説明

車載緊急通報装置

【課題】低温時のバックアップ電池の放電性能を低く設定することが可能な構成として、安価なバックアップ電池を搭載する。
【解決手段】車両が衝突したと判定されたときに緊急通報信号を通信網4を通じてセンター装置3に送信する機能を有し、車両バッテリ17から供給される電力を動作電力として動作するように構成された車載緊急通報装置2において、車両バッテリ17から供給される電力が低下したときに、車載緊急通報装置2に動作電力を供給するバックアップ電池19と、バックアップ電池19の電池能力を測定する測定手段21と、測定手段21により測定された電池能力が低いときに、車載緊急通報装置2の機能を制限する制限手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急通報信号をセンター装置に送信する機能を備えた車載緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車載緊急通報装置は、例えばリチウムイオン電池等の充電池からなるバックアップ電池を有しており、交通事故等で車両バッテリが破損したときでも、バックアップ電池により動作可能な構成となっている。上記バックアップ電池は、低温時に放電性能が低下するという特性がある、例えば−30℃のときの放電性能は、0℃のときの放電性能の1/4程度になる。このため、低温時の放電性能を十分確保できる高性能且つ高価なバックアップ電池を搭載しなければならず、その搭載した電池は、通常使用する温度では、必要以上に放電性能が高い高価な電池となることから、通常使用時は製造コストが高い構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−243693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、低温時のバックアップ電池の放電性能を低く設定することが可能な構成とすることにより、安価なバックアップ電池を搭載することができる車載緊急通報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、車両バッテリから供給される電力が低下したときに、前記車載緊急通報装置に動作電力を供給するバックアップ電池と、前記バックアップ電池の電池能力を測定する測定手段と、測定手段により測定された電池能力が低いときに、前記車載緊急通報装置の機能を制限する制限手段とを備えたので、低温時のバックアップ電池の放電性能を低く設定することが可能となり、安価なバックアップ電池を搭載することができる。
【0006】
また、請求項13の発明のように、車両に搭載され、車両が衝突したと判定されたときに緊急通報信号を通信網を通じてセンター装置に送信する機能を有し、車両バッテリから供給される電力を動作電力として動作するように構成された車載緊急通報装置において、前記車両バッテリから供給される電力が低下したときに、前記車載緊急通報装置に動作電力を供給するバックアップ電池と、前記バックアップ電池の温度を検出する電池温度検出手段と、車両のイグニッションスイッチがオンされた際に、前記バックアップ電池の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる発熱制御手段とを備えるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態を示す緊急通報システムの全体構成の機能ブロック図
【図2】電源制御部の機能ブロック図
【図3】車載緊急通報装置の制御内容を示すフローチャート
【図4】バックアップ電池の検知電圧のランク分けの表を示す図
【図5】バックアップ電池の検知電圧のランクと車載緊急通報装置の機能の制限との対応関係の表を示す図
【図6】本発明の第2実施形態を示す図1相当図
【図7】図2相当図
【図8】図3相当図
【図9】自己発熱回復処理の内容を説明する表を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。まず、図1は、本実施形態の緊急通報システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。緊急通報システム1は、車両に搭載されている車載緊急通報装置2とサービスセンターに設置されているセンター装置3とが通信網4を通じて通信可能に構成されている。ここでいう通信網4は移動体通信網及び固定通信網を含む。
【0009】
車載緊急通報装置2は、CPU5、無線通信部6、GPS測位部7、メモリ管理部8、音声処理部9、衝突検出部10、タイマ管理部11、電源制御部12、周辺装置処理部13及び車両LAN制御部14を備えて構成されている。CPU5は、制御プログラムを実行して車載緊急通報装置2の動作全般を制御するものであり、制限手段としての機能を有する。
