車載2次電池の状態定量化装置
【課題】プラグインハイブリッド車において、モータジェネレータ16単独で車両を走行させるEVモードから、エンジン12をも利用するハイブリッドモードへの切り替えまでに走行可能な距離を十分に長くすることができないこと。
【解決手段】モータジェネレータ16は、インバータ22を介して高電圧バッテリ26に接続されている。高電圧バッテリ26の状態は、制御装置40によって定量化される。制御装置40では、特に、高電圧バッテリ26の劣化状態として内部抵抗Rを定量化する。そして内部抵抗に基づき、現在よりも小さいSOCにおいて高電圧バッテリ24から所定の電力を出力した際の高電圧バッテリ24の端子電圧が下限電圧となる際のSOCをSOCの下限充電率として、これに基づきハイブリッドモードへの切り替えの閾値を設定する。
【解決手段】モータジェネレータ16は、インバータ22を介して高電圧バッテリ26に接続されている。高電圧バッテリ26の状態は、制御装置40によって定量化される。制御装置40では、特に、高電圧バッテリ26の劣化状態として内部抵抗Rを定量化する。そして内部抵抗に基づき、現在よりも小さいSOCにおいて高電圧バッテリ24から所定の電力を出力した際の高電圧バッテリ24の端子電圧が下限電圧となる際のSOCをSOCの下限充電率として、これに基づきハイブリッドモードへの切り替えの閾値を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載主機として回転機と、回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両にあっては、2次電池の充電率を適切に管理することが必要となる。そこで従来、例えば下記特許文献1に見られるように、予め定められた2次電池の下限電圧に基づき、所定時間放電した後の2次電池の端子電圧が下限電圧となる最大放電可能電流量を算出し、これと下限電圧とに基づき、最大放電可能電力を推定するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば車載主機として回転機のみを備える電気自動車や、車載主機として内燃機関を備えつつも2次電池を外部の商用電源等によって充電可能なプラグインハイブリッド車が実用化されつつある。そして、こうした車両にあっては、車両の走行のために回転機に要求される電力を2次電池によって供給可能であるか否かを把握すべく2次電池の状態をいかに定量化するかが問題となることが発明者らによって見出されている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する新たな車載2次電池の状態定量化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の劣化が進行するほど上昇させる上昇手段を備えることを特徴とする。
【0008】
2次電池の劣化が進行すると、放電電力が同じでも端子電圧が低下する。また、2次電池の劣化が進行すると、放電エネルギが同じでも充電率の低下量が大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、車両の走行のための電力を2次電池によって供給可能な2次電池の充電率の下限値を2次電池の劣化が進行するほど上昇させる。このように充電率の下限値が上昇すると、開放端電圧が上昇するため、放電時の端子電圧の下限値も上昇する。また、放電によって充電率が落ち込む際のその下限値も上昇する。このため、2次電池の劣化の進行にかかわらず車両の走行のために要求される電力を供給することができる。しかも、初めから充電率の下限値を劣化に起因した上昇後の下限値に設定する場合と比較して、劣化前における2次電池の放電電力量や放電電力を増大させることもできる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の温度に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする。
【0011】
2次電池の温度が変化すると、2次電池の内部抵抗が変化することなどに起因して、放電電力が同じでも端子電圧の低下量が変化することとなる。上記発明では、この点に鑑み、車両の走行のための電力を2次電池によって供給可能な2次電池の充電率の下限値を2次電池の温度に応じて可変設定する。このため、端子電圧の低下量が大きくなる場合に充電率の下限値を上昇させることができ、これにより、開放端電圧が上昇するため、放電時の端子電圧の下限値も上昇する。このため、2次電池の温度にかかわらず車両の走行のために要求される電力を供給することができる。しかも、初めから充電率の下限値を上記低下量が最大となると想定される温度に応じて設定する場合と比較して、2次電池の放電電力量や放電電力を増大させることもできる。
【0012】
なお、上記設定手段は、2次電池の温度が低いほど下限値を上昇させる手段であってもよい。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の実際の充電率が前記下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、実際の充電率が上記下限値に達したことをユーザが把握することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記通知手段は、前記充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを外部に通知することを特徴とする。
【0016】
上記発明では、上記下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記上昇手段は、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の充電率として現在の充電率よりも小さい充電率において前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、現在の充電率よりも小さい充電率における2次電池の状態をシミュレートすることで、2次電池の挙動に問題が生じる以前に、問題が生じる手前の充電率である上記充電率の下限値を適切に算出することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の充電率として複数通りの値のそれぞれについて前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする。
【0021】
上記発明では、複数の充電率を想定したシミュレーションを実行することで、2次電池の挙動に問題が生じる手前の充電率である上記充電率の下限値をいっそう適切に算出することができる。
【0022】
請求項9記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記2次電池の充電率として現在の充電率とは相違する充電率を仮設定して前記2次電池を充放電した場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで、前記車両の走行のために要求される前記2次電池の充電率の閾値を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【0023】
2次電池の劣化が進行すると、放電電力が同じでも端子電圧が低下し、充電電力が同じでも端子電圧が上昇する。また、2次電池の劣化が進行すると、放電エネルギが同じでも充電率の低下量が大きくなり、また、充電エネルギが同じでも充電率の上昇量が大きくなる。ここで、上記発明では、現在の劣化状態において2次電池を充放電した場合の2次電池の状態をシミュレートすることで、車両の走行のための電力を2次電池によって充放電する際の2次電池の充電率の閾値を算出する。これにより、2次電池の劣化に応じて閾値を定めることができるため、2次電池の劣化の進行にかかわらず車両の走行のための電力の授受が可能となる。しかも、初めから充電率の閾値を劣化に応じた閾値に設定する場合と比較して、劣化前における2次電池の充放電可能量や電力を増大させることもできる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記閾値は、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項6〜8,10のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の放電時の許容下限電圧を設定する設定手段をさらに備え、前記算出手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給する際の前記2次電池の端子電圧が前記許容下限電圧以上となる充電率の最小値を算出することを特徴とする。
【0026】
2次電池の劣化が進むと、内部抵抗値が大きくなることなどによって、充電率と放電電力とを同一とした場合の放電時の端子電圧が低下する傾向がある。このため、許容下限電圧を設定する場合には、劣化の進行につれて充電率の下限値を上昇させることが特に重要となる。
【0027】
請求項12記載の発明は、請求項6〜8,10,11のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の内部抵抗値を所定周期で推定する推定手段を備え、前記算出手段は、前記2次電池の劣化状態を示すパラメータとしての前記2次電池の内部抵抗値を入力とし、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出することを特徴とする。
【0028】
2次電池の劣化が進むと内部抵抗値が大きくなる傾向がある。このため、内部抵抗値は、2次電池の劣化を定量化するための適切なパラメータである。特に、内部抵抗を用いるなら、2次電池の放電時の挙動を簡易にシミュレートすることもできる。
【0029】
請求項13記載の発明は、請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、前記要求される電力とは、前記車両が所定の加速性能を満たすために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする。
【0030】
車両の加速時においては回転機に供給することが要求される電力や電力量が大きくなるため、2次電池の端子電圧の低下量や充電率の減少量も大きくなりやすい。このため、加速性能を用いることで、2次電池の充電率の下限値を適切に設定することができる。
【0031】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の現在の温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする。
【0032】
2次電池の温度に応じて2次電池の内部抵抗値が変化することなどから、2次電池の温度に応じて2次電池の放電時の挙動が変化する。このため、加速性能を満たす上での充電率の下限値は温度に依存することとなる。上記発明では、この点に鑑み、現在の温度を用いて下限値を算出することで、現在の温度にとって適切な下限値を算出することができる。
【0033】
請求項15記載の発明は、請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、前記要求される電力とは、前記回転機の動力によって前記内燃機関を起動させるために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする。
【0034】
内燃機関に初期回転を付与する電子制御式の手段が回転機である場合、回転機によって内燃機関を起動させることができないなら、車両が走行できなくなるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、回転機によって内燃機関を起動することができる充電率の下限値を算出する。
【0035】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の温度として想定される最低温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする。
【0036】
2次電池の温度に応じて2次電池の内部抵抗値が変化することなどから、2次電池の温度に応じて2次電池の放電時の挙動が変化する。特に、温度が低いほど2次電池の挙動が問題となりやすい。上記発明では、この点に鑑み、最低温度に基づき充電率の下限値を算出することで、2次電池の温度にかかわらず回転機によって内燃機関を起動可能な下限値を算出することができる。
【0037】
請求項17記載の発明は、請求項15または16記載の発明において、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値を、前記回転機に要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として算出する手段をさらに備えることを特徴とする。
【0038】
請求項18記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記2次電池の開放端電圧と充電率との関係を定める関係設定手段と、前記2次電池の所定期間における充放電に伴う前記2次電池の充放電電荷総量を算出する手段と、前記所定期間における充放電に伴う前記2次電池の開放端電圧の変化量から前記関係設定手段によって定められる前記関係に基づき前記充電率の変化量を算出する手段と、前記充電率の変化量と前記充放電電荷総量とに基づき前記2次電池の満充電電荷量を算出する手段とを備え、前記所定のエネルギ量だけ多い充電率の算出に際して、前記満充電電荷量の算出値を用いることを特徴とする。
【0039】
満充電電荷量は、2次電池の劣化に伴って変化する一方、充電率と開放端電圧との関係は、2次電池の劣化によってはほとんど変化しない。上記発明では、この点に鑑み、満充電電荷量を算出することで、所定のエネルギ量だけ多い充電率を高精度に算出することができる。
【0040】
請求項19記載の発明は、請求項6〜8,10〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の走行のために前記回転機に要求される電力を規定時間に渡り前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする。
【0041】
請求項20記載の発明は、請求項6〜8,10〜19のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の実際の充電率が前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0042】
上記発明では、実際の充電率が上記下限値に達したことをユーザが把握することができる。
【0043】
請求項21記載の発明は、請求項20記載の発明において、前記通知手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0044】
上記発明では、車両の走行のために要求される下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0045】
請求項22記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0046】
上記発明では、車両の駆動力を回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0047】
