説明

車体骨格の補強構造

【課題】 補強部材に対する制約が少なく、かつ骨格部材を効果的に補強することができる車体骨格の補強構造を得る。
【解決手段】 ロッカ補強構造10では、斜体前後方向に長手とされた平断面構造のロッカ12が、該ロッカ12内に配設された板ばねであるロッカリインフォースメント20によって補強されている。ロッカリインフォースメント20は、弾性変形状態で、長手方向中央部である荷重入力部22がロッカ20の外壁18に接触すると共に、荷重入力部22に対し長手方向両側に位置する荷重分散部24、26がロッカ20の内壁16に摺動可能に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車体を構成する骨格部材を補強するための車体骨格の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体下部の両側部には、前後方向に沿って長手とされた閉断面構造の骨格部材であるロッカがそれぞれ配設されている。これらのロッカを補強するために、ロッカ内にはロッカリインフォースメントが配設される。ロッカリインフォースメントとして、車体外側に凸にとなるアーチ状に形成すると共に頂部をロッカの前後方向中央部に配置し、かつ前後の端部をそれぞれフロントサイドメンバ、リヤフロアサイドメンバに連結したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−166383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来のロッカ補強構造では、ロッカリインフォースメントの前後端をそれぞれフロントサイドメンバ、リヤフロアサイドメンバに連結するため、ロッカリインフォースメントの材質や寸法形状に制約が生じる。このような制約のために、材質変更による軽量化や形状等の変更による適用車種の拡大が阻害される場合があり得る。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、補強部材に対する制約が少なく、かつ骨格部材を効果的に補強することができる車体骨格の補強構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、車体外向きに凸となる湾曲形状に形状され長手方向中間部が荷重入力部とされた弾性補強部材を、前記荷重入力部の長手方向両側に位置する荷重分散部の少なくとも一方が車体の骨格部材に車体外側から相対変位可能に接触するように、該骨格部材に設けた。
【0006】
請求項1記載の車体骨格の補強構造では、弾性補強部材の荷重入力部に荷重が入力すると、荷重分散部を介して骨格部材に荷重が伝達される。このとき、湾曲形状の弾性補強部材は、その荷重入力部が車体内方に移動するように弾性的に変形することで全体として長手方向に伸長し、荷重分散部の位置すなわち骨格部材への荷重伝達部位を長手方向に変化させる。このため、車体の骨格部材では、単に荷重入力部に対応する前後位置から離れた荷重分散部との接触部位に荷重が分散されるだけでなく、この荷重分散位置が弾性補強部材の変形量に応じて変化することで、より広い範囲に荷重が分散される。これにより、骨格部材は、局部的に大きな荷重が作用して大きく変形することが防止又は抑制される。すなわち、骨格部材の曲げ剛性が向上する。
【0007】
また、弾性補強部材は、骨格部材に対し荷重分散部の接触位置を変化可能に支持されるため、弾性補強部材を骨格部材に固着する必要がなく、この固着に伴う弾性補強部材の材質や寸法形状に制約が生じることはない。すなわち、弾性補強部材は、その機能によって材質や寸法形状が決められれば良い。
【0008】
このように、請求項1記載の車体骨格の補強構造では、補強部材に対する制約が少なく、かつ骨格部材を効果的に補強することができる。なお、弾性補強部材としては、例えば、板ばね状又は線ばね状に形成されたものを用いることができる。
【0009】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、長手方向に直交する断面が閉断面である筒状に形成された骨格部材と、長手方向中間部に形成された荷重入力部が前記骨格部材の外壁に接触すると共に、前記荷重入力部の長手方向両側に位置する荷重分散部が前記骨格部材の内壁にぞれぞれ摺動可能に接触した弾性補強部材と、を備えている。
【0010】
請求項2記載の車体骨格の補強構造では、骨格部材の外壁を介して荷重入力部に内向きの荷重が入力した弾性補強部材は、弾性的に変形しつつ荷重分散部から骨格部材の内壁に荷重を伝達する。このため、骨格部材は、弾性補強部材の荷重入力部が位置する部分の変形が抑制される。また、弾性補強部材の変形量に応じて骨格部材の内壁における荷重分散部が接触する位置が変化し、すなわち骨格部材のより広い範囲に荷重が分散され、骨格部材は、特定部位に局所的な荷重が入力して大きく変形することが防止される。
【0011】