【0010】
無線通信部6は、センター装置3との間で通信網4を通じて行う無線通信を制御し、通信回線を接続したままで音声通話とデータ通信とを切換え、車両の乗員とサービスセンターに配置されているオペレータとの間で音声通話とデータ通信とを可能とする。無線通信部6は、CPU5からの制御信号に応じて無線通信の送信電力の大きさを可変制御する送信出力設定部としての機能を有する。
【0011】
GPS測位部7は、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信すると、そのGPS信号から抽出したパラメータを演算して車両位置を取得する(測位する)。メモリ管理部8は、各種のメモリ情報を記憶管理し、乗員情報(ユーザ情報)、車両情報、上記したGPS測位部7により取得された車両位置等を記憶管理する。
【0012】
音声処理部9は、マイクロホン15により入力された送話音声を音声処理すると共に、受話音声を音声処理してスピーカ16から出力する。音声処理部9は、CPU5からの制御信号に応じて受話音声(通話音声)の音声出力の大きさを可変制御する音声出力設定部としての機能を有する。タイマ管理部11は、CPU5から計時開始信号を入力すると計時を開始し、予め規定されている所定時間の計時を終了すると(タイムアップすると)、計時終了信号をCPU5に出力する。
【0013】
電源制御部12は、車両に搭載されている車両バッテリ17から供給される電力を動作電力として各機能ブロックに供給して車載緊急通報装置2を動作させる機能を有する。この電源制御部12は、図2に示すように、電源生成部18、バックアップ電池19、充電部20及び電池能力計測部21を備えている。電源生成部18は、車両バッテリ17から供給される電力を動作電力として各機能ブロックに供給する電力を生成し、各機能ブロックに供給する。そして、電源生成部18は、車両バッテリ17が破損したとき、即ち、車両バッテリ17から電力が供給されなくなったときまたは電力の供給が低下したときには、バックアップ電池19から供給される電力を動作電力として各機能ブロックに供給する電力を生成し、各機能ブロックに供給する。
【0014】
バックアップ電池19は、例えばリチウムイオン電池やネッケル水素電池等の充電池からなり、車両バッテリ17から供給される電力により充電部20を介して充電される構成となっている。電池能力計測部21は、バックアップ電池19の電池能力(バッテリ容量、放電性能)として例えば電圧を検知し、検知した電圧検知信号をCPU5へ出力するものであり、測定手段としての機能を有する。
【0015】
また、周辺装置処理部13は、エアバッグECU22、メーデースイッチ23、電源スイッチ24及びプリクラッシュセーフティECU25を接続している。
エアバッグECU22は、エアバッグ(図示せず)を接続しており、電源スイッチ24から出力されているIG(イグニッション)信号の入力がオンであることを条件として動作可能であり、エアバッグを展開すると、エアバッグ展開信号を出力する。メーデースイッチ23は、乗員が操作すると、操作検出信号を出力する。電源スイッチ24は、IGスイッチ及びACC(アクセサリ)スイッチを備えて構成されており、IGスイッチのオンオフを示すIG信号及びACCスイッチのオンオフを示すACC信号を出力する。プリクラッシュセーフティECU25は、カメラ26、ミリ波レーダー27、車速センサ28、舵角センサ29、ブレーキ制御ECU30、エアサスペンションECU31及びシートベルトECU32を接続している。
【0016】
プリクラッシュセーフティECU25は、電源スイッチ24から出力されているIG信号の入力オンであることを条件として動作可能であり、例えばカメラ26から入力した映像信号、ミリ波レーダー27から入力したレーダー検出信号、車速センサ28から入力した車速信号及び舵角センサ29から入力したステアリング33の舵角を示す舵角信号を解析して車両が先行車や障害物等に衝突する可能性があるか否かを判定する。この場合、プリクラッシュセーフティECU25は、車両が衝突する可能性があると判定すると、プリクラッシュ検出信号を出力する。
【0017】
そして、プリクラッシュセーフティECU25は、プリクラッシュ検出信号を出力すると、ブレーキ制御ECU30を通じてブレーキアクチェータ34を作動させ、エアサスペンションECU31を通じてエアサスペンション35を作動させ、シートベルトECU32を通じてシートベルト36を巻取らせ、車両が衝突した場合に発生する衝撃を和らげる準備を行う。また、プリクラッシュセーフティECU25は、コンビネーションメータ(図示せず)をも接続しており、車両が衝突する可能性があると判定すると、車両が衝突する可能性がある旨を示す警告をコンビネーションメータに表示させる。