請求項23記載の発明は、請求項5,20〜22のいずれか1項に記載の発明において、前記通知手段は、視覚情報を利用して前記通知にかかる処理を行うものであって且つ、前記下限値の表示に際し、該下限値と前記充電率がゼロとなる点との関係情報を表示することなく、前記下限値を基準点として表示することを特徴とする。
【0048】
上記発明では、充電率がゼロとなる点と下限値との関係情報を表示しないため、ユーザにとって必要な情報に焦点を当てて表示することができる。
【0049】
請求項24記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の充電率の下限値は、前記2次電池の端子電圧が放電時の許容下限電圧を下回ることなく前記回転機の動力が前記車両の走行のために要求される値を満足するためのものであることを特徴とする。
【0050】
2次電池の劣化が進むと、内部抵抗値が大きくなることなどによって、充電率と放電電力とを同一とした場合の放電時の端子電圧が低下する傾向がある。このため、許容下限電圧を設定する場合には、劣化の進行につれて充電率の下限値を上昇させることが特に重要となる。
【0051】
請求項25記載の発明は、請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両が所定の加速性能を満たすための下限値であることを特徴とする。
【0052】
車両の加速時においては回転機に供給することが要求される電力や電力量が大きくなるため、2次電池の端子電圧の低下量や充電率の減少量も大きくなりやすい。このため、加速性能を用いることで、2次電池の充電率の下限値を適切に設定することができる。
【0053】
請求項26記載の発明は、請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の充電率が前記下限値となることで前記車両の走行を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0054】
請求項27記載の発明は、請求項26記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるバッテリ状態の定量化処理に関するブロック図。
【図3】同実施形態にかかる満充電電荷量の算出処理の手順を示す流れ図。
【図4】同実施形態にかかる現在充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図5】同実施形態にかかる下限充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図6】同実施形態にかかる閾値充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態の効果を示す図。
【図8】同実施形態の効果を示す図。
【図9】同実施形態にかかるバッテリ状態の表示手法を示す図。
【図10】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】同実施形態にかかる下限充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図12】同実施形態にかかるバッテリ状態の表示手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車載2次電池の状態定量化装置を、プラグインハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0057】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0058】
図示されるように、本実施形態にかかるハイブリッド車は、パラレルシリーズハイブリッド車である。すなわち、動力分割装置10は、遊星歯車機構を備えて構成されており、内燃機関(エンジン12)、モータジェネレータ14、ならびにモータジェネレータ16および駆動輪18の動力を分割する。詳しくは、遊星歯車機構のリングギアRには、モータジェネレータ16および駆動輪18が機械的に連結されており、サンギアSには、モータジェネレータ14が機械的に連結されており、キャリアCには、モータジェネレータ14が機械的に連結されている。
【0059】
モータジェネレータ14は、インバータ20を介して高電圧バッテリ24に接続されており、モータジェネレータ16は、インバータ22を介して高電圧バッテリ24に接続されている。ここで、高電圧バッテリ24は、リチウムイオン2次電池である。また、高電圧バッテリ24は、例えば百V以上の高電圧を有するものである。特に本実施形態では、高電圧バッテリ24として、複数の電池セルC1〜Cnの直列接続体である組電池を想定している。
【0060】
高電圧バッテリ24は、充電器26に接続されている。充電器26には、プラグ28が接続可能とされており、これにより、高電圧バッテリ24は、車両の外部の商用電源等の電源装置によって充電が可能となっている。
【0061】
また、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iは、電流センサ30によって検出され、高電圧バッテリ24の電圧は、電圧センサ32によって検出され、高電圧バッテリ24の温度Tは、温度センサ34によって検出される。ここで、高電圧バッテリ24の電圧は、実際には、組電池を構成する複数の電池セルC1〜Cnのうちの1の電池セル毎のセル電圧Vcが検出される。
【0062】
制御装置40は、充電器26を操作して高電圧バッテリ24の状態を制御したり、インバータ20,22を操作して、モータジェネレータ14,16の制御量を制御したりする。また、制御装置40は、上記各種センサの検出値等に基づき、高電圧バッテリ24の状態を定量化する処理を行う。本実施形態では、電池セルCj(j=1〜n)の等価回路モデルを用いて状態を定量化する。この等価回路モデルとしては、例えば上記特許文献1に見られるように、起電力を生じる電源および抵抗体の直列接続体とキャパシタとの並列接続体に抵抗体が直列接続された構成とすればよい。ちなみに、以下の記載における電池セルCjの内部抵抗とは、上記並列接続体に直列接続される抵抗体のことである。
【0063】
図2に、上記定量化処理に関するブロック図を示す。
【0064】
内部抵抗検出部S100は、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iと、セル電圧Vcとに基づき、電池セルCjの内部抵抗Rを算出する。これは、例えば、インバータ20や充電器26を停止した際等において、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iの絶対値が漸減していく際の充放電電流量Iとセル電圧Vcとの複数の検出値に基づき、重回帰分析等によって求めることができる。こうして検出された最新の内部抵抗Rは、高電圧バッテリ24の温度Tと現在の充電率(満充電電荷量に対する電荷量の百分率:SOC)との情報に関連付けて記憶される。この具体的な記憶手法は、現在のSOC(現在充電率Px)と温度Tとによって分割された領域毎に、内部抵抗Rの値を記憶することとしてもよいし、また、温度Tおよび現在充電率Pxと内部抵抗Rとを関係付ける関係式を、最新の内部抵抗Rの検出結果に基づき補正することで行なってもよい。なお、内部抵抗Rは、例えば車両の走行距離が規定距離となる都度や、所定時間が経過する都度等、所定周期で行なえばよい。
【0065】
開放端電圧推定部S200では、セル電圧Vcと、内部抵抗Rと、充放電電流量Iとに基づき、電池セルCjの開放端電圧(以下、OCV)を算出する。ここでは、セル電圧Vcが、OCVと、内部抵抗Rによる電圧降下IRとの和であることを利用する。ただし、実際には、高電圧バッテリ24の出力を変更した際には、過渡的な現象としてセル電圧Vcが分極電圧の影響を受けることを考慮することが望ましい。
【0066】
電流積算部S300では、都度の充放電電流量Iを積算する処理を行う。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0067】
満充電電荷量算出部S400では、OCVが変化した際の充放電電流総量に基づき、電池セルCjの満充電電荷量Ah0を算出する。詳しくは、SOCが第1充電率PAから第2充電率PBまで変化するまでの高電圧バッテリ24の充放電電流の時間積分値を、「(PA−PB)%/100」にて除算することで、満充電電荷量Ah0を算出する。この処理は、電池セルCjの満充電電荷量Ah0が電池セルCjの劣化によって変化することに鑑み、現在の電池セルCjの満充電電荷量Ah0を高精度に定量化するためのものである。ここでは、電池セルCjの劣化にかかわらず、OCVとSOCとの関係がほとんど変化しないことを利用している。すなわち、この場合、OCVの変化からSOCの変化「PA−PB」を高精度に算出することができるため、この変化に際しての充放電電流総量に基づき、満充電電荷量Ah0を高精度に算出することができる。
【0068】
図3に、満充電電荷量Ah0の算出処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0069】
この一連の処理では、まずステップS402において、Ah0算出フラグFが「1」であるか否かを判断する。ここで、Ah0算出フラグFが「1」の場合には、満充電電荷量Ah0の算出処理中であることを示し、Ah0算出フラグFが「0」の場合には、満充電電荷量Ah0の算出処理がなされていないことを示す。そしてステップS402において否定判断される場合、ステップS404において、現在充電率Pxが第1充電率PAであるか否かを判断する。この処理は、満充電電荷量Ah0を算出する処理を開始するタイミングであるか否かを判断するためのものである。そしてステップS404において肯定判断される場合、ステップS406において、Ah0算出フラグFを「1」とする。
【0070】
そしてステップS402において肯定判断される場合や、ステップS406の処理が完了する場合、ステップS408において、Ah0算出フラグFが「1」となってから現在までの充放電電流量Iの積算値を更新する。ここで積算値は、先の図2の電流積算部S300によって算出されるものである。続くステップS410では、現在充電率Pxが第2充電率PB(<PA)であるか否かを判断する。この処理は、満充電電荷量Ah0を算出する準備が整ったか否かを判断するためのものである。そしてステップS410において肯定判断される場合、ステップS412において、Ah0算出フラグFを「0」として且つ、満充電電荷量Ah0を更新する。
【0071】
なお、ステップS404,S410において否定判断される場合や、ステップS412の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0072】
先の図2に示す充電率算出部S500では、電池セルCjの現在のSOC(現在充電率Px)を算出する。図4に、SOCの算出処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS502において、先の図2の電流積算部S300による電流の積算値Inを取得する。ここでの積算値Inは、この図4に示す一連の処理の周期当たりの積算値である。続くステップS504では、前回算出された現在充電率Px(n−1)に、ステップS502によって取得された積算値Inを「Ah0/100」で除算した値を加算することで、今回の現在充電率Px(n)を算出する。続くステップS506では、開放端電圧推定部S200によって推定されたOCVを取得する。そして、ステップS508では、OCVとSOCとの関係に基づき、電池セルCjのSOC(SOCv)を算出する。ここでは、SOCとOCVとの関係を定めたマップを用いればよい。そして、ステップS510では、現在充電率Px(n)が、OCVに基づき算出されたSOCvよりも所定量ΔSOC以上大きいか否かを判断し、また、ステップS512では、現在充電率Px(n)が、OCVに基づき算出されたSOCvよりも所定量ΔSOC以上小さいか否かを判断する。これらの処理は、充放電電流量Iの積算値に基づき算出されたSOCを補正する必要があるか否かを判断するためのものである。すなわち、一般に、充放電電流量Iの積算値に基づき算出されるSOCには誤差が生じやすいことに鑑み、OCVに基づき算出されたSOCvに基づき、その値を評価する。そして、ステップS510において肯定判断される場合には、ステップS514において、現在充電率Px(n)を、規定量ΔPだけ低減補正し、ステップS512において肯定判断される場合には、ステップS516において、現在充電率Px(n)を、規定量ΔPだけ増大補正する。
【0074】
なお、ステップS514,S516の処理が完了する場合や、ステップS512において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0075】
先の図2に示す下限充電率算出部S600は、高電圧バッテリ24の温度としてとり得ると想定される最低温度Tminにある状況下、モータジェネレータ14によってエンジン12を起動させる場合に電池セルCjの電圧が下限電圧Vminとなるときの電池セルCjの充電率(下限充電率P0)を算出する。これは、高電圧バッテリ24の温度としてとり得ると想定される最低温度Tminにある状況下、様々なSOCにて規定時間継続して放電を行なった場合の電池セルCjの端子電圧の変化をシミュレートすることで行うことができる。図5に、この処理の詳細を示す。
【0076】
この一連の処理では、まずステップS602において、充電率変数Pを「100%」に設定する。続くステップS604では、高電圧バッテリ24の電圧が最低温度Tminである状況下、高電圧バッテリ24から規定時間Y1(例えば数秒)に渡って要求される出力X1(kW)を出力する場合の端子電圧の電圧降下量ΔV(P)を推定する。ここで、電圧降下量ΔV(P)の算出には、内部抵抗検出部S100によって検出された最新の内部抵抗Rが用いられる。なお、この際の充放電電流量Iについては、充電率変数Pに対応するOCVから電圧降下量ΔV(P)=RIを減算したものに充放電電流量Iと電池セルの数nとを乗算した値が、モータジェネレータ14によって要求される出力X1となるように設定すればよい。すなわち、「X1=(OCV(P)−RI)×I×n」となるIを設定すればよい。ただし、上記規定時間Y1は、エンジン12を起動するためにモータジェネレータ14が要求出力を継続することが要求される時間に設定される。このため、上記シミュレートに際しては、規定時間放電を継続することによるSOCの仮設定値からの変化や高電圧バッテリ24の過渡的な挙動等を考慮することが望ましい。なお、上記要求出力や規定時間は、車両が停止しており、モータジェネレータ14,16のみならずエンジン12も停止している状況下、モータジェネレータ14を駆動することでエンジン12に初期回転を付与することでエンジン12が自立運転可能となるために要求されるものである。
【0077】
続くステップS606では、OCV(P)から電圧降下量ΔV(P)を減算することで、要求される出力X1での放電に際しての端子電圧V(P)を算出する。続くステップS608では、充電率変数Pを、規定量ΔPだけ低減補正する。そして、ステップS610では、充電率変数Pがゼロよりも小さいか否かを判断する。この処理は、SOCの全ての領域において端子電圧の降下に関するシミュレーションが完了したか否かを判断するためのものである。そしてステップS610において否定判断される場合には、ステップS604に戻る一方、肯定判断される場合には、端子電圧V(P)が下限電圧Vminとなる際の充電率変数Pを、下限充電率P0に特定する。
