説明

車輌用内装部品の取付構造

【課題】リヤピラーガーニッシュその他の車輌用内装部品を車体パネルに取付けるときの車輌用内装部品の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)とクリップの挿入方向とが異なる場合でも、クリップの先端挿入部と車体パネルのクリップ嵌合穴との位置合せや、クリップのセンターリングが容易で、クリップ嵌合穴へのクリップの挿入不良を防止するのに好適な、車輌用内装部品の取付構造を提供する。
【解決手段】クリップ取付穴6は、クリップ2の先端挿入部2Aがクリップ嵌合穴3の縁部に当接する時点まで該クリップ2を保持する仮保持部61と、クリップ2の先端挿入部2Aがクリップ嵌合穴3の奥に入り込んだ時点で当該クリップ2を保持する正規保持部62と、を備え、クリップ取付穴6に取り付けてあるクリップ2は、車輌用内装部品4の回転移動時にクリップ嵌合穴3から受ける抗力で、仮保持部61から正規保持部62へスライドする構造になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネルにクリップで取り付けられるリヤピラーガーニッシュその他の車輌用内装部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌の室内側面は、図3に示すリヤピラーガーニッシュやセンタピラーガーニッシュ等の車輌用内装部品で装飾されている。これらの車輌用内装部品のうち例えばリヤピラーガーニッシュを図示しない車体パネルに取付ける際は、車体パネルにクリップでリヤピラーガーニッシュを取付けている。このようなクリップを用いた取付け構造は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の段落[0025]の記載と図3、図4を参照すると、車体パネル(9)へのリヤピラーガーニッシュ(4)の取付けは、最初に、リヤピラーガーニッシュ(4)の下部に設けられている係合部(10)を取付孔(6)に係合させることにより、車体パネル(9)に対するリヤピラーガーニッシュ(4)下部の位置合せを行う。次に、その係合部(10)を支点としてリヤピラーガーニッシュ(4)を車体パネル(9)の方向に回転移動させることにより、リヤピラーガーニッシュ(4)裏面のクリップ座(7)に取付けてあるクリップ(8)が車体パネル(9)側の図示しないクリップ嵌合穴に近づいて嵌合するようになっている。
【0004】
ところで、特許文献1のようにリヤピラーガーニッシュ(4)を車体パネル(9)の方向に回転移動させることで、リヤピラーガーニッシュ(4)裏面のクリップ(8)を車体パネル(9)の図示しないクリップ嵌合穴に挿入・嵌合させる場合には、リヤピラーガーニッシュ(4)の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)とクリップ(8)の挿入方向とが異なるため、リヤピラーガーニッシュ(4)の回転移動軌跡を考慮して、クリップ座(7)の図示しないクリップ取付穴を長穴とし、この長穴内においてクリップ(8)がスライドできるようにしている。
【0005】
しかしながら、前記のようにリヤピラーガーニッシュ(4)の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)とクリップ(8)の挿入方向とが異なる場合において、クリップ取付穴を長穴にした場合は、リヤピラーガーニッシュ(4)を車体パネル(9)に取付けるときのリヤピラーガーニッシュ(4)の回転移動時に、長穴内でクリップ(8)が移動してしまい、クリップ(8)の先端挿入部と車体パネル(9)側の図示しないクリップ嵌合穴との位置合せや、クリップ(8)のセンターリングができず、クリップ嵌合穴へのクリップ(8)の挿入不良が発生するという問題点がある。
【0006】