【0018】
車両LAN制御部14は、ナビゲーション装置37、メーター装置38、アラーム装置39及びエンジン制御装置40を車両LAN41を通じて接続しており、これら各装置37〜40との間で各種信号を送受信して各装置37〜40の動作を制御する。尚、アラーム装置39は、ホーン42、ヘッドライト43及びハザードランプ44を接続している。
【0019】
次に、上記構成の車載緊急通報装置2の動作、特には、バックアップ電池19の電池能力の検知結果に対応して車載緊急通報装置2が実行する制御について、図3、図4、図5を参照して説明する。尚、図3のフローチャートは、車載緊急通報装置2の制御内容を示す。
【0020】
まず、図3のステップS10において、車両の衝突検出処理を実行する。ここでは、プリクラッシュセーフティECU25からプリクラッシュ検出信号が出力されると、それを受けて、車両の衝突の可能性が判断され、車載緊急通報装置2の無線通信部6とセンター装置3との間の無線通信回線が接続される。そして、エアバッグECU22からエアバッグ展開信号が出力されると、それを受けて、車両の衝突事故が発生したと判断される。この判断によって、ステップS20の判断ステップにて「YES」へ進み、ステップS30へ進み、緊急通報処理が開始される。この緊急通報処理により車載緊急通報装置2からセンター装置3へ送信される情報には、乗員情報、車両情報、最新の車両位置の情報等が含まれる。
【0021】
尚、車両の衝突の可能性が判断された後、設定時間内に、エアバッグECU22からエアバッグ展開信号を受けないときは、車両の衝突事故が発生しなかったと判断され、無線通信部6とセンター装置3との間の無線通信回線を遮断し、ステップS20にて「NO」へ進み、ステップS10へ戻り、車両の衝突検出処理を繰り返す。
【0022】
そして、上記緊急通報処理が開始された後は、ステップS40へ進み、電池能力計測部21によりバックアップ電池19の電池能力、例えば電圧を検知する。続いて、ステップS50へ進み、上記検知電圧に基づいてバックアップ電池19の電池能力をランク分けする。この場合、図4に示す表のように、検知電圧が例えば3.5V以上のとき電池能力のランクをAとし、検知電圧が例えば3V以上3.5V未満のとき電池能力のランクをBとし、検知電圧が例えば2.5V以上3V未満のとき電池能力のランクをCとし、検知電圧が例えば2.5V未満のとき電池能力のランクをDとする。
【0023】
そして、ステップS60へ進み、電池能力のランクに基づいて車載緊急通報装置2の機能、性能、動作等(車内LAN通信機能、GPS通信機能、無線通信機能、音声出力機能などの各種機能)を制限する。この場合、制限する機能の例は、通話音声出力低減と、音声通話機能停止と、無線装置電力低減とである。具体的には、図5に示す表のように、電池能力のランクがAのときには、機能の制限を行わない。そして、電池能力のランクがBのときには、通話音声の出力の低減だけを行う。また、電池能力のランクがCのときには、通話音声出力の低減と音声通話機能の停止とを行う。更に、電池能力のランクがDのときには、通話音声出力の低減と音声通話機能の停止と無線装置電力低減とを行う。そして、この後は、前記ステップS30へ戻り、緊急通報処理を続行し、上述した処理を繰り返す。
【0024】
このような構成の本実施形態によれば、バックアップ電池19の電池能力として電圧を検知し、この検知した電圧に基づいてバックアップ電池19の電池能力をランク分けし、ランク分けした電池能力のランクに基づいて車載緊急通報装置2の機能・性能(動作等)を制限するように構成したので、低温等のためにバックアップ電池19の電池能力(放電性能)が低下したときには、その低下の度合に応じて車載緊急通報装置2の機能等が制限されることから、消費電力量が低減される。このため、バックアップ電池19の低温時の放電性能を低くすることが可能となり、安価なバックアップ電池19を搭載することができる。
【0025】
尚、上記実施形態では、バックアップ電池19の電池能力を4ランクに分けたが、これに限られるものではなく、3ランク以下、または5ランク以上にランク分けしても良い。また、ランク分けする具体的な電圧値も適宜変更しても良い。また、車載緊急通報装置2の種々の機能の中の制限する機能の例として、通話音声出力低減と、音声通話機能停止と、無線装置電力低減とを採用したが、これに限られるものではなく、他の機能を制限するようにしても良い。
【0026】
図6ないし図9は、本発明の第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。第2実施形態では、図6に示すように、車載緊急通報装置2内に、環境温度計測部(環境温度検出手段)51と、状態通知処理部52とを設けた。環境温度計測部51は、例えばサーミスタ等の温度センサで構成されており、車載緊急通報装置2が設置された環境の温度を計測し、温度計測信号をCPU5へ出力する。
