説明

車載撮像システム

【課題】車輌に敷設する伝送線の量を低減することができ、処理装置に接続する伝送線の数を低減することができるとともに、映像と車輌情報とを同期させて事故後の解析を行うことができるので、該解析が容易かつ正確になる車載撮像システムを提供する。
【解決手段】撮像装置5a〜5mとECU3a〜3jとを信号切替器7a〜7e及び信号分配器9a〜9eを介在して伝送線により接続して車載撮像システムを構成する。信号切替器7a〜7eは、複数の撮像装置5a〜5mから与えられた複数の映像信号から一の映像を選択して切替出力する機能を有すると共に、与えられた複数の映像、及び車輌情報を絶対時刻とともに記録する機能を有する。信号切替器7a〜7eは、映像又は車輌情報に基づくトリガ信号を与えられた場合、事故の発生後の所定期間、記録を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載した複数の撮像装置から処理装置への映像信号の伝送を効率よく行うことができ、撮像装置が撮像した映像及び車輌情報を時刻とともに記録することができる車載撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌に撮像装置を搭載して車輌の外界を撮像し、撮像により取得した映像を車内に設けられたディスプレイに表示することによって、運転者へ種々の情報を提供するシステムが実用化されている。例えば、車輌の運転席から死角となる部分を撮像することによって、運転者が直接的に目視できない部分をディスプレイに表示できるため、事故を未然に防ぐことが可能となる。また、車輌に搭載された撮像装置を利用して、撮像した映像を基に種々の処理を行って車輌の周囲に存在する歩行者又は他車輌等を検出し、運転者へ警告を与えるシステムなども開発されており、車輌に搭載される撮像装置の数は増加する傾向にある。更に近年では、車輌内に撮像装置を搭載して運転者を撮像し、運転者の視線の検出を行うなど、撮像装置を利用した種々の処理が行われている。
【0003】
図6は、従来の車載撮像システムの構成例を示す模式図である。図において5a〜5mは撮像装置であり、複数の撮像装置5a〜5mは、車輌(図示は省略する)の適所にそれぞれ搭載されて、車輌の外部又は内部をそれぞれ撮像するように構成されている。撮像装置5a〜5mが撮像して取得した映像は、複数のECU(Electronic Control Unit)103a〜103jに送信されて、種々の処理が施される。
各撮像装置5a〜5mは、1つの伝送線を介しいずれか1つのECU103a〜103jにそれぞれ接続されており、撮像した映像を接続されたECU103a〜103jに送信するように構成されている。図示の例では、撮像装置5a〜5cはECU103aに接続され、撮像装置5dはECU103bに接続され、撮像装置5e及び5fはECU103dに接続され、撮像装置5g及び5hはECU103gに接続され、撮像装置5i及び5jはECU103hに接続され、撮像装置5kはECU103iに接続され、撮像装置5l及び5mはECU103jに接続されている。
【0004】
また、一の撮像装置5a〜5mが撮像した映像を複数のECU103a〜103jにて利用する必要がある場合には、2つのECU103a〜103j間を伝送線で接続し、一の撮像装置5a〜5mが接続された一のECU103a〜103jが他のECU103a〜103jに映像を送信するようにされている。即ち、ECU103a〜103jには撮像装置5a〜5mが撮像した映像を中継する機能を有するものが含まれている。図示の例では、ECU103aがECU103cに映像を送信し、ECU103bがECU103aに映像を送信し、ECU103dがECU103c、103e及び103fに映像を送信するように構成されている。
【0005】
近年においては、車輌の衝突などの事故発生時に、撮像装置が撮像した映像を記録するドライブレコーダが注目されている。ドライブレコーダは、衝突が発生した時点を基準に、前後数秒から数十秒程度の所定期間に撮像された映像を記録するように構成されている。これにより、事故が発生した場合に事故の原因究明をより正確に行うことができるという利点がある。
【0006】
特許文献1には、車輌の周囲の映像情報を取得して映像符号化ストリーム情報に符号化し、車輌の走行状態情報を取得して、映像符号化ストリーム情報及び走行状態情報を多重化して多重化ストリームを生成して記録する車載用映像記録装置の発明が開示されている。この車載用映像記録装置は、記録した多重化ストリームを事故が発生した場合の証拠として使用できると共に、事故の有無とは関係なく記録された映像をユーザが容易に鑑賞できる。
【0007】
