車載用音場制御装置
【課題】車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えること。
【解決手段】メインスピーカ13a〜13dを車室の各座席に対応して設けるとともに、車両の進行方向に対して右側に位置する2つの座席の間で共用する右ウーハー12aを前列右側の座席の下部へ設置し、車両の進行方向に対して左側に位置する2つの座席の間で共用する左ウーハー12bを前列左側の座席の下部へ設置することとした。
【解決手段】メインスピーカ13a〜13dを車室の各座席に対応して設けるとともに、車両の進行方向に対して右側に位置する2つの座席の間で共用する右ウーハー12aを前列右側の座席の下部へ設置し、車両の進行方向に対して左側に位置する2つの座席の間で共用する左ウーハー12bを前列左側の座席の下部へ設置することとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の音場を制御する車載用音場制御装置に関し、特に、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車室において音楽や音声といった各種の音源情報を再生するカーオーディオシステムが知られている。
【0003】
かかるカーオーディオシステムは、主に中〜高音域の音を出力するメインスピーカと、低音域の音を出力するウーハースピーカとからなるスピーカセットを車室に対して1セットだけ設置するのが一般的であった。しかし、近年では、各乗車者に対して最適な音を聴かせるために、上記のスピーカセットを座席ごとに設けることが提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、各座席のヘッドレストの左右にメインスピーカを設けるとともに、各座席の下部にウーハースピーカを設けたカーオーディオシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−3994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、各座席にメインスピーカおよびウーハースピーカを設置すると、コストが高くなるという問題があった。特に、ウーハースピーカは、メインスピーカと比較して高価であるため、かかるウーハースピーカを各座席に設けることは、コスト面において好ましくない。また、ウーハースピーカは、大型であるため、車室に数多く設置すると、車室が手狭になるという問題もあった。
【0007】
また、近年では、環境に配慮した低燃費な自動車が望まれており、これを実現するために、車両の軽量化が進められている。このため、車室へ設置するスピーカの数が増えることは、かかる軽量化の点においても好ましくない。
【0008】
これらのことから、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、メインスピーカと、当該メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカとを用いて車室の音場を制御する車載用音場制御装置であって、前記メインスピーカは、前記車室の各座席に対応して設けられ、前記スピーカは、前記座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メインスピーカが、車室の各座席に対応して設けられ、スピーカが、座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることとしたため、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る音場制御手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、各スピーカの配置例を示す図である。
【図4】図4は、オンオフ制御部の動作例を示す図である。
【図5】図5は、車載用音場制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、集音マイクを用いて各スピーカのオンオフ制御を行う場合の動作例を示す図である。
【図7】図7は、ウーハースピーカの他の配置例を示す図である。
【図8】図8は、3列シートの車両に対する各スピーカの配置例を示す図である。
【図9】図9は、メインスピーカの向きの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る音場制御装置の実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立ち、本発明に係る音場制御手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る音場制御手法の概要を示す図である。なお、以下では、メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカの一例として「ウーハースピーカ」を用いて説明することとする。
【0014】
同図に示すように、本発明に係る音場制御手法は、メインスピーカとウーハースピーカとを用いて車室の音場制御を行う手法であり、特に、メインスピーカを各座席に対応して設ける一方で、ウーハースピーカについては複数の座席で共有することとしている。
【0015】
具体的には、ウーハースピーカから出力される低音域の音は、メインスピーカから出力される中〜高音域の音と比較して指向性が低い。すなわち、人の聴覚では、中〜高音域の音と比較して低音域の音の発生源の方向を捉えることが難しい。このため、各座席に1台ずつウーハースピーカを設置しなくとも、聴感上の違和感を覚えさせることがない。
【0016】
一方、メインスピーカから出力される中〜高音域の音は、指向性が比較的高いため、音像の配置関係が特定され易い。すなわち、音像が右や左にずれているといった違和感を乗車者に対して与え易いため、メインスピーカについては、各座席に対応して設けることで、かかる違和感を解消することができる。
【0017】
したがって、メインスピーカを車室の各座席に対応して設け、ウーハースピーカについては複数の座席で共有することとすれば、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0018】
さらに、人の聴覚は、ウーハースピーカから出力される低音域の音に対し、左右方向の音像のずれよりも前後方向の音像のずれに鈍感であることが知られている。すなわち、ウーハースピーカの配置が前後方向にずれたとしても、左右方向にずれた場合と比較して聴感上の違和感をより覚えさせることがない。
【0019】
そこで、本発明に係る音場制御手法では、図1に示したように、ウーハースピーカを車両の進行方向の左右に1つずつ設置し、右側に設置したウーハースピーカを右側に位置する前後の座席間で共用し、左側に設置したウーハースピーカを左側に位置する前後の座席間で共用することとしている。
【0020】
たとえば、同図では、進行方向の右側に位置する2つの座席(ドライバー席およびその後部座席)間で右ウーハー12aが共用され、進行方向に対して左側に位置する2つの座席(助手席およびその後部座席)間で左ウーハー12bが共用される。
【0021】
また、本発明に係る音場制御手法では、右ウーハー12aを右側前席(ドライバー席)の下部へ設置し、左側ウーハー12bを左側前席(助手席)の下部へ設置することとしている。
【0022】
これは、ウーハースピーカを乗車者の耳の近くに設置すると低音が耳障りになるおそれがあり、低い位置に設置した方が聴感上好ましいためである。また、比較的サイズが大きいウーハースピーカの設置場所として座席下部が適しているためでもある。
【0023】
また、ウーハースピーカを座席下部へ設置することによって、ウーハースピーカが、このウーハースピーカを共有する乗車者の正中面上に位置することとなる。ここで、正中面とは、生物体(人体)を左右対称に分割する面のことを指し、かかる正中面上へ音源を配置した場合、人は音源位置を特定しにくいといわれている。
【0024】
すなわち、ウーハースピーカを前後の座席で共有する場合に、かかるウーハースピーカを座席下部へ設置することで、前後の座席に着座した各乗車者が、聴感上の違和感を覚えることなく、かかるウーハースピーカを共用することができる。
【0025】
なお、低音は、中〜高音と比較して回折し易いため、座席下部のような障害物があっても人の耳に十分届かせることができる。この点からも、ウーハースピーカを座席下部に設けることが好ましい。ただし、座席下部にウーハースピーカを設置できるだけのスペースがない場合には、代替案として、ウーハースピーカを前列のドアに設置してもよい。
【0026】
また、本発明に係る音場制御手法では、各座席に乗車者が着座しているか否かを検知する検知手段を設け、かかる検知手段からの検知結果に基づいて、ウーハースピーカやメインスピーカのオンオフを制御することとしている。かかる点については、実施例にて後述することとする。