また、弾性補強部材は、骨格部材内に各荷重分散部が内壁との摺動可能に配設されるため、弾性補強部材を骨格部材に固着する必要がなく、この固着に伴う弾性補強部材の材質や寸法形状に制約が生じることはない。すなわち、弾性補強部材は、その機能によって材質や寸法形状が決められれば良い。
【0012】
このように、請求項2記載の車体骨格の補強構造では、補強部材に対する制約が少なく、かつ骨格部材を効果的に補強することができる。なお、弾性補強部材としては、例えば、板ばね状又は線ばね状に形成されたものを用いることができる。
【0013】
請求項3記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、請求項1又は請求項2記載の車体骨格の補強構造において、前記骨格部材は、車体下部における車幅方向の最も外側で車体前後方向に沿って配設されるロッカであり、前記弾性補強部材の荷重入力部の前後位置を、乗員着座部の前後位置に一致するように配置した。
【0014】
請求項3記載の車体骨格の補強構造では、ロッカ内における乗員の側方で車体外向きに凸となる荷重入力部が配置されており、この荷重入力部に車体外側から荷重が入力すると、乗員に対し前後両側に位置する荷重分散部から内壁に荷重が伝達される。これにより、ロッカにおける乗員側方部分の変形が抑制され、側突時に乗員を効果的に保護することができる。
【0015】
請求項4記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格の補強構造において、前記荷重入力部に車体内向きに作用する荷重によって変形した前記弾性補強部材の両端部の移動軌跡上に、該両端部に押圧されて抵抗力を生じる緩衝部を設けた。
【0016】
請求項4記載の車体骨格の補強構造では、荷重入力部に入力した荷重によって弾性補強部材が変形すると、該弾性補強部材の両端は、それぞれの移動(変形)軌跡上に位置する緩衝部を押圧する。この緩衝部は、押圧されて抵抗力(広義の減衰力等)を生じ、該押圧源となるエネルギを消費(吸収)する。このため、例えば車体への側突時に、衝撃エネルギが吸収されて骨格部材(ロッカ)の内壁側に伝わる衝撃力が緩和される。
【0017】
請求項5記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の車体骨格の補強構造において、前記荷重分散部は、前記弾性補強部材の長手方向の両端に配置されている。
【0018】
請求項5記載の車体骨格の補強構造では、弾性補強部材の長手方向両端がそれぞれ荷重分散部とされているため、弾性補強部材を小型、軽量に構成することができる。
【0019】
請求項6記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体骨格の補強構造において、前記弾性補強部材は、該弾性補強部材の長手方向に沿って配列された強化繊維を含む繊維強化プラスチックにて構成されている。
【0020】
請求項6記載の車体骨格の補強構造では、弾性補強部材が繊維強化プラスチックで構成されているため、金属材にて弾性補強部材を構成する場合と比較して軽量化を図ることができる。また、この繊維強化プラスチックには、弾性補強部材の長手方向に配列された強化繊維が含まれているため、この弾性補強部材は曲げ荷重によって折れ難い。このため、弾性補強部材は、荷重入力部に入力した荷重を、荷重分散部を介して骨格部材の内壁に確実に分散することができる。さらに、弾性補強部材が変形する際には、弾性補強部材の長手方向に配列された強化繊維が切れることによる衝撃吸収作用を得ることも可能である。
【0021】
請求項7記載の発明に係る車体骨格の補強構造は、請求項6記載の車体骨格の補強構造において、前記弾性補強部材は、前記強化繊維が長手方向に沿って一方向に配列された一方向強化の繊維強化プラスチックにて構成されている。
【0022】
請求項7記載の車体骨格の補強構造では、弾性補強部材を構成する繊維強化プラスチックの全ての強化繊維が弾性補強部材の長手方向に沿って配列されているため、この弾性補強部材の曲げ変形に伴って繊維配列方向にクラックが生じ易い。このため、この構成では、上記クラックの発生に伴う衝撃吸収作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明に係る車体骨格の補強構造は、補強部材に対する制約が少なく、かつ骨格部材を効果的に補強することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る車体骨格の補強構造が適用されたロッカ補強構造10について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、及び矢印INは、それぞれロッカ補強構造10が適用された自動車車体Bの前方向(進行方向)、上方向、下方向、及び車幅方向内側を示している。
【0025】
図3には、ロッカ補強構造10が適用された車体Bの概略全体構成が模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、車体Bは、骨格部材としてのロッカ12を備えている。ロッカ12は、車体Bの下部における車幅方向最外側に、前後方向に長手となるように左右一対配置されて、それぞれの前後端が前輪Wfと後輪Wrの近傍に至っている。また、左右のロッカ12は、長手方向の複数箇所で、図示しないクロスメンバによって架け渡され(互いに連結され)ており、車体Bの骨格構造を構成している。
