説明

車間制御装置

【課題】運転者が感じる違和感を低減することができる車間制御装置を提供する。
【解決手段】車間制御装置1は、ECU2を備えている。ECU2は、先行車両に追従するように自車両10の走行を制御する。また、ECU2は、顔向きセンサ4及び車内機器5から出力された各信号値に基づいて運転者の顔向き及び車内機器5の操作状況を検出し、これらに基づいて運転者の走行に対する注意力の度合いを求め、かかる注意力の度合いに応じてACC制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方を変更する。よって、ACC制御の際、先行車両に対する注意力に応じて加減速勾配が制御されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行車両に対する自車両の車間距離を制御するための車間制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車間制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、先行車両に追従するように自車両の走行を制御(以下、単に「追従制御」という)する走行制御手段を備えたものが知られている。この車間制御装置では、自車両と先行車両との車間距離に応じて減速度勾配を変更して追従制御が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−044326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような車間制御装置では、運転者の先行車両に対する注意力によっては、運転者が追従制御の加減速勾配に対して違和感を感じてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、運転者が感じる違和感を低減することができる車間制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係る車間制御装置は、先行車両に対する自車両の車間距離を制御するための車間制御装置であって、先行車両に追従するように自車両の走行を制御する走行制御手段と、自車両の運転者の走行に対する注意力の度合いを検出する注意力検出手段と、注意力検出手段によって検出した注意力の度合いに応じて、走行制御手段による制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方を変更するするゲイン値変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この車間制御装置では、運転者の走行に対する注意力の度合いに応じて、走行制御手段による制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方が変更される。よって、追従制御の際、先行車両に対する注意力に応じて加減速勾配が制御されることとなり、その結果、運転者が感じる違和感を低減することが可能となる。
【0008】
ここで、走行制御手段は、先行車両と自車両との相対位置関係を設定値に保つように自車両の走行を制御することが好ましい。この場合、例えばACC(Adaptive Cruise Control)等の自動走行が実行されることとなる。
【0009】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、注意力検出手段は、運転者の顔の向きを検出する顔向き検出手段、自車両のブレーキペダル若しくはアクセルペダルに対する運転者の足の載置状況を検出する載置状況検出手段、及び自車両の車内機器の操作状況を検出する操作状況検出手段、の少なくとも1つを含んで構成されている場合がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転者が感じる違和感を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る車間制御装置を示すブロック図である。
【図2】図1の車間制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の車間制御装置1は、先行車両に対する自車両10の車間距離を制御するためのものである。ここでの車間制御装置1は、自動車等の自車両10に搭載され、ACCが作動されて追従制御が実行されたときの車間距離を制御する。
【0014】
図1に示すように、車間制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2を備えている。このECU2には、エンジンアクチュエータ(スロットルアクチュエータ)及びブレーキアクチュエータ等のアクチュエータ3が接続されている。
【0015】
これにより、ECU2は、例えばミリ波レーダ等のセンサで検出された自車両10の走行状態に基づいて、先行車両と自車両10との相対位置関係を設定値に保つようアクチュエータ3を制御し、先行車両に追従するよう自車両10の走行を制御する(以下、単に「追従制御」又は「ACC制御」という)。
【0016】
また、ECU2には、顔向きセンサ(顔向き検出手段)4及び車内機器5が接続されている。顔向きセンサ4は、例えば自車両10の運転者の視線に基づいて該運転者の顔向きを判定し、顔向きに関する信号をECU2に出力する。車内機器5としては、カーナビ、オーディオ、エアコン、車載電話器等が挙げられ、ワイパースイッチやウィンカースイッチ等の車内設備も含まれる。この車内機器5は、その操作状況(操作中であるか否か)に関する信号をECU2に出力する。
【0017】
これにより、ECU2は、出力された各信号値に基づいて運転者の顔向き及び車内機器5の操作状況を検出し、これらに基づいて運転者の走行に対する注意力の度合いを求め、かかる注意力の度合いに応じてACC制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方を変更する(詳しくは後述)。
【0018】
このように構成された車間制御装置1では、図2に示すように、まず、先行車両に追従走行中であるか否か、つまり、ACC制御が実行されているか否かを判定する(S1)。ACC制御が実行されていない場合、そのまま処理を終了する一方、ACC制御が実行されている場合、運転者が車内機器5を操作中であるか否かを判定する(S2)。
【0019】
