説明

車載用電子装置

【課題】筐体のうち放熱フィンが配置された面と同じ面の上部からコネクタが突出していても、自然対流で発生した空気を停滞させずに流すことができる車載用電子装置を提供する。
【解決手段】車載用電子装置は、回路基板2を内部に収容した筐体と、筐体正面の上方から外部に向かって突出したコネクタ3と、コネクタ3より下方の筐体正面から外部に向かって突出した放熱フィン4とを備え、放熱フィン4は、筐体の下方から上方に沿って延びた直線部4aと、途中で筐体の左右の辺のうち近い方の辺1c側に向かって斜めに折れ曲がった折り曲げ部4bとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の熱を放熱する機能を備えた車載用電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子化に伴って車載用電子装置内部の電子部品に対する発熱対策の必要性が高まっている。この電子部品の熱を放熱する対策として、車載用電子装置の筐体には直線状の放熱フィンが設けられていた。(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−273807号公報
【特許文献2】特開2010−57345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放熱フィンの放熱効率を向上させるには、周囲の自然対流の空気を放熱フィンに沿って流すのがよい。車両が停止している際、エンジンルームのような車両内部の密閉空間では空気が下から上に自然対流する。このため、放熱フィンは、車載用電子装置の車両への取り付け位置に対して下方から上方に沿って配置されることが一般的である。
【0005】
しかし、構造上、車載用電子装置の筐体のうち放熱フィンが設けられている面と同じ面の上部からコネクタが外部に突出する場合があった。このとき、車内の自然対流で発生した空気が放熱フィンに沿って下から上に流れるが、コネクタが遮蔽物となってこの空気の流れをせき止め、放熱効率が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、筐体のうち放熱フィンが配置された面と同じ面の上部からコネクタが突出していても、自然対流で発生した空気を停滞させずに流すことができる車載用電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の車載用電子装置は、放熱フィンが、筐体の下方から上方に沿って延びた直線部と、途中で筐体の左右の辺のうち近い方の辺側に向かって斜めに折れ曲がった折り曲げ部とを有することを特徴とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筐体のうち放熱フィンが配置された面と同じ面の上部からコネクタが突出していても、自然対流で発生した空気を停滞させずに流すことができる車載用電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態における車載用電子装置の斜視図
【図2】同図1の車載用電子装置を別な視点から見たときの斜視図
【図3】同図1の要部である筐体の正面図
【図4】同図3のA−A断面をB方向から見たときの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る車載用電子装置について図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本実施形態における車載用電子装置の斜視図である。図2は図1の車載用電子装置を別な視点から見たときの斜視図である。図3は図1の筐体の正面図である。図4は図3のA−A断面をB方向から見たときの断面図である。図1〜図3において見える上下左右の関係が、実際の上下左右の関係である。
【0012】
図1〜図4に示すように、車載用電子装置は、筐体1と、回路基板2と、コネクタ3と、放熱フィン4とを備える。
【0013】
筐体1は、例えばアルミダイカストのような金属で構成され、正面方向に設けた第1ケース1aと背面方向に設けた第2ケース1bが結合して内部に空間を有する。第1ケース1aの正面上方には開口部1cが設けられている。この開口部1cは、筐体1の左辺1d側から右辺1e側まで延びている。筐体1の第1ケース1aと第2ケース1bとによって形成される内部空間には回路基板2が設けられている。第1ケース1aは正面の一部が窪んだ窪み部1fと正面の一部が突出した突出部1gとを有する。
【0014】
回路基板2はコネクタ3を介して外部の電子機器と電気的に接続する。回路基板2は、発熱量が相対的に大きい発熱系統部品(例えばトランジスタや半導体)を主として構成される発熱領域2aと、発熱量が相対的に少ない信号系統部品(例えばロジックICや水晶発振子やセラミックコンデンサ)を主として構成される信号領域2bとに領域分けされている。
【0015】
