軟X線検出装置、及び軟X線検出システム
【課題】 正確な軟X線の検出を行うことを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2には変換部3と回路部4とが配される。変換部3は例えばフォトダイオードである。変換部3では軟X線によって発生した電荷が収集される。回路部4には例えば増幅トランジスタ6が配される。増幅トランジスタ6は、変換部3からの信号を増幅して出力する増幅部である。回路部4の上部に遮蔽部7が配される。遮蔽部7が、回路部4に向かって入射する軟X線を遮蔽する。好適には、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数は、アルミニウム及び銅の軟X線に対する遮蔽係数よりも高い。または、遮蔽部7を構成する材料は原子番号が70以上の元素によって構成される。
【解決手段】 本発明に係る軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2には変換部3と回路部4とが配される。変換部3は例えばフォトダイオードである。変換部3では軟X線によって発生した電荷が収集される。回路部4には例えば増幅トランジスタ6が配される。増幅トランジスタ6は、変換部3からの信号を増幅して出力する増幅部である。回路部4の上部に遮蔽部7が配される。遮蔽部7が、回路部4に向かって入射する軟X線を遮蔽する。好適には、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数は、アルミニウム及び銅の軟X線に対する遮蔽係数よりも高い。または、遮蔽部7を構成する材料は原子番号が70以上の元素によって構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟X線検出装置に関し、とりわけ軟X線検出装置の遮蔽構造及び半導体基板の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像装置を軟X線検出の用途に使うことが提案されている。特許文献1には、CCDを用いた軟X線用固体撮像素子が記載されている。更に、特許文献1には、軟X線を遮蔽する部材でCCDの転送電極を構成した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−080736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む場合の軟X線に対する遮蔽構造について、十分に検討されていない。別の観点で言えば、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む場合の、変換部及び増幅部の構造について十分に検討されていない。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む軟X線検出装置において、より正確な軟X線検出を行うことが可能な遮蔽構造を提供することを目的とする。あるいは別の観点として、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む軟X線検出装置において好適な半導体基板の内部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記遮蔽部は前記複数の増幅トランジスタのゲート電極よりも上に配され、前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板と、前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記複数の増幅トランジスタのゲート電極は、前記半導体基板の2つの主面のうち第1主面に配され、前記遮蔽部は、前記半導体基板の2つの主面のうち、前記第1主面とは反対側の第2主面に配され、前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軟X線検出装置によれば、軟X線を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図2】本発明の実施例1の軟X線検出装置の等価回路図。
【図3】本発明の実施例1の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図4】タンタルとアルミニウムの軟X線透過率の比を示す図。
【図5】本発明の実施例2の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図6】本発明の実施例3の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図7】本発明の実施例1の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図8】本発明の実施例4の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図9】本発明の実施例5の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図10】本発明の実施例6の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図11】本発明の実施例7の軟X線検出システムのブロック図。
【図12】軟X線検出装置の検出ユニットの平面構造の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る軟X線検出装置100の要部を説明する。図1に示された軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2は変換部3と回路部4とを含む。変換部3には例えばフォトダイオードなどの変換素子が配される。変換部3では、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される。回路部4には変換部3で生じた信号を増幅する増幅トランジスタ6が配される。増幅トランジスタ6は、変換部3で生じた電荷に基づく信号を出力する増幅部である。
【0012】
変換部3と回路部4とにより検出ユニット1が構成される。図1では1つの検出ユニット1のみが示されているが、本発明に係る軟X線検出装置100は複数の検出ユニットを有する。それぞれの検出ユニットが少なくとも変換部3と回路部4とを含む。すなわち、本発明に係る軟X線検出装置100は複数の変換素子と、複数の増幅トランジスタを有する。
【0013】
検出ユニット1のレイアウトに応じて、複数の検出ユニット1に含まれるそれぞれの変換部3が、互いに連続して配されてもよい。あるいは、それぞれの変換部の間に素子分離部が配されるレイアウトのように、検出ユニット1ごとに変換部3が分離されて配されてもよい。また、複数の検出ユニット1に含まれるそれぞれの回路部4が互いに連続して配されてもよい。
【0014】
回路部4の上に遮蔽部7が配される。半導体基板2の主面に対してほぼ垂直な方向に遮蔽部7が射影された場合に、遮蔽部7の一部または全部が回路部4の一部または全部に射影される。つまり、遮蔽部7は回路部4の一部または全部と重なって配される。別の言い方をすれば、遮蔽部7が回路部4の一部または全部を覆っている。特に断りがない限り、「2つの部材が重なって配される」とは、半導体基板2の主面に対して垂直な方向に一方の部材が射影された場合に、当該一方の部材の少なくとも一部が他方の部材の少なくとも一部の領域に射影されることを言う。このとき、2つの部材が接触していてもよい。あるいは、2つの部材の間に別の部材が配されていてもよい。なお、本明細書において、半導体基板2の主面は、例えば、半導体材料で形成される層と他の材料(例えば絶縁体)との界面である。
【0015】
遮蔽部7は、増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配された部分を含む。検出ユニット1がトランジスタを含む場合、当該トランジスタのゲート電極を含む配線層は導電部材のレイアウトが制約される場合がある。そのため、ゲート電極を含む配線層だけでは遮蔽性能を向上させることが困難な場合が多い。
【0016】
そこで、本発明においては、ゲート電極が配された配線層よりも上の層において、軟X線から回路部4の一部を遮蔽する遮蔽部7が配される。これによって、軟X線に対する遮蔽性能を向上させることが可能となる。なお、ゲート電極を含む配線層より上の層とは、ゲート電極を含む配線層より、半導体基板からの距離が遠い層である。
【0017】
遮蔽部7は、回路部4に入射し得る軟X線の一部もしくは全部を遮蔽する。例えば、所定の割合の軟X線が遮蔽部7を透過してもよい。また、回路部4の一部が遮蔽部7によって覆われなくてもよい。
【0018】
遮蔽部7を透過しない軟X線は必ずしも遮蔽部7に吸収される必要はない。たとえば、軟X線の一部が散乱、回折、あるいは反射された結果、軟X線の回路部4への入射が抑制されればよい。また散乱や回折、反射等によって、軟X線が変換部3へ入射してもよい。
【0019】
好適には、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数は、アルミニウム及び銅の軟X線に対する遮蔽係数よりも高い。または、好適には、遮蔽部7を構成する材料は原子番号が70以上の元素を含む。一般には原子番号が大きい元素ほど、軟X線に対する遮蔽能力が高くなるからである。
【0020】
遮蔽係数は例えば以下の方法で測定することができる。まず測定対象となる材料で所定の厚さの膜を形成する。この膜に所定の量(強度)の軟X線を照射する。膜を透過した軟X線の量(強度)を測定することによって、膜に遮蔽された軟X線の量を測定する。そして、照射した軟X線の量に対する遮蔽された軟X線の量の比を遮蔽係数とする。つまり、透過する軟X線の量が多い材料ほど遮蔽係数が低く、逆に透過する軟X線の量が少ない材料ほど遮蔽係数が高い。異なる材料の間で比較する場合には、同じ厚さの膜を形成して透過する軟X線の量を比較する。あるいは遮蔽された軟X線の量を膜の厚さで規格化して比較してもよい。なお、膜に遮蔽された軟X線とは、膜を透過しない軟X線のことである。例えば、膜が軟X線を吸収し、反射させ、回折させ、あるいは散乱させることによって、軟X線が膜を透過しないことが考えられる。
【0021】
次に本発明の課題と効果について説明する。本発明においては、軟X線が半導体基板2に入射したことによって発生した電荷を信号として読み出すことで、軟X線を検出することが可能である。そして、1個の軟X線のフォトンによって発生した電荷の大部分、もしくは全部を信号として読み出すことによって、検出した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。
【0022】
このとき、発生した電荷の一部のみが信号として読み出されることを低減することによって、軟X線のエネルギー測定の正確性を向上させることができる。発生した電荷の全部を読み出すことが困難な場合には、むしろ電荷の全部を排出して信号として読み出さないことで正確性を向上させることができる。この効果について以下に詳細に説明する。
【0023】
なお、実際に信号として読み出すのは、変換部(たとえばフォトダイオード)の導電型に応じた電子、あるいは正孔のいずれかのみであってもよい。以後の説明では電子を信号電荷として扱う場合について説明する。もちろん正孔を信号電荷として扱ってもよい。また、電子及び正孔の両方を信号電荷として読み出してもよい。
【0024】
まず、軟X線のエネルギーを測定すること(フォトンカウンティング)について説明する。軟X線が半導体基板2に入射すると、複数の電子正孔対が発生する。このような現象の例として、半導体基板2に入射した軟X線が、半導体基板2を構成する原子(例えばシリコン原子)内の電子を電離させることが考えられる。
【0025】
発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーに比例する。例えば、半導体基板2がシリコン基板の場合、発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーをシリコンの平均電離エネルギーで除した数になる。シリコンの平均電離エネルギーが3.65eV(エレクトロンボルト)であると仮定すると、1keVの軟X線が入射したことによって、約270対の電子正孔対が発生する。
【0026】
そこで、1つの検出ユニットにつき平均1個以下の軟X線フォトンが入射するように検出ユニットを配置し、そして、発生した電子の数に応じた信号を読み出すことによって、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。具体的に、軟X線検出装置に1個の軟X線フォトンが入射した際に、1つの検出ユニット1から270個の電子に対応する信号が出力されたとする。上述の通り、1個の電子を発生するために3.65eVのエネルギーが必要である。したがって、入射した軟X線のエネルギーは約1keV(270個×3.65eV/個)と計算できる。今度は、540個の電子に対応する信号が1つの検出ユニット1から出力された場合を考える。この場合には、入射した軟X線のエネルギーは約2keV(540個×3.65eV/個)と計算できる。
