説明

車載動画像圧縮装置及びドライブレコーダ

【課題】高速走行時の画質を確保しつつ、車両周辺を撮影した動画像を圧縮符号化する「車載動画像圧縮装置及びドライブレコーダ」を提供する。
【解決手段】制御部7は、車速センサ5より自動車の車速を取得し、車速が大きいほど低くなる圧縮レベルをMPEGエンコーダ2に設定する。MPEGエンコーダ2は、制御部7から設定された圧縮レベルに応じて圧縮符号化動作における圧縮率を変更する。圧縮率の変更は、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に、GOP内のPピクチャの出現周波数(出現頻度)が低くなるように設定することにより行う。そして、記録制御部4は、MPEGエンコーダ2によって圧縮符号化された動画像データを記録媒体3へ記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺を撮影した動画像を圧縮符号化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両周辺を撮影した動画像を取り扱う技術としては、事故発生時の原因解析のためなどに、カメラを用いて撮影した車両周辺の動画像を、少なくとも過去一定期間分記録しておくドライブレコーダの技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
また、このようなドライブレコーダにおいて、動画像を記録する記録資源の記録容量の有効活用のために、動画像を圧縮符号化して記録する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000-280821号公報
【特許文献2】特開2000-006854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、前述のようにドライブレコーダにおいて、動画像を記録する記録資源の記録容量の有効活用のために、動画像を圧縮符号化して記録する場合、圧縮率と、記録される動画像の画質は、トレードオフの関係にあり、圧縮率を大きくすると記録できる動画像の時間は長時間化する一方で記録される動画像の画質は劣化し、圧縮率を小さくすると記録できる動画像の時間は短時間化する一方で記録される動画像の画質は向上する。
【0004】
ここで、動画像を形成する各画像フレームは情報として空間方向及び時間方向の冗長性を持ち、動画像の圧縮符号化は、この冗長性を利用して行われることになる。また、動画像を形成する各画像フレームは、その画像フレームで撮影されているシーンの動きが大きいほど時間方向の情報の冗長性は小さくなる。
【0005】
したがって、ある一定の圧縮率で動画像を圧縮符号化した場合、車両が高速で走行しているために車両周辺の動きが大きくなる期間中に撮影した動画像と、車両が低速で走行しているまたは停車しているために車両周辺の動きが小さくなる期間中に撮影した動画像とでは、圧縮符号化されて記録された動画像の画質は、車両が高速で走行している期間に撮影した動画像の方が低くなる。したがって、車両が低速で走行しているまたは停車している期間に所望の画質を得られるように圧縮率を設定すると、車両が高速で走行している期間に記録された動画像では所望の画質が得られなくなる。一方で、車両が高速で走行している期間に所望の画質を得られるように圧縮率を設定すると、車両が低速で走行しているまたは停車している期間に発生する圧縮符号化後の動画像のデータ量が不必要に大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、圧縮符号化後の動画像のデータ量を不必要に大きくすることなく、各期間において所望の画質が得られるように、車両周辺を撮影した動画像を圧縮符号化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために本発明は、自動車に搭載される車載動画像圧縮装置に、前記自動車周辺を撮影するカメラと、前記自動車の速度を検出する車速検出手段と、前記カメラが撮影した動画像を圧縮符号化する圧縮符号化動作を行う圧縮符号化手段と、前記圧縮符号化動作による前記動画像の圧縮率が、前記車速検出手段が検出した速度がより大きいほど、より小くなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御する圧縮レベル制御手段とを備えたものである。
【0008】
このような車載動画像圧縮装置によれば、自動車が高速で移動しているためにカメラに撮影されるシーンが動きの大きなものとなり、圧縮率を大きくすると所望の画質を確保できなくなる期間には、圧縮率を小さくするので、このような期間にも所望の画質を確保しつつ、動画像を圧縮符号化することができる。一方で、自動車が低速で移動または停車しているためにカメラに撮影されるシーンが動きの小さなものとなり、圧縮率を大きくしても所望の画質を確保できる期間には、圧縮率を大きくすることにより、所望の画質を確保しつつ、高い圧縮率で動画像を圧縮符号化することができる。