【0078】
なお、上記ステップS612の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0079】
先の図2に示す閾値充電率算出部S700は、車両の駆動力をモータジェネレータ16単独で生成する走行モード(EV走行モード)からエンジン12の動力をも用いる走行モード(ハイブリッド走行モード)へと切り替えるための充電率の閾値(閾値充電率Pth)を算出する。これは、下限充電率P0よりもエネルギ量が所定量Zだけ大きくなる充電率として算出される。ここで、所定量Zは、ハイブリッド走行モードに切り替えることで、下限充電率P0を下回ることなく車両を良好に走行させることができると想定されるエネルギ量に設定される。図6に、この処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0080】
この一連の処理では、まずステップS702において、充電率変数Pを下限充電率P0に設定する。続くステップS704では、下限充電率P0から充電率変数Pまでの間のエネルギ量Whthを算出する。本実施形態では、規定量ΔPずつ充電率変数Pを変化させる関係上、前回のエネルギ量Whthに、充電率変数PからP+ΔPまでの間のエネルギ量を加算する処理を行う。ここで、充電率変数Pが規定量ΔPだけ変化する間の放電電流量が「Ah0・ΔP/100」であって且つ、この間のOCVの平均値が「OCV(P)」であることから、加算されるエネルギ量は、「Ah0・ΔP・OCV(P)/100」となる。続くステップS706では、下限充電率P0から充電率変数Pまでのエネルギ量Whthが所定量Z以上であるか否かを判断する。そして、ステップS706において否定判断される場合には、ステップS708において、充電率変数Pを規定量ΔPだけ増大補正する。これに対し、ステップS710において肯定判断される場合、ステップS710において、そのときの充電率変数P(より正確には、P+ΔP)を、閾値充電率Pthとする。
【0081】
先の図2に示すエネルギ量推定部S800は、閾値充電率Pthから現在充電率Pxまでのエネルギ余裕量Whxを算出する。この処理は、先の図6の処理において、充電率変数Pの初期値を閾値充電率Pthとして且つ、充電率変数Pが現在充電率Pxよりも規定量ΔPだけ小さい値までステップS704の処理を行うことで算出することができる。
【0082】
表示情報算出部S900では、現在充電率Pxと、閾値充電率Pthと、エネルギ余裕量Whxとに基づき、ユーザに通知する表示情報を算出して出力する。この表示情報は、閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを示すものである。ここで、表示対象となる閾値充電率Pthや現在充電率Pxとしては、高電圧バッテリ24を構成する電池セルのうち内部抵抗Rが最も大きい電池セルに対応するものとしたり、満充電電荷量Ah0が最も小さい電池セルに対応するものとしたりしてもよい。ただし、実際には、端子電圧が下限電圧Vminに最も早期に到達する電池セルが、満充電電荷量Ah0が最も小さいものや内部抵抗Rが最も大きいものとなるとは限らない。このため、各電池セルの満充電電荷量Ah0と内部抵抗Rとに基づき、高電圧バッテリ24が放電を継続することでSOCが低下していった際に端子電圧が最も早期に下限電圧Vminに達すると予測される電池セルの閾値充電率PthやSOCを表示対象とすることが望ましい。
【0083】
上記のように、閾値充電率Pthを設定することで、EV走行が可能な距離を極力長くすることができる。すなわち、高電圧バッテリ24の劣化に伴って内部抵抗が大きくなることから、図7に示すように、放電時の端子電圧は、高電圧バッテリ24が劣化することで低くなる。このため、高電圧バッテリ24の劣化時には、下限充電率P0や閾値充電率Pthを大きく設定することが要求される。ただし、高電圧バッテリ24の劣化前において、高電圧バッテリ24の劣化を考慮して下限充電率P0や閾値充電率Pthを設定してしまうなら、高電圧バッテリ24が劣化する以前には、EV走行が可能にもかかわらず、ハイブリッド走行モードに早期に移行してしまうこととなる。これに対し、本実施形態では、高電圧バッテリ24の劣化が進行することで下限充電率P0や閾値充電率Pthを上昇させるため、EV走行が可能な距離を極力延ばすことができる。図8(a)に本実施形態における高電圧バッテリ24のエネルギの使用可能範囲を示し、図8(b)に、比較例として、高電圧バッテリ24の劣化前において、高電圧バッテリ24の劣化を考慮して下限充電率P0や閾値充電率Pthを設定する場合を示す。なお、図8の棒グラフでは、劣化後のものの長さが短くなっているが、これは、劣化にともなって満充電時の電気エネルギ量が減少することに対応している。
【0084】
図9に、本実施形態にかかる閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを表示する手法を示す。この表示情報は、例えば車両のインストルメントパネルに表示すればよい。ここで、図9(a)は、高電圧バッテリ24の劣化前(新品)を示し、図9(b)は、高電圧バッテリ24の劣化後を示す。
【0085】
図示されるように、本実施形態では、SOCがゼロとなる点と閾値充電率Pthとの関係を示すことなく、閾値充電率Pthを基準点として、これに対する現在充電率Pxの上回り度合いを1次元の情報(上回り度合いと対応付けられた長さ情報)として表示する。このようにSOCがゼロとなる点を表示しないのは、SOCがゼロとなる点がユーザにとって特に有益な情報ではないからである。これにより、「EV走行がどれだけ可能か」というユーザにとって真に必要な情報に焦点を当てることができる。
【0086】
ここで、図9(b)においては、図9(a)におけるよりもSOCが「0〜100%」となる領域を小さく記載しているが、これは、高電圧バッテリ24の劣化に伴って満充電電荷量Ah0が小さくなるためである。ただし、表示情報としては、閾値充電率Pthから高電圧バッテリ24の満充電となる点(図中、Full)までを、劣化の有無にかかわらず同一に設定している。この場合、閾値充電率Pthから現在充電率Pxまでの表示上の距離が同一であっても、高電圧バッテリ24の劣化の有無に応じてエネルギ量が相違することとなる。そこで本実施形態では、このエネルギ量に関する情報であるエネルギ余裕量Whxを、所定の走行条件における走行可能距離情報として併せ表示するようにしている。ここで、所定の走行条件としては、例えば路面抵抗や路面勾配を所定に想定しつつ一定速度で走行する条件とすればよい。なお、この際、路面勾配はゼロと想定してもよい。
【0087】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0088】
(1)EV走行が可能なSOCの下限値である閾値充電率Pthを、高電圧バッテリ24の劣化が進行するほど上昇させた。これにより、初めから劣化を想定して閾値充電率Pthを設定する場合と比較して、EV走行が可能な距離を極力延ばすことができる。
【0089】
(2)電池セルCjのSOCとして複数通りの値のそれぞれについて高電圧バッテリ24を放電させた場合の電池セルCjの端子電圧をシミュレートすることで下限充電率P0を算出した。これにより、電池セルCjのSOCが下限充電率P0や閾値充電率Pthに達する以前に、下限充電率P0や閾値充電率Pthを適切に設定することができる。
【0090】
(3)モータジェネレータ14の動力によってエンジン12を起動させるためにモータジェネレータ14に供給することが要求される電力に基づき、下限充電率P0を設定した。これにより、エンジン12の動力を利用して車両を走行させることができる状態を維持することが可能となる。
【0091】
(4)高電圧バッテリ24の温度として想定される最低温度Tminに基づき下限充電率P0を算出した。これにより、端子電圧が最も低下する条件においても下限電圧Vminを下回ることなくエンジン12を起動させることができる。
【0092】
(5)下限充電率P0よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として閾値充電率Pthを設定した。これにより、SOCが減少した場合に、エンジン12の動力を利用して高電圧バッテリ24を充電しつつ車両を良好に走行させることが可能な状態でハイブリッド走行モードに切り替えることができる。
【0093】
(6)高電圧バッテリ24を充放電した際のSOCの変化量と充放電電流総量とに基づき満充電電荷量Ah0を算出した。これにより、高電圧バッテリ24の劣化にかかわらず、閾値充電率Pthを、下限充電率P0よりも所定のエネルギ量だけ多いSOCとして高精度に算出することができる。
【0094】
(7)閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを外部に表示した。これにより、後どれくらいEV走行を行うことができるかについてユーザが把握することができる。
【0095】
(8)SOCがゼロとなる点と閾値充電率Pthとの関係を表示することなく、閾値充電率Pthを基準点として現在充電率Pxを表示した。これにより、ユーザにとって必要な情報に焦点を当てて表示することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材に対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
本実施形態では、車載主機としてモータジェネレータ16のみを備える電気自動車に、状態定量化装置を適用する。
【0098】
図11に、本実施形態にかかる下限充電率P0の算出処理の手順を示す。なお、図11において、図5に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0099】
この一連の処理では、ステップS602の後、ステップS604aにおいて、高電圧バッテリ24の現在の温度Tにおいて、規定時間Y2に渡って要求出力X2(kW)の電力を出力した場合の電圧降下量Δ(P)を算出する。ここで、規定時間Y2に渡って要求出力X2(kW)の電力を出力することは、車両の加速性能を満たすために高電圧バッテリ24に要求される電力である。すなわち、要求出力X2および規定時間Y2は、車両の仕様上、出しうる最大トルクとその継続時間とによって定まる。
【0100】
なお、本実施形態では、閾値充電率Pthを算出する処理は行なわず、またエネルギ余裕量Whxは、下限充電率P0から現在充電率Pxまでのエネルギ量とする。
【0101】
図12に、本実施形態にかかる表示情報を示す。図示されるように、本実施形態では、SOCがゼロとなる点との関係を示すことなく、下限充電率P0を基準点として現在充電率Pxの上回り度合いを示す関係情報が1次元的な情報(上回り度合いと対応付けられた長さ情報)として視覚表示されている。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0102】
「算出手段について」
高電圧バッテリ24のSOC(開放端電圧OCV)を仮設定しつつ高電圧バッテリ24を放電させた場合にシミュレート対象となる高電圧バッテリ24の状態としては、要求出力を規定時間に渡って出力した場合の端子電圧に限らない。例えば、端子電圧を規定時間にわたって下限電圧Vminとするように放電させた場合の出力であってもよい。この場合、要求出力となる際のSOCが下限充電率P0となる。
【0103】
算出手段としては、SOC(開放端電圧OCV)を複数通りに仮設定しつつ高電圧バッテリ24を放電させた場合の高電圧バッテリ24の状態をシミュレートするものに限らない。例えば、要求出力を規定時間継続することによるSOC(開放端電圧OCV)の変化や分極による影響を無視することで、下記の2次方程式の解として下限充電率P0に対応する開放端電圧V0を推定してもよい。
【0104】
V0−IR=Vmin
Vmin・I=X1
より
Vmin・Vmin−Vmin・V0+R・X1=0
なお、分極の影響を無視するなら、下限電圧Vminの設定に際して、高い側に十分なマージンを設けることが望ましい。
【0105】
高電圧バッテリ24の劣化状態を示すパラメータとしては、内部抵抗Rに限らない。例えば特開平2008−42960号公報に記載されているように、高電圧バッテリ24の電気化学反応を推定可能なモデルを用いて劣化を定量化してもよい。この場合であっても、例えば、要求出力を規定時間継続する際の高電圧バッテリ24の端子電圧を予測できるなら、下限充電率P0を算出することができる。
【0106】
「算出手段の入力パラメータとしての温度Tついて」
上記第1の実施形態においては、最低温度Tmin(固定値)を用いたが、これに限らない。例えば地域や季節に関する情報に基づき可変設定されるものであってもよい。すなわち、下限充電率P0を算出するために用いる温度情報として固定値を用いる場合、想定される限りの最低温度を用いることが望ましいこととなる一方、この場合、実際にはありえない低温を想定するおそれもある。このため、地域や季節に関する情報に基づき想定される最低温度を可変設定することで、下限充電率P0をより小さい値とすることが可能となる。
【0107】
上記第2の実施形態では、下限充電率P0を算出するために現在の温度Tを用いたがこれに限らない。例えば、車両の移動方向や目的地に応じて現在の温度Tを補正してもよい。これは、所定時間(例えば1,2時間)走行後に気温が大きく変化する地域に到着する場合等において有効である。
【0108】
「算出手段の入力パラメータとしての要求出力について」
車両の走行のために要求される出力としては、上記各実施形態において例示したものに限らない。例えばエンジン12を起動させる専用のスタータであって且つ高電圧バッテリ24を電源とするものを備え、これによって要求される出力に設定してもよい。なお、この場合、スタータ起動時に突入電流が流れることで高電圧バッテリ24の電圧降下が最大となると考えられることから、出力についての要求を設定しつつもその継続時間についての設定を削除してもよい。
【0109】
車両の駆動力を回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための出力としては、上記第2の実施形態において例示したものに限らない。例えば、車両が規定時間に渡って基準となる路面を定速走行するうえで要求される出力であってもよい。この場合には、規定時間内におけるSOCの低下を十分に考慮することが望ましい。もっとも、下限充電率P0を端子電圧が下限電圧Vmin以上となるSOCの最小値に設定する上では、継続時間の長短にかかわらず出力が大きい方が下限充電率P0の設定に寄与しやすい。このため、加速性能等、車両の走行性能を保証するうえで車両に要求される出力の最大値に設定することが望ましい。
【0110】
「上昇手段について」
上昇手段としては、算出手段を備えるものに限らない。例えば、劣化以前に下限充電率P0を予め与えておき、この下限充電率P0の初期値を、劣化による内部抵抗Rの変化に基づき補正するものであってもよい。この場合、内部抵抗Rが増加するほど下限充電率P0を増加補正すればよい。もっとも、劣化を示す2次電池のパラメータとしては、内部抵抗Rにも限らない。
【0111】
さらに、劣化を示すパラメータとしては、2次電池をモデル化するものに限らない。例えば高電圧バッテリ24の出力の絶対値の時間積分値等であってもよい。また、第2の実施形態のように、車載主機として単一のモータジェネレータ16のみを備える場合、モータジェネレータ16の出力の絶対値の時間積分値や、走行距離等であってもよい。ここで、走行距離を用いる場合、走行距離が長いほど劣化が進んだとして下限充電率P0を上昇させればよい。