特許文献2には、車輌の走行状態に関するデータを記録する走行状態記録装置であって、データを記録する記録手段と、自車輌の少なくとも前方を撮像し、画像データを生成する撮像手段と、自車輌の前方車輌との車輌距離を算出する車間距離算出手段と、前方車輌との車間距離に基づき前方車輌の挙動に異常があるか否かを判定する判定手段と、異常があると判定されたとき、画像データを記録手段に記録する記録制御手段とを有する走行状態記録装置の発明が開示されている。
【特許文献1】特開2006−211415号公報
【特許文献2】特開2006−347493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6に示した従来の車載撮像システムにおいては、撮像装置5a〜5mを伝送線によりECU103a〜103jにそれぞれ接続する必要があるため、車輌に搭載する撮像装置の数が増すほど多くの伝送線を車輌に敷設する必要があり、伝送線を敷設できる車輌中のスペースは限られているため、撮像装置の搭載数を容易に増すことができないという問題がある。また、複数の撮像装置5a〜5mが接続されるECU103a〜103jには、伝送線を接続するための多数の接続端子が必要となり、ECU103a〜103jの小型化を阻害するという問題がある。また、撮像装置5a〜5mが撮像した映像を中継する機能を有するECU103a〜103jには、更に多くの伝送線が接続されると共に、中継を行うためのハードウェアが必要となるため、ECU103a〜103jの高コスト化を招来するという問題がある。
【0009】
また、従来のドライブレコーダは、専用の撮像装置、センサ、メモリ及び制御回路等を備える構成であり高コストであると共に、撮像装置が撮像する範囲についても車輌の前方のみなどの狭い範囲であった。特許文献1に記載の車載用映像記録装置、及び特許文献2の走行状態記録装置についても同様である。図6に示したように車輌に複数の撮像装置5a〜5mを搭載している場合には、ドライブレコーダがこれらの撮像装置5a〜5mを利用することによって、コストを低減できると共に、広い範囲を撮像して記録することができるが、複数の撮像装置5a〜5mをドライブレコーダに接続するために複数の伝送線を車輌に敷設する必要があり、上述の車載撮像システムと同様の問題が発生する。
そして、近年、車輌同士の衝突事故が増加しており、車輌同士の事故の原因に対して正確な解析が求められている。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、入力された複数の映像信号から一又は複数の映像信号を切り替えて出力し、入力された映像及び車輌情報を時刻とともに記録する記録部を有する信号切替手段を介し、複数の撮像装置と処理装置とを接続することにより、車輌に敷設する伝送線の量を低減することができ、処理装置に接続する伝送線の数を低減することができるとともに、映像と車輌情報とを同期させて事故後の解析を行うことができるので、該解析が容易かつ正確になる車載撮像システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、電波時計又はGPSにより取得した時刻を用いることにより、事故後の解析がより正確になる車載撮像システムを提供することを目的とする。
【0012】
そして、本発明は、映像信号に係る映像又は前記車輌に係る情報に基づき、トリガ信号を発生するトリガ信号発生手段を備え、記録部はトリガ信号の発生から所定時間経過後、記録を中止するように構成することにより、事故前後の記録が確実に保存される車載撮像システムを提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、トリガ信号を取得した場合に、記録部に記録された映像及び車輌情報を記録媒体に記録する手段を備えることにより、事故後の解析が容易である車載撮像システムを提供することを目的とする。
【0014】
そして、本発明は、処理装置を複数備え、撮像装置に伝送線を介し接続されて映像信号が入力される入力部、及び処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する複数の出力部を有し、入力部に入力された映像信号を複数の出力部に分配するように構成された信号分配手段を備えることにより、処理装置に映像信号を分配する機能を設ける必要がなくなるとともに、処理装置に接続する伝送線の数を低減できるため多数の接続端子を設ける必要がない車載撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明に係る車載撮像システムは、車輌に搭載され、該車輌の内部及び/又は外部を撮像する複数の撮像装置と、該撮