車速パルス抜け検出方法及び装置、車載用ナビゲーションシステム及びコンピュータプログラム
【課題】車速センサを備えてなる車載用ナビゲーション装置において、車速パルス抜けの検出を高精度で行う。
【解決手段】車載用ナビゲーションシステムは、電波測位装置及び自立測位用に車速センサを備える。この車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法は、電波測位装置の電波測位データから、速度等の所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、車速パルスから、第1物理量と同一種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、これら算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【解決手段】車載用ナビゲーションシステムは、電波測位装置及び自立測位用に車速センサを備える。この車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法は、電波測位装置の電波測位データから、速度等の所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、車速パルスから、第1物理量と同一種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、これら算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速センサを含む自立測位センサの出力に基づいて測位する自立測位や、GPS(Global Positioning System)衛星などの電波測位用衛星からの測位電波に基づいて測位するGPS測位などの電波測位を用いて、車両の現在位置等を表示する車載用ナビゲーションシステムにおける車速パルス抜けを検出する方法及び装置、このような装置を含んでなる車載用ナビゲーションシステム、並びにコンピュータをこのような装置として機能させるためのコンピュータプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、車載用ナビゲーションシステムにおける測位には、大別して自立測位とGPS測位とがある。
【0003】
自立測位は、移動体に備えられた車速センサ、角速度センサ、加速度センサ等の自立測位センサにより移動体の移動方向、移動距離等を求め、これらに基づき基準地点に対する現在位置を算出するものである。特に、自立測位センサのうち、車速センサは、車軸の回転を検出して該回転に応じた車速パルスを発生するものであり、この発生される車速パルスの累積数や単位時間当たり数から走行距離や速度が算出可能なように構成されている。
【0004】
近年では、例えば特開平10−300509号公報、特開平10−115627号公報等に開示されているように、タイヤ或いはその付近に後付けした車速パルス発生源やタイヤに内包されたスチールベルトから発せられる磁界の変化を検出して車速パルスを発生する磁界検出型の車速センサも開発されている。この型のセンサによれば、車速パルス発生源がない或いは不明である外車等を含めた任意の車両においても、比較的簡単に車速パルスを発生させることが可能となる。
【0005】
他方、GPS測位は、宇宙空間に打ち上げられている複数個のGPS衛星からの測位電波をGPSレシーバで受信し、受信結果に基づいて3次元測量法又は2次元測量法により移動体の現在位置及び移動速度を算出するものである。
【0006】
最近では、例えば特開平09−297030号公報や特開平10−307036号公報に開示されているように、上述の自立測位とGPS測位の両方を行うナビゲーションシステムも開発されている。このナビゲーションシステムによれば、例えば、GPS測位が不可能或いはGPS測位では精度が得られない状況では、自立測位を主に用いたり、GPS測位を自立測位で補ったりする。逆に、GPS測位が可能或いはGPS測位で通常の精度が得られる状況では、GPS測位を主に用いたり、GPS測位を自立測位で補ったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−300509号公報
【特許文献2】特開平10−115627号公報
【特許文献3】特開平09−297030号公報
【特許文献4】特開平10−307036号公報
【特許文献5】特開2000−97713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に上述の自立測位において中心的な役割をなす車速センサについては、実際には、車両が走行しており、車速センサから車速信号たる“車速パルス”が出力されるべき時に、この車速パルスが発生されない状況(本願明細書では、「車速パルス抜け」という)が生じるという問題点がある。このような車速パルス抜けは、車速全域で感度一定の車速センサや出力一定の車速パルス発生源の製造は困難であったり、車速パルスが伝えられる配線上に電気的ノイズが発生したり、走行時における不測の振動によるセンサエラーが発生したりなど、現実には個別具体的に各種の要因が考えられる。
【0009】
特に、上述した磁界変化を検出して車速パルスを発生する車速センサにおいては、サスペンション動作やタイヤのひずみ等に応じてセンサで検出される磁界が検出精度上で無視し得ない程大きく変化するので、走行状態によっては車速パルス抜けが頻繁に生じてしまうという大きな問題点がある。
【0010】
そして、このように車速パルス抜けが生じると、車速が低くなる側に誤差が生じて該車速の精度が低下し、移動距離が短くなる側に誤差が生じて該自立測位に基づく移動距離の精度が低下する。更に、自立測位に基づく現在位置の精度も低下すると共に、GPS測位に対して自立測位に基づく補正をかけた後に最終的に得られる現在位置等の精度も低下してしまうという問題点がある。
【0011】
尚、これに対し、特開2000−97713号公報では、低速走行時に車速パルス抜けが発生しても、車速パルスに基づいて精度の高い移動距離や現在位置を算出するシステムが開示されているが、この方法中の車速パルス抜けの検出方法は、例えば一定時間間隔で車速パルスを監視し、車速パルス数>1の状態から車速パルス数=0の状態に変化したことで車速パルス抜けを検出するという非常に単純なものであり、車速パルス抜けの検出精度は概ね高いとは言えない。
【0012】
本発明は上述の課題に鑑みなされたものであり、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことを可能ならしめる車速パルス抜け検出方法及び装置、そのような装置を含んでなる車載用ナビゲーションシステム、並びにコンピュータをそのような装置として機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0014】
本発明の第1車速パルス検出方法によれば、第1算出工程により、GPSレシーバ等の電波測位装置の電波測位データから、例えばドップラー効果による周波数の変化を利用して車両の速度など所定種類の第1物理量を算出する。他方でこれと並行して、第2算出工程により、車速センサの車速パルスから、例えば単位時間当たりの車速パルス数に比例する当該車載用ナビゲーションシステムが搭載された車両の速度など、第1算出工程により算出されたのと同一種類の第2物理量を算出する。そして、検出工程により、例えばこれらの算出された二つの車両の速度相互間に著しい差があるなど、算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する。即ち、車両の重量、ブレーキの制動能力等に基づいて実世界では減速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急低下したり、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく低下した場合などに、車速パルス抜けを検出できる。従って、一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位データを用いることにより、比較的高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。よって、車速パルス抜けが生じた際に、車速センサの誤差を含んだ車速パルスを補正したり、当該車載用ナビゲーションシステムで現在位置表示等のために使用することを排除可能となる。例えば、車速パルス抜けが検出された際には、ナビゲーション用に電波測位データのみを一時的に使用したり、車速パルス抜けが検出されない過去或いは未来における車速パルス等を用いて欠落した車速パルスを補完や予測することも可能となる。
【0015】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第1算出工程は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出工程は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出工程は、前記第1算出工程により算出された速度と前記第2算出工程により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とする。
【0016】
この態様によれば、第1算出工程により測位電波に基づく速度を算出し、第2算出工程により車速パルスに基づく速度を算出し、検出工程によりこれらの速度の差が所定閾値より大きいことで、車速パルス抜けを検出する。例えば、第1算出工程により算出された速度をV1とし、第2算出工程により算出された速度をV2とし、所定閾値をVthすると、速度差V1−V2>Vthであるか否かをモニタリングし、この式が成立する場合に、車速パルス抜けであると判定する。従って、速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出可能となる。
【0017】
尚、この態様では、検出工程により、速度比V1/V2を他の所定閾値Vth'と比較することで(即ち、V1/V2>Vth'であることを検出条件として)、車速パルス抜けを検出してもよい。
【0018】
この態様では、前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出工程と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出工程とを更に備えており、前記検出工程は、前記第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件としてもよい。
【0019】
このように構成すれば、上記速度差が所定閾値を超えたことに加えて、第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを検出条件として、車速パルス抜けを検出する。即ち一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位に基づく速度が余り変化していないのに、車速パルスに基づく速度が相対的に大きく変化することで、車速パルス抜けを検出する。このように、実際の車両の速度変化は、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的に考えて概ね限定された範囲内に入るという事実を利用することで、非常に高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。
【0020】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測工程と、該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程と、該第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0021】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法によれば、計測工程により、車速パルスの間隔を計測する。そして、第1保持工程により、第n回目に計測されたパルス間隔を、少なくとも一時的に保持する。例えばパルス間隔を示すデータを、計測の度にバッファにより保持する。その後、検出工程により、この保持されたパルス間隔に対する第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出する。例えば、第1保持工程により保持されたパルス間隔をW(n)とし、第n+m回目に計測されたパルス間隔をW(n+1)とし、所定閾値Wthとすると、計測の度に或いは車速パルスが発生する度に、W(n+1)/W(n)>Wthであるか否かを判定し、この式が成立する場合に、車速パルス抜けであると判定する。従って、上述した第1車速パルス抜け検出方法と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。よって、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、例えばGPS測位精度が低い状況では、車速パルス抜けの検出精度が第1車速パルス検出方法よりも高くなる。しかも、車速パルス発生源及び車速センサが正常に動作している限り、車速パルス抜けが長期に亘って発生し続ける可能性は一般に低いことに対応して、高信頼性で車速パルス抜けを検出可能となる。
【0022】
尚、本発明の第2車速パルス抜け検出方法では、検出工程により、第1保持装置により保持されたパルス間隔W(n)と第n+m回目に計測されたパルス間隔W(n+1)との差ΔWを、他の所定閾値Wth'と比較することで(即ち、ΔW=W(n+1)−W(n)>Wth'であることを検出条件として)、車速パルス抜けを検出してもよい。
【0023】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持工程を更に備えており、前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持工程により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きいことを検出条件とする。
【0024】
この態様によれば、第1保持工程によりバッファ等に保持されたパルス間隔と、第2保持工程によりバッファ等に保持されたパルス間隔との比が所定閾値よりも大きいことを検出条件とするので、比較的確実に車速パルス抜けを検出できる。
【0025】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記閾値は、予め設定された固定値又は可変値である。
【0026】
この態様によれば、所定閾値としては、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された固定値を利用する。従って、検出工程では、固定された閾値との比較という簡単な比較工程により、車速パルス抜けを検出できる。
【0027】
また、係る所定閾値としては、速度に応じて可変である可変値を利用することもできる。
【0028】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測工程と、該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測工程と、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0029】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法によれば、計測工程により、車速パルスのパルス間隔を計測する。予測工程により、第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。例えば、第n回目に計測されたパルス間隔をW(n)とし、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔をW(n+1)とすると、車両の加減速を考慮して、W(n)−Δw<W(n+1)<W(n)+Δw 或いは、1−α<W(n+1)/W(n)<1+αなどの関係式(但し、Δw、αは、車両の加減速を考慮して予め設定される係数)により、当該W(n+1)を予測する。そして、最後に発生された車速パルス(即ち、第n回目に計測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルス)の発生時刻t0と、この予測されたパルス間隔W(n+1)とから、この予測されたパルス間隔W(n+1)の終端を規定する車速パルスの発生時刻t1を予測する。続いて、検出工程により、例えばタイマーをモニタリングしつつ、現在時刻と、予測された発生時刻t1とを比較して、この時刻t1を過ぎても、車速センサにより次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出する。よって、上述した第1車速パルス抜け検出方法と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。従って、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、例えばGPS測位精度が低い状況では、車速パルス抜けの検出精度が第1車速パルス検出方法よりも高くなる。しかも、車速パルス発生源及び車速センサが正常に動作している限り、車速パルス抜けが長期に亘って発生し続ける可能性は一般に低いことに対応して、高信頼性で車速パルス抜けを検出可能となる。
【0030】
尚この場合、好ましくは、予測工程により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の終了時点よりも前に、車速パルスが発生されないことを検出条件とする。
【0031】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程を更に備えており、前記予測工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する。
【0032】
この態様によれば、第1保持工程によりバッファ等に保持された第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測するので、比較的確実に発生時刻を予測でき、この結果に基づいて、車速パルス抜けを検出可能となる。
【0033】
尚、予測工程では、第n回目に計測されたパルス間隔に加えて、第n−1回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測することも可能である。