【0112】
「SOCの閾値について」
SOCの閾値としては、下限値に限らず、上限値であってもよい。すなわち、高電圧バッテリ24の充電時には、高電圧バッテリ24の端子電圧がOCVよりも上昇する。そして、端子電圧には、通常、上限電圧Vmaxが設定されている。このため、上限電圧Vmaxを上回らないとの条件下、回生運転時にモータジェネレータ16に要求される制動力を生成可能なSOCの上限値を設定することも有効である。
【0113】
「通知手段について」
上記発明では、下限充電率P0や閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを表示すべく、1次元的な視覚情報に加えて、走行可能距離情報を併せ表示したが、これに限らず、エネルギ余裕量Whx自体を併せ表示してもよい。
【0114】
上記実施形態では、下限充電率P0や閾値充電率Pthと満充電電荷量Ah0とを表示の両境界とし、表示の両境界間のエネルギ量が下限充電率P0や満充電電荷量Ah0等の変化に応じて変化してもこれら境界間の距離を固定したが、これに限らない。例えば、上記両境界を明示しつつ両境界間の表示間隔を、満充電電荷量Ah0の減少や閾値充電率Pthや下限充電率P0の上昇に伴って縮小させてもよい。
【0115】
また、満充電電荷量Ah0となる点を示すことなく、下限充電率P0や満充電電荷量Ah0の変化にかかわらず、表示単位としての単位エネルギ量を同一としてもよい。
【0116】
また、下限充電率P0や閾値充電率Pthからの実際のSOCの上回り度合いの表示手法としては、下限充電率P0や閾値充電率Pthと実際のSOCとの乖離度合いを幾何学的に表現するものに限らない。例えば走行可能距離情報のみを表示するものであってもよい。
【0117】
上記第1の実施形態において、下限充電率P0を併せ表示してもよい。この場合、現在のSOCが下限充電率P0と閾値充電率Pthとの間のどの辺りにいるかをユーザが把握可能なため、HV走行によってエンジン12の稼動状況等についての理解が得られるメリットがある。
【0118】
上記第2の実施形態において、下限充電率P0を表示の境界とすることなく、これよりも1メモリ程度小さい充電率まで表示可能としてもよい。
【0119】
さらに、SOCがゼロとなる点からSOCが100%となる点までを幾何学的に表示するとともに、現在のSOCと、下限充電率P0や閾値充電率Pthとを併せ表示するものであってもよい。
【0120】
なお、通知手段としては、視覚情報を利用するものに限らず、例えば聴覚情報を利用するものであってもよい。この際、例えば現在のSOCが下限充電率P0や閾値充電率Pthとなった場合にその旨を通知するものであってもよい。
【0121】
「閾値充電率Pthの設定について」
閾値充電率Pthの設定としては、上記第1の実施形態において例示したものに限らない。例えば、モータジェネレータ16のみで所定の加速性能を満たすことができるSOCの下限値であってもよい。
【0122】
「制限手段について」
制限手段としては、上記第1の実施形態において例示したように、閾値充電率Pthとなることで、モータジェネレータ16のみによる走行を禁止するものに限らない。例えば上記第2の実施形態において、下限充電率P0となることで、制御装置40によってトルク制限等を行なってもよい。
【0123】
「状態定量化対象としての2次電池について」
上記実施形態のように、各電池セルC1〜Cnのそれぞれ毎に各別に状態を定量化するものに限らない。例えば、高電圧バッテリ24を構成する一部の電池セルであって且つ互いに隣接する複数の電池セル毎に、各別に状態を定量化してよい。もっとも、高電圧バッテリ24について、内部抵抗等を定量化してもよい。この場合、内部抵抗R等は平均的な値となるため、各電池セルC1〜Cnの端子電圧が下限電圧Vminを下回らないようにするうえでは、高電圧バッテリ24の端子電圧の下限値を下限電圧Vminに電池セル数nを乗算した値よりも大きくなるようにマージンを設けることが望ましい。
【0124】
「ハイブリッド車について」
ハイブリッド車としては、パラレルシリーズハイブリッド車に限らない。例えばパラレルハイブリッド車であっても、モータジェネレータ16単独で車両走行が可能であるなら、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
また、外部の電源装置によって高電圧バッテリ24を充電可能なものに限らない。さらに、モータジェネレータ16単独で車両走行が可能であるものにも限らない。例えば、モータジェネレータ16の回転軸が駆動輪とエンジン12との間に機械的に連結されるパラレルハイブリッド車であって、モータジェネレータ16がエンジン12のアシスト手段としてのみ用いられるものであってもよい。この場合であっても、発進とともにモータジェネレータ16によってエンジン12を起動させるものであるなら、エンジン12を起動させることのできる出力を高電圧バッテリ24から出力した際の端子電圧が下限電圧Vmin以上となる下限充電率P0をSOCの許容下限値としてモータジェネレータ16の制御量を制御することは有効である。
【0126】
「そのほか」
・関係設定手段としては、OCVとSOCとの関係をマップ化したものに限らず、これらの関係を関係式にて表現したものであってもよい。
【0127】
・2次電池としては、リチウムイオン2次電池に限らず、例えばニッケル水素2次電池等であってもよい。
【0128】
・閾値充電率Pthを算出する際に用いる満充電電荷量Ah0としては、上記第1の実施形態において例示したものに限らず、例えばデフォルト値であってもよい。また、これに代えて、2次電池の使用時間や充放電量の絶対値の時間積分値を2次電池の劣化を示すパラメータとして、劣化が進行するほど満充電電荷量Ah0の初期値を低減補正したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
12…エンジン、14,16…モータジェネレータ、24…高電圧バッテリ、40…制御装置、C1〜Cn…電池セル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載主機として回転機と、回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両にあっては、2次電池の充電率を適切に管理することが必要となる。そこで従来、例えば下記特許文献1に見られるように、予め定められた2次電池の下限電圧に基づき、所定時間放電した後の2次電池の端子電圧が下限電圧となる最大放電可能電流量を算出し、これと下限電圧とに基づき、最大放電可能電力を推定するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−147487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば車載主機として回転機のみを備える電気自動車や、車載主機として内燃機関を備えつつも2次電池を外部の商用電源等によって充電可能なプラグインハイブリッド車が実用化されつつある。そして、こうした車両にあっては、車両の走行のために回転機に要求される電力を2次電池によって供給可能であるか否かを把握すべく2次電池の状態をいかに定量化するかが問題となることが発明者らによって見出されている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する新たな車載2次電池の状態定量化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の劣化が進行するほど上昇させる上昇手段を備えることを特徴とする。
【0008】
2次電池の劣化が進行すると、放電電力が同じでも端子電圧が低下する。また、2次電池の劣化が進行すると、放電エネルギが同じでも充電率の低下量が大きくなる。上記発明では、この点に鑑み、車両の走行のための電力を2次電池によって供給可能な2次電池の充電率の下限値を2次電池の劣化が進行するほど上昇させる。このように充電率の下限値が上昇すると、開放端電圧が上昇するため、放電時の端子電圧の下限値も上昇する。また、放電によって充電率が落ち込む際のその下限値も上昇する。このため、2次電池の劣化の進行にかかわらず車両の走行のために要求される電力を供給することができる。しかも、初めから充電率の下限値を劣化に起因した上昇後の下限値に設定する場合と比較して、劣化前における2次電池の放電電力量や放電電力を増大させることもできる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の温度に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする。
【0011】
2次電池の温度が変化すると、2次電池の内部抵抗が変化することなどに起因して、放電電力が同じでも端子電圧の低下量が変化することとなる。上記発明では、この点に鑑み、車両の走行のための電力を2次電池によって供給可能な2次電池の充電率の下限値を2次電池の温度に応じて可変設定する。このため、端子電圧の低下量が大きくなる場合に充電率の下限値を上昇させることができ、これにより、開放端電圧が上昇するため、放電時の端子電圧の下限値も上昇する。このため、2次電池の温度にかかわらず車両の走行のために要求される電力を供給することができる。しかも、初めから充電率の下限値を上記低下量が最大となると想定される温度に応じて設定する場合と比較して、2次電池の放電電力量や放電電力を増大させることもできる。
【0012】
なお、上記設定手段は、2次電池の温度が低いほど下限値を上昇させる手段であってもよい。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の実際の充電率が前記下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、実際の充電率が上記下限値に達したことをユーザが把握することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記通知手段は、前記充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを外部に通知することを特徴とする。
【0016】
上記発明では、上記下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記上昇手段は、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の充電率として現在の充電率よりも小さい充電率において前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、現在の充電率よりも小さい充電率における2次電池の状態をシミュレートすることで、2次電池の挙動に問題が生じる以前に、問題が生じる手前の充電率である上記充電率の下限値を適切に算出することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の充電率として複数通りの値のそれぞれについて前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする。
【0021】
上記発明では、複数の充電率を想定したシミュレーションを実行することで、2次電池の挙動に問題が生じる手前の充電率である上記充電率の下限値をいっそう適切に算出することができる。
【0022】
請求項9記載の発明は、車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記2次電池の充電率として現在の充電率とは相違する充電率を仮設定して前記2次電池を充放電した場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで、前記車両の走行のために要求される前記2次電池の充電率の閾値を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
【0023】
2次電池の劣化が進行すると、放電電力が同じでも端子電圧が低下し、充電電力が同じでも端子電圧が上昇する。また、2次電池の劣化が進行すると、放電エネルギが同じでも充電率の低下量が大きくなり、また、充電エネルギが同じでも充電率の上昇量が大きくなる。ここで、上記発明では、現在の劣化状態において2次電池を充放電した場合の2次電池の状態をシミュレートすることで、車両の走行のための電力を2次電池によって充放電する際の2次電池の充電率の閾値を算出する。これにより、2次電池の劣化に応じて閾値を定めることができるため、2次電池の劣化の進行にかかわらず車両の走行のための電力の授受が可能となる。しかも、初めから充電率の閾値を劣化に応じた閾値に設定する場合と比較して、劣化前における2次電池の充放電可能量や電力を増大させることもできる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明において、前記閾値は、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項6〜8,10のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の放電時の許容下限電圧を設定する設定手段をさらに備え、前記算出手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給する際の前記2次電池の端子電圧が前記許容下限電圧以上となる充電率の最小値を算出することを特徴とする。
【0026】
2次電池の劣化が進むと、内部抵抗値が大きくなることなどによって、充電率と放電電力とを同一とした場合の放電時の端子電圧が低下する傾向がある。このため、許容下限電圧を設定する場合には、劣化の進行につれて充電率の下限値を上昇させることが特に重要となる。
【0027】
請求項12記載の発明は、請求項6〜8,10,11のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の内部抵抗値を所定周期で推定する推定手段を備え、前記算出手段は、前記2次電池の劣化状態を示すパラメータとしての前記2次電池の内部抵抗値を入力とし、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出することを特徴とする。
【0028】
2次電池の劣化が進むと内部抵抗値が大きくなる傾向がある。このため、内部抵抗値は、2次電池の劣化を定量化するための適切なパラメータである。特に、内部抵抗を用いるなら、2次電池の放電時の挙動を簡易にシミュレートすることもできる。
【0029】
請求項13記載の発明は、請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、前記要求される電力とは、前記車両が所定の加速性能を満たすために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする。
【0030】
車両の加速時においては回転機に供給することが要求される電力や電力量が大きくなるため、2次電池の端子電圧の低下量や充電率の減少量も大きくなりやすい。このため、加速性能を用いることで、2次電池の充電率の下限値を適切に設定することができる。
【0031】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の現在の温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする。