【0026】
また、車体Bにおけるロッカ12の内側方には、フロントシート(運転席又は助手席)Sが配設されている。フロントシートSは、ロッカ12の長手方向の略中央部の内側方に位置している。以下、ロッカ12を補強するためのロッカ補強構造10について説明するが、左右のロッカ12は基本的に左右対称に構成されるため、一方のロッカ12に適用されるロッカ補強構造10について説明することとする。
【0027】
図1に示される如く、ロッカ12は、底壁14と、この底壁14と対向する図示しない天壁と、底壁14及び天壁の車幅方向内端を連結する内壁16と、底壁14及び天壁の車幅方向外端を連結する外壁18とを有し、長手方向との直交面に沿う断面が略矩形枠状となる閉断面構造(矩形筒状)に形成されている。このロッカ12は、例えば車幅方向外向きに開口するコ字状断面の半体と、車幅方向内向きに開口するコ字状断面の半体とが、それぞれ開口縁から上下に張り出したフランジにて互いに接合されることで、上記の如く閉断面構造として形成される。
【0028】
そして、ロッカ補強構造10は、ロッカ12内に配設された弾性補強部材としてのロッカリインフォースメント20を備えている。ロッカリインフォースメント20は、車幅方向外向きに凸形状とされた平面視アーチ形状に形成されており、全体として車体Bの前後方向に長手とされている。この実施形態では、ロッカリインフォースメント20は、厚み方向を車幅方向に略一致させると共に、幅方向を上下方向に一致させた板ばねとして構成されている。
【0029】
ロッカリインフォースメント20は、弾性変形状態でロッカ12内に収納されている。具体的には、ロッカリインフォースメント20は、その長手方向中央部である荷重入力部22をロッカ12の外壁18に当接させると共に、その長手方向両端部である前後の荷重分散部24、26をそれぞれ内壁16に当接させている。ロッカリインフォースメント20は、自らの弾性力で荷重入力部22、前後の荷重分散部24、26をロッカ12の内側から押し付けることで、該ロッカ12内で保持されている(がたつき、位置ずれが防止されている)。このため、ロッカリインフォースメント20は、ロッカに対し固着等によって拘束される部分がなく、荷重入力部22が外壁18に摺動可能に接すると共に、各荷重分散部24、26が内壁16に摺動可能に接している。
【0030】
以上説明したロッカリインフォースメント20は、図1に示される如く、その荷重入力部22がフロントシートSの側方に位置すると共に、各荷重分散部24、26がフロントシートSの前後端よりも前後方向外側に位置するように、その寸法形状及び配置が決められている。
【0031】
さらに、ロッカリインフォースメント20は、繊維強化プラスチックにて構成されている。この実施形態では、ロッカリインフォースメント20を構成する繊維強化プラスチックは、強化繊維が一方向に沿って配列された一方向強化型の繊維強化プラスチックとされており、強化繊維の配列方向がロッカリインフォースメント20の長手方向に一致されている。なお、強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などを用いることができる。
【0032】
また、ロッカ補強構造10は、ロッカ12内におけるロッカリインフォースメント20の前後に配設された緩衝部としての邪魔板28、30を備えている。邪魔板28は、ロッカリインフォースメント20の荷重分散部24の前方で、内壁16から立設されている。邪魔板30は、荷重分散部26の後方で、内壁16から立設されている。すなわち、邪魔板28、30は、ロッカリインフォースメント20の荷重入力部22への車幅方向内向き荷重による変形に伴う荷重分散部24、26の移動軌跡上に配置されている。そして、各邪魔板28、30は、上記の如きロッカリインフォースメント20の変形量が大きくなると、該ロッカリインフォースメント20の荷重分散部24、26によって前または後に押圧され、この押圧荷重が所定値を超えると破壊(破断)されるようになっている。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0034】
上記構成のロッカ補強構造10が適用された車体Bでは、ポールPが車体BにおけるフロントシートSの側方に外側から衝突すると、図1に矢印Fiにて示される如くポールPからロッカ12の外壁18を介して、ロッカリインフォースメント20の荷重入力部22に衝突荷重が入力される。この衝突荷重によって、図2に示される如く、ロッカ12の外壁18が内側に潰れると共に、ロッカリインフォースメント20は荷重入力部22を内壁16に近接する方向に変形する。
【0035】