【0034】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記予測工程では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、前記検出工程では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測工程により計測されないことを検出条件とする。
【0035】
この態様によれば、予測工程により、第n+m回目のパルス間隔を予測する。そして、検出工程により、この予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が計測工程により計測されないことで、車速パルス抜けを検出する。このように、検出工程により、計測工程で計測されるパルス間隔と予測されたパルス間隔とを比較することによっても、ほぼ同様に車速パルス抜けを検出可能である。
【0036】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0037】
この態様によれば、車軸やタイヤの回転に対して車速パルスが正常に発生されていても路面状態やエンジン回転数等に応じて、タイヤが路面に対して空回りすることで車両の路面に対する移動距離とタイヤの回転数との関係が崩れる現象である“車速パルスの余剰発生”を、第1車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。従って、車速パルスの余剰発生が検出された場合に、当該余剰発生による誤差を含む車速パルスを補正することにより自立測位に基づく速度や移動距離の精度を高められる。或いは、当該余剰発生時の車速パルスの使用を一時的に停止して電波測位データのみを使用することにより、速度や移動距離の精度を高められる。
【0038】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0039】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第2車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0040】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0041】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第3車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0042】
尚この場合、好ましくは、予測工程により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の開始時点よりも前に、車速パルスが発生されることを検出条件とする。
【0043】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出装置と、前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出装置と、前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0044】
本発明の第1車速センサによれば、第1算出装置により、GPSレシーバ等の電波測位装置の電波測位データから、例えばドップラー効果による周波数の変化を利用して車両の速度など、所定種類の第1物理量を算出する。他方でこれと並行して、第2算出装置により、車速センサ等の車速パルスから、例えば単位時間当たりの車速パルス数に比例する当該車載用ナビゲーションシステムが搭載された車両の速度など、第1算出装置により算出されたのと同一種類の第2物理量を算出する。そして、検出装置により、例えばこれらの算出された二つの車両の速度相互間に著しい差があるなど、算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する。従って、一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位装置の電波測位データを用いることにより、比較的高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。よって、車速パルス抜けが生じた際に、車速センサの誤差を含んだ車速パルスを補正したり、当該車載用ナビゲーションシステムで現在位置表示等のために使用することを排除可能となる。
【0045】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第1算出装置は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出装置は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出装置は、前記第1算出装置により算出された速度と前記第2算出装置により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とする。
【0046】
この態様によれば、第1算出装置により測位電波に基づく速度を算出し、第2算出装置により車速パルスに基づく速度を算出し、検出装置によりこれらの速度の差が所定閾値より大きいことで、車速パルス抜けを検出する。従って、速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な装置により、車速パルス抜けを高信頼性で検出可能となる。
【0047】
この態様では、前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出装置と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出装置とを更に備えており、前記検出装置は、前記第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件としてもよい。
【0048】
このように構成すれば、上記速度差が閾値を超えたことに加えて、第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを検出条件として、車速パルス抜けを検出する。このように、実際の車両の速度変化は、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的に考えて概ね限定された範囲内に入るという事実を利用することで、非常に高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。
【0049】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測装置と、該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置と、該第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0050】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置によれば、計測装置により、車速パルスの間隔を計測する。そして、第1保持装置により、第n回目に計測されたパルス間隔を、少なくとも一時的に保持する。例えばパルス間隔を示すデータを、計測の度にバッファにより保持する。その後、検出装置により、この保持されたパルス間隔に対する第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出する。従って、上述した第1車速パルス抜け検出装置と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。
【0051】
尚、本発明の第2車速パルス抜け検出装置では、検出装置により、第1保持装置により保持されたパルス間隔と第n+m回目に計測されたパルス間隔との差を、他の所定閾値と比較することで車速パルス抜けを検出してもよい。
【0052】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持装置を更に備えており、前記検出装置は、前記第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持装置により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きいことを検出条件とする。
【0053】
この態様によれば、第1保持装置によりバッファ等に保持されたパルス間隔と、第2保持装置によりバッファ等に保持されたパルス間隔との比が所定閾値よりも大きいことを検出条件とするので、比較的確実に車速パルス抜けを検出できる。
【0054】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記閾値は、予め設定された固定値又は可変値である。
【0055】
この態様によれば、所定閾値としては、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された固定値を利用する。従って、検出装置では、固定された閾値との比較という簡単な比較装置により、車速パルス抜けを検出できる。
【0056】
また、係る所定閾値としては、速度に応じて可変である可変値を利用することもできる。
【0057】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測装置と、該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測装置と、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0058】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置によれば、計測装置により、車速パルスのパルス間隔を計測する。予測装置により、第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。そして、最後に発生された車速パルスの発生時刻と、この予測されたパルス間隔とから、この予測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。続いて、検出装置により、例えばタイマーをモニタリングしつつ、現在時刻と、予測された発生時刻とを比較して、この時刻を過ぎても、車速センサにより次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出する。よって、上述した第1車速パルス抜け検出装置と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。
【0059】
尚この場合、好ましくは、予測装置により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の終了時点よりも前に、車速パルスが発生されないことを検出条件とする。
【0060】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置を更に備えており、前記予測装置は、前記第1保持装置により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する。
【0061】
この態様によれば、第1保持装置によりバッファ等に保持された第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測するので、比較的確実に発生時刻を予測でき、この結果に基づいて、車速パルス抜けを検出可能となる。
【0062】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記予測装置では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、前記検出装置では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測装置により計測されないことを検出条件とする。
【0063】
この態様によれば、予測装置により、第n+m回目のパルス間隔を予測する。そして、検出装置により、この予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が計測装置により計測されないことで、車速パルス抜けを検出する。このように、検出装置により、計測装置で計測されるパルス間隔と予測されたパルス間隔とを比較することによっても、ほぼ同様に車速パルス抜けを検出可能である。
【0064】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0065】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第1車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0066】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0067】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第2車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0068】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0069】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第3車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0070】
尚この場合、好ましくは、予測装置により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の開始時点よりも前に、車速パルスが発生されることを検出条件とする。
【0071】
本発明の車載用ナビゲーションシステムは上記課題を解決するために、上述した本発明の車速パルス抜け検出装置(但し、その各種態様を含む)と、前記車速センサと、前記車速パルス抜け検出装置により前記車速パルス抜けが検出されると、前記車速パルスに補正を加える補正手段と、前記車速パルスに基づいて、現在位置表示を行う表示手段とを備える。
【0072】
本発明の車載用ナビゲーションシステムによれば、上述した本発明の車速パルス抜け検出装置を備えるので、車速パルス抜けが生じても、これを高精度で検出することができる。従って、補正手段により、車速パルス抜けによる誤差を含む車速パルスを補正できるので、表示手段により、車速パルスに基づいて、現在位置表示を高精度で行える。
【0073】
本発明の車載用ナビゲーションシステムの一態様では、電波測位データを出力する電波測位装置を更に備えており、前記表示手段は、前記車速パルスに加えて前記電波測位データに基づいて、前記現在位置表示を行う。
【0074】
この態様によれば、表示手段により、車速パルス及び電波測位データに基づいて、現在位置表示を行う。そして、車速パルス抜けが生じても、これを高精度で検出することができ、車速パルス抜けによる誤差を含む車速パルスを現在位置の算出に用いないことも可能となる。よって、車速パルス抜けが生じても、現在位置表示を高精度で行える。
【0075】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータに、上述した本発明の車速パルス抜け検出方法(但し、その各種態様も含む)を実行させる。
【0076】
本発明のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(DVD Read Only Memory)等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の車速パルス抜け検出方法を比較的簡単に実現できる。またこのようなコンピュータプログラムをナビゲーションに必要なアプリケーションプログラムや地図等の他のデータと共にセンタ装置から送信することも可能である。
【0077】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明の効果】
【0078】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、自立測位を単独で用いた或いは自立測位と電波測位とを組み合わせて用いた車載用ナビゲーションシステムにおいて、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことが可能となり、よって車速パルスを使用して高精度で車速、移動距離、現在位置等を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における車速パルス発生源及び車速センサの車両における取り付け位置を示す図式的部分断面図である。
【図3】第1実施形態における車速パルス発生源の取り付け位置を示すタイヤの図式的平面図である。
【図4】第1実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図6】第2実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図8】第3実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図10】第4実施形態の車載用ナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図11】第5実施形態の車載用ナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図12】ある車両の走行状態について、GPS測位のみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図13】図12と同じ走行状態について、車速パルスのみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図14】図12及び図13と同じ走行状態について、車速パルスに対して、実施形態の車速パルス抜け検出時に、車速パルスに対して補正を加えた結果として得られる車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図15】実施形態による車速パルス抜け検出地点を時間軸上に示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0081】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムの構成について図1から図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムのブロック図である。図2は、車速パルス発生源及び車速センサの車両における取り付け位置を示す図式的部分断面図であり、図3は、車速パルス発生源の取り付け位置を示すタイヤの図式的平面図である。
