説明

軟質容器専用吐出装置

【課題】低い加圧力で内容物を吐出可能とすることで、吐出のための駆動手段として軽量且つ安価なものを利用でき、しかも軟質容器の交換作業が容易な軟質容器専用吐出装置を提供する。
【解決手段】軟質容器1を収容する加圧タンク11と、加圧タンク11内へ加圧エアを供給する加圧エア供給手段12と、加圧タンク11に吐出用ホース13を介して接続した吐出ガン14とを備えた吐出装置10であって、加圧タンク11は、軟質容器1を収容可能な大きさのタンク本体15と、このタンク本体15の上端開口部を気密に閉鎖可能で且つ吐出用ホース13への内容物7の供給孔16cを形成したタンク蓋16とを備え、タンク本体15の上縁部で軟質容器1の上部リング4を受け止めて、タンク蓋16の底面外周部に軟質容器1の上部リング4を気密に密接させた状態で、軟質容器1を加圧タンク11内に収容保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペースト状や高粘稠液を含む液状やゲル状の内容物を充填した軟質容器から内容物を吐出させるのに好適な軟質容器専用吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用のシーリング材を充填してなる軟質容器として、軟質フィルムからなる筒状の胴体部と、胴体部の下端開口を閉鎖する底板と、胴体部の上端開口部に取付けた上部リングとを有する軟質容器本体と、軟質容器本体内に内容物を充填した状態で、軟質容器本体の上端開口を閉鎖するように、上部リングに打栓した蓋部材とを備えたものが提案され実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。この軟質容器から内容物を吐出する際には、先ず、蓋部材における内容物の排出口に取り付けた封止蓋を開放して、蓋部材に貼着したバージンフィルムを切開してから、該排出口にノズルを装着し、これを専用の吐出ガンの外筒に装填する。次に、吐出ガンのレバー操作により移動する加圧ピストンで、軟質容器の底板を上部リング側へ移動させ、胴体部を潰しながら、ノズルからシーリング材を押出、吐出することになる。
【0003】
また、前記軟質容器は例えば300〜500ミリリットルの比較的小容量のものであるが、4〜10リットルの比較的大容量の軟質容器では、軟質容器本体の胴体部の高さ方向の途中部に中間リングを設け、蓋部材に代えて、封止フィルムで軟質容器本体の上端開口を閉鎖するように構成したものも提案され、実用化されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
一方、軟質容器から内容物を吐出させる方法として、飛翔体の燃料タンクでは、燃料を充填した伸縮可能なゴム状弾性体からなる袋状タンクを圧力容器に内装し、圧力容器の内圧を高めることで、袋状タンクを収縮させて、袋状タンク内の燃料を吐出させるように構成したものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−104448号公報
【特許文献2】特開2005−145503号公報
【特許文献3】特開2001−342898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のような比較的小容量の軟質容器では、吐出ガンを手動操作することで、内容物を吐出させることができるが、特許文献2記載のような比較的大容量の軟質容器では、シリンダやピストンポンプなどの駆動手段を用いないと、内容物を吐出させることができず、内容物の吐出装置が大型になるという問題があった。このため、通常は、軟質容器の内容物を専用の吐出ガンに少量ずつ移し替えて使用しているが、その作業が大変煩雑であった。
【0007】