【0027】
状態通知処理部52は、CPU5からの制御信号に応じて車載緊急通報装置2の動作状態等を通知するための例えば2個のLED53、54を点灯駆動する。LED53は例えば赤色LEDであり、LED54は例えば青色LEDである。尚、第1実施形態においても、上記状態通知処理部52及びLED53、54を備えることが好ましい。
【0028】
また、図7に示すように、車載緊急通報装置2の電源制御部12内には、バックアップ電池19の温度を計測する電池温度計測部(電池温度検出手段)55が設けられている。電池温度計測部55は、例えばサーミスタ等の温度センサで構成されており、バックアップ電池19の温度を計測し、温度計測信号をCPU5へ出力する。尚、車載緊急通報装置2が発熱制御手段としての機能を有する。
【0029】
また、本実施形態の車載緊急通報装置2は、リモートエンジンスタート機能を有している。この構成の場合、ユーザが図示しないリモート端末(携帯電話機やスマートフォン等の無線端末)を操作して、リモートエンジンスタート信号(即ち、車両のエンジンを遠隔操作で始動させるための信号)を通信網4を介して車載緊急通報装置2へ送信すると、車載緊急通報装置2の無線通信部6は、上記リモートエンジンスタート信号を受信し、この受信したリモートエンジンスタート信号をCPU5へ送信する。CPU5は、上記リモートエンジンスタート信号を車両LAN制御部14及び車両LAN41を介してエンジン制御装置40へ送信する。エンジン制御装置40は、上記リモートエンジンスタート信号を受信すると、車両のエンジンを始動(スタート)させる構成となっている。
【0030】
次に、上記構成の車載緊急通報装置2の動作について、図8及び図9も参照して説明する。図8のフローチャートは、第2実施形態の車載緊急通報装置2の制御内容を示す。
まず、図8のステップS110においては、車載緊急通報装置2は、車両バッテリ17の電源で直接動作する接続状態且つ最小消費電力状態で待機(即ち、+B待受け待機)している。続いて、ステップS120へ進み、イグニッションスイッチ(IG)がオンされたか否かを判断する。ここで、イグニッションスイッチがオンされないときには、ステップS120にて「NO」へ進み、ステップS130へ進み、リモートエンジンスタート信号(通知)を受信したか否かを判断する。ここで、リモートエンジンスタート信号を受信しないときには、ステップS130にて「NO」へ進み、ステップS110へ戻り、+B待受け待機を続ける。
【0031】
また、ステップS120にてイグニッションスイッチがオンされたときには(「YES」へ進み)、または、ステップS130にてリモートエンジンスタート信号を受信したときには(「YES」へ進み)、それぞれステップS140へ進む。このステップS140では、イグニッションスイッチがオンされたときの処理を実行する。この場合、車載緊急通報装置2は、上記+B待受け待機状態から通常の電源オン状態に移行する。
【0032】
そして、ステップS150へ進み、環境温度計測部51により検知した環境温度Temp_outまたは電池温度計測部55により検知したバックアップ電池19の電池温度Temp_bubが例えば−20℃(第1の設定温度)よりも低いか否かを判断する。ここで、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bubが−20℃よりも低い場合には、ステップS150にて「YES」へ進み、ステップS160へ進み、低温時のバックアップ電池19の機能を回復させるためにバックアップ電池19の電池温度Temp_bubを上昇させる処理として自己発熱回復処理を実行する。この自己発熱回復処理の具体的内容については、後述する。尚、環境温度Temp_outと電池温度Temp_bubは、エンジン始動前は通常同じ温度であり、エンジン始動後は通常電池温度Temp_bubの方が環境温度Temp_outよりも高い。
【0033】
続いて、ステップS170へ進み、電池温度Temp_bubが−10℃以上になったか否かを判断する。ここで、電池温度Temp_bubが−10℃以上になっていない場合には、ステップS170にて「NO」へ進み、ステップS160へ戻る。一方、ステップS170において、電池温度Temp_bubが−10℃以上になったら、「YES」へ進み、ステップS180へ進み、車載緊急通報装置2は待機状態となる。
【0034】
また、上記ステップS150において、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bubが−20℃よりも低くなかった場合(環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bubが−20℃以上あった場合)には、「NO」へ進み、ステップS180へ進み、車載緊急通報装置2は待機状態となる。