【0009】
よって、動画像を圧縮符号化した動画像データのデータ量を不必要に大きくすることなく、各期間において所望の画質が得られるように、車両周辺を撮影した動画像を圧縮符号化することができる。
ここで、このような車載動画像圧縮装置は、前記圧縮符号化手段において、前記カメラが撮影した動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャとのいずれかに符号化し、前記圧縮レベル制御手段において、前記車速検出手段が検出した速度が大きいほど、前記第1のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御するように構成してもよい。
【0010】
または、前記圧縮符号化手段において、前記動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、時系列上前の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャと、時系列上前後双方の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第3のピクチャのいずれかに符号化し、前記圧縮レベル制御手段において、前記車速検出手段が検出した速度が大きいほど、前記第2のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御するよう構成してもよい。
【0011】
なお、このような車載動画像圧縮装置は、ドライブレコーダなどに適用することができる。すなわち、たとえば、ドライブレコーダに適用する場合には、車載動画像圧縮装置と、前記圧縮符号化手段が動画像を圧縮符号化した動画像データを記憶する記憶手段とを設けてドライブレコーダを構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、圧縮符号化後の動画像のデータ量を不必要に大きくすることなく、各期間において所望の画質が得られるように、車両周辺を撮影した動画像を圧縮符号化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係るドライブレコーダの構成を示す。ここで、本ドライブレコーダは車両に搭載されるものである。
さて、図示するように、ドライブレコーダは、車両周辺を撮影する1または複数のカメラ1、カメラ1が撮影した動画像をMPEG-2ビデオ規格に従って圧縮符号化するMPEGエンコーダ2、圧縮符号化された動画像データを記録する記録媒体3、記録媒体3への記録動作を制御する記録制御部4、ドライブレコーダが搭載された車両の車速を検知する車速センサ5、ドライブレコーダが搭載された車両の運転操作状況や各部の状態を検知する走行状態センサ6、以上各部を制御する制御部7とを備えている。
【0014】
ここで、カメラ1は、たとえば、図1bに示すように自動車上に配置され、車両周辺の様子を撮影するものである。
さて、このような構成において、制御部7は、車速センサ5や走行状態センサ6の検知内容より生成した車両の各種状態を示す状態情報データを生成し記録制御部4に送る。また、制御部7は、車速センサ5や走行状態センサ6より求まる車両の各種状態に応じて、記録制御部4の記録媒体3への記録情報の記録の開始/停止などの各種動作を制御する。具体的には、たとえば、自動車の状態がエンジンオフの状態にある場合には、記録制御部4の記録媒体3への記録情報の記録動作を停止する制御などを行う。
【0015】
一方、記録制御部4は、制御部7の制御に応じて、MPEGエンコーダ2によって圧縮符号化された動画像データや、制御部7から送られた状態情報データを、適当なフォーマットで、各データの取得日時を表すタイムスタンプなどと共に記録情報として記録媒体3へ記録する。
さて、このような構成において制御部7は、MPEGエンコーダ2における動画像の圧縮符号化の圧縮率を制御するために、図2aに示す圧縮レベル制御処理を行う。
図示するように、この処理において、制御部7は、まず車速センサ5より自動車の車速を取得する(ステップ202)。そして、取得した車速の属する車速レベルが、前回求めた車速レベルから変化したかどうかを調べる(ステップ204)。ここで、車速レベルは、各々異なる車速の範囲に対応して予め定めておく。ここでは、一例として、車速が0km/h-10km/hである場合にその車速レベルが「小」となり、車速が10km/h-30km/hである場合にその車速レベルが「中」となり、車速が30km/h超である場合にその車速レベルが「大」となるように予め定めてあるものとする。
【0016】