本発明の目的は、低い加圧力で内容物を吐出可能とすることで、吐出のための駆動手段として軽量且つ安価なものを利用でき、しかも軟質容器の交換作業が容易な軟質容器専用吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る軟質容器専用吐出装置は、軟質容器を収容する加圧タンクと、前記加圧タンク内へ加圧エアを供給する加圧エア供給手段と、前記加圧タンクに吐出用ホースを介して接続した吐出ガンとを備えた軟質容器専用吐出装置であって、前記軟質容器は、軟質フィルムからなる筒状の胴体部と、胴体部の下端開口を閉鎖する底板と、胴体部の上端開口部に取付けた上部リングと、胴体部の高さ方向の途中部に取付けた中間リングとを有する軟質容器本体と、軟質容器本体内に内容物を充填した状態で、軟質容器本体の上端開口を閉鎖するように、上部リングに取付けた蓋材とを備え、前記加圧タンクは、前記軟質容器を収容可能な大きさのタンク本体と、このタンク本体の上端開口部を気密に閉鎖可能で且つ前記吐出用ホースへの内容物の供給孔を形成したタンク蓋とを備え、前記タンク本体の上縁部で軟質容器の上部リングを受け止めて、前記タンク蓋の底面外周部に前記軟質容器の上部リングを気密に密接させた状態で、前記軟質容器を加圧タンク内に収容保持するものである。
【0009】
この吐出装置に軟質容器を収容する際には、タンク本体の上縁部で軟質容器の上部リングを受け止めて、前記タンク蓋の底面外周部に前記軟質容器の上部リングを気密に密接させた状態で、前記軟質容器を加圧タンク内に収容保持する。このとき、蓋材は、軟質容器を加圧タンクに収容保持する前に予め取り外すこともできるが、タンク蓋の底面に内容物が付着して、軟質容器の交換時にタンク蓋を洗浄する必要があるので、可能な場合には、軟質容器を加圧タンクに収容保持するときに、蓋材のうちの供給孔に対面する部分を予め切開して、軟質容器を供給孔に連通させることが好ましい。こうして、加圧タンクに軟質容器を収容した状態で、加圧エア供給手段により加圧タンク内に加圧エアを供給して、加圧タンクの内圧を高めると、上部リングと中間リング間における軟質容器の胴体部と、中間リングと底板間における軟質容器の胴体部が収縮変形して、軟質容器内の内容物が供給孔及び吐出用ホースを通って吐出ガンから吐出されることになる。そして、胴体部を収縮させながら、内容物を順次吐出させ、中間リングと底板とが上部リングに嵌合して、軟質容器内の内容物を略完全に吐出できることになる。また、内容物を略完全に吐出させた状態で、中間リングと底板とが上部リングに嵌合して、軟質容器の高さが、例えば使用前の1/6〜1/8の高さになるまで減容化できる。
【0010】
このように、この吐出装置では、比較的低い圧力で内容物を吐出できるので、加圧タンクの耐圧強度を低く設定することができ、加圧タンクを軽量に構成できるとともに、加圧タンクの製作コストを安価にできる。しかも、加圧エア供給手段として、安価なものを採用することも可能となり、吐出装置の製作コストを全体的に安価にできる。また、加圧タンクを軽量に構成できるので、比較的大容量の軟質容器を収容保持した吐出装置であっても、これを作業者が背負って、内容物の塗布作業や充填作業を行なうことが可能となる。更に、軟質容器として、胴体部の高さ方向の途中部、即ち底板と上部リング間における胴体部に、中間リングを設けたものを採用しているので、胴体部の高さ方向の途中部が平板状に密着して、該密着部分よりも下側の胴体部内に内容物が残留するという不具合を確実に防止できる。
【0011】
ここで、前記供給孔に対応させてタンク蓋の底面に、前記軟質容器の蓋材を切開するためのカッターを突出状に設けることもできる。このように構成すると、手でカッターを操作して蓋材を切開しなくても、タンク蓋をタンク本体に組み付けるだけで、蓋材の適正位置を自動的に切開して、軟質容器を供給孔に連通させることができる。
【0012】
前記タンク蓋に上部リングに気密に圧接されるシールリングを設けることも好ましい。このようなシールリングを設けることで、加圧タンク内に供給した加圧エアが蓋材とタンク蓋間に回り込んで、供給孔内へ導入されることを確実に防止することができる。
【0013】
前記軟質容器の上部リングに外方へ突出する回転規制ピンを設け、タンク蓋又は加圧容器本体に該回転規制ピンが相対回転不能に嵌合する嵌合凹部を設けることも好ましい実施の形態である。例えば、2液硬化形のシーリング材では、蓋材を取り外してから、軟質容器内で2液を攪拌混合することになるが、従来の方法では、攪拌混合したものを小容量の吐出ガンに移し替えて、目地等に充填していたが、本発明では、軟質容器内で攪拌混合した後、これを加圧タンクに収容保持させて、軟質容器から直接的に内容物を吐出させることができ、内容物の移し替えの手間を省くことができる。
