説明

車体結合構造

【課題】オフセット衝突時等においてもキャビン部を車台フレームに対してより安定的に相対移動させることができる車体結合構造を得る。
【解決手段】非衝突側の連結部材100には、キャビン側取付部101とフレーム側取付部102との間に車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力を高く設定された脆弱部110を形成してあるので、車台フレーム10の回転挙動を利用して連結部材100に車両左右方向の荷重が加えられることになる。このため、非衝突側の連結部材100の破断タイミングと衝突側の連結部材100の破断タイミングとを近づけることができ、キャビン部20を車台フレーム10に対してより安定的に相対移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体結合構造に関し、とりわけ、それぞれ独立に構成される車台フレームとキャビン部とが、衝突時の荷重入力で相対移動するように構成された車体結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体結合構造として、車台フレームとキャビン部とが分離されてそれぞれ独立に構成され、キャビン部が左右両側部にそれぞれ配設された連結部材を介して車台フレームに搭載され、前面衝突または後面衝突によって連結部材が破断することにより、キャビン部が車台フレームに対して相対的に衝突側に移動して、衝突時の衝撃がキャビン部に伝播されるのを効果的に緩和するとともに、車台フレームとキャビン部の強度を高めたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−338421号公報(第6,8頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の車体結合構造にあっては、車両左右方向片側に片寄って衝突されるオフセット衝突時等には、車台フレームの衝突側には荷重が大きく作用することになるが、車両左右方向反対側となる非衝突側には衝突荷重が伝達されにくくなる。これは、軽量化等の理由から、車台フレームの前後方向に延在するフレーム部材間で車両左右方向に架設されるクロス部材については、その結合部も含めて剛体化し難いためである。
【0004】
したがって、非衝突側では車台フレームとキャビン部とを連結している連結部材に剪断荷重が入力されにくくなるため、衝突側の連結部材の破断タイミングと非衝突側の連結部材の破断タイミングとが時間的にずれてしまい、キャビン部を車台フレームに対して安定して相対移動させることが難しくなってしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、オフセット衝突時等においてもキャビン部を車台フレームに対してより安定的に相対移動させることができる車体結合構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車輪およびパワートレーンユニットを搭載する車台フレームと、乗員の居住空間であるキャビン部と、がそれぞれ独立に構成され、それら車台フレームとキャビン部とが、衝突時の荷重入力によって相対移動を可能とする連結部材を介して連結された車体結合構造において、前記連結部材は、車台フレームとキャビン部のそれぞれの車両左右方向両側部の骨格部分同士を連結するとともに、各連結部材には、キャビン側取付部とフレーム側取付部との間に車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力を高く設定した脆弱部が形成されることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が前面または後面でオフセット衝突した際に、車台フレームは車両左右方向片側に片寄った衝突部分を中心に回転する一方、キャビン部は慣性力により衝突時の速度ベクトルに沿った方向、つまり、オフセット前面衝突である場合には車両前方に、オフセット後面衝突である場合には車両後方に相対移動する。
【0008】
このとき、各連結部材には、キャビン側取付部とフレーム側取付部との間に車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力を高く設定した脆弱部を形成してあるので、車台フレームの回転挙動を利用して非衝突側の連結部材に車両左右方向の荷重を印加することで、非衝突側の連結部材の破断タイミングと衝突側の連結部材の破断タイミングとを近づけることができ、キャビン部を車台フレームに対して安定的に相対移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1実施形態)図1は、車体骨格の分解斜視図、図2は、連結部材の取付状態を示す斜視図、図3は、車台フレームおよびキャビン部のオフセット前面衝突時の挙動を上側から見た平面図、図4は、衝突側の連結部材の破断状態を斜め前方から見た斜視図、図5は、非衝突側の連結部材の破断状態を斜め後方から見た斜視図、また、図6は、非衝突側の連結部材の破断後の状態を斜め後方から見た斜視図である。
【0011】
