説明

車載用障害物検出システム

【課題】意匠性が低下することなく障害物の検知範囲の広い車載用障害物検知システムを提供する。
【解決手段】車載用障害物検出システムは、超音波を送信してその反射波を受信する複数のセンサ20(20a〜20c)と、車両に搭載されるECU10に設けられた制御部11とを備える。制御部11は、各センサ20による反射波の受信に基づいて障害物が存在するか否かを判断する検知手段12を有する。制御部11は、センサ20aを基準センサとして超音波を送信し、他のセンサ20(20b、20c)の各々について、反射波を受信した受信タイミングと、センサ20aが反射波を受信した受信タイミングとの時間差を求める。制御部11は、センサ20aの送信タイミングを基準として、他のセンサ20の送信タイミングは、先に求めた時間差だけ逆方向にずらすよう設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波により車両周囲の障害物を検知する車載用障害物検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両に複数の超音波センサを取り付け、超音波を車両の周囲に送信するとともに物体による反射波を受信して、車両周囲の障害物を検知する障害物検知システムが提供されている。この種の障害物検知システムでは、圧電素子を用いて電気エネルギーを機械的振動に変換して空気を振動させ超音波を送信し、超音波による振動板の機械的振動を圧電素子により電気信号に変換する超音波センサが用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−84428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような障害物検知システムにおいて、超音波センサから送信された超音波は空気中を伝達する上で減衰するため、障害物を検知可能な検知範囲が送信信号の音圧により制限される。超音波センサにおけるマイクの形状などを大きくして送信信号の音圧を高め、障害物の検知範囲を拡張することも可能であるが、超音波センサが外部に露出する領域が多くなり、意匠性が低くなるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、意匠性が低下することなく障害物の検知範囲の広い車載用障害物検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の車載用障害物検知システムは、超音波を送信するとともに当該超音波が物体により反射された反射波を受信する複数の超音波センサと、複数の超音波センサが受信した反射波に基づいて障害物を検知する検知手段と、複数の超音波センサによる超音波の送信タイミングを個別に制御する制御手段とを備え、制御手段は、複数の超音波センサのうち所定の超音波センサを基準センサとして、タイミング取得用の超音波を送信させ、当該基準センサ以外の他の超音波センサの各々について、タイミング取得用の超音波の反射波を基準センサが受信した受信タイミングと、当該他の超音波センサが当該反射波を受信した受信タイミングとの時間差を求め、以降は、当該他の超音波センサからの送信タイミングを、基準センサからの送信タイミングより上述の時間差だけ逆方向にずらすように各超音波センサの送信タイミングを制御することを特徴とする。
【0007】
この車載用障害物検知システムにおいて制御手段は、車両に搭載されるエレクトリックコントロールユニットからなり、このエレクトリックコントロールユニットで複数の超音波センサの送信タイミングを制御するようにしてもよい。
【0008】
またこの制御手段は、複数の超音波センサに個別に設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
上記車載用障害物検知システムによれば、意匠性が低下することなく障害物の検知範囲を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1にかかる車載用障害物検出システムを示す概略ブロック図である。
【図2】同車載用障害物検出システムを示す概略ブロック図である。
【図3】同車載用障害物検出システムの動作を説明する為のタイミングチャートである。
【図4】同車載用障害物検出システムによる検知可能エリアを示す概略図である。
【図5】実施の形態2にかかる車載用障害物検出システムを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