発熱系統部品には信号系統部品に比べて大電力が加えられる。さらに、発熱領域2aに設けられた発熱系統部品は、信号領域2bに設けられた信号系統部品に比べて部品同士が密集している。このため、発熱領域2aでは、信号領域2bに比べて大きな発熱が発生する。
【0016】
特に、直噴エンジン用の車載用電子装置の場合、直噴エンジン制御用の部品が新たに設けられる。直噴エンジン制御用の部品は駆動電力を要して発熱量が大きい。また、直噴エンジン用の車載電子装置はエンジンルーム内に設けられるため、車載用電子装置に熱がこもりやすい。このため、直噴エンジン制御用の部品は発熱領域2aに設けられて、後述の放熱対策が行われる。この場合、例えば、信号領域2bには多くても数ワット程度の電力が加えられるにすぎないが、発熱領域2aには10数ワット程度の電力が加えられる。直噴エンジン用の車載用電子装置に用いられる一般的な回路基板2自体によって放熱できる電力はたかだか10ワット程度である。このため、信号領域2bについては発熱の影響を考えなくてもよいが、発熱領域2aについて放熱の対策をとる必要がある。回路基板2やこの基板上の部品が使用上限温度を超えて破損することを防止するためである。
【0017】
発熱系統部品は、発熱領域2aに相当する回路基板2の背面に設けられている。一方、信号系統部品は、信号領域2bに相当する回路基板2の両面に設けられている。これにより、発熱領域2aにおける発熱は、回路基板2に当接している第1ケース1aの窪み部1fに熱伝導して放熱される。一方、信号系領域2bには、両面に信号系統部品が載置されているので、回路基板2への実装面積を向上させることができる。このように回路基板2に発熱領域2aと信号系統領域2bとを設けることによって、放熱と実装面積の向上を両立することができる。
【0018】
コネクタ3は第1ケース1aの正面上方に設けられている。コネクタ3は開口部1cから外部(正面方向)に突出している。コネクタ3は筐体1の左辺1d側から右辺1e側まで延びており、開口部1cの内周と当接する。
【0019】
放熱フィン4は筐体1と同じ材料で構成される。放熱フィン4は筐体1と一体形成される。放熱フィン4は、複数の金属突起で構成される。隣り合う金属突起間は略等間隔に設定されている。放熱フィン4の隣り合う金属突起に挟まれた領域には、下方から上方に向かって車内の自然対流の空気が流れる。各経路の入口は、筐体1の底辺に設けられている。また、各経路の出口はそれぞれ1箇所のみである。放熱フィン4はコネクタ3より下方の筐体1正面から外部に向かって突出している。図4に示すように、この放熱フィン4の突出方向の高さは、コネクタ3の突出方向の高さよりも低い。また、放熱フィン4は、筐体1正面のうち、回路基板2の発熱領域2aによって投影される領域に設けられる。ここで回路基板2の正面は、発熱領域2aにおいて窪み部1fの後方と当接する。
【0020】
放熱フィン4は、直線部4aと、この直線部4aと連続する折り曲げ部4bとを有する。直線部4aは、筐体1の底辺から上方に沿って延びている。折り曲げ部4bは、放熱フィン4の途中で筐体1の左右の辺1d、1eのうち近い方の辺である左辺1dに向かって斜めに折れ曲がっている。折り曲げ部4bは、直線部4aの上端から連続して上方に延びている。折り曲げ部4bの折り曲げ角度は、直線部4aに対して略45度(35度〜55度)に設定されるのが望ましい。それ以外の角度では、自然対流の空気の流れが折り曲げ部4bの側壁やコネクタ3の下壁によって妨げられやすい。
【0021】
車内の自然対流の空気は、筐体1の底辺側から直線部4aを通過する。例えば、直線部4aの隣り合う金属突起の谷間で構成された各経路の下端からこの各経路に沿って自然対流の空気が真上に移動する。
【0022】
直線部4aの上端に到達した自然対流の空気は、折り曲げ部4bを通過する。例えば、直線部4aの隣り合う金属突起の谷間で構成された各経路の上端に到達した自然対流の空気は、折り曲げ部4bの隣り合う金属突起の谷間で構成された各経路の下端にそれぞれ流入する。これによって、直線部4aの経路に沿って真上に通過していた自然対流の空気は、折り曲げ部4bによって折り曲げ角度方向に進路を変える。また、折り曲げ部4bの経路は直線部4aの経路に対して略45度(35度〜55度)傾いており、急激な角度変化ではないため、自然対流の空気の流れを妨げることなく進路変更することができる。そして、自然対流の空気は、折り曲げ部4bの隣り合う金属突起の谷間で構成された各経路に沿って斜め上方向に移動する。
【0023】
折り曲げ部4bの上端に到達した自然対流の空気の少なくとも一部は、筐体1の左辺1d側に放出される。例えば、折り曲げ部4bの隣り合う金属突起の谷間で構成された各経路の少なくとも一部の終端は、筐体1の左辺1d上に設けられている。そして、この終端に到達して外部に放出される自然対流の空気は、コネクタ3の下端に流れを妨げられない。したがって、自然対流の空気が車載電子装置の筐体1上で留まることなく、さらに新たな自然対流の空気を放熱フィン4に流しやすくすることができる。
【0024】
