第1昇降装置で車体を前記低所から前記高所へ上昇させる場合、前記第1カウンターウェイトを前記動力伝達機構から切断し、前記第2カウンターウェイトを前記動力伝達機構に接続する制御手段(例えば、後述の制御装置9A、第1断続装置84、第2断続装置89)をさらに備えることが好ましい。
【0015】
ところで、実際の塗装工程のラインでは、塗装ブースの品質空きや設備のトラブルなどにより、焼付け前の車体の昇動作と焼付け後の降動作とを常に同じタイミングで実行できるとは限らない。したがって、第2昇降装置で車体を保持せずに、第1昇降装置で車体を低所から高所へ上昇させる必要が生じる場合もある。このような場合、第2昇降装置の保持台を車体とともに自重下降させる力を利用して、モータで発生させる動力をアシストすることができないので、このような場合に備えてモータとして高出力のものを用いる必要が生じる場合もある。
これに対して本発明によれば、上述のように第2昇降装置で車体を保持せずに、第1昇降装置で車体を低所から高所へ上昇させる場合、第1カウンターウェイトを切断し、第2カウンターウェイトを接続することにより、車体に変わり第2カウンターウェイトを自重下降させる力を利用して、モータで発生させる動力をアシストすることができる。したがって、モータには低出力のものを用いることができる。
【0016】
上記目的を達成するため本発明は、高所に搬送経路を備え、その入口および出口が隣接して設けられた乾燥ラインについて、当該乾燥ラインに搬入又は搬出される車体を前記高所と低所との間で昇降するリフタを提供する。前記リフタは、前記入口に搬入される車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第1昇降装置と、当該第1昇降装置に隣接して設けられ、前記出口から搬出された車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第2昇降装置と、前記第1、第2昇降装置のそれぞれの保持台を昇降するための動力を発生するモータと、当該モータで発生する動力と、前記第2昇降装置の保持台を自重下降させる力との合力により、前記第2昇降装置の保持台を上昇させる動力伝達機構と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車体用加熱乾燥装置の構成を示す平面図である。
【図2】上記実施形態に係る車体用加熱乾燥装置の側面図である。
【図3】上記実施形態に係るドロップリフタの構成を示す正面図である。
【図4】上記実施形態に係る通常運転時のドロップリフタの正面図である。
【図5】上記実施形態に係るシングル運転時のドロップリフタの正面図である。
【図6】上記実施形態の第2実施形態に係るドロップリフタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る車体用加熱乾燥装置1の構成を示す平面図である。図2は、車体用加熱乾燥装置1の構成を示す側面図である。
車体用加熱乾燥装置1は、図示しない塗装ラインの一部として設けられ、塗料が吹き付けられた車体Wを所定時間にわたって加熱することにより、塗装を焼き付ける。
【0019】
車体用加熱乾燥装置1は、入口61から出口62まで平面視で略U字状に延びる乾燥ライン6と、焼付け前の車体Wを入口61に搬入するとともに、焼付け後の車体W´を出口62から搬出するドロップリフタ2と、を含んで構成される。図1に示すように、乾燥ライン6の入口61と出口62とは隣接して設けられている。
【0020】
乾燥ライン6は、略U字状の乾燥炉71と、この乾燥炉71内で入口61から出口62へ車体Wを、車体Wの長手方向に沿って搬送するコンベヤ72と、乾燥炉71内の温度を、塗装を焼付けるために設定された所定の温度に維持するためのヒータ73と、を備える。なお、図1および図2では、乾燥炉71の一部を破断した図を示す。
【0021】
図2に示すように、コンベヤ72は、乾燥炉71の内部のうち高フロア側に設けられており、上記ヒータ73は、乾燥炉71の内部のうちコンベヤ72よりも下方に設けられている。このように、乾燥炉71内のうち暖かい空気が溜まり易い高フロア側に、車体の搬送経路となるコンベヤ72を設けることにより、車体を効率的に加熱することができる。
【0022】
図3は、ドロップリフタ2の正面図である。
ドロップリフタ2は、乾燥ラインの入口61に搬入される車体Wを昇降する第1昇降装置3と、乾燥ラインの出口62から搬出される車体W´を昇降する第2昇降装置4と、これら昇降装置3,4を駆動する駆動装置5と、この駆動装置5を制御する制御装置9と、を含んで構成される。
【0023】
第1昇降装置3と第2昇降装置4とは、乾燥ライン6の入口61と出口62に合わせて、隣接して設けられている。第1昇降装置3は、車体Wを保持する保持台31と、この保持台31を車体Wとともに鉛直方向に沿って昇降可能に支持する支持フレーム32とを備える。第2昇降装置4も同様に、車体W´を保持する保持台41と、この保持台41を車体W´とともに鉛直方向に沿って昇降可能に支持する支持フレーム42と、を備える。
【0024】