本実施形態の車体結合構造は、図1に示すように図示省略した車輪やパワートレーンユニットを搭載する車台フレーム10と、乗員の居住空間であるキャビン部20と、を分離してそれぞれが独立して相互に分離可能に構成されており、それら車台フレーム10とキャビン部20とが、衝突時の荷重入力により相対移動を可能とする連結部材100を介して連結してある。
【0012】
車台フレーム10には、車両左右方向両側に車両前後方向に延在して骨格部分となる左・右サイドフレーム11L,11Rを備え、これら左・右サイドフレーム11L,11Rには、キャビン部20の下方に位置する平坦なフロア部12と、このフロア部12の車両前方および車両後方に傾斜面13a,13bを形成する前方・後方キックアップ部13F,13Rと、前方キックアップ部13Fの車両前方に設けたフロントエンド部14Fおよび後方キックアップ部13Rの車両後方に設けたリヤエンド部14Rと、を形成してある。
【0013】
また、左・右サイドフレーム11L,11Rの車両前端部および車両後端部は、それぞれフロントエンドクロスメンバ15Fおよびリヤエンドクロスメンバ15Rで連結されるとともに、フロア部12の前側部および後側部は、それぞれフロントフロア部クロスメンバ16Fおよびリヤフロア部クロスメンバ16Rで連結され、かつ、これらフロント・リアフロア部クロスメンバ16F,16Rの前後方向中間部はセンタフロア部クロスメンバ16Cで連結してある。
【0014】
このとき、フロント・リヤ・センタフロア部クロスメンバ16F,16R,16Cの上面は、左・右サイドフレーム11L,11Rの上面から上方に突出しないように設定され、本実施形態ではそれぞれを同一面に形成してある。
【0015】
そして、上記構成の車台フレーム10では、車両前方および車両後方からの入力に対する剛性・強度のバランスについて、フロントエンド部14Fとリヤエンド部14Rとで略等しくする一方、前方・後方キックアップ部13F,13Rとフロア部12とで略等しくし、かつ、車両前側のフロントエンド部14Fおよびリヤエンド部14Rよりも車両後側の前方・後方キックアップ部13F,13Rおよびフロア部12を大きく設定する、つまり、フロントエンド部14Fの強度≒リヤエンド部14Rの強度<前方・後方キックアップ部13F,13Rの強度≒フロア部12の強度とすることが好ましい。
【0016】
キャビン部20の下面は平坦に形成されており、その下部骨格として車両左右方向両側端部に前後方向に延在する左・右シル部21L,21Rが設けられている。それら左・右シル部21L,21Rの車両前端部は、フロントクロスメンバ22Fで連結されるとともに、車両後端部はリヤクロスメンバ22Rで連結され、かつ、前後方向中央部はセンタクロスメンバ22Cで連結されている。
【0017】
また、左・右シル部21L,21Rの前端部には、フロントピラー24Aを、前後中央部には、センターピラー24Bを、後端部にはリヤピラー24Cをそれぞれ立ち上げてあり、左側および右側のそれぞれの上端部に左・右ルーフサイドレール25L,25Rを連結してある。
【0018】
そして、キャビン部20の下面には、各クロスメンバ22F,22R,22Cの下側に亘ってフロアパネル26(図2参照)を敷設し、かつ、そのフロアパネル26を各クロスメンバ22F,22R,22Cに結合してある。
【0019】
また、左・右のフロントピラー24Aを下方から所定高さ位置でダッシュクロスメンバ27によって連結し、そのダッシュクロスメンバ27の下方をダッシュパネル28で覆ってある。
【0020】
また、図2に示すように、平板状のインナパネル21La,21Raと、車両左右方向外方に突出するように湾曲したアウタパネル21Lb,21Rbと、をそれぞれの上・下端部で接合することで、左・右シル部21L,21Rをそれぞれ閉断面に形成してある。
【0021】
このとき、左・右シル部21L,21Rの車両左右方向の間隔W1は、車台フレーム10の左・右サイドフレーム11L,11Rの車両左右方向の間隔W2よりも所定量大きく形成してあり、キャビン部20が車台フレーム10から左右に突出するようになっている。
【0022】
ここで、車台フレーム10とキャビン部20とを連結した連結部材100は、図1に示すように、車台フレーム10の中央部に設けたフロア部12の車両左右方向両側部にそれぞれ前部と後部に対を成して4箇所(図中P部で示す)に配置されている。それら連結部材100の配置箇所は、キャビン部20下部の車両左右方向両側部で前部と後部に対応した部位となっている。
【0023】
そして、各連結部材100は、図2に示すように、車台フレーム10とキャビン部20のそれぞれの車両左右方向両側部の骨格部分同士、つまり、車台フレーム10では左・右サイドフレーム11L,11Rと、キャビン部20では左・右シル部21L,21Rとの対応するもの同士を連結するとともに、各連結部材100には、キャビン側取付部101とフレーム側取付部102との間に車両前後方向(図中略左右方向)軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向(図中略紙面直角方向)軸周りの曲げ耐力を高く設定した脆弱部110が形成されている。
【0024】
この連結部材100は、アルミ合金等の軽金属を素材とするダイキャストにより1つのブロック体として全体に縦長に成形され、上部にキャビン側取付部101を形成するとともに、下部にフレーム側取付部102を形成してある。
【0025】