さて、ステップ204において、取得した車速の属する車速レベルが、前回求めた車速レベルから変化していないと判定された場合には、そのままステップ202からの処理に戻る。一方、取得した車速の属する車速レベルが、前回求めた車速レベルから変化している場合には、車速レベルに応じた圧縮レベルをMPEGエンコーダ2に設定する(ステップ206)。そして、ステップ202からの処理に戻る。ここで、圧縮レベルは車速レベルに応じて、車速レベルが「小」に対しては圧縮レベル「高」を、車速レベルが「中」に対しては圧縮レベル「中」を、車速レベルが「大」に対しては圧縮レベル「低」を設定する。
【0017】
以上、制御部7が行う圧縮レベル制御処理について説明した。
さて、MPEGエンコーダ2は、このように制御部7から設定された圧縮レベルに応じて圧縮符号化動作における圧縮率を変更するために、図2bに示す圧縮率制御処理を行う。
すなわち、MPEGエンコーダ2は、制御部7からの設定による圧縮レベル設定の変化の発生を監視し(ステップ212)、圧縮レベル設定の変化が発生したならば、以後の圧縮符号化において設定するGOPの構成を圧縮レベルに応じて変更し(ステップ214)、ステップ212の監視に戻る。
【0018】
ここで、このステップ214で行うGOPの構成の圧縮レベルに応じた変更の例を図3に示す。
さて、MPEG-2ビデオ規格では、動画像を形成する画像フレームは、Iピクチャ(Intra-coded picture)、Pピクチャ(Predictive-coded picture)、Bピクチャ(Bidirectionally predictive-coded picture)のいずれかとして符号化される。ここで、Iピクチャは、フレーム内符号化によって符号化されたピクチャであり、そのデータ量は、最も大きくなる。次に、Pピクチャは、過去のピクチャ(直前のIピクチャもしくはPピクチャ)に対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化されたピクチャであり、そのデータ量はIピクチャの次に大きくなる。そして、Bピクチャは、過去と未来の2つのピクチャ(直前と直後のIピクチャもしくはPピクチャ)に対する二方向の動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化されたピクチャであり、そのデータ量は最も小さくなる。
また、MPEG-2ビデオ規格では、圧縮符号化された動画像データは、GOP(Group Of Pictures)の集合として形成される。そして、各GOPは、少なくとも一つのIピクチャの他、1または複数のPピクチャと、1または複数のBピクチャとを含むことができる。ただし、通常は、GOPにPピクチャやBピクチャを含める場合には、GOPには、Iピクチャとして、GOP先頭のピクチャとなる一つのIピクチャのみを含めることが合理的である。
【0019】
さて、MPEGエンコーダ2の圧縮率制御処理のステップ214では、以後の圧縮符号化において設定するGOPの構成を、圧縮レベルに応じてたとえば、図3a1、b1、c1に示すように変更する。
すなわち、GOPを構成するピクチャ数は変更せずに、圧縮レベルに応じて、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に、GOP内のPピクチャの出現周波数(出現頻度)が低くなるように設定する。
図3a1、b1、c1に示した例では、GOPには、IピクチャとしてGOP先頭のピクチャとなる一つのIピクチャのみを含め、以降のGOP内のピクチャ配置を、圧縮レベル「低」の場合はPピクチャを2Bピクチャ置きに配置したものとし、圧縮レベル「中」の場合はPピクチャを3Bピクチャ置きに配置したものとし、圧縮レベル「高」の場合はPピクチャを5Bピクチャ置きに配置したものとしている。
【0020】
ここで、Pピクチャは、直前のIピクチャやフレーム間符号化に用いる直前のIピクチャもしくはPピクチャとの時間的距離が大きくなるほど、Pピクチャにおいて発生する符号化誤差が大きくなる蓋然性が高い。したがって、このように車速レベルが「大」のときに圧縮レベル「低」を設定して、Pピクチャの出現周波数(出現頻度)を高くすることにより、自動車が高速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの大きなものとなった場合でも、所望の画質を確保しつつ動画像を圧縮符号化して、記録媒体3に記録することができる。一方で、カメラ1に撮影されるシーンが動きが小さい場合には、直前のIピクチャやフレーム間符号化に用いる直前のIピクチャもしくはPピクチャとの時間的距離が大きくてもPピクチャに生じる符号化誤差は小さくなる蓋然性が大きい。したがって、このように車速レベルが「小」のときに圧縮レベル「高」を設定して、Pピクチャの出現周波数(出現頻度)を低くすることにより、自動車が低速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの小さなものとなった場合に、所望の画質を確保しつつ高い圧縮率で動画像を圧縮符号化して、記録媒体3に記録することができるようになる。
【0021】
ところで、ステップ214では、以後の圧縮符号化において設定するGOPの構成を、圧縮レベルに応じてたとえば、図3a2、b3、c3に示すように変更するようにしてもよい。