【0027】
これに対して、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合を説明する。例えば、2keVのエネルギーを持つ1個の軟X線フォトンが1つの検出ユニット1に入射し、540個の電子を発生させた場合を考える。この540個の電子をすべて信号として読み出すことができれば、上述の通り、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。しかし、何らかの要因によって検出ユニット1から270個の電子に対応した信号が出力されると、出力信号に基づいて計算される軟X線のエネルギーは1keV(270個×3.65eV/個)である。すなわち、2keVの軟X線が入射したにもかかわらず、1keVの軟X線が入射したことを示す測定結果が得られる。このように、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合がある。
【0028】
発生した電子の一部のみに対応した信号が出力されることの原因として、例えば、発生した電荷の一部が検出ノード以外の領域に排出されることが考えられる。このような課題は、1個のフォトンの入射に対して複数の電子が発生するという軟X線検出に固有の課題である。以下では、軟X線検出において、発生した電子の一部が排出されるメカニズムについてさらに詳しく説明する。
【0029】
軟X線が入射したことによって発生する複数の電子は、フォトンが入射する領域よりも空間的に広がった領域で発生する。入射する軟X線のエネルギーが数keVの場合、電子が発生する領域は半導体基板2の内部で数マイクロメートルの範囲に広がりうる。別の言い方をすれば、複数の電子が半導体基板内の1点で発生するのではなく、複数の異なる位置で発生する。複数の電子が発生する三次元空間的な範囲を、便宜的に電荷発生領域と呼ぶ。電荷発生領域の位置は、軟X線が入射した位置によって変わりうる。また、電荷発生領域の大きさは軟X線のエネルギーによって変わりうる。このような電荷発生領域を、例えば図1の領域102、104によって例示する。
【0030】
軟X線検出装置の検出ユニット1における電荷発生領域の位置、つまり軟X線の入射した位置に応じて、信号として読み出される電子の量と排出される電子の量が決まる。これを図12を用いて説明する。
【0031】
図12(a)は、軟X線検出装置の検出ユニット1を示している。検出ユニット1には、変換部3と回路部4とが配されている。図12(b)では、図12(a)に示された検出ユニット1が、便宜的に3つの領域1201〜1203に区分けして示されている。
【0032】
第1の領域1201は、変換部3の中心付近に対応する領域である。第1の領域1201に軟X線が入射すると、発生した電子の全部が変換部3に収集される。軟X線が入射した位置から離れた位置に電荷が発生するが、そのような離れた位置であっても変換部3の内部だからである。つまり、電荷発生領域の全体が変換部3の内部に位置するため、発生したすべての電子を、変換部3に収集し、読み出すことができる。したがって、第1の領域1201に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0033】
第2の領域1202は、図12(b)においてハッチングで示された領域である。第2の領域1202は変換部3の外周部と、回路部4の一部に対応する領域である。第2の領域1202に軟X線が入射すると、一部の電子は変換部3に収集されるが、他の一部の電子は回路部4に排出される場合がある。これは、電荷発生領域が変換部3と回路部4の両方に渡って広がるからである。このような場合、読み出される信号は発生した電子の一部のみに対応したものとなる。したがって、第2の領域1202に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが困難である。
【0034】
第3の領域1203は、変換部3から十分に離れた領域である。第3の領域1203に軟X線が入射すると、発生した電子はすべて排出されうる。これは電荷発生領域が変換部3までは広がらないからである。したがって、第3の領域1203に軟X線が入射した場合は、軟X線が検出されないことがほとんどである。
【0035】
ここで、第1〜第3の領域1201〜1203のいずれの領域に軟X線が入射するかは、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率に応じた統計的な確率で決まる。具体的に、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率が、1:6:3であると仮定する。このような軟X線検出装置で、1回の検出において検出ユニット1に1個のフォトンが入射する軟X線検出を1000回行う。そうすると、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映した信号が出力される。約600回の検出においては、軟X線が第2の領域1202に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される。約300回の検出においては、軟X線が第3の領域1203に入射し、軟X線が入射したことが検出されない。
【0036】
このように、1000回のうち約700回の検出において信号が出力される。しかし、出力された信号の約85%は軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号である。さらに、出力された信号からは、それが第1の領域1201と第2の領域1202のいずれの領域に入射した軟X線に対応するものかを特定することが困難である。
【0037】
比較例として、検出ユニット1の全面に一様に軟X線が入射する軟X線検出装置を考える。これは、例えば検出ユニット1の上に軟X線を遮蔽する遮蔽部材が配されていない軟X線検出装置である。この場合、第1の領域1201の面積と第2の領域1202の面積との比率に応じた割合で、エネルギーを正確に反映した信号とそうでない信号とが得られる。上述のように、面積の比率が1:6であれば、約15%のみがエネルギーを正確に反映した信号である。検出ユニットごとに増幅トランジスタ6が配される軟X線検出装置では、第2の領域1202の面積をゼロにすることは困難である。したがって、軟X線のエネルギーを正確に測定することは困難である。
【0038】
一方、図12(c)には、本発明に係る軟X線検出装置の一実施形態が示されている。図12(c)に示された軟X線検出装置は、遮蔽部1205を備える。遮蔽部1205は、第1の領域1201に対応した位置に開口1204を有する。
【0039】
この軟X線検出装置で1000回の軟X線検出を行うと、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射する。そして、約900回の検出においては、軟X線が入射したことが検出されない。これは、第1の領域1201以外の領域に入射しうる軟X線が、遮蔽部1205によって遮蔽されるからである。この結果、信号が出力される確率は小さくなる。しかし、出力された信号のほとんどが、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映した信号である。したがって、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0040】
図12(c)では、第2の領域1202はすべての領域が遮蔽部1205に覆われている。このような構成においては本発明の効果が高い。しかし、第2の領域1202の一部の領域は、遮蔽部1205に囲まれていなくてもよい。例えば、第2の領域1202のうち変換部3は遮蔽部1205に覆われていなくても効果を得ることができる。これは、第2の領域1202であっても変換部3の中心に近い場所に軟X線が入射すれば、発生した電子のほとんどを変換部3に収集し、信号として読み出すことが可能だからである。排出された電子の分だけ、得られる測定結果は実際に入射した軟X線のエネルギーとは異なる。それでも、この差が誤差として許容可能な範囲内であれば、電荷の一部が排出されてもよい。つまり、遮蔽部1205を配する領域は、軟X線検出装置に求められる性能に応じて適宜選択すればよい。なお、第3の領域1203と重なる位置には、遮蔽部1205が配されていなくてもよい。
【0041】
図12において、第1の領域1201と第2の領域1202との境界は、電荷の排出部となる領域からの距離に基づいて決まる。排出部から所定の距離Lよりも離れた場所に軟X線が入射すれば、電子が排出されないからである。所定の距離Lは、例えば電子発生領域を内包する最小の球の半径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、所定の距離Lは0.5マイクロメートルとすることができる。あるいは、所定の距離Lが式(1)で表される距離であってもよい(Lの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(単位はkeV)。
【0042】
【数1】
【0043】
また、回路部4の全体が電荷の排出部であるとしてもよい。あるいは、回路部4のうち、電源電圧が供給される半導体領域や、MOSトランジスタのソース・ドレインとなる半導体領域を電荷の排出部としてもよい。
【0044】
以上をまとめると、軟X線検出装置においては、軟X線が入射した位置に応じて、軟X線の情報が正確に反映された信号と、正確に反映されていない信号が出力されうる。本発明によれば、このうち、軟X線の情報が正確に反映された信号が出力される割合を増やすことができる。結果として、正確な軟X線の検出が可能となる。
【0045】
参考までに、特許文献1に記載された軟X線用固体撮像素子はCCD型である。そのため、検出ユニット及びその近傍には変換部と電荷転送部のみがある。そして、軟X線を入射光とする場合に、電荷転送部の信号電荷転送電極を所定の膜厚とすることで電極内において入射光が吸収されて、ノイズの原因となる垂直信号電荷転送路への光の直接入射を防止できるとされている。そしてこの信号電荷転送電極の材料が複数列挙されている。CCDのように検出ユニットに増幅部を有さずに、比較的変換部の面積を大きく取れる構成であれば、転送路へ入射することによって生じるノイズだけを検討すればよい。しかしながら検出ユニットに増幅部を有する構成では、検出ユニットの回路部の専有面積も大きくなり、上述のような軟X線の情報が正確に反映されない信号の割合が増える。そのため、従来技術とは異なる構成の遮蔽部が要求されるのである。
【実施例1】
【0046】
本発明に係る第1の実施例の軟X線検出装置100について説明する。図1は軟X線検出装置100の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1においては、1つの検出ユニット1のみが示されているが、本実施例では複数の検出ユニットが軟X線検出装置100に含まれる。
【0047】
本実施例の軟X線検出装置100は、主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出可能である。この波長帯の電磁波が半導体基板に入射すると、上述の通り1つのフォトンに対して複数の電子が発生する。
【0048】
また本発明の軟X線検出装置100は、半導体基板に入射する段階での波長が主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出するものである。したがって例えば半導体基板に入射する前に上記波長範囲外の波長域(たとえば可視光域)に波長変換された電磁波のみを検出するものは発明に含まれない。しかし半導体基板に入射する前に波長変換部を設けていたとしても、変換後の波長が上記範囲内になる場合には本発明を適用可能である。
【0049】
本実施例の軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2は例えばP型のシリコン基板である。本実施例の検出ユニット1は、半導体基板2に配された変換部3及び回路部4を含む。回路部4の少なくとも一部は遮蔽部7によって覆われる。遮蔽部7は、回路部4に入射し得る軟X線の量を低減、望ましくは完全に遮蔽する。
【0050】