【0027】
なお、本発明に係る音場制御手法では、各座席に対応するメインスピーカ13a〜13dを各座席の前方に設置している。たとえば、ドライバー席に対応するメインスピーカ13aは、インストルメントパネル(以下、「インパネ」と記載する)へ設置し、助手席に対応するメインスピーカ13bは、ダッシュボードへ設置する。また、後部座席に対応するメインスピーカ13c,13dは、それぞれドライバー席および助手席へ設置する。
【0028】
ここで、基本的には、メインスピーカ13a〜13dは、各乗車者と対向して配置されるが、たとえば、音像をより高い位置に定位させたい場合には、スピーカの向きを上向きにして設置してもよいし、音の拡がり感を出したい場合には、スピーカを外側へ向け、主にサイドガラスからの反射音が乗車者に対して届くようにしてもよい。
【0029】
以下では、本発明に係る音場制御手法を適用した車載用音場制御装置についての実施例を詳細に説明する。なお、以下では、前列2席および後列2席の計4つの座席を有する車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について説明する。
【実施例】
【0030】
まず、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成を示すブロック図である。なお、同図では、車載用音場制御装置10の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0031】
同図に示すように、車載用音場制御装置10は、着座センサ11a〜11d、右ウーハー12a、左ウーハー12b、メインスピーカ13a〜13dおよび制御部14を備えている。また、制御部14は、オンオフ制御部14aを備えている。
【0032】
着座センサ11a〜11dは、各座席に対して乗車者が着座しているか否かを検知するセンサであり、各座席の座面に設けられている。具体的には、着座センサ11a〜11dは、所定の押圧力が加わるとオンとなるスイッチ式のセンサ(重量センサ)であり、オンとなった場合(すなわち乗車者が着座した場合)に検知信号をオンオフ制御部14aへ出力する。
【0033】
なお、ここでは、着座センサ11a〜11dを用いて各座席に乗車者が着座しているか否かを検知することとするが、着座センサ11a〜11dに代えて、光センサや赤外線センサ等を用いて乗車者が着座しているか否かを検知することとしてもよい。
【0034】
右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、メインスピーカ13a〜13dよりも低音域の音を担当するウーハースピーカである。かかる右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、ある座席と、この座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されるものである。
【0035】
具体的には、右ウーハー12aは、車両の進行方向の右側に位置する2つの座席(ドライバー席およびその後部座席)間で共用され、左ウーハー12bは、車両の進行方向の左側に位置する2つの座席(助手席およびその後部座席)間で共用される。
【0036】
また、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、かかるウーハースピーカを共用する座席間の何れかの位置に設けられる。具体的には、右ウーハー12aは、ドライバー席の下部に設けられ、左ウーハー12bは、助手席の下部に設けられる。なお、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bの具体的な配置例については、メインスピーカ13a〜13dの配置例とともに図3を用いて説明する。
【0037】
メインスピーカ13a〜13dは、中〜高音域の音を担当するスピーカであり、各座席に対応して設けられている。
【0038】
また、メインスピーカ13a〜13dは、それぞれL信号を出力するLchおよびR信号を出力するRchを備えている。具体的には、メインスピーカ13aは、Lch13aLおよびRch13aRを備え、メインスピーカ13bは、Lch13bLおよびRch13bRを備えている。同様に、メインスピーカ13cは、Lch13cLおよびRch13cRを備え、メインスピーカ13dは、Lch13dLおよびRch13dRを備えている。
【0039】
ここで、右ウーハー12a、左ウーハー12bおよびメインスピーカ13a〜13d、の配置について図3を用いて説明する。図3は、各スピーカの配置例を示す図である。なお、同図の(A)には、車室全体における各スピーカの配置例を、同図の(B)には、車両の片側についてのより詳細な配置例をそれぞれ示している。
【0040】
同図の(A)に示したように、右ウーハー12aは、前席右側の座席(ドライバー席)の下部に設置され、左ウーハー12bは、前席左側の座席(助手席)の下部に設置されている。
【0041】
また、メインスピーカ13aは、ドライバー席の前方のインパネ上部に設置され、メインスピーカ13bは、助手席の前方のダッシュボード部分に設置されている。また、メインスピーカ13cは、ドライバー席のヘッドレスト部分に設置され、メインスピーカ13dは、助手席のヘッドレスト部分に設置されている。
【0042】
ここで、同図の(B)に示したように、右ウーハー12aは、ドライバー席に着座した乗車者100aとその後部座席に着座した乗車者100bとの間で共用される。なお、乗車者100aは、メインスピーカ13aおよび右ウーハー12aからの音を聴き(同図の(B−1)参照)、乗車者100bは、メインスピーカ13cおよび右ウーハー12bからの音を聴くこととなる(同図の(B−2)参照)。
【0043】
このように、本実施例では、ウーハースピーカが、一の座席と、当該一の座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されることとしている。これは、人の聴覚が、ウーハースピーカから出力される低音域の音について、左右方向の音像のずれよりも前後方向の音像のずれに対して鈍感であるためである。すなわち、ウーハースピーカが前後方向へずれても、乗車者に対して聴感上の違和感を覚えさせ難く、複数の座席間でウーハースピーカを共用する場合に適している。
【0044】
また、同図の(B)に示したように、右ウーハー12aは、ドライバー席の下部の、特に、乗車者100a,100bの正中面上に設置されている。このように、共用する乗車者の正中面を指標とする位置にウーハースピーカを設置することで、乗車者に対して聴感上の違和感をより覚えさせないようにすることができる。
【0045】
なお、ここでは、右ウーハー12aをドライバー席の下部に設置することとしたが、これに限ったものではなく、ドライバー席後部の後部座席の下部に設置してもよいし、後部座席の足置きスペースに設置してもよい。左ウーハー12bについても同様である。このように、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、乗車者の正中面上であれば、共用される座席間のどの位置に設けてもよい。
【0046】
また、メインスピーカ13a〜13dについても、LchおよびRchが各座席への乗車者に対して左右対称となる位置に設置することで、各乗車者の正中面上に音像を定位させることができる。
【0047】
図2に戻り、制御部14について説明する。制御部14は、車載用音場制御装置10全体を制御する制御部であり、オンオフ制御部14aを備えている。オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dによる検知結果に基づいてメインスピーカ13a〜13dまたはウーハースピーカ12a〜12bの出力を開始または停止させる処理部である。
【0048】
ここで、かかるオンオフ制御部14aによる各スピーカのオンオフ制御処理について図4を用いて説明する。図4は、オンオフ制御部14aの動作例を示す図である。なお、同図の(A)には、各座席の座席名を、同図の(B)には、オンオフ制御部14aによって制御される右ウーハー12aおよび左ウーハー12bのオンオフ状態をそれぞれ示している。
【0049】
ここで、以下では、同図の(A)に示したように、前列右側の座席(ドライバー席)を座席A、前列左側の座席(助手席)を座席B、後列右側の座席を座席C、後列左側の座席を座席Dと呼ぶこととする。また、着座センサ11a〜11dは、それぞれ座席A〜Dの座面に設けられているものとする。
【0050】
また、ここでは、右ハンドルの車両を想定し、ドライバー席である座席Aには常に乗車者が着座しているものとして説明する。
【0051】
オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dからの検知信号に基づき、乗車者が着座中の座席に対応するメインスピーカ13a〜13dのみをオン状態とする。たとえば、着座センサ11aおよび着座センサ11bのみから検知信号が出力されている場合には、座席Aに対応するメインスピーカ13aおよび座席Bに対応するメインスピーカ13bをオンにし、座席Cおよび座席Dに対応するメインスピーカ13c,13dをオフとする。
【0052】
一方、同図の(B)に示したように、オンオフ制御部14aは、座席A(ドライバー席)にのみ乗車者が着座している場合、すなわち、着座センサ11aからの検知信号のみが出力されている場合には、右ウーハー12aだけをオンにし、左ウーハー12bを停止する(同図の(B−1)参照)。
【0053】
同様に、オンオフ制御部14aは、座席Aおよび座席Cにのみ乗車者が着座している場合にも、右ウーハー12aだけをオンにし、左ウーハー12bを停止する(同図の(B−2)参照)。なお、その他の場合には、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bの両方がオン状態となる。
【0054】
このように、オンオフ制御部14aは、進行方向の左側の座席に乗車者が一人も着座していないことが着座センサ11a〜11dによって特定された場合に、左ウーハー12bからの出力を停止する。
【0055】
すなわち、オンオフ制御部14aは、ウーハースピーカを共用する座席のうちの何れかの座席に対する着座が着座センサ11a〜11dによって検知された場合には、かかるウーハースピーカの出力を開始させ、ウーハースピーカを共用する何れの座席に対する着座も検知されていない場合には、かかるウーハースピーカの出力を停止させることとした。したがって、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0056】
なお、ここでは、座席Aに常に乗車者(ドライバー)が着座しているものとして説明したが、たとえば、車両を一時停止させて、ドライバーが車外に出ることも想定される。このような場合、オンオフ制御部14aは、座席Cに乗車者が着座していなければ、右ウーハー12aをオフすることもできる。
【0057】
次に、本実施例に係る車載用音場制御装置10の具体的動作について図5を用いて説明する。図5は、車載用音場制御装置10の処理手順を示すフローチャートである。なお、同図には、オンオフ制御部14aが、L信号およびR信号を受け取ってから各スピーカのオンオフ制御を行うまでの処理手順を示している。
【0058】
同図に示すように、L信号およびR信号を受け取ると、オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dの検知結果に基づき、着座中の座席に対応するメインスピーカをONにする(ステップS101)。
【0059】
つづいて、オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dの検知結果に基づき、乗車者の着座パターンが、「座席Aにのみ着座」または「座席Aおよび座席Cに着座」であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0060】
そして、オンオフ制御部14aは、乗車者の着座パターンが「座席Aにのみ着座」または「座席Aおよび座席Cに着座」であると判定した場合には(ステップS102、Yes)、右ウーハー12aのみをONにして(ステップS103)、処理を終了し、その他の着座パターンである場合には(ステップS102、No)、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bをONにして(ステップS104)、処理を終了する。
【0061】
上述してきたように、本実施例では、メインスピーカを車室の各座席に対応して設けるとともに、前後の座席で共用するウーハースピーカとして、進行方向の右側に右ウーハー12aを、左側に左ウーハー12bを設けることとした。したがって、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0062】
また、本実施例では、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bを、各ウーハースピーカを共用する何れかの座席の下部に設けることとしたため、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bによって乗車スペースが狭くなることを防止しつつ、低音域の音を乗車者に対して適切に聴かせることができる。
【0063】
また、ウーハースピーカを座席下部へ設置することによって、ウーハースピーカが、このウーハースピーカを共有する乗車者の正中面上に位置することとなる。すなわち、ウーハースピーカを前後の座席で共有する場合に、かかるウーハースピーカを座席下部へ設置することで、前後の座席に着座した各乗車者が、聴感上の違和感を覚えることなく、かかるウーハースピーカを共用することができる。また、低音は、中〜高音と比較して回折し易いため、座席下部のような障害物があっても人の耳に十分届かせることができる。この点からも、ウーハースピーカを座席下部に設けることが好ましい。
【0064】
ところで、これまでは、オンオフ制御部14aによって各スピーカのオンオフが制御される場合について説明してきたが、これに限ったものではなく、各スピーカは、乗車者による車載装置等への操作によってもオンオフが制御されてもよい。
【0065】
ここで、ドライバーが運転中に車載装置を手で操作するのは、事故に繋がる危険性があり好ましくない。また、後部座席に着座した乗車者が前席側に設けられた車載装置を操作することも困難である。そこで、乗車者の音声を集音する集音マイクを車室に設置し、この集音マイクで集音された音声の内容に基づいて各スピーカのオンオフ制御を行うこととしてもよい。
【0066】
以下では、かかる点について図6を用いて説明する。図6は、集音マイクを用いて各スピーカのオンオフ制御を行う場合の動作例を示す図である。同図に示すように、車室には、集音マイク15が設置されている。
【0067】
また、車載用音場制御装置10の制御部14は、音声認識部(図示せず)をさらに備えている。かかる音声認識部は、集音マイク15によって集音された音声を認識し、その発話内容をオンオフ制御部14aへ通知する処理部である。
【0068】
また、オンオフ制御部14aは、音声認識部から受け取った発話内容に応じて各スピーカのオンオフを制御する。
【0069】
たとえば、同図に示したように、後部座席に着座した乗車者が「左ウーハーを消して。」と発話したとすると(同図の(1)参照)、集音マイク15がかかる音声を集音し(同図の(2)参照)、音声認識部が、かかる音声を認識する。そして、オンオフ制御部14aが認識された発話内容に従って左ウーハー12bをオフにする(同図の(3)参照)。
【0070】
なお、ここでは、ウーハースピーカをオフする場合について説明したが、これに限らず、乗車者からの発話内容に従って、ウーハースピーカをオンにすることもできるし、メインスピーカ13a〜13dのオンオフを制御することも可能である。
【0071】
このように、音声認識部が、乗車者の音声を認識し、オンオフ制御部14aが、音声認識部によって認識された音声の内容に基づいてメインスピーカ13a〜13dまたはウーハースピーカ(右ウーハー12aおよび左ウーハー12b)の出力を開始または停止させることとしたため、乗車者が、好みや状況に応じて各スピーカを簡単かつ安全にオンオフすることができる。
【0072】
また、上述してきた実施例では、ウーハースピーカの配置例として、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bを前席の下部に設ける場合について説明したが、ウーハースピーカの配置場所は、これに限ったものではない。以下では、ウーハースピーカの他の配置例について図7を用いて説明する。図7は、ウーハースピーカの他の配置例を示す図である。
【0073】
ウーハースピーカは、比較的サイズが大きいため、車両によっては座席の下部に収まらない場合もある。そこで、かかる場合には、同図の(A)に示したように、右ウーハー12cおよび左ウーハー12dを前席の各ドアに設けることとしてもよい。なお、かかる場合も、上述してきた実施例と同様に、右ウーハー12cをドライバー席およびその後部座席で共用し、左ウーハー12bを助手席およびその後部座席で共用する。
【0074】
また、ウーハースピーカは、進行方向に対して左右ではなく、前後にそれぞれ1つずつ設置してもよい。具体的には、同図の(B)に示したように、ドライバー席と助手席との間に前ウーハー12eを、後部座席間に後ウーハー12fを設置する。
【0075】
かかる場合には、前ウーハー12eがドライバー席および助手席間で共用され、後ウーハー12fが後部座席間で共用されることとなる。また、オンオフ制御部14aは、後部座席に誰も座っていないことが着座検知センサ11c,11dによって検知された場合に、後ウーハー12fをオフにする。
