説明

車輪に取り付けられた電子ハウジングに識別要求電磁信号を送信する方法

本発明は、車両(1)に取り付けられた中央ユニット(15)に接続されたアンテナ(11−14)により生成された識別要求電磁信号を前記車両の車輪(2−5)に取り付けられた電子ハウジング(6−9)に送信する方法に関する。本方法は、車両(1)の発進後に、複数の同一の識別要求信号(S1,....,Si, Si+1,....)を順次送信することから成り、時点Tiにおける信号Siの各送信の後に、車両(1)の変位速度Vを測定し、前記速度Vで車輪(2−5)が完全に1回転するための時間Trを計算し、Ti+1=Ti+nTr+Tθとなるように、時点Ti+1において後続の信号Si+1をトリガすることを特徴とする。ただし、ここで、nは整数≧1であり、0<Tθ<Trである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に取り付けられた中央ユニットに接続されたアンテナにより生成された識別要求電磁信号を車輪に取り付けられた電子ハウジングに送信する方法に関する。
【0002】
今日、ますます多くの自動車が、安全性のために、車輪に装着されたタイヤの圧力や温度といったパラメータの測定と測定されたパラメータの異常な変化をすべて運転者に通知する車両の各車輪に取り付けられた専用センサから成る監視システムを備えるようになっている。
【0003】
従来、これらの監視システムは車両の各車輪に取り付けられた電子ハウジングを備えており、電子ハウジングは、マイクロプロセッサと、高周波送信器(RF送信器)と、送信器により送信された信号を受信する中央ユニットから構成されており、中央ユニットはアンテナに接続された高周波受信器(RF受信器)の組み込まれた計算機から成っている。
【0004】
この種の監視システムの解決されるべき問題の1つに、センサの位置に関する情報を中央ユニットの受信器により受信された各信号に対応付けること、すなわち、車輪をこの信号のソースに対応付けることがあり、この問題は車両の全寿命を通して存続する、つまり、車輪を交換した後でさえも、あるいはもっと単純に、これら車輪の位置を入れ換えた後でさえも、この問題を気遣わなければならない。
【0005】
現在のところ、位置同定の第1の方法は、それぞれ車両の1つの車輪のすぐ近傍に配置された3つの低周波アンテナを利用し、これら3つのアンテナの各々を低周波磁場の放射により順次励起する位置同定手続きを実行することである。
【0006】
この手続きに従い、励起されたアンテナの近傍にある車輪に取り付けられたセンサは、中央ユニットに応答して、該センサの識別コードを含んだ低周波信号の中央ユニットへの送信を命令する。その結果、3つのアンテナの連続した励起により、これらアンテナの近傍にある車輪に取り付けられた3つのセンサの位置が同定され、演繹により第4のセンサの位置も同定される。
【0007】
この種の手続きの主な利点は、位置同定手続きが非常に迅速であり、車両の発進後、準瞬時的に位置が同定されるという点にある。
【0008】
その代わり、この解決手段は車両に3つのアンテナを備え付けることを必須とするため、接続ケーブルや制御増幅器などの付随するすべての負担を含めると、コスト高である。
【0009】
位置同定手続きを実行する手段の設置コストに関わるこの不利点は、車両へのアクセスと発進を許可するキーレスエントリ装置を車両に備え付ければ解決されうる。
【0010】
実際、とりわけWO特許出願第02/051654号に記載されているような解決手段は、位置同定手続きの実行を可能にするため、車両にすでに取り付けられているキーレスエントリ装置の送信アンテナを利用することから成っている。
【0011】
上記特許出願に記載されているように、この解決手段の実行は、例えば、車輪の位置同定のために送信アンテナが使用されているときには、この送信アンテナに符号化されていない信号を送信するよう命令し、車両へのアクセスを制御するという元来の目的でアンテナが使用されているときには、符号化された信号の送信を命令することから成っている。
【0012】
しかしながら、キーレスエントリ装置のアンテナは車輪の位置同定が可能となるように理想的に配置されているわけではないため、このような解決手段は重大な欠点を示す。
【0013】
実際、キーレスエントリシステムの動作を最適化するという観点から考えたアンテナの配置では、車輪が回転するときに、したがって車輪に装備された電子ハウジングが回転するときに、これらのアンテナにより送信された信号が電子ハウジングによって受信されない角度領域が形成されてしまう。
【0014】
無受信領域が存在することは図3aおよび3bから明らかである。図3aおよび3bには、車両の右前輪に取り付けられた電子ハウジングが車両の右フロントドアのハンドルに取り付けられたアンテナにより周期的に送信される電磁信号を受信した結果が示されている。図解の目的で、これらの図にはそれぞれ、車輪に取り付けられた電子ハウジングが辿った軌跡(図3a)と、相応する無受信領域(図3bのレベル0)とアンテナにより送信された電磁信号の電子ハウジングによる受信(レベル1(図3b))が、横軸に射影された形で示されている。
【0015】
これらの図から、実施されたテストの対象である電子ハウジングは、ある所定の時点においては、電子ハウジングへの識別要求信号の送信を担当するアンテナによって送信された信号が受信されない領域に位置することが明らかである。
【0016】
このことから、電子ハウジングによる識別信号の受信は不確実となり、車輪の位置を同定する手続きを完全に実行するのに必要な時間を制御すること、さらには、この手続きの成功終了さえ不可能である。
【0017】
本発明はこの欠点を解消することを目標とし、反応性と信頼性の点で非常に性能の高い送信手続きを提供することを主な課題としている。
【0018】
このために、本発明は車両に取り付けられた中央ユニットに接続されたアンテナにより生成された識別要求電磁信号を前記車両の車輪に取り付けられた電子ハウジングに送信する手続きに適用される。この送信手続きは
・車両発進後に、複数の同一の識別要求信号(S1,....,Si, Si+1,....)を順次送信することから成るものであって、
・時点Tiにおける信号Siの各送信の後に、車両の変位速度Vを測定し、前記速度Vで車輪が完全に1回転するための時間Trを計算し、Ti+1=Ti+nTr+Tθとなるように、時点Ti+1において後続の信号Si+1をトリガすることから成り、ただし、nは整数≧1であり、0<Tθ<Trであることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、電磁信号とは一般に低周波(LF)信号と高周波(RF)信号を包摂するものとして理解されることに注意されたい。
【0020】
本発明の送信方法によれば、車両の速度Vと同期した電磁信号のトリガ、特に、車輪が完全に1回転する時間よりも短い所定の期間Tθの時間幅だけ2つの送信をずらしたトリガのおかげで、無受信領域に起因する問題の解決が可能である。
【0021】
実際、このような「ずれを加えた同期」と組み合わせた方法は、連続する2つの識別要求信号間で、電子ハウジングに接続された送信アンテナに対する電子ハウジングの相対的な角度位置をずらすことにより、規則的かつ高い頻度で、電子ハウジングを受信領域内に置くことができ、その結果、位置同定方法の速やかな成功終了が可能となる。実際、信号が送信される時点を角度上でずらすことにより、電子ハウジングはより速やかに受信領域内に戻り、つねに無受信領域内にいることはない。
【0022】
さらに、このような方法は、実行されるために、車両速度から成る単一のデータのみを測定するだけでよい。つまり、このパラメータは現時点に測定され、すべての車両に取り付けられている計算機間の接続ネットワーク上で利用可能となるので、本発明による方法の実行には、現時点の車輪を位置同定する方法をソフトウェア的に適応させるだけでよい。
【0023】
最後に、本発明による送信方法は、無受信領域の問題を覆い隠すと同時に、識別要求信号の送信のために、車両に装備されているキーレスエントリ装置のアンテナを利用して車輪の迅速な位置同定を保証する。
【0024】
本発明の有利な実施形態によれば、連続する2つのずらした信号の間の各時間間隔(Ti+1−Ti)を求めるために、車両の測定された変位速度Vに依存する値Tθが使用される。ただし、ここで、Tθ=kTr、0<k<1。
【0025】
実際、ずれの間隔Tθを車両の変位速度Vと同期させるこの実施形態によれば、本発明による方法を最適化する正確な角度サンプリングが得られる。
さらに、本発明の有利な実施形態によれば、Tθ=kTr、0<k<0.005であるような値θが使用される。
【0026】
本発明の他の特徴、目的、および利点については、以下の詳細な説明と添付された図面の参照から明らかとなる。ただし、図面は非限定的な例として有利な実施形態を示したものである。これら図面のうち、
図1は、本発明による送信方法を実行する車輪位置同定装置を含んだ監視システムを備えた車両の図式的な上面図であり、
図2は、本発明による送信方法のステップを示すアルゴリズムであり、
図3a−3cは、本発明に従って実行される送信方法を図解するための3つのグラフである。
【0027】
図1には、車両1に取り付けられた本発明による送信方法を実行する監視システムが示されており、車両1は通常通りにタイヤをはめた4つの車輪、すなわち、2つの前輪2,3と2つの後輪4,5を備えている。
【0028】
通常、このような監視システムは、先ず第一に、各車輪2−5と、例えばタイヤのエンベロープ内に配置されるように車輪のリムに固定された電子ハウジング6−9とに接続されている。
【0029】
電子ハウジング6−9の各々には、例えば、タイヤの圧力および/または温度のようなパラメータの測定を目的とする専用センサが組み込まれており、これらの専用センサは前記ハウジングの識別コードを所有するマイクロプロセッサに接続されており、10のような低周波アンテナに接続されたRF送信器と結合している。
【0030】
監視システムは同様に中央計算機または中央ユニット15も含んでおり、中央ユニット15には、マイクロプロセッサが内蔵されており、また4つの電子ハウジング6−9の各々によって送信された信号を受信するためのRF受信器が組み込まれている。中央ユニット15はさらにこの受信のためにアンテナ(図示せず)に接続されている。
【0031】
通常、このような監視システムと特にその中央ユニット15は、車輪2−5に接続されたセンサにより測定されたパラメータの異常な変化をすべて運転者に通知するように設計されている。
【0032】
本発明による監視装置は同様に送信アンテナ11−14を含んでいる。送信アンテナ11−14は中央ユニット15に接続されており、一般に「キーレスエントリ装置」の名称で知られる装置のアンテナから構成されており、車両1へのアクセスと電子バッジ16の識別による車両1の発進を許可するよう適合されている。
【0033】
このようなキーレスエントリ装置によれば、これらのアンテナは4つあり、
−車両の左フロントドアのハンドルに設置された左アンテナ11、
−車両の右フロントドアのハンドルに設置された右アンテナ12、
−車両のダッシュボードの高さに設置されたフロントアンテナ13、
−車両のトランクのハンドルに設置されたリアアンテナ14から成る。
【0034】
一方、このキーレスエントリシステムの電子バッジ16は、通常、17のようなアンテナに接続された低周波(LF)受信器と高周波(RF)送信器とが組み込まれた計算機を内蔵している。
【0035】
通常、車両1の車輪2−5の位置同定のために、中央ユニット15は、前記車両の発進後に、この位置同定に使用されるアンテナ11−14のそれぞれに連続するn個の同一の識別要求電磁信号(S1,....,Si, Si+1,....)を送信させるようプログラムされている。
【0036】
図2に示されているように、これらn個の連続する信号を送信する手続きは、本発明によれば、時点Tiにおいて実行される信号Siの送信の各PIPの後に、
−車両1の変位速度Vを測定し、
−一方では、前記速度Vに対して車輪(2−5)が完全に1回転するための時間Trを計算し、他方では、同じ速度Vでこの車輪が0<θ<18°の範囲のθ°の弧を走るための時間Tθを受信領域の測定された振幅に依存して計算し、
・Ti+1=Ti+nTr+Tθとなるように、時点Ti+1において後続の電磁信号Si+1の送信のPIPをトリガすることから成る。
【0037】
したがって、このような送信方法は、電磁信号送信の"PIP"のトリガを車両速度Vと同期させ、車輪が1回転する度に、同じく速度Vに依存した所定の値Tθだけずらすことから成る。
【0038】
図3aおよび3bと併せて図3cに示されているように、該当する車輪の電子ハウジングが無受信領域(これは図3cに示されている最初の3つのPIPに相当する)内に位置しているときに電磁信号送信のPIP(図3cのT)が介入した場合、この「ずれを付加した同期」により、前記ハウジングが受信領域内に戻るとすぐに(図3cの第4のPIPにおいて)信号のトリガが行われることが保証されるので、結果として、前記ハウジングによる識別要求信号の受信とこれに応答した前記ハウジングによる識別コードの送信が保証される。
【0039】
本発明の原理は、車輪が1回転する度にθ°(車両の変位速度に依存する)だけPIP Tの送信をずらすことで、無受信領域を速やかに出ることが可能となり、PIPが残念なことに無受信領域内に位置し、ずらす動作も行われない場合のように、つねに無受信領域内に留まることがなくなるということに基づいている。
【0040】
このように、本発明による送信方法は、識別要求信号の送信のために、車両に装備されているキーレスエントリ装置のアンテナを利用して車輪の迅速な位置同定を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による送信方法を実行する車輪位置同定装置を含んだ監視システムを備えた車両の図式的な上面図である。
【図2】本発明による送信方法のステップを示すアルゴリズムである。
【図3】本発明に従って実行される送信方法を図解するための3つのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に取り付けられた中央ユニット(15)に接続されたアンテナ(11−14)により生成された識別要求電磁信号を前記車両の車輪(2−5)に取り付けられた電子ハウジング(6−9)に送信する方法であって、車両(1)の発進後に、複数の同一の識別要求信号(S1,....,Si, Si+1,....)を順次送信するようにした方法において、該方法は、時点Tiにおける信号Siの各送信の後に、・車両(1)の変位速度Vを測定し、前記速度Vで車輪(2−5)が完全に1回転するための時間Trを計算し、・Ti+1=Ti+nTr+Tθとなるように、時点Ti+1において後続の信号Si+1をトリガすることから成り、ここで、nは整数≧1であり、0<Tθ<Trである、ことを特徴とする送信方法。
【請求項2】
連続する2つのずらした信号の間の各時間間隔(Ti+1−Ti)を求めるために、車両(1)の測定された変位速度Vに依存する値Tθ、ただしTθ=kTr、0<k<1、を使用する、請求項1記載の送信方法。
【請求項3】
Tθ=kTr、0<k<0.005であるような値θを使用する、請求項2記載の送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−503706(P2009−503706A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524376(P2008−524376)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006398
【国際公開番号】WO2007/014609
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(398050939)コンティネンタル オートモーティヴ フランス (60)
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive France
【住所又は居所原語表記】1, Avenue Paul Ourliac, F−31036 Toulouse, France
【Fターム(参考)】