変換部3は例えばフォトダイオードである。本実施例では、変換部3にN型半導体領域11が配される。N型半導体領域11より半導体基板2の表面(軟X線が入射する主面)側にはP型半導体領域12が配される。N型半導体領域11は、P型半導体領域12及び半導体基板2のそれぞれとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、及び半導体基板2によって埋め込み型のフォトダイオードが構成される。半導体基板2をN型半導体基板とし、N型半導体基板にP型半導体領域(例えばP型ウェル)を設けて、このP型ウェルとN型半導体領域11、P型半導体領域12とにより埋め込み型のフォトダイオードを構成することもできる。N型半導体領域11の電子に対するポテンシャルは周囲のP型半導体領域より低いので、入射した軟X線によって発生した電子がN型半導体領域11に収集される。さらに、N型半導体領域11に電子が蓄積されてもよい。N型半導体領域での収集あるいは蓄積を開始する前に、N型半導体領域11に逆バイアスが印加されてもよい。印加された逆バイアスによって、N型半導体領域11のポテンシャルをさらに下げることができる。また、この逆バイアスによって、N型半導体領域11の全体が空乏化していてもよい。
【0051】
回路部4には、転送トランジスタ5と増幅トランジスタ6とが配される。転送トランジスタ5は転送ゲート電極13とフローティングディフュージョン(以下、FD)14を含んで構成される。FD14はN型半導体領域によって構成される。転送ゲート電極13には転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。転送ゲート電極に印加される電圧によって、変換部3のN型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルが制御される。その結果、変換部3で発生した電子をFD14に転送することが可能である。この時、変換部3の全ての電子がFD14に転送されてもよいし、一部の電子のみがFD14に転送されてもよい。変換部3の電荷がすべて転送されるとN型半導体領域11の全体が空乏化するので、このような転送動作を完全空乏転送と呼ぶ。
【0052】
FD14は不図示の配線を介して増幅トランジスタ6のゲート電極15と電気的に接続される。このように、FD14が増幅部の入力部の一部を構成する。つまり、FD14には軟X線の入射により生じた電子が転送され、その電荷の量に応じた増幅信号が出力される。このため、FD14を検出ノードと呼ぶこともできる。
【0053】
増幅トランジスタ6は、ゲート電極15、ソース領域16、及びドレイン領域17を含んで構成されるMOSトランジスタである。ソース領域16及びドレイン領域17はN型半導体領域で構成される。すなわち、増幅トランジスタ6はNチャネル型のMOSトランジスタである。増幅トランジスタ6のゲート電極15は、増幅部の入力部の一部を構成する。ドレイン領域17は不図示の電源部に電気的に接続される。301は素子分離部である。
【0054】
遮蔽部7は転送トランジスタ5及び増幅トランジスタ6と重なるように配される。遮蔽部7は増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配される。遮蔽部7は回路部4に向かって照射された軟X線を遮蔽する。遮蔽部7を構成する材料はタンタルである。遮蔽部7の膜厚は0.5〜1.0マイクロメートルであることが好ましい。遮蔽部7の膜厚が0.5マイクロメートルより小さいと、遮蔽性能が十分に得られない可能性がある。一方、遮蔽部7の膜厚が1.0マイクロメートルより大きいと、強い応力が生じるために遮蔽部7を形成することが困難になる。もちろん、必要に応じて、遮蔽部7の膜厚が0.5〜1.0マイクロメートルの範囲以外の膜厚となっていてもよい。なお、遮蔽部7が必ずしも照射された軟X線の全部を遮蔽する必要はなく、回路部に入射しうる軟X線の量を低減すればよい。
【0055】
図2は、本実施例の軟X線検出装置の検出ユニット1の等価回路を示す。図1と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
検出ユニット1は、さらにリセットトランジスタ8、選択トランジスタ9を含む。変換部3であるフォトダイオードのアノードが、転送トランジスタ5を介して検出ノード201に接続される。検出ノード201は図1のFD14及び増幅トランジスタ6のゲート電極15に対応するノードである。本実施例では、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15とが互いに接続されているので、両方が同一の検出ノード201に対応する。つまり、検出ノード201は増幅部の入力ノードでもある。
【0057】
リセットトランジスタ8のドレインには電源電圧VDDが供給され、リセットトランジスタ8のソースは検出ノード201に接続される。リセットトランジスタ8は、そのゲートに供給される電圧に応じて、検出ノード201の電圧をリセットする。リセットトランジスタ8は例えばNチャネル型のMOSトランジスタである。
【0058】
選択トランジスタ9のドレインは増幅トランジスタ6のソースに接続され、選択トランジスタ9のソースは不図示の出力線に接続される。選択トランジスタ9のゲートに供給される電圧によって選択トランジスタ9がオンすると、検出ノード201の電圧に応じた信号が出力線に出力される。つまり、1つの出力線に複数の検出ユニット1からの信号が出力される場合に、選択トランジスタ9によって信号を出力する検出ユニットを選択することが可能である。
【0059】
リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は必要に応じて省略される。例えば、非選択とする検出ユニットの検出ノード201の電圧を制御することで増幅トランジスタ6をオフにすれば、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、リニアセンサにおいては、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、変換部3がフォトトランジスタであり、発生した電荷を光電流として読み出す場合には、リセットトランジスタ8は省略することができる。
【0060】
図3は検出ユニット1の平面構造の概略図である。図3(a)では、半導体基板2の平面構造を説明するために、遮蔽部7を省略している。図3(b)では、遮蔽部7が示されている。図1は、図3(a)の線ABに沿った断面構造を模式的に示している。
【0061】
図3(a)では、N型半導体領域11が配された領域が変換部3として示されている。また、図3(a)には、転送ゲート電極13が配される領域、FD14が配される領域、増幅トランジスタ6が配される領域、リセットトランジスタ8が配される領域、選択トランジスタ9が配される領域が、それぞれ対応する符号で示されている。例えば、8はリセットトランジスタ8が配される領域を示している。平面図でみたときに、変換部3の周囲に転送ゲート電極13、FD14、各トランジスタが配される。各トランジスタが配される領域には、具体的にソース領域、ドレイン領域、ゲート電極が配される。また、図3(a)には示されていないが、半導体基板2に所定の電圧を供給するための半導体領域や、電源電圧を供給するための半導体領域が配されてもよい。
【0062】
上述の各素子は、素子分離部301によって互いに電気的に分離される。ただし、変換部3とFD14との間であって、転送ゲート電極13が配された領域には、素子分離部301が配されなくてもよい。素子分離部301は酸化膜を用いた分離構造であり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)である。
【0063】
ここで、検出ユニット1における変換部3及び回路部4は、検出ユニット1の平面構造に基づいて決まる。検出ユニット1において、転送トランジスタ5(転送ゲート電極13及びFD14)、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9、素子分離部301が配された領域が回路部4である。ここで、変換部3の境界は、例えばN型半導体領域11の境界である。ただし、N型半導体領域11が他の素子の下部に延在している場合には、当該他の素子の端が変換部3の境界である。そして、当該他の素子が配された領域は回路部4である。例えば、N型半導体領域11が転送ゲート電極13の下部に延在している場合には、転送ゲート電極13の端が変換部3の境界である。そして転送ゲート電極13が配された領域は回路部4である。つまり、変換素子以外の素子が配された領域は、回路部4であってよい。
【0064】
図3(b)は、図3(a)に遮蔽部7を追加した図である。図3(b)を用いて、遮蔽部7の平面構造について説明する。なお、この説明に特に必要のない部分は、図3(a)に記載されていても、図3(b)では省略している。本実施例では、遮蔽部7は平面図でみたときに回路部4の全部と重なる。一方で、変換部3と重なる位置には、遮蔽部7が配されない。これによって、主に回路部4に向かって進む軟X線103が遮蔽される。
【0065】
なお、図3(a)、(b)に示された検出ユニット1が実際には複数並んで配される。複数の検出ユニット1は互いに対称性をもっていてもよい。例えば、図3に示された検出ユニット1をそのまま平行移動したような並進対称性を持っていてもよい。あるいは、ある直線に対して線対称なレイアウトや、ある点に対して点対称なレイアウトであってもよい。複数の検出ユニット1が互いに対称性を有することで、検出ユニットの特性のばらつきを低減することができる。特に、複数の検出ユニット1が並進対称性を有している場合、製造プロセスに起因する特性のばらつきを低減することができる。もちろん、複数の検出ユニット1の間で対称性がなくてもよい。
【0066】
続いて遮蔽部7を構成する材料の遮蔽性能について説明する。図4は、タンタルとアルミニウムとの間で軟X線の透過率を比較した図である。グラフの縦軸は、アルミニウムのユニット厚さあたりの透過率に対する、タンタルのユニット厚さあたりの透過率の比を表している。横軸は軟X線の波長を表している。すなわち、「透過率の比=タンタルの透過率/アルミニウムの透過率」である。なお透過率は、所定の量の軟X線が照射されたときに、透過する軟X線の量の割合である。
【0067】
図4が示す通り、10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、透過率の比が100%よりも小さい。つまり、10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、タンタルの透過率のほうがアルミニウムの透過率よりも低い。これは、タンタルの遮蔽係数がアルミニウムの遮蔽係数よりも高いことを示している。また、図には示していないが、タンタルの遮蔽係数は銅の遮蔽係数よりも高い。タンタルのように、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料で遮蔽部7を構成することによって、軟X線に対して回路部4を十分に遮蔽することができる。
【0068】
特に、5keV以下の軟X線に対するタンタルの遮蔽係数は、アルミニウムの遮蔽係数の2倍以上である。例えば、5keV以下の軟X線に対して同等の遮蔽性能を得るために、タンタルで構成される遮蔽部7の厚さはアルミニウムで構成される場合に比べて半分でよい。遮蔽部7が厚いと大きな応力が生じるので、装置の信頼性が低下する可能性がある。したがって、遮蔽部7がアルミニウムに比べて遮蔽係数が高い材料で構成されることは、遮蔽性能と信頼性のバランスを最適化する上で有利である。
【0069】
以上に述べた本実施例の効果について説明する。変換部3に軟X線101が入射することによって、変換部3の近傍で複数の電子が発生する。つまり、電荷発生領域102の位置が変換部3に近い。電荷発生領域102が変換部3の近傍であれば、全部あるいはほとんどの電子を信号電荷として読み出すことが可能である。
【0070】
しかし、回路部4に軟X線103が入射すると、変換部3から比較的遠い位置で複数の電子が発生する。つまり、電荷発生領域104の位置が変換部3から遠い。この場合、発生した電子のうち、一部の電子のみが変換部3に収集される。一方で、変換部3に収集されない電子が電源部などに排出されうる。
【0071】
これに対して本発明に係る軟X線検出装置100は、回路部4に入射し得る軟X線を遮蔽する遮蔽部7を有する。そして、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数が高い。このため、回路部4に入射した軟X線103に基づく信号が出力される割合を低減することができる。別の言い方をすれば、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合が低減される。その結果、入射した軟X線のエネルギーが正確に反映された信号が出力される割合が増える。すなわち、正確に軟X線のエネルギーを測定することが可能となる。
【0072】
さらに、アルミニウム及び銅と比べて遮蔽係数の高い材料で遮蔽部7を構成してもよい。また、原子番号が70以上の材料であれば、遮蔽部7の材料として十分な程度の遮蔽係数を有している。したがって、原子番号が70以上の材料で遮蔽部7を構成してもよい。このような構成によれば、さらに正確な軟X線の検出を行うことが可能となる。
【0073】
[実施例1の変形例]