本実施の形態にかかる車載用障害物検出システムは、自動車などの車両に搭載され、車両の周囲に存在する障害物を検出するものである。この車載用障害物検出システムは、図1に示すように、車両に搭載されるエレクトリックコントロールユニット(以下、「ECU」と称す)10と、車両の前方側に設けられた複数のセンサ20(20a〜20c)とを備える。またこの車両の後方側には、複数のセンサ21(21a〜21d)が搭載されており、上述のECU10とともに車載用障害物検出システムを構成して車両の周囲に存在する障害物の検知を行っている。以下では、車両の前方側に取り付けられた複数のセンサ20とECU10とを主な構成要素として備える車載用障害物検出システムについて説明を行う。なおセンサ20及びセンサ21の台数や設置位置については、車載用障害物検出システムを説明する為の一例であり、その検知範囲や要求される精度などの諸条件に応じて適宜設定することが可能である。
【0012】
各センサ20は、超音波を車両の周囲に送信するとともに、送信した超音波が物体などにより反射した反射波を受信する超音波センサである。各センサ20は、後述するECU10の制御部11と信号線L1を介してそれぞれ接続されており、制御部11との間で通信信号の送受信を行う。制御部11から通信信号として送信制御信号が入力されると、センサ20の圧電素子(図示せず)により、電気エネルギーを機械的振動に変換して空気を振動させ、超音波を所定の方向に送信する。この超音波が物体などによって反射されると、超音波が反射波として各センサ20に到達し、各センサ20の振動板(図示せず)を振動させる。この振動板の機械的振動を圧電素子により電気信号に変換することで、各センサ20は反射波を受信し、制御部11に通信信号として反射波受信信号を出力する。なお各センサ20は、自身が送信した超音波の反射波に限らず、他のセンサ20が送信した超音波の反射波も受信可能に設定されている。
【0013】
ECU10は、CPUやメモリなど(何れも図示せず)からなり、車両に搭載されたバッテリなどの電源BT1から電力の供給を受けて動作する。またECU10は、ネットワークCN1に接続されており、このネットワークCN1を介して車両の情報を取得可能に設定されている。
【0014】
またECU10には、制御部11からの警報信号により動作する報知手段BZ1が接続されており、少なくとも運転者に警告を通知するよう設定されている。なお、この報知手段BZ1は、他の車載システム(図示せず)に設けられた同等の手段を共用するようにしてもよい。
【0015】
さらにECU10は、上述のように各センサ20(20a〜20c)と信号線L1を介してそれぞれ接続され、各センサ20との間で通信信号の授受を行うとともに各センサ20の動作を制御する制御部11を備えている。この制御部11は、各々のセンサ20に送信制御信号を出力するタイミングを調整することで、各センサ20が超音波を送信する送信タイミングを個別に制御している。
【0016】
また制御部11は、各センサ20から入力される反射波受信信号に基づいて、車両の周囲に障害物が存在するか否かを判断する検知手段12を有している。この検知手段12は、センサ20から入力された反射波受信信号の信号レベルと所定の閾値とを比較し、反射波受信信号の信号レベルが閾値よりも小さい場合には障害物が存在しないと判断する。また、反射波受信信号の信号レベルが閾値以上であれば、各々のセンサ20から反射波受信信号が入力された時間差と、各センサ20の物理的な配置位置に基づいて物体の位置を推定する。この推定した物体の位置が例えば車両の進行方向やその近傍にある場合には、車両の周囲に障害物が存在すると判断し、制御部11は上述の報知手段BZ1に警報信号を出力して、運転者や周囲に警告を通知する。
【0017】
ここで、この車載用障害物検出システムにおける障害物の検知動作について、図2及び図3を用いて説明を行う。なお、図2における物体X1は、例えば岩などの障害物である。また各センサ20(20a〜20c)は、車両の前方側(図2の右側)を超音波の放射方向として搭載され、例えば、車両の左側(図2における上側)から順にセンサ20a、20b、20cと配列されている。各センサ20が送信した超音波は物体X1により反射され、反射波として各々のセンサ20a、20b、20cにより受信される。
【0018】
ここで、センサ20aのみから時刻T0に送信した超音波が、物体X1によって反射され、各センサ20a、20b、20cに到達するまでの時間をそれぞれ時間ta、tb、tcとする。この場合は、物体X1からセンサ20aまでの距離が最も短く、センサ20cまでの距離が最も遠いので、時間ta<時間tb<時間tcとなっている。
【0019】