図3に示すように、第1昇降装置3の保持台31には、車体Wが搭載されたパレットPをラインの進行方向に沿って案内するレール33と、このパレットPの位置を第1昇降装置3内に固定するための図示しない固定装置と、が設けられている。これにより、第1昇降装置3の内部と外部との間、並びに、乾燥ラインの入口61と第1昇降装置3の内部との間で、車体Wの移動が容易となっている。また、第2昇降装置4の保持台41にも同様のレール43と固定装置とが設けられており、これにより、第2昇降装置4の内部と外部との間、並びに、乾燥ラインの出口62と第2昇降装置4の内部との間で、車体W´の移動が容易となっている。
【0025】
駆動装置5は、第1昇降装置3の保持台31および第2昇降装置4の保持台41を鉛直方向に沿って昇降するための駆動力を発生するモータ51と、このモータ51で発生した駆動力で保持台31,41を昇降する動力伝達機構52と、を備える。モータ51は、制御装置9から送信された制御信号に応じて、その出力軸を正転又は逆転する。
【0026】
動力伝達機構52は、リダクション機構53と、チェーン55が設けられたスプロケット54と、を含んで構成される。モータ51の出力軸は、リダクション機構53を介してスプロケット54に接続されている。
【0027】
リダクション機構53は、第1減速比と、この第1減速比よりも大きな第2減速比との2つ以上の異なる減速比でモータ51の駆動力を減速し、上記動力伝達機構52のスプロケット54を回転させる。リダクション機構53は、制御装置9から送信された制御信号に応じて減速比を変更する。
【0028】
チェーン55の両端は、それぞれ、第1昇降装置3の保持台31および第2昇降装置4の保持台41に連結されている。したがって、スプロケット54の回転によって保持台31,41の昇降が連動するようになっている。より具体的には、スプロケット54を正転(図3中、時計周り)することにより、保持台31は上昇するとともに保持台41は下降する。また、スプロケット54を逆転(図3中、反時計周り)することにより、保持台31は下降するとともに保持台41は上昇する。
【0029】
制御装置9は、以上のように構成された駆動装置5を制御し、ドロップリフタ2を通常運転とシングル運転との少なくとも2種類の異なる態様で運転することが可能となっている。以下、これら2種類の運転について、図4および図5を参照して順に説明する。
【0030】
図4は、通常運転時におけるドロップリフタ2の正面図である。
通常運転とは、入口61に搬入する車体Wを第1昇降装置3により低フロアから高フロアへ上昇させる昇動作と、出口62から搬出された車体W´を第2昇降装置4により高フロアから低フロアへ下降させる降動作とを同期して行う運転である。この通常運転は、第1昇降装置3の保持台31が低フロア側にあり、第2昇降装置4の保持台41が高フロア側にある状態で、これら保持台31,41へ車体W,W´を同期して搭載できる場合に行われる。この通常運転は、スプロケット54を正転させるようにモータ51を駆動する。
【0031】
上述のように、上昇させる保持台31と、下降させる保持台41とは、スプロケット54に掛け渡されたチェーン55により連結されている。したがって、これらスプロケット54およびチェーン55の作用により、モータ51で発生する駆動力と、第2昇降装置4の保持台41を車体W´とともに自重下降させる力との合力で第1昇降装置3の保持台31を車体Wとともに上昇させることができる。
このように、車体Wを上昇させる際に、この車体Wとほぼ同じ重量の車体W´が自重下降させる力を利用できるので、この力を利用できない場合と比較してモータ51で発生させる駆動力を小さくすることができる。したがって、この通常運転では、リダクション機構53の減速比を第1減速比に設定する。
【0032】
図5は、シングル運転時におけるドロップリフタ2の構成を示す正面図である。
シングル運転とは、車体が保持されていない第2昇降装置4の保持台41を高フロアから低フロアへ下降させながら、入口61に搬入する車体Wを第1昇降装置3により低フロアから高フロアへ上昇させる運転である。このシングル運転は、第1昇降装置3の保持台31が低フロア側にあり、第2昇降装置4の保持台41が高フロア側にある状態で、保持台31への車体Wの搭載と同期して、保持台41へ車体W´を搭載できない場合に行われる。このシングル運転では、上述の通常運転と同様にスプロケット54を正転させるようにモータ51を駆動する。
【0033】
このシングル運転では、高フロアから低フロアに下降させる保持台41に車体が搭載されていない。したがって、上述の通常運転時とは異なり保持台41とともに車体を自重下降させる力を利用できないため、通常運転時と同じ速度で車体Wを上昇させるには、モータ51では通常運転時と比較してより大きな駆動力を発生させる必要がある。そこで、このシングル運転時では、リダクション機構53の減速比を通常運転時における第1減速比よりも大きな第2減速比に設定し、通常運転時と比較してスプロケット54の回転速度を遅くする。このように、通常運転と比較して、第1昇降装置3の保持台31を上昇させる速度を遅くすることにより、モータ51で発生させる駆動力を過剰に大きくすることなく保持台41を車体Wとともに上昇させることができる。
【0034】