像装置が撮像した映像に基づき処理を行う処理装置と、前記車輌に係る情報を取得する車輌情報取得手段とを備える車載撮像システムにおいて、前記撮像装置が撮像した映像に係る映像信号を伝送する伝送線と、複数の前記撮像装置に伝送線を介しそれぞれ接続されて前記映像信号がそれぞれ入力される複数の入力部、前記処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する出力部、前記入力部に入力された複数の映像信号から一又は複数の映像信号を切り替えて前記出力部へ与える切替部、並びに前記入力部に入力された映像信号に係る映像及び前記車輌に係る情報を時刻とともに記録する記録部を有する信号切替手段とを備え、前記撮像装置及び前記処理装置は、前記信号切替手段を介し接続してあることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、車輌に搭載された複数の撮像装置を信号切替手段の入力部に複数の伝送線を介しそれぞれ接続し、処理装置を信号切替手段の出力部に伝送線を介し接続して、撮像装置から処理装置への映像信号の送信を信号切替手段を介し行う。信号切替手段は複数の撮像装置から入力された複数の映像信号から処理装置への映像信号を切り替えて出力する。撮像装置及び信号切替手段の間には撮像装置の搭載数に等しい数の伝送線を設ける必要があるが、信号切替手段及び処理装置の間には1つ(又は少数)の伝送線を設けるのみでよい。よって、信号切替手段を撮像装置の近傍に配することで車輌中の伝送線の量を削減できると共に、伝送線を接続するための接続端子を処理装置に多数設ける必要がないため、処理装置を小型化することができる。
【0017】
また、信号切替手段には撮像装置から入力された映像信号に係る映像、及び車輌に係る情報を時刻とともに記録する記録部を有するので、信号切替手段をドライブレコーダとして利用することができる。
そして、記録部において、映像と、車輌の加速度、速度又はブレーキ操作状態等の車輌情報とが時刻とともに記録されるので、映像と車輌情報とを同期させて事故後の解析を行うことができ、該解析が容易かつ正確になる。また、対車輌事故の場合で、他車輌も第1発明に係る車載撮像システムを搭載しているとき、両車輌が事故前後の映像及び車輌情報を時刻とともに記録しているので、同じ時間軸上で、自車輌と他車輌との映像及び車輌情報を比較することができ、事故解析がさらに容易かつ正確になる。
【0018】
第2発明に係る車載撮像システムは、第1発明においては、電波時計又はGPS(Global Positioning System)により時刻情報を取得する手段を備え、前記時刻は、前記手段により取得した時刻であることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、映像と車輌情報とを同期させて解析を行う場合、対車輌事故で、時間軸上で、自車輌と他車輌との映像及び車輌情報を比較して解析する場合等において、解析がより正確になる。
【0020】
第3発明に係る車載撮像システムは、第1又は第2発明において、前記映像信号に係る映像又は前記車輌に係る情報に基づき、トリガ信号を発生するトリガ信号発生手段を備え、前記記録部は、前記トリガ信号の発生から所定時間経過後、記録を中止するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、映像又は車輌情報に基づいて、トリガ信号が発生し、トリガ信号の発生から所定時間経過後、記録部が記録を中止する。車輌情報の取得及びトリガ信号の発生は信号切替手段が行う構成であってもよく、処理装置、撮像装置又は他の装置が信号切替手段へトリガ信号を与える構成であってもよい。
そして、事故前後に映像及び車輌情報の記録を行った後、以後の記録が中止されるので、事故前後の記録が確実に保存される。
【0022】
第4発明に係る車載撮像システムは、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記トリガ信号発生手段からトリガ信号を取得した場合に、前記記録部に記録された前記映像信号に係る映像及び前記車輌に係る情報を記録媒体に記録する手段を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、事故後の解析が容易である。
【0024】