まず、制御部11は、センサ20aを基準センサとして設定し、センサ20aに送信制御信号を送信してセンサ20aから超音波を送信させる(図3における時刻T0)。この超音波は、時間taが経過すると物体X1に到達して物体X1によって反射され、さらに時間taが経過したタイミングで(時刻T1)、この反射波がセンサ20aに到達する。センサ20aは、この反射波を受信して制御部11に反射波受信信号を出力する。また時刻T1から時間Δtab(=時間tb−時間ta)が経過すると、反射波がセンサ20bに到達し、センサ20bが受信して反射波受信信号を制御部11に出力する。さらに、時刻T1から時間Δtac(=時間tc−時間ta)が経過すると、反射波がセンサ20cに到達し、センサ20cから反射波受信信号が制御部11に出力される。すなわち、制御部11には、時刻T1にセンサ20aからの反射波受信信号が入力された後、時刻T1から時間Δtabが経過するとセンサ20bからの反射波受信信号が入力される。また時刻T1から時間Δtacが経過すると、センサ20cからの反射波受信信号が入力される。
【0020】
その後、制御部11は、センサ20aから超音波を送信させる送信タイミングを時刻T2として設定し、この時刻T2よりも時間Δtacだけ前にセンサ20cに送信制御信号を出力する。また制御部11は、時刻T2よりも時間Δtabだけ前にセンサ20bに送信制御信号を出力する。
【0021】
すなわち、まず制御部11は、基準センサであるセンサ20aが送信した超音波の反射波を基準センサ以外のセンサ20b、20cが受信した受信タイミングと、センサ20aが受信した受信タイミングとを時間差(時間Δtab、Δtac)をそれぞれ求める。この時間差が求まると、基準センサであるセンサ20aによる超音波の送信タイミングを基準として、基準センサ以外のセンサ20b、20cの送信タイミングを上述の時間差だけそれぞれ逆方向にずらしている。
【0022】
これにより、センサ20aが時刻T2に超音波を送信する場合、センサ20bの送信タイミングは(時刻T2−Δtab)となり、センサ20cの送信タイミングは(時刻T2−Δtac)となる。ここで、センサ20b及びセンサ20cは、何れもセンサ20aよりも物体X1に遠いため、送信タイミングが時刻T2よりも早い時刻となるが、センサ20aよりも物体X1に近い位置に他のセンサ20では、送信タイミングが時刻T2よりも遅い時刻となる。ここで、センサ20a、20b、20cからそれぞれ送信された超音波は、物体X1にほぼ等しい時刻に到達し(時刻T3)、各センサ20からの超音波が合成されてセンサ20aのみから送信した超音波と比べて音圧が大きくなる。その後、この音圧の高い超音波が物体X1によって反射され、各センサ20a〜20cに順次到達する(時刻T4)。この時、各センサ20が受信する反射波は、時刻T1で各センサ20が受信した反射波よりも音圧が高く、制御部11に出力される反射波受信信号の信号レベルが大きくなる。反射波受信信号の信号レベルが所定の閾値よりも大きくなると、検知手段12は上述のように物体X1の位置を推定し、物体X1の位置が車両の進行方向の周囲にあれば、制御部11が報知手段に警報信号を出力して運転者や周囲に警告を通知する。
【0023】
このようにして、図4に示すように、上述した車載用障害物検出システムによって検知可能な領域エリアS1は、従来のシステムにより検知可能な領域であるエリアS2に比べ、検知可能な領域が広がる。
【0024】
なお制御部11は、時刻T2から所定の時間間隔でセンサ20aの送信タイミングを設定し、この送信タイミングから上述の時間差(時間Δtab、Δtac)だけ逆方向にずらした時点をセンサ20b、20cの送信タイミングとして設定する。これにより、例えば車両や物体X1の移動などによって、物体X1に到達した超音波が互いに打ち消すように作用した場合であっても、次の送信タイミングで音圧が高くなるように作用すれば、障害物を検知することが可能となる。この時、時刻T2からの時間間隔を短く設定しておくことで、障害物を検知する精度を高めることができる。
【0025】
また制御部11は、上述のように時刻T2から所定の時間が経過すると、再度センサ20aからのみ超音波を送信して、他のセンサ20b、20cにおける送信タイミングとの時間差を再設定するようにしている。
【0026】
上述のように、この車載用障害物検出システムでは、個々のセンサ20から送信した超音波の反射波では障害物を検知出来なかった場合であっても障害物を検知できるようになる。また、同性能の検知能力を実現する場合では、従来よりも小型の超音波センサを各センサ20として利用することができ、意匠性の低下を抑制することができる。
【0027】
また、ECU10に制御部11を設けたことにより、各々のセンサ20には超音波の送信・受信機能のみを持たせればよい。よって、各センサ20を簡素化することができ、各センサ20にかかる製造コストを低減して、より低コストな車載用障害物検出システムを提供することができる。