以上の説明において、カッコ内の符号は、特許文献1で用いられている符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−255926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、リヤピラーガーニッシュその他の車輌用内装部品を車体パネルに取付けるときの車輌用内装部品の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)とクリップの挿入方向とが異なる場合でも、クリップの先端挿入部と車体パネルのクリップ嵌合穴との位置合せや、クリップのセンターリングが容易で、クリップ嵌合穴へのクリップの挿入不良を防止するのに好適な、車輌用内装部品の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、例えば、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示されているように、車体パネル(1)にクリップ(2)で取り付けられる車輌用内装部品(4)の取付構造であって、車体パネル(1)は、クリップ(2)が嵌め込まれるクリップ嵌合穴(3)を有し、車輌用内装部品(4)は、クリップ(2)を取付けてあるクリップ取付穴(6)を有し、車体パネル(1)への車輌用内装部品(4)の取付けは、支点を中心に車輌用内装部品(4)を車体パネル(1)の方向へ回転移動させることにより、クリップ取付穴(6)に取付けてあるクリップ(2)がクリップ嵌合穴(3)に近づいて嵌め込まれるようになっており、クリップ取付穴(6)は、クリップ(2)の先端挿入部(2A)がクリップ嵌合穴(3)の縁部に当接する時点まで該クリップ(2)を保持する仮保持部(61)と、クリップ(2)の先端挿入部(2A)がクリップ嵌合穴(3)の奥に入り込んだ時点で当該クリップ(2)を保持する正規保持部(62)と、を備え、クリップ取付穴(6)に取付けてあるクリップ(2)は、車輌用内装部品(4)の回転移動時にクリップ嵌合穴(3)から受ける抗力で、仮保持部(61)から正規保持部(62)へスライドすることを特徴とする。
【0010】
前記本発明において、車輌用内装部品(4)の回転移動による車体パネル(1)への取付軌跡に沿って仮保持部(61)と正規保持部(62)が並んで設けられることにより、クリップ(2)は仮保持部(61)から正規保持部(62)へスライド可能になっているものとしてよい。
【0011】
前記本発明において、仮保持部(61)の穴径はクリップ軸部(2B)の直径と略同径であり、正規保持部(62)の穴径はクリップ軸部(2B)の直径より大径になっているものとしてもよい。
【0012】
前記本発明において、車輌用内装部品(4)は、合成樹脂からなる公知のリヤピラーガーニッシュ、フロントピラーガーニッシュ、センターピラーガーニッシュのほか、車輌の室内に取り付けられる他のパネル状の部品を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、車輌用内装部品の具体的な取付構造として、前記の通り、クリップ取付穴は、クリップの先端挿入部がクリップ嵌合穴の縁部に当接する時点まで該クリップを保持する仮保持部と、クリップの先端挿入部がクリップ嵌合穴の奥に入り込んだ時点で当該クリップを保持する正規保持部と、を備え、クリップ取付穴に取り付けてあるクリップは、車輌用内装部品の回転移動時にクリップ嵌合穴から受ける抗力で、仮保持部から正規保持部へスライドする構造を採用した。このため、車輌用内装部品を車体パネルに取付けるときの車輌用内装部品の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)とクリップの挿入方向とが異なる場合でも、クリップの先端挿入部がクリップ嵌合穴の縁部に当接する時点までは仮保持部でクリップをしっかりと保持することができ、クリップ嵌合穴の正面にクリップの先端挿入部を精度よく配置できるので、クリップの先端挿入部とクリップ嵌合穴との位置合せ(センターリング)やクリップのセンターリングが容易で、クリップ嵌合穴へのクリップの挿入不良も防止できる等の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)は車輌用内装部品を車体パネルに取付ける工程(車輌用内装部品の回転移動によりクリップの先端挿入部が車体パネルのクリップ嵌合穴の縁部に当接した時点)における車輌用内装部品及び車体パネルの断面図、図1(b)は同図(a)のAA断面矢視図。
【図2】図2(a)は車輌用内装部品を車体パネルに取付ける工程(車輌用内装部品の回転移動によりクリップの先端挿入部が車体パネルのクリップ嵌合穴の奥に入り込んだ時点)における車輌用内装部品及び車体パネルの断面図、図2(b)は同図(a)のBB断面矢視図。
【図3】車輌の室内(後部座席付近)の1点透視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
