説明

車高調整装置

【課題】イグニッションスイッチIGがオフされているときの消費電力を低減可能な車高調整装置(車両)100を提供する。
【解決手段】車高調整を行う車高調整手段5と、イグニッションスイッチIGのオンで起動して、車高調整手段5による車高調整を制御する制御手段9とを有する車高調整装置100において、車体1の下部に設けられ、障害物と接触した場合に信号を制御手段9に出力する接触検知手段2を有し、制御手段9は、イグニッションスイッチIGのオフで停止し、停止後に接触検知手段2から信号が入力すると起動し、車高調整を制御した後に再び停止する。制御手段9は、イグニッションスイッチIGのオフによる直近の停止後に、信号が入力した入力回数を信号が入力して起動する度にカウントし、その直近の停止から入力回数が所定回数を超えるまでの経過時間が所定時間未満である場合に、故障検知フラグを発生させ記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され車高調整を行う車高調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車高調整装置としては、車両が停車中又は低速走行中、もしくは、目標車高が運転者により変更になったり、イグニッションスイッチがオンになったり、ドアやトランクが開いたりしたときに、車体の下部等と路面との距離を計測して、その距離が干渉危険距離と判定されると、目標車高を高く設定し、その目標車高に実車高が一致するように車高調整を行うものが提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
また、コンプレッサを作動させて、エアチャンバの内圧を上下させて、車高調整を行う車高調整装置において、車室内騒音が小さい場合にコンプレッサの作動を禁止し、コンプレッサによる騒音を緩和させることが提案されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−178413号公報
【特許文献2】特開2008−80838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車高調整装置は、車両のイグニッションスイッチがオフされている、いわゆる駐車状態では、定期的に起動し、車高調整を行なっていた。しかし、定期的な車高調整の間隔は、経年変化も考慮して短期間に設定されていたので、イグニッションスイッチがオフされ、エンジンがかかっていない状態で、頻繁に車高調整が行われることになり、その消費電力を賄うために大容量のバッテリを車載させる必要があった。このため、車両のコスト及び車重が増大していた。
【0006】
そこで、本発明は、イグニッションスイッチがオフされているときの消費電力を低減可能な車高調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車高調整を行う車高調整手段と、イグニッションスイッチのオンで起動して、前記車高調整手段による車高調整を制御する制御手段とを有する車高調整装置において、
車体の下部に設けられ、障害物と接触した場合に信号を前記制御手段に出力する接触検知手段を有し、
前記制御手段は、前記イグニッションスイッチのオフで停止し、停止後に前記接触検知手段から前記信号が入力すると起動し、前記車高調整を制御した後に再び停止することを特徴としている。
【0008】
これによれば、接触検知手段は、車体の下部に設けられ、障害物と接触した場合に信号を出力するので、車体が下がって障害物に当る直前に、接触検知手段は、信号を出力することができる。そして、接触検知手段が障害物に接触するまで、車体が下がりきってから車高調整を行うことになるので、信号を出力する回数、さらには、車高調整をする回数を、低減させることができ、消費電力を低減することができる。
【0009】
また、接触検知手段は、車体の下部に設けられ、上からの車体と下からの障害物とで挟まれた場合に、信号を出力することになるので、必ずしも外部からの電力の供給、例えば車載のバッテリからの電力の供給を必要とせず、挟まれたことによる物理的なエネルギを電気的なエネルギ(電力)に変換し、この変換された電力を、信号として出力することができる、例えば、圧電素子のようなデバイスを接触検知手段として用いることができる。外部からの電力の供給を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0010】
また、本発明では、前記制御手段は、
前記イグニッションスイッチのオフによる直近の停止後に、前記信号が入力した入力回数を、前記信号が入力して起動する度にカウントし、
前記直近の停止から前記入力回数が所定回数を超えるまでの経過時間が、所定時間未満である場合に、故障検知フラグを発生させ記憶することが好ましい。
【0011】