【0032】
2次電池の温度に応じて2次電池の内部抵抗値が変化することなどから、2次電池の温度に応じて2次電池の放電時の挙動が変化する。このため、加速性能を満たす上での充電率の下限値は温度に依存することとなる。上記発明では、この点に鑑み、現在の温度を用いて下限値を算出することで、現在の温度にとって適切な下限値を算出することができる。
【0033】
請求項15記載の発明は、請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、前記要求される電力とは、前記回転機の動力によって前記内燃機関を起動させるために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする。
【0034】
内燃機関に初期回転を付与する電子制御式の手段が回転機である場合、回転機によって内燃機関を起動させることができないなら、車両が走行できなくなるおそれがある。上記発明では、この点に鑑み、回転機によって内燃機関を起動することができる充電率の下限値を算出する。
【0035】
請求項16記載の発明は、請求項15記載の発明において、前記算出手段は、前記2次電池の温度として想定される最低温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする。
【0036】
2次電池の温度に応じて2次電池の内部抵抗値が変化することなどから、2次電池の温度に応じて2次電池の放電時の挙動が変化する。特に、温度が低いほど2次電池の挙動が問題となりやすい。上記発明では、この点に鑑み、最低温度に基づき充電率の下限値を算出することで、2次電池の温度にかかわらず回転機によって内燃機関を起動可能な下限値を算出することができる。
【0037】
請求項17記載の発明は、請求項15または16記載の発明において、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値を、前記回転機に要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として算出する手段をさらに備えることを特徴とする。
【0038】
請求項18記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記2次電池の開放端電圧と充電率との関係を定める関係設定手段と、前記2次電池の所定期間における充放電に伴う前記2次電池の充放電電荷総量を算出する手段と、前記所定期間における充放電に伴う前記2次電池の開放端電圧の変化量から前記関係設定手段によって定められる前記関係に基づき前記充電率の変化量を算出する手段と、前記充電率の変化量と前記充放電電荷総量とに基づき前記2次電池の満充電電荷量を算出する手段とを備え、前記所定のエネルギ量だけ多い充電率の算出に際して、前記満充電電荷量の算出値を用いることを特徴とする。
【0039】
満充電電荷量は、2次電池の劣化に伴って変化する一方、充電率と開放端電圧との関係は、2次電池の劣化によってはほとんど変化しない。上記発明では、この点に鑑み、満充電電荷量を算出することで、所定のエネルギ量だけ多い充電率を高精度に算出することができる。
【0040】
請求項19記載の発明は、請求項6〜8,10〜18のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の走行のために前記回転機に要求される電力を規定時間に渡り前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする。
【0041】
請求項20記載の発明は、請求項6〜8,10〜19のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の実際の充電率が前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0042】
上記発明では、実際の充電率が上記下限値に達したことをユーザが把握することができる。
【0043】
請求項21記載の発明は、請求項20記載の発明において、前記通知手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0044】
上記発明では、車両の走行のために要求される下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0045】
請求項22記載の発明は、請求項17記載の発明において、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする。
【0046】
上記発明では、車両の駆動力を回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値に対する実際の充電率の余裕度をユーザが把握することができる。
【0047】
請求項23記載の発明は、請求項5,20〜22のいずれか1項に記載の発明において、前記通知手段は、視覚情報を利用して前記通知にかかる処理を行うものであって且つ、前記下限値の表示に際し、該下限値と前記充電率がゼロとなる点との関係情報を表示することなく、前記下限値を基準点として表示することを特徴とする。
【0048】
上記発明では、充電率がゼロとなる点と下限値との関係情報を表示しないため、ユーザにとって必要な情報に焦点を当てて表示することができる。
【0049】
請求項24記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の充電率の下限値は、前記2次電池の端子電圧が放電時の許容下限電圧を下回ることなく前記回転機の動力が前記車両の走行のために要求される値を満足するためのものであることを特徴とする。
【0050】
2次電池の劣化が進むと、内部抵抗値が大きくなることなどによって、充電率と放電電力とを同一とした場合の放電時の端子電圧が低下する傾向がある。このため、許容下限電圧を設定する場合には、劣化の進行につれて充電率の下限値を上昇させることが特に重要となる。
【0051】
請求項25記載の発明は、請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両が所定の加速性能を満たすための下限値であることを特徴とする。
【0052】
車両の加速時においては回転機に供給することが要求される電力や電力量が大きくなるため、2次電池の端子電圧の低下量や充電率の減少量も大きくなりやすい。このため、加速性能を用いることで、2次電池の充電率の下限値を適切に設定することができる。
【0053】
請求項26記載の発明は、請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の発明において、前記2次電池の充電率が前記下限値となることで前記車両の走行を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0054】
請求項27記載の発明は、請求項26記載の発明において、前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるバッテリ状態の定量化処理に関するブロック図。
【図3】同実施形態にかかる満充電電荷量の算出処理の手順を示す流れ図。
【図4】同実施形態にかかる現在充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図5】同実施形態にかかる下限充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図6】同実施形態にかかる閾値充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態の効果を示す図。
【図8】同実施形態の効果を示す図。
【図9】同実施形態にかかるバッテリ状態の表示手法を示す図。
【図10】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図11】同実施形態にかかる下限充電率の算出処理の手順を示す流れ図。
【図12】同実施形態にかかるバッテリ状態の表示手法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかる車載2次電池の状態定量化装置を、プラグインハイブリッド車に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0057】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。
【0058】
図示されるように、本実施形態にかかるハイブリッド車は、パラレルシリーズハイブリッド車である。すなわち、動力分割装置10は、遊星歯車機構を備えて構成されており、内燃機関(エンジン12)、モータジェネレータ14、ならびにモータジェネレータ16および駆動輪18の動力を分割する。詳しくは、遊星歯車機構のリングギアRには、モータジェネレータ16および駆動輪18が機械的に連結されており、サンギアSには、モータジェネレータ14が機械的に連結されており、キャリアCには、モータジェネレータ14が機械的に連結されている。
【0059】
モータジェネレータ14は、インバータ20を介して高電圧バッテリ24に接続されており、モータジェネレータ16は、インバータ22を介して高電圧バッテリ24に接続されている。ここで、高電圧バッテリ24は、リチウムイオン2次電池である。また、高電圧バッテリ24は、例えば百V以上の高電圧を有するものである。特に本実施形態では、高電圧バッテリ24として、複数の電池セルC1〜Cnの直列接続体である組電池を想定している。
【0060】
高電圧バッテリ24は、充電器26に接続されている。充電器26には、プラグ28が接続可能とされており、これにより、高電圧バッテリ24は、車両の外部の商用電源等の電源装置によって充電が可能となっている。
【0061】
また、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iは、電流センサ30によって検出され、高電圧バッテリ24の電圧は、電圧センサ32によって検出され、高電圧バッテリ24の温度Tは、温度センサ34によって検出される。ここで、高電圧バッテリ24の電圧は、実際には、組電池を構成する複数の電池セルC1〜Cnのうちの1の電池セル毎のセル電圧Vcが検出される。
【0062】
制御装置40は、充電器26を操作して高電圧バッテリ24の状態を制御したり、インバータ20,22を操作して、モータジェネレータ14,16の制御量を制御したりする。また、制御装置40は、上記各種センサの検出値等に基づき、高電圧バッテリ24の状態を定量化する処理を行う。本実施形態では、電池セルCj(j=1〜n)の等価回路モデルを用いて状態を定量化する。この等価回路モデルとしては、例えば上記特許文献1に見られるように、起電力を生じる電源および抵抗体の直列接続体とキャパシタとの並列接続体に抵抗体が直列接続された構成とすればよい。ちなみに、以下の記載における電池セルCjの内部抵抗とは、上記並列接続体に直列接続される抵抗体のことである。
【0063】
図2に、上記定量化処理に関するブロック図を示す。
【0064】
内部抵抗検出部S100は、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iと、セル電圧Vcとに基づき、電池セルCjの内部抵抗Rを算出する。これは、例えば、インバータ20や充電器26を停止した際等において、高電圧バッテリ24の充放電電流量Iの絶対値が漸減していく際の充放電電流量Iとセル電圧Vcとの複数の検出値に基づき、重回帰分析等によって求めることができる。こうして検出された最新の内部抵抗Rは、高電圧バッテリ24の温度Tと現在の充電率(満充電電荷量に対する電荷量の百分率:SOC)との情報に関連付けて記憶される。この具体的な記憶手法は、現在のSOC(現在充電率Px)と温度Tとによって分割された領域毎に、内部抵抗Rの値を記憶することとしてもよいし、また、温度Tおよび現在充電率Pxと内部抵抗Rとを関係付ける関係式を、最新の内部抵抗Rの検出結果に基づき補正することで行なってもよい。なお、内部抵抗Rは、例えば車両の走行距離が規定距離となる都度や、所定時間が経過する都度等、所定周期で行なえばよい。
【0065】
開放端電圧推定部S200では、セル電圧Vcと、内部抵抗Rと、充放電電流量Iとに基づき、電池セルCjの開放端電圧(以下、OCV)を算出する。ここでは、セル電圧Vcが、OCVと、内部抵抗Rによる電圧降下IRとの和であることを利用する。ただし、実際には、高電圧バッテリ24の出力を変更した際には、過渡的な現象としてセル電圧Vcが分極電圧の影響を受けることを考慮することが望ましい。
【0066】
電流積算部S300では、都度の充放電電流量Iを積算する処理を行う。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0067】
満充電電荷量算出部S400では、OCVが変化した際の充放電電流総量に基づき、電池セルCjの満充電電荷量Ah0を算出する。詳しくは、SOCが第1充電率PAから第2充電率PBまで変化するまでの高電圧バッテリ24の充放電電流の時間積分値を、「(PA−PB)%/100」にて除算することで、満充電電荷量Ah0を算出する。この処理は、電池セルCjの満充電電荷量Ah0が電池セルCjの劣化によって変化することに鑑み、現在の電池セルCjの満充電電荷量Ah0を高精度に定量化するためのものである。ここでは、電池セルCjの劣化にかかわらず、OCVとSOCとの関係がほとんど変化しないことを利用している。すなわち、この場合、OCVの変化からSOCの変化「PA−PB」を高精度に算出することができるため、この変化に際しての充放電電流総量に基づき、満充電電荷量Ah0を高精度に算出することができる。
【0068】
図3に、満充電電荷量Ah0の算出処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0069】
この一連の処理では、まずステップS402において、Ah0算出フラグFが「1」であるか否かを判断する。ここで、Ah0算出フラグFが「1」の場合には、満充電電荷量Ah0の算出処理中であることを示し、Ah0算出フラグFが「0」の場合には、満充電電荷量Ah0の算出処理がなされていないことを示す。そしてステップS402において否定判断される場合、ステップS404において、現在充電率Pxが第1充電率PAであるか否かを判断する。この処理は、満充電電荷量Ah0を算出する処理を開始するタイミングであるか否かを判断するためのものである。そしてステップS404において肯定判断される場合、ステップS406において、Ah0算出フラグFを「1」とする。
【0070】
そしてステップS402において肯定判断される場合や、ステップS406の処理が完了する場合、ステップS408において、Ah0算出フラグFが「1」となってから現在までの充放電電流量Iの積算値を更新する。ここで積算値は、先の図2の電流積算部S300によって算出されるものである。続くステップS410では、現在充電率Pxが第2充電率PB(<PA)であるか否かを判断する。この処理は、満充電電荷量Ah0を算出する準備が整ったか否かを判断するためのものである。そしてステップS410において肯定判断される場合、ステップS412において、Ah0算出フラグFを「0」として且つ、満充電電荷量Ah0を更新する。
【0071】
なお、ステップS404,S410において否定判断される場合や、ステップS412の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0072】