第5発明に係る車載撮像システムは、第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記処理装置を複数備え、前記撮像装置に伝送線を介し接続されて前記撮像装置からの映像信号が入力される入力部、及び前記処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する複数の出力部を有し、前記入力部に入力された映像信号を前記複数の出力部に分配するように構成された信号分配手段を備え、前記撮像装置と前記処理装置とは前記信号分配手段を介し接続してあることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、車輌に搭載された撮像装置を信号分配手段の入力部に接続し、複数の処理装置を信号分配手段の複数の出力部にそれぞれ接続して、撮像装置からの映像信号を信号分配手段にて複数の処理装置に分配する。一の撮像装置が撮像した映像を複数の処理装置にて処理する場合、従来の車載撮像システムでは一の撮像装置に接続された一の処理装置が他の処理装置へ映像信号を中継していたが、信号分配手段を用いることによって処理装置に映像信号を分配する機能を設ける必要がなくなると共に、処理装置に接続する伝送線の数を低減できるため多数の接続端子を設ける必要がない。一の撮像装置と複数の処理装置とをそれぞれ伝送線で接続する構成と比較した場合には、伝送線の量を低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
第1発明によれば、入力された複数の映像信号から一又は複数の映像信号を切り替えて出力し、入力された映像及び車輌情報を時刻とともに記録する記録部を有する信号切替手段を介し、複数の撮像装置と処理装置とを接続しているので、車輌に敷設する伝送線の量を低減することができ、処理装置に接続する伝送線の数を低減することができる。
そして、映像と車輌情報とを同期させて事故後の解析を行うことができるので、該解析が容易かつ正確になる。
【0027】
第2発明によれば、時刻は電波時計又はGPSによって取得された時刻であるので、事故後の解析時に、映像と車輌情報とを同期させるとき、又は対車輌事故で、両車輌の映像及び車輌情報を比較するとき、解析がより正確になる。
【0028】
第3発明によれば、映像信号に係る映像又は車輌情報に基づき、トリガ信号を発生するトリガ信号発生手段を備え、記録部はトリガ信号の発生から所定時間経過後、記録を中止するように構成しているので、事故前後の記録が確実に保存される。
【0029】
第4発明によれば、記録部に記録された映像及び車輌情報を記録媒体に記録する手段を備えているので、事故後の解析が容易である。
【0030】
第5発明によれば、処理装置を複数備え、撮像装置に伝送線を介し接続されて映像信号が入力される入力部、及び処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する複数の出力部を有し、入力部に入力された映像信号を複数の出力部に分配するように構成された信号分配手段を備えているので、処理装置に映像信号を分配する機能を設ける必要がなくなるとともに、処理装置に接続する伝送線の数を低減できるため多数の接続端子を設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
実施の形態1.
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車載撮像システムの構成を示すブロック図、図2は、図1に示す車載撮像システムを車輌に搭載した場合の構成例を示す模式図である。
図1及び図2において5a〜5mは撮像装置であり、複数の撮像装置5a〜5mが車輌1の適所にそれぞれ搭載されて、車輌1の内部又は外部をそれぞれ撮像するようにしてある。例えば、撮像装置5aは車輌1の後部中央に搭載されており、撮像した映像を車輌1内に配設されたディスプレイ(図示は省略する)に表示することにより、所謂バックモニタとして利用することができる。例えば、撮像装置5g及び5hは、車輌1の前側の左右角部分にそれぞれ搭載されており、車輌1の周辺に存在する歩行者又は他車輌等の物体を画像処理により検出して運転者に警告を与えるセンサとして利用することができる。また、例えば、車輌1の内部に撮像装置5kを搭載して運転者を撮像し、画像処理により運転者の視線を検出するなどの処理を行うこともできる。このように、車輌1に搭載された複数の撮像装置5a〜5mには、撮像した映像をディスプレイに表示して運転者に視認させるための撮像装置、又は車輌1の周辺の状況を画像処理により検出するセンサとしての撮像装置等の多種多様な撮像装置が含まれる。
【0032】