キャビン側取付部101は、全体として略立方体状であり、その車両左右方向外側面が取付面101aとなっている。また、フレーム側取付部102は、車両前後方向に細長くなるように延長された略直方体状となり、その車両左右方向内側面が取付面102aとなっている。
【0026】
そして、キャビン側取付部101が左・右シル部21L,21Rのインナパネル21La,21Raに取り付けられるとともに、フレーム側取付部102が左・右サイドフレーム11L,11Rの外側面11La,11Raの下部に取り付けられている。
【0027】
このとき、キャビン側取付部101はフレーム側取付部102よりも上方にオフセット(オフセット量K)されており、また、脆弱部110は、フレーム側取付部102の近傍に配置されている。
【0028】
そして、このキャビン側取付部101が左・右シル部21L,21Rのインナパネル21La,21Raに取り付けられるにあたっては、その取付部101に挿通されたピン部材130を介して連結部材100とインナパネル21La,21Raとが相互に結合されている。
【0029】
ピン部材130は、その中心軸方向が車両左右方向に沿う姿勢で配置されており、キャビン側取付部101と左・右シル部21L,21Rとはピン部材130を中心として、車両左右方向軸周りに相対回転できるようになっている。
【0030】
また、フレーム側取付部102は、車両前後方向に適宜間隔をもって配置される複数のボルト131を介して左・右サイドフレーム11L,11Rに結合されている。
【0031】
脆弱部110は、ブロック状となった連結部材100をフレーム側取付部102に至る部分で車両左右方向(図2中略紙面直角方向)に薄肉化することで、車両前後方向に細長い断面矩形状の薄肉部として形成されている。
【0032】
ここで、本実施形態では、前後で対をなす連結部材100について、前部に配設された連結部材100にそれぞれ形成された脆弱部110の車両前後方向軸周りの曲げ耐力より、後部に配設された連結部材100にそれぞれ形成された脆弱部110の車両前後方向軸周りの曲げ耐力を大きくしてある。
【0033】
また、車台フレーム10のフロア部12には、フロント・リアフロア部クロスメンバ16F,16Rとセンタフロア部クロスメンバ16Cとを設けたが、これらクロスメンバ16F,16R,16Cのいずれかは、車両左右方向に並べて対を成して配設される左右の連結部材100同士を結ぶ位置に設けることが望ましく、本実施形態ではリヤフロア部クロスメンバ16Rが、車両後方の左・右連結部材100を結ぶ線上に配置されている。
【0034】
したがって、本実施形態にかかる車体結合構造によれば、図3に示すように、車両がオフセット前面衝突(左舷オフセット)した場合、衝突対象物Cに車台フレーム10の左サイドフレーム11Lの前端が干渉し、当該部分のフロントエンド部14Fが圧潰(軸方向に圧縮して潰れる状態)する。なお、図3中、Wfは前輪、Wrは後輪を示す。
【0035】
そして、衝突荷重Fは左サイドフレーム11L側からキックアップ部13Fに伝達され、そのまま左舷のリア側のキックアップ部13Rへと伝達されるが、さらに、フロントフロア部クロスメンバ16Fを介して非衝突側の右サイドフレーム11Rへも伝達されることになる。
【0036】
このとき、車両前後方向の衝突荷重については、衝突側が非衝突側よりも大きくなる。また、車両前後方向に入力された衝突荷重Fは連結部材100に伝播して、その脆弱部110を破断させることにより、キャビン部20は車台フレーム10に対して相対的に衝突側(車両前方)に相対移動する。
【0037】
ここで、仮に、キャビン部20が相対移動する際の減速度をコントロールするために、連結部材の車両前後方向の破断荷重を単に高めに設定すると、オフセット衝突の場合の非衝突側では入力荷重が小さくなるため、連結部材が破断されなくなってしまうことになる。
【0038】
また、衝突現象が進行するにしたがって、衝突側のフロントエンド部14Fの変形が終了し、車台フレーム10はオフセットした衝突位置を中心Oとして図3で反時計回りに回転することになる一方、キャビン部20は慣性力によって衝突初期の速度ベクトルの方向、つまり、車両前方に相対移動するため、キャビン部20と車台フレーム10とは相対的に車両横方向にズレが生じてしまう。このため、車台フレーム10に沿って安定的にキャビン部20を前方移動させるためには、相対的なズレを抑制する必要がある。
【0039】
ここで、車両の通常走行時に発生する横加速度は0G〜5G程度であるが、オフセット衝突に伴う車台フレーム10の回転挙動時の横加速度は30G〜40Gにも達することが確かめられている。
【0040】
こうした点を考慮して、本実施形態の車体結合構造では、オフセット前面衝突で衝突側(本実施形態では左舷側)に入力された衝突荷重Fは、衝突側の左サイドフレーム11Lを伝って車両後方へと伝達され、当該衝突側の連結部材100では、図4に示すように車両前後方向の荷重によって脆弱部110が破断する。
【0041】
一方、非衝突側の連結部材100には、キャビン側取付部101とフレーム側取付部102との間に車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力を高く設定された脆弱部110を形成してあるので、図5に示すように、脆弱部110は車台フレーム10の回転挙動に伴う車両左右方向の荷重によって破断する。
【0042】