先の図2に示す充電率算出部S500では、電池セルCjの現在のSOC(現在充電率Px)を算出する。図4に、SOCの算出処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0073】
この一連の処理では、まずステップS502において、先の図2の電流積算部S300による電流の積算値Inを取得する。ここでの積算値Inは、この図4に示す一連の処理の周期当たりの積算値である。続くステップS504では、前回算出された現在充電率Px(n−1)に、ステップS502によって取得された積算値Inを「Ah0/100」で除算した値を加算することで、今回の現在充電率Px(n)を算出する。続くステップS506では、開放端電圧推定部S200によって推定されたOCVを取得する。そして、ステップS508では、OCVとSOCとの関係に基づき、電池セルCjのSOC(SOCv)を算出する。ここでは、SOCとOCVとの関係を定めたマップを用いればよい。そして、ステップS510では、現在充電率Px(n)が、OCVに基づき算出されたSOCvよりも所定量ΔSOC以上大きいか否かを判断し、また、ステップS512では、現在充電率Px(n)が、OCVに基づき算出されたSOCvよりも所定量ΔSOC以上小さいか否かを判断する。これらの処理は、充放電電流量Iの積算値に基づき算出されたSOCを補正する必要があるか否かを判断するためのものである。すなわち、一般に、充放電電流量Iの積算値に基づき算出されるSOCには誤差が生じやすいことに鑑み、OCVに基づき算出されたSOCvに基づき、その値を評価する。そして、ステップS510において肯定判断される場合には、ステップS514において、現在充電率Px(n)を、規定量ΔPだけ低減補正し、ステップS512において肯定判断される場合には、ステップS516において、現在充電率Px(n)を、規定量ΔPだけ増大補正する。
【0074】
なお、ステップS514,S516の処理が完了する場合や、ステップS512において否定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0075】
先の図2に示す下限充電率算出部S600は、高電圧バッテリ24の温度としてとり得ると想定される最低温度Tminにある状況下、モータジェネレータ14によってエンジン12を起動させる場合に電池セルCjの電圧が下限電圧Vminとなるときの電池セルCjの充電率(下限充電率P0)を算出する。これは、高電圧バッテリ24の温度としてとり得ると想定される最低温度Tminにある状況下、様々なSOCにて規定時間継続して放電を行なった場合の電池セルCjの端子電圧の変化をシミュレートすることで行うことができる。図5に、この処理の詳細を示す。
【0076】
この一連の処理では、まずステップS602において、充電率変数Pを「100%」に設定する。続くステップS604では、高電圧バッテリ24の電圧が最低温度Tminである状況下、高電圧バッテリ24から規定時間Y1(例えば数秒)に渡って要求される出力X1(kW)を出力する場合の端子電圧の電圧降下量ΔV(P)を推定する。ここで、電圧降下量ΔV(P)の算出には、内部抵抗検出部S100によって検出された最新の内部抵抗Rが用いられる。なお、この際の充放電電流量Iについては、充電率変数Pに対応するOCVから電圧降下量ΔV(P)=RIを減算したものに充放電電流量Iと電池セルの数nとを乗算した値が、モータジェネレータ14によって要求される出力X1となるように設定すればよい。すなわち、「X1=(OCV(P)−RI)×I×n」となるIを設定すればよい。ただし、上記規定時間Y1は、エンジン12を起動するためにモータジェネレータ14が要求出力を継続することが要求される時間に設定される。このため、上記シミュレートに際しては、規定時間放電を継続することによるSOCの仮設定値からの変化や高電圧バッテリ24の過渡的な挙動等を考慮することが望ましい。なお、上記要求出力や規定時間は、車両が停止しており、モータジェネレータ14,16のみならずエンジン12も停止している状況下、モータジェネレータ14を駆動することでエンジン12に初期回転を付与することでエンジン12が自立運転可能となるために要求されるものである。
【0077】
続くステップS606では、OCV(P)から電圧降下量ΔV(P)を減算することで、要求される出力X1での放電に際しての端子電圧V(P)を算出する。続くステップS608では、充電率変数Pを、規定量ΔPだけ低減補正する。そして、ステップS610では、充電率変数Pがゼロよりも小さいか否かを判断する。この処理は、SOCの全ての領域において端子電圧の降下に関するシミュレーションが完了したか否かを判断するためのものである。そしてステップS610において否定判断される場合には、ステップS604に戻る一方、肯定判断される場合には、端子電圧V(P)が下限電圧Vminとなる際の充電率変数Pを、下限充電率P0に特定する。
【0078】
なお、上記ステップS612の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0079】
先の図2に示す閾値充電率算出部S700は、車両の駆動力をモータジェネレータ16単独で生成する走行モード(EV走行モード)からエンジン12の動力をも用いる走行モード(ハイブリッド走行モード)へと切り替えるための充電率の閾値(閾値充電率Pth)を算出する。これは、下限充電率P0よりもエネルギ量が所定量Zだけ大きくなる充電率として算出される。ここで、所定量Zは、ハイブリッド走行モードに切り替えることで、下限充電率P0を下回ることなく車両を良好に走行させることができると想定されるエネルギ量に設定される。図6に、この処理の手順を示す。この処理は、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0080】
この一連の処理では、まずステップS702において、充電率変数Pを下限充電率P0に設定する。続くステップS704では、下限充電率P0から充電率変数Pまでの間のエネルギ量Whthを算出する。本実施形態では、規定量ΔPずつ充電率変数Pを変化させる関係上、前回のエネルギ量Whthに、充電率変数PからP+ΔPまでの間のエネルギ量を加算する処理を行う。ここで、充電率変数Pが規定量ΔPだけ変化する間の放電電流量が「Ah0・ΔP/100」であって且つ、この間のOCVの平均値が「OCV(P)」であることから、加算されるエネルギ量は、「Ah0・ΔP・OCV(P)/100」となる。続くステップS706では、下限充電率P0から充電率変数Pまでのエネルギ量Whthが所定量Z以上であるか否かを判断する。そして、ステップS706において否定判断される場合には、ステップS708において、充電率変数Pを規定量ΔPだけ増大補正する。これに対し、ステップS710において肯定判断される場合、ステップS710において、そのときの充電率変数P(より正確には、P+ΔP)を、閾値充電率Pthとする。
【0081】
先の図2に示すエネルギ量推定部S800は、閾値充電率Pthから現在充電率Pxまでのエネルギ余裕量Whxを算出する。この処理は、先の図6の処理において、充電率変数Pの初期値を閾値充電率Pthとして且つ、充電率変数Pが現在充電率Pxよりも規定量ΔPだけ小さい値までステップS704の処理を行うことで算出することができる。
【0082】
表示情報算出部S900では、現在充電率Pxと、閾値充電率Pthと、エネルギ余裕量Whxとに基づき、ユーザに通知する表示情報を算出して出力する。この表示情報は、閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを示すものである。ここで、表示対象となる閾値充電率Pthや現在充電率Pxとしては、高電圧バッテリ24を構成する電池セルのうち内部抵抗Rが最も大きい電池セルに対応するものとしたり、満充電電荷量Ah0が最も小さい電池セルに対応するものとしたりしてもよい。ただし、実際には、端子電圧が下限電圧Vminに最も早期に到達する電池セルが、満充電電荷量Ah0が最も小さいものや内部抵抗Rが最も大きいものとなるとは限らない。このため、各電池セルの満充電電荷量Ah0と内部抵抗Rとに基づき、高電圧バッテリ24が放電を継続することでSOCが低下していった際に端子電圧が最も早期に下限電圧Vminに達すると予測される電池セルの閾値充電率PthやSOCを表示対象とすることが望ましい。
【0083】
上記のように、閾値充電率Pthを設定することで、EV走行が可能な距離を極力長くすることができる。すなわち、高電圧バッテリ24の劣化に伴って内部抵抗が大きくなることから、図7に示すように、放電時の端子電圧は、高電圧バッテリ24が劣化することで低くなる。このため、高電圧バッテリ24の劣化時には、下限充電率P0や閾値充電率Pthを大きく設定することが要求される。ただし、高電圧バッテリ24の劣化前において、高電圧バッテリ24の劣化を考慮して下限充電率P0や閾値充電率Pthを設定してしまうなら、高電圧バッテリ24が劣化する以前には、EV走行が可能にもかかわらず、ハイブリッド走行モードに早期に移行してしまうこととなる。これに対し、本実施形態では、高電圧バッテリ24の劣化が進行することで下限充電率P0や閾値充電率Pthを上昇させるため、EV走行が可能な距離を極力延ばすことができる。図8(a)に本実施形態における高電圧バッテリ24のエネルギの使用可能範囲を示し、図8(b)に、比較例として、高電圧バッテリ24の劣化前において、高電圧バッテリ24の劣化を考慮して下限充電率P0や閾値充電率Pthを設定する場合を示す。なお、図8の棒グラフでは、劣化後のものの長さが短くなっているが、これは、劣化にともなって満充電時の電気エネルギ量が減少することに対応している。
【0084】
図9に、本実施形態にかかる閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを表示する手法を示す。この表示情報は、例えば車両のインストルメントパネルに表示すればよい。ここで、図9(a)は、高電圧バッテリ24の劣化前(新品)を示し、図9(b)は、高電圧バッテリ24の劣化後を示す。
【0085】
図示されるように、本実施形態では、SOCがゼロとなる点と閾値充電率Pthとの関係を示すことなく、閾値充電率Pthを基準点として、これに対する現在充電率Pxの上回り度合いを1次元の情報(上回り度合いと対応付けられた長さ情報)として表示する。このようにSOCがゼロとなる点を表示しないのは、SOCがゼロとなる点がユーザにとって特に有益な情報ではないからである。これにより、「EV走行がどれだけ可能か」というユーザにとって真に必要な情報に焦点を当てることができる。
【0086】
ここで、図9(b)においては、図9(a)におけるよりもSOCが「0〜100%」となる領域を小さく記載しているが、これは、高電圧バッテリ24の劣化に伴って満充電電荷量Ah0が小さくなるためである。ただし、表示情報としては、閾値充電率Pthから高電圧バッテリ24の満充電となる点(図中、Full)までを、劣化の有無にかかわらず同一に設定している。この場合、閾値充電率Pthから現在充電率Pxまでの表示上の距離が同一であっても、高電圧バッテリ24の劣化の有無に応じてエネルギ量が相違することとなる。そこで本実施形態では、このエネルギ量に関する情報であるエネルギ余裕量Whxを、所定の走行条件における走行可能距離情報として併せ表示するようにしている。ここで、所定の走行条件としては、例えば路面抵抗や路面勾配を所定に想定しつつ一定速度で走行する条件とすればよい。なお、この際、路面勾配はゼロと想定してもよい。
【0087】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0088】
(1)EV走行が可能なSOCの下限値である閾値充電率Pthを、高電圧バッテリ24の劣化が進行するほど上昇させた。これにより、初めから劣化を想定して閾値充電率Pthを設定する場合と比較して、EV走行が可能な距離を極力延ばすことができる。
【0089】
(2)電池セルCjのSOCとして複数通りの値のそれぞれについて高電圧バッテリ24を放電させた場合の電池セルCjの端子電圧をシミュレートすることで下限充電率P0を算出した。これにより、電池セルCjのSOCが下限充電率P0や閾値充電率Pthに達する以前に、下限充電率P0や閾値充電率Pthを適切に設定することができる。
【0090】
(3)モータジェネレータ14の動力によってエンジン12を起動させるためにモータジェネレータ14に供給することが要求される電力に基づき、下限充電率P0を設定した。これにより、エンジン12の動力を利用して車両を走行させることができる状態を維持することが可能となる。
【0091】
(4)高電圧バッテリ24の温度として想定される最低温度Tminに基づき下限充電率P0を算出した。これにより、端子電圧が最も低下する条件においても下限電圧Vminを下回ることなくエンジン12を起動させることができる。
【0092】
(5)下限充電率P0よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として閾値充電率Pthを設定した。これにより、SOCが減少した場合に、エンジン12の動力を利用して高電圧バッテリ24を充電しつつ車両を良好に走行させることが可能な状態でハイブリッド走行モードに切り替えることができる。
【0093】
(6)高電圧バッテリ24を充放電した際のSOCの変化量と充放電電流総量とに基づき満充電電荷量Ah0を算出した。これにより、高電圧バッテリ24の劣化にかかわらず、閾値充電率Pthを、下限充電率P0よりも所定のエネルギ量だけ多いSOCとして高精度に算出することができる。
【0094】
(7)閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを外部に表示した。これにより、後どれくらいEV走行を行うことができるかについてユーザが把握することができる。
【0095】
(8)SOCがゼロとなる点と閾値充電率Pthとの関係を表示することなく、閾値充電率Pthを基準点として現在充電率Pxを表示した。これにより、ユーザにとって必要な情報に焦点を当てて表示することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図10に、本実施形態にかかるシステム構成を示す。なお、図10において、先の図1に示した部材に対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
本実施形態では、車載主機としてモータジェネレータ16のみを備える電気自動車に、状態定量化装置を適用する。
【0098】
図11に、本実施形態にかかる下限充電率P0の算出処理の手順を示す。なお、図11において、図5に示した処理に対応するものについては、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0099】
この一連の処理では、ステップS602の後、ステップS604aにおいて、高電圧バッテリ24の現在の温度Tにおいて、規定時間Y2に渡って要求出力X2(kW)の電力を出力した場合の電圧降下量Δ(P)を算出する。ここで、規定時間Y2に渡って要求出力X2(kW)の電力を出力することは、車両の加速性能を満たすために高電圧バッテリ24に要求される電力である。すなわち、要求出力X2および規定時間Y2は、車両の仕様上、出しうる最大トルクとその継続時間とによって定まる。
【0100】
なお、本実施形態では、閾値充電率Pthを算出する処理は行なわず、またエネルギ余裕量Whxは、下限充電率P0から現在充電率Pxまでのエネルギ量とする。