ロッカリインフォースメント20に荷重入力部22から入力された荷重は、主にロッカリインフォースメント20の長手方向に沿って荷重分散部24、26に伝わり、さらに図2に矢印Foにて示す如く、荷重分散部24、26からロッカ12の内壁16に分散して伝達される。この荷重は、左右のロッカ12を連結するクロスメンバ等(を含む骨格構造)によって支持される。
【0036】
このとき、ロッカリインフォースメント20は、ポールPからの衝突荷重によって変形が増大するにしたがって前後に伸びるので、前後の荷重分散部24、26を前後方向外側に移動する。このため、ロッカリインフォースメント20の変形(に要する時間)に応じて内壁16における荷重支持(入力)部位が変化し、内壁16の広い範囲にロッカリインフォースメント20からの荷重が分散される。また、荷重分散部24、26と内壁16との摺動(摩擦)によって、ポールPからの衝撃エネルギの一部が消費される。
【0037】
さらにロッカリインフォースメント20の変形(前後寸法の伸び)が増大すると、前後の荷重分散部24、26の自由端が対応する邪魔板28、30に当接し、これらを前後方向に押圧する。各邪魔板28、30は、ロッカリインフォースメント20からの荷重が所定値を超えると破壊され、この破壊に伴ってポールPからの衝突エネルギを吸収する。これにより、ロッカリインフォースメント20の荷重分散部24、26から内壁16に伝達される荷重が緩和される。
【0038】
また、一方向強化の繊維強化プラスチックにて構成されたロッカリインフォースメント20は、変形に伴って長手方向に沿って配列された強化繊維の一部が切れ、さらに強化繊維の配列方向に沿って樹脂部にクラックが生じる。これらの強化繊維の切れや樹脂部のクラックがポールPの衝突エネルギを消費(吸収)する。すなわち、ロッカリインフォースメント20から内壁16に伝達される荷重が緩和される。
【0039】
以上説明したように、ロッカ補強構造10では、板ばね状のロッカリインフォースメント20を、荷重入力部22がフロントシートSの側方に位置するようにロッカ12内に配置したため、このフロントシートSの側方にポールP等が衝突した場合に、該衝突荷重がロッカリインフォースメント20によってフロントシートSの前後に分散される。このため、ロッカ12におけるフロントシートSの側方部分での変形が著しく抑制され、該フロントシートSに着座している乗員Cが保護される。
【0040】
また、ロッカリインフォースメント20は、変形して荷重分散部24、26から内壁16への荷重伝達(分散)部位を変化させながら内壁16の特定部位への荷重集中を抑制するため、ポールPからの衝突荷重はロッカ12の広い範囲に分散される。このため、ロッカ12の各部に作用する応力が緩和され、ロッカ12の補強構造を簡素化する(ロッカ12自体の肉厚を薄くすることなどを含む)することが可能になる。これにより、ロッカ補強構造10が適用された車体Bの軽量化を図ることができる。特に、荷重分散部24、26がロッカリインフォースメント20の長手方向両端に位置するため、ロッカリインフォースメント20は、全体として小型軽量であり、車体Bの一層の軽量化に寄与する。さらに、ロッカリインフォースメント20の前後に邪魔板28、30を配設したため、ポールPの衝突による衝撃エネルギを消費して、ロッカ12の内壁16に分散させる荷重(応力)を一層緩和することができる。
【0041】
さらにまた、ロッカ補強構造10では、ロッカリインフォースメント20が繊維強化プラスチックにて構成されているため、金属製の板ばねをロッカリインフォースメントとして用いる場合と比較して、ロッカリインフォースメント20が曲げ荷重に対し折れにくく、荷重入力部22に入力した荷重を荷重分散部24、26から確実に分散させることができる。しかも、この繊維強化プラスチックの強化繊維の配列方向がロッカリインフォースメント20の長手方向に一致するため、強化繊維の切れや強化繊維に沿うクラックの発生によって、ポールPの衝突による衝撃エネルギを一層消費して、ロッカ12の内壁16に分散させる荷重(応力)をより一層緩和することができる。また、繊維強化プラスチック製のロッカリインフォースメント20は、金属製の板ばねと比較して軽量であり、車体Bのより一層の軽量化に寄与する。
【0042】
このように、本実施形態に係るロッカ補強構造10では、ロッカリインフォースメント20が補強対象であるロッカ12、その他の骨格部材に連結されることがないため、ロッカリインフォースメントに対する制約が少なくなり、荷重分散部24、26をロッカ12に対し変位可能に支持して荷重分散範囲を広くし、またロッカリインフォースメント20の材質として軽量な繊維強化プラスチックを用いて、ロッカ12を効果的に補強することが実現された。
【0043】