撮像装置5a〜5mは、車輌1に搭載された複数のECU3a〜3jに伝送線、信号切替器7a〜7e及び信号分配器9a〜9eを用いて適宜に接続してある。ECU3a〜3jは、撮像装置5a〜5mから送信される映像を受信し、受信した映像に種々の処理を施して、ディスプレイへの表示又は車輌1周辺の物体の検出等の処理をそれぞれ行うようにしてある。各撮像装置5a〜5mは、撮像して取得した映像をデジタルデータとしてECU3a〜3jに送信するようにしてあり、映像に係るデジタルデータをLVDS(Low Voltage Differential Signaling)方式の映像信号として送信するようにしてある。LVDS方式では、数100mV程度の低振幅の信号を差動伝送することにより、数100Mビット/秒程度の高速な信号伝送を実現することができる。
【0033】
信号切替器7a〜7eは、複数の撮像装置5a〜5mが撮像した映像を1つのECU3a〜3jに送信する場合に用いられるものである。信号切替器7a〜7eは、複数の入力用の接続端子と出力用の接続端子とを有しており、入力用の接続端子に伝送線を介し複数の撮像装置5a〜5mを接続することができるようにしてあると共に、出力用の接続端子に伝送線を介し1つのECU3a〜3jを接続することができるようにしてある。信号切替器7a〜7eは、複数の撮像装置5a〜5mから入力された複数の映像信号から1つの映像信号を選択し、切り替えて出力する機能を有している。例えば、信号切替器7aは入力された4つの映像信号から1つの映像信号を選択して出力するようにしてあり、信号切替器7b〜7eは入力された2つの映像信号から1つの映像信号を出力するようにしてある。信号切替器7a〜7eの詳細な構成については後述する。
【0034】
信号分配器9a〜9eは、1つの撮像装置5a〜5mが撮像した映像を複数のECU3a〜3jに送信する場合に用いられるものである。信号分配器9a〜9eは、1つの入力用の接続端子と2つの出力用の接続端子とを有しており、入力用の接続端子に伝送線を介し1つの撮像装置5a〜5mを接続することができるようにしてあると共に、出力用の接続端子に伝送線を介し2つのECU3a〜3jを接続することができるようにしてある。信号分配器9a〜9eは、1つの撮像装置5a〜5mから入力された映像信号を、出力用の接続端子に接続された2つのECU3a〜3jにそれぞれ出力する機能を有している。
【0035】
車輌1に搭載された複数の撮像装置5a〜5mと複数のECU3a〜3jとは、複数の信号切替器7a〜7e及び信号分配器9a〜9eを介在させて適宜に伝送線を用いて接続してあり、撮像装置5a〜5mからECU3a〜3jへ撮像した映像を映像信号として送信することができるようにしてある。例えば、ECU3aには4つの撮像装置5a〜5dからの映像信号を信号切替器7aを介し送信することができるようにしてある。この場合、信号切替器7aはECU3aから与えられる制御信号により4つの映像信号のうちの1つを選択し、切り替えて出力するようにしてある。
【0036】
また、例えば、撮像装置5aが撮像した映像は2つのECU3a及び3cにて利用するため、信号分配器9aにて撮像装置5aから入力された映像信号を信号切替器7a及びECU3cに出力するようにしてある。また、撮像装置5dが撮像した映像は2つのECU3a及び3bにて利用するため、信号分配器9bにて撮像装置5dから入力された映像信号を信号切替器7aおよびECU3bに出力するようにしてある。また、2つの撮像装置5e及び5fが撮像した映像は4つのECU3c〜3fにて利用するため、信号切替器7bにて2つの撮像装置5e及び5fから入力された映像信号のうちの1つを選択して切替出力し、信号切替器7bが出力した映像信号を3つの分配器9c〜9eを用いて4つのECU3c〜3fへ出力するようにしてある。この場合、信号切替器7bはECU3dから与えられる制御信号により映像信号の切り替えを行うようにしてあり、ECU3dから出力された制御信号は信号分配器9c〜9eを通して信号切替器7bへ与えられる。
【0037】
図3は、図1、2に示す信号切替器7aの構成例を示すブロック図である。なお、その他の信号切替器7b〜7eの構成は信号切替器7aの構成と略同じであるため図示を省略する。
信号切替器7aの第1受信部71,第2受信部72,第3受信部73,第4受信部74は、4つの撮像装置5a,5b,5c,5dから伝送線(及び信号分配器9a、9b)を介し各別に映像信号を受信し、受信した映像信号を切替部79及び映像認識部83へ与えるように構成されている。
映像認識部83は、映像信号を記録制御部84へ出力する。そして、車輌1が障害物又は他車輌等と衝突した場合、与えられた映像を衝突の前後の情報として認識し、該情報を記録制御部84へ出力する。
第1送信部75,第2送信部76,第3送信部77,第4送信部78は、ECU3aからの制御信号を撮像装置5a,5b,5c,5dへ送信する。
【0038】