このため、脆弱部110の車両前後方向軸周りの曲げ耐力と車両前後方向軸周りの曲げ耐力とを適宜に調整することで、非衝突側の連結部材100の破断タイミングと衝突側の連結部材100の破断タイミングとを近づけることができ、キャビン部20を車台フレーム10に対してより安定的に車両前後方向に相対移動させることが可能となる。
【0043】
このとき、各連結部材100では、キャビン側取付部101をフレーム側取付部102よりも上方にオフセットしているので、脆弱部110に曲げモーメントが集中されて、脆弱部110がより破断しやすくなる。
【0044】
また、本実施形態では、脆弱部110が、フレーム側取付部102の近傍に配置されているため、脆弱部110が破断した際には、図6に示すように、その脆弱部110よりも上方部分の破断残り部分103がキャビン部20に残された状態となる。
【0045】
このため、オフセット衝突時の車台フレーム10の回転挙動に伴って、車台フレーム10とキャビン部20とが車両横方向に相対ズレを発生した場合には、破断残り部分103が車台フレーム10の右サイドフレーム11Rの側面に干渉することによって、ズレを抑制することができ、以て、より安定的に車台フレーム10に沿ってキャビン部20を前後方向に相対移動させることができる。
【0046】
また、キャビン側取付部101は、その取付部101に挿通したピン部材130を介して連結部材100と左・右シル部21L,21Rとを結合するので、衝突時に車台フレーム10に荷重Fが加わり、取付部101の取付部で剪断荷重を受けることになるが、このとき、連結部材100のキャビン部20側に連結する部分をピン結合とすることで、曲げモーメント最大点をフレーム側取付部102の近傍に設けた脆弱部110に集中させることができるようになり、より安定的に脆弱部110で破断させることができる。
【0047】
さらに、脆弱部110は、連結部材100を車両左右方向に薄肉化することで車両前後方向に長い断面矩形状の薄肉部として形成されているので、その薄肉部の断面係数により車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力の方を高くしやすくなり、オフセット衝突時に非衝突側の連結部材100を脆弱部110からより確実に破断させることができる。
【0048】
さらにまた、キャビン部20の前部と後部に対を成して配設した連結部材100について、前部に配設された連結部材100に形成された脆弱部110の車両前後方向軸周りの曲げ耐力より、後部に配設された連結部材100に形成された脆弱部110の車両前後方向軸周りの曲げ耐力を大きくしたので、前面オフセット衝突時に、車台フレーム10とキャビン部20とが車両左右方向に片寄った衝突点を中心Oに横方向に相対ズレを発生した際に、そのズレ量が後方側程大きくなるため、後部に配設された連結部材100の車両前後方向軸周りに加わる曲げ耐力を大きくすることで、前部と後部の双方の連結部材100の破断タイミングを近付けることができ、キャビン部20をより安定的に車台フレーム10に沿って車両前後方向に相対移動させることができる。
【0049】
また、車台フレーム10は、車両左右方向に対を成して配設される左右の連結部材100を結ぶ位置にクロスメンバ(本実施形態ではリヤフロア部クロスメンバ16R)を設けたので、オフセット衝突によって車台フレーム10とキャビン部20が横方向の相対ズレを発生した際に、車両左右方向の荷重をクロスメンバ16Rを介して非衝突側の連結部材100に効率良く伝達し、その非衝突側の連結部材100の破断を促進することができる。
【0050】
もちろん、車両後方の左・右連結部材100を結ぶリヤフロア部クロスメンバ16Rに限ることなく、フロントフロア部クロスメンバ16Fを、車両前方に配設した左右の連結部材100を結ぶ位置に設けてもよい。
【0051】
(第2実施形態)図7は、非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。なお、本実施形態にかかる車体結合構造は、上記第1実施形態にかかる車体結合構造と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0052】
本実施形態にかかる車体結合構造は、図7に示すように、基本的には上記第1実施形態と略同様の構成を備えている。すなわち、ブロック体で形成された連結部材100の上部にはキャビン側取付部101が、また下部にはフレーム側取付部102が形成してあり、キャビン側取付部101が左・右シル部21L,21Rのインナパネル21La,21Raに取り付けられるとともに、フレーム側取付部102が左・右サイドフレーム11L,11Rの外側面11La,11Raの下部に取り付けられ、フレーム側取付部102の近傍に脆弱部110が形成されている。
【0053】
また、キャビン側取付部101は、その取付部101に挿通したピン部材130Aを介して連結部材100とインナパネル21La,21Raとを結合するようになっているが、本実施形態では、ピン部材130Aは、その中心軸方向が車両前後方向に沿う姿勢で配置されている。
【0054】
キャビン側取付部101を車両前後方向に挿通するピン部材130Aの両端部は、インナパネル21La,21Raからキャビン側取付部101の前後両側面を挟むように突設した側壁132a,132bを有するブラケット132によって支持されており、キャビン側取付部101は両側壁132a,132b間でピン部材130Aを中心として、車両前後方向軸周りに相対回転できるようになっている。