例えば、車両が長期間放置されたわけでない、所定時間未満の間に、信号が何度も入力され入力回数が所定回数を超えた場合は、車高調整手段の例えばエアサスペンションのダイヤフラムやエアチャンバのシール部に亀裂が生じ空気が漏れている等の故障が発生していると考えられる。本発明によれば、このような場合に、故障検知フラグを発生させ記憶することで、故障の発生を検知することができる。故障検知フラグは記憶されているので、イグニッションスイッチが、次に、運転者によってオンされた際等に、記憶された故障検知フラグに基づいて、運転者に故障を警報することができる。なお、前記した空気漏れによる故障は、イグニッションスイッチのオンで起動して、車体の車高が目標車高になるように車高調整しているときには、検知し難い故障である。エアチャンバに多少の空気漏れがあっても、それを補って余るほどの空気が供給されれば、車高を目標車高に調整し維持することが可能だからである。本発明によれば、このような検出困難な故障も検出することができる。
【0012】
また、本発明では、前記制御手段は、
前記車体の車高が目標車高になるように車高調整を制御し、
前記信号が入力し車高調整を複数回繰り返す場合に、前記目標車高を前回より低下させることが好ましい。
【0013】
目標車高を低下させることで、車体の下部を、障害物に接近させるように車高調整することができる。車体の下部を障害物に接近させて配置するほど、車体の下部がその配置から下がって障害物に接触する直前の降下速度を遅くできると考えられる。すなわち、車体の下部を障害物に接近させて配置するほど、車体の下部が障害物に接触した際に車体に作用する力を小さくすることができる。これによれば、車体をより安定に保護することができる。車高調整が複数回繰り返し実施される場合(例えば、所定回数以上実施される場合)、すなわち、頻繁に車高調整が行われる場合には、これに伴って車高の降下も頻繁に起きていることになるので、車高調整の際の目標車高を低下させて、車体の保護を強化している。逆に、車高調整が複数回繰り返し実施されない場合(例えば、実施回数が所定回数未満である場合)には、車高調整時の目標車高を低下させないので、車高調整の度に車高が目標車高に戻され、通常時の車高を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、イグニッションスイッチがオフされているときの消費電力を低減可能な車高調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る車高調整装置(車両)の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係り、接触検知手段(タッチセンサ)の取付けられた車高調整装置(車両)の側面図である。
【図3】エアサスペンションと可変減衰力ダンパとを備えた車高調整手段の縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車高調整装置(車両)において実施される車高調整方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0017】
図1に、本発明の実施形態に係る車高調整装置(車両)100の構成図を示す。車高調整装置100が、車両に搭載されていると考えてもよく、車高調整装置100が、車両の広範囲に組み込まれ一体となっているので、車両そのものと考えてもよい。車両100の車体1には、車輪3が前後左右に4個設置されている。これら各車輪3は、サスペンションアーム4を介して車体1に支持されており、各車輪3と車体1との間には、車高調整手段5が設けられている。車高調整手段5は、エアサスペンション6と、可変減衰力ダンパ7とを有し、車高調整を行うことができる。
【0018】
車両100には、車両100の全般にわたる各種の制御を実施するメイン制御手段10と、車高調整手段5による車高調整の制御を実施するサブ制御手段((車高)制御手段)9とが設けられている。メイン制御手段10と、サブ制御手段((車高)制御手段)9とは、イグニッションスイッチIGのオン(On)で起動(電源オン)し、イグニッションスイッチIGのオフ(Off)で停止(電源オフ)する。メイン制御手段10は、イグニッションスイッチIGのオン(On)で起動してから、イグニッションスイッチIGのオフ(Off)で停止するまで、車両100の全般にわたる各種の制御を実施する。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、イグニッションスイッチIGのオン(On)で起動してから、イグニッションスイッチIGのオフ(Off)で停止するまで、車高調整手段5による車高調整の制御を実施する。
【0019】
サブ制御手段((車高)制御手段)9は、停止中に、接触検知手段(タッチセンサ)2からの信号を受信しても、起動することができ、車高調整手段5による車高調整の制御を実施することができる。なお、メイン制御手段10が、サブ制御手段((車高)制御手段)9を含んでいてもよく、接触検知手段(タッチセンサ)2からの信号を受信して、サブ制御手段((車高)制御手段)9を含むメイン制御手段10全体が起動してもよい。
【0020】
車高調整手段5の近傍には、ストロークセンサ8が設けられている。ストロークセンサ8は、車高調整手段5の伸縮した長さ(ストローク)を計測することができる。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、ストロークセンサ8が計測したストロークを取得し、取得したストロークに基づいて、車高(実車高)を算出することができる。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、算出された車高が、予め記憶手段12に記憶させておいた目標車高になるように制御された車高調整を行う。
【0021】
車高調整は、サブ制御手段((車高)制御手段)9で車高調整手段5を制御することによって行われるが、サブ制御手段((車高)制御手段)9による制御は、圧縮空気制御ユニット13を介して行われている。
【0022】
圧縮空気制御ユニット13は、サブ制御手段((車高)制御手段)9の起動に伴って起動し、サブ制御手段((車高)制御手段)9の停止に伴って停止する。圧縮空気制御ユニット13は、圧縮空気を発生させるコンプレッサ(図示省略)と、開弁してその圧縮空気を各エアサスペンション6に供給し、閉弁して各エアサスペンション6に供給された圧縮空気を保持する開閉バルブ(図示省略)とを有している。各エアサスペンション6では、圧縮空気が供給されることで、各エアサスペンション6内の空気圧が調整され、車高調整手段5のストロークを変化させることで、車高を調整することができる。
【0023】
車体1の前方(FRONT)と後方には、バンパ1aが設けられている。そのバンパ1aには、接触検知手段(タッチセンサ)2が取付けられている。なお、接触検知手段(タッチセンサ)2の配置は、車体1の前方と後方とに限らず、車体の側方であってもよく、車体1の外周部に設けるのが望ましいが、車体1の底部(腹)に設けてもよい。図2に、車両100の側面図を示すが、接触検知手段(タッチセンサ)2は、バンパ1a(車体1)の下部に設けられている。車高が下がると、車体1(バンパ1a)に障害物が接触する前に、接触検知手段(タッチセンサ)2が、障害物に接触することができる。接触検知手段(タッチセンサ)2は、障害物と接触すると、信号を、サブ制御手段((車高)制御手段)9に出力する。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、停止中であっても、この信号が入力すると起動し、車高調整の制御をした後に再び停止する。
【0024】
接触検知手段(タッチセンサ)2が、信号を出力するのは、障害物に接触したときであるが、この状況は、車体1の下部に設けられた接触検知手段(タッチセンサ)2が、車体の降下と共に降下した結果、下方の障害物の上に圧接している状況であると考えられる。また、接触検知手段(タッチセンサ)2は、車体1にも圧接している。すなわち、接触検知手段(タッチセンサ)2は、車体1と障害物とで挟まれ圧縮された場合に、信号を出力することになる。このため、接触検知手段(タッチセンサ)2には、圧電素子のような、圧縮されたことによる物理的なエネルギを電気的なエネルギ(電力)に変換して、この変換した電力を信号として出力するような、タッチセンサを用いることが望ましい。外部からの電力の供給を必要としないので、消費電力を低減することができる。
【0025】
図1に示すように、サブ制御手段((車高)制御手段)9は、車高調整手段5に故障が発生したか否かを判定する故障判定手段11と記憶手段12とを有している。そして、故障判定手段11は、タイマ11aとカウンタ11bとを有している。
【0026】
カウンタ11bは、イグニッションスイッチIGのオフによるサブ制御手段((車高)制御手段)9の直近の停止後に、接触検知手段(タッチセンサ)2から信号が入力した入力回数(カウント回数)を、その信号が入力して起動する度にカウントする。記憶手段12は、起動する度にカウントされ更新されるカウント回数を記憶する。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、起動する度に、カウント回数が、予め記憶手段12に記憶させておいた所定回数を超えたか否か判定する。
【0027】
タイマ11aは、イグニッションスイッチIGのオフによるサブ制御手段((車高)制御手段)9の直近の停止から、カウント回数が所定回数を超えたと判定されるまでの経過時間を計測する。サブ制御手段((車高)制御手段)9は、計測された経過時間が、予め記憶手段12に記憶させておいた所定時間未満であるか否か判定する。計測された経過時間が所定時間未満であると判定した場合は、サブ制御手段((車高)制御手段)9は、故障検知フラグを発生させ、記憶手段12は故障検知フラグが発生していることを記憶する。次に、イグニッションスイッチIGが、運転者によってオンされ、サブ制御手段((車高)制御手段)9が起動した際等に、サブ制御手段((車高)制御手段)9は、記憶手段12から故障検知フラグを読み出し、故障検知フラグが発生していたことに基づいて、運転者に故障を警報する。なお、タイマ11aは、サブ制御手段((車高)制御手段)9が停止しているときでも現在の時刻を計測するために、稼動している。ただ、これに限らず、タイマ11aは、外部から必要な時刻にその時刻を取得してもよい。具体的には、イグニッションスイッチIGのオフによるサブ制御手段((車高)制御手段)9の直近の停止時刻に、そのときの現在時刻を外部から取得し、その現在時刻を停止時刻として記憶手段12に記憶させ、カウント回数が所定回数を超えたと判定された判定時刻に、そのときの現在時刻を判定時刻として外部から取得し、記憶しておいた停止時刻から判定時刻を引いて、前記経過時間を取得してもよい。この場合、タイマ11aも、サブ制御手段((車高)制御手段)9の停止にあわせて、停止することができる。
【0028】
図3に、車高調整手段5の縦断面図を示す。車高調整手段5は、エアサスペンション6と可変減衰力ダンパ7とを備えている。可変減衰力ダンパ7は、モノチューブ式(ド・カルボン式)であり、MRF(Magneto-Rheological Fluid:磁気粘性流体)が充填された円筒状のシリンダ22と、このシリンダ22に対して軸方向に摺動しシリンダ22内を上部油室24と下部油室25とに区画するピストン26と、先端がピストン26に連結され、シリンダ22の上端を貫通しその上端に対して軸方向に摺動するピストンロッド23と、シリンダ22の下部に高圧ガス室27を画成するフリーピストン28とを有している。シリンダ22の下端は、車輪3に連動するサスペンションアーム4の上面に連結されている。また、ピストンロッド23の上端は、車体1に連結されている。
【0029】
ピストン26には、上部油室24と下部油室25とを連通する連通路29と、この連通路29の近傍に位置する電磁コイル30とが設けられている。サブ制御手段(車高制御手段)9から電磁コイル30に電流が供給されると、連通路29内に磁界が生じ、連通路29内のMRFに分散していた強磁性微粒子が鎖状のクラスタを形成する。これにより、連通路29を通過するMRFの見かけ上の粘度(以下、単に粘度と記す)が上昇し、可変減衰力ダンパ7の減衰力を増大(可変)させることができる。
【0030】
エアサスペンション6は、チャンバケーシング15と、カバー16と、ダイヤフラム17とを有している。チャンバケーシング15は、シリンダ22側が開口する有底円筒形状であり、その底部においてピストンロッド23に固定されている。カバー16は環形状に形成されてシリンダ22の外周面にシリンダ22を囲むように固定されている。チャンバケーシング15の開口端とカバー16の先端とは、ダイヤフラム17によって連結されており、チャンバケーシング15、カバー16、ダイヤフラム17、シリンダ22、ピストンロッド23とによって、エアチャンバ18が画成されている。チャンバケーシング15には、貫通孔である空気孔19が形成されている。空気孔19を介して、圧縮空気制御ユニット13から、エアチャンバ18へ圧縮空気が供給される。
【0031】
エアサスペンション6は、エアチャンバ18内に圧縮空気が充填されることによってばねとして作用する。エアサスペンション6は、エアチャンバ18に圧縮空気を供給し内圧を制御することによって、ばね定数を可変制御することができる。また、エアチャンバ18に供給する圧縮空気量を制御してエアチャンバ18の容積を変化させることにより、車輪3毎に車高を変化させることができる。具体的には、圧縮空気制御ユニット13の制御によってエアチャンバ18に圧縮空気が供給されてエアチャンバ18内の空気圧が上昇すると、エアチャンバ18の容積が増大しようとして、ダイヤフラム17のチャンバケーシング15側が押し上げられ、ピストンロッド23がシリンダ22より引き出されるので、車高調整手段5(可変減衰力ダンパ7)の全長(ストローク)が長くなる。これにより、車輪3と車体1との上下方向における相対距離が長くなって車高が高くなる。
【0032】
そして、例えば、チャンバケーシング15から圧縮空気が抜けるなどして、車高が低下している場合に、可変減衰力ダンパ7の減衰力を増大させることで、その車高の低下速度を小さくすることができる。車高が低下している際には、車高調整手段5(可変減衰力ダンパ7)の全長(ストローク)が短くなり、ピストンロッド23がシリンダ22より引き込まれ、ピストン26が降下し、連通路29にMRFが流れる。MRFの見かけ上の粘度を上げ、MRFを流れ難くすることで、すなわち、減衰力を増大させることで、ピストン26の降下速度を小さくでき、車高の低下速度を小さくすることができる。
【0033】
図4に、本発明の実施形態に係る車高調整装置(車両)100において実施される車高調整方法のフローチャートを示す。車高調整方法は、イグニションスイッチIGが、運転者等によってオンされることでスタートする。
【0034】
まず、ステップS1で、メイン制御手段10とサブ制御手段((車高)制御手段)9が起動する。メイン制御手段10では、起動後、通常の運転制御が行われる。
【0035】
ステップS2で、サブ制御手段9は、記憶手段12に故障検知フラグの記憶があるか否か判定する。故障検知フラグがあると判定されれば(ステップS2、Yes)、ステップS3に進み、故障検知フラグがないと判定されれば(ステップS2、No)、ステップS4に進む。
【0036】
ステップS3で、サブ制御手段9は、運転者等に対して、車高調整手段5に故障が発生していることを知らせる故障警報を行う。そして、ステップS4に進む。
【0037】
ステップS4で、サブ制御手段9は、通常の車高調整を行うための制御を行う。
【0038】
ステップS5で、メイン制御手段10とサブ制御手段9は、イグニションスイッチIGが、オフされたか否か判定する。イグニションスイッチIGがオフされたと判定されれば(ステップS5、Yes)、ステップS6に進み、イグニションスイッチIGがオフされていないと判定されれば(ステップS5、No)、ステップS4に戻る。すなわち、メイン制御手段10とサブ制御手段((車高)制御手段)9は、イグニションスイッチIGがオフされたと判定されるまで(ステップS5、Yes)、通常の運転制御と、通常の車高調整を行うための制御とを行う。
【0039】
ステップS6で、サブ制御手段9は、タイマ11aが計測(取得)した現在時刻を、イグニッションスイッチIGのオフによるサブ制御手段9の直近の停止時刻として、記憶手段12に記憶させる。
【0040】
ステップS7で、メイン制御手段10とサブ制御手段9は、停止する(電源がオフされる)。
【0041】
ステップS8は、メイン制御手段10とサブ制御手段((車高)制御手段)9が停止しており、車高調整方法のフローがストップしている状態を示しているだけである。ただ、本発明の車高調整方法のフローでは、このステップS8を、ステップS9でのオン信号(信号)の発生を待機しているステップであり、イグニションスイッチIGがオンされるのを待機しているステップであると考えることができる。
【0042】
ステップS9で、サブ制御手段9は、接触検知手段(タッチセンサ)2からのオン信号(信号)を受信し、この信号の受信に基づいて起動する。
【0043】
ステップS10で、サブ制御手段9のカウンタ11bは、カウント回数に1回を加える。例えば、イグニッションスイッチIGのオフによる直近の停止から、最初の起動であれば、カウント回数は、0回に1回分が加えられ、1回となる。
【0044】
ステップS11で、サブ制御手段9は、カウント回数が、所定回数より大きいか(カウント回数>所定回数)否か判定する。カウント回数が所定回数より大きい(カウント回数>所定回数)と判定されれば(ステップS11、Yes)、ステップS12に進み、カウント回数が所定回数より大きくないと判定されれば(ステップS11、No)、ステップS18に進む。カウント回数が、所定回数より大きければ(カウント回数>所定回数)、車高調整手段5に故障が発生している可能性が高いと考えられ、所定回数より大きくなければ、車高調整手段5に故障は発生していないと考えられる。
【0045】
ステップS18で、サブ制御手段9は、車高(実車高)を目標車高に一致させるような車高調整の制御を行う。これにより、低下していた車高を上げることができる。
【0046】
ステップS19で、サブ制御手段9は、車高調整が終了したので、電源がオフされ停止する。そして、ステップS8に戻る。
【0047】
ステップS12以降では、ステップS11で可能性があるとされた車高調整手段5の故障が、本当に起こっているのか否か判定する。まず、ステップS12で、サブ制御手段9は、タイマ11aが計測(取得)した現在時刻を、カウント回数が所定回数を超えた(カウント回数>所定回数)と判定された判定時刻として、ステップS6で記憶しておいた停止時刻から、この判定時刻を引いて、イグニッションスイッチIGのオフからの経過時間(IGオフ経過時間)を算出(取得)する。なお、この経過時間は、タイマ11aによって、停止時刻から判定時刻までの時間を計測して求めてもよい。
【0048】
ステップS13で、サブ制御手段9は、経過時間(IGオフ経過時間)が、所定時間より小さい(IGオフ経過時間<所定時間)か否か判定する。経過時間が所定時間より小さい(IGオフ経過時間<所定時間)と判定されれば(ステップS13、Yes)、所定時間より短時間に頻繁に車高調整をしていると考え、故障が発生していると判定し、ステップS14に進む。一方、経過時間が所定時間より小さくないと判定されれば(ステップS13、No)、所定時間以上の長時間をかけて所定回数の車高調整をしていると考え、故障は発生していないと判定し、ステップS21に進む。
【0049】
ステップS14で、サブ制御手段9は、故障が検知されたとして、故障検知フラグを発生させ(オンし)、記憶手段12に、故障検知フラグを記憶させ、ステップS15に進む。
【0050】
ステップS21で、サブ制御手段9は、カウント回数をリセットし、ステップS15に進む。ステップS13で故障は発生していないと判定されたので、ステップS11で故障発生の可能性の判定材料となったカウント回数をリセットする。
【0051】
ステップS15で、サブ制御手段9は、例えば、記憶手段12に記憶されている目標車高を、降下させる方向に書き換えて記憶させる。これにより、次回の車高調整では、降下させた目標車高にあわせて車高を低く設定することができる。目標車高を降下させることで、車体1の下部を、前回より障害物に接近させて配置することになる。車体1の下部を障害物に接近させて配置するほど、車体1の下部がその配置から下がって障害物に接触する直前の降下速度を遅くできるので、車体の下部が障害物に接触したとしても、車体1に作用する力を小さくすることができる。また、ステップS15で、サブ制御手段9は、可変減衰力ダンパ7の減衰力を増大させてもよい。
【0052】
ステップS15は、ステップS11においてYesの場合に実施されるので、車高調整が所定回数を超えて実施される場合、すなわち、車高調整が複数回繰り返し実施される場合に、目標車高を今までの値より低下させて設定することになる。このように、頻繁に車高調整が行われる場合には、これに伴って車高の降下も頻繁に起きていることになるので、車高調整の際の目標車高を低下させて、車体の保護を強化している。逆に、車高調整が複数回繰り返し実施されない、実施回数が所定回数未満である場合(ステップS11においてNoの場合)には、車高調整時の目標車高を低下させないので、車高調整の度に車高が目標車高に戻され、通常時の車高を維持することができる。
【0053】
ステップS16は、ステップS18と同様に実施することができる。ステップS17は、ステップS19と同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車体
1a バンパ
2 接触検知手段(タッチセンサ)
3 車輪
4 サスペンションアーム
5 車高調整手段
6 エアサスペンション
7 可変減衰力ダンパ
8 ストロークセンサ
9 サブ制御手段((車高)制御手段)
10 メイン制御手段
11 故障判定手段
11a タイマ
11b カウンタ
12 記憶手段
13 圧縮空気制御ユニット
15 チャンバケーシング
16 カバー
17 ダイヤフラム
18 エアチャンバ
19 空気孔
22 シリンダ
23 ピストンロッド
24 上部油室
25 下部油室
26 ピストン
27 高圧ガス室
28 フリーピストン
29 連通路
30 電磁コイル
100 車高調整装置(車両)
IG イグニッションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車高調整を行う車高調整手段と、イグニッションスイッチのオンで起動して、前記車高調整手段による車高調整を制御する制御手段とを有する車高調整装置において、
車体の下部に設けられ、障害物と接触した場合に信号を前記制御手段に出力する接触検知手段を有し、
前記制御手段は、前記イグニッションスイッチのオフで停止し、停止後に前記接触検知手段から前記信号が入力すると起動し、前記車高調整を制御した後に再び停止することを特徴とする車高調整装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記イグニッションスイッチのオフによる直近の停止後に、前記信号が入力した入力回数を、前記信号が入力して起動する度にカウントし、
前記直近の停止から前記入力回数が所定回数を超えるまでの経過時間が、所定時間未満である場合に、故障検知フラグを発生させ記憶することを特徴とする請求項1に記載の車高調整装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記車体の車高が目標車高になるように車高調整を制御し、
前記信号が入力し車高調整を複数回繰り返す場合に、前記目標車高を前回より低下させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車高調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−218450(P2012−218450A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82351(P2011−82351)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】