切替部79は、切替制御部82から与えられる制御信号に応じて、第1受信部71,第2受信部72,第3受信部73,第4受信部74から各別に与えられた4つの映像信号から1つの映像信号を選択して切り替え、選択した映像信号を出力信号として第5送信部80へ与えるように構成されている。第5送信部80は、与えられた映像信号をECU3aへ出力する。
第5受信部81は、ECU3aから、撮像装置5a,5b,5c,5d、及び切替部79への制御信号を受信する。切替制御部82は、第5受信部81から与えられた制御信号に基づき、切替部79による映像信号の切り替え及び出力を制御する。
【0039】
また、車輌1には車速、加速度、ブレーキの操作状態又はハンドルの操作状態等の車輌情報を検知する種々のセンサ91が搭載してあり、センサ91の検知結果は信号切替器7a(〜7e)へ与えられている。信号切替器7aは、センサ91に接続線90を介し接続されて、センサ91から車輌情報を受信する第6受信部89を有しており、第6受信部89は受信した車輌情報をイベント判定部88を介し記録制御部84へ与えるように構成されている。記録制御部84へ与えられた車輌情報は、記録部86へ与えられる。
イベント判定部88は、第6受信部89から与えられた車輌情報、及び/又は映像認識部83から与えられた衝突前後の映像に基づき、事故(イベント)が発生したか否かを判定し、事故が発生したと判定した場合には、事故後の所定時間、記録した後、上書きを中止するためのトリガ信号を生成して記録制御部84へ与える。車輌情報により事故が発生したか否かを判定する方法は、ドライブレコーダに関する既知の技術であるため詳細な説明は省略するが、例えば車輌1に加わる加速度が閾値を超えたか否か、車速の急激な変化が生じたか否か、運転者により急ブレーキの操作がなされたか否か等により判定することができる。
【0040】
記録部86は、日本標準周波数局が放送した標準周波数電波を受信して時刻の誤差を自動修正し、絶対時刻を出力する電波時計部86aを備える。記録制御部84は、イベント判定部88からトリガ信号を与えられていない場合、第1受信部71,第2受信部72,第3受信部73,第4受信部74から与えられた映像、及び第6受信部89から与えられた車輌情報を、記録部86の記録領域に先頭アドレスから最終アドレスまで順に記録するように構成されている。映像及び車輌情報を受信した場合には、そのときの絶対時刻も合わせて記録される。映像の記録が記録部86の記録領域の最終アドレスに達した場合には、再度先頭アドレスから映像を上書きして繰り返し記録を行うようにしてある。
【0041】
記録部86は、上述したように、映像及び車輌情報を受信したときに、電波時計部86aが受信した絶対時刻も記録部86に同時に記録する。
図4は、車輌情報及び映像を受信したときに絶対時刻を記録する状態を示す模式図である。
図4に示すように、車輌情報及び映像をそれぞれ受信した時点の絶対時刻Tが記録されている。図4においては、撮像装置5aが撮像した映像の信号を受信したタイミングのみを記録しているが、撮像装置5b〜5mが撮像した映像の信号を受信したタイミングも記録される。
【0042】
イベント判定部88からトリガ信号を与えられた場合、記録制御部84は、トリガ信号を与えられた時点から所定時間の映像を記録部86に記録するとともに、トリガ信号を与えられた時点から所定時間経過後に、撮像された映像の記録を禁止するフラグを設定するように構成されている。これにより、記録部86に記録された記録禁止のフラグを有する映像は、記録部86が映像の記録を再開した場合であっても上書きされることはなく、保存される。
【0043】
図5は、相対時間とイベント判定部88による制御との関係を示すグラフである。
図5に示すように、事故がt5秒後に起きたとすると、記録制御部84からのトリガ信号に基づきt7秒後に記録をストップしている。すなわち、事故前(t1〜t5秒)、並びに事故後(t5〜t7秒)の映像及び車輌情報が絶対時刻とともに記録された後、記録が中止される。
【0044】
記録制御部84は、t1〜t7秒の映像及び車輌情報をフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ87へ送り、この不揮発性メモリ87が外部へ取り出されて事故が解析される。
図4に示すように、事故が発生した絶対時刻T2と、絶対時刻T2から(t7−t5)秒経過後の絶対時刻T3との間で、映像と車輌情報とを組み合わせて同期解析を行う。この同期解析は事故発生前から行ってもよい。映像の情報に車輌情報を補うことで、事故後の解析が容易かつ正確になる。また、対車輌事故の場合で、他車輌も車輌1の車載撮像システムを搭載しているとき、車輌1及び他車輌ともに事故前後の映像情報及び車輌情報を絶対時刻とともに記録しているので、同じ時間軸上で車輌1及び他車輌の映像情報及び車輌情報を比較することができ、さらに事故解析が容易かつ正確になる。