【0076】
なお、上述したように、人の聴覚は、ウーハースピーカから出力される低音域の音に対し、前後方向の音像のずれよりも左右方向の音像のずれに対して敏感であるため、ウーハースピーカの配置としては、同図の(B)に示した配置よりも、図3に示した配置の方がより好ましい。
【0077】
さらに、ウーハースピーカは、中央に1つだけ設置することとしてもよい。具体的には、同図の(C)に示したように、中央ウーハ12gをドライバー席および助手席間あるいはこれよりも後方に設置する。なお、かかる場合、オンオフ制御部14aは、車室の何れかの座席に乗車者が着座している限り、中央ウーハー12gをオンにし続けることとなる。ただし、車両を一時停車し、乗車者が全員車外へ出た場合には、中央ウーハー12gを停止してもよい。
【0078】
このように、メインスピーカを車室の各座席に対応して設け、ウーハースピーカを、座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けることとしたため、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0079】
また、上述してきた実施例では、前列2席および後列2席の計4つの座席を有する車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について説明したが、本発明に係る車載用音場制御装置は、他のタイプの車両についても適用可能である。
【0080】
そこで、以下では、前列2席、中列2席および後列2席の計6つの座席を有する3列シートの車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について図8を用いて説明する。図8は、3列シートの車両に対する各スピーカの配置例を示す図である。なお、同図の(A)には、各スピーカの配置例を、同図の(B)には、各ウーハースピーカのオンオフ状態をそれぞれ示している。
【0081】
ここでは、同図の(A)に示したように、前列右側を座席A、前列左側を座席B、中列右側を座席C、中列左側を座席D、後列右側を座席E、後列左側を座席Fとする。また、車室には、各座席A〜Fと対応してメインスピーカ13a〜13fが設けられているものとする。
【0082】
かかる3列シートの車室には、座席Aの下部に第1右ウーハー12hが設置され、座席Bの下部に第1の左ウーハー12iが設置される。さらに、座席Cおよび座席E間に第2右ウーハ12jが設置され、座席Dおよび座席F間に第2左ウーハー12kが設置される。
【0083】
ここで、第1右ウーハー12hは、座席Aおよび座席C間で共用されるウーハースピーカであり、第1左ウーハー12iは、座席Bおよび座席D間で共用されるウーハースピーカである。また、第2右ウーハー12jは、座席Cおよび座席E間で共用されるウーハースピーカであり、第2左ウーハー12kは、座席Dおよび座席F間で共用されるウーハースピーカである。
【0084】
また、オンオフ制御部14aは、同図の(B)に示したように、座席Aおよび座席Cに乗車者が着座している場合には、第1右ウーハー12hのみをオンとし、他のウーハースピーカをオフとする。また、座席Aおよび座席Eに乗車者が着座している場合、あるいは、座席A、座席Cおよび座席Eに乗車者が着座している場合には、第1右ウーハー12hおよび第2右ウーハー12jのみをオンとし、他のウーハースピーカをオフとする。
【0085】
なお、たとえば、座席B、座席Dおよび座席Fのうち、座席Dにのみ着座者がいると仮定する。かかる場合には、座席Dが、第1左ウーハー12iおよび第2左ウーハー12kの2つのウーハースピーカを共用する座席ではあるが、例外的に、何れか1つのウーハースピーカのみを出力させることとしてもよい。
【0086】
このように、オンオフ制御部14aが、一のウーハースピーカを共用する座席および他のウーハースピーカを共用する座席のうち、これら2つのウーハースピーカを重複して共用する座席にのみ着座が検知された場合には、一のウーハースピーカまたは他のウーハースピーカのうちの何れか一方のウーハースピーカのみを出力させることとすれば、消費電力をさらに抑えることができる。
【0087】
ところで、メインスピーカ13a〜13dの向きを変更することで、音像をより高い位置に定位させたり、音の拡がり間を出したりすることもできる。以下では、かかる点について図9を用いて説明する。図9は、メインスピーカ13a〜13dの向きの例を示す図である。
【0088】
ここで、同図の(A)には、メインスピーカ13a〜13dの通常の向きを、同図の(B)には、音像をより高い位置に定位させる場合のメインスピーカ13a〜13dの向きを、同図の(C)には、音の拡がり感を出す場合のメインスピーカ13a〜13dの向きをそれぞれ示している。また、ここでは、一例としてメインスピーカ13aの向きを示している。
【0089】
同図の(A)に示したように、通常、メインスピーカ13aは、直接音が乗車者へ届くように、乗車者へ向けて配置される(同図の(A−1)参照)。また、乗車者には、メインスピーカ13aからの直接音の他に、メインスピーカ13aから出力されサイドガラス51b,51cで反射された反射音も届くこととなる(同図の(A−2)参照)。
【0090】
ただし、メインスピーカ13aを乗車者の耳の高さに設置することが困難であるため、音像は、乗車者の耳よりも低い位置で定位することとなる。そこで、同図の(B)に示したように、音像をより高い位置に定位させたい場合に、メインスピーカ13aを上向きに設置し、フロントガラス51aによって反射された反射音を乗車者に聴かせるようにしてもよい。このようにすれば、音像を乗車者の耳に近い位置で定位させることができる。
【0091】
また、通常よりも音の拡がり感を出したい場合には、同図の(C)に示したように、メインスピーカ13aを外側へ向け、主にサイドガラス51b,51cからの反射音が乗車者に対して届くようにしてもよい。
【0092】
なお、上述してきた実施例では、メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカの一例としてウーハースピーカを用いて説明してきたが、これに限ったものではなく、メインスピーカよりも低音域の音を出力するものであればウーハースピーカ以外のスピーカであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明に係る車載用音場制御装置は、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えたい場合に有用であり、特に、多数のウーハースピーカの設置が困難な小型車両への適用に適している。
【符号の説明】
【0094】
10 車載用音場制御装置
11a〜11d 着座センサ
12a 右ウーハー
12b 左ウーハー
13a〜13d メインスピーカ
14 制御部
14a オンオフ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の音場を制御する車載用音場制御装置に関し、特に、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車室において音楽や音声といった各種の音源情報を再生するカーオーディオシステムが知られている。
【0003】
かかるカーオーディオシステムは、主に中〜高音域の音を出力するメインスピーカと、低音域の音を出力するウーハースピーカとからなるスピーカセットを車室に対して1セットだけ設置するのが一般的であった。しかし、近年では、各乗車者に対して最適な音を聴かせるために、上記のスピーカセットを座席ごとに設けることが提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、各座席のヘッドレストの左右にメインスピーカを設けるとともに、各座席の下部にウーハースピーカを設けたカーオーディオシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−3994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、各座席にメインスピーカおよびウーハースピーカを設置すると、コストが高くなるという問題があった。特に、ウーハースピーカは、メインスピーカと比較して高価であるため、かかるウーハースピーカを各座席に設けることは、コスト面において好ましくない。また、ウーハースピーカは、大型であるため、車室に数多く設置すると、車室が手狭になるという問題もあった。
【0007】
また、近年では、環境に配慮した低燃費な自動車が望まれており、これを実現するために、車両の軽量化が進められている。このため、車室へ設置するスピーカの数が増えることは、かかる軽量化の点においても好ましくない。
【0008】
これらのことから、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる車載用音場制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、メインスピーカと、当該メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカとを用いて車室の音場を制御する車載用音場制御装置であって、前記メインスピーカは、前記車室の各座席に対応して設けられ、前記スピーカは、前記座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メインスピーカが、車室の各座席に対応して設けられ、スピーカが、座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることとしたため、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る音場制御手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、各スピーカの配置例を示す図である。
【図4】図4は、オンオフ制御部の動作例を示す図である。
【図5】図5は、車載用音場制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、集音マイクを用いて各スピーカのオンオフ制御を行う場合の動作例を示す図である。
【図7】図7は、ウーハースピーカの他の配置例を示す図である。
【図8】図8は、3列シートの車両に対する各スピーカの配置例を示す図である。
【図9】図9は、メインスピーカの向きの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る音場制御装置の実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立ち、本発明に係る音場制御手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る音場制御手法の概要を示す図である。なお、以下では、メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカの一例として「ウーハースピーカ」を用いて説明することとする。
【0014】
同図に示すように、本発明に係る音場制御手法は、メインスピーカとウーハースピーカとを用いて車室の音場制御を行う手法であり、特に、メインスピーカを各座席に対応して設ける一方で、ウーハースピーカについては複数の座席で共有することとしている。
【0015】
具体的には、ウーハースピーカから出力される低音域の音は、メインスピーカから出力される中〜高音域の音と比較して指向性が低い。すなわち、人の聴覚では、中〜高音域の音と比較して低音域の音の発生源の方向を捉えることが難しい。このため、各座席に1台ずつウーハースピーカを設置しなくとも、聴感上の違和感を覚えさせることがない。
【0016】
一方、メインスピーカから出力される中〜高音域の音は、指向性が比較的高いため、音像の配置関係が特定され易い。すなわち、音像が右や左にずれているといった違和感を乗車者に対して与え易いため、メインスピーカについては、各座席に対応して設けることで、かかる違和感を解消することができる。
【0017】
したがって、メインスピーカを車室の各座席に対応して設け、ウーハースピーカについては複数の座席で共有することとすれば、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0018】
さらに、人の聴覚は、ウーハースピーカから出力される低音域の音に対し、左右方向の音像のずれよりも前後方向の音像のずれに鈍感であることが知られている。すなわち、ウーハースピーカの配置が前後方向にずれたとしても、左右方向にずれた場合と比較して聴感上の違和感をより覚えさせることがない。
【0019】
そこで、本発明に係る音場制御手法では、図1に示したように、ウーハースピーカを車両の進行方向の左右に1つずつ設置し、右側に設置したウーハースピーカを右側に位置する前後の座席間で共用し、左側に設置したウーハースピーカを左側に位置する前後の座席間で共用することとしている。
【0020】
たとえば、同図では、進行方向の右側に位置する2つの座席(ドライバー席およびその後部座席)間で右ウーハー12aが共用され、進行方向に対して左側に位置する2つの座席(助手席およびその後部座席)間で左ウーハー12bが共用される。
【0021】
また、本発明に係る音場制御手法では、右ウーハー12aを右側前席(ドライバー席)の下部へ設置し、左側ウーハー12bを左側前席(助手席)の下部へ設置することとしている。
【0022】
これは、ウーハースピーカを乗車者の耳の近くに設置すると低音が耳障りになるおそれがあり、低い位置に設置した方が聴感上好ましいためである。また、比較的サイズが大きいウーハースピーカの設置場所として座席下部が適しているためでもある。
【0023】
また、ウーハースピーカを座席下部へ設置することによって、ウーハースピーカが、このウーハースピーカを共有する乗車者の正中面上に位置することとなる。ここで、正中面とは、生物体(人体)を左右対称に分割する面のことを指し、かかる正中面上へ音源を配置した場合、人は音源位置を特定しにくいといわれている。
【0024】
すなわち、ウーハースピーカを前後の座席で共有する場合に、かかるウーハースピーカを座席下部へ設置することで、前後の座席に着座した各乗車者が、聴感上の違和感を覚えることなく、かかるウーハースピーカを共用することができる。
【0025】
なお、低音は、中〜高音と比較して回折し易いため、座席下部のような障害物があっても人の耳に十分届かせることができる。この点からも、ウーハースピーカを座席下部に設けることが好ましい。ただし、座席下部にウーハースピーカを設置できるだけのスペースがない場合には、代替案として、ウーハースピーカを前列のドアに設置してもよい。
【0026】
また、本発明に係る音場制御手法では、各座席に乗車者が着座しているか否かを検知する検知手段を設け、かかる検知手段からの検知結果に基づいて、ウーハースピーカやメインスピーカのオンオフを制御することとしている。かかる点については、実施例にて後述することとする。
【0027】
なお、本発明に係る音場制御手法では、各座席に対応するメインスピーカ13a〜13dを各座席の前方に設置している。たとえば、ドライバー席に対応するメインスピーカ13aは、インストルメントパネル(以下、「インパネ」と記載する)へ設置し、助手席に対応するメインスピーカ13bは、ダッシュボードへ設置する。また、後部座席に対応するメインスピーカ13c,13dは、それぞれドライバー席および助手席へ設置する。
【0028】
ここで、基本的には、メインスピーカ13a〜13dは、各乗車者と対向して配置されるが、たとえば、音像をより高い位置に定位させたい場合には、スピーカの向きを上向きにして設置してもよいし、音の拡がり感を出したい場合には、スピーカを外側へ向け、主にサイドガラスからの反射音が乗車者に対して届くようにしてもよい。
【0029】
以下では、本発明に係る音場制御手法を適用した車載用音場制御装置についての実施例を詳細に説明する。なお、以下では、前列2席および後列2席の計4つの座席を有する車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について説明する。
【実施例】
【0030】
まず、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施例に係る車載用音場制御装置の構成を示すブロック図である。なお、同図では、車載用音場制御装置10の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0031】
同図に示すように、車載用音場制御装置10は、着座センサ11a〜11d、右ウーハー12a、左ウーハー12b、メインスピーカ13a〜13dおよび制御部14を備えている。また、制御部14は、オンオフ制御部14aを備えている。
【0032】
着座センサ11a〜11dは、各座席に対して乗車者が着座しているか否かを検知するセンサであり、各座席の座面に設けられている。具体的には、着座センサ11a〜11dは、所定の押圧力が加わるとオンとなるスイッチ式のセンサ(重量センサ)であり、オンとなった場合(すなわち乗車者が着座した場合)に検知信号をオンオフ制御部14aへ出力する。
【0033】
なお、ここでは、着座センサ11a〜11dを用いて各座席に乗車者が着座しているか否かを検知することとするが、着座センサ11a〜11dに代えて、光センサや赤外線センサ等を用いて乗車者が着座しているか否かを検知することとしてもよい。
【0034】
右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、メインスピーカ13a〜13dよりも低音域の音を担当するウーハースピーカである。かかる右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、ある座席と、この座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されるものである。
【0035】
具体的には、右ウーハー12aは、車両の進行方向の右側に位置する2つの座席(ドライバー席およびその後部座席)間で共用され、左ウーハー12bは、車両の進行方向の左側に位置する2つの座席(助手席およびその後部座席)間で共用される。
【0036】
また、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、かかるウーハースピーカを共用する座席間の何れかの位置に設けられる。具体的には、右ウーハー12aは、ドライバー席の下部に設けられ、左ウーハー12bは、助手席の下部に設けられる。なお、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bの具体的な配置例については、メインスピーカ13a〜13dの配置例とともに図3を用いて説明する。
【0037】
メインスピーカ13a〜13dは、中〜高音域の音を担当するスピーカであり、各座席に対応して設けられている。
【0038】
また、メインスピーカ13a〜13dは、それぞれL信号を出力するLchおよびR信号を出力するRchを備えている。具体的には、メインスピーカ13aは、Lch13aLおよびRch13aRを備え、メインスピーカ13bは、Lch13bLおよびRch13bRを備えている。同様に、メインスピーカ13cは、Lch13cLおよびRch13cRを備え、メインスピーカ13dは、Lch13dLおよびRch13dRを備えている。
【0039】
ここで、右ウーハー12a、左ウーハー12bおよびメインスピーカ13a〜13d、の配置について図3を用いて説明する。図3は、各スピーカの配置例を示す図である。なお、同図の(A)には、車室全体における各スピーカの配置例を、同図の(B)には、車両の片側についてのより詳細な配置例をそれぞれ示している。
【0040】
同図の(A)に示したように、右ウーハー12aは、前席右側の座席(ドライバー席)の下部に設置され、左ウーハー12bは、前席左側の座席(助手席)の下部に設置されている。
【0041】
また、メインスピーカ13aは、ドライバー席の前方のインパネ上部に設置され、メインスピーカ13bは、助手席の前方のダッシュボード部分に設置されている。また、メインスピーカ13cは、ドライバー席のヘッドレスト部分に設置され、メインスピーカ13dは、助手席のヘッドレスト部分に設置されている。
【0042】
ここで、同図の(B)に示したように、右ウーハー12aは、ドライバー席に着座した乗車者100aとその後部座席に着座した乗車者100bとの間で共用される。なお、乗車者100aは、メインスピーカ13aおよび右ウーハー12aからの音を聴き(同図の(B−1)参照)、乗車者100bは、メインスピーカ13cおよび右ウーハー12bからの音を聴くこととなる(同図の(B−2)参照)。
【0043】
このように、本実施例では、ウーハースピーカが、一の座席と、当該一の座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されることとしている。これは、人の聴覚が、ウーハースピーカから出力される低音域の音について、左右方向の音像のずれよりも前後方向の音像のずれに対して鈍感であるためである。すなわち、ウーハースピーカが前後方向へずれても、乗車者に対して聴感上の違和感を覚えさせ難く、複数の座席間でウーハースピーカを共用する場合に適している。
【0044】
また、同図の(B)に示したように、右ウーハー12aは、ドライバー席の下部の、特に、乗車者100a,100bの正中面上に設置されている。このように、共用する乗車者の正中面を指標とする位置にウーハースピーカを設置することで、乗車者に対して聴感上の違和感をより覚えさせないようにすることができる。
【0045】
なお、ここでは、右ウーハー12aをドライバー席の下部に設置することとしたが、これに限ったものではなく、ドライバー席後部の後部座席の下部に設置してもよいし、後部座席の足置きスペースに設置してもよい。左ウーハー12bについても同様である。このように、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bは、乗車者の正中面上であれば、共用される座席間のどの位置に設けてもよい。
【0046】
また、メインスピーカ13a〜13dについても、LchおよびRchが各座席への乗車者に対して左右対称となる位置に設置することで、各乗車者の正中面上に音像を定位させることができる。
【0047】
図2に戻り、制御部14について説明する。制御部14は、車載用音場制御装置10全体を制御する制御部であり、オンオフ制御部14aを備えている。オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dによる検知結果に基づいてメインスピーカ13a〜13dまたはウーハースピーカ12a〜12bの出力を開始または停止させる処理部である。
【0048】
ここで、かかるオンオフ制御部14aによる各スピーカのオンオフ制御処理について図4を用いて説明する。図4は、オンオフ制御部14aの動作例を示す図である。なお、同図の(A)には、各座席の座席名を、同図の(B)には、オンオフ制御部14aによって制御される右ウーハー12aおよび左ウーハー12bのオンオフ状態をそれぞれ示している。
【0049】
ここで、以下では、同図の(A)に示したように、前列右側の座席(ドライバー席)を座席A、前列左側の座席(助手席)を座席B、後列右側の座席を座席C、後列左側の座席を座席Dと呼ぶこととする。また、着座センサ11a〜11dは、それぞれ座席A〜Dの座面に設けられているものとする。
【0050】
また、ここでは、右ハンドルの車両を想定し、ドライバー席である座席Aには常に乗車者が着座しているものとして説明する。
【0051】
オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dからの検知信号に基づき、乗車者が着座中の座席に対応するメインスピーカ13a〜13dのみをオン状態とする。たとえば、着座センサ11aおよび着座センサ11bのみから検知信号が出力されている場合には、座席Aに対応するメインスピーカ13aおよび座席Bに対応するメインスピーカ13bをオンにし、座席Cおよび座席Dに対応するメインスピーカ13c,13dをオフとする。
【0052】
一方、同図の(B)に示したように、オンオフ制御部14aは、座席A(ドライバー席)にのみ乗車者が着座している場合、すなわち、着座センサ11aからの検知信号のみが出力されている場合には、右ウーハー12aだけをオンにし、左ウーハー12bを停止する(同図の(B−1)参照)。
【0053】
同様に、オンオフ制御部14aは、座席Aおよび座席Cにのみ乗車者が着座している場合にも、右ウーハー12aだけをオンにし、左ウーハー12bを停止する(同図の(B−2)参照)。なお、その他の場合には、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bの両方がオン状態となる。
【0054】
このように、オンオフ制御部14aは、進行方向の左側の座席に乗車者が一人も着座していないことが着座センサ11a〜11dによって特定された場合に、左ウーハー12bからの出力を停止する。
【0055】
すなわち、オンオフ制御部14aは、ウーハースピーカを共用する座席のうちの何れかの座席に対する着座が着座センサ11a〜11dによって検知された場合には、かかるウーハースピーカの出力を開始させ、ウーハースピーカを共用する何れの座席に対する着座も検知されていない場合には、かかるウーハースピーカの出力を停止させることとした。したがって、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0056】
なお、ここでは、座席Aに常に乗車者(ドライバー)が着座しているものとして説明したが、たとえば、車両を一時停止させて、ドライバーが車外に出ることも想定される。このような場合、オンオフ制御部14aは、座席Cに乗車者が着座していなければ、右ウーハー12aをオフすることもできる。
【0057】
次に、本実施例に係る車載用音場制御装置10の具体的動作について図5を用いて説明する。図5は、車載用音場制御装置10の処理手順を示すフローチャートである。なお、同図には、オンオフ制御部14aが、L信号およびR信号を受け取ってから各スピーカのオンオフ制御を行うまでの処理手順を示している。
【0058】
同図に示すように、L信号およびR信号を受け取ると、オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dの検知結果に基づき、着座中の座席に対応するメインスピーカをONにする(ステップS101)。
【0059】
つづいて、オンオフ制御部14aは、着座センサ11a〜11dの検知結果に基づき、乗車者の着座パターンが、「座席Aにのみ着座」または「座席Aおよび座席Cに着座」であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0060】
そして、オンオフ制御部14aは、乗車者の着座パターンが「座席Aにのみ着座」または「座席Aおよび座席Cに着座」であると判定した場合には(ステップS102、Yes)、右ウーハー12aのみをONにして(ステップS103)、処理を終了し、その他の着座パターンである場合には(ステップS102、No)、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bをONにして(ステップS104)、処理を終了する。
【0061】
上述してきたように、本実施例では、メインスピーカを車室の各座席に対応して設けるとともに、前後の座席で共用するウーハースピーカとして、進行方向の右側に右ウーハー12aを、左側に左ウーハー12bを設けることとした。したがって、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0062】
また、本実施例では、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bを、各ウーハースピーカを共用する何れかの座席の下部に設けることとしたため、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bによって乗車スペースが狭くなることを防止しつつ、低音域の音を乗車者に対して適切に聴かせることができる。
【0063】
また、ウーハースピーカを座席下部へ設置することによって、ウーハースピーカが、このウーハースピーカを共有する乗車者の正中面上に位置することとなる。すなわち、ウーハースピーカを前後の座席で共有する場合に、かかるウーハースピーカを座席下部へ設置することで、前後の座席に着座した各乗車者が、聴感上の違和感を覚えることなく、かかるウーハースピーカを共用することができる。また、低音は、中〜高音と比較して回折し易いため、座席下部のような障害物があっても人の耳に十分届かせることができる。この点からも、ウーハースピーカを座席下部に設けることが好ましい。
【0064】
ところで、これまでは、オンオフ制御部14aによって各スピーカのオンオフが制御される場合について説明してきたが、これに限ったものではなく、各スピーカは、乗車者による車載装置等への操作によってもオンオフが制御されてもよい。
【0065】
ここで、ドライバーが運転中に車載装置を手で操作するのは、事故に繋がる危険性があり好ましくない。また、後部座席に着座した乗車者が前席側に設けられた車載装置を操作することも困難である。そこで、乗車者の音声を集音する集音マイクを車室に設置し、この集音マイクで集音された音声の内容に基づいて各スピーカのオンオフ制御を行うこととしてもよい。
【0066】
以下では、かかる点について図6を用いて説明する。図6は、集音マイクを用いて各スピーカのオンオフ制御を行う場合の動作例を示す図である。同図に示すように、車室には、集音マイク15が設置されている。
【0067】
また、車載用音場制御装置10の制御部14は、音声認識部(図示せず)をさらに備えている。かかる音声認識部は、集音マイク15によって集音された音声を認識し、その発話内容をオンオフ制御部14aへ通知する処理部である。
【0068】
また、オンオフ制御部14aは、音声認識部から受け取った発話内容に応じて各スピーカのオンオフを制御する。
【0069】
たとえば、同図に示したように、後部座席に着座した乗車者が「左ウーハーを消して。」と発話したとすると(同図の(1)参照)、集音マイク15がかかる音声を集音し(同図の(2)参照)、音声認識部が、かかる音声を認識する。そして、オンオフ制御部14aが認識された発話内容に従って左ウーハー12bをオフにする(同図の(3)参照)。
【0070】
なお、ここでは、ウーハースピーカをオフする場合について説明したが、これに限らず、乗車者からの発話内容に従って、ウーハースピーカをオンにすることもできるし、メインスピーカ13a〜13dのオンオフを制御することも可能である。
【0071】
このように、音声認識部が、乗車者の音声を認識し、オンオフ制御部14aが、音声認識部によって認識された音声の内容に基づいてメインスピーカ13a〜13dまたはウーハースピーカ(右ウーハー12aおよび左ウーハー12b)の出力を開始または停止させることとしたため、乗車者が、好みや状況に応じて各スピーカを簡単かつ安全にオンオフすることができる。
【0072】
また、上述してきた実施例では、ウーハースピーカの配置例として、右ウーハー12aおよび左ウーハー12bを前席の下部に設ける場合について説明したが、ウーハースピーカの配置場所は、これに限ったものではない。以下では、ウーハースピーカの他の配置例について図7を用いて説明する。図7は、ウーハースピーカの他の配置例を示す図である。
【0073】
ウーハースピーカは、比較的サイズが大きいため、車両によっては座席の下部に収まらない場合もある。そこで、かかる場合には、同図の(A)に示したように、右ウーハー12cおよび左ウーハー12dを前席の各ドアに設けることとしてもよい。なお、かかる場合も、上述してきた実施例と同様に、右ウーハー12cをドライバー席およびその後部座席で共用し、左ウーハー12bを助手席およびその後部座席で共用する。
【0074】
また、ウーハースピーカは、進行方向に対して左右ではなく、前後にそれぞれ1つずつ設置してもよい。具体的には、同図の(B)に示したように、ドライバー席と助手席との間に前ウーハー12eを、後部座席間に後ウーハー12fを設置する。
【0075】
かかる場合には、前ウーハー12eがドライバー席および助手席間で共用され、後ウーハー12fが後部座席間で共用されることとなる。また、オンオフ制御部14aは、後部座席に誰も座っていないことが着座検知センサ11c,11dによって検知された場合に、後ウーハー12fをオフにする。
【0076】
なお、上述したように、人の聴覚は、ウーハースピーカから出力される低音域の音に対し、前後方向の音像のずれよりも左右方向の音像のずれに対して敏感であるため、ウーハースピーカの配置としては、同図の(B)に示した配置よりも、図3に示した配置の方がより好ましい。
【0077】
さらに、ウーハースピーカは、中央に1つだけ設置することとしてもよい。具体的には、同図の(C)に示したように、中央ウーハ12gをドライバー席および助手席間あるいはこれよりも後方に設置する。なお、かかる場合、オンオフ制御部14aは、車室の何れかの座席に乗車者が着座している限り、中央ウーハー12gをオンにし続けることとなる。ただし、車両を一時停車し、乗車者が全員車外へ出た場合には、中央ウーハー12gを停止してもよい。
【0078】
このように、メインスピーカを車室の各座席に対応して設け、ウーハースピーカを、座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けることとしたため、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えることができる。
【0079】
また、上述してきた実施例では、前列2席および後列2席の計4つの座席を有する車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について説明したが、本発明に係る車載用音場制御装置は、他のタイプの車両についても適用可能である。
【0080】
そこで、以下では、前列2席、中列2席および後列2席の計6つの座席を有する3列シートの車両に対して本発明に係る車載用音場制御装置を適用した場合について図8を用いて説明する。図8は、3列シートの車両に対する各スピーカの配置例を示す図である。なお、同図の(A)には、各スピーカの配置例を、同図の(B)には、各ウーハースピーカのオンオフ状態をそれぞれ示している。
【0081】
ここでは、同図の(A)に示したように、前列右側を座席A、前列左側を座席B、中列右側を座席C、中列左側を座席D、後列右側を座席E、後列左側を座席Fとする。また、車室には、各座席A〜Fと対応してメインスピーカ13a〜13fが設けられているものとする。
【0082】
かかる3列シートの車室には、座席Aの下部に第1右ウーハー12hが設置され、座席Bの下部に第1の左ウーハー12iが設置される。さらに、座席Cおよび座席E間に第2右ウーハ12jが設置され、座席Dおよび座席F間に第2左ウーハー12kが設置される。
【0083】
ここで、第1右ウーハー12hは、座席Aおよび座席C間で共用されるウーハースピーカであり、第1左ウーハー12iは、座席Bおよび座席D間で共用されるウーハースピーカである。また、第2右ウーハー12jは、座席Cおよび座席E間で共用されるウーハースピーカであり、第2左ウーハー12kは、座席Dおよび座席F間で共用されるウーハースピーカである。
【0084】
また、オンオフ制御部14aは、同図の(B)に示したように、座席Aおよび座席Cに乗車者が着座している場合には、第1右ウーハー12hのみをオンとし、他のウーハースピーカをオフとする。また、座席Aおよび座席Eに乗車者が着座している場合、あるいは、座席A、座席Cおよび座席Eに乗車者が着座している場合には、第1右ウーハー12hおよび第2右ウーハー12jのみをオンとし、他のウーハースピーカをオフとする。
【0085】
なお、たとえば、座席B、座席Dおよび座席Fのうち、座席Dにのみ着座者がいると仮定する。かかる場合には、座席Dが、第1左ウーハー12iおよび第2左ウーハー12kの2つのウーハースピーカを共用する座席ではあるが、例外的に、何れか1つのウーハースピーカのみを出力させることとしてもよい。
【0086】
このように、オンオフ制御部14aが、一のウーハースピーカを共用する座席および他のウーハースピーカを共用する座席のうち、これら2つのウーハースピーカを重複して共用する座席にのみ着座が検知された場合には、一のウーハースピーカまたは他のウーハースピーカのうちの何れか一方のウーハースピーカのみを出力させることとすれば、消費電力をさらに抑えることができる。
【0087】
ところで、メインスピーカ13a〜13dの向きを変更することで、音像をより高い位置に定位させたり、音の拡がり間を出したりすることもできる。以下では、かかる点について図9を用いて説明する。図9は、メインスピーカ13a〜13dの向きの例を示す図である。
【0088】
ここで、同図の(A)には、メインスピーカ13a〜13dの通常の向きを、同図の(B)には、音像をより高い位置に定位させる場合のメインスピーカ13a〜13dの向きを、同図の(C)には、音の拡がり感を出す場合のメインスピーカ13a〜13dの向きをそれぞれ示している。また、ここでは、一例としてメインスピーカ13aの向きを示している。
【0089】
同図の(A)に示したように、通常、メインスピーカ13aは、直接音が乗車者へ届くように、乗車者へ向けて配置される(同図の(A−1)参照)。また、乗車者には、メインスピーカ13aからの直接音の他に、メインスピーカ13aから出力されサイドガラス51b,51cで反射された反射音も届くこととなる(同図の(A−2)参照)。
【0090】
ただし、メインスピーカ13aを乗車者の耳の高さに設置することが困難であるため、音像は、乗車者の耳よりも低い位置で定位することとなる。そこで、同図の(B)に示したように、音像をより高い位置に定位させたい場合に、メインスピーカ13aを上向きに設置し、フロントガラス51aによって反射された反射音を乗車者に聴かせるようにしてもよい。このようにすれば、音像を乗車者の耳に近い位置で定位させることができる。
【0091】
また、通常よりも音の拡がり感を出したい場合には、同図の(C)に示したように、メインスピーカ13aを外側へ向け、主にサイドガラス51b,51cからの反射音が乗車者に対して届くようにしてもよい。
【0092】
なお、上述してきた実施例では、メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカの一例としてウーハースピーカを用いて説明してきたが、これに限ったものではなく、メインスピーカよりも低音域の音を出力するものであればウーハースピーカ以外のスピーカであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明に係る車載用音場制御装置は、車室へ設置するスピーカの数を抑えつつ、各乗車位置に適した音響効果を乗車者に対して与えたい場合に有用であり、特に、多数のウーハースピーカの設置が困難な小型車両への適用に適している。
【符号の説明】
【0094】
10 車載用音場制御装置
11a〜11d 着座センサ
12a 右ウーハー
12b 左ウーハー
13a〜13d メインスピーカ
14 制御部
14a オンオフ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインスピーカと、当該メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカとを用いて車内の音場を制御する車載用音場制御装置であって、
前記メインスピーカは、
前記車内の各座席に対応して設けられ、
前記スピーカは、
前記座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることを特徴とする車載用音場制御装置。
【請求項2】
前記スピーカは、
一の座席と、当該一の座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されるものであって、前記一の座席および前記他の座席間の何れかの位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車載用音場制御装置。
【請求項3】
前記スピーカは、
前記一の座席または他の座席の下部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の車載用音場制御装置。
【請求項4】
前記座席に対して乗車者が着座しているか否かを検知する着座検知手段と、
前記一の座席および前記他の座席のうちの何れかの座席に対する着座が前記着座検知手段によって検知された場合には、前記スピーカの出力を開始させ、前記一の座席および前記他の座席の何れに対する着座も前記着座検知手段によって検知されていない場合には、前記スピーカの出力を停止させる制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の車載用音場制御装置。
【請求項5】
人の音声を認識する音声認識手段
をさらに備え、
前記制御手段は、
前記音声認識手段によって認識された音声の内容に基づいて前記スピーカの出力を開始または停止させる
ことを特徴とする請求項2、3または4に記載の車載用音場制御装置。
【請求項6】
前記スピーカは、
ウーハースピーカであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の車載用音場制御装置。
【請求項1】
メインスピーカと、当該メインスピーカよりも低音域の音を出力するスピーカとを用いて車内の音場を制御する車載用音場制御装置であって、
前記メインスピーカは、
前記車内の各座席に対応して設けられ、
前記スピーカは、
前記座席の数より少なく、かつ、複数の座席で共用される位置に設けられることを特徴とする車載用音場制御装置。
【請求項2】
前記スピーカは、
一の座席と、当該一の座席を左右対称に分割する面上に位置する他の座席との間で共用されるものであって、前記一の座席および前記他の座席間の何れかの位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車載用音場制御装置。
【請求項3】
前記スピーカは、
前記一の座席または他の座席の下部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の車載用音場制御装置。
【請求項4】
前記座席に対して乗車者が着座しているか否かを検知する着座検知手段と、
前記一の座席および前記他の座席のうちの何れかの座席に対する着座が前記着座検知手段によって検知された場合には、前記スピーカの出力を開始させ、前記一の座席および前記他の座席の何れに対する着座も前記着座検知手段によって検知されていない場合には、前記スピーカの出力を停止させる制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の車載用音場制御装置。
【請求項5】
人の音声を認識する音声認識手段
をさらに備え、
前記制御手段は、
前記音声認識手段によって認識された音声の内容に基づいて前記スピーカの出力を開始または停止させる
ことを特徴とする請求項2、3または4に記載の車載用音場制御装置。
【請求項6】
前記スピーカは、
ウーハースピーカであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の車載用音場制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−10094(P2012−10094A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144082(P2010−144082)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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