【0028】
なお、上述の時刻T4より後におけるセンサ20b、20cの送信タイミングは、時刻T4にてセンサ20aが反射波を受信した受信タイミングと、センサ20b、20cが受信した受信タイミングとの時間差に基づいて制御するようにしてよい。このようにすることで、車両が移動し物体X1との距離が変化して、物体X1から反射波が届くまでの時間差に変化が生じた場合であっても、物体X1に超音波が到達する時刻を等しくすることができ、障害物を正確に検知することができる。
【0029】
また、各センサ20、21の台数や設置位置については、本実施の形態に記載された台数や設置位置に限るものではなく、車両の大きさ、検知範囲、要求される精度などに応じて適宜設定することができる。
【0030】
(実施の形態2)
本実施の形態にかかる車載用障害物検出システムは、図5に示すように、各々のセンサ20(20a〜20c)に制御部11を設け、各制御部11が互いに通信を行う。この点を除いては、実施の形態1と同様の構成であるので共通する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0031】
各センサ20のうち、ECU10に接続されたセンサ20aは基準センサとして動作し、他のセンサ20b、20cに向けて通信信号を用いて種々の情報を通知する。具体的にセンサ20aの制御部11は、センサ20aから送信した超音波の反射波を受信した受信タイミングと、センサ20aから超音波を送信する送信タイミングとを他のセンサ20b、20cに通知する。他のセンサ20b、20cの制御部11は、このセンサ20aから通知された情報と、自機が受信した反射波の受信タイミングに基づいて、センサ20aによる受信タイミングとの時間差(時間Δtab、Δtac)をそれぞれ求める。そして、各センサ20b、20cは、センサ20aにおける送信タイミングを基準として、上述の時間差だけ逆方向にずらして超音波の送信タイミングを設定する。これにより、物体X1に到達した各センサ20a〜20cの超音波は、互いに合成されて音圧が大きくなり、各センサ20a〜20cの各々で物体X1を障害物として検知することができる。
【0032】
これにより、実施の形態1での効果に加え、ECU10とセンサ20との間を接続する信号線L1の本数を低減することができるとともに、ECU10にかかる処理負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 ECU
11 制御部(制御手段)
12 検知手段
20(20a〜20c) センサ(超音波センサ)
21(21a〜21d) センサ(超音波センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送信するとともに当該超音波が物体により反射された反射波を受信する複数の超音波センサと、前記複数の超音波センサが受信した反射波に基づいて障害物を検知する検知手段と、前記複数の超音波センサによる超音波の送信タイミングを個別に制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記複数の超音波センサのうち所定の超音波センサを基準センサとして、タイミング取得用の超音波を送信させ、
当該基準センサ以外の他の超音波センサの各々について、前記タイミング取得用の超音波の反射波を前記基準センサが受信した受信タイミングと、当該他の超音波センサが当該反射波を受信した受信タイミングとの時間差を求め、以降は、当該他の超音波センサからの送信タイミングを、前記基準センサからの送信タイミングより前記時間差だけ逆方向にずらすように各超音波センサの送信タイミングを制御することを特徴とする車載用障害物検出システム。
【請求項2】
前記制御手段は、車両に搭載されるエレクトリックコントロールユニットからなり、前記エレクトリックコントロールユニットで前記複数の超音波センサの送信タイミングを制御することを特徴とする請求項1記載の車載用障害物検出システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の超音波センサに個別に設けられたことを特徴とする請求項1記載の車載用障害物検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127863(P2012−127863A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280829(P2010−280829)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】