《車体パネルと車輌用内装部品の構成概要》
図1(a)を参照すると、車体パネル1は、鋼板材からなる車体骨格部材(図1の例ではリヤピラーのインナーパネル)であり、クリップ2が嵌め込まれるクリップ嵌合穴3を有している。
【0017】
車輌用内装部品4(図1(a)の例では図3のリヤピラーガーニッシュ)は、合成樹脂で形成されていて、車体パネル1に係合する係合部5と、クリップ2を取付けてあるクリップ取付穴6と、を有している。
【0018】
《係合部の詳細構成》
前記係合部5は、例えば車輌用内装部品4の下部付近に設けた図示しない係合爪からなり、かつ、その係合爪を車体パネル1の図示しない係合穴に引っ掛けることにより、車体パネル1に対する車輌用内装部品4の下部位置合せを行う機能を有している。
【0019】
《クリップの詳細構成》
クリップ取付穴6に取付けてある前記クリップ2は、合成樹脂で形成されていて、その先端挿入部2Aが車体パネル1のクリップ嵌合穴3に押し込まれて嵌合する構造になっている。図1(a)の例では、最初に、車輌用内装部品4の係合部5を車体パネル1に係合させ、次に、係合部5を支点として車輌用内装部品4を車体パネル1の方向(図1(a)の破線矢印の方向)へ回転移動させることにより、クリップ2は、車体パネル1のクリップ嵌合穴3に近づき嵌め込まれ、車輌用内装部品4は車体パネル1に取付けられた状態になる。
【0020】
クリップ取付穴6に対するクリップ2の取付構造として、図1(a)の例では、クリップ2の先端挿入部2Aから下方に突出したクリップ軸部2Bの外周面に、クリップ取付穴6より大径のフランジ20を一対形成し、これら一対のフランジ20間のクリップ軸部2Bがクリップ取付穴6に挿入されスライド可能に係合する構造を採用したが、この構造例に限定されることはなく、別の取付構造を採用してもよい。
【0021】
《クリップ取付穴の詳細構成》
図1(a)の例では、車輌用内装部品4の裏面から突出したクリップ座7を設け、このクリップ座7のフラットな座面7Aに前記クリップ取付穴6を形成しているが、クリップ座7の形状や突出の高さ等は、同例に限定されることはなく、必要に応じて適宜変更することができる。
【0022】
前記クリップ取付穴6を備えたクリップ座7は、車輌用内装部品4とは別に樹脂で形成した後、車輌用内装部品4の裏面に接着剤や溶着によって取付けてもよいし、車輌用内装部品4の樹脂成形時に同時に成形してもよい。また、必要に応じて、前記クリップ座7を樹脂以外の材料で形成することも可能である。
【0023】
図1(a)(b)に示したように、クリップ取付穴6は、これに取付けられているクリップ2の先端挿入部2Aがクリップ嵌合穴3の縁部に当接する時点まで該クリップ2を保持する仮保持部61と、図2(a)(b)に示したように、クリップ2の先端挿入部2Aがクリップ嵌合穴3の奥に入り込んだ時点で当該クリップ2を保持する正規保持部62と、を備えている。
【0024】
図1(a)の例では、先に説明した車輌用内装部品4の回転移動軌跡(取付軌跡ないし組付軌跡)(同図(a)の破線矢印で示す軌跡)に沿って同図(b)のように仮保持部61と正規保持部62が縦一列に並んで設けられることにより、当該クリップ2は、仮保持部61の位置から、両保持部61、62の境界にある突起63を乗り越えて、図2(b)のように正規保持部62の位置へスライド可能に設けられている。
【0025】
図1(b)、図2(b)に示したように、仮保持部61は、その穴径をクリップ軸部2Bの直径Dと略同径とすることにより、クリップ2をしっかり保持できるように構成してある。一方、正規保持部62は、その穴径をクリップ軸部2Bの直径Dより大径とすることにより、クリップ2を遊嵌する形態になっている。これは、車輌用内装部品4が熱によって伸縮変形したときのクリップ2に加わる応力を低減するためである。
【0026】
《車体パネルへの車輌用内装部品の取付け作業》
次に、車輌用内装部品4の下部付近に係合部5が設けられる例において、その車輌用内装部品4を車体パネル1に取り付ける作業について説明する。
【0027】
図1(a)において、車体パネル1に車輌用内装部品4を取付ける際は、車輌用内装部品4の前記係合部5を車体パネル1に係合させることにより、車体パネル1に対して車輌用内装部品4の下部を位置合せする。次に、その位置合せの部位(係合部5)を支点として車輌用内装部品4を車体パネル1の方向(同図(a)の破線矢印で示す方向)へ回転移動させる。