以上詳述した本実施形態の車体用加熱乾燥装置1によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、乾燥ライン6の入口61と出口62を隣接して設けた。これにより、この入口61に搬入される車体Wを昇降する第1昇降装置3と、出口62から搬出された車体W´を昇降する第2昇降装置4とを、隣接して設けることができる。したがって、第1昇降装置3の保持台31と第2昇降装置4の保持台41とを、簡易な構成により共通のモータ51で昇降することが可能となる。また、第1昇降装置3と第2昇降装置4とを隣接して設けることにより、共通のモータ51で発生した動力の損失を小さくすることもできる。また、本実施形態によれば、例えば、両方の昇降装置3,4の保持台31,41に車体W,W´を搭載し、第2昇降装置4で車体W´を高フロア側から低フロア側へ下降させると同時に、第1昇降装置3で車体Wを低フロア側から高フロア側へ上昇させる場合、第1昇降装置3で車体Wを上昇させるために必要な動力の少なくとも一部を、第2昇降装置4の保持台41を車体W´とともに自重下降させる力でまかなうことができるので、低出力のモータ51でも車体を昇降することができる。また、これにより、従来と比較して車体用加熱乾燥装置1にかかるコストや消費電力を低減することができる。
【0035】
本実施形態によれば、乾燥ライン6を略U字状にすることにより、十分な全長を確保しながら、入口61と出口62とを隣接させることができる。
【0036】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
図6は、本実施形態のドロップリフタ2Aの正面図である。
【0037】
ドロップリフタ2Aは、第1車体センサ34Aと第2車体センサ44Aとを備える。
第1車体センサ34Aは、第1昇降装置3の保持台31に搭載された車体の有無および車種を検出し、検出結果に応じた信号を制御装置9Aに送信する。第2車体センサ44Aは、第2昇降装置4の保持台41に搭載された車体の有無および車種を検出し、検出結果に応じた信号を制御装置9Aに送信する。
【0038】
また、動力伝達機構52Aには、第1昇降装置3の保持台31に合わせて昇降する第1カウンターウェイト81と、第2昇降装置4の保持台41に合わせて昇降する第2カウンターウェイト86とが、それぞれ第1断続装置84および第2断続装置89を介して断続可能に接続されている。
【0039】
動力伝達機構52Aには、スプロケット54と同軸で回転し、第1カウンターウェイト81が接続されたワイヤ82と、第2カウンターウェイト86が接続されたワイヤ87とを巻き取る巻取り部材58Aが設けられている。
【0040】
ワイヤ82は、第1昇降装置3に設けられたガイドローラ83に掛け渡されている。これにより、第1カウンターウェイト81は、ワイヤ82の巻取り量に応じて第1昇降装置3の側部を鉛直方向に沿って昇降するとともに、その自重によりガイドローラ83および巻取り部材58Aを介してスプロケット54を逆転させる方向に駆動する。
ワイヤ87は、第2昇降装置4に設けられたガイドローラ88に掛け渡されている。これにより、第2カウンターウェイト86は、ワイヤ87の巻取り量に応じて第2昇降装置4の側部を鉛直方向に沿って昇降するとともに、その自重によりガイドローラ88および巻取り部材58Aを介してスプロケット54を正転させる方向に駆動する。
【0041】
第1断続装置84は、制御装置9Aから送信された制御信号に応じて第1カウンターウェイト81と動力伝達機構52Aとを接続又は切断する。第2断続装置89は、制御装置9Aから送信された制御信号に応じて第2カウンターウェイト86と動力伝達機構52Aとを接続又は切断する。
【0042】
上述のように、第1カウンターウェイト81は、スプロケット54を逆転させる方向に駆動し、逆に第2カウンターウェイト86は、スプロケット54を正転させる方向に駆動する。したがって、ドロップリフタ2Aを運転するときは、これらカウンターウェイト81,86は、状況に応じて何れか一方を動力伝達機構52Aに接続し、他方を動力伝達機構52Aから切断することが好ましい。
制御装置9Aは、車体センサ34A,44Aからの出力、すなわち第1昇降装置3側の車体の有無および車種並びに第2昇降装置4側の車体の有無および車種に応じて、カウンターウェイト81,86によりスプロケット54を正転させる方向に動力を発生させる方が好ましいか又はスプロケット54を逆転させる方向に動力を発生させる方が好ましいかを判断する。制御装置9Aは、この判断結果に応じて断続装置84,89を制御し、カウンターウェイト81,86の何れか一方を動力伝達機構52Aに接続し、他方を動力伝達機構52Aから切断する。
【0043】
より具体的には、例えば、第2昇降装置4に車体W´搭載されておらず、第1昇降装置3に車体Wが搭載された状態で、第1昇降装置3の車体Wを低フロア側から高フロア側へ上昇させる場合、制御装置9Aは、第2カウンターウェイト86によりスプロケット54を正転させる方向に動力を発生させる方が好ましいと判断し、第2カウンターウェイト86を動力伝達機構52Aに接続するとともに第1カウンターウェイト81を動力伝達機構52Aから切断する。