【0045】
以上のように、本発明に係る車載撮像システムの信号切替器7a〜7eは、複数の撮像装置5a〜5mから与えられる映像信号を切り替えて出力する機能のみでなく、ドライブレコーダとして映像を記録する機能を備えている。
【0046】
図1及び図2に示した車載撮像システムでは、2つの撮像装置5e及び5fがそれぞれ出力する映像信号は信号切替器7bに入力されていずれか一方の画像信号のみが出力され、信号切替器7bが出力した画像信号は信号分配器9c〜9eにより分配されて4つのECU3c〜3fに与えられる構成である。
【0047】
以上の構成の車載撮像システムにおいては、車輌1に搭載された複数の撮像装置5a〜5mからECU3a〜3jへの映像信号の送信を信号切替器7a〜7e及び信号分配器9a〜9eを介し行う構成としているので、車輌1に敷設する伝送線の量を低減することができ、ECU3a〜3jに多数の接続端子を設ける必要がなく小型化を阻害することがないため、より多くの撮像装置を備える車載撮像システムを車輌1に搭載することができ、車載撮像システムを安価に提供することができる。
【0048】
また、記録部86は、映像及び車輌情報を受信したときに、これらの情報とともに絶対時刻も記録しており、イベント判定部88が車輌情報又は映像に基づき、事故が発生したと判定してトリガ信号を記録制御部84へ与え、これに基づき記録制御部84が記録部86での記録を停止するように構成しているので、信号切替器7aがドライブレコーダとして効率よく映像を記録することができるとともに、車輌情報と映像とを組み合わせて同期解析を行うことで、事故後の解析が容易かつ正確になる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、信号切替器7a〜7eは4つ又は2つの映像信号の入力を受け付ける構成としたが、これに限るものではなく、3つ又は5つ以上の映像信号の入力を受け付けて、いずれか1つの映像信号を選択して切替出力する構成としてもよい。また、信号分配器9a〜9eは入力された映像信号を2つのECU3a〜3jに分配する構成としたが、これに限るものではなく、3つ以上のECU3a〜3jに分配する構成としてもよい。また、複数の撮像装置5a〜5mから与えられた複数の映像信号から1つの映像信号を選択して切り替え、複数のECU3a〜3jに分配する信号切替器7a〜7eと信号分配器9a〜9eとの機能を兼ね備えた機器を構成することもできる。また、車載撮像システムに含まれる全ての信号切替器7a〜7eが記録部86を備える必要はなく、いくつかの信号切替器7a〜7eのみが記録部86を備える構成とすることもできる。
【0050】
また、車輌1に搭載する撮像装置5a〜5m、ECU3a〜3j、信号切替器7a〜7e及び信号分配器9a〜9eの搭載数、搭載位置及び伝送線による接続形態等は図1及び図2に示すものに限らない。また、車輌1に搭載された種々のセンサ91と信号切替器7a〜7eとを接続線90にて接続する構成としたが、これに限るものではなく、信号切替器7a〜7eにセンサ91を内蔵する構成としてもよい。また、信号切替器7a〜7eにイベント判定部88を搭載して車両1の事故の発生の有無を判定する構成としたが、これに限るものではなく、イベント判定部88の機能を有する他の装置からトリガ信号を信号切替器7a〜7eが受信して映像の記録を行う構成としてもよい。
【0051】
そして、信号切替器7aにおいて、第1受信部71,第2受信部72,第3受信部73,第4受信部74,第5送信部80が映像信号を入出力し、第1送信部75,第2送信部76,第3送信部77,第4送信部78,第5受信部81が制御信号を入出力する構成にしているが、第1受信部71と第1送信部75とを、第2受信部72と第2送信部76とを、第3受信部73と第3送信部77とを、第4受信部74と第4送信部78とを、第5送信部80と第5受信部81とを一体化し、映像信号の入出力と制御信号の入出力とを切り替えて行うように構成してもよい。
【0052】
また、記録制御部84は、事故前後の映像及び車輌情報の記録を不揮発性メモリ87へ送る構成にしているが、最初から不揮発性メモリ87に映像及び車輌情報を上書きを繰り返して順次記録し、トリガ信号の発生から所定時間経過後に、記録した事故前後の映像及び車輌情報に上書不可のフラグを設定することにしてもよい。
そして、記録部86が電波時計部86aを有する代わりに、記録部86は、カーナビゲーション等を介しGPSにより絶対時刻を取得することにしてもよい。