すなわち、GOPには、IピクチャとしてGOP先頭のピクチャとなる一つのIピクチャのみを含め、圧縮レベルに応じてGOPを構成するピクチャ数を、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に多くすることにより、Iピクチャの出現周波数(出現頻度)を、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に低くなるように設定する。
【0022】
図3a2、b2、c2に示した例では、圧縮レベル「低」の場合はGOPを4ピクチャで構成し、圧縮レベル「中」の場合はGOPを8ピクチャで構成し、圧縮レベル「高」の場合はGOPを12ピクチャで構成している。
ただし、GOPを構成するピクチャ数を変更せずに、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に、Iピクチャの出現周波数(出現頻度)を、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に低くなるように設定することにより、1GOPに含めるIピクチャ数を変更するようにしてもよい。
【0023】
ここで、Iピクチャは、先行するPピクチャやBピクチャによって蓄積した符号化誤差をリセットする。したがって、このように車速レベルが「大」のときに圧縮レベル「低」を設定してIピクチャの出現周波数(出現頻度)を高くすることにより、自動車が高速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの大きなものとなった場合でも、所望の画質を確保しつつ動画像を圧縮符号化して記録媒体3に記録することができる。一方で、カメラ1に撮影されるシーンが動きが小さい場合には、Iピクチャ間の時間的距離が大きくても蓄積される符号化誤差は小さくなる蓋然性が大きい。したがって、このように車速レベルが「小」のときに圧縮レベル「高」を設定して、Iピクチャの出現周波数(出現頻度)を低くすることにより、自動車が低速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの小さなものとなった場合に、所望の画質を確保しつつ高い圧縮率で動画像を圧縮符号化して記録媒体3に記録することができるようになる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態においてMPEGエンコーダ2が行った圧縮率制御処理は、図2cに示すように行うようにしてもよい。
すなわち、MPEGエンコーダ2は、制御部7からの設定による圧縮レベル設定の変化の発生を監視し(ステップ222)、圧縮レベル設定の変化が発生したならば、以後の圧縮符号化において設定する有効DCT係数または量子化幅またはその双方を変更し(ステップ224)、ステップ222の監視に戻る。
【0025】
ここで、MPEG-2ビデオ規格では、その符号化において、DCT(Discrete Cosine Transform:離散コサイン変換)を用いて動画像を構成する各画像フレームを動きベクトルとDCT係数に変換する。ただし、フレーム内符号化を行うIピクチャについては、動きベクトルは存在せず、DCT係数は、画像フレーム中の各ブロックの空間周波数分布を表すものとなる。また、動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化を行うPピクチャやBピクチャでは、ピクチャ内のブロックと、動き補償フレーム間予測によって参照ピクチャ中から探索した当該ピクチャ内のブロックに近似するブロックである参照ブロックとの差分に対してDCTを施す。ここで、参照ピクチャとは、そのピクチャがPピクチャである場合には、過去のピクチャ(直前のIピクチャもしくはPピクチャ)であり、そのピクチャがBピクチャである場合には、過去と未来の2つのピクチャ(直前と直後のIピクチャもしくはPピクチャ)となる。
【0026】
そして、PピクチャやBピクチャでは、動きベクトルは、圧縮符号化する画像フレーム中のブロック位置を始点とし、当該ブロックに対して探索された参照ブロック位置を終点とするベクトルを示すものとなり、DCT係数は、圧縮符号化する画像フレーム中の各ブロックの参照ブロックとの差分の空間周波数分布を表すものとなる。
さて、ステップ224で有効DCT係数を変更する場合には、PピクチャやBピクチャについて、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に、圧縮符号化後の動画像データに含めるDCT係数が空間周波数分布を表す空間周波数範囲の上限がより小さくなるようにする。ここで、PピクチャやBピクチャの各ブロックの参照ブロックとの差分の空間周波数分布は、撮影されているシーンの動きが小さい場合には、低空間周波数領域の成分がより支配的となることが期待できる。したがって、このようにすることにより、自動車が高速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの大きなものとなった場合に、所望の画質を確保できるようにしつつ、自動車が低速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの小さなものとなった場合に、所望の画質を確保しつつ、高い圧縮率で動画像を圧縮符号化して記録媒体3に記録することができるようになる。