【0044】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、第1カウンターウェイト81および第2カウンターウェイト86を動力伝達機構52Aに接続することにより、例えば、保持台31,41を自重下降させる力に加えて、これらカウンターウェイト81,86を自重下降させる力を利用して、モータ51で発生させる動力をアシストすることができるので、さらに低出力のモータを用いることができ、また消費電力をさらに低減することができる。
【0045】
本実施形態によれば、上述のように第2昇降装置4で車体W´を保持せずに、第1昇降装置3で車体Wを低フロア側から高フロア側へ上昇させる場合、第1カウンターウェイト81を切断し、第2カウンターウェイト86を接続することにより、車体に変わり第2カウンターウェイト86を自重下降させる力を利用して、モータ51で発生させる動力をアシストすることができる。したがって、モータ51には低出力のものを用いることができる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限るものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、第1減速比と第2減速比との2つの異なる減速比で変速可能なリダクション機構53を用いたが、これに限らず3つ以上の異なる減速比で変速可能なものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…車体用加熱乾燥装置(車体用乾燥装置)
2,2A…ドロップリフタ(リフタ)
3…第1昇降装置
31…保持台
4…第2昇降装置
41…保持台
5,5A…駆動装置
51…モータ
52,52A…動力伝達機構
6…乾燥ライン
61…入口
62…出口
72…コンベヤ(搬送経路)
81…第1カウンターウェイト
84…第1断続装置
86…第2カウンターウェイト
89…第2断続装置
9,9A…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所に設けられた搬送経路に沿って車体を搬送し乾燥させる乾燥ラインと、前記乾燥ラインに搬入又は搬出される車体を前記高所と低所との間で昇降するリフタと、を備えた車体用乾燥装置であって、
前記乾燥ラインの入口および出口は隣接して設けられ、
前記リフタは、
前記入口に搬入される車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第1昇降装置と、
当該第1昇降装置に隣接して設けられ、前記出口から搬出された車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第2昇降装置と、
前記第1、第2昇降装置のそれぞれの保持台を昇降するための動力を発生するモータと、
当該モータで発生する動力と、前記第2昇降装置の保持台を自重下降させる力との合力により、前記第1昇降装置の保持台を上昇させる動力伝達機構と、を備えることを特徴とする車体用乾燥装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構には、前記第1昇降装置の保持台に合わせて昇降する第1カウンターウェイトと、前記第2昇降装置の保持台に合わせて昇降する第2カウンターウェイトとが断続可能に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車体用乾燥装置。
【請求項3】
前記乾燥ラインは、前記入口から前記出口まで平面視で略U字状に延びることを特徴とする請求項1に記載の車体用乾燥装置。
【請求項4】
前記第2昇降装置で車体を保持せずに、前記第1昇降装置で車体を前記低所から前記高所へ上昇させる場合、前記第1カウンターウェイトを前記動力伝達機構から切断し、前記第2カウンターウェイトを前記動力伝達機構に接続する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の車体用乾燥装置。
【請求項5】
高所に搬送経路を備え、その入口および出口が隣接して設けられた乾燥ラインについて、当該乾燥ラインに搬入又は搬出される車体を前記高所と低所との間で昇降するリフタであって、
前記入口に搬入される車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第1昇降装置と、
当該第1昇降装置に隣接して設けられ、前記出口から搬出された車体を保持する保持台が昇降可能に支持された第2昇降装置と、
前記第1、第2昇降装置のそれぞれの保持台を昇降するための動力を発生するモータと、
当該モータで発生する動力と、前記第2昇降装置の保持台を自重下降させる力との合力により、前記第1昇降装置の保持台を上昇させる動力伝達機構と、を備えることを特徴とするリフタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183365(P2011−183365A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54657(P2010−54657)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】