【0082】
図1に示すように、本実施形態の車載用ナビゲーションシステムは、自立測位装置10と、電波測位装置の一例を構成するGPS測位装置18、システムコントローラ20、CD−ROMドライブ31、DVD−ROMドライブ32、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60とを備えて構成されている。
【0083】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び車速センサ13を含んで構成されている。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ2は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。
【0084】
車速センサ13は、車両の車軸の回転を検出し、例えば90度、180度、360度など車軸における所定角度の回転毎に、パルス信号たる車速パルスを発生する。このような車速センサ13は、磁気的に或いは光学的に車軸の回転角度位置を検出して車速パルスを発生するように構成されている。本実施形態では特に、後述の如く車速パルス抜けを精度良く検出し、これに基づく測位誤差の発生を抑えるように構成されている。従って、本実施形態では、車速パルス抜けが発生しやすいという短所を持つ磁気的に検出する型のものが好適に用いられる。
【0085】
即ち、例えば図2及び図3に示すように、車両200のタイヤ15がスチールラジアルタイヤである場合、このタイヤ15に内包されたスチールベルトを磁界発生源14として採用する。そしてこの時、タイヤ15に対向する車両200の一部に、車速センサ13を取り付けておく。尚、ラジアルタイヤには、コード層としてポリエステル等の高剛性の繊維を用いたテキスタイルラジアルタイヤがあるが、このような型のラジアルタイヤでは、別の磁性体(例えば、制動装置を構成するディスク或いはホイール)に着磁するか、或いは別途マグネットを固設することにより、磁界発生源14を構築する。係るマグネットとしては、各種永久磁石等、従来知られたものを使用できる。更に、バイアスタイヤ等の他の形式のタイヤにおいても、磁性体部分に着磁するか、或いは別途マグネットを固設することで、磁界発生手源14を構築できる。
【0086】
再び図1に戻り、GPS測位装置18は、車両の位置(緯度、経度)を検出するために用いられるべき複数の人工衛星からの測位用のデータを示す信号を含む測位電波19を受信する部分である。
【0087】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置全体の制御を行うように構成されている。
【0088】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び車速センサ13並びにGPS測位装置18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルスの他、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、GPS方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ4を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置10を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0089】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ31、DVD−ROMドライブ32、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0090】
CD−ROMドライブ31及びDVD−ROMドライブ32は、システムコントローラ20の制御の下、CD33及びDVD34から夫々、車線数、道幅等を含む道路データ等の各種データ及び後述の各実施形態に対応する制御プログラムを読み出し、出力する。尚、CD−ROMドライブ31及びDVD−ROMドライブ32は、いずれか一方だけ設けてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブを設けてもよい。
【0091】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データを表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備えて構成されている。ディスプレイ44は、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0092】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声ディジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0093】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン等から構成されている。入力装置16は、車内に搭載された当該車載用ナビゲーションシステムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。
【0094】
第1実施形態では特に、GPS測位装置18のGPS測位データから速度V1を算出する第1算出装置と、車速センサ13の車速パルスから速度V2を算出する第2算出装置と、これら二つの速度V1及びV2間に生じる矛盾を検出条件として車速パルス抜けを検出する検出装置とが、CD33又はDVD34若しくはROM23等に格納されたコンピュータプログラムを実行するシステムコントローラ20から構築されている。
【0095】
尚、第1実施形態並びに後述する第2及び第3実施形態における車速パルス抜け検出方法は、主としてCPU22において実行されるものであり、車載用ナビゲーションシステム全体を制御してナビゲーション動作を実行するメインナビゲーションプログラムの一部として実行される。従って、メインナビゲーションプログラム実行中は、常時各実施形態のフローチャートで示される動作が実行されていることとなる。また、このようなコンピュータプログラムは、ROM23、CD−ROM31又はDVD−ROM32に格納されていてもよく、モデム、携帯電話等の通信手段を介してRAM42等にダウンロードされてもよい。更にこれに代えて又は加えて、ナビゲーションに必要な地図データ等をダウンロードしてもよい。
【0096】
次に、以上のように構成された第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムにおける車速パルス抜け検出方法について図4及び図5を参照して説明する。ここに、図4は、車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図5は、第1実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【0097】
図4に示すように、初期状態として、自車は運行中(走行中又は停止中)であるとすると、車速パルスPの間隔である車速パルス間隔Wは、減速又は加速に応じて変動する。より具体的には、車両が加速することで、車速パルス間隔Wは狭くなり、車速が減速することで、車速パルス間隔Wは広くなる。即ち、車速パルスPにおける車速パルス抜けがなく且つ車速パルスPの余剰発生も無いような理想的な場合には、車速パルス間隔Wは、車両の加減速の割合に応じて変化する(車速と反比例する)筈である。
【0098】
ここで本願発明者らによる研究によれば、実世界における車両は、その重量、エンジン出力、ブレーキ制動能力等がある程度限られた範囲内に入っていることに対応して、一定以上の割合で減速を行うことは、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。同様に、一定以上の割合で加速を行うことも極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。従って、車速パルス間隔Wについても同様に、一定以上の割合で変化することは、極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。
【0099】
そこで本願発明者らは、係る物理的事実に着目して、本実施形態では、車速パルス間隔Wが一定以上の通常あり得ない変化を行ったことを検出することで、車速パルスPにおけるパルス抜け(更には、車速パルスPの余剰発生)を検出することする。
【0100】
図5において、先ずGPS測位装置18のGPS測位データから、GPS測位位置の単位時間当たりの移動距離に比例する車両の速度Vgを、所定種類の第1物理量の一例として算出する。他方でこれと並行して、車速センサ13の車速パルスから、単位時間当たりの車速パルス数に比例する車両の速度Vsを算出する。そして、GPS測位に基づく車両の速度Vgにおける所定時間内における変化量ΔVgが所定閾値Vth1より小さいか否かを判定する。即ち、ΔVg<Vth1であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0101】
そして、この速度変化量ΔVgが所定閾値Vth1以上である限り(ステップS11:いいえ)、車速パルス抜けは検出されない。即ち、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0102】
ここで、ΔVg<Vth1である場合(ステップS11:はい)、即ち、GPS測位に基づく速度変化が一定値より小さく車両が一定に近い速度で走行している場合、車速パルス抜けの有無を検出すべき状況にあるとして、次に、車速パルスに基づく車両の速度Vsにおける所定時間内における変化量ΔVsが所定閾値Vth2より大きいか否かを判定する。即ち、ΔVs>Vth2であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0103】
そして、この速度変化量ΔVsが所定閾値Vth2以下である限り(ステップS12:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS11に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0104】
ここで、ΔVs>Vth2である場合(ステップS12:はい)、車速パルス抜けが発生した可能性があるとして、次に、GPS測位に基づく速度Vgと車速パルスに基づく速度Vsとの速度差Vg−Vs=ΔVdについて、ΔVd>Vthであるか否かを判定する(ステップS13)。
【0105】
この判定の結果、ΔVd>Vthでなければ(ステップS13:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS11に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0106】
他方、ΔVd>Vthであれば(ステップS13:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS14)。具体的には、システムコントローラ20は、車速センサ13の誤差を含んだ車速パルスに対し、例えば、過去や未来に発生される車速パルスに基づいて補完処理を行ったり、速度や移動距離に対する補正を加える。或いは、車速パルス抜けが発生したとされる期間については、車速パルスに基づく測位を採用するのを一時的に停止して、GPS測位のみに基づいて、速度、移動距離、現在位置等を算出する。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図5に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として再び開始される。
【0107】
従って、第1実施形態によれば、速度変化量や速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。
【0108】
特に、ステップS13の判定のみならず、ステップS11及びS12の判定を行うので、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、誤って車速パルス抜けを検出する事態を効果的に回避できる。
【0109】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。ここに、図6は、第2実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図7は、第2実施形態における車速パルス検出動作のフローチャートである。尚、第2実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第2実施形態における車速パルス抜け検出方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0110】
図6に示すように、第2実施形態の車速パルス抜け検出方法では、車速パルスPが発生される度に、車速パルスのパルス間隔Wを計測する。そして、前回に計測されたパルス間隔Wを、計測の度にバッファにより一時的に保持する。その後、この保持されたパルス間隔Wに対する、今回に計測されたパルス間隔Wの比Rが、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出するものである。
【0111】
即ち、図7において先ず、車速パルスの発生をモニタリングし(ステップS21)、発生した場合には(ステップS21:はい)、前回の車速パルス間隔をバッファに保存し(ステップS22)、その後の車速パルスの発生に伴い、今回の車速パルス間隔を他のバッファに保存する(ステップS23)。尚、このようなバッファは、システムコントローラ20内に専用に設けてもよいし、RAM24の一部をバッファ領域として用いてもよい。
【0112】
続いて、ステップS22で保存されたパルス間隔に対する、ステップS23で保存されたパルス間隔の比R(=今回のパルス間隔W/前回のパルス間隔W)を算出する(ステップS24)。そして、この比Rが、所定閾値Rthよりも大きいか否か、即ちR>Rthが成立するか否かを判定する(ステップS25)。この閾値Rthは、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された、或いは車種を問わずに固定された固定値であり、経験的、実験的、理論的、シミュレーション等により予め設定すればよい性質のものである。
【0113】
この判定の結果、R>Rthでなければ(ステップS25:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS21に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0114】
他方、R>Rthであれば(ステップS25:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS26)。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図7に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として、再び開始される。
【0115】
従って、第2実施形態によれば、車速パルス間隔と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。特に、GPS測位データを用いることなく車速パルス抜けを検出できるので、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、車速パルス抜けの検出精度が高くなる。
【0116】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。ここに、図8は、第3実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図9は、第3実施形態における車速パルス検出動作のフローチャートである。尚、第3実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第3実施形態における車速パルス抜け検出方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0117】
図8に示すように、第3実施形態の車速パルス抜け検出方法では、車速パルスPが発生される度に、車速パルスのパルス間隔Wを計測する。そして、前回計測されたパルス間隔Wから、今回計測される筈のパルス間隔Wの終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。その後、予測された発生時刻を過ぎても、次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出するものである。
【0118】
即ち、図9において先ず、車速パルスの発生に伴い算出される前回の車速パルス間隔をバッファに保存する(ステップS31)。そして、この前回の車速パルスの間隔から、今回計測される筈の車速パルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。例えば、1−α<(今回に計測される筈のパルス間隔/前回に計測されたパルス間隔)<1+αなどの関係式(但し、αは、車両の加減速を考慮して予め設定される係数)により今回計測される筈のパルス間隔を予測し、この前回に計測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻に、この予測されたパルス間隔を加算することで、今回計測される筈の車速パルスの発生時刻を予測する(ステップS32)。
【0119】
次に、車速パルスの発生をモニタリングする(ステップS33)。そして、車速パルスが発生しない限り(ステップS33:いいえ)、システムコントローラ20に内蔵されたタイマーを参照して、現在時刻が、予測された発生時刻を過ぎたか否かをモニタリングする(ステップS34)。そして、現在時刻が、予測された時刻を過ぎていない限り(ステップS34:いいえ)、ステップS33に戻って、車速パルスの発生をモニタリングする。
【0120】