運転者が車内機器5を操作中である場合、加速ゲイン値を標準値(デフォルト値)から小さいものに変更すると共に、減速ゲイン値を標準値のままとする(S3)。これは、次の理由による。
【0020】
すなわち、運転者が車内機器5を操作中である場合、運転者の注意が運転に向かっておらず、走行に対する注意力の度合いが低いと判定できる(検出できる)。よって、加速ゲイン値を小さくして先行車両に対する追従性を犠牲にしてでも加速度を抑えることで、一層安全に追従走行できるだけでなく、運転者が自ら運転に注意を向けるよう促すことが可能となるためである。なお、減速ゲイン値は、通常の標準値でも充分安全であることから、変更していない。
【0021】
一方、運転者が車内機器5を操作中でない場合、運転者が前を向いているか否かを判定する(S4)。運転者が前を見ていない場合、加速ゲイン値及び減速ゲイン値が標準値のままとされる(S5)。他方、運転者が前を見ている場合、加速ゲイン値を大きいものに変更すると共に、減速ゲイン値を小さいものに変更する(S6)。これは、次の理由による。
【0022】
すなわち、運転者が前を見ている場合、運転者の注意が運転に向かっており、走行に対する注意力の度合いが高いと判定できる(検出できる)。よって、運転者がいつでも減速できる状態であると推認できるため、加速ゲイン値を大きくして先行車両に対する追従性を高めることで、スムーズな追従が可能となるためである。また、減速ゲイン値を小さくすることで、速度低下を抑制することができ、NV性能及び燃費を向上させることが可能となるためである。
【0023】
以上、本実施形態にでは、運転者が前方注意状態にあるとき、及び、運転者が各種スイッチ類を操作中の状態にあるとき、これら運転者状態のそれぞれに応じてACC制御が変更される。つまり、運転者の走行に対する注意力の度合いに応じて、ACC制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方が変更される。よって、ACC制御の際、先行車両に対する注意力に応じて加減速勾配が制御されることになり、運転者が感じる違和感を低減することが可能となる。
【0024】
ところで、追従走行においては、運転者が自ら運転する場合、加速中の先行車両が急減速したときでも、運転者は直ちに減速操作を行うことから、安全に減速することができる。一方、ACC制御により自動的に加速する場合では、加速中の先行車両が急減速したとき、運転者が咄嗟に減速操作を行い得るとは限らない。そのため、ACC制御では、広い車間距離が必要となり、その結果、自車両10が先行車両に置いて行かれることがある。
【0025】
また、追従走行においては、運転者が自ら運転する場合、減速中の先行車両が減速度を強めたときでも、運転者は直ちに減速度を強くすることから、安全に減速することができる。一方、ACC制御により自動的に減速する場合では、減速中の先行車両が減速度を強めたとき、運転者が咄嗟に減速操作を行い得るとは限らない。そのため、ACC制御では、広い車間距離が必要となると共に、必要以上に減速されることがある。
【0026】
これに対し、本実施形態では、上述したように、運転者の走行に対する注意力の度合いに応じて、ACC制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方が変更される。よって、ACC制御でも、運転者が咄嗟に減速操作を行い得る場合(注意力の度合いが高い場合)には、加速ゲイン値が大きく且つ減速ゲイン値が小さくなるため、広い車間距離が必要となったり必要以上に減速されたりするのを防止することができる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、自車両10のブレーキペダル及びアクセルペダルに対する運転者の足の載置状況を検出するセンサ(載置状況検出手段)をさらに備えていてもよい。この場合、例えばアクセルペダルに足が載置されていることが検出されると、走行(特に、加速)に対する注意力の度合いが高いとされ、加速ゲイン値が大きくされる。また、例えばブレーキペダルに足が載置されていることが検出されると、走行(特に、減速)に対する注意力の度合いが高いとされ、減速ゲイン値が小さくされる。
【0028】
なお、以上においては、ACC制御を実行するECU2が、走行制御手段を構成する。運転者の顔向き及び車内機器5の操作状況に基づき注意力の度合いを求めるECU2と顔向きセンサ4とが、注意力検出手段を構成する。ACC制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値を変更するECU2が、ゲイン値変更手段を構成する。
【符号の説明】
【0029】
1…車間制御装置、2…ECU(走行制御手段、注意力検出手段、ゲイン値変更手段、操作状況検出手段)、4…顔向きセンサ(顔向き検出手段、注意力検出手段)、5…車内機器、10…自車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両に対する自車両の車間距離を制御するための車間制御装置であって、
前記先行車両に追従するように前記自車両の走行を制御する走行制御手段と、
前記自車両の運転者の走行に対する注意力の度合いを検出する注意力検出手段と、
前記注意力検出手段によって検出した前記注意力の度合いに応じて、前記走行制御手段による制御の加速ゲイン値及び減速ゲイン値の少なくとも一方を変更するするゲイン値変更手段と、を備えたことを特徴とする車間制御装置。
【請求項2】
前記走行制御手段は、前記先行車両と前記自車両との相対位置関係を設定値に保つように前記自車両の走行を制御することを特徴とする請求項1記載の車間制御装置。
【請求項3】
前記注意力検出手段は、前記運転者の顔の向きを検出する顔向き検出手段、前記自車両のブレーキペダル若しくはアクセルペダルに対する前記運転者の足の載置状況を検出する載置状況検出手段、及び前記自車両の車内機器の操作状況を検出する操作状況検出手段、の少なくとも1つを含んで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車間制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−188874(P2010−188874A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35446(P2009−35446)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】