【0055】
したがって、本実施形態にかかる車体結合構造によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するのはもちろんのこと、特に、キャビン側取付部101がピン部材130Aを介して車両前後方向軸周りに相対回転できるようになっているので、オフセット衝突時に連結部材100に車両左右方向の荷重が入力された時に、曲げモーメントを脆弱部110により集中させ易くなって、脆弱部110でより確実に破断させることができる。
【0056】
(第3実施形態)図8は、非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。なお、本実施形態にかかる車体結合構造は、上記第1あるいは第2実施形態にかかる車体結合構造と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0057】
本実施形態にかかる車体結合構造は、図8に示すように、基本的には上記第1実施形態と略同様の構成を備えている。すなわち、連結部材100では、上部に設けたキャビン側取付部101と下部に設けたフレーム側取付部102とが上下方向にオフセットされており(K:オフセット量)、かつ、脆弱部110が、フレーム側取付部102の近傍に配置してあるとともに、車両左右方向に薄肉化することで車両前後方向に長くなる断面矩形状の薄肉部として形成してある。
【0058】
そして、本実施形態では、脆弱部110には、車両前後方向に沿う断面V字状の溝111が形成されている。
【0059】
したがって、本実施形態にかかる車体結合構造によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するのはもちろんのこと、特に、脆弱部110に車両前後方向に沿う溝111が形成されていることにより、オフセット衝突時に衝突位置を中心Oとして車台フレーム10とキャビン部20とが車両横方向にズレが発生して、連結部材100に車両左右方向の荷重が入力された時に、溝111によって脆弱部110は、車両左右方向軸周りの曲げ耐力よりも車両前後方向軸周りの曲げ耐力の方が低くなるため、非衝突側の連結部材100をより迅速に、かつ、より安定的に破断させることができるようになる。
【0060】
また、本実施形態では、上記脆弱部110を第1実施形態の連結部材100に適用した場合を例示したが、第2実施形態の連結部材100に対しても適用可能であることはもちろんである。
【0061】
(第4実施形態)図9は非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。なお、本実施形態にかかる車体結合構造は、上記第1〜第3実施形態にかかる車体結合構造と同様の構成要素を備えている。よって、それら同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0062】
本実施形態にかかる車体結合構造は、図9に示すように、基本的には上記第2実施形態と略同様の構成を備えている。すなわち、連結部材100では、上部に設けたキャビン側取付部101は、その中心軸方向が車両前後方向に沿う姿勢で配置したピン部材130Aを介して、ブラケット132の側壁132a,132bに相対回転可能に支持されているが、特に、本実施形態では、ピン部材130Aの外周に緩衝材としてのゴムブッシュ133を設けてある。
【0063】
すなわち、キャビン側取付部101には、ピン部材130Aを挿通する挿通孔134が車両前後方向に形成されるが、本実施形態では、その挿通孔134がピン部材130Aよりも大径に形成され、それらピン部材130Aの外周と挿通孔134の内周との間にゴムブッシュ133が介挿してある。このとき、ゴムブッシュ133は圧入でも良いが、特に加硫接着しておくことが好ましい。
【0064】
したがって、本実施形態にかかる車体結合構造によれば、第2実施形態と同様の作用効果を奏するのはもちろんのこと、特に、ピン部材130Aの外周にゴムブッシュ133が設けられているので、通常走行時に、車台フレーム10からキャビン部20に伝達される路面振動やエンジン振動等の騒音がゴムブッシュ133によって効率良く吸収され、車室内での静粛性を向上することができる。
【0065】
また、ゴムブッシュ133がピン部材130Aの外周に設けられることにより、連結部材100にはシル部21L,21Rに対して車両前後方向軸周りに所定の回転抵抗が作用する。このとき、ゴムブッシュ133のねじれ耐力は脆弱部110の曲げ耐力よりも著しく低いため、オフセット衝突時にゴムブッシュ133の変形が底付きした時点で荷重を支持できるため、最終的には、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