【0014】
前記加圧タンクに安全弁を設けることも好ましい実施の形態である。本発明の吐出装置は、0.5MPa程度の比較的低圧で作動できるものではあるが、安全性を考慮して、加圧タンク内の圧力が設定圧以上に高くなったときに作動する安全弁を設けて、加圧タンク内の圧力が設定圧力以上に高くなることを防止するように構成することが好ましい。
【0015】
前記軟質容器の底板として、底面部と底面部の外周部から下側へ延びる外周リング部とを有するものを用い、外周リング部の外周面に胴体部の下端部を外嵌状に取付けることが好ましい実施の形態である。底面部の外周部から上側へ外周リングを延ばすことも可能であるが、内容物を吐出させて軟質容器を完全に潰した状態でも、外周リングの内側に内容物が残留するので、本発明のように外周リング部は底面部から下側へ延設することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る軟質容器専用吐出装置によれば、比較的低い圧力で内容物を吐出できるので、加圧タンクの耐圧強度を低く設定することができ、加圧タンクを軽量に構成できるとともに、加圧タンクの製作コストを安価にできる。しかも、加圧エア供給手段として、安価なものを採用でき、吐出装置の製作コストを全体的に安くできる。また、加圧タンクを軽量に構成できるので、作業者が加圧タンクを背負って、内容物の塗布作業や充填作業を行なう場合において、作業者の負担を軽減したり、内容物の容量を増やしたりすることができる。更に、軟質容器として、胴体部の高さ方向の途中部、即ち底板と上部リング間における胴体部に、中間リングを設けたものを採用しているので、胴体部の高さ方向の途中部が平板状に密着して、該密着部分よりも下側の胴体部内に内容物が残留するという不具合を確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
先ず、軟質容器専用吐出装置10で使用する軟質容器1について説明すると、図1〜図3に示すように、軟質容器1は、軟質フィルムからなる筒状の胴体部2と、胴体部2の下端開口を閉鎖する底板3と、胴体部2の上端開口部に取付けた上部リング4と、胴体部2の高さ方向の途中部に取付けた中間リング5とを有する軟質容器本体6と、軟質容器本体6内に内容物7を充填した状態で、軟質容器本体6の上端開口を閉鎖するように、上部リング4に取付けた蓋材8とを備えた周知の構成のものである。
【0018】
内容物7としては、シーリング材や接着剤や塗料などの高粘稠液が好適であるが、マヨネーズやジャムなどの食品類などの高粘稠液や、高粘稠液以外の液状やゲル状の内容物をこの軟質容器1に収容することも可能である。
【0019】
胴体部2を構成する軟質フィルムとしては、小さく潰すことが可能な柔軟性を有するものであれば、任意の素材からなるものを使用でき、樹脂フィルムのみからなる単層構造又は複層構造のフィルム材を用いてもよいし、アルミニウム箔などの金属箔を樹脂フィルム間にラミネートした複層構造のフィルム材を用いてもよい。本実施の形態では、建築用のシーリング材を充填するため、アルミニウム箔を樹脂フィルム間に積層した3層構造乃至4層構造のフィルム材を用いた。樹脂フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等のヒートシール可能な熱可塑性樹脂が好適に利用できる。また、内外の樹脂フィルムは、同種の素材で構成してもよいが、内面側と外面側とでは使用条件が異なるので、使用条件に応じた素材からなる樹脂フィルムを用いることが好ましい。特に、内面側の樹脂フィルムとしては、シーリング材との接触により変質等しないポリエチレンやポリプロピレンのフィルムを用い、外面側の樹脂フィルムとしては、強度面やガスバリヤ性を重視してポリエステルやナイロンのフィルムを用いることが望ましい。尚、本発明において、軟質容器1の胴体部2を構成する柔軟性のあるフィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、厚手のシート状のものを採用することも可能である。