【0035】
ここで、ステップS160の自己発熱回復処理について、図9を参照して、具体的に説明する。この自己発熱回復処理においては、環境温度Temp_outと電池温度Temp_bubに応じて図9の表に示すような各処理を実行する。まず、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bub(2つの温度のうちの高い方の温度)が−40℃以上−30℃未満であるときには、図9の表の上から1番目の処理、即ち、車載緊急通報装置2(を構成するマイコン)を通常通電して起動させ、2個のLED53、54を点灯駆動することにより、車載緊急通報装置2の不作動状態(車載緊急通報装置2が動作できない状態であること)を通知する。そして、上記LED53、54の点灯駆動は、例えば180秒間続ける。この1番目の処理の場合、負荷の消費電流は微小であり、バックアップ電池19の自己発熱による回復効果も微小である。
【0036】
次に、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bub(2つの温度のうちの高い方の温度)が−30℃以上−20℃未満であるときには、図9の表の上から2番目の処理、即ち、車載緊急通報装置2(を構成するマイコン)を通常通電して起動させ、スピーカ16を駆動して報知音や音声等を出力(audio駆動)することにより、車載緊急通報装置2の不作動状態を通知する。そして、上記スピーカ16の駆動は、例えば60秒間続ける。この2番目の処理の場合、負荷の消費電流は小であり、バックアップ電池19の自己発熱による回復効果も小である。
【0037】
また、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bub(2つの温度のうちの高い方の温度)が−20℃以上−10℃未満であるとき(例えば上記した1番目または2番目の処理を実行した結果、バックアップ電池19の自己発熱により電池温度Temp_bubが上昇したとき)には、図9の表の上から3番目の処理を実行する。この3番目の処理では、車載緊急通報装置2の無線通信部6(ネットワークアクセスデバイス(NAD))及びGPS測位部7を起動して、最小送信電力で車両の現在位置の位置情報をセンター装置3(または無線基地局)へ通知(送信)する。そして、上記位置情報の通知処理は、例えば3回実行する。この3番目の処理の場合、負荷の消費電流は中であり、バックアップ電池19の自己発熱による回復効果も中である。
【0038】
また、上記3番目の処理を実行し、位置情報をセンター装置3へ送信したときに、センター装置3から応答がなかったとき(NG時)には、図9の表の上から4番目の処理を実行する。この4番目の処理では、送信電力を一段階上げて上記位置情報をセンター装置3へ送信する。この4番目の処理の場合、負荷の消費電流も中から一段階上がり、バックアップ電池19の自己発熱による回復効果も中から一段階上がる。尚、環境温度Temp_out及び電池温度Temp_bubが−40℃よりも低い場合には、上記自己発熱回復処理を実行しない。
【0039】
さて、前記ステップS180(車載緊急通報装置2の待機状態)の後は、ステップS190へ進み、バックアップ電池19の電池温度Temp_bubが例えば−20℃よりも低くなったか否かを判断する。ここで、待機中に環境温度が低い等の理由で電池温度Temp_bubが再び−20℃よりも低くなった場合には、ステップS190にて「YES」へ進み、ステップS160へ戻り、前記自己発熱回復処理を実行する。
【0040】
また、上記ステップS190において、電池温度Temp_bubが−20℃よりも低くない場合には、「NO」へ進み、ステップS10へ進み、第1実施形態で説明した衝突検出処理を実行する。これ以降、ステップS20からステップS60までの各処理は、第1実施形態で説明した各処理と同じである。尚、ステップS20において、衝突を検出しなかったときには、「NO」へ進み、ステップS180へ戻る。
【0041】
上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、イグニッションスイッチ(IG)がオンされた際に、または、リモートエンジンスタート信号を受信した際に、環境温度Temp_outまたは電池温度Temp_bubが−20℃よりも低いときに、バックアップ電池19の自己発熱回復処理を実行するように構成したので、環境温度が低温のときに、バックアップ電池19の機能を回復することができる。このため、バックアップ電池19の低温時の放電性能を低くすることが可能となり、安価なバックアップ電池19を搭載することができる。
【0042】