また、本実施形態ではゴムブッシュ133を第2実施形態の連結部材100に適用した場合を例示したが、第1実施形態の連結部材100に対しても適用可能であることはもちろんである。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、連結部材100はダイキャストによるブロック体とすることなく、薄板鋼板を断面コ字状や閉断面となるように折曲形成することができ、これによって更なる軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造が適用される車体骨格の分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造の連結部材の取付状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造が適用される車台フレームおよびキャビン部のオフセット前面衝突時の挙動を示す平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造の衝突側の連結部材の破断状態を斜め前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造の非衝突側の連結部材の破断状態を斜め後方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態にかかる車体結合構造の非衝突側の連結部材の破断後の状態を斜め後方から見た斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる車体結合構造の非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる車体結合構造の非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる車体結合構造の非衝突側の連結部材を斜め後方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
10 車台フレーム
11L,11R サイドフレーム(骨格部分)
16R リヤフロア部クロスメンバ(左右連結部材を結ぶ位置に設けたクロスメンバ)
20 キャビン部
21L,21R シル部(骨格部分)
100 連結部材
101 キャビン側取付部
102 フレーム側取付部
110 脆弱部
111 溝
130,130A ピン部材
133 ゴムブッシュ(緩衝材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪およびパワートレーンユニットを搭載する車台フレームと、乗員の居住空間であるキャビン部と、がそれぞれ独立に構成され、それら車台フレームとキャビン部とが、衝突時の荷重入力によって相対移動を可能とする連結部材を介して連結された車体結合構造において、
前記連結部材は、車台フレームとキャビン部のそれぞれの車両左右方向両側部の骨格部分同士を連結するとともに、各連結部材には、キャビン側取付部とフレーム側取付部との間に車両前後方向軸周りの曲げ耐力よりも車両左右方向軸周りの曲げ耐力を高く設定した脆弱部が形成されることを特徴とする車体結合構造。
【請求項2】
前記キャビン側取付部が前記フレーム側取付部よりも上方にオフセットしていることを特徴とする請求項1に記載の車体結合構造。
【請求項3】
前記脆弱部が前記フレーム側取付部の近傍に配置されることを特徴とする請求項2に記載の車体結合構造。
【請求項4】
前記連結部材と前記キャビン部の骨格部分とが前記キャビン側取付部に挿通させたピン部材を介して結合されることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。
【請求項5】
前記脆弱部は、連結部材を車両左右方向に薄肉化することで車両前後方向に長い断面矩形状の薄肉部として形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。
【請求項6】
前記脆弱部には、車両前後方向に沿う断面V字状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。
【請求項7】
前記連結部材が、キャビン部の前部と後部にそれぞれ設けられ、
前部に配設された連結部材に形成された脆弱部の車両前後方向軸周りの曲げ耐力より、後部に配設された連結部材に形成された脆弱部の車両前後方向軸周りの曲げ耐力が大きいことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。
【請求項8】
前記連結部材が、キャビン部の右部と左部のそれぞれに車両左右方向に並べて設けられ、
それら車両左右方向に並べられた連結部材同士を結ぶ位置に、車台フレームの一部としてのクロスメンバが設けられることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。
【請求項9】
前記ピン部材の外周に緩衝材が設けられることを特徴とする請求項4に記載の車体結合構造。
【請求項10】
前記連結部材は、薄板鋼板で折曲形成されることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1つに記載の車体結合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−168820(P2008−168820A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4919(P2007−4919)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】