【0028】
このとき、車輌用内装部品4のクリップ取付穴6に取付けてある当該クリップ2は、仮保持部61でしっかりと仮保持されたまま車体パネル1のクリップ嵌合穴3の正面に向かい、図1(a)のように当該クリップ2の先端挿入部2Aがクリップ嵌合穴3の縁部に当接する。この時点まで仮保持部61によるクリップ2の仮保持は維持されている。
【0029】
従って、図1(a)の例では、車体パネル1に車輌用内装部品4を取付けるときの車輌用内装部品4の回転移動でクリップ2の保持位置が変わったり、クリップ2がガタついたりすることはない。クリップ嵌合穴3の正面にクリップ2の先端挿入部2Aを精度よく配置することができるので、クリップ2の先端挿入部2Aとクリップ嵌合穴3との位置合せや、クリップ2のセンターリングが容易で、クリップ2の挿入不良を防止することができる。
【0030】
また、前記のようにクリップ嵌合穴3の縁部に当接したクリップ2の先端挿入部2Aは、その後の車輌用内装部品4の回転移動により、図2(a)のようにクリップ嵌合穴3の奥に押し込む形態で嵌め込まれる。この際、クリップ嵌合穴3に対するクリップ2の嵌め込み方向と車輌用内装部品4の回転移動方向とが異なるため(図1(a)の例では、略90度異なる)、クリップ2は、クリップ嵌合穴3から抗力を受け、この抗力で仮保持部61の位置(仮保持位置)から正規保持部62の位置(正規保持位置)へスライドし、最終的に正規保持部62でクリップ2が保持されるようになる。
【0031】
前記正規保持部62によるクリップ2の保持位置が当該クリップ2の正規保持位置であり、このような正規保持位置にクリップ2が配置された時点で、車体パネル1に対する車輌用内装部品4の取付け作業は完了する。
【符号の説明】
【0032】
1 車体パネル
2 クリップ
2A クリップの先端挿入部
3 クリップ嵌合穴
4 車輌用内装部品
5 係合部
6 クリップ取付穴
61 仮保持部
62 正規保持部
7 クリップ座
7A クリップ座の座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネル(1)にクリップ(2)で取り付けられる車輌用内装部品(4)の取付構造であって、
車体パネル(1)は、クリップ(2)が嵌め込まれるクリップ嵌合穴(3)を有し、
車輌用内装部品(4)は、クリップ(2)を取付けてあるクリップ取付穴(6)を有し、
車体パネル(1)への車輌用内装部品(4)の取付けは、支点を中心に車輌用内装部品(4)を車体パネル(1)の方向へ回転移動させることにより、クリップ取付穴(6)に取付けてあるクリップ(2)がクリップ嵌合穴(3)に近づいて嵌め込まれるようになっており、
クリップ取付穴(6)は、クリップ(2)の先端挿入部(2A)がクリップ嵌合穴(3)の縁部に当接する時点まで該クリップ(2)を保持する仮保持部(61)と、クリップ(2)の先端挿入部(2A)がクリップ嵌合穴(3)の奥に入り込んだ時点で当該クリップ(2)を保持する正規保持部(62)と、を備え、
クリップ取付穴(6)に取付けてあるクリップ(2)は、車輌用内装部品(4)の回転移動時にクリップ嵌合穴(3)から受ける抗力で、仮保持部(61)から正規保持部(62)へスライドすること
を特徴とする車輌用内装部品の取付構造。
【請求項2】
車輌用内装部品(4)の回転移動による車体パネル(1)への取付軌跡に沿って仮保持部(61)と正規保持部(62)が並んで設けられることにより、クリップ(2)は、仮保持部(61)から正規保持部(62)へスライド可能になっていること
を特徴とする請求項1に記載の車輌用内装部品の取付構造。
【請求項3】
仮保持部(61)の穴径はクリップ軸部(2B)の直径と略同径であり、
正規保持部(62)の穴径はクリップ軸部(2B)の直径より大径になっていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の車輌用内装部品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140112(P2012−140112A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1014(P2011−1014)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】