尚、自己発熱回復処理を実行すると、バックアップ電池19に充電された電気を少し消費してしまうが、車載緊急通報装置2の待機中(ステップS180参照)において、バックアップ電池19は車両バッテリ17によって再充電されることから、問題が生ずることがない。
【0043】
尚、上記第2実施形態では、車載緊急通報装置2がリモートエンジンスタート機能を有するように構成したが、車載緊急通報装置2がリモートエンジンスタート機能を有しないように構成、即ち、他の車載機器がリモートエンジンスタート機能を有するように構成し、この車載機器からリモートエンジンスタート信号を車載緊急通報装置2へ送信するように構成しても良い。また、リモートエンジンスタート機能を有する構成に適用したが、リモートエンジンスタート機能を有しない構成に適用しても良い。このリモートエンジンスタート機能を有しないように構成する場合、図8のステップS130を削除し、ステップS120にて「NO」へ進むときには、ステップS110へ戻すように構成すれば良い。
【0044】
また、上記第2実施形態では、自己発熱回復処理において、図9の表の上から1番目の処理を実行する場合、2個のLED53、54を点灯駆動するように構成したが、これに限られるものではなく、LED53、54を点滅駆動したり、その点灯時間や消灯時間を適宜可変させたりすることにより、消費電流(即ち、バックアップ電池19の自己発熱)の大きさを細かく可変制御させるように構成しても良い。
【0045】
また、上記第2実施形態では、自己発熱回復処理において、図9の表の上から2番目の処理を実行する場合、スピーカ16を駆動して報知音や音声等を出力するように構成したが、この構成の場合、スピーカ16から出力する音の大きさ(音量)等を可変させることにより、消費電流(即ち、バックアップ電池19の自己発熱)の大きさを細かく可変制御させるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は緊急通報システム、2は車載緊急通報装置、3はセンター装置、4は通信網、5はCPU(制限手段)、6は無線通信部、7はGPS測位部、9は音声処理部、10は衝突検出部、12は電源制御部、14は車両LAN制御部、19はバックアップ電池、26はカメラ、27はミリ波レーダー、28は車速センサ、29は舵角センサ、32はシートベルトECU、33はステアリング、37はナビゲーション装置、38はメーター装置、39はアラーム装置、40はエンジン制御装置、41は車両LAN、51は環境温度計測部、52は状態通知処理部、53、54はLED、55は電池温度計測部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両が衝突したと判定されたときに緊急通報信号を通信網を通じてセンター装置に送信する機能を有し、車両バッテリから供給される電力を動作電力として動作するように構成された車載緊急通報装置において、
前記車両バッテリから供給される電力が低下したときに、前記車載緊急通報装置に動作電力を供給するバックアップ電池と、
前記バックアップ電池の電池能力を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定された電池能力が低いときに、前記車載緊急通報装置の機能を制限する制限手段とを備えたことを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項2】
前記測定手段は、電池能力として前記バックアップ電池の電圧を検知することを特徴とする請求項1記載の車載緊急通報装置。
【請求項3】
前記制限手段は、前記バックアップ電池の検知電圧を複数のランクにランク分けし、前記検知電圧が最上位のランクに属するときは、前記車載緊急通報装置の機能の制限はしないようにし、前記検知電圧が最上位のランクより下位のランクに属するときは、前記車載緊急通報装置の機能を1つ以上制限することを特徴とする請求項2記載の車載緊急通報装置。
【請求項4】
前記制限手段は、前記検知電圧が最上位のランクより1段階下位のランクに属するときは、前記車載緊急通報装置の機能を1つ制限し、以下前記検知電圧が属するランクが1段階下がる毎に制限する機能を1つずつ増やしていくことを特徴とする請求項3記載の車載緊急通報装置。
【請求項5】
前記制限手段は、前記複数のランクを4つのランクとし、前記検知電圧が最上位のランクより1段階下位のランクに属するときは、前記車載緊急通報装置の機能の中の通話音声の出力を低減し、前記検知電圧が最上位のランクより2段階下位のランクに属するときは、前記通話音声出力低減に加えて前記車載緊急通報装置の機能の中の音声通話機能を停止し、前記検知電圧が最下位のランクに属するときは、前記通話音声出力低減及び前記音声通話機能停止に加えて前記車載緊急通報装置の機能の中の無線装置の電力を低減することを特徴とする請求項3記載の車載緊急通報装置。