【0101】
図12に、本実施形態にかかる表示情報を示す。図示されるように、本実施形態では、SOCがゼロとなる点との関係を示すことなく、下限充電率P0を基準点として現在充電率Pxの上回り度合いを示す関係情報が1次元的な情報(上回り度合いと対応付けられた長さ情報)として視覚表示されている。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0102】
「算出手段について」
高電圧バッテリ24のSOC(開放端電圧OCV)を仮設定しつつ高電圧バッテリ24を放電させた場合にシミュレート対象となる高電圧バッテリ24の状態としては、要求出力を規定時間に渡って出力した場合の端子電圧に限らない。例えば、端子電圧を規定時間にわたって下限電圧Vminとするように放電させた場合の出力であってもよい。この場合、要求出力となる際のSOCが下限充電率P0となる。
【0103】
算出手段としては、SOC(開放端電圧OCV)を複数通りに仮設定しつつ高電圧バッテリ24を放電させた場合の高電圧バッテリ24の状態をシミュレートするものに限らない。例えば、要求出力を規定時間継続することによるSOC(開放端電圧OCV)の変化や分極による影響を無視することで、下記の2次方程式の解として下限充電率P0に対応する開放端電圧V0を推定してもよい。
【0104】
V0−IR=Vmin
Vmin・I=X1
より
Vmin・Vmin−Vmin・V0+R・X1=0
なお、分極の影響を無視するなら、下限電圧Vminの設定に際して、高い側に十分なマージンを設けることが望ましい。
【0105】
高電圧バッテリ24の劣化状態を示すパラメータとしては、内部抵抗Rに限らない。例えば特開平2008−42960号公報に記載されているように、高電圧バッテリ24の電気化学反応を推定可能なモデルを用いて劣化を定量化してもよい。この場合であっても、例えば、要求出力を規定時間継続する際の高電圧バッテリ24の端子電圧を予測できるなら、下限充電率P0を算出することができる。
【0106】
「算出手段の入力パラメータとしての温度Tついて」
上記第1の実施形態においては、最低温度Tmin(固定値)を用いたが、これに限らない。例えば地域や季節に関する情報に基づき可変設定されるものであってもよい。すなわち、下限充電率P0を算出するために用いる温度情報として固定値を用いる場合、想定される限りの最低温度を用いることが望ましいこととなる一方、この場合、実際にはありえない低温を想定するおそれもある。このため、地域や季節に関する情報に基づき想定される最低温度を可変設定することで、下限充電率P0をより小さい値とすることが可能となる。
【0107】
上記第2の実施形態では、下限充電率P0を算出するために現在の温度Tを用いたがこれに限らない。例えば、車両の移動方向や目的地に応じて現在の温度Tを補正してもよい。これは、所定時間(例えば1,2時間)走行後に気温が大きく変化する地域に到着する場合等において有効である。
【0108】
「算出手段の入力パラメータとしての要求出力について」
車両の走行のために要求される出力としては、上記各実施形態において例示したものに限らない。例えばエンジン12を起動させる専用のスタータであって且つ高電圧バッテリ24を電源とするものを備え、これによって要求される出力に設定してもよい。なお、この場合、スタータ起動時に突入電流が流れることで高電圧バッテリ24の電圧降下が最大となると考えられることから、出力についての要求を設定しつつもその継続時間についての設定を削除してもよい。
【0109】
車両の駆動力を回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための出力としては、上記第2の実施形態において例示したものに限らない。例えば、車両が規定時間に渡って基準となる路面を定速走行するうえで要求される出力であってもよい。この場合には、規定時間内におけるSOCの低下を十分に考慮することが望ましい。もっとも、下限充電率P0を端子電圧が下限電圧Vmin以上となるSOCの最小値に設定する上では、継続時間の長短にかかわらず出力が大きい方が下限充電率P0の設定に寄与しやすい。このため、加速性能等、車両の走行性能を保証するうえで車両に要求される出力の最大値に設定することが望ましい。
【0110】
「上昇手段について」
上昇手段としては、算出手段を備えるものに限らない。例えば、劣化以前に下限充電率P0を予め与えておき、この下限充電率P0の初期値を、劣化による内部抵抗Rの変化に基づき補正するものであってもよい。この場合、内部抵抗Rが増加するほど下限充電率P0を増加補正すればよい。もっとも、劣化を示す2次電池のパラメータとしては、内部抵抗Rにも限らない。
【0111】
さらに、劣化を示すパラメータとしては、2次電池をモデル化するものに限らない。例えば高電圧バッテリ24の出力の絶対値の時間積分値等であってもよい。また、第2の実施形態のように、車載主機として単一のモータジェネレータ16のみを備える場合、モータジェネレータ16の出力の絶対値の時間積分値や、走行距離等であってもよい。ここで、走行距離を用いる場合、走行距離が長いほど劣化が進んだとして下限充電率P0を上昇させればよい。
【0112】
「SOCの閾値について」
SOCの閾値としては、下限値に限らず、上限値であってもよい。すなわち、高電圧バッテリ24の充電時には、高電圧バッテリ24の端子電圧がOCVよりも上昇する。そして、端子電圧には、通常、上限電圧Vmaxが設定されている。このため、上限電圧Vmaxを上回らないとの条件下、回生運転時にモータジェネレータ16に要求される制動力を生成可能なSOCの上限値を設定することも有効である。
【0113】
「通知手段について」
上記発明では、下限充電率P0や閾値充電率Pthに対する現在充電率Pxの上回り度合いを表示すべく、1次元的な視覚情報に加えて、走行可能距離情報を併せ表示したが、これに限らず、エネルギ余裕量Whx自体を併せ表示してもよい。
【0114】
上記実施形態では、下限充電率P0や閾値充電率Pthと満充電電荷量Ah0とを表示の両境界とし、表示の両境界間のエネルギ量が下限充電率P0や満充電電荷量Ah0等の変化に応じて変化してもこれら境界間の距離を固定したが、これに限らない。例えば、上記両境界を明示しつつ両境界間の表示間隔を、満充電電荷量Ah0の減少や閾値充電率Pthや下限充電率P0の上昇に伴って縮小させてもよい。
【0115】
また、満充電電荷量Ah0となる点を示すことなく、下限充電率P0や満充電電荷量Ah0の変化にかかわらず、表示単位としての単位エネルギ量を同一としてもよい。
【0116】
また、下限充電率P0や閾値充電率Pthからの実際のSOCの上回り度合いの表示手法としては、下限充電率P0や閾値充電率Pthと実際のSOCとの乖離度合いを幾何学的に表現するものに限らない。例えば走行可能距離情報のみを表示するものであってもよい。
【0117】
上記第1の実施形態において、下限充電率P0を併せ表示してもよい。この場合、現在のSOCが下限充電率P0と閾値充電率Pthとの間のどの辺りにいるかをユーザが把握可能なため、HV走行によってエンジン12の稼動状況等についての理解が得られるメリットがある。
【0118】
上記第2の実施形態において、下限充電率P0を表示の境界とすることなく、これよりも1メモリ程度小さい充電率まで表示可能としてもよい。
【0119】
さらに、SOCがゼロとなる点からSOCが100%となる点までを幾何学的に表示するとともに、現在のSOCと、下限充電率P0や閾値充電率Pthとを併せ表示するものであってもよい。
【0120】
なお、通知手段としては、視覚情報を利用するものに限らず、例えば聴覚情報を利用するものであってもよい。この際、例えば現在のSOCが下限充電率P0や閾値充電率Pthとなった場合にその旨を通知するものであってもよい。
【0121】
「閾値充電率Pthの設定について」
閾値充電率Pthの設定としては、上記第1の実施形態において例示したものに限らない。例えば、モータジェネレータ16のみで所定の加速性能を満たすことができるSOCの下限値であってもよい。
【0122】
「制限手段について」
制限手段としては、上記第1の実施形態において例示したように、閾値充電率Pthとなることで、モータジェネレータ16のみによる走行を禁止するものに限らない。例えば上記第2の実施形態において、下限充電率P0となることで、制御装置40によってトルク制限等を行なってもよい。
【0123】
「状態定量化対象としての2次電池について」
上記実施形態のように、各電池セルC1〜Cnのそれぞれ毎に各別に状態を定量化するものに限らない。例えば、高電圧バッテリ24を構成する一部の電池セルであって且つ互いに隣接する複数の電池セル毎に、各別に状態を定量化してよい。もっとも、高電圧バッテリ24について、内部抵抗等を定量化してもよい。この場合、内部抵抗R等は平均的な値となるため、各電池セルC1〜Cnの端子電圧が下限電圧Vminを下回らないようにするうえでは、高電圧バッテリ24の端子電圧の下限値を下限電圧Vminに電池セル数nを乗算した値よりも大きくなるようにマージンを設けることが望ましい。
【0124】
「ハイブリッド車について」
ハイブリッド車としては、パラレルシリーズハイブリッド車に限らない。例えばパラレルハイブリッド車であっても、モータジェネレータ16単独で車両走行が可能であるなら、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
また、外部の電源装置によって高電圧バッテリ24を充電可能なものに限らない。さらに、モータジェネレータ16単独で車両走行が可能であるものにも限らない。例えば、モータジェネレータ16の回転軸が駆動輪とエンジン12との間に機械的に連結されるパラレルハイブリッド車であって、モータジェネレータ16がエンジン12のアシスト手段としてのみ用いられるものであってもよい。この場合であっても、発進とともにモータジェネレータ16によってエンジン12を起動させるものであるなら、エンジン12を起動させることのできる出力を高電圧バッテリ24から出力した際の端子電圧が下限電圧Vmin以上となる下限充電率P0をSOCの許容下限値としてモータジェネレータ16の制御量を制御することは有効である。
【0126】
「そのほか」
・関係設定手段としては、OCVとSOCとの関係をマップ化したものに限らず、これらの関係を関係式にて表現したものであってもよい。
【0127】
・2次電池としては、リチウムイオン2次電池に限らず、例えばニッケル水素2次電池等であってもよい。
【0128】
・閾値充電率Pthを算出する際に用いる満充電電荷量Ah0としては、上記第1の実施形態において例示したものに限らず、例えばデフォルト値であってもよい。また、これに代えて、2次電池の使用時間や充放電量の絶対値の時間積分値を2次電池の劣化を示すパラメータとして、劣化が進行するほど満充電電荷量Ah0の初期値を低減補正したものとしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
12…エンジン、14,16…モータジェネレータ、24…高電圧バッテリ、40…制御装置、C1〜Cn…電池セル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の劣化が進行するほど上昇させる上昇手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項2】
前記充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値であることを特徴とする請求項1記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項3】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の温度に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項4】
前記2次電池の実際の充電率が前記下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを外部に通知することを特徴とする請求項4記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項6】
前記上昇手段は、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記2次電池の充電率として現在の充電率よりも小さい充電率において前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする請求項6記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記2次電池の充電率として複数通りの値のそれぞれについて前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする請求項7記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項9】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
前記2次電池の劣化状態に基づき、前記2次電池の充電率として現在の充電率とは相違する充電率を仮設定して前記2次電池を充放電した場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで、前記車両の走行のために要求される前記2次電池の充電率の閾値を算出する算出手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項10】
前記閾値は、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする請求項9記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項11】
前記2次電池の放電時の許容下限電圧を設定する設定手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給する際の前記2次電池の端子電圧が前記許容下限電圧以上となる充電率の最小値を算出することを特徴とする請求項6〜8,10のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項12】
前記2次電池の内部抵抗値を所定周期で推定する推定手段を備え、
前記算出手段は、前記2次電池の劣化状態を示すパラメータとしての前記2次電池の内部抵抗値を入力とし、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出することを特徴とする請求項6〜8,10,11のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項13】
前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、
前記要求される電力とは、前記車両が所定の加速性能を満たすために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項14】
前記算出手段は、前記2次電池の現在の温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする請求項13記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項15】
前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、