なお、上記実施形態では、ロッカリインフォースメント20が自らの弾性力だけでロッカ12に対し保持される例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば図4に示される如く、内壁16から突設した係合片32、34を荷重分散部24、26の自由端に係合させることで、ロッカリインフォースメント20の前後方向の位置ずれを確実に防止するようにしても良い。また、図示は省略するが、上記した位置ずれ防止のためにロッカリインフォースメント20の荷重入力部22を外壁18の固着しても良い。なお、係合片32、34は、ロッカリインフォースメント20からの入力に対し邪魔板28、30よりも脆弱であることが好ましい。また、邪魔板28、30に代えて、係合片32、34に干渉部としての機能を果たさせるようにしても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、板ばね状のロッカリインフォースメント20がロッカ12内に1つ配設された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車種(シートの配列)等に応じてロッカ12内に複数のロッカリインフォースメントを配設しても良い。
【0045】
さらに、上記実施形態では、ロッカリインフォースメント20に押圧されて破断する邪魔板28、30を緩衝部とした例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、緩衝部材の塑性変形やしごき、相対変位による粘性減衰や摩擦減衰等によって緩衝作用を果たすようにしても良い。
【0046】
さらにまた、上記実施形態では、本発明に係る車体骨格の補強構造がロッカ補強構造に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前後のバンパのバンパビーム(の補強構造)やセンタピラーのピラーリインフォースメントとして、ロッカリインフォースメント20の如き板ばね(線ばね)を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係るロッカ補強構造を示す平面断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るロッカ補強構造による荷重分散状態を示す平面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るロッカ補強構造が適用された車体を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るロッカ補強構造の変形例を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 ロッカ補強構造(車体骨格の補強構造)
12 ロッカ(骨格部材)
16 内壁
20 ロッカリインフォースメント(弾性補強部材)
22 荷重入力部
24・26 荷重分散部
28・30 邪魔板(緩衝部)
B 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体外向きに凸となる湾曲形状に形状され長手方向中間部が荷重入力部とされた弾性補強部材を、前記荷重入力部の長手方向両側に位置する荷重分散部の少なくとも一方が車体の骨格部材に車体外側から相対変位可能に接触するように、該骨格部材に設けた車体骨格の補強構造。
【請求項2】
長手方向に直交する断面が閉断面である筒状に形成された骨格部材と、
長手方向中間部に形成された荷重入力部が前記骨格部材の外壁に接触すると共に、前記荷重入力部の長手方向両側に位置する荷重分散部が前記骨格部材の内壁にぞれぞれ摺動可能に接触した弾性補強部材と、
を備えた車体骨格の補強構造。
【請求項3】
前記骨格部材は、車体下部における車幅方向の最も外側で車体前後方向に沿って配設されるロッカであり、
前記弾性補強部材の荷重入力部の前後位置を、乗員着座部の前後位置に一致するように配置した請求項1又は請求項2記載の車体骨格の補強構造。
【請求項4】
前記荷重入力部に車体内向きに作用する荷重によって変形した前記弾性補強部材の両端部の移動軌跡上に、該両端部に押圧されて抵抗力を生じる緩衝部を設けた請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車体骨格の補強構造。
【請求項5】
前記荷重分散部は、前記弾性補強部材の長手方向の両端に配置されている請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の車体骨格の補強構造。
【請求項6】
前記弾性補強部材は、該弾性補強部材の長手方向に沿って配列された強化繊維を含む繊維強化プラスチックにて構成されている請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の車体骨格の補強構造。
【請求項7】
前記弾性補強部材は、前記強化繊維が長手方向に沿って一方向に配列された一方向強化の繊維強化プラスチックにて構成されている請求項6記載の車体骨格の補強構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−273199(P2006−273199A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97553(P2005−97553)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】