次に、実施例1の各部位の変形例を説明する。以下で述べる変形例は、適宜組み合わせることができる。さらに、これらの変形例は後述の実施例2〜6についても適用可能である。
【0074】
実施例1では、電子が信号電荷となる構成を例に説明したが、ホールが信号電荷となる構成としてもよい。ホールが信号電荷となる構成では、半導体領域の導電型が本実施例とは反対になる。例えば、埋め込み型のフォトダイオードは、表面側からN型半導体領域、P型半導体領域、N型半導体領域が順に配された構造となる。そして、軟X線によって発生した電荷がP型半導体領域に収集される。また、FD14はP型半導体領域を含んで構成される。
【0075】
半導体基板2は、シリコン基板に限らず、ゲルマニウム基板、ガリウムヒ素基板などの各種の半導体基板が用いられる。半導体基板2はP型の基板、N型の基板のいずれでもよい。半導体基板2はエピタキシャル成長によって形成された基板であってもよい。あるいは、半導体基板2はSOI(Silicon On Insulator)基板であってもよい。また、必要に応じて半導体基板2にP型のウェル、またはN型のウェルが配されてもよい。ウェルが配された場合には、ウェルの内部に、変換部3や増幅トランジスタ6を構成する半導体領域が配される。
【0076】
実施例1では、転送トランジスタ5の転送ゲート電極13には、転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。さらに、オンに対応する電圧とオフに対応する電圧との中間の電圧が印加されてもよい。あるいは、N型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルを一定に制御するように固定の電圧が印加されるのみでもよい。なお、転送トランジスタ5は必須の構成ではなく、必要に応じて省略される。転送トランジスタ5が省略される場合には、例えば変換部3のN型半導体領域11が増幅トランジスタ6のゲート電極と接続される構成となっていればよい。
【0077】
FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との電気的な接続は、例えば、金属配線、金属配線とFD14とを接続するコンタクトプラグ、及び金属配線とゲート電極15とを接続するコンタクトプラグによって構成される。あるいは、ゲート電極15とFD14とが直接接触していてもよい。または、FD14とゲート電極15との両方に接続される共通のコンタクトプラグによって、FD14とゲート電極15とが接続されてもよい。コンタクトプラグは例えばタングステンで構成される。
【0078】
また、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との間の電気的経路にスイッチが配されてもよい。このような構成においては、FD14が電子を一時的に保持することが可能となる。すなわち、FD14が検出ユニットごとに配された電荷保持部として機能してもよい。
【0079】
実施例1では、増幅トランジスタ6としてMOSトランジスタが用いられた。しかし、増幅トランジスタとしては、バイポーラトランジスタ、接合型電界効果トランジスタ(JFET)、静電誘導型トランジスタ(SIT)などの各種の能動素子を用いることができる。また、実施例1では、増幅トランジスタ6はソースフォロア回路を構成する。しかし、増幅部はこのような構成に限られない。例えば、MOSトランジスタを用いた反転増幅回路、演算増幅器を用いたボルテージフォロアなどが用いられる。
【0080】
図2において、選択トランジスタ9は、増幅トランジスタ6のソースと不図示の出力線との間の電気的経路に配された。しかし、選択トランジスタ9が増幅トランジスタ6のドレインと電源との間に配されてもよい。
【0081】
FD14、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は、複数の検出ユニット1で共有されてもよい。例えば、複数の検出ユニット1の変換部3のそれぞれに対して転送ゲート電極13が配され、各変換部3の電子が独立に共通のFD14に転送される構成であってもよい。この場合、複数の検出ユニット毎に、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9が1つずつ配されればよい。複数の検出ユニットがこれらの素子を共有することによって、変換部3に対する回路部4の割合を小さくできる。そのため、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0082】
遮蔽部7を構成する材料は、タンタルに限られない。遮蔽部7を構成する材料は、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料であればよい。もしくは、遮蔽部7を構成する材料は、原子番号70以上の元素であればよい。半導体プロセスとの整合性を考慮すると、タンタル、タングステン、金などが挙げられる。または、タンタル、タングステン、または金が主成分となっている合金であってもよい。なお、本明細書において、主成分とは化合物あるいは混合物に含まれる成分のうち組成比あるいは構成比が最も多い成分である。
【0083】
また、遮蔽部7は単層である必要はない。間にシリコン酸化膜等の絶縁膜を挟んだ多層構成でも構わない。多層構造の場合、応力を下げるために各層の膜厚を小さくしても高い遮蔽性能を達成できる。多層構造の場合に、回路部4の一部の上には第1層の遮蔽部7が配され、第1層とは別の第2層の遮蔽部7は配されず、一方で、回路部4の別の一部の上には第2層の遮蔽部7が配される構造でもよい。このように層ごとに回路部4の遮蔽される領域が異なることで、レイアウトの自由度が向上する。また、遮蔽部7を構成する材料が導電体である場合には、遮蔽部7が配線の機能を備えていてもよい。例えば、遮蔽部7が各トランジスタを接続したり、半導体基板2や回路部4に電源を供給したりしてもよい。
【0084】
図3(b)において、遮蔽部7は回路部4の全部の領域に重なって配されている。しかし、遮蔽部7が回路部4の一部の領域だけの上に配されていてもよい。つまり、回路部4のうち、一部の領域の上には回路部4が配されていなくてもよい。例えば、遮蔽部7が、転送ゲート電極13及びFD14の上には配されていなくてもよい。または、遮蔽部7が変換部3に隣接する素子分離部301の上には配されていなくてもよい。あるいは、遮蔽部7は増幅トランジスタ6のみを覆うように配されていてもよい。または、遮蔽部7はリセットトランジスタ8のみを覆うように配されていてもよい。
【0085】
遮蔽部7は回路部4のより多くの部分と重なって配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。遮蔽部7が回路部4の全部と重なって配される場合には、さらに正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。
【0086】
また、回路部4のうち変換部3に近い領域の上にのみ遮蔽部7が配されていてもよい。回路部4のなかでも特に変換部3に近い領域と重なって遮蔽部7が配されていれば、正確性を十分に向上させることができる。これは、変換部3に近い領域に軟X線が入射すると、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が排出される可能性が高いからである。
【0087】
回路部4のなかでも変換部3から遠い領域の上には、遮蔽部7が配されなくてもよい。変換部3から遠い領域に軟X線が入射した場合には、発生したすべての電荷が排出される可能性が高いからである。具体的には、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域の上には、遮蔽部7が配されていなくてもよい。この理由は、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域で電子が発生したとしても、その電子が変換部3に収集される可能性はほとんどないからである。例えば、回路部4のうち変換部3から所定の距離より遠い領域の上に遮蔽部7を配さないことによって、配線やコンタクトプラグのレイアウトの自由度を向上させてもよい。
【0088】
回路部4に配される素子によって、遮蔽されたほうが良い素子と、遮蔽が必要でない素子を区別してもよい。例えば、電荷が排出されてしまう領域、及びその近傍の領域の上に、遮蔽部7が配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。このような領域には電源部や電源部と電気的に接続された半導体領域などが挙げられる。一方で、電荷が蓄積される領域の上には遮蔽部7が配されなくてもよい。例えばFDや容量素子の上には遮蔽部7が配されなくてもよい。
【0089】
従来のCCD型の軟X線用撮像装置は検出ユニットに回路部を有していないため、増幅部を含む回路部の遮光構造については検討されていない。上述のように、検出ユニットが増幅部を含む場合の遮蔽構造を工夫することによって、より正確な軟X線検出を可能にすることができる。
【0090】
図1では省略されているが、遮蔽部7とは別に複数の配線層が配されてもよい。各配線層には各トランジスタやFD14を接続するための導電部材、電源電圧やグラウンド電圧を供給するための導電部材が配される。導電部材は、例えばアルミニウムや銅で形成される。特に、導電部材には遮蔽部7を構成する材料よりも電気伝導度の高い材料が用いられてもよい。アルミニウムや銅はタンタルに比べて電気伝導度が高い。複数の配線層の間には、層間絶縁膜が配される。層間絶縁膜によって複数の配線層に配された導電部材が互いに絶縁される。導電部材と層間絶縁膜の間には、必要に応じてバリアメタルとして機能する導電体が配されうる。バリアメタルにはチタンやチタン合金、タンタルやタンタル合金、チタンやチタン合金が用いられる。バリアメタルは、当該バリアメタルに接している導電部材を構成する金属原子の拡散を低減してもよい。この場合、当該バリアメタルにおける導電部材を構成する金属の拡散係数が、層間絶縁膜における拡散係数より低いことが好ましい。遮蔽部7とバリアメタルとに同じ材料(例えばタンタル)が用いられる場合、遮蔽部7がバリアメタルより厚いほうがよい。
【0091】
遮蔽部7を配線として用いることもできる。つまり、遮蔽部7が信号を伝達してもよいし、電源電圧を供給してもよい。このように配線が遮蔽部7の機能を兼ねる場合には、当該配線が他の配線を構成する材料よりも軟X線の遮蔽性能の高い材料を含んで構成されることが好ましい。あるいは、遮蔽部7の機能を兼ねる配線の厚さを、他の配線より厚くすることが好ましい。
【0092】
軟X線を吸収する吸収部が、半導体基板2の軟X線の入射する主面とは反対側の主面に配されていてもよい。吸収部は半導体基板2を透過した軟X線を吸収することによって、半導体基板2を透過した軟X線が軟X線検出装置の他の部分に及ぼす可能性を低減することができる。
【0093】
図3(a)において、素子分離部301がSTIである例を説明した。しかし、素子分離部301はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)分離であってもよい。STIやLOCOS分離などで用いられる酸化膜の下部に、変換部の電荷が蓄積される領域とは反対導電型の半導体領域が配されてもよい。あるいは、素子分離部301は、酸化膜を用いないPN接合分離であってもよい。また、これらの素子分離構造が併用されてもよい。
【0094】
PN接合分離が用いられる場合や、酸化膜の下部に反対導電型の半導体領域が配される場合、N型半導体領域11に接するようにP型半導体領域が配される。この構成では、N型半導体領域とP型半導体領域との両方にわたって空乏層が伸びる。P型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分は変換部3の一部であると考えてもよい。つまり、ある場所で発生した電荷が所定の領域に収集されるならば、その場所は変換部3の一部であってもよい。
【0095】
変換部3の上に、特定の波長の電磁波を遮蔽するフィルターが配されてもよい。これによって、変換部3に主として検出したい波長帯の軟X線が入射するので、より高精度に軟X線を検出することができる。
【実施例2】
【0096】
本発明に係る第2の実施例の軟X線検出装置500について説明する。図5は軟X線検出装置500の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1(実施例1)と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例2では、遮蔽部501の配置及び軟X線の入射方向が実施例1とは異なっている。以下では、実施例1と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1と共通の構成とすることができる。
【0097】