【0027】
さて、MPEG-2ビデオ規格では、以上のようにして求めた動きベクトルやDCT係数は量子化されて、圧縮符号化後の動画像データに含められる。
そして、ステップ224で量子化幅を変更する場合には、この動きベクトルまたはDCT係数の量子化の幅を、圧縮レベル「低」、圧縮レベル「中」、圧縮レベル「高」の順に大きくするようにする。このようにしても、自動車が高速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの大きなものとなった場合に、所望の画質を確保できるようにしつつ、自動車が低速で移動するためにカメラ1に撮影されるシーンが動きの小さなものとなった場合に、所望の画質を確保しつつ、高い圧縮率で動画像を圧縮符号化して記録媒体3に記録することができるようになる効果をある程度見込むことができる。
【0028】
ところで、以上の実施形態では、ドライブレコーダへの適用を例にとり説明したが、以上で説明した車速に応じた動画像の圧縮符号化の圧縮率制御の技術は、動画像の圧縮符号化を行う任意の車載装置に適用することができる。
すなわち、たとえば、図4aに示すような車載システムにも、以上の車速に応じた動画像の圧縮符号化の圧縮率制御の技術は適用することができる。
図示するように、この車載システム100は、 図1aで示したドライブレコーダと同様に、1または複数のカメラ1、カメラ1が撮影した動画像をMPEG-2ビデオ規格に従って圧縮符号化するMPEGエンコーダ2、車速センサ5、走行状態センサ6、制御部7を備えている。また、この車載システム100は、ナビゲーション装置10と、通信制御部8と、無線通信装置9とを備えている。
【0029】
このような構成において、カメラ1、車速センサ5、走行状態センサ6、制御部7の動作は、前記ドライブレコーダにおける場合と同様に動作する。
一方、ナビゲーション装置10は、地図データを記憶した記憶装置と現在位置を算出する現在位置算出部とを備え、地図上において現在位置を示すナビゲーション画像の表示などを行う。また、ナビゲーション装置100は、ユーザ操作や、車速センサ5や走行状態センサ6の出力やナビゲーションが算出した現在位置と地図データが示す道路との関係などより求まる自車の状況に応じて、通信制御部8と無線通信装置9を介して、図4bに示すように、他車に搭載された車載システム100や、移動電話網などの通信網を介してアクセス可能なサーバ装置110と各種通信を行う。
【0030】
また、ナビゲーション装置10は、このような構成において、必要に応じて、MPEGエンコーダ2から入力する圧縮符号化された動画像データを他車に搭載された車載システム100やサーバ装置110に送信する。また、ナビゲーション装置10は、他車に搭載された車載システム100やサーバ装置110から受信した圧縮符号化された動画像データを復号して表示する処理なども行う。
【0031】
なお、MPEGエンコーダ2から入力する圧縮符号化された動画像データは、前述のように自車の車速に応じて圧縮率が変更されるものである。
また、以上の実施形態では、カメラ1で撮影した動画像をMPEG-2ビデオ規格で圧縮符号化する場合について説明したが、以上で説明した車速が小さいほど圧縮率を低くする動画像の圧縮符号化の圧縮率制御の技術は、圧縮率可変な任意の符号アルゴリズムに従った動画像の圧縮符号化を行う場合に同様に適用することができる。ここで、動画像の圧縮符号化は、情報の冗長性を利用して情報量の削減を行うものであることより、圧縮率可変な任意の符号アルゴリズムに従った動画像の圧縮符号化を行う場合においても、情報の冗長性が増加する低速走行または停車時に圧縮率を増加する以上の圧縮率制御の技術によって、以上の実施形態と同様の効果を奏することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るビデオデコーダの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るビデオデコーダが行う圧縮レベル制御処理と圧縮率制御処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るビデオデコーダにおける動画の圧縮率変更例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1…カメラ、2…MPEGエンコーダ、3…記録媒体、4…記録制御部、5…車速センサ、6…走行状態センサ、7…制御部、8…通信制御部、9…無線通信装置、10…ナビゲーション装置、100…車載システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される車載動画像圧縮装置であって、