また、筐体1の正面のうち放熱フィン4が形成された発熱領域の一部には、窪み部1fが設けられている。窪み部1fによって、回路基板2と筐体1とが接触するため、発熱領域2aで発生した熱は、第1ケース1aに熱伝導される。この熱伝導によって第1ケース1aに蓄積された熱は、放熱フィン4を上方に流れる自然対流によって放熱される。ここで、窪み部1fを設けることによって、窪み部1fを設けないときよりも放熱フィン4の金属突起の側壁の表面積を大きくすることができる。したがって、窪み部1fを設けることによって自然対流による放熱効果をより向上させるとともに筐体1の軽量化を図ることができる。すなわち、車載用電子装置の放熱効果の向上と軽量化の両立を図ることができる。
【0025】
以上のように、本発明によれば、下方から上方に流れる空気の自然対流は、直線部4a
に進入する。直線部4aは、金属突起が筐体1の底辺から上方に真上に沿って延びており、自然対流の流れと同じになっている。このため、自然対流がスムーズに直線部4aに進入して放熱フィン4における流れを形成することができる。いったん直線部4aで放熱フィン4における流れが形成できれば、その後に自然対流の経路を曲げても空気の流れに乱れが生じない。したがって、筐体1の左右の辺1d、1eのうち近い方の辺に向かって折れ曲がっている折り曲げ部4bによって直線部4aを通過した空気の流れが曲げられても、放熱フィン4に進入した自然対流の空気は、空気の流れを乱されずに外部に放出される。そして、筐体1のうち放熱フィン4が配置された面と同じ面の上部からコネクタ3が突出していても、自然対流で発生した空気を停滞させずに流すことができる。
【0026】
なお、本発明の実施形態では、自然対流の空気の流れを妨げるものとして、筐体1から突出したコネクタ3について説明したが、筐体1のうち放熱フィン4が配置された面と同じ面の上部に設けられて自然対流の空気の流れを妨げる遮蔽物であればコネクタ3以外の物体であってもよい。例えば、筐体1から放熱等のために突出した突出部であってもよい。
【0027】
また、放熱フィン4は、筐体1正面のうち、回路基板2の発熱領域2aによって投影される領域に設けられている。これによって、発熱量の多い発熱領域2aについては放熱フィン4によって放熱を行うとともに、発熱量の少ない信号領域2bについては放熱フィン4を設けないことによって車載用電子装置の軽量化を図ることができる。すなわち、熱環境への対応とさらなる軽量化が求められている車載用電子装置において、放熱効果の向上と軽量化の両立を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る車載用電子装置は、筐体の放熱フィンが設けられた面に遮蔽物がある場合に有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 筐体
2 回路基板
3 コネクタ
4 放熱フィン
4a 直線部
4b 折り曲げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を内部に収容した筐体と、
前記筐体正面の上方から外部に向かって突出した遮蔽物と、
前記遮蔽物より下方の前記筐体正面から外部に向かって突出した放熱フィンとを備え、
前記放熱フィンは、前記筐体の下方から上方に沿って延びた直線部と、途中で前記筐体の左右の辺のうち近い方の辺側に向かって斜めに折れ曲がった折り曲げ部とを有することを特徴とする車載用電子装置。
【請求項2】
前記遮蔽物はコネクタで構成され、
前記筐体の正面上方は開口し、
前記コネクタは前記回路基板と電気的に接続して前記筐体の開口から外部に突出することを特徴とする請求項1に記載の車載用電子装置。
【請求項3】
前記回路基板は、主として発熱量が相対的に少ない信号系統部品によって構成される信号領域と、主として発熱量が相対的に大きい発熱系統部品で構成される発熱領域とに分けられ、
前記放熱フィンは、前記筐体正面のうち、前記回路基板の発熱領域によって投影される領域に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の車載用電子装置。
【請求項4】
前記回路基板の発熱領域は、前記回路基板の中央で分割された左右の領域のいずれかに含まれることを特徴とする請求項3に記載の車載用電子装置。
【請求項5】
前記筐体正面のうち前記放熱フィンが形成された領域の一部に窪み部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の車載用電子装置。
【請求項6】
前記折り曲げ部は、前記直線部に対して略45度折れ曲がったことを特徴とする請求項5に記載の車載用電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−89594(P2012−89594A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233216(P2010−233216)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】