前記要求される電力とは、前記回転機の動力によって前記内燃機関を起動させるために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項16】
前記算出手段は、前記2次電池の温度として想定される最低温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする請求項15記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項17】
前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値を、前記回転機に要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として算出する手段をさらに備えることを特徴とする請求項15または16記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項18】
前記2次電池の開放端電圧と充電率との関係を定める関係設定手段と、
前記2次電池の所定期間における充放電に伴う前記2次電池の充放電電荷総量を算出する手段と、
前記所定期間における充放電に伴う前記2次電池の開放端電圧の変化量から前記関係設定手段によって定められる前記関係に基づき前記充電率の変化量を算出する手段と、
前記充電率の変化量と前記充放電電荷総量とに基づき前記2次電池の満充電電荷量を算出する手段とを備え、
前記所定のエネルギ量だけ多い充電率の算出に際して、前記満充電電荷量の算出値を用いることを特徴とする請求項17記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項19】
前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の走行のために前記回転機に要求される電力を規定時間に渡り前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする請求項6〜8,10〜18のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項20】
前記2次電池の実際の充電率が前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項6〜8,10〜19のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項21】
前記通知手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項20記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項22】
前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項17記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項23】
前記通知手段は、視覚情報を利用して前記通知にかかる処理を行うものであって且つ、前記下限値の表示に際し、該下限値と前記充電率がゼロとなる点との関係情報を表示することなく、前記下限値を基準点として表示することを特徴とする請求項5,20〜22のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項24】
前記2次電池の充電率の下限値は、前記2次電池の端子電圧が放電時の許容下限電圧を下回ることなく前記回転機の動力が前記車両の走行のために要求される値を満足するためのものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項25】
前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、
前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両が所定の加速性能を満たすための下限値であることを特徴とする請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項26】
前記2次電池の充電率が前記下限値となることで前記車両の走行を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項27】
前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、
前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値であることを特徴とする請求項26記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項1】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の劣化が進行するほど上昇させる上昇手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項2】
前記充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための下限値であることを特徴とする請求項1記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項3】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値を、前記2次電池の温度に応じて可変設定する可変手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項4】
前記2次電池の実際の充電率が前記下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを外部に通知することを特徴とする請求項4記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項6】
前記上昇手段は、前記2次電池の劣化状態に基づき、前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記2次電池の充電率として現在の充電率よりも小さい充電率において前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする請求項6記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項8】
前記算出手段は、前記2次電池の充電率として複数通りの値のそれぞれについて前記2次電池を放電させた場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで前記下限値を算出することを特徴とする請求項7記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項9】
車載主機としての回転機と、該回転機に電力を供給する2次電池とを備える車両に適用され、前記2次電池の状態を定量化する車載2次電池の状態定量化装置において、
前記2次電池の劣化状態に基づき、前記2次電池の充電率として現在の充電率とは相違する充電率を仮設定して前記2次電池を充放電した場合の前記2次電池の状態をシミュレートすることで、前記車両の走行のために要求される前記2次電池の充電率の閾値を算出する算出手段を備えることを特徴とする車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項10】
前記閾値は、車両の走行のための電力を前記2次電池によって供給可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする請求項9記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項11】
前記2次電池の放電時の許容下限電圧を設定する設定手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給する際の前記2次電池の端子電圧が前記許容下限電圧以上となる充電率の最小値を算出することを特徴とする請求項6〜8,10のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項12】
前記2次電池の内部抵抗値を所定周期で推定する推定手段を備え、
前記算出手段は、前記2次電池の劣化状態を示すパラメータとしての前記2次電池の内部抵抗値を入力とし、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値を算出することを特徴とする請求項6〜8,10,11のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項13】
前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、
前記要求される電力とは、前記車両が所定の加速性能を満たすために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項14】
前記算出手段は、前記2次電池の現在の温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする請求項13記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項15】
前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、
前記要求される電力とは、前記回転機の動力によって前記内燃機関を起動させるために前記回転機に供給することが要求される電力であることを特徴とする請求項6〜8,10〜12のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項16】
前記算出手段は、前記2次電池の温度として想定される最低温度に基づき前記下限値を算出することを特徴とする請求項15記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項17】
前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値を、前記回転機に要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値よりも所定のエネルギ量だけ多い充電率として算出する手段をさらに備えることを特徴とする請求項15または16記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項18】
前記2次電池の開放端電圧と充電率との関係を定める関係設定手段と、
前記2次電池の所定期間における充放電に伴う前記2次電池の充放電電荷総量を算出する手段と、
前記所定期間における充放電に伴う前記2次電池の開放端電圧の変化量から前記関係設定手段によって定められる前記関係に基づき前記充電率の変化量を算出する手段と、
前記充電率の変化量と前記充放電電荷総量とに基づき前記2次電池の満充電電荷量を算出する手段とを備え、
前記所定のエネルギ量だけ多い充電率の算出に際して、前記満充電電荷量の算出値を用いることを特徴とする請求項17記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項19】
前記車両の走行のために要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の走行のために前記回転機に要求される電力を規定時間に渡り前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値であることを特徴とする請求項6〜8,10〜18のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項20】
前記2次電池の実際の充電率が前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値となった場合にその旨を外部に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項6〜8,10〜19のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項21】
前記通知手段は、前記要求される電力を前記2次電池によって供給することが可能な前記2次電池の充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項20記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項22】
前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値に対する実際の充電率の上回り度合いを通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項17記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項23】
前記通知手段は、視覚情報を利用して前記通知にかかる処理を行うものであって且つ、前記下限値の表示に際し、該下限値と前記充電率がゼロとなる点との関係情報を表示することなく、前記下限値を基準点として表示することを特徴とする請求項5,20〜22のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項24】
前記2次電池の充電率の下限値は、前記2次電池の端子電圧が放電時の許容下限電圧を下回ることなく前記回転機の動力が前記車両の走行のために要求される値を満足するためのものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項25】
前記車両は、車載主機として前記回転機のみを備えるものであり、
前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両が所定の加速性能を満たすための下限値であることを特徴とする請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項26】
前記2次電池の充電率が前記下限値となることで前記車両の走行を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項1〜5または24のいずれか1項に記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【請求項27】
前記車両は、車載主機として前記回転機に加えて内燃機関を備えるものであり、
前記2次電池の充電率の下限値は、前記車両の駆動力を前記回転機単独で生成することで車両の走行性能を保証するための充電率の下限値であることを特徴とする請求項26記載の車載2次電池の状態定量化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−103131(P2012−103131A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252260(P2010−252260)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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