さらに、記録制御部84がイベント判定部88からトリガ信号を与えられた場合、切替制御部82から与えられる制御信号に応じて記録部86に記録された事故前後の映像及び車輌情報を読み出し、読み出した映像及び車輌情報を第5送信部80を介しECU3aへ送るように構成してもよい。
そして、記録部86が各撮像装置5a〜5mの全ての映像を記録するように構成しているが、切替部79により切り替えて記録することにしてもよい。
【0053】
また、前記実施の形態においては、ECU3aから第5受信部81へ伝送線を介し制御信号を送信する構成にしているが、ECU3aから第5受信部81へ電力線を介し制御信号を送信する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係る車載撮像システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車載撮像システムを車輌に搭載した場合の構成例を示す模式図である。
【図3】図1、図2に示す車載撮像システムの信号切替器の構成例を示すブロック図である。
【図4】車輌情報及び映像を受信したときに絶対時刻を記録する状態を示す模式図である。
【図5】相対時間とイベント判定部による制御との関係を示すグラフである。
【図6】従来の車載撮像システムの構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 車輌
3a〜3j ECU(処理装置)
5a〜5m 撮像装置
7a〜7e 信号切替器
9a〜9e 信号分配器
71 第1受信部(入力部)
72 第2受信部(入力部)
73 第3受信部(入力部)
74 第4受信部(入力部)
75 第1送信部
76 第2送信部
77 第3送信部
78 第4送信部
79 切替部
80 第5送信部(出力部)
81 第5受信部
82 切替部
83 映像認識部
84 記録制御部
86 記録部
86a 電波時計部
87 不揮発性メモリ
88 イベント判定部(トリガ信号発生手段)
89 第6受信部
90 接続線
91 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され、該車輌の内部及び/又は外部を撮像する複数の撮像装置と、該撮像装置が撮像した映像に基づき処理を行う処理装置と、前記車輌に係る情報を取得する車輌情報取得手段とを備える車載撮像システムにおいて、
前記撮像装置が撮像した映像に係る映像信号を伝送する伝送線と、
複数の前記撮像装置に伝送線を介しそれぞれ接続されて前記映像信号がそれぞれ入力される複数の入力部、前記処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する出力部、前記入力部に入力された複数の映像信号から一又は複数の映像信号を切り替えて前記出力部へ与える切替部、並びに前記入力部に入力された映像信号に係る映像及び前記車輌に係る情報を時刻とともに記録する記録部を有する信号切替手段と
を備え、
前記撮像装置及び前記処理装置は、前記信号切替手段を介し接続してあることを特徴とする車載撮像システム。
【請求項2】
電波時計又はGPS(Global Positioning System)により時刻情報を取得する手段を備え、
前記時刻は、前記手段により取得した時刻である請求項1に記載の車載撮像システム。
【請求項3】
前記映像信号に係る映像又は前記車輌に係る情報に基づき、トリガ信号を発生するトリガ信号発生手段を備え、
前記記録部は、前記トリガ信号の発生から所定時間経過後、記録を中止するように構成されている請求項1又は2に記載の車載撮像システム。
【請求項4】
前記トリガ信号発生手段からトリガ信号を取得した場合に、前記記録部に記録された前記映像信号に係る映像及び前記車輌に係る情報を記録媒体に記録する手段を備える請求項1乃至3のいずれかに記載の車載撮像システム。
【請求項5】
前記処理装置を複数備え、
前記撮像装置に伝送線を介し接続されて前記撮像装置からの映像信号が入力される入力部、及び前記処理装置に伝送線を介し接続されて映像信号を出力する複数の出力部を有し、前記入力部に入力された映像信号を前記複数の出力部に分配するように構成された信号分配手段を備え、
前記撮像装置と前記処理装置とは前記信号分配手段を介し接続してある請求項1乃至4のいずれかに記載の車載撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−269494(P2008−269494A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114664(P2007−114664)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】