前記自動車周辺を撮影するカメラと、
前記自動車の速度を検出する車速検出手段と、
前記カメラが撮影した動画像を圧縮符号化する圧縮符号化動作を行う圧縮符号化手段と、
前記圧縮符号化動作による前記動画像の圧縮率が、前記車速検出手段が検出した速度がより大きいほど、より小さくなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御する圧縮レベル制御手段とを有することを特徴とする車載動画像圧縮装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載動画像圧縮装置であって、
前記圧縮符号化手段は、前記カメラが撮影した動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャとのいずれかに符号化し、
前記圧縮レベル制御手段は、前記車速検出手段が検出した速度が大きいほど、前記第1のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御することを特徴とする車載動画像圧縮装置。
【請求項3】
請求項1記載の車載動画像圧縮装置であって、
前記圧縮符号化手段は、前記動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、時系列上前の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャと、時系列上前後双方の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第3のピクチャのいずれかに符号化し、
前記圧縮レベル制御手段は、前記車速検出手段が検出した速度が大きいほど、前記第2のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化手段の圧縮符号化動作を制御することを特徴とする車載動画像圧縮装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の車載動画像圧縮装置と、
前記圧縮符号化手段が動画像を圧縮符号化した動画像データを記憶する記憶手段とを有することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項5】
自動車に搭載される車載装置において、カメラで前記自動車周辺を撮影した動画を圧縮する動画圧縮方法であって、
前記自動車の速度を検出する速度検出ステップと、
前記カメラが撮影した動画像を圧縮符号化する圧縮符号化動作を行う圧縮符号化ステップと、
前記圧縮符号化による前記動画像の圧縮率が、前記速度検出ステップで検出した速度がより大きいほど、より小さくなるように、前記圧縮符号化ステップで行う前記圧縮符号化動作を制御する制御ステップとを有することを特徴とする車載装置における動画圧縮方法。
【請求項6】
請求項5記載の車載装置における動画圧縮方法であって、
前記圧縮符号化ステップにおいて、前記カメラが撮影した動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャとのいずれかに符号化する圧縮符号化動作を行い、
前記制御ステップにおいて、前記速度検出ステップで検出した速度が大きいほど、前記第1のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化ステップで行う前記圧縮符号化動作を制御する特徴とする車載装置における動画圧縮方法。
【請求項7】
請求項5記載の車載装置における動画圧縮方法であって、
前記圧縮符号化ステップにおいて、前記動画像を構成する各画像フレームを、フレーム内符号化によって符号化した第1のピクチャと、時系列上前の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第2のピクチャと、時系列上前後双方の画像フレームに対する動き補償フレーム間予測を用いたフレーム間符号化によって符号化した第3のピクチャのいずれかに符号化する圧縮符号化動作を行い、
前記制御ステップにおいて、前記速度検出ステップで検出した速度が大きいほど、前記第2のピクチャの出現頻度が大きくなるように、前記圧縮符号化ステップで行う前記圧縮符号化動作を制御することを特徴とする車載装置における動画圧縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−124155(P2007−124155A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311958(P2005−311958)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】