図5が示す通り、半導体基板2の第1の主面510の側に、転送トランジスタ5の転送ゲート電極13及び増幅トランジスタ6のゲート電極15が配される。さらに、第1の主面510の側には、配線が配されてもよい。半導体基板2の第2の主面511の側に遮蔽部501が配される。第2の主面511は、第1の主面510とは反対側の主面である。つまり、半導体基板2の対向する2つの主面のうち、一方が第1の主面510であり、他方が第2の主面である。本実施例では、軟X線502、504は第2の主面511から第1の主面510の方向に向かって半導体基板2に入射する。つまり、本実施例の軟X線検出装置500は、いわゆる裏面照射型である。
【0098】
このような裏面照射型の軟X線検出装置500では、半導体基板2の軟X線が入射する主面(第2の主面511)と、トランジスタや配線が配される主面(第1の主面510)とが異なる主面である。そのため、軟X線の入射面側において変換部3の開口を大きくすることができ、感度を向上させることが可能となる。この利点を最大限生かすために、裏面照射型のセンサでは通常は入射面側に光や電磁波を遮蔽する構造が配されない。
【0099】
しかしながら、裏面照射型であっても、軟X線504が回路部4に入射するとエネルギーが正確に反映されていない信号が出力される可能性がある。軟X線504が入射したことによって複数の電子が発生した場合に、電荷発生領域505はマイクロメートルオーダーの広がりを持つからである。そのため、電子の一部が入射面側から数マイクロメートル離れた回路の電源部に吸収され、他の一部が変換部3に収集されうる。半導体基板2を厚くしても、軟X線504は半導体基板2の深部まで侵入することが考えられるので、第1の主面510の近傍の回路部4で複数の電子が発生する可能性がある。つまり、電荷発生領域505が回路部4の近傍であることが考えられる。したがって、裏面照射型の軟X線検出装置の場合に、回路部4に向かって入射する軟X線504を遮蔽部501によって遮蔽することで、軟X線検出の精度を向上させることが可能となる。
【0100】
本発明に係る軟X線検出装置のうち裏面照射型の軟X線検出装置においては、光の入射面側にはトランジスタが配されない場合がある。そのため、必ずしも遮蔽部501がトランジスタのゲート電極の配線層よりも上の層である必要はない。
【0101】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1の検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。また、半導体基板2の主面511の側には、遮蔽部501以外に配線やゲート電極が一切配されていなくてもよい。あるいは、半導体基板2の主面511の側に、遮蔽部501の他に配線やゲート電極が配されていてもよい。また、本実施例のような裏面照射型の軟X線検出装置においても、軟X線の入射面とは反対側(第2の主面511の側)に軟X線の吸収部材が配されてもよい。
【0102】
なお、実施例1の説明において、N型半導体領域11が他の素子の下部に延在している場合には、当該他の素子の端が変換部3の境界であると説明した。裏面照射型の場合でも、この考え方は同じである。裏面照射型の場合では、受光面を広くするために変換部を構成するN型半導体領域11が、増幅トランジスタ6やリセットトランジスタ8などと重なって配されることが考えられる。このような場合でも、増幅トランジスタ6やリセットトランジスタ8が配された領域が回路部4である。
【実施例3】
【0103】
本発明に係る第3の実施例の軟X線検出装置600について説明する。図6は軟X線検出装置600の検出ユニット1の平面構造を示す概略図である。図3(実施例1)と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例3では、遮蔽部601の配置が実施例1及び実施例2とは異なっている。以下では、実施例1及び実施例2と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1または実施例2と共通の構成とすることができる。
【0104】
実施例3では、遮蔽部601の一部が変換部3の上に配される。以下の説明では、遮蔽部601について、変換部3の上に配された部分を第1部分601a、回路部4の上に配された部分を第2部分601bと呼ぶ。
【0105】
第1部分601aは変換部3のうち回路部4に近い領域の上に配される。第1部分601aと第2部分601bとは連続して配されてもよい。つまり、1つの層として配された遮蔽部601が、回路部4の上から変換部3の上にまで延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分601aと第2部分601bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0106】
あるいは、第1部分601aと第2部分601bとが別の層として配されていてもよい。つまり、半導体基板2の表面から第1部分601aまでの距離と、該表面から第2部分601bまでの距離が異なっていてもよい。この場合に、第1部分601a及び第2部分601bが、互いに重なるように延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分601aと第2部分601bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0107】
また、別の層に配された第1部分601aと第2部分601bとを接続する部分が、遮蔽部601に含まれてもよい。これによって、第1部分601aと第2部分601bとが重なっていなくても、遮蔽性能を高めることができる。もちろん、第1部分601aと第2部分601bとが互いに分離されていてもよい。
【0108】
図6が示す通り、変換部3のうち、変換部3と回路部4との境界から所定の距離L以内の領域は、全て第1部分601aで覆われてもよい。このとき、変換部3のうち、境界から所定の距離Lより離れた領域の上には、遮蔽部601が全く配されていなくてもよいし、一部に遮蔽部601の第1部分601aが配されてもよい。
【0109】
次に本実施例の効果について説明する。そのために、実施例1のバリエーションの1つである、変換部3の上に遮蔽部7が配されていない軟X線検出装置を比較対象とする。このような、軟X線検出装置の検出ユニット1の平面構造の概略図を図7に示す。図7において、図1と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0110】
図7において、変換部3のうち回路部4の近傍に軟X線が入射すると、電荷発生領域701が変換部3及び回路部4の両方に渡る。そうすると、発生した電子の一部が回路部4の電源部などに排出され、他の一部が変換部3に収集される。
【0111】
これに対して、本実施例では、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から所定の距離以内の領域に、遮蔽部601の第1部分601aが配される。以下、所定の距離をLとする。これによって、境界付近に入射する軟X線を遮蔽することができる。結果として、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合が減少する。つまり、実施例1に比べて、より正確に軟X線を検出することが可能となる。さらに、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から所定の距離L以内の全ての領域の上に第1部分601aが配されれば、変換部3に入射した軟X線602によって発生する電子をほぼすべて収集することが可能になる。つまり、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合をさらに低減することができる。このように、変換部3の上に遮蔽部601を配することによって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0112】
所定の距離Lは必要に応じて設定すればよい。例えば、検出したいエネルギーの軟X線が半導体基板2に入射したときの電荷発生領域の広がりに基づいて、所定の距離Lを決定することができる。所定の距離Lが電荷発生領域の平均的な半径よりも大きければ、高い遮蔽性能が期待される。具体的には、電荷発生領域を包含する最小の球を想定し、その球の半径よりも大きいLを設定するとよい。
【0113】
あるいは、変換部3のサイズに基づいて所定の距離Lを決定してもよい。変換部3のサイズに対して所定の距離Lを小さくすれば、感度を落とすことがない。所定の距離Lが大きいと回路部4への電子の排出を抑制する効果が高くなるが、同時に軟X線が変換部3に入射する確率も下がる。つまり、軟X線検出の感度と正確性とはトレードオフの関係にある。したがって、必要とされる性能に応じて、所定の距離Lは適宜設定される。具体例として、検出する軟X線のエネルギーが10keV以下であって、検出ユニットサイズが約10マイクロメートルの場合、所定の距離Lは0.1〜2.0マイクロメートルの範囲であればよい。
【0114】
あるいは、所定の距離L(マイクロメートル)が以下の式(1)で表される値であってもよい。ただし、E(keV)は入射する軟X線のエネルギーである。
【0115】
【数2】
【0116】
なお、境界から所定の距離L以内の領域の上に、遮蔽部601が配されていなくてもよい。変換部3のどの領域の上に第1部分601aを配するかは、必要に応じて変更することができる。
【0117】
本実施例では、N型半導体領域11と重なるように遮蔽部601が配された。しかし、実施例1の変形例で説明したように、N型半導体領域11と平面方向に隣接するP型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分が変換部3の一部であってもよい。このような場合、必ずしもN型半導体領域11と重なるように遮蔽部601を配さなくても、所定の距離L以内の領域と重なるように遮蔽部601を配することができる。
【0118】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び断面構造は、実施例1または実施例2の検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。また、変換部3と回路部4との境界については、実施例1あるいは実施例2で説明した通りである。なお、本実施例で説明した別の層に遮蔽部が配される構造は、実施例1〜2に適用することが可能である。つまり、回路部4と重なって配された遮蔽部7が、別の層に配される2つの部分を含んでいてもよい。
【実施例4】
【0119】
本発明に係る第4の実施例の軟X線検出装置800について説明する。図8は軟X線検出装置800の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1(実施例1)または図5(実施例2)と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例4では、半導体基板801内部の構造が実施例1〜3とは異なっている。以下では、実施例1〜3と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1〜3のいずれかと共通の構成とすることができる。
【0120】
本実施例では半導体基板801がN型のシリコン基板である。半導体基板801に、P型ウェル802が配される。P型ウェル802は、変換部3に配された第1ウェル802aと回路部4に配された第2ウェル802bとを含む。変換部3を構成するN型半導体領域11、P型半導体領域12は第1ウェル802aの内部に配される。N型半導体領域11は第1ウェル802aとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、第1ウェル802aが埋め込み型のフォトダイオードを構成している。転送トランジスタ5、増幅トランジスタ6の各半導体領域は第2ウェル802bに配される。なお、便宜的に第1ウェル802a及び第2ウェル802bという二つのウェルについて説明したが、実際には両者が1つの半導体領域であってもよい。もちろん、2つの半導体領域が第1ウェル802a及び第2ウェル802bに対応していてもよい。
【0121】
本実施例の1つめの特徴は、各半導体領域が配されたP型ウェル802の下に、反対導電型であるN型の半導体領域(半導体基板801)が配されたことである。2つめの特徴は、第1ウェル802aの下端が第2ウェル802bの下端よりも深い位置にあることである。本明細書においては、転送ゲート電極13や、増幅トランジスタ6のゲート電極15が配された側の主面810が深さの基準である。半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが浅く、当該主面810から遠いほうが深い。上下については、半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが上、当該主面810から遠いほうが下とする。また、半導体領域の下端とはP型ウェル802と半導体基板801とのPN接合面としてよい。
【0122】
このようなP型ウェル802の製造方法について簡単に説明する。まずN型の半導体基板801を用意する。次に、第1ウェル802aに対応する位置に開口を有する第1マスクを形成する。第1マスクを用いたイオン注入により第1ウェル802aを形成する。続いて、第2ウェル802bに対応する位置に開口を有する第2マスクを形成する。第2マスクを用いたイオン注入により第2ウェル802bを形成する。イオン注入のエネルギーを変えることで、下端の深さが異なる第1ウェル802a及び第2ウェル802bを形成することができる。
【0123】
別の形成方法としては、N型の半導体基板801を用意し、P型ウェル802が配される領域の全面に同じ深さのP型半導体領域を形成する。そして、第1ウェル802aに対応する領域にだけ、最初に形成したP型半導体領域よりも深い位置にP型半導体領域を形成するためのイオン注入を行う。あるいは、第2ウェル802bに対応する領域にだけ、カウンターでN型の不純物(ドナー)をイオン注入する。なお、これらの方法は一例であり、P型ウェル802を形成するために他の公知の方法を用いてもよい。
【0124】
次に本実施例の効果について説明する。本実施例においては、P型ウェル802の下部に、N型の半導体基板801が配される。そのため、P型ウェル802と半導体基板801との境界付近では、電子がP型ウェル802から半導体基板801に向かうようなポテンシャル勾配が形成される。つまり、P型ウェル802は半導体基板801にある電子にとってのポテンシャル障壁となりうる。
【0125】
回路部4が遮蔽部7で覆われていても、例えば斜めに入射する軟X線803が回路部4に入射し、回路部4で複数の電子が発生することが考えられる。つまり、回路部4が遮蔽部7で覆われていても、回路部4に近い領域が電荷発生領域804に含まれる場合がある。本実施例の構造によれば、第2ウェル802bの下端近傍や下端よりも深い位置で発生した電子は、ポテンシャル障壁のために変換部3に収集される可能性が低い。また、回路部4の第2ウェル802bの下端は、浅い位置にある。そのため、回路部4の第2ウェル802bの下端よりも浅い領域で発生した電子は、近くの電源部などに排出されやすい。つまり、回路部4で発生した電子は、いずれも変換部3に収集されることなく、電源部などに排出されやすいのである。一方、変換部3においては、第1ウェル802aの下端が深い位置にある。そのため、変換部3で発生した電子は半導体基板801に排出されにくい。
【0126】
先述の通り、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が別の場所に排出されると、軟X線のエネルギーを反映していない信号が出力されうる。発生した電子の全てを読み出すか、あるいは発生した電子の全てが排出されることで、エネルギーを正確に反映した信号を得ることができる。本実施例の構成によれば、変換部3に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが変換部3に収集される可能性を高くすることができる。そして、回路部4に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが排出される可能性を高くすることができる。したがって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0127】
なお、本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1〜3のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例5】
【0128】
本発明に係る第5の実施例の軟X線検出装置900について説明する。図9は軟X線検出装置900の検出ユニット1及び配線部の断面を示す概略図である。図1(実施例1)または図5(実施例2)または図8(実施例4)と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例では、半導体基板2の上に配された絶縁体の構造が特徴である。実施例1〜4と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1〜4のいずれかと共通の構成とすることができる。
【0129】
半導体基板2の上に、3つの配線層901〜903が配される。第1配線層901は、導電部材901a、902bを含む。第2配線層902は、第1配線層901の上に配される。第2配線層902は、導電部材902a、902bを含む。第3配線層903は、第2配線層902の上に配される。第3配線層は、導電部材903a、903bを含む。導電部材はアルミニウムで構成される。3つの配線層901〜903の上に、第4配線層904が配される。第4配線層904は遮蔽部7を含む。つまり、遮蔽部7は、複数の配線層のうち、半導体基板2から最も遠い位置にある配線層に含まれる。
【0130】
導電部材901a〜903bのそれぞれは配線を構成する。例えば、導電部材901aは変換部3からの信号が出力される出力線を構成する。例えば、導電部材901bはFDと増幅トランジスタのゲート電極とを接続する配線を構成する。例えば、導電部材902a、902bは、それぞれ転送ゲート電極及びリセットトランジスタのゲート電極に電圧を供給するための配線を構成する。また、例えば導電部材903a、903bは電源電圧を供給する配線を構成する。
【0131】
各導電部材901a〜903b及び遮蔽部7は、層間絶縁膜905によって互いに絶縁される。層間絶縁膜905には例えばシリコン酸化膜を用いることができる。本実施例において、変換部3の上の層間絶縁膜905の厚さd1は、半導体基板2の表面から遮蔽部7の半導体基板2の側の面までの距離d2よりも小さい。つまり、変換部3において、層間絶縁膜905が薄くなっている。さらに、本実施例では変換部3の上には、光を集めるためのマイクロレンズが配されない。このような構成によれば、変換部3の上に配される部材の厚さが小さいため、吸収される軟X線の量を小さくすることができる。つまり、感度を向上させることが可能となる。
【0132】
導電部材は、例えばアルミニウムや銅で形成される。特に、導電部材には遮蔽部7を構成する材料よりも電気伝導度の高い材料が用いられてもよい。アルミニウムや銅はタンタルに比べて電気伝導度が高い。
【0133】
導電部材901a〜903bと層間絶縁膜905の間には、必要に応じてバリアメタルが配されてもよい。バリアメタルは配線の材料となる金属が拡散することを低減しうる。そのため、バリアメタルにおける金属の拡散係数は、層間絶縁膜905における金属の拡散係数より低くてもよい。バリアメタルの材料は、タンタル、タングステン、チタンであってもよい。なお、バリアメタルは電気伝導を主たる目的としないので、バリアメタルの膜厚は接触している導電部材の膜厚よりも薄くてもよい。これに対して、遮蔽部7は別の導電部材とは接触していなくてよい。もちろん、遮蔽部7が別の導電部材と接触してもよい。この場合には、遮蔽部7の膜厚は、遮蔽部7と接触している別の導電部材の膜厚よりも厚くてもよい。あるいは、遮蔽部7の膜厚は、バリアメタルの膜厚より厚くてもよい。
【0134】
このような構成によれば、遮蔽の機能と信号伝達の機能を別々の配線層で分離することができるので、高い遮蔽性能と高い信号伝達能力を両立させることが容易になる。
【0135】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1〜4のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。本実施例の構成は、実施例1〜4と組み合わせることが可能である。例えば、配線の構造、層間絶縁膜905の構造をそれぞれ単独に上述の実施例1〜4と組み合わせてもよい。実施例2と組み合わせる場合には、軟X線が入射する側に遮蔽部7が配され、それとは反対側に配線層901〜903が配される。また、実施例1〜4において、マイクロレンズが配されない構成とすることも可能である。
【実施例6】
【0136】
本発明に係る第6の実施例の軟X線検出装置1000について説明する。図10は本実施例の軟X線検出装置1000の断面の概略図を示す図である。図10において、図8(実施例4)と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例の軟X線検出装置1000は、遮蔽部7を有していないことが特徴である。それ以外の構成は、実施例4と同様とすることができる。つまり、実施例4の変形例として、遮蔽部7を省略することが可能である。
【0137】
この理由は、実施例4で説明されたように、変換部3のP型ウェル802aと回路部4のP型ウェル802bの下端の位置が異なることによって、正確な軟X線の検出が可能となるからである。先に述べたように、半導体基板2に軟X線が入射したことによって発生した電荷のうち、一部の電荷のみが読み出されることが、正確性の向上における課題である。本実施例のウェル構造によって、回路部4に軟X線が入射したことによって発生した電荷は、全てが排出される可能性が高い。つまり、遮蔽部7を省略しても、P型ウェルの構造のみによって、軟X線検出の正確性を向上させることができるのである。
【実施例7】
【0138】
本発明に係る軟X線検出装置を含む軟X線撮像システムの実施例について図11を用いて説明する。本実施例の軟X線撮像システムは、実施例1〜6の軟X線検出装置100、500、600、800、900、1000のいずれかを有する。軟X線撮像システムは、さらに軟X線検出装置からの信号を処理する信号処理回路1101、軟X線検出装置を駆動するための駆動回路1102を有する。信号処理回路1101や駆動回路1102には固体撮像装置に適用しうる公知の回路を用いることができる。信号処理回路1101の一部または全部、及び駆動回路1102の一部または全部が1つの半導体基板に配されてもよい。あるいは、信号処理回路1101、または駆動回路1102が、軟X線検出装置の有する半導体基板とは別の半導体基板に配されてもよい。
【0139】
また、軟X線撮像システムは、推進装置を備えていてもよい。例えば、推進装置は衛星軌道上に配された軟X線検出システムの位置を制御するものである。あるいは、推進装置は地球の地表から衛星軌道上に軟X線検出システムを移動させるためのロケットエンジンであってもよい。これらの推進装置は着脱可能であってもよい。
【0140】
このような軟X線撮像システムの駆動方法の例について説明する。軟X線のエネルギーを測定する目的の場合には、1回の蓄積期間に1つの検出ユニットに入射するフォトンの平均数が1以下になるように、駆動回路1102が軟X線検出装置を駆動する。つまり、入射する軟X線の量に基づいて、十分に短い蓄積期間を設定すればよい。具体的には、軟X線の量はあるユニット面積においてユニット時間あたりに照射されるフォトンの数で表される。そこで、検出ユニットの面積から、ユニット時間あたりに1つの検出ユニットに照射されるフォトンの数を計算すれば、蓄積期間をいくつに設定すればよいか決定することができる。そして1回の蓄積動作を行ったあとに軟X線検出装置が信号電荷を信号として出力し、信号処理回路1101が画像を作成する。この画像は、各検出ユニットに入射した軟X線のエネルギーを2次元平面にマッピングしたものであってもよい。
【0141】
さらに、入射する軟X線の量(強度)、つまり、フォトンの数を検出する場合には、上述の蓄積動作を複数回繰り返して、蓄積のたびに信号を読み出せばよい。例えば、地球の衛星軌道上で太陽が発する軟X線を検出すると、軟X線検出装置の1つの検出ユニットに毎秒数百個のフォトンが入射する場合がある。これらのフォトンの数とエネルギーを測定するためには、1秒間に数百〜数千枚の画像を撮像し、読み出す必要がある。CCD型の軟X線検出装置でこのような高速の読み出しを行うためには、検出ユニット数を減らして解像度を犠牲にする必要がある。これに対して、本発明に係る軟X線検出装置は検出ユニットに増幅部を有するので、解像度を犠牲にすることなく高速の撮影を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 検出ユニット
2 半導体基板
3 変換部
4 回路部
6 増幅トランジスタ
7 遮蔽部
【技術分野】
【0001】
本発明は軟X線検出装置に関し、とりわけ軟X線検出装置の遮蔽構造及び半導体基板の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像装置を軟X線検出の用途に使うことが提案されている。特許文献1には、CCDを用いた軟X線用固体撮像素子が記載されている。更に、特許文献1には、軟X線を遮蔽する部材でCCDの転送電極を構成した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−080736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む場合の軟X線に対する遮蔽構造について、十分に検討されていない。別の観点で言えば、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む場合の、変換部及び増幅部の構造について十分に検討されていない。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む軟X線検出装置において、より正確な軟X線検出を行うことが可能な遮蔽構造を提供することを目的とする。あるいは別の観点として、検出ユニットが変換部で生じた信号を増幅する増幅部を含む軟X線検出装置において好適な半導体基板の内部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記遮蔽部は前記複数の増幅トランジスタのゲート電極よりも上に配され、前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板と、前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記複数の増幅トランジスタのゲート電極は、前記半導体基板の2つの主面のうち第1主面に配され、前記遮蔽部は、前記半導体基板の2つの主面のうち、前記第1主面とは反対側の第2主面に配され、前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の側面に係る軟X線検出装置は、変換部と回路部とを含む半導体基板を備えた軟X線検出装置であって、前記変換部には、軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軟X線検出装置によれば、軟X線を正確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図2】本発明の実施例1の軟X線検出装置の等価回路図。
【図3】本発明の実施例1の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図4】タンタルとアルミニウムの軟X線透過率の比を示す図。
【図5】本発明の実施例2の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図6】本発明の実施例3の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図7】本発明の実施例1の軟X線検出装置の平面構造の概略図。
【図8】本発明の実施例4の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図9】本発明の実施例5の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図10】本発明の実施例6の軟X線検出装置の断面構造の概略図。
【図11】本発明の実施例7の軟X線検出システムのブロック図。
【図12】軟X線検出装置の検出ユニットの平面構造の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る軟X線検出装置100の要部を説明する。図1に示された軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2は変換部3と回路部4とを含む。変換部3には例えばフォトダイオードなどの変換素子が配される。変換部3では、軟X線が入射したことによって発生した電荷が収集される。回路部4には変換部3で生じた信号を増幅する増幅トランジスタ6が配される。増幅トランジスタ6は、変換部3で生じた電荷に基づく信号を出力する増幅部である。
【0012】
変換部3と回路部4とにより検出ユニット1が構成される。図1では1つの検出ユニット1のみが示されているが、本発明に係る軟X線検出装置100は複数の検出ユニットを有する。それぞれの検出ユニットが少なくとも変換部3と回路部4とを含む。すなわち、本発明に係る軟X線検出装置100は複数の変換素子と、複数の増幅トランジスタを有する。
【0013】
検出ユニット1のレイアウトに応じて、複数の検出ユニット1に含まれるそれぞれの変換部3が、互いに連続して配されてもよい。あるいは、それぞれの変換部の間に素子分離部が配されるレイアウトのように、検出ユニット1ごとに変換部3が分離されて配されてもよい。また、複数の検出ユニット1に含まれるそれぞれの回路部4が互いに連続して配されてもよい。
【0014】
回路部4の上に遮蔽部7が配される。半導体基板2の主面に対してほぼ垂直な方向に遮蔽部7が射影された場合に、遮蔽部7の一部または全部が回路部4の一部または全部に射影される。つまり、遮蔽部7は回路部4の一部または全部と重なって配される。別の言い方をすれば、遮蔽部7が回路部4の一部または全部を覆っている。特に断りがない限り、「2つの部材が重なって配される」とは、半導体基板2の主面に対して垂直な方向に一方の部材が射影された場合に、当該一方の部材の少なくとも一部が他方の部材の少なくとも一部の領域に射影されることを言う。このとき、2つの部材が接触していてもよい。あるいは、2つの部材の間に別の部材が配されていてもよい。なお、本明細書において、半導体基板2の主面は、例えば、半導体材料で形成される層と他の材料(例えば絶縁体)との界面である。
【0015】
遮蔽部7は、増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配された部分を含む。検出ユニット1がトランジスタを含む場合、当該トランジスタのゲート電極を含む配線層は導電部材のレイアウトが制約される場合がある。そのため、ゲート電極を含む配線層だけでは遮蔽性能を向上させることが困難な場合が多い。
【0016】
そこで、本発明においては、ゲート電極が配された配線層よりも上の層において、軟X線から回路部4の一部を遮蔽する遮蔽部7が配される。これによって、軟X線に対する遮蔽性能を向上させることが可能となる。なお、ゲート電極を含む配線層より上の層とは、ゲート電極を含む配線層より、半導体基板からの距離が遠い層である。
【0017】
遮蔽部7は、回路部4に入射し得る軟X線の一部もしくは全部を遮蔽する。例えば、所定の割合の軟X線が遮蔽部7を透過してもよい。また、回路部4の一部が遮蔽部7によって覆われなくてもよい。
【0018】
遮蔽部7を透過しない軟X線は必ずしも遮蔽部7に吸収される必要はない。たとえば、軟X線の一部が散乱、回折、あるいは反射された結果、軟X線の回路部4への入射が抑制されればよい。また散乱や回折、反射等によって、軟X線が変換部3へ入射してもよい。
【0019】
好適には、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数は、アルミニウム及び銅の軟X線に対する遮蔽係数よりも高い。または、好適には、遮蔽部7を構成する材料は原子番号が70以上の元素を含む。一般には原子番号が大きい元素ほど、軟X線に対する遮蔽能力が高くなるからである。
【0020】
遮蔽係数は例えば以下の方法で測定することができる。まず測定対象となる材料で所定の厚さの膜を形成する。この膜に所定の量(強度)の軟X線を照射する。膜を透過した軟X線の量(強度)を測定することによって、膜に遮蔽された軟X線の量を測定する。そして、照射した軟X線の量に対する遮蔽された軟X線の量の比を遮蔽係数とする。つまり、透過する軟X線の量が多い材料ほど遮蔽係数が低く、逆に透過する軟X線の量が少ない材料ほど遮蔽係数が高い。異なる材料の間で比較する場合には、同じ厚さの膜を形成して透過する軟X線の量を比較する。あるいは遮蔽された軟X線の量を膜の厚さで規格化して比較してもよい。なお、膜に遮蔽された軟X線とは、膜を透過しない軟X線のことである。例えば、膜が軟X線を吸収し、反射させ、回折させ、あるいは散乱させることによって、軟X線が膜を透過しないことが考えられる。
【0021】
次に本発明の課題と効果について説明する。本発明においては、軟X線が半導体基板2に入射したことによって発生した電荷を信号として読み出すことで、軟X線を検出することが可能である。そして、1個の軟X線のフォトンによって発生した電荷の大部分、もしくは全部を信号として読み出すことによって、検出した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。
【0022】
このとき、発生した電荷の一部のみが信号として読み出されることを低減することによって、軟X線のエネルギー測定の正確性を向上させることができる。発生した電荷の全部を読み出すことが困難な場合には、むしろ電荷の全部を排出して信号として読み出さないことで正確性を向上させることができる。この効果について以下に詳細に説明する。
【0023】
なお、実際に信号として読み出すのは、変換部(たとえばフォトダイオード)の導電型に応じた電子、あるいは正孔のいずれかのみであってもよい。以後の説明では電子を信号電荷として扱う場合について説明する。もちろん正孔を信号電荷として扱ってもよい。また、電子及び正孔の両方を信号電荷として読み出してもよい。
【0024】
まず、軟X線のエネルギーを測定すること(フォトンカウンティング)について説明する。軟X線が半導体基板2に入射すると、複数の電子正孔対が発生する。このような現象の例として、半導体基板2に入射した軟X線が、半導体基板2を構成する原子(例えばシリコン原子)内の電子を電離させることが考えられる。
【0025】
発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーに比例する。例えば、半導体基板2がシリコン基板の場合、発生する電子正孔対の数は入射した軟X線のエネルギーをシリコンの平均電離エネルギーで除した数になる。シリコンの平均電離エネルギーが3.65eV(エレクトロンボルト)であると仮定すると、1keVの軟X線が入射したことによって、約270対の電子正孔対が発生する。
【0026】
そこで、1つの検出ユニットにつき平均1個以下の軟X線フォトンが入射するように検出ユニットを配置し、そして、発生した電子の数に応じた信号を読み出すことによって、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。具体的に、軟X線検出装置に1個の軟X線フォトンが入射した際に、1つの検出ユニット1から270個の電子に対応する信号が出力されたとする。上述の通り、1個の電子を発生するために3.65eVのエネルギーが必要である。したがって、入射した軟X線のエネルギーは約1keV(270個×3.65eV/個)と計算できる。今度は、540個の電子に対応する信号が1つの検出ユニット1から出力された場合を考える。この場合には、入射した軟X線のエネルギーは約2keV(540個×3.65eV/個)と計算できる。
【0027】
これに対して、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合を説明する。例えば、2keVのエネルギーを持つ1個の軟X線フォトンが1つの検出ユニット1に入射し、540個の電子を発生させた場合を考える。この540個の電子をすべて信号として読み出すことができれば、上述の通り、入射した軟X線のエネルギーを正確に測定することができる。しかし、何らかの要因によって検出ユニット1から270個の電子に対応した信号が出力されると、出力信号に基づいて計算される軟X線のエネルギーは1keV(270個×3.65eV/個)である。すなわち、2keVの軟X線が入射したにもかかわらず、1keVの軟X線が入射したことを示す測定結果が得られる。このように、軟X線のエネルギーが正確に測定されない場合がある。
【0028】
発生した電子の一部のみに対応した信号が出力されることの原因として、例えば、発生した電荷の一部が検出ノード以外の領域に排出されることが考えられる。このような課題は、1個のフォトンの入射に対して複数の電子が発生するという軟X線検出に固有の課題である。以下では、軟X線検出において、発生した電子の一部が排出されるメカニズムについてさらに詳しく説明する。
【0029】
軟X線が入射したことによって発生する複数の電子は、フォトンが入射する領域よりも空間的に広がった領域で発生する。入射する軟X線のエネルギーが数keVの場合、電子が発生する領域は半導体基板2の内部で数マイクロメートルの範囲に広がりうる。別の言い方をすれば、複数の電子が半導体基板内の1点で発生するのではなく、複数の異なる位置で発生する。複数の電子が発生する三次元空間的な範囲を、便宜的に電荷発生領域と呼ぶ。電荷発生領域の位置は、軟X線が入射した位置によって変わりうる。また、電荷発生領域の大きさは軟X線のエネルギーによって変わりうる。このような電荷発生領域を、例えば図1の領域102、104によって例示する。
【0030】
軟X線検出装置の検出ユニット1における電荷発生領域の位置、つまり軟X線の入射した位置に応じて、信号として読み出される電子の量と排出される電子の量が決まる。これを図12を用いて説明する。
【0031】
図12(a)は、軟X線検出装置の検出ユニット1を示している。検出ユニット1には、変換部3と回路部4とが配されている。図12(b)では、図12(a)に示された検出ユニット1が、便宜的に3つの領域1201〜1203に区分けして示されている。
【0032】
第1の領域1201は、変換部3の中心付近に対応する領域である。第1の領域1201に軟X線が入射すると、発生した電子の全部が変換部3に収集される。軟X線が入射した位置から離れた位置に電荷が発生するが、そのような離れた位置であっても変換部3の内部だからである。つまり、電荷発生領域の全体が変換部3の内部に位置するため、発生したすべての電子を、変換部3に収集し、読み出すことができる。したがって、第1の領域1201に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0033】
第2の領域1202は、図12(b)においてハッチングで示された領域である。第2の領域1202は変換部3の外周部と、回路部4の一部に対応する領域である。第2の領域1202に軟X線が入射すると、一部の電子は変換部3に収集されるが、他の一部の電子は回路部4に排出される場合がある。これは、電荷発生領域が変換部3と回路部4の両方に渡って広がるからである。このような場合、読み出される信号は発生した電子の一部のみに対応したものとなる。したがって、第2の領域1202に軟X線が入射した場合は、軟X線のエネルギーを正確に測定することが困難である。
【0034】
第3の領域1203は、変換部3から十分に離れた領域である。第3の領域1203に軟X線が入射すると、発生した電子はすべて排出されうる。これは電荷発生領域が変換部3までは広がらないからである。したがって、第3の領域1203に軟X線が入射した場合は、軟X線が検出されないことがほとんどである。
【0035】
ここで、第1〜第3の領域1201〜1203のいずれの領域に軟X線が入射するかは、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率に応じた統計的な確率で決まる。具体的に、第1〜第3の領域1201〜1203の面積の比率が、1:6:3であると仮定する。このような軟X線検出装置で、1回の検出において検出ユニット1に1個のフォトンが入射する軟X線検出を1000回行う。そうすると、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映した信号が出力される。約600回の検出においては、軟X線が第2の領域1202に入射し、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される。約300回の検出においては、軟X線が第3の領域1203に入射し、軟X線が入射したことが検出されない。
【0036】
このように、1000回のうち約700回の検出において信号が出力される。しかし、出力された信号の約85%は軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号である。さらに、出力された信号からは、それが第1の領域1201と第2の領域1202のいずれの領域に入射した軟X線に対応するものかを特定することが困難である。
【0037】
比較例として、検出ユニット1の全面に一様に軟X線が入射する軟X線検出装置を考える。これは、例えば検出ユニット1の上に軟X線を遮蔽する遮蔽部材が配されていない軟X線検出装置である。この場合、第1の領域1201の面積と第2の領域1202の面積との比率に応じた割合で、エネルギーを正確に反映した信号とそうでない信号とが得られる。上述のように、面積の比率が1:6であれば、約15%のみがエネルギーを正確に反映した信号である。検出ユニットごとに増幅トランジスタ6が配される軟X線検出装置では、第2の領域1202の面積をゼロにすることは困難である。したがって、軟X線のエネルギーを正確に測定することは困難である。
【0038】
一方、図12(c)には、本発明に係る軟X線検出装置の一実施形態が示されている。図12(c)に示された軟X線検出装置は、遮蔽部1205を備える。遮蔽部1205は、第1の領域1201に対応した位置に開口1204を有する。
【0039】
この軟X線検出装置で1000回の軟X線検出を行うと、約100回の検出においては、軟X線が第1の領域1201に入射する。そして、約900回の検出においては、軟X線が入射したことが検出されない。これは、第1の領域1201以外の領域に入射しうる軟X線が、遮蔽部1205によって遮蔽されるからである。この結果、信号が出力される確率は小さくなる。しかし、出力された信号のほとんどが、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映した信号である。したがって、軟X線のエネルギーを正確に測定することが可能である。
【0040】
図12(c)では、第2の領域1202はすべての領域が遮蔽部1205に覆われている。このような構成においては本発明の効果が高い。しかし、第2の領域1202の一部の領域は、遮蔽部1205に囲まれていなくてもよい。例えば、第2の領域1202のうち変換部3は遮蔽部1205に覆われていなくても効果を得ることができる。これは、第2の領域1202であっても変換部3の中心に近い場所に軟X線が入射すれば、発生した電子のほとんどを変換部3に収集し、信号として読み出すことが可能だからである。排出された電子の分だけ、得られる測定結果は実際に入射した軟X線のエネルギーとは異なる。それでも、この差が誤差として許容可能な範囲内であれば、電荷の一部が排出されてもよい。つまり、遮蔽部1205を配する領域は、軟X線検出装置に求められる性能に応じて適宜選択すればよい。なお、第3の領域1203と重なる位置には、遮蔽部1205が配されていなくてもよい。
【0041】
図12において、第1の領域1201と第2の領域1202との境界は、電荷の排出部となる領域からの距離に基づいて決まる。排出部から所定の距離Lよりも離れた場所に軟X線が入射すれば、電子が排出されないからである。所定の距離Lは、例えば電子発生領域を内包する最小の球の半径とすることができる。あるいは、半導体基板2がシリコン基板であれば、所定の距離Lは0.5マイクロメートルとすることができる。あるいは、所定の距離Lが式(1)で表される距離であってもよい(Lの単位はマイクロメートル)。なお、Eは入射する軟X線のエネルギーである(単位はkeV)。
【0042】
【数1】
【0043】
また、回路部4の全体が電荷の排出部であるとしてもよい。あるいは、回路部4のうち、電源電圧が供給される半導体領域や、MOSトランジスタのソース・ドレインとなる半導体領域を電荷の排出部としてもよい。
【0044】
以上をまとめると、軟X線検出装置においては、軟X線が入射した位置に応じて、軟X線の情報が正確に反映された信号と、正確に反映されていない信号が出力されうる。本発明によれば、このうち、軟X線の情報が正確に反映された信号が出力される割合を増やすことができる。結果として、正確な軟X線の検出が可能となる。
【0045】
参考までに、特許文献1に記載された軟X線用固体撮像素子はCCD型である。そのため、検出ユニット及びその近傍には変換部と電荷転送部のみがある。そして、軟X線を入射光とする場合に、電荷転送部の信号電荷転送電極を所定の膜厚とすることで電極内において入射光が吸収されて、ノイズの原因となる垂直信号電荷転送路への光の直接入射を防止できるとされている。そしてこの信号電荷転送電極の材料が複数列挙されている。CCDのように検出ユニットに増幅部を有さずに、比較的変換部の面積を大きく取れる構成であれば、転送路へ入射することによって生じるノイズだけを検討すればよい。しかしながら検出ユニットに増幅部を有する構成では、検出ユニットの回路部の専有面積も大きくなり、上述のような軟X線の情報が正確に反映されない信号の割合が増える。そのため、従来技術とは異なる構成の遮蔽部が要求されるのである。
【実施例1】
【0046】
本発明に係る第1の実施例の軟X線検出装置100について説明する。図1は軟X線検出装置100の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1においては、1つの検出ユニット1のみが示されているが、本実施例では複数の検出ユニットが軟X線検出装置100に含まれる。
【0047】
本実施例の軟X線検出装置100は、主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出可能である。この波長帯の電磁波が半導体基板に入射すると、上述の通り1つのフォトンに対して複数の電子が発生する。
【0048】
また本発明の軟X線検出装置100は、半導体基板に入射する段階での波長が主として0.1nm〜10nmの範囲の波長帯の電磁波を検出するものである。したがって例えば半導体基板に入射する前に上記波長範囲外の波長域(たとえば可視光域)に波長変換された電磁波のみを検出するものは発明に含まれない。しかし半導体基板に入射する前に波長変換部を設けていたとしても、変換後の波長が上記範囲内になる場合には本発明を適用可能である。
【0049】
本実施例の軟X線検出装置100は半導体基板2を有する。半導体基板2は例えばP型のシリコン基板である。本実施例の検出ユニット1は、半導体基板2に配された変換部3及び回路部4を含む。回路部4の少なくとも一部は遮蔽部7によって覆われる。遮蔽部7は、回路部4に入射し得る軟X線の量を低減、望ましくは完全に遮蔽する。
【0050】
変換部3は例えばフォトダイオードである。本実施例では、変換部3にN型半導体領域11が配される。N型半導体領域11より半導体基板2の表面(軟X線が入射する主面)側にはP型半導体領域12が配される。N型半導体領域11は、P型半導体領域12及び半導体基板2のそれぞれとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、及び半導体基板2によって埋め込み型のフォトダイオードが構成される。半導体基板2をN型半導体基板とし、N型半導体基板にP型半導体領域(例えばP型ウェル)を設けて、このP型ウェルとN型半導体領域11、P型半導体領域12とにより埋め込み型のフォトダイオードを構成することもできる。N型半導体領域11の電子に対するポテンシャルは周囲のP型半導体領域より低いので、入射した軟X線によって発生した電子がN型半導体領域11に収集される。さらに、N型半導体領域11に電子が蓄積されてもよい。N型半導体領域での収集あるいは蓄積を開始する前に、N型半導体領域11に逆バイアスが印加されてもよい。印加された逆バイアスによって、N型半導体領域11のポテンシャルをさらに下げることができる。また、この逆バイアスによって、N型半導体領域11の全体が空乏化していてもよい。
【0051】
回路部4には、転送トランジスタ5と増幅トランジスタ6とが配される。転送トランジスタ5は転送ゲート電極13とフローティングディフュージョン(以下、FD)14を含んで構成される。FD14はN型半導体領域によって構成される。転送ゲート電極13には転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。転送ゲート電極に印加される電圧によって、変換部3のN型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルが制御される。その結果、変換部3で発生した電子をFD14に転送することが可能である。この時、変換部3の全ての電子がFD14に転送されてもよいし、一部の電子のみがFD14に転送されてもよい。変換部3の電荷がすべて転送されるとN型半導体領域11の全体が空乏化するので、このような転送動作を完全空乏転送と呼ぶ。
【0052】
FD14は不図示の配線を介して増幅トランジスタ6のゲート電極15と電気的に接続される。このように、FD14が増幅部の入力部の一部を構成する。つまり、FD14には軟X線の入射により生じた電子が転送され、その電荷の量に応じた増幅信号が出力される。このため、FD14を検出ノードと呼ぶこともできる。
【0053】
増幅トランジスタ6は、ゲート電極15、ソース領域16、及びドレイン領域17を含んで構成されるMOSトランジスタである。ソース領域16及びドレイン領域17はN型半導体領域で構成される。すなわち、増幅トランジスタ6はNチャネル型のMOSトランジスタである。増幅トランジスタ6のゲート電極15は、増幅部の入力部の一部を構成する。ドレイン領域17は不図示の電源部に電気的に接続される。301は素子分離部である。
【0054】
遮蔽部7は転送トランジスタ5及び増幅トランジスタ6と重なるように配される。遮蔽部7は増幅トランジスタ6のゲート電極15よりも上の層に配される。遮蔽部7は回路部4に向かって照射された軟X線を遮蔽する。遮蔽部7を構成する材料はタンタルである。遮蔽部7の膜厚は0.5〜1.0マイクロメートルであることが好ましい。遮蔽部7の膜厚が0.5マイクロメートルより小さいと、遮蔽性能が十分に得られない可能性がある。一方、遮蔽部7の膜厚が1.0マイクロメートルより大きいと、強い応力が生じるