説明

車輪用軸受およびこれを備えたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置

【課題】密封性能の向上を図り、耐久性を高めた車輪用軸受および電気自動車におけるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】シール34が、外方部材27の端部内周に圧入される芯金36と、これに加硫接着により接合されたシール部材37からなる一体型で構成され、シール部材37が径方向外方に傾斜して延び、車輪取付フランジ28の基部28bに軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップ37aとダストリップ37bおよび軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップ37cを有すると共に、基部28bが断面円弧状の曲面に形成され、これにサイドリップ37aとダストリップ37bが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、芯金36の堰部36cを覆うように一体にモールドされたシール部材37の被覆部37dが外方部材27の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を回転自在に支承する車輪用軸受装置に関し、特に、密封性能の向上を図り、耐久性を高めた車輪用軸受およびこの車輪用軸受と減速機とモータとを組合わせた電気自動車におけるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車は、環境負荷低減への対応として、従来のエンジンを用いた駆動形態のものからモータによる駆動形態のものへと移行が検討されている。このような状況の中で、電気自動車用の車輪用軸受装置として、車輪用軸受と減速機とモータとを組合わせたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置が注目されている。インホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を電気自動車の駆動輪に用いると、各車輪を個別に回転駆動させることができるため、従来のプロペラシャフトやデファレンシャル等の大がかりな動力伝達機構が不要となり、車両の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0003】
このインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置の一例として、図13に示すようなものが知られている。このインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置は、駆動輪100のハブを回転自在に支持する車輪用軸受Aと、回転駆動源としてのモータBと、このモータBの回転を減速してハブに伝達する減速機Cと、ハブに制動力を与えるブレーキDとを、駆動輪100の中心軸O上に配置したものである。ここで、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図13の左側)、中央寄り側をインナー側(図13の右側)という。
【0004】
車輪用軸受Aは、内周に複列の外側転走面101aが形成された外方部材101と、この複列の外側転走面101aに対向する複列の内側転走面103a、104aが形成された内方部材102と、この内方部材102と外方部材101の両転走面間に転動自在に収容された複列のボール105とで構成されている。そして、外方部材101と内方部材102との間に形成される環状空間のアウター側の開口部にシール106が装着されて密封されている。
【0005】
静止側軌道輪となる外方部材101は、外周に減速機Cのアウター側のケーシング107に取り付けられる車体取付フランジ101bを一体に有し、取付ボルト(図示せず)を介して固定されている。
【0006】
回転側軌道輪となる内方部材102は、ハブ輪103と、このハブ輪103に嵌着された内輪部材104とからなる。ハブ輪103は、アウター側の端部に駆動輪100を取り付けるための車輪取付フランジ108を一体に有し、外周にアウター側の内側転走面103aが形成されている。車輪取付フランジ108駆動輪100を取り付けるハブボルト108aが植設されている。一方、内輪部材104は、外周にインナー側の内側転走面104aが形成され、拡径加締等の塑性結合によりハブ輪103と一体に固定されている。
【0007】
モータBは、筒状のケーシング109に固定されたステータ110と出力軸111に取り付けられたロータ112との間にアキシアルギャップを設けたアキシアルギャップ型のものである。出力軸111は、減速機Cのインナー側のケーシング113に一対の軸受114で片持ち支持されている。出力軸111とケーシング113間のすきまのインナー側端は、シール115で密封され、ケーシング109の底部116のインナー側の開口部はキャップ117で閉塞されている。
【0008】
減速機Cはサイクロイド減速機からなり、偏心軸118を備えた入力軸119と、ケーシング107、113間に差し渡された外ピン120と、内輪部材104に取り付けられた内ピン121と、各ピンに軸受122、123を介して回転自在に支持され、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線に形成された2枚の曲線板124、125とを備えている。入力軸119は、モータBの出力軸111とスプライン結合されて一体に回転駆動される。モータBの出力軸111が回転すると、これと一体回転する入力軸119に取り付けられた各曲線板124、125が偏心運動を行い、内方部材102の回転運動として伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
ここで、こうした従来のインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置では、車輪用軸受Aの外径寸法は、減速機Cのケーシング107やモータBのケーシング109の外径寸法より小径のため、雨天時や水溜りに入った場合に、従来の車輪用軸受に比べ、外方部材101の外径部に雨水や泥水が集まり易い構造になっている。車輪用軸受Aは、アウター側に装着されたシール106によって密封されているものの、このシール106を通して雨水等の異物が内部に侵入した場合、車輪用軸受Aは減速機CやモータBに直結しているため、軸受部だけでなく減速機CやモータBも損傷を受ける恐れがある。
【0010】
従来、密封性を高めたシール構造に関しては種々提案されているが、こうしたシール構造を備えた車輪用軸受装置の代表的な一例を図14に示す。この車輪用軸受装置は、車体側にナックルを介して非回転に取り付けられ、内周に複列の外側転走面150a、150aが形成された外方部材150を有し、この外方部材150に保持器151に円周等配位置に保持された複列のボール152、152を介してハブ輪153およびこのハブ輪153に一体的に取り付けられる図示しない等速自在継手の外側継手部材とが軸心回りに回転自在に支持されている。
【0011】
ハブ輪153の外周には外方部材150の複列の外側転走面150a、150aに対向する内側転走面153aが形成され、一端部に図示しないブレーキディスクと車輪を取り付けるための車輪取付フランジ154が径方向外方に突設されている。
【0012】
シール構造155は、車輪取付フランジ154の外方部材150側の側面154aと、外方部材150の内周面に嵌着された芯金156と、この芯金156に固定された弾性シール体157とから構成されている。この弾性シール体157は、車輪取付フランジ154の側面154aに軸方向で接触する二個のアキシアルリップ部158と、ハブ輪153の外周面に径方向で接触するラジアルリップ部159とを有している。
【0013】
また、芯金156には、車輪取付フランジ154の側面154aに沿って一部が外方部材150の外周面150bから上方に径方向外向きに突出するよう延長された円弧状(三日月状)の堰部材156aが形成され、この堰部材156aは外方部材150の側面154a側の端面に密着している。さらに、この堰部材156aは、軸心より上方のみ形成されている。
【0014】
このようなシール構造155は、例えば、車両の走行中に外方部材150に泥水がかかった場合、芯金156の一部には、外方部材150の外周面150bから上方の径方向外向きに突出するよう延長された堰部材156aが形成されているので、泥水はこの堰部材156aによって外方部材150と車輪取付フランジ154の側面154aへ流れるのが防止される。したがって、アキシアルリップ部158に外方部材150の泥水が流れて溜まることがなく、密封性を維持することができる(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−74135号公報
【特許文献2】特開2003−49852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
然しながら、こうした従来のシール構造155では、アキシアルリップ部158の所望の接触面圧を保持するため、芯金156と車輪取付フランジ154の側面154aとの間隙を狭くする必要があり、設計上の制約があった。また、芯金156の一部に径方向外向きに突出するよう延長された堰部材156aが形成されているため、組立時に位相を合せた状態で芯金156を外方部材150に嵌着しなければならず、組立工数が嵩んで低コスト化が阻害されていた。さらに、この堰部材156aが組立時に他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突して塑性変形する恐れがあった。
【0017】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、密封性能の向上を図り、耐久性を高めた車輪用軸受および電気自動車におけるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、外周に車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に前記車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受において、前記シールのうちアウター側のシールが、前記外方部材のアウター側の端部内周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向内方に屈曲して延びる内径部、および前記円筒部から径方向外方に延びる円板状の堰部を有する芯金と、この芯金の内径部に一体に加硫接着されたシール部材とからなる一体型のシールで構成され、前記シール部材が径方向外方に傾斜して延び、前記車輪取付フランジのインナー側の基部に軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップを一体に有すると共に、前記芯金の堰部またはこの堰部を覆うように一体にモールドされた前記シール部材の被覆部が前記外方部材の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されている。
【0019】
このように、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端開口部に装着されたシールを備えた車輪用軸受において、シールのうちアウター側のシールが、外方部材のアウター側の端部内周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向内方に屈曲して延びる内径部、および円筒部から径方向外方に延びる円板状の堰部を有する芯金と、この芯金の内径部に一体に加硫接着されたシール部材とからなる一体型のシールで構成され、シール部材が径方向外方に傾斜して延び、車輪取付フランジのインナー側の基部に軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップを一体に有すると共に、芯金の堰部またはこの堰部を覆うように一体にモールドされたシール部材の被覆部が外方部材の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されているので、車両の走行中に外方部材に雨水や泥水がかかっても外方部材の外周面を伝って車輪取付フランジとの間に流動するのを防止することができ、長期間に亘ってシールの密封性能の向上を図り、耐久性を高めた車輪用軸受を提供することができる。
【0020】
好ましくは、請求項2に記載の発明のように、前記芯金の堰部が他の部分よりも厚く形成されていれば、芯金の強度・剛性が高くなり、例えば、組立時に芯金の堰部が他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても塑性変形するのを確実に防止することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明のように、前記シール部材の被覆部が前記芯金の露出した表面を覆うように接合されていれば、芯金の発錆を抑え、芯金に高価なステンレス鋼鈑を使用しなくても、例えば、廉価で加工性の良い冷間圧延鋼鈑を使用することができ、低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明のように、前記芯金の堰部が前記外方部材のアウター側の端面に密着するように形成されていれば、シールの位置決めを精度良く行うことができると共に、シールと外方部材との気密性を向上させることができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明のように、前記シール部材が、前記芯金の内径部から堰部の表面に亙って接合された被覆部を有していれば、シールと外方部材の端面との接触部から泥水等が浸入するのを防止して気密性が高くなると共に、軸受内部に封入されたグリースが外部に漏洩するのを防止することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明のように、前記シール部材の被覆部が前記外方部材のアウター側の端部外周に弾性接触されていれば、シールと外方部材との気密性を一層向上させることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の発明のように、前記芯金の堰部からインナー側に延びる円筒状の鍔部が形成されていれば、芯金の強度・剛性が高くなり、組立時に他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても損傷するのを防止することができる。
【0026】
また、請求項8に記載の発明のように、前記シール部材の被覆部が前記車輪取付フランジのインナー側の側面に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスシールが構成されていれば、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明のように、前記シール部材が、前記サイドリップの内径側に径方向外方に傾斜して延びるダストリップと軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップを一体に有すると共に、前記車輪取付フランジのインナー側の基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記サイドリップとダストリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接されていれば、シールの密封性能を向上させることができる。
【0028】
また、請求項10に記載の発明のように、前記車輪取付フランジのインナー側の基部が所定の曲率半径からなる円弧面に形成され、この基部に金属環が嵌着されると共に、この金属環が前記基部の形状に対応して円弧状に形成された湾曲部と、この湾曲部から径方向外方に延び、前記基部の側面に密着される円板部と、この円板部の外径部から前記車輪取付フランジに対して軸方向に離間し、径方向外方に傾斜して延びる傘部とを備え、前記サイドリップとダストリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接されると共に、前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接されていれば、リップ摺接部の発錆を抑え、長期間に亘って所望の密封性を確保することができる。
【0029】
また、請求項11に記載の発明のように、前記基部の曲率半径よりも前記金属環の湾曲部が大きな曲率半径に設定されていれば、金属環を基部に嵌合した時に基部の円弧面に金属環の湾曲部が干渉して浮き上がるのを防止することができ、基部の側面と金属環の円板部との間にすきまが生じるのが防止されて両者が密着し、サイドリップ、ダストリップおよびグリースリップのシメシロのバラツキを抑えて安定した密封性を確保することができる。
【0030】
また、請求項12に記載の発明のように、前記金属環が、耐食性を有する鋼板からプレス加工にて形成され、素材となる鋼板の表面粗さがRa0.2〜0.6の範囲に設定されていれば、良好なシール摺接面を得ることができ、リップ摩耗を抑制すると共に、劣悪な環境で使用されても、シールの密封性能の維持を図ることができる。
【0031】
また、請求項13に記載の発明のように、前記外方部材のアウター側の端部外周に環状の凹溝が形成されていれば、車両の走行中に外方部材に雨水や泥水がかかっても外方部材の外周面を伝って車輪取付フランジとの間に流動するのを防止することができる。
【0032】
また、本発明のうち請求項14に記載の発明は、前記車輪用軸受と前記車輪の中心軸に対して同軸上に減速機とモータが配置されたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記車体取付フランジが前記減速機のケーシングに取り付けられ、前記ハブ輪に前記減速機を構成する駆動軸がトルク伝達可能に連結されると共に、前記減速機がサイクロイド減速機からなり、偏心軸を備えた入力軸と、前記減速機のケーシングと前記モータのケーシングとの間に差し渡された複数の外ピンと、前記駆動軸に取り付けられた複数の内ピンと、各ピンに転がり軸受を介して回転自在に支持された2枚の曲線板とを備え、これら曲線板が、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線に形成され、前記偏心軸に装着されると共に、前記外ピンが、転がり軸受によって回転自在に支持され、この外ピンで前記曲線板の偏心運動が外周側で案内されているので、電気自動車におけるシールの密封性能の向上を図り、耐久性を高めると共に、モータの回転が駆動軸の回転運動として大きな減速比で、滑らかで効率良く伝達されるインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を提供することができる。
【0033】
また、請求項15に記載の発明のように、前記減速機のケーシングの外周の少なくとも反路面側の180°の範囲に凹溝が形成されていれば、雨水や泥水等がケーシングの外周面を伝って外方部材に流動するのを防止することができ、密封性能の向上を図ることができる。
【0034】
また、請求項16に記載の発明のように、前記モータのケーシングの外周の少なくとも反路面側の180°の範囲に凹溝が形成されていれば、雨水や泥水等がケーシングの外周面を伝って外方部材に流動するのを防止することができ、密封性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る車輪用軸受は、外周に車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に前記車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受において、前記シールのうちアウター側のシールが、前記外方部材のアウター側の端部内周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向内方に屈曲して延びる内径部、および前記円筒部から径方向外方に延びる円板状の堰部を有する芯金と、この芯金の内径部に一体に加硫接着されたシール部材とからなる一体型のシールで構成され、前記シール部材が径方向外方に傾斜して延び、前記車輪取付フランジのインナー側の基部に軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップを一体に有すると共に、前記芯金の堰部またはこの堰部を覆うように一体にモールドされた前記シール部材の被覆部が前記外方部材の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されているので、車両の走行中に外方部材に雨水や泥水がかかっても外方部材の外周面を伝って車輪取付フランジとの間に流動するのを防止することができ、長期間に亘ってシールの密封性能の向上を図り、耐久性を高めた車輪用軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の車輪用軸受装置を示す要部拡大図である。
【図3】(a)は、図2のアウター側のシール部を示す要部拡大図、(b)は、図1の減速機のケーシング部を示す要部拡大図、(c)は、図1のモータのケーシング部を示す要部拡大図である。
【図4】図3(a)のシールの変形例を示す要部拡大図である。
【図5】図4のシールの変形例を示す要部拡大図である。
【図6】図3(a)のシールの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図7】(a)〜(e)は、図3(a)のシールの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図8】(a)〜(d)は、図7のシールの変形例を示す要部拡大図である。
【図9】(a)、(b)は、図8のシールの変形例を示す要部拡大図である。
【図10】(a)、(b)は、図8のシールの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図11】図8(b)のシールの変形例を示す要部拡大図である。
【図12】(a)〜(e)は、図8のシールの他の変形例を示す要部拡大図である。
【図13】従来のインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を示す縦断面図である。
【図14】従来のシール構造を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
車輪の中心軸に対して同軸上に車輪用軸受と減速機とモータが配置されたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置であって、前記車輪用軸受が、外周に前記減速機のケーシングに取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に前記車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間のアウター側の開口部に装着されたシールとを備えたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記シールが、前記外方部材のアウター側の端部内周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向内方に屈曲して延びる内径部、および前記円筒部から径方向外方に延びる円板状の堰部を有する芯金と、この芯金の内径部に一体に加硫接着されたシール部材とからなる一体型のシールで構成され、前記シール部材が径方向外方に傾斜して延び、前記車輪取付フランジのインナー側の基部に軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップと、このサイドリップの内径側に径方向外方に傾斜して延びるダストリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、前記車輪取付フランジのインナー側の基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記サイドリップとダストリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、前記芯金の堰部を覆うように一体にモールドされた前記シール部材の被覆部が前記外方部材の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されている。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2は、図1の車輪用軸受装置を示す要部拡大図、図3(a)は、図2のアウター側のシール部を示す要部拡大図、(b)は、図1の減速機のケーシング部を示す要部拡大図、(c)は、図1のモータのケーシング部を示す要部拡大図、図4は、図3(a)のシールの変形例を示す要部拡大図、図5は、図4のシールの変形例を示す要部拡大図、図6は、図3(a)のシールの他の変形例を示す要部拡大図、図7(a)〜(e)は、図3(a)のシールの他の変形例を示す要部拡大図、図8(a)〜(d)は、図7のシールの変形例を示す要部拡大図、図9(a)、(b)は、図8のシールの変形例を示す要部拡大図、図10(a)、(b)は、図8のシールの他の変形例を示す要部拡大図、図11は、図8(b)のシールの変形例を示す要部拡大図、図12(a)〜(e)は、図8のシールの他の変形例を示す要部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
【0039】
このインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置は、車輪(図示せず)を回転自在に支持する車輪用軸受装置1と、回転駆動源としてのモータ2と、このモータ2の回転を減速してハブに伝達する減速機3とを、車輪の中心軸O上に配置されている。
【0040】
モータ2は、筒状のモータケーシング4に固定されたステータ5と出力軸6に取り付けられたロータ7との間にラジアルギャップを設けたラジアルギャップ型のモータで構成されている。出力軸6は、モータケーシング4に対して一対の深溝玉軸受からなる転がり軸受8、8で回転自在に支持されている。モータケーシング4のインナー側の開口部はキャップ9で閉塞されている。
【0041】
減速機3はサイクロイド減速機からなり、偏心軸10を備えた入力軸11と、減速機ケーシング12とモータケーシング4との間に差し渡された複数の外ピン13と、駆動軸14に取り付けられた複数の内ピン15と、各ピン13、15に円筒ころ軸受からなる転がり軸受16、17を介して回転自在に支持された2枚の曲線板18、19とを備えている。これら曲線板18、19は、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線に形成され、偏心軸10に装着されている。外ピン13は、一対の針状ころ軸受からなる転がり軸受20、20によって回転自在に支持され、この外ピン13で各曲線板18、19の偏心運動が外周側で案内されている。
【0042】
入力軸11は、モータ2の出力軸6にスプライン(またはセレーション)11aを介して結合されて一体に回転駆動される。そして、モータ2の出力軸6が回転すると、これと一体回転する入力軸11に取り付けられた偏心軸10が回転し、この偏心軸10に係合する各曲線板18、19が偏心運動を行い、ロータ7の回転が駆動軸14の回転運動として、大きな減速比で、滑らかで効率良く伝達される。
【0043】
2枚の曲線板18、19は、互いに偏心運動が打ち消されるように180°位相をずらして入力軸11の偏心軸10に装着され、この偏心軸10の両側には、各曲線板18、19の偏心運動による振動を打ち消すように、偏心軸10の偏心方向と逆方向へ偏心させたカウンターウェイト21、21が装着されている。入力軸11は後述する駆動軸14に対して深溝玉軸受からなる転がり軸受22によって回転自在に支持されている。
【0044】
車輪用軸受装置1は駆動輪用の第3世代と称され、図2に拡大して示すように、ハブ輪23と、このハブ輪23に圧入された内輪24とからなる内方部材25と、この内方部材25に複列の転動体(ボール)26、26を介して外挿された外方部材27とを備えている。
【0045】
ハブ輪23は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ28を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面23aと、この内側転走面23aから軸方向に延びる小径段部23bが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)23cが形成されている。内輪24は、外周に他方(インナー側)の内側転走面24aが形成され、ハブ輪23の小径段部23bに所定のシメシロを介して圧入されている。また、車輪取付フランジ28の周方向等配位置にハブボルト28aが植設されている。
【0046】
ハブ輪23はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面23aをはじめ、後述するシール34のシールランド部となる車輪取付フランジ28のインナー側の基部28bから小径段部23bに亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。一方、内輪24および転動体26はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
【0047】
外方部材27は、外周に減速機ケーシング12に固定ボルト12aを介して取り付けられる車体取付フランジ27bを一体に有し、内周に内方部材25の内側転走面23a、24aに対向する複列の外側転走面27a、27aが一体に形成されている。これら両転走面27a、23aおよび27a、24a間には保持器29を介して複列の転動体26、26が転動自在に収容されている。
【0048】
外方部材27はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面27a、27aが高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
【0049】
減速機3を構成する駆動軸14は、内ピン15が装着されるフランジ部30と、このフランジ部30から軸方向に延びる円筒状の肩部31と、この肩部31から軸方向に延びる軸部32とが一体に形成されている(図1参照)。軸部32の外周にはハブ輪23のセレーション23cに噛合するセレーション(またはスプライン)32aと、この端部に雄ねじ32bが形成されている。そして、肩部31が内輪24の端面に衝合するまで駆動軸14がハブ輪23に内嵌され、雄ねじ32bに螺着された固定ナット33によって所定の締付トルクで緊締され、駆動軸14とハブ輪23がトルク伝達可能に軸方向に結合されている。
【0050】
また、外方部材27と内方部材25との間に形成される環状空間のアウター側の開口部にシール34が装着されると共に、インナー側の開口部には、駆動軸14の外周に摺接するオイルシール35が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、減速機3側から潤滑油やコンタミ等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0051】
シール34は、図3(a)に拡大して示すように、外方部材27に内嵌された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材37とからなる一体型のシールで構成されている。芯金36は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系)等、防錆能を有する鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材27のアウター側の端部内周に所定のシメシロを介して圧入された円筒部36aと、この円筒部36aから径方向内方に屈曲して延びる内径部36bと、円筒部36aから径方向外方に延び、外方部材27のアウター側の端面27cに密着する円板状の堰部36cが一体に形成されている。このように堰部36cを外方部材27のアウター側の端面27cに密着させることにより、シール34の位置決めを精度良く行うことができると共に、シール34と外方部材27との気密性を向上させることができる。
【0052】
一方、シール部材37はNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合されている。このシール部材37は、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37b、および軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37cと、芯金36の露出した表面を覆う被覆部37dを一体に有している。
【0053】
車輪取付フランジ28のインナー側の基部28bは断面が円弧状の曲面に形成され、この基部28bにサイドリップ37aとダストリップ37bが所定の軸方向シメシロをもって摺接されると共に、グリースリップ37cが所定の径方向シメシロを介して摺接されている。なお、シール部材37の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
【0054】
ここで、本実施形態では、芯金36の堰部36cが外方部材27のアウター側の端部外径よりも径方向外方に突出して形成されると共に、この外方部材27の端部外周に環状の凹溝38が形成されている。このように屈曲形成された芯金36により、強度・剛性が高くなり、組立時に芯金36の堰部36cが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても塑性変形するのを防止できると共に、また、この堰部36cと凹溝38により、車両の走行中に外方部材27に雨水や泥水がかかっても外方部材27の外周面を伝って車輪取付フランジ28との間に流動するのを防止することができ、長期間に亘って電気自動車におけるシール34の密封性能の向上を図り、耐久性を高めたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置を提供することができる。前述した凹溝38は全周に亙って形成しても良いが、少なくとも反路面側の180°の範囲に形成されていれば、外方部材27の外周面を伝ってきた雨水や泥水がこの凹溝38で溜まって下方に排出される。
【0055】
なお、ここでは、車輪用軸受装置1として第3世代構造を例示したが、これに限らず、ハブ輪に複列アンギュラ玉軸受等からなる軸受が外嵌された第1世代構造や、内方部材がハブ輪に外嵌された一対の内輪からなる第2世代構造であっても良い。また、転動体26にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず、円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。
【0056】
図3(b)は、図1の減速機3の減速機ケーシング12を示す要部拡大図である。この減速機ケーシング12は外方部材27の車体取付フランジ27bのインナー側の側面にOリング等の弾性部材39を介して当接され、外周に環状の凹溝40が形成されている。この凹溝40により、減速機ケーシング12の外周面を伝って外方部材27に流動するのを防止することができ、密封性能の向上を一層図ることができる。なお、凹溝40は全周に亙って形成しても良いが、少なくとも反路面側の180°の範囲に形成されていれば、減速機ケーシング12の外周面を伝ってきた雨水や泥水がこの凹溝40で溜まって下方に排出される。
【0057】
図3(c)は、図1のモータ2のモータケーシング4を示す要部拡大図である。このモータケーシング4の外周を覆うようにOリング等の弾性部材42を介して円筒状のカバー41が装着され、外周に環状の凹溝43が形成されている。この凹溝43により、カバー41の外周面を伝って減速機ケーシング12や外方部材27に流動するのを防止することができ、密封性能の向上を一層図ることができる。なお、凹溝43は全周に亙って形成しても良いが、少なくとも反路面側の180°の範囲に形成されていれば、カバー41の外周面を伝ってきた雨水や泥水がこの凹溝43で溜まって下方に排出される。
【0058】
図4は、図3(a)のシール34の変形例である。なお、この実施形態は、基本的には芯金36の構成の一部が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
このシール44は、外方部材27に内嵌された芯金45と、この芯金45に接合されたシール部材37とからなる一体型のシールで構成されている。芯金45は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑や防錆処理された冷間圧延鋼鈑等、防錆能を有する鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材27のアウター側の端部内周に所定のシメシロを介して圧入された円筒部36aと、この円筒部36aから径方向内方に屈曲して延びる内径部36bと、円筒部36aから径方向外方に延び、外方部材27のアウター側の端面27cに密着する円板状の堰部45aが一体に形成されている。
【0060】
本実施形態では、芯金45の堰部45aが他の部分よりも肉厚に形成されている。これにより、強度・剛性が高くなり、組立時に芯金45の堰部45aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても塑性変形するのを一層防止することができる。
【0061】
図5は、図4のシール44の変形例である。なお、この実施形態は、基本的にはシール部材37の構成の一部が異なるだけで、その他実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。このシール46は、外方部材27のアウター側の端部外周に圧入された芯金45’と、この芯金45’に接合されたシール部材47とからなる一体型のシールで構成されている。
【0062】
芯金45’の堰部45bが他の部分よりも肉厚に形成されると共に、径方向外方にさらに延長して形成されている。一方、シール部材46はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金45’に一体に接合されている。このシール部材47は、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37cを一体に有し、芯金45’の堰部45bが露出している。これにより、強度・剛性が高くなり、組立時に芯金45’の堰部45bが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても塑性変形するのを一層防止することができると共に、車両の走行中に外方部材27に雨水や泥水がかかっても外方部材27の外周面を伝って車輪取付フランジ28との間に流動するのを一層防止することができる。
【0063】
図6は、図3(a)のシール34の他の変形例である。この実施形態は、基本的にはシールのシール部材の構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0064】
シール48は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材49とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材49はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、および堰部36cを覆うように接合された被覆部49aを一体に有している。
【0065】
本実施形態では、シール部材48の被覆部49aが芯金36の堰部36cの露出部を完全に覆っているので、芯金36の堰部36cと外方部材27の端面27cとの当接部から泥水等が浸入するのを防止して気密性が高くなると共に、軸受内部に封入されたグリースが外部に漏洩するのを防止することができる。さらに、芯金36の材質に高価なステンレス鋼鈑や防錆処理された鋼鈑を使用しなくても、廉価で成形性の良好な冷間圧延鋼鈑を使用しても発錆の恐れがなく、低コスト化を図ることができる。
【0066】
図7は、図3(a)のシール34の他の変形例を示す。なお、前述した実施形態と同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0067】
(a)に示すシール50は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材51とからなる一体型のシールで構成されている。
【0068】
シール部材51はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36の堰部36cの表面を覆うように接合された被覆部51aを一体に有している。そして、この被覆部51aが外方部材27の端面27cに弾性接触している。これにより、堰部36cと外方部材27との気密性が一段と向上する。
【0069】
(b)に示すシール52は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36’と、この芯金36’に接合されたシール部材51とからなる一体型のシールで構成されている。
【0070】
シール部材51はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36’に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36’の堰部36cの表面を覆うように接合された被覆部51aを一体に有している。
【0071】
芯金36’の堰部36dは、前述した実施形態よりも短く形成され、シール部材51の被覆部51aが堰部としての役割をなしている。これにより、組立時に被覆部51aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても容易に変形して復元し、堰部の損傷を防止することができる。
【0072】
(c)に示すシール53は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36’と、この芯金36’に接合されたシール部材54とからなる一体型のシールで構成されている。
【0073】
シール部材54はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36’に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36’の堰部36dの表面を覆うように接合された被覆部54aを一体に有している。
【0074】
本実施形態では、被覆部54aは、前述した被覆部51aよりも肉厚に形成されている。これにより、組立時に被覆部54aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても弾性変形し、損傷するのを防止することができる。
【0075】
(d)に示すシール55は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36’と、この芯金36’に接合されたシール部材56とからなる一体型のシールで構成されている。
【0076】
シール部材56はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36’に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36’の堰部36dに亙って接合された被覆部56aを一体に有している。
【0077】
本実施形態では、被覆部56aは、前述した被覆部51aよりも肉厚に形成され、その一部が外方部材27の端部外周に弾性接触している。これにより、組立時に被覆部56aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても弾性変形し、損傷するのを防止することができると共に、芯金36’の堰部36dと外方部材27との気密性を向上させることができる。
【0078】
(e)に示すシール57は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材58とからなる一体型のシールで構成されている。
【0079】
シール部材58はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36の堰部36cに亙って接合された被覆部58aを一体に有している。
【0080】
本実施形態では、被覆部58aは、その一部が突出して形成され、外方部材27の端部外周に弾性接触している。これにより、組立時に被覆部58aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても弾性変形し、損傷するのを防止することができると共に、芯金36の堰部36cと外方部材27との気密性を向上させることができる。
【0081】
図8は、図7のシールの変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的には芯金の構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
(a)に示すシール59は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材54とからなる一体型のシールで構成されている。
【0083】
芯金60は、防錆処理された冷間圧延鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材27のアウター側の端部内周に所定のシメシロを介して圧入された円筒部36aと、この円筒部36aから径方向内方に屈曲して延びる内径部36bと、円筒部36aから径方向外方に延びる円板状の堰部36dと、この堰部36dからインナー側に延びる円筒状の鍔部60aとが一体に形成されている。
【0084】
本実施形態では、芯金60の堰部36dから鍔部60aが形成されているので、強度・剛性が高くなり、組立時に被覆部54aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても損傷するのを防止することができる。
【0085】
(b)に示すシール61は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材56とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材56の被覆部56aは、その一部が外方部材27の端部外周に弾性接触している。このように、一体モールドされた芯金60の堰部36dと鍔部60aにより被覆部56aの強度・剛性が高くなり、組立時に被覆部56aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても損傷するのを防止することができると共に、芯金60の堰部36dと外方部材27との気密性を向上させることができる。
【0086】
(c)に示すシール62は、外方部材27の内嵌された芯金63と、この芯金63に接合されたシール部材54とからなる一体型のシールで構成されている。芯金63は、防錆処理された冷間圧延鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材27のアウター側の端部内周に所定のシメシロを介して圧入された円筒部36aと、この円筒部36aから径方向内方に屈曲して延びる内径部36bと、円筒部36aから径方向外方に延びる円板状の堰部63aと、この堰部63aからインナー側に延びる円筒状の鍔部60aとが一体に形成されている。このように、一体モールドされた芯金63の堰部63aと鍔部60aにより被覆部54aの強度・剛性が高くなり、組立時に被覆部54aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても損傷するのを防止することができる。
【0087】
(d)に示すシール64は、外方部材27の内嵌された芯金65と、この芯金65に接合されたシール部材56とからなる一体型のシールで構成されている。芯金65は、防錆処理された冷間圧延鋼鈑からプレス加工にて形成され、外方部材27のアウター側の端部内周に所定のシメシロを介して圧入された円筒部36aと、この円筒部36aから径方向内方に屈曲して延びる内径部36bと、円筒部36aから径方向外方に延びる円板状の堰部36dと、この堰部36dからインナー側に延びる円筒状の鍔部60a、および鍔部60aからさらに径方向外方の突出する舌片65aが一体に形成されている。このように、一体モールドされた芯金63の構成により被覆部56aの強度・剛性が高くなり、組立時に被覆部56aが他の部品と干渉したり、走行中に飛石等が衝突しても損傷するのを防止することができると共に、シール64と外方部材27との気密性を向上させることができる。
【0088】
図9は、図8のシールの変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはシール部材の構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
(a)に示すシール66は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材67とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材67はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金60に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金60の堰部36dと鍔部60aの表面を覆うように接合された被覆部67aを一体に有している。
【0090】
本実施形態では、被覆部67aは肉厚に形成され、外径がインナー側に向って漸次小径となるテーパ状に形成されている。これにより、シール部材67の材料削減と共に成形性が向上する。
【0091】
(b)に示すシール68は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材69とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材69はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金60に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金60の堰部36dと鍔部60aの表面を覆うように接合された被覆部69aを一体に有している。
【0092】
本実施形態では、被覆部69aは肉厚に形成され、外径がアウター側に向って漸次小径となるテーパ状に形成されている。これにより、シール部材69の材料削減と共に成形性が向上する。
【0093】
図10は、図8のシールの他の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはシール部材のリップの構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0094】
(a)に示すシール70は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材71とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材71はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ71a、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36の堰部36cの表面を覆うように接合された被覆部51aを一体に有している。
【0095】
本実施形態では、グリースリップ71aが基部28bに対して所定の径方向すきまを介して対向され、ラビリンスシールを構成している。これにより、シール70の回転トルクが低減される。
【0096】
(b)に示すシール72は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材73とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材73はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金60に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ71a、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36の堰部36dと鍔部60aの表面を覆うように接合された被覆部56aを一体に有している。
【0097】
本実施形態では、グリースリップ71aが基部28bに対して所定の径方向すきまを介して対向され、ラビリンスシールを構成している。これにより、シール72の回転トルクが低減される。
【0098】
図11は、図8(b)のシール61の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはシール部材のリップ摺接部の構成が異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0099】
このシール61は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材56とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材56の被覆部56aは、その一部が外方部材27の端部外周に弾性接触している。
【0100】
本実施形態では、サイドリップ37a、ダストリップ37bおよびグリースリップ37cは、車輪取付フランジ28のインナー側の基部28bに嵌着された金属環74に摺接されている。この金属環74は、耐食性を有する鋼板、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成され、基部28bの形状に対応して円弧状に形成された湾曲部74aと、この湾曲部74aから径方向外方に延び、基部28bの側面28cに密着される円板部74bと、この円板部74bの外径部から車輪取付フランジ28に対して軸方向に離間し、径方向外方に傾斜して延びる傘部74cとを備えている。
【0101】
この金属環74により、リップ摺動面の発錆を防止することができると共に、素材となる鋼板の表面粗さがRa0.2〜0.6の範囲に設定されているので、良好なシール摺接面を得ることができ、リップ摩耗を抑制すると共に、劣悪な環境で使用されても、シール61の密封性能の維持を図ることができる。なお、Raは、JISの粗さ形状パラメータの一つで(JIS B0601:2001)、算術平均粗さのことで、平均線から絶対値偏差の平均値を言う。
【0102】
また、基部28bは所定の曲率半径rからなる円弧面に形成されているが、この円弧面に対応して、金属環74の湾曲部74aが基部28bの曲率半径rよりも大きな曲率半径Rに設定されている(R≧r)。これにより、金属環74を基部28bに嵌合した時に基部28bの円弧面に金属環74の湾曲部74aが干渉して浮き上がるのを防止することができ、基部28bの側面28cと金属環74の円板部74bとの間にすきまが生じるのが防止されて両者が密着し、サイドリップ37a、ダストリップ37bおよびグリースリップ37cのシメシロのバラツキを抑えて安定した密封性を確保することができる。
【0103】
図12は、図8のシールの他の変形例を示す。なお、この実施形態は、前述した実施形態と基本的にはシール部材の構成が一部異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部品や部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0104】
(a)に示すシール75は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36と、この芯金36に接合されたシール部材76とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材76はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36の堰部36cの表面を覆うように接合された被覆部76aを一体に有している。
【0105】
本実施形態では、被覆部76aは肉厚に形成され、車輪取付フランジ28のインナー側の側面28dに対して僅かな軸方向すきまeを介して対向し、ラビリンスシール77を構成している。これにより、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができる。
【0106】
(b)に示すシール78は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材79とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材79はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金60に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金60の堰部36dと鍔部60aの表面を覆うように接合された被覆部79aを一体に有している。
【0107】
本実施形態では、被覆部79aは肉厚に形成され、車輪取付フランジ28のインナー側の側面28dに対して僅かな軸方向すきまeを介して対向し、ラビリンスシール77を構成している。これにより、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができる。
【0108】
(c)に示すシール80は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材81とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材81はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金60に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金60の堰部36dと鍔部60aの表面を覆うように接合された被覆部81aを一体に有している。
【0109】
本実施形態では、被覆部81aは肉厚に形成され、外径がアウター側に向って漸次小径となるテーパ状に形成されると共に、車輪取付フランジ28のインナー側の側面28dに対して僅かな軸方向すきまeを介して対向し、ラビリンスシール77を構成している。これにより、シール部材81の成形性が向上すると共に、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができる。
【0110】
(d)に示すシール82は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金36’と、この芯金36’に接合されたシール部材83とからなる一体型のシールで構成されている。シール部材83はNBR等の合成ゴムからなり、加硫接着によって芯金36’に一体に接合され、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップ37aと、このサイドリップ37aの内径側に同じく径方向外方に傾斜して延びるダストリップ37bと、軸受内方側(インナー側)に傾斜して延びるグリースリップ37c、およびサイドリップ37aの根元部から芯金36’の堰部36dの表面を覆うように接合された被覆部83aを一体に有している。
【0111】
本実施形態では、被覆部83aは肉厚に形成され、車輪取付フランジ28のインナー側の側面28dに対して僅かな軸方向すきまeを介して対向し、ラビリンスシール77を構成している。これにより、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができる。
【0112】
(e)に示すシール78は、外方部材27のアウター側の端部内周に圧入された芯金60と、この芯金60に接合されたシール部材79とからなる一体型のシールで構成されている。そして、サイドリップ37a、ダストリップ37bおよびグリースリップ37cは、車輪取付フランジ28のインナー側の基部28bに嵌着された金属環74に摺接されている。
【0113】
本実施形態では、ラビリンスシール77により、雨水や泥水等がリップ部に侵入するのを防止し、密封性を向上させることができると共に、金属環74によりリップ摺動面の発錆を長期間に亘って防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0114】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明に係るインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置は、車輪用軸受と減速機とモータとが組み合わされ、車輪用軸受が、回転側部材となる内方部材と、固定側部材となる外方部材との間に形成される環状空間のアウター側の開口部にシールが装着された第1世代乃至第3世代構造に適用できる。
【符号の説明】
【0116】
1 車輪用軸受装置
2 モータ
3 減速機
4 モータケーシング
5 ステータ
6 出力軸
7、8、16、17、20、21 転がり軸受
9 キャップ
10 偏心軸
11 入力軸
11a スプライン
12 減速機ケーシング
13 外ピン
14 駆動軸
15 内ピン
18、19 曲線板
22 カウンターウェイト
23 ハブ輪
23a、24a 内側転走面
23b 小径段部
23c、32a セレーション
24 内輪
25 内方部材
26 転動体
27 外方部材
27a 外側転走面
27b 車体取付フランジ
27c 外方部材のアウター側の端面
28 車輪取付フランジ
28a ハブボルト
28b 車輪取付フランジのインナー側の基部
28c 基部の側面
28d 車輪取付フランジのインナー側の側面
29 保持器
30 フランジ部
31 肩部
32 軸部
32b 雄ねじ
33 固定ナット
34、44、46、48、50、52、53、55、57、59、61、62、64、66、68、70、72、75、78、80、82 アウター側のシール
35 インナー側のオイルシール
36、36’、45、45’、60、63、65 芯金
36a 円筒部
36b 内径部
36c、36d、45a、45b、63a 堰部
37、47、47、51、54、56、58、67、69、71、73、76、79、81、83 シール部材
37a サイドリップ
37b ダストリップ
37c、71a グリースリップ
37d、49a、51a、54a、56a、58a、67a、69a 被覆部
38、40、43 凹溝
39、42 弾性部材
41 カバー
60a 鍔部
65a 舌片
74 金属環
74a 湾曲部
74b 円板部
74c 傘部
77 ラビリンスシール
100 駆動輪
101 外方部材
101a 外側転走面
101b 車体取付フランジ
102 内方部材
103 ハブ輪
103a、104a 内側転走面
104 内輪部材
105 ボール
106、115 シール
107、109、113 ケーシング
108 車輪取付フランジ
108a ハブボルト
110 ステータ
111 出力軸
112 ロータ
114、122、123 軸受
116 ケーシングの底部
117 キャップ
118 偏心軸
119 出力軸
120 外ピン
121 内ピン
124、125 曲線板
150 外方部材
150a 外側転走面
150b 外周面
151 保持器
152 ボール
153 ハブ輪
153a 内側転走面
154 車輪取付フランジ
154a 車輪取付フランジの側面
155 シール構造
156 芯金
156a 堰部材
157 弾性シール体
158 アキシアルリップ部
159 ラジアルリップ部
A 車輪用軸受
B モータ
C 減速機
D ブレーキ
e 軸方向すきま
O 駆動輪の中心軸
r 基部の曲率半径
R 金属環の湾曲部の曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
この内方部材と前記外方部材の両転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端開口部に装着されたシールとを備えた車輪用軸受において、
前記シールのうちアウター側のシールが、前記外方部材のアウター側の端部内周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向内方に屈曲して延びる内径部、および前記円筒部から径方向外方に延びる円板状の堰部を有する芯金と、この芯金の内径部に一体に加硫接着されたシール部材とからなる一体型のシールで構成され、
前記シール部材が径方向外方に傾斜して延び、前記車輪取付フランジのインナー側の基部に軸方向シメシロを介して摺接されるサイドリップを一体に有すると共に、
前記芯金の堰部またはこの堰部を覆うように一体にモールドされた前記シール部材の被覆部が前記外方部材の端部の外径よりも径方向外方に突出して形成されていることを特徴とする車輪用軸受。
【請求項2】
前記芯金の堰部が他の部分よりも厚く形成されている請求項1に記載の車輪用軸受。
【請求項3】
前記シール部材の被覆部が前記芯金の露出した表面を覆うように接合されている請求項1または2に記載の車輪用軸受。
【請求項4】
前記芯金の堰部が前記外方部材のアウター側の端面に密着するように形成されている請求項1乃至3いずれかに記載された車輪用軸受。
【請求項5】
前記シール部材が、前記芯金の内径部から堰部の表面に亙って接合された被覆部を有している請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受。
【請求項6】
前記シール部材の被覆部が前記外方部材のアウター側の端部外周に弾性接触されている請求項1乃至5いずれかに記載の車輪用軸受。
【請求項7】
前記芯金の堰部からインナー側に延びる円筒状の鍔部が形成されている請求項1乃至6いずれかに記載の車輪用軸受。
【請求項8】
前記シール部材の被覆部が前記車輪取付フランジのインナー側の側面に僅かな軸方向すきまを介して対向し、ラビリンスシールが構成されている請求項1、3および請求項5乃至7いずれかに記載の車輪用軸受。
【請求項9】
前記シール部材が、前記サイドリップの内径側に径方向外方に傾斜して延びるダストリップと軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップを一体に有すると共に、前記車輪取付フランジのインナー側の基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記サイドリップとダストリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接されている請求項1に記載された車輪用軸受。
【請求項10】
前記車輪取付フランジのインナー側の基部が所定の曲率半径からなる円弧面に形成され、この基部に金属環が嵌着されると共に、この金属環が前記基部の形状に対応して円弧状に形成された湾曲部と、この湾曲部から径方向外方に延び、前記基部の側面に密着される円板部と、この円板部の外径部から前記車輪取付フランジに対して軸方向に離間し、径方向外方に傾斜して延びる傘部とを備え、前記サイドリップとダストリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接されると共に、前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接されている請求項9に記載の車輪用軸受。
【請求項11】
前記基部の曲率半径よりも前記金属環の湾曲部が大きな曲率半径に設定されている請求項10に記載の車輪用軸受。
【請求項12】
前記金属環が、耐食性を有する鋼板からプレス加工にて形成され、素材となる鋼板の表面粗さがRa0.2〜0.6の範囲に設定されている請求項10または11に記載された車輪用軸受。
【請求項13】
前記外方部材のアウター側の端部外周に環状の凹溝が形成されている請求項1に記載された車輪用軸受。
【請求項14】
前記車輪用軸受と前記車輪の中心軸に対して同軸上に減速機とモータが配置されたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置において、前記車体取付フランジが前記減速機のケーシングに取り付けられ、前記ハブ輪に前記減速機を構成する駆動軸がトルク伝達可能に連結されると共に、前記減速機がサイクロイド減速機からなり、偏心軸を備えた入力軸と、前記減速機のケーシングと前記モータのケーシングとの間に差し渡された複数の外ピンと、前記駆動軸に取り付けられた複数の内ピンと、各ピンに転がり軸受を介して回転自在に支持された2枚の曲線板とを備え、これら曲線板が、外形がなだらかな波状のトロコイド曲線に形成され、前記偏心軸に装着されると共に、前記外ピンが、転がり軸受によって回転自在に支持され、この外ピンで前記曲線板の偏心運動が外周側で案内されていていることを特徴とするインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置。
【請求項15】
前記減速機のケーシングの外周の少なくとも反路面側の180°の範囲に凹溝が形成されている請求項14に記載されたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置。
【請求項16】
前記モータのケーシングの外周の少なくとも反路面側の180°の範囲に凹溝が形成されている請求項14に記載されたインホイール型モータ内蔵車輪用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−117529(P2011−117529A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275271(P2009−275271)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】