【0020】
胴体部2は、このような構成の軟質フィルムを筒状に丸めてその両側縁部を重ね合わせ、重ね合わせた部分をヒートシールや超音波シール、高周波誘導シール等により融着させることにより製作されている。胴体部2は、その全長にわたって同一径に構成することも可能であるが、筒状に成形するときに使用する円筒状又は円柱状のマンドレルから抜き取り易くし、更に廃棄処分するときに軟質容器1 を減容化し易くするため、下端側を縮径させた緩やかなテーパ筒状に構成することが好ましい。但し、この胴体部2は、押し出し成形やブロー成形等により製作したものを採用することも可能である。
【0021】
底板3は、略円板状の底面部3aと、底面部3aの外周部に底面部3aに対して略垂直に突出状に設けた外周リング部3bとを有し、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより製作された一体成形品で構成されている。底板3は、外周リング部3bが底面部3aから下側へ延びるように胴体部2の下端部に内嵌され、胴体部2の下端部を外周リング部3bに対して全周にわたって気密に融着することによって、胴体部2の下端開口部を気密状に閉鎖するように取り付けられている。底板3の底面部3aの下面には4つの突起3cが下方へ突出状に形成され、2液硬化形のシーリング材を軟質容器1に充填した際には、該突起3cを攪拌装置の凹部に嵌合させて、軟質容器1の底板3を固定した状態で攪拌できるように構成されている。また、この場合には、図1に仮想線で示すように、底面部3aの外周部に上方へ突出する環状の保護リング部3dを形成し、攪拌装置の攪拌羽根の外周端部が胴体部2と接触することによる胴体部2の破損をこの保護リング部3dで防止できるように構成することもできる。
【0022】
中間リング5は、帯板状の環状の部材で構成され、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより製作されている。中間リング5は、胴体部2の外面側に融着により一体的に設けられている。中間リング5は、胴体部2の高さ方向の途中部であれば任意の位置に設けることができるが、軟質容器専用吐出装置10にて加圧して胴体部2を潰したときに、胴体部2の高さ方向の途中部の周面が平板状に重なったり密着したりしないように、底板3と中間リング5間の距離L1と、中間リング5と上部リング4間の距離L2が、胴体部2の直径よりも短くなるような位置に設けることができる。また、胴体部2が細長い場合には、複数の中間リング5を設けることもできるが、この場合には、底板3とそれに隣接する中間リング5間の距離と、上部リング4とそれに隣接する中間リング5間の距離が、胴体部2の直径よりも短くなるように設定するとともに、隣接する中間リング5間の距離が胴体部2の直径よりも短くなるように設定することになる。中間リング5の個数は、任意に設定できるが、個数が増えると内容物7が残留し易くなるので、極力少ない個数に設定することが好ましい。
【0023】
上部リング4は、図1〜図3、図6に示すように、縦断面長方形状のリング部4aと、リング部4aの高さ方向の途中部から外方へ突出する環状のフランジ部4bと、フランジ部4bの中心を挟んで対面する周方向の一部を外方へ突出させてなる1対の取手部4cと、リング部4aから側方へ突出するように設けた1対の回転規制ピン4dとを備え、合成樹脂材料を用いて射出成形などにより製作されている。本実施の形態では、取手部4cと回転規制ピン4dとを上部リング4の周方向に90°のピッチで交互に設けたが、それ以外のピッチで設けることも可能である。
【0024】
上部リング4は胴体部2の上端部に外嵌状に設けられ、上部リング4の内周面は胴体部2の上端部外周面に全周にわたって気密に融着されている。2液硬化形のシーリング材を軟質容器1に充填した際には、回転規制ピン4dを攪拌装置の凹部に嵌合させて、軟質容器1の上部リング4を固定した状態で攪拌できるように構成されている。尚、攪拌する必要のない内容物7を軟質容器1に充填する場合には、突起3cや回転規制ピン4dは省略することができる。
【0025】
底板3の外径は中間リング5の内径よりも小径に設定され、中間リング5の外径は上部リング4の内径よりも小径に設定され、胴体部2を潰しながら軟質容器1の内容物7を略完全に吐出させた状態で、上部リング4の内側に中間リング5が嵌り込み、中間リング5の内側に底板3が嵌まり込んで、軟質容器1に残留する内容物7が極力少なくなるように構成されている。
【0026】
蓋材8は、胴体部2を構成する軟質フィルムと同種または異種のフィルムで構成され、軟質容器本体6内に内容物7を充填した後、上部リング4の上面の全周にわたって気密に融着されている。蓋材8の形状は、本実施の形態では正方形状に形成したが、軟質容器本体6を気密に封止可能な大きさを有していれば任意の形状に形成することができる。但し、蓋材8としては、切開可能なフィルムやシート状の部材であれば、樹脂フィルムや金属箔を樹脂フィルムでラミネートした積層フィルム以外に、切開可能な厚さの金属シートなどを用いることも可能である。また、蓋材8を取り外した状態で軟質容器1を吐出装置10に装填する場合には、合成樹脂材料や金属材料などの成形品で構成することもできる。
【0027】
次に、軟質容器専用吐出装置10の構成について説明する。
図1、図4〜図9に示すように、軟質容器専用吐出装置10は、軟質容器1を収容する加圧タンク11と、加圧タンク11内へ加圧エアを供給する加圧エア供給手段12と、加圧タンク11に吐出用ホース13を介して接続した吐出ガン14とを備えている。
【0028】
加圧タンク11は、軟質容器1を収容可能な大きさのタンク本体15と、このタンク本体15の上端開口部を気密に閉鎖可能なタンク蓋16と、タンク本体15にタンク蓋16を固定するための固定金具17とを備えている。
【0029】
タンク本体15は、有底円筒状の部材で構成され、加圧タンク11の内圧に対する強度剛性を高めるため、円筒状の周壁部15aと底壁部15bとは一体成形されている。タンク本体15を構成する素材としては、加圧タンク11の内圧に耐え得るものであれば、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属材料や合成樹脂材など、任意の素材で構成することができるが、作業者が背中に加圧タンク11を背負って作業する場合には、軽量化のため、アルミ合金板などの軽合金や合成樹脂材料で構成することが好ましい。
【0030】
タンク本体15の上端部には外方へ突出する環状のフランジ部15cが全周にわたって形成され、フランジ部15cの上面には環状溝15dが全周にわたって形成され、フランジ部15cの下面には外周側上がりの傾斜面15eがフランジ部15cの全周にわたって形成されている。環状溝15d内には外周シールリング18が装填され、この外周シールリング18がタンク蓋16の外周部の下面に設けた平坦なシール面16aに気密に圧接されることで、タンク本体15内が気密に保持されるように構成されている。
【0031】
タンク本体15の上端部には環状のリング部材19が内嵌され、このリング部材19は、上端部の高さがタンク本体15の上端部と略同じ高さになるように、溶接等によりタンク本体15に気密に固定されている。リング部材19には軟質容器本体6の上部リング4のフランジ部4bが嵌合するフランジ用溝部19aと、取手部4cが嵌合する取手用溝部19bと、回転規制ピン4dが嵌合する嵌合凹部19cとが形成され、軟質容器本体6は、上部リング4のフランジ部4b及び取手部4cをフランジ用溝部19aと取手用溝部19bにそれぞれ嵌合支持させて、上部リング4に下側から支持されている。また、このように支持した状態で、上部リング4のリング部4aがタンク本体15から上方へ突出するように構成されている。尚、このリング部材19とタンク本体15とは一体成形品で構成することも可能であるが、製作コストが高くなることから、別部材で構成して溶接などにより一体的に固定することが好ましい。但し、リング部材19は、軟質容器1の上部リング4を下側から支持できるように構成されていれば、軟質容器1の上部リング4の断面形状などに応じた任意の形状に形成することができる。
【0032】
タンク本体15の周壁部15aの下端部にはタンク本体15内に連通する筒状の接続部15fが外方へ突出状に形成され、この接続部15fに加圧エア供給手段12のエアホースを接続して、タンク本体15内を加圧できるように構成されている。
【0033】
タンク蓋16は、略平坦な円板状の部材で構成され、タンク蓋16の下面の外周部には外周シールリング18が圧接されるシール面16aが形成され、外周近傍部にはタンク本体15に支持させた軟質容器本体6の上部リング4のリング部4aが嵌合する嵌合溝16bが形成されている。嵌合溝16bには内周シールリング20が装填され、タンク蓋16をタンク本体15に取り付けた状態で、内周シールリング20がリング部4aの上端部に直接的或いは蓋材8を介して間接的に圧接されて、タンク本体15内の加圧エアが軟質容器本体6内や蓋材8とタンク蓋16間に侵入することを防止できるように構成されている。
【0034】
タンク蓋16の中央部には供給孔16cが形成され、この供給孔16cに吐出用ホース13の端部を接続して、軟質容器1内の内容物7を吐出ガン14へ供給できるように構成され、タンク蓋16の上面外周部は外周側下がりの傾斜面16dが形成されている。尚、符号21は、加圧タンク11を持ち運ぶための取手であり、符号28は、加圧タンク11の内圧が設定圧以上に高くなることを防止するための安全弁である。
【0035】
タンク蓋16の底面には供給孔16cに沿ってカッター22が下方へ突出状に形成され、タンク蓋16をタンク本体15に取り付けた状態で、軟質容器1の蓋材8がこのカッター22により切開されるように構成されている。カッター22としては、任意の構成のものを採用することが可能であるが、切開した蓋材8の一部が切り離されて、内容物7とともに吐出ホース側へ流入しないように構成したものを採用することが好ましい。例えば、図7に示すカッター22Aのように、供給孔16cに沿ってタンク蓋16の底面にリング状の基板部22aを設け、この基板部22aに部分円筒状や部分角筒状で且つ下端を基板部22aに対して傾斜させたカッター本体22bを立設したものを用いることができる。また、図8に示すカッター22Bのように、基板部22aに例えば平板状の2枚のカッター本体22cを十文字状に固定したものを採用することもできる。カッター22Bにおいては、カッター本体22cの枚数は任意に設定できる。但し、このようにタンク蓋16の底面にカッター22を突出状に設けると、使用後の軟質容器1の底板3の底面部3aがタンク蓋16の底面に密着しなくなり、軟質容器1内に残留する内容物7の量が増えるので、カッター22に対面する底板3の底面部3aにカッター22を収容する凹部を形成してもよい。また、カッター22を省略して、蓋材8における供給孔16cに対面する位置に切開のための案内線等を印刷し、この案内線等に沿って手でカッターを操作するなどして、蓋材8を切開するように構成することも可能である。
【0036】
固定金具17について説明すると、タンク本体15のフランジ部15c及びタンク蓋16の外周部に外嵌状に配置可能な部分円弧状の3つの挟持部材23が設けられ、これら3つの挟持部材23を直列状に配置させたときに隣接配置される2組の挟持部材23は連結ピン24によりそれぞれ回動自在に連結されている。3つの挟持部材23のうちの両側に配置される挟持部材23の端部には外方へ突出する連結部23aが形成され、一方の挟持部材23の連結部23aにはネジ棒25がピン部材26を介して回動自在に連結され、他方の挟持部材23の連結部23aにはネジ棒25が係合可能な係合溝23bが形成され、ネジ棒25には手で回転操作可能な操作ナット27が螺合されている。挟持部材23の内周側には、タンク本体15にタンク蓋16を載置して重ね合されるタンク蓋16の外周部とタンク本体15のフランジ部15cに対して外嵌可能な台形状の嵌合溝23cが形成されている。
【0037】
そして、タンク本体15にタンク蓋16を固定する際には、タンク本体15にタンク蓋16を同心状に載置し、タンク蓋16の外周部とタンク本体15のフランジ部15cが挟持部材23の嵌合溝23cに嵌合されるように、3つの挟持部材23をタンク蓋16の外周部とタンク本体15のフランジ部15cに巻き掛け、ネジ棒25を係合溝23bに係合させて、操作ナット27をネジ棒25に締め付け、挟持部材23の嵌合溝23cの内面でタンク本体15の傾斜面15eとタンク蓋16の傾斜面16dとを相互に接近する方向へ押圧して、タンク本体15にタンク蓋16を密着固定することになる。但し、タンク本体15にタンク蓋16を密着できる構成であれば、前述した固定金具17以外の固定構造や固定手段を採用することも可能である。
【0038】
加圧エア供給手段12としては、例えば0.5MPaの加圧エアを供給できるものを採用できる。モータによりコンプレッサーを駆動して加圧する電動タイプの加圧エア供給手段を採用することもできるし、手動式や足踏み式のエアポンプからなる加圧エア供給手段、或いは手動式や足踏み式のエアポンプとエアタンクとの組み合わせからなる加圧エア供給手段を採用することもできる。
【0039】
吐出ガン14は、操作レバー30の操作により、吐出用ホース13からの内容物7を吐出状態と停止状態とに切り換え可能なバルブ31と、内容物7を吐出するノズル32とを備えた周知の構成のものである。
【0040】
そして、この軟質容器専用吐出装置10を用いて、軟質容器1に充填されている内容物7を吐出させる際には、先ず、フランジ部4b及び取手部4cがフランジ用溝部19a及び取手用溝部19bに嵌合支持されるように、軟質容器1をタンク本体15に嵌合装着し、次にタンク蓋16をタンク本体15に同心状に載置して、固定金具17でタンク本体15にタンク蓋16を密着固定することになる。この状態で、外周シールリング18がシール面16aに圧接されて、タンク蓋16がタンク本体15に気密に固定されるとともに、上部リング4のリング部4aの上面が蓋材8を介在させた状態で内周シールリング20に圧接されて、タンク蓋16と蓋材8間への加圧エアの侵入が確実に阻止され、更にカッター22で蓋材8が開封されて、軟質容器1が吐出用ホース13に連通される。
【0041】
こうして、軟質容器1を加圧タンク11に組み付けた状態で、加圧エア供給手段12により加圧タンク11内に加圧エアを供給し、加圧タンク11内を一定圧力まで加圧した状態で、操作レバー30を操作して、図9に示すように、加圧エアの圧力で軟質容器1の胴体部2を収縮変形させながら、吐出ガン14から内容物7を順次吐出させることになる。
【0042】
このように、この軟質容器専用吐出装置10では、加圧エアにより軟質容器1の胴体部2を順次収縮させて内容物7を吐出できるので、内容物7を取り出した後の廃棄物の大幅な減容化が可能となる。しかも、加圧エアにより軟質容器1を収縮させるので、比較的低い圧力で加圧するだけで内容物7を吐出でき、加圧エア供給手段12として軽量且つ安価なものを採用することが可能となる。また、蓋材8を貼り付けたまま、軟質容器1を加圧タンク11に装填できるので、内容物7がタンク蓋16の底面に付着することを防止でき、タンク蓋16の底面の清掃作業が不要となるので、軟質容器1の交換作業が容易になる。しかも、タンク蓋16の供給孔16c内の吐出用ホース13の端部内に前回使用した内容物7が充填された状態となるので、軟質容器1を取り換えたときに、内容物7の吐出経路に空気が残留することを略完全に防止できる。
【0043】
尚、軟質容器1として、2液硬化形のシーリング材を充填した軟質容器1を用いる場合には、蓋材8を剥離除去してから、軟質容器1を専用の攪拌装置にセットし、軟質容器1内において2液を攪拌混合させてから、前記と同様に、軟質容器1をタンク本体15に装填して、固定金具17でタンク本体15にタンク蓋16を固定し、この状態で加圧タンク11内に加圧エアを供給して、吐出ガン14のノズル32から内容物7を吐出させることになる。このため、大容量の軟質容器1内で攪拌混合した内容物7を、従来のように小容量の専用の吐出ガンに移し替えることなく、そのまま吐出ガン14から吐出させることが可能となり、シーリング材の移し替え手間を省略して、作業性を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】軟質容器を装填した状態での軟質容器専用吐出装置の縦断面図
【図2】軟質容器の分解斜視図
【図3】軟質容器本体の平面図
【図4】加圧タンクの平面図
【図5】タンク本体の平面図
【図6】軟質容器を装填した加圧タンクの上部付近の縦断面図で、(a)は図3のA−A線に対応する位置での縦断面図、(b)は図3のB−B線に対応する位置での縦断面図、(c)は図3のC−C線に対応する位置での縦断面図
【図7】カッターの(a)は正面図、(b)は底面図
【図8】他の構成のカッターの(a)は正面図、(b)は底面図
【図9】軟質容器専用吐出装置の作動説明図
【符号の説明】
【0045】
1 軟質容器 2 胴体部
3 底板 3a 底面部
3b 外周リング部 3c 突起
3d 保護リング部 4 上部リング
4a リング部 4b フランジ部
4c 取手部 4d 回転規制ピン
5 中間リング 6 軟質容器本体
7 内容物 8 蓋材
10 軟質容器専用吐出装置 11 加圧タンク
12 加圧エア供給手段 13 吐出用ホース
14 吐出ガン 15 タンク本体
15a 周壁部 15b 底壁部
15c フランジ部 15d 環状溝
15e 傾斜面 15f 接続部
16 タンク蓋 16a シール面
16b 嵌合溝 16c 供給孔
16d 傾斜面 17 固定金具
18 外周シールリング 19 リング部材
19a フランジ用溝部 19b 取手用溝部
19c 嵌合凹部 20 内周シールリング
21 取手 22 カッター
22A カッター 22B カッター
22a 基板部 22b カッター本体
22c カッター本体 23 挟持部材
23a 連結部 23b 係合溝
23c 嵌合溝 24 連結ピン
25 ネジ棒 26 ピン部材
27 操作ナット 28 安全弁
30 操作レバー 31 バルブ
32 ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質容器を収容する加圧タンクと、前記加圧タンク内へ加圧エアを供給する加圧エア供給手段と、前記加圧タンクに吐出用ホースを介して接続した吐出ガンとを備えた軟質容器専用吐出装置であって、
前記軟質容器は、軟質フィルムからなる筒状の胴体部と、胴体部の下端開口を閉鎖する底板と、胴体部の上端開口部に取付けた上部リングと、胴体部の高さ方向の途中部に取付けた中間リングとを有する軟質容器本体と、軟質容器本体内に内容物を充填した状態で、軟質容器本体の上端開口を閉鎖するように、上部リングに取付けた蓋材とを備え、
前記加圧タンクは、前記軟質容器を収容可能な大きさのタンク本体と、このタンク本体の上端開口部を気密に閉鎖可能で且つ前記吐出用ホースへの内容物の供給孔を形成したタンク蓋とを備え、
前記タンク本体の上縁部で軟質容器の上部リングを受け止めて、前記タンク蓋の底面外周部に前記軟質容器の上部リングを気密に密接させた状態で、前記軟質容器を加圧タンク内に収容保持する、
ことを特徴とする軟質容器専用吐出装置。
【請求項2】
前記供給孔に対応させてタンク蓋の底面に、前記軟質容器の蓋材を切開するためのカッターを突出状に設けた請求項1記載の軟質容器専用吐出装置。
【請求項3】
前記タンク蓋に上部リングに気密に圧接されるシールリングを設けた請求項1又は2記載の軟質容器専用吐出装置。
【請求項4】
前記軟質容器の上部リングに外方へ突出する回転規制ピンを設け、タンク蓋又は加圧容器本体に該回転規制ピンが相対回転不能に嵌合する嵌合凹部を設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の軟質容器専用吐出装置。
【請求項5】
前記加圧タンクに安全弁を設けた請求項1〜4のいずれか1項記載の軟質容器専用吐出装置。
【請求項6】
前記軟質容器の底板として、底面部と底面部の外周部から下側へ延びる外周リング部とを有するものを用い、外周リング部の外周面に胴体部の下端部を外嵌状に取付けた請求項1〜5のいずれか1項記載の軟質容器専用吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−220845(P2009−220845A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65848(P2008−65848)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】