これらの判定の結果、現在時刻が予測時刻を過ぎないまま(ステップS34:いいえ)、車速パルスの発生があると(ステップS33:はい)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS31に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0121】
他方、ステップS33で車速パルスの発生がないまま(ステップS33:いいえ)、現在時刻が予測時刻を過ぎた場合(ステップS34:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS35)。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図9に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として、再び開始される。
【0122】
従って、第3実施形態によれば、現在時刻が予測時刻を過ぎるか否かをモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。特に、GPS測位データを用いることなく車速パルス抜けを検出できるので、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、車速パルス抜けの検出精度が高くなる。
【0123】
尚、予測工程では、前回に計測されたパルス間隔に加えて、前々回以前に計測されたパルス間隔から、今回のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測することも可能である。また、発生時刻を予測するのに代えて今回のパルス間隔を予測して、予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が実際に計測されるか否かを検出条件とすることも可能である。
【0124】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図10を参照して説明する。ここに、図10は、第4実施形態におけるナビゲーション動作のフローチャートである。尚、第4実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。
【0125】
第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態の車速パルス抜け検出方法を含むナビゲーション方法に係るものである。
【0126】
即ち、第4実施形態では、先ずGPS測位装置18によりGPS測位を行い(ステップS41)、これと並行して、車速センサ13を含む自立測位装置10により自立測位を行う(ステップS42)。そして、上述した第1から第3実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出方法により、車速パルス抜けが検出されたか否かが判定される(ステップS43)。
【0127】
この判定の結果、車速パルス抜けが検出されていなければ(ステップS43:いいえ)、自立測位の精度は十分高いものとして、GPS測位に基づく車速、移動距離、現在位置等に対し、自立測位に基づく補正を加える(ステップS44)。そして、この補正を加えた後の現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS45)。
【0128】
他方、車速パルス抜けが検出されると(ステップS43:はい)、車速パルス抜けの影響により自立測位の精度は低いものとして、GPS測位に基づく車速、移動距離、現在位置等に対し、自立測位に基づく補正を加えることなく、現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS45)。
【0129】
そして、ナビゲーション終了命令が入力されていなければ(ステップS46:いいえ)、ステップS41及びS42に戻り、通常のナビゲーション動作を続行する。
【0130】
他方、ナビゲーション終了命令が入力されると(ステップS46:はい)、一連のナビゲーション動作を終了する。
【0131】
以上のように、第4実施形態によれば、車速パルス抜けの発生していない状態では、車速パルスに基づく自立測位の結果を有効利用することで、最終的な現在位置等の測位精度を高め、しかも車速パルス抜けが発生した時には、車速パルスに基づく自立測位の結果を利用しないことで、最終的な現在位置等の測位精度を低めることを回避するので、全体としてGPS測位及び自立測位を組み合わせて、最終的に高い測位精度が得られる。
【0132】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図11を参照して説明する。ここに、図11は、第5実施形態におけるナビゲーション動作のフローチャートである。尚、第5実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第5実施形態におけるナビゲーション方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0133】
第5実施形態は、上述した第1から第3実施形態の車速パルス抜け検出方法を含むナビゲーション方法に係るものである。
【0134】
即ち、第5実施形態では先ず、車速センサ13を含む自立測位装置10により自立測位を行う(ステップS51)。そして、上述した第1から第3実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出方法により、車速パルス抜けが検出されたか否かが判定される(ステップS52)。
【0135】
この判定の結果、車速パルス抜けが検出されていなければ(ステップS52:いいえ)、自立測位の精度は十分高いものとして、これに基づく現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS54)。
【0136】
他方、車速パルス抜けが検出されると(ステップS52:はい)、車速パルスに対する補正を行う。具体的には、システムコントローラ20は、例えば、過去や未来に発生される車速パルスに基づいて、欠落した車速パルスの補完処理を行ったり、速度や移動距離に対する補正を加える。そして、このように補正を加えた後に得られる現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS54)。
【0137】
そして、ナビゲーション終了命令が入力されていなければ(ステップS55:いいえ)、ステップS51に戻り、通常のナビゲーション動作を続行する。
【0138】
他方、ナビゲーション終了命令が入力されると(ステップS55:はい)、一連のナビゲーション動作を終了する。
【0139】
以上のように、第5実施形態によれば、車速パルス抜けが発生した時には、車速パルスに補正を加えることで、最終的な現在位置等の測位精度を低めることを回避するので、最終的に高い測位精度が得られる。
【0140】
尚、以上説明した第1から第5実施形態では、車速パルス抜けを検出しているが、これに加えて又は代えて、タイヤの空回り等に起因した車速センサ13による車速パルスの余剰発生を検出することも可能である。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇したり、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、閾値の設定や閾値と比較する際の大小関係を逆転させたりすることで第1から第5実施形態と同様の理論により車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0141】
最後に、以上説明した第1から第5実施形態によって補正された速度の具体例について図12から図15を参照して説明する。ここに、図12は、ある車両の走行状態について、GPS測位のみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図であり、図13は、図12と同じ走行状態について、車速パルスのみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。図14は、図12及び図13と同じ走行状態について、車速パルスに対して、上述した第1から第5実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出時に、車速パルスに対して補正を加えた結果として得られる車速を時間軸に対して示した特性図である。また、図15は、第1から第5実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出地点を時間軸上に示す特性図である。
【0142】
図15に示された車速パルス抜け検出地点の付近では、当該車速パルス抜けの悪影響により、図13に示した車速には、大きなノイズが入っている。即ち、これらの地点付近では、車速パルスに基づく車速には大きな誤差が含まれていると考察される。これに対し、本実施形態により車速パルス抜けを検出して、これに適当な補正(当該補正自体は、車速パルスを補正する公知のいずれの方法を用いてもよい)を加えることで、図14に示すように、車速パルス抜け地点の付近におけるノイズは極度に低減されており、図12に示したGPS測位に基づく車速(即ち、車速パルス抜けとは無関係である車速)に、より近い車速が得られていることが分かる。
【0143】
図12から図15から分かるように、本実施形態によれば、自立測位を単独で用いた或いは自立測位と電波測位とを組み合わせて用いた車載用ナビゲーションシステムにおいて、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことが可能となる。
【0144】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう車速パルス抜け検出方法及び装置、ナビゲーションシステム並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0145】
10…自立測位装置、11…加速度センサ、12…角速度センサ、13…車速センサ、14…磁界発生源、15…タイヤ、18…GPS測位装置、19…測位電波、20…システムコントローラ、21…インタフェース、22…CPU、23…ROM、24…RAM、30…バス、31…CD−ROMドライブ、32…DVD−ROMドライブ、40…表示ユニット、50…音声出力ユニット、60…入力装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車速センサを含む自立測位センサの出力に基づいて測位する自立測位や、GPS(Global Positioning System)衛星などの電波測位用衛星からの測位電波に基づいて測位するGPS測位などの電波測位を用いて、車両の現在位置等を表示する車載用ナビゲーションシステムにおける車速パルス抜けを検出する方法及び装置、このような装置を含んでなる車載用ナビゲーションシステム、並びにコンピュータをこのような装置として機能させるためのコンピュータプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、車載用ナビゲーションシステムにおける測位には、大別して自立測位とGPS測位とがある。
【0003】
自立測位は、移動体に備えられた車速センサ、角速度センサ、加速度センサ等の自立測位センサにより移動体の移動方向、移動距離等を求め、これらに基づき基準地点に対する現在位置を算出するものである。特に、自立測位センサのうち、車速センサは、車軸の回転を検出して該回転に応じた車速パルスを発生するものであり、この発生される車速パルスの累積数や単位時間当たり数から走行距離や速度が算出可能なように構成されている。
【0004】
近年では、例えば特開平10−300509号公報、特開平10−115627号公報等に開示されているように、タイヤ或いはその付近に後付けした車速パルス発生源やタイヤに内包されたスチールベルトから発せられる磁界の変化を検出して車速パルスを発生する磁界検出型の車速センサも開発されている。この型のセンサによれば、車速パルス発生源がない或いは不明である外車等を含めた任意の車両においても、比較的簡単に車速パルスを発生させることが可能となる。
【0005】
他方、GPS測位は、宇宙空間に打ち上げられている複数個のGPS衛星からの測位電波をGPSレシーバで受信し、受信結果に基づいて3次元測量法又は2次元測量法により移動体の現在位置及び移動速度を算出するものである。
【0006】
最近では、例えば特開平09−297030号公報や特開平10−307036号公報に開示されているように、上述の自立測位とGPS測位の両方を行うナビゲーションシステムも開発されている。このナビゲーションシステムによれば、例えば、GPS測位が不可能或いはGPS測位では精度が得られない状況では、自立測位を主に用いたり、GPS測位を自立測位で補ったりする。逆に、GPS測位が可能或いはGPS測位で通常の精度が得られる状況では、GPS測位を主に用いたり、GPS測位を自立測位で補ったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−300509号公報
【特許文献2】特開平10−115627号公報
【特許文献3】特開平09−297030号公報
【特許文献4】特開平10−307036号公報
【特許文献5】特開2000−97713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に上述の自立測位において中心的な役割をなす車速センサについては、実際には、車両が走行しており、車速センサから車速信号たる“車速パルス”が出力されるべき時に、この車速パルスが発生されない状況(本願明細書では、「車速パルス抜け」という)が生じるという問題点がある。このような車速パルス抜けは、車速全域で感度一定の車速センサや出力一定の車速パルス発生源の製造は困難であったり、車速パルスが伝えられる配線上に電気的ノイズが発生したり、走行時における不測の振動によるセンサエラーが発生したりなど、現実には個別具体的に各種の要因が考えられる。
【0009】
特に、上述した磁界変化を検出して車速パルスを発生する車速センサにおいては、サスペンション動作やタイヤのひずみ等に応じてセンサで検出される磁界が検出精度上で無視し得ない程大きく変化するので、走行状態によっては車速パルス抜けが頻繁に生じてしまうという大きな問題点がある。
【0010】
そして、このように車速パルス抜けが生じると、車速が低くなる側に誤差が生じて該車速の精度が低下し、移動距離が短くなる側に誤差が生じて該自立測位に基づく移動距離の精度が低下する。更に、自立測位に基づく現在位置の精度も低下すると共に、GPS測位に対して自立測位に基づく補正をかけた後に最終的に得られる現在位置等の精度も低下してしまうという問題点がある。
【0011】
尚、これに対し、特開2000−97713号公報では、低速走行時に車速パルス抜けが発生しても、車速パルスに基づいて精度の高い移動距離や現在位置を算出するシステムが開示されているが、この方法中の車速パルス抜けの検出方法は、例えば一定時間間隔で車速パルスを監視し、車速パルス数>1の状態から車速パルス数=0の状態に変化したことで車速パルス抜けを検出するという非常に単純なものであり、車速パルス抜けの検出精度は概ね高いとは言えない。
【0012】
本発明は上述の課題に鑑みなされたものであり、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことを可能ならしめる車速パルス抜け検出方法及び装置、そのような装置を含んでなる車載用ナビゲーションシステム、並びにコンピュータをそのような装置として機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0014】
本発明の第1車速パルス検出方法によれば、第1算出工程により、GPSレシーバ等の電波測位装置の電波測位データから、例えばドップラー効果による周波数の変化を利用して車両の速度など所定種類の第1物理量を算出する。他方でこれと並行して、第2算出工程により、車速センサの車速パルスから、例えば単位時間当たりの車速パルス数に比例する当該車載用ナビゲーションシステムが搭載された車両の速度など、第1算出工程により算出されたのと同一種類の第2物理量を算出する。そして、検出工程により、例えばこれらの算出された二つの車両の速度相互間に著しい差があるなど、算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する。即ち、車両の重量、ブレーキの制動能力等に基づいて実世界では減速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急低下したり、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく低下した場合などに、車速パルス抜けを検出できる。従って、一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位データを用いることにより、比較的高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。よって、車速パルス抜けが生じた際に、車速センサの誤差を含んだ車速パルスを補正したり、当該車載用ナビゲーションシステムで現在位置表示等のために使用することを排除可能となる。例えば、車速パルス抜けが検出された際には、ナビゲーション用に電波測位データのみを一時的に使用したり、車速パルス抜けが検出されない過去或いは未来における車速パルス等を用いて欠落した車速パルスを補完や予測することも可能となる。
【0015】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第1算出工程は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出工程は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出工程は、前記第1算出工程により算出された速度と前記第2算出工程により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とする。
【0016】
この態様によれば、第1算出工程により測位電波に基づく速度を算出し、第2算出工程により車速パルスに基づく速度を算出し、検出工程によりこれらの速度の差が所定閾値より大きいことで、車速パルス抜けを検出する。例えば、第1算出工程により算出された速度をV1とし、第2算出工程により算出された速度をV2とし、所定閾値をVthすると、速度差V1−V2>Vthであるか否かをモニタリングし、この式が成立する場合に、車速パルス抜けであると判定する。従って、速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出可能となる。
【0017】
尚、この態様では、検出工程により、速度比V1/V2を他の所定閾値Vth'と比較することで(即ち、V1/V2>Vth'であることを検出条件として)、車速パルス抜けを検出してもよい。
【0018】
この態様では、前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出工程と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出工程とを更に備えており、前記検出工程は、前記第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件としてもよい。
【0019】
このように構成すれば、上記速度差が所定閾値を超えたことに加えて、第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを検出条件として、車速パルス抜けを検出する。即ち一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位に基づく速度が余り変化していないのに、車速パルスに基づく速度が相対的に大きく変化することで、車速パルス抜けを検出する。このように、実際の車両の速度変化は、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的に考えて概ね限定された範囲内に入るという事実を利用することで、非常に高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。
【0020】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測工程と、該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程と、該第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0021】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法によれば、計測工程により、車速パルスの間隔を計測する。そして、第1保持工程により、第n回目に計測されたパルス間隔を、少なくとも一時的に保持する。例えばパルス間隔を示すデータを、計測の度にバッファにより保持する。その後、検出工程により、この保持されたパルス間隔に対する第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出する。例えば、第1保持工程により保持されたパルス間隔をW(n)とし、第n+m回目に計測されたパルス間隔をW(n+1)とし、所定閾値Wthとすると、計測の度に或いは車速パルスが発生する度に、W(n+1)/W(n)>Wthであるか否かを判定し、この式が成立する場合に、車速パルス抜けであると判定する。従って、上述した第1車速パルス抜け検出方法と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。よって、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、例えばGPS測位精度が低い状況では、車速パルス抜けの検出精度が第1車速パルス検出方法よりも高くなる。しかも、車速パルス発生源及び車速センサが正常に動作している限り、車速パルス抜けが長期に亘って発生し続ける可能性は一般に低いことに対応して、高信頼性で車速パルス抜けを検出可能となる。
【0022】
尚、本発明の第2車速パルス抜け検出方法では、検出工程により、第1保持装置により保持されたパルス間隔W(n)と第n+m回目に計測されたパルス間隔W(n+1)との差ΔWを、他の所定閾値Wth'と比較することで(即ち、ΔW=W(n+1)−W(n)>Wth'であることを検出条件として)、車速パルス抜けを検出してもよい。
【0023】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持工程を更に備えており、前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持工程により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きいことを検出条件とする。
【0024】
この態様によれば、第1保持工程によりバッファ等に保持されたパルス間隔と、第2保持工程によりバッファ等に保持されたパルス間隔との比が所定閾値よりも大きいことを検出条件とするので、比較的確実に車速パルス抜けを検出できる。
【0025】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記閾値は、予め設定された固定値又は可変値である。
【0026】
この態様によれば、所定閾値としては、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された固定値を利用する。従って、検出工程では、固定された閾値との比較という簡単な比較工程により、車速パルス抜けを検出できる。
【0027】
また、係る所定閾値としては、速度に応じて可変である可変値を利用することもできる。
【0028】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測工程と、該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測工程と、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程とを含む。
【0029】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法によれば、計測工程により、車速パルスのパルス間隔を計測する。予測工程により、第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。例えば、第n回目に計測されたパルス間隔をW(n)とし、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔をW(n+1)とすると、車両の加減速を考慮して、W(n)−Δw<W(n+1)<W(n)+Δw 或いは、1−α<W(n+1)/W(n)<1+αなどの関係式(但し、Δw、αは、車両の加減速を考慮して予め設定される係数)により、当該W(n+1)を予測する。そして、最後に発生された車速パルス(即ち、第n回目に計測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルス)の発生時刻t0と、この予測されたパルス間隔W(n+1)とから、この予測されたパルス間隔W(n+1)の終端を規定する車速パルスの発生時刻t1を予測する。続いて、検出工程により、例えばタイマーをモニタリングしつつ、現在時刻と、予測された発生時刻t1とを比較して、この時刻t1を過ぎても、車速センサにより次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出する。よって、上述した第1車速パルス抜け検出方法と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。従って、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、例えばGPS測位精度が低い状況では、車速パルス抜けの検出精度が第1車速パルス検出方法よりも高くなる。しかも、車速パルス発生源及び車速センサが正常に動作している限り、車速パルス抜けが長期に亘って発生し続ける可能性は一般に低いことに対応して、高信頼性で車速パルス抜けを検出可能となる。
【0030】
尚この場合、好ましくは、予測工程により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の終了時点よりも前に、車速パルスが発生されないことを検出条件とする。
【0031】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の一態様では、前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程を更に備えており、前記予測工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する。
【0032】
この態様によれば、第1保持工程によりバッファ等に保持された第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測するので、比較的確実に発生時刻を予測でき、この結果に基づいて、車速パルス抜けを検出可能となる。
【0033】
尚、予測工程では、第n回目に計測されたパルス間隔に加えて、第n−1回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測することも可能である。
【0034】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記予測工程では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、前記検出工程では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測工程により計測されないことを検出条件とする。
【0035】
この態様によれば、予測工程により、第n+m回目のパルス間隔を予測する。そして、検出工程により、この予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が計測工程により計測されないことで、車速パルス抜けを検出する。このように、検出工程により、計測工程で計測されるパルス間隔と予測されたパルス間隔とを比較することによっても、ほぼ同様に車速パルス抜けを検出可能である。
【0036】
本発明の第1車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0037】
この態様によれば、車軸やタイヤの回転に対して車速パルスが正常に発生されていても路面状態やエンジン回転数等に応じて、タイヤが路面に対して空回りすることで車両の路面に対する移動距離とタイヤの回転数との関係が崩れる現象である“車速パルスの余剰発生”を、第1車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。従って、車速パルスの余剰発生が検出された場合に、当該余剰発生による誤差を含む車速パルスを補正することにより自立測位に基づく速度や移動距離の精度を高められる。或いは、当該余剰発生時の車速パルスの使用を一時的に停止して電波測位データのみを使用することにより、速度や移動距離の精度を高められる。
【0038】
本発明の第2車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0039】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第2車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0040】
本発明の第3車速パルス抜け検出方法の他の態様では、前記検出工程は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0041】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第3車速パルス抜け検出方法における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0042】
尚この場合、好ましくは、予測工程により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の開始時点よりも前に、車速パルスが発生されることを検出条件とする。
【0043】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出装置と、前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出装置と、前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0044】
本発明の第1車速センサによれば、第1算出装置により、GPSレシーバ等の電波測位装置の電波測位データから、例えばドップラー効果による周波数の変化を利用して車両の速度など、所定種類の第1物理量を算出する。他方でこれと並行して、第2算出装置により、車速センサ等の車速パルスから、例えば単位時間当たりの車速パルス数に比例する当該車載用ナビゲーションシステムが搭載された車両の速度など、第1算出装置により算出されたのと同一種類の第2物理量を算出する。そして、検出装置により、例えばこれらの算出された二つの車両の速度相互間に著しい差があるなど、算出された第1物理量と第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として、車速パルス抜けを検出する。従って、一般に車速パルス抜けの生じ易さとは因果関係を持たない測位精度を有する電波測位装置の電波測位データを用いることにより、比較的高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。よって、車速パルス抜けが生じた際に、車速センサの誤差を含んだ車速パルスを補正したり、当該車載用ナビゲーションシステムで現在位置表示等のために使用することを排除可能となる。
【0045】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第1算出装置は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出装置は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出装置は、前記第1算出装置により算出された速度と前記第2算出装置により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とする。
【0046】
この態様によれば、第1算出装置により測位電波に基づく速度を算出し、第2算出装置により車速パルスに基づく速度を算出し、検出装置によりこれらの速度の差が所定閾値より大きいことで、車速パルス抜けを検出する。従って、速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な装置により、車速パルス抜けを高信頼性で検出可能となる。
【0047】
この態様では、前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出装置と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出装置とを更に備えており、前記検出装置は、前記第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件としてもよい。
【0048】
このように構成すれば、上記速度差が閾値を超えたことに加えて、第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを検出条件として、車速パルス抜けを検出する。このように、実際の車両の速度変化は、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的に考えて概ね限定された範囲内に入るという事実を利用することで、非常に高信頼性で車速パルス抜けを検出できる。
【0049】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測装置と、該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置と、該第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0050】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置によれば、計測装置により、車速パルスの間隔を計測する。そして、第1保持装置により、第n回目に計測されたパルス間隔を、少なくとも一時的に保持する。例えばパルス間隔を示すデータを、計測の度にバッファにより保持する。その後、検出装置により、この保持されたパルス間隔に対する第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出する。従って、上述した第1車速パルス抜け検出装置と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。
【0051】
尚、本発明の第2車速パルス抜け検出装置では、検出装置により、第1保持装置により保持されたパルス間隔と第n+m回目に計測されたパルス間隔との差を、他の所定閾値と比較することで車速パルス抜けを検出してもよい。
【0052】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持装置を更に備えており、前記検出装置は、前記第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持装置により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きいことを検出条件とする。
【0053】
この態様によれば、第1保持装置によりバッファ等に保持されたパルス間隔と、第2保持装置によりバッファ等に保持されたパルス間隔との比が所定閾値よりも大きいことを検出条件とするので、比較的確実に車速パルス抜けを検出できる。
【0054】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記閾値は、予め設定された固定値又は可変値である。
【0055】
この態様によれば、所定閾値としては、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された固定値を利用する。従って、検出装置では、固定された閾値との比較という簡単な比較装置により、車速パルス抜けを検出できる。
【0056】
また、係る所定閾値としては、速度に応じて可変である可変値を利用することもできる。
【0057】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置は上記課題を解決するために、自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測装置と、該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測装置と、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置とを含む。
【0058】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置によれば、計測装置により、車速パルスのパルス間隔を計測する。予測装置により、第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。そして、最後に発生された車速パルスの発生時刻と、この予測されたパルス間隔とから、この予測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。続いて、検出装置により、例えばタイマーをモニタリングしつつ、現在時刻と、予測された発生時刻とを比較して、この時刻を過ぎても、車速センサにより次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出する。よって、上述した第1車速パルス抜け検出装置と比べて、GPS測位データ等の電波測位データを用いることなく、車速パルスを単独で用いて、車速パルス抜けを検出できる。
【0059】
尚この場合、好ましくは、予測装置により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の終了時点よりも前に、車速パルスが発生されないことを検出条件とする。
【0060】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の一態様では、前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置を更に備えており、前記予測装置は、前記第1保持装置により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する。
【0061】
この態様によれば、第1保持装置によりバッファ等に保持された第n回目に計測されたパルス間隔から、第n+m回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測するので、比較的確実に発生時刻を予測でき、この結果に基づいて、車速パルス抜けを検出可能となる。
【0062】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記予測装置では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、前記検出装置では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測装置により計測されないことを検出条件とする。
【0063】
この態様によれば、予測装置により、第n+m回目のパルス間隔を予測する。そして、検出装置により、この予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が計測装置により計測されないことで、車速パルス抜けを検出する。このように、検出装置により、計測装置で計測されるパルス間隔と予測されたパルス間隔とを比較することによっても、ほぼ同様に車速パルス抜けを検出可能である。
【0064】
本発明の第1車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0065】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第1車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0066】
本発明の第2車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0067】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第2車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0068】
本発明の第3車速パルス抜け検出装置の他の態様では、前記検出装置は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出する。
【0069】
この態様によれば、車速パルスの余剰発生を、第3車速パルス抜け検出装置における車速パルス抜けの検出と類似の理論で検出できる。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇した場合などに、車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0070】
尚この場合、好ましくは、予測装置により、発生時刻を一定の幅(期間)を持って予測し、該発生時刻(期間)の開始時点よりも前に、車速パルスが発生されることを検出条件とする。
【0071】
本発明の車載用ナビゲーションシステムは上記課題を解決するために、上述した本発明の車速パルス抜け検出装置(但し、その各種態様を含む)と、前記車速センサと、前記車速パルス抜け検出装置により前記車速パルス抜けが検出されると、前記車速パルスに補正を加える補正手段と、前記車速パルスに基づいて、現在位置表示を行う表示手段とを備える。
【0072】
本発明の車載用ナビゲーションシステムによれば、上述した本発明の車速パルス抜け検出装置を備えるので、車速パルス抜けが生じても、これを高精度で検出することができる。従って、補正手段により、車速パルス抜けによる誤差を含む車速パルスを補正できるので、表示手段により、車速パルスに基づいて、現在位置表示を高精度で行える。
【0073】
本発明の車載用ナビゲーションシステムの一態様では、電波測位データを出力する電波測位装置を更に備えており、前記表示手段は、前記車速パルスに加えて前記電波測位データに基づいて、前記現在位置表示を行う。
【0074】
この態様によれば、表示手段により、車速パルス及び電波測位データに基づいて、現在位置表示を行う。そして、車速パルス抜けが生じても、これを高精度で検出することができ、車速パルス抜けによる誤差を含む車速パルスを現在位置の算出に用いないことも可能となる。よって、車速パルス抜けが生じても、現在位置表示を高精度で行える。
【0075】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、コンピュータに、上述した本発明の車速パルス抜け検出方法(但し、その各種態様も含む)を実行させる。
【0076】
本発明のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(DVD Read Only Memory)等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムをコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを通信手段を介してコンピュータにダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明の車速パルス抜け検出方法を比較的簡単に実現できる。またこのようなコンピュータプログラムをナビゲーションに必要なアプリケーションプログラムや地図等の他のデータと共にセンタ装置から送信することも可能である。
【0077】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明の効果】
【0078】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、自立測位を単独で用いた或いは自立測位と電波測位とを組み合わせて用いた車載用ナビゲーションシステムにおいて、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことが可能となり、よって車速パルスを使用して高精度で車速、移動距離、現在位置等を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における車速パルス発生源及び車速センサの車両における取り付け位置を示す図式的部分断面図である。
【図3】第1実施形態における車速パルス発生源の取り付け位置を示すタイヤの図式的平面図である。
【図4】第1実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図6】第2実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図8】第3実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【図10】第4実施形態の車載用ナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図11】第5実施形態の車載用ナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図12】ある車両の走行状態について、GPS測位のみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図13】図12と同じ走行状態について、車速パルスのみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図14】図12及び図13と同じ走行状態について、車速パルスに対して、実施形態の車速パルス抜け検出時に、車速パルスに対して補正を加えた結果として得られる車速を時間軸に対して示した特性図である。
【図15】実施形態による車速パルス抜け検出地点を時間軸上に示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0081】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムの構成について図1から図3を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムのブロック図である。図2は、車速パルス発生源及び車速センサの車両における取り付け位置を示す図式的部分断面図であり、図3は、車速パルス発生源の取り付け位置を示すタイヤの図式的平面図である。
【0082】
図1に示すように、本実施形態の車載用ナビゲーションシステムは、自立測位装置10と、電波測位装置の一例を構成するGPS測位装置18、システムコントローラ20、CD−ROMドライブ31、DVD−ROMドライブ32、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60とを備えて構成されている。
【0083】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び車速センサ13を含んで構成されている。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ2は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。
【0084】
車速センサ13は、車両の車軸の回転を検出し、例えば90度、180度、360度など車軸における所定角度の回転毎に、パルス信号たる車速パルスを発生する。このような車速センサ13は、磁気的に或いは光学的に車軸の回転角度位置を検出して車速パルスを発生するように構成されている。本実施形態では特に、後述の如く車速パルス抜けを精度良く検出し、これに基づく測位誤差の発生を抑えるように構成されている。従って、本実施形態では、車速パルス抜けが発生しやすいという短所を持つ磁気的に検出する型のものが好適に用いられる。
【0085】
即ち、例えば図2及び図3に示すように、車両200のタイヤ15がスチールラジアルタイヤである場合、このタイヤ15に内包されたスチールベルトを磁界発生源14として採用する。そしてこの時、タイヤ15に対向する車両200の一部に、車速センサ13を取り付けておく。尚、ラジアルタイヤには、コード層としてポリエステル等の高剛性の繊維を用いたテキスタイルラジアルタイヤがあるが、このような型のラジアルタイヤでは、別の磁性体(例えば、制動装置を構成するディスク或いはホイール)に着磁するか、或いは別途マグネットを固設することにより、磁界発生源14を構築する。係るマグネットとしては、各種永久磁石等、従来知られたものを使用できる。更に、バイアスタイヤ等の他の形式のタイヤにおいても、磁性体部分に着磁するか、或いは別途マグネットを固設することで、磁界発生手源14を構築できる。
【0086】
再び図1に戻り、GPS測位装置18は、車両の位置(緯度、経度)を検出するために用いられるべき複数の人工衛星からの測位用のデータを示す信号を含む測位電波19を受信する部分である。
【0087】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置全体の制御を行うように構成されている。
【0088】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び車速センサ13並びにGPS測位装置18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルスの他、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、GPS方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ4を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置10を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0089】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ31、DVD−ROMドライブ32、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0090】
CD−ROMドライブ31及びDVD−ROMドライブ32は、システムコントローラ20の制御の下、CD33及びDVD34から夫々、車線数、道幅等を含む道路データ等の各種データ及び後述の各実施形態に対応する制御プログラムを読み出し、出力する。尚、CD−ROMドライブ31及びDVD−ROMドライブ32は、いずれか一方だけ設けてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブを設けてもよい。
【0091】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データを表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備えて構成されている。ディスプレイ44は、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0092】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声ディジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0093】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン等から構成されている。入力装置16は、車内に搭載された当該車載用ナビゲーションシステムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。
【0094】
第1実施形態では特に、GPS測位装置18のGPS測位データから速度V1を算出する第1算出装置と、車速センサ13の車速パルスから速度V2を算出する第2算出装置と、これら二つの速度V1及びV2間に生じる矛盾を検出条件として車速パルス抜けを検出する検出装置とが、CD33又はDVD34若しくはROM23等に格納されたコンピュータプログラムを実行するシステムコントローラ20から構築されている。
【0095】
尚、第1実施形態並びに後述する第2及び第3実施形態における車速パルス抜け検出方法は、主としてCPU22において実行されるものであり、車載用ナビゲーションシステム全体を制御してナビゲーション動作を実行するメインナビゲーションプログラムの一部として実行される。従って、メインナビゲーションプログラム実行中は、常時各実施形態のフローチャートで示される動作が実行されていることとなる。また、このようなコンピュータプログラムは、ROM23、CD−ROM31又はDVD−ROM32に格納されていてもよく、モデム、携帯電話等の通信手段を介してRAM42等にダウンロードされてもよい。更にこれに代えて又は加えて、ナビゲーションに必要な地図データ等をダウンロードしてもよい。
【0096】
次に、以上のように構成された第1実施形態の車載用ナビゲーションシステムにおける車速パルス抜け検出方法について図4及び図5を参照して説明する。ここに、図4は、車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図5は、第1実施形態における車速パルス検出方法のフローチャートである。
【0097】
図4に示すように、初期状態として、自車は運行中(走行中又は停止中)であるとすると、車速パルスPの間隔である車速パルス間隔Wは、減速又は加速に応じて変動する。より具体的には、車両が加速することで、車速パルス間隔Wは狭くなり、車速が減速することで、車速パルス間隔Wは広くなる。即ち、車速パルスPにおける車速パルス抜けがなく且つ車速パルスPの余剰発生も無いような理想的な場合には、車速パルス間隔Wは、車両の加減速の割合に応じて変化する(車速と反比例する)筈である。
【0098】
ここで本願発明者らによる研究によれば、実世界における車両は、その重量、エンジン出力、ブレーキ制動能力等がある程度限られた範囲内に入っていることに対応して、一定以上の割合で減速を行うことは、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。同様に、一定以上の割合で加速を行うことも極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。従って、車速パルス間隔Wについても同様に、一定以上の割合で変化することは、極めて特殊な状況を除けば、物理的にあり得ない。
【0099】
そこで本願発明者らは、係る物理的事実に着目して、本実施形態では、車速パルス間隔Wが一定以上の通常あり得ない変化を行ったことを検出することで、車速パルスPにおけるパルス抜け(更には、車速パルスPの余剰発生)を検出することする。
【0100】
図5において、先ずGPS測位装置18のGPS測位データから、GPS測位位置の単位時間当たりの移動距離に比例する車両の速度Vgを、所定種類の第1物理量の一例として算出する。他方でこれと並行して、車速センサ13の車速パルスから、単位時間当たりの車速パルス数に比例する車両の速度Vsを算出する。そして、GPS測位に基づく車両の速度Vgにおける所定時間内における変化量ΔVgが所定閾値Vth1より小さいか否かを判定する。即ち、ΔVg<Vth1であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0101】
そして、この速度変化量ΔVgが所定閾値Vth1以上である限り(ステップS11:いいえ)、車速パルス抜けは検出されない。即ち、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0102】
ここで、ΔVg<Vth1である場合(ステップS11:はい)、即ち、GPS測位に基づく速度変化が一定値より小さく車両が一定に近い速度で走行している場合、車速パルス抜けの有無を検出すべき状況にあるとして、次に、車速パルスに基づく車両の速度Vsにおける所定時間内における変化量ΔVsが所定閾値Vth2より大きいか否かを判定する。即ち、ΔVs>Vth2であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0103】
そして、この速度変化量ΔVsが所定閾値Vth2以下である限り(ステップS12:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS11に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0104】
ここで、ΔVs>Vth2である場合(ステップS12:はい)、車速パルス抜けが発生した可能性があるとして、次に、GPS測位に基づく速度Vgと車速パルスに基づく速度Vsとの速度差Vg−Vs=ΔVdについて、ΔVd>Vthであるか否かを判定する(ステップS13)。
【0105】
この判定の結果、ΔVd>Vthでなければ(ステップS13:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS11に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0106】
他方、ΔVd>Vthであれば(ステップS13:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS14)。具体的には、システムコントローラ20は、車速センサ13の誤差を含んだ車速パルスに対し、例えば、過去や未来に発生される車速パルスに基づいて補完処理を行ったり、速度や移動距離に対する補正を加える。或いは、車速パルス抜けが発生したとされる期間については、車速パルスに基づく測位を採用するのを一時的に停止して、GPS測位のみに基づいて、速度、移動距離、現在位置等を算出する。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図5に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として再び開始される。
【0107】
従って、第1実施形態によれば、速度変化量や速度差と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。
【0108】
特に、ステップS13の判定のみならず、ステップS11及びS12の判定を行うので、交通事故などの極めて特殊な状況を除けば、誤って車速パルス抜けを検出する事態を効果的に回避できる。
【0109】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。ここに、図6は、第2実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図7は、第2実施形態における車速パルス検出動作のフローチャートである。尚、第2実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第2実施形態における車速パルス抜け検出方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0110】
図6に示すように、第2実施形態の車速パルス抜け検出方法では、車速パルスPが発生される度に、車速パルスのパルス間隔Wを計測する。そして、前回に計測されたパルス間隔Wを、計測の度にバッファにより一時的に保持する。その後、この保持されたパルス間隔Wに対する、今回に計測されたパルス間隔Wの比Rが、所定閾値よりも大きいことで、車速パルス抜けを検出するものである。
【0111】
即ち、図7において先ず、車速パルスの発生をモニタリングし(ステップS21)、発生した場合には(ステップS21:はい)、前回の車速パルス間隔をバッファに保存し(ステップS22)、その後の車速パルスの発生に伴い、今回の車速パルス間隔を他のバッファに保存する(ステップS23)。尚、このようなバッファは、システムコントローラ20内に専用に設けてもよいし、RAM24の一部をバッファ領域として用いてもよい。
【0112】
続いて、ステップS22で保存されたパルス間隔に対する、ステップS23で保存されたパルス間隔の比R(=今回のパルス間隔W/前回のパルス間隔W)を算出する(ステップS24)。そして、この比Rが、所定閾値Rthよりも大きいか否か、即ちR>Rthが成立するか否かを判定する(ステップS25)。この閾値Rthは、例えば、重量、エンジン能力、ブレーキ制動能力等の車両の仕様に応じて設定された、或いは車種を問わずに固定された固定値であり、経験的、実験的、理論的、シミュレーション等により予め設定すればよい性質のものである。
【0113】
この判定の結果、R>Rthでなければ(ステップS25:いいえ)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS21に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0114】
他方、R>Rthであれば(ステップS25:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS26)。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図7に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として、再び開始される。
【0115】
従って、第2実施形態によれば、車速パルス間隔と閾値との大小関係をモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。特に、GPS測位データを用いることなく車速パルス抜けを検出できるので、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、車速パルス抜けの検出精度が高くなる。
【0116】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。ここに、図8は、第3実施形態における車速パルス間隔を示すタイムチャートであり、図9は、第3実施形態における車速パルス検出動作のフローチャートである。尚、第3実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第3実施形態における車速パルス抜け検出方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0117】
図8に示すように、第3実施形態の車速パルス抜け検出方法では、車速パルスPが発生される度に、車速パルスのパルス間隔Wを計測する。そして、前回計測されたパルス間隔Wから、今回計測される筈のパルス間隔Wの終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。その後、予測された発生時刻を過ぎても、次の車速パルスが発生されないことで、車速パルス抜けを検出するものである。
【0118】
即ち、図9において先ず、車速パルスの発生に伴い算出される前回の車速パルス間隔をバッファに保存する(ステップS31)。そして、この前回の車速パルスの間隔から、今回計測される筈の車速パルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測する。例えば、1−α<(今回に計測される筈のパルス間隔/前回に計測されたパルス間隔)<1+αなどの関係式(但し、αは、車両の加減速を考慮して予め設定される係数)により今回計測される筈のパルス間隔を予測し、この前回に計測されたパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻に、この予測されたパルス間隔を加算することで、今回計測される筈の車速パルスの発生時刻を予測する(ステップS32)。
【0119】
次に、車速パルスの発生をモニタリングする(ステップS33)。そして、車速パルスが発生しない限り(ステップS33:いいえ)、システムコントローラ20に内蔵されたタイマーを参照して、現在時刻が、予測された発生時刻を過ぎたか否かをモニタリングする(ステップS34)。そして、現在時刻が、予測された時刻を過ぎていない限り(ステップS34:いいえ)、ステップS33に戻って、車速パルスの発生をモニタリングする。
【0120】
これらの判定の結果、現在時刻が予測時刻を過ぎないまま(ステップS34:いいえ)、車速パルスの発生があると(ステップS33:はい)、車速パルス抜けは発生していないものとして、ステップS31に戻り、ナビゲーション動作を通常通りに続ける。
【0121】
他方、ステップS33で車速パルスの発生がないまま(ステップS33:いいえ)、現在時刻が予測時刻を過ぎた場合(ステップS34:はい)、車速パルス抜けであると判定し、それまで行われていた車速パルスに基づく速度や移動距離の算出に係る通常のナビゲーション処理を、車速パルス抜けが発生した場合における特別処理に切り替える(ステップS35)。そして、車速パルス抜けの検出を終了すると共に、次の車速パルス抜けに備えての図9に示した検出サイクルが、ナビゲーション動作の一環として割り込み処理やサブルーチン等として、再び開始される。
【0122】
従って、第3実施形態によれば、現在時刻が予測時刻を過ぎるか否かをモニタリングするという比較的簡単な工程により、車速パルス抜けを高信頼性で検出できるので、実用上便利である。特に、GPS測位データを用いることなく車速パルス抜けを検出できるので、GPS測位のように例えば1/10秒間又は1秒間や2秒間といった所定時間に平均化された速度を用いない分だけ、車速パルス抜けの検出精度が高くなる。
【0123】
尚、予測工程では、前回に計測されたパルス間隔に加えて、前々回以前に計測されたパルス間隔から、今回のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの発生時刻を予測することも可能である。また、発生時刻を予測するのに代えて今回のパルス間隔を予測して、予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が実際に計測されるか否かを検出条件とすることも可能である。
【0124】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図10を参照して説明する。ここに、図10は、第4実施形態におけるナビゲーション動作のフローチャートである。尚、第4実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。
【0125】
第4実施形態は、上述した第1から第3実施形態の車速パルス抜け検出方法を含むナビゲーション方法に係るものである。
【0126】
即ち、第4実施形態では、先ずGPS測位装置18によりGPS測位を行い(ステップS41)、これと並行して、車速センサ13を含む自立測位装置10により自立測位を行う(ステップS42)。そして、上述した第1から第3実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出方法により、車速パルス抜けが検出されたか否かが判定される(ステップS43)。
【0127】
この判定の結果、車速パルス抜けが検出されていなければ(ステップS43:いいえ)、自立測位の精度は十分高いものとして、GPS測位に基づく車速、移動距離、現在位置等に対し、自立測位に基づく補正を加える(ステップS44)。そして、この補正を加えた後の現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS45)。
【0128】
他方、車速パルス抜けが検出されると(ステップS43:はい)、車速パルス抜けの影響により自立測位の精度は低いものとして、GPS測位に基づく車速、移動距離、現在位置等に対し、自立測位に基づく補正を加えることなく、現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS45)。
【0129】
そして、ナビゲーション終了命令が入力されていなければ(ステップS46:いいえ)、ステップS41及びS42に戻り、通常のナビゲーション動作を続行する。
【0130】
他方、ナビゲーション終了命令が入力されると(ステップS46:はい)、一連のナビゲーション動作を終了する。
【0131】
以上のように、第4実施形態によれば、車速パルス抜けの発生していない状態では、車速パルスに基づく自立測位の結果を有効利用することで、最終的な現在位置等の測位精度を高め、しかも車速パルス抜けが発生した時には、車速パルスに基づく自立測位の結果を利用しないことで、最終的な現在位置等の測位精度を低めることを回避するので、全体としてGPS測位及び自立測位を組み合わせて、最終的に高い測位精度が得られる。
【0132】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、図11を参照して説明する。ここに、図11は、第5実施形態におけるナビゲーション動作のフローチャートである。尚、第5実施形態のハードウエア構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様である。但し、第5実施形態におけるナビゲーション方法は、GPS測位等の電波測位からは独立して行われるものであるので、自立測位にのみ基づく車載用ナビゲーションシステムにおいても実行可能である。
【0133】
第5実施形態は、上述した第1から第3実施形態の車速パルス抜け検出方法を含むナビゲーション方法に係るものである。
【0134】
即ち、第5実施形態では先ず、車速センサ13を含む自立測位装置10により自立測位を行う(ステップS51)。そして、上述した第1から第3実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出方法により、車速パルス抜けが検出されたか否かが判定される(ステップS52)。
【0135】
この判定の結果、車速パルス抜けが検出されていなければ(ステップS52:いいえ)、自立測位の精度は十分高いものとして、これに基づく現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS54)。
【0136】
他方、車速パルス抜けが検出されると(ステップS52:はい)、車速パルスに対する補正を行う。具体的には、システムコントローラ20は、例えば、過去や未来に発生される車速パルスに基づいて、欠落した車速パルスの補完処理を行ったり、速度や移動距離に対する補正を加える。そして、このように補正を加えた後に得られる現在位置等をディスプレイ44の地図上に表示するなどの所定種類の出力を行う(ステップS54)。
【0137】
そして、ナビゲーション終了命令が入力されていなければ(ステップS55:いいえ)、ステップS51に戻り、通常のナビゲーション動作を続行する。
【0138】
他方、ナビゲーション終了命令が入力されると(ステップS55:はい)、一連のナビゲーション動作を終了する。
【0139】
以上のように、第5実施形態によれば、車速パルス抜けが発生した時には、車速パルスに補正を加えることで、最終的な現在位置等の測位精度を低めることを回避するので、最終的に高い測位精度が得られる。
【0140】
尚、以上説明した第1から第5実施形態では、車速パルス抜けを検出しているが、これに加えて又は代えて、タイヤの空回り等に起因した車速センサ13による車速パルスの余剰発生を検出することも可能である。即ち、車両の重量、エンジン出力等に基づいて実世界では加速不可能な程度にまで車速パルスに基づく速度が急上昇したり、車速パルスに基づく速度が電波測位データに基づく速度と比べて著しく上昇した場合などに、閾値の設定や閾値と比較する際の大小関係を逆転させたりすることで第1から第5実施形態と同様の理論により車速パルスの余剰発生を検出できる。
【0141】
最後に、以上説明した第1から第5実施形態によって補正された速度の具体例について図12から図15を参照して説明する。ここに、図12は、ある車両の走行状態について、GPS測位のみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図であり、図13は、図12と同じ走行状態について、車速パルスのみに基づく車速を時間軸に対して示した特性図である。図14は、図12及び図13と同じ走行状態について、車速パルスに対して、上述した第1から第5実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出時に、車速パルスに対して補正を加えた結果として得られる車速を時間軸に対して示した特性図である。また、図15は、第1から第5実施形態のいずれかによる車速パルス抜け検出地点を時間軸上に示す特性図である。
【0142】
図15に示された車速パルス抜け検出地点の付近では、当該車速パルス抜けの悪影響により、図13に示した車速には、大きなノイズが入っている。即ち、これらの地点付近では、車速パルスに基づく車速には大きな誤差が含まれていると考察される。これに対し、本実施形態により車速パルス抜けを検出して、これに適当な補正(当該補正自体は、車速パルスを補正する公知のいずれの方法を用いてもよい)を加えることで、図14に示すように、車速パルス抜け地点の付近におけるノイズは極度に低減されており、図12に示したGPS測位に基づく車速(即ち、車速パルス抜けとは無関係である車速)に、より近い車速が得られていることが分かる。
【0143】
図12から図15から分かるように、本実施形態によれば、自立測位を単独で用いた或いは自立測位と電波測位とを組み合わせて用いた車載用ナビゲーションシステムにおいて、車速パルス抜けの検出を高精度で行うことが可能となる。
【0144】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう車速パルス抜け検出方法及び装置、ナビゲーションシステム並びにコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0145】
10…自立測位装置、11…加速度センサ、12…角速度センサ、13…車速センサ、14…磁界発生源、15…タイヤ、18…GPS測位装置、19…測位電波、20…システムコントローラ、21…インタフェース、22…CPU、23…ROM、24…RAM、30…バス、31…CD−ROMドライブ、32…DVD−ROMドライブ、40…表示ユニット、50…音声出力ユニット、60…入力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、
前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、
前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項2】
前記第1算出工程は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出工程は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出工程は、前記第1算出工程により算出された速度と前記第2算出工程により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とすることを特徴とする請求項1に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項3】
前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出工程と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出工程とを更に備えており、
前記検出工程は、前記第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件とする
ことを特徴とする請求項2に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項4】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測工程と、
該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程と、
該第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項5】
前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持工程を更に備えており、
前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持工程により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きい
ことを検出条件とすることを特徴とする請求項4に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項6】
前記所定閾値は、予め設定された固定値又は可変値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項7】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測工程と、
該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測工程と、
前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項8】
前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程を更に備えており、
前記予測工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する
ことを特徴とする請求項7に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項9】
前記予測工程では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、
前記検出工程では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測工程により計測されないことを検出条件とする
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項10】
前記検出工程は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項11】
前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項12】
前記検出工程は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項13】
電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出装置と、
前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出装置と、
前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項14】
前記第1算出装置は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出装置は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出装置は、前記第1算出装置により算出された速度と前記第2算出装置により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とすることを特徴とする請求項13に記載の車速パルス抜け検出装置。
【請求項15】
前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出装置と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出装置とを更に備えており、
前記検出装置は、前記第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件とする
ことを特徴とする請求項14に記載の車速パルス抜け検出装置。
【請求項16】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測装置と、
該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置と、
該第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項17】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測装置と、
該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測装置と、
前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出装置と、
前記車速センサと、
前記車速パルス抜け検出装置により前記車速パルス抜けが検出されると、前記車速パルスに補正を加える補正手段と、
前記車速パルスに基づいて、現在位置表示を行う表示手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーションシステム。
【請求項19】
電波測位データを出力する電波測位装置を更に備えており、
前記表示手段は、前記車速パルスに加えて前記電波測位データに基づいて、前記現在位置表示を行うことを特徴とする請求項18に記載の車載用ナビゲーションシステム。
【請求項20】
コンピュータに、請求項1から12のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出工程と、
前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出工程と、
前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項2】
前記第1算出工程は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出工程は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出工程は、前記第1算出工程により算出された速度と前記第2算出工程により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とすることを特徴とする請求項1に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項3】
前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出工程と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出工程とを更に備えており、
前記検出工程は、前記第3算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出工程により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件とする
ことを特徴とする請求項2に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項4】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測工程と、
該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程と、
該第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項5】
前記第n+m回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第2保持工程を更に備えており、
前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する前記第2保持工程により保持されたパルス間隔の比が前記所定閾値よりも大きい
ことを検出条件とすることを特徴とする請求項4に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項6】
前記所定閾値は、予め設定された固定値又は可変値であることを特徴とする請求項4又は5に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項7】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出方法であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測工程と、
該計測工程により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測工程により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測工程と、
前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出工程と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出方法。
【請求項8】
前記第n回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持工程を更に備えており、
前記予測工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔から前記発生時刻を予測する
ことを特徴とする請求項7に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項9】
前記予測工程では、前記発生時刻を予測するのに代えて前記第n+m回目のパルス間隔を予測し、
前記検出工程では、前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速パルスが発生されないことに代えて、前記予測されたパルス間隔より短いパルス間隔が前記計測工程により計測されないことを検出条件とする
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項10】
前記検出工程は、前記矛盾を検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項11】
前記検出工程は、前記第1保持工程により保持されたパルス間隔に対する、前記計測工程により第n+m回目に計測されたパルス間隔の比が他の所定閾値よりも小さいことを検出条件として、前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項12】
前記検出工程は、前記予測された発生時刻の前に前記車速センサにより前記車速パルスが発生されることを検出条件として前記車速センサによる前記車速パルスの余剰発生を検出することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法。
【請求項13】
電波測位装置を備えており且つ自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記電波測位装置の電波測位データから所定種類の第1物理量を算出する第1算出装置と、
前記車速パルスから前記所定種類の第2物理量を算出する第2算出装置と、
前記算出された第1物理量と前記算出された第2物理量との間に生じる矛盾を検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項14】
前記第1算出装置は、前記第1物理量として速度を算出し、前記第2算出装置は、前記第2物理量として速度を算出し、前記検出装置は、前記第1算出装置により算出された速度と前記第2算出装置により算出された速度との差が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの一検出条件とすることを特徴とする請求項13に記載の車速パルス抜け検出装置。
【請求項15】
前記電波測位データから速度変化量を算出する第3算出装置と、前記車速パルスから速度変化量を算出する第4算出装置とを更に備えており、
前記検出装置は、前記第3算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より小さく且つ前記第4算出装置により算出された速度変化量が所定閾値より大きいことを前記車速パルス抜けの他の検出条件とする
ことを特徴とする請求項14に記載の車速パルス抜け検出装置。
【請求項16】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスの間隔を計測する計測装置と、
該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔を少なくとも一時的に保持する第1保持装置と、
該第1保持装置により保持されたパルス間隔に対する、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測されたパルス間隔の比が所定閾値よりも大きいことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項17】
自立測位用に車速センサを備えた車載用ナビゲーションシステム内で前記車速センサにより発生される車速パルスにおける車速パルス抜けを検出する車速パルス抜け検出装置であって、
前記車速センサにより発生された車速パルスのパルス間隔を計測する計測装置と、
該計測装置により第n(但し、nは自然数)回目に計測されたパルス間隔から、前記計測装置により第n+m(但し、mは自然数)回目に計測される筈のパルス間隔の終端を規定する車速パルスの前記車速センサによる発生時刻を予測する予測装置と、
前記予測された発生時刻を過ぎても前記車速センサにより前記車速パルスが発生されないことを検出条件として前記車速パルス抜けを検出する検出装置と
を含むことを特徴とする車速パルス抜け検出装置。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出装置と、
前記車速センサと、
前記車速パルス抜け検出装置により前記車速パルス抜けが検出されると、前記車速パルスに補正を加える補正手段と、
前記車速パルスに基づいて、現在位置表示を行う表示手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーションシステム。
【請求項19】
電波測位データを出力する電波測位装置を更に備えており、
前記表示手段は、前記車速パルスに加えて前記電波測位データに基づいて、前記現在位置表示を行うことを特徴とする請求項18に記載の車載用ナビゲーションシステム。
【請求項20】
コンピュータに、請求項1から12のいずれか一項に記載の車速パルス抜け検出方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−210629(P2010−210629A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94949(P2010−94949)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【分割の表示】特願2001−136515(P2001−136515)の分割
【原出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【分割の表示】特願2001−136515(P2001−136515)の分割
【原出願日】平成13年5月7日(2001.5.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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