【請求項6】
前記バックアップ電池は、前記車両バッテリから供給される電力で充電される充電池であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車載緊急通報装置。
【請求項7】
前記充電池は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池であることを特徴とする請求項6記載の車載緊急通報装置。
【請求項8】
前記バックアップ電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
車両のイグニッションスイッチがオンされた際に、前記バックアップ電池の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる発熱制御手段とを備えたことを特徴とする請求項6または7記載の車載緊急通報装置。
【請求項9】
前記発熱制御手段は、車両のエンジンを遠隔操作で始動させるための信号を受けた際に、前記バックアップ電池の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させるように構成されていることを特徴とする請求項8記載の車載緊急通報装置。
【請求項10】
前記発熱制御手段は、前記バックアップ電池の温度が第2の設定温度を越えたときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる自己発熱処理を止めるように構成されていることを特徴とする請求項8または9記載の車載緊急通報装置。
【請求項11】
前記発熱制御手段は、前記自己発熱処理を止めた後、前記バックアップ電池の温度が前記第1の設定温度よりも低くなったときには、前記自己発熱処理を再び実行するように構成されていることを特徴とする請求項10記載の車載緊急通報装置。
【請求項12】
前記バックアップ電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
前記車載緊急通報装置の設置された環境の温度を検出する環境温度検出手段と、
車両のイグニッションスイッチがオンされた際に、または、車両のエンジンを遠隔操作で始動させるための信号を受けた際に、前記バックアップ電池の温度または前記環境の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる発熱制御手段とを備えたことを特徴とする請求項6または7記載の車載緊急通報装置。
【請求項13】
車両に搭載され、車両が衝突したと判定されたときに緊急通報信号を通信網を通じてセンター装置に送信する機能を有し、車両バッテリから供給される電力を動作電力として動作するように構成された車載緊急通報装置において、
前記車両バッテリから供給される電力が低下したときに、前記車載緊急通報装置に動作電力を供給するバックアップ電池と、
前記バックアップ電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
車両のイグニッションスイッチがオンされた際に、前記バックアップ電池の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる発熱制御手段とを備えたことを特徴とする車載緊急通報装置。
【請求項14】
前記発熱制御手段は、車両のエンジンを遠隔操作で始動させるための信号を受けた際に、前記バックアップ電池の温度が第1の設定温度よりも低いときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させるように構成されていることを特徴とする請求項13記載の車載緊急通報装置。
【請求項15】
前記発熱制御手段は、前記バックアップ電池の温度が第2の設定温度を越えたときに、前記バックアップ電池から負荷に通電して前記バックアップ電池を発熱させる自己発熱処理を止めるように構成されていることを特徴とする請求項13または14記載の車載緊急通報装置。
【請求項16】
前記発熱制御手段は、前記自己発熱処理を止めた後、前記バックアップ電池の温度が前記第1の設定温度よりも低くなったときには、前記自己発熱処理を再び実行するように構成されていることを特徴とする請求項15記載の車載緊急通報装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109752(P2013−109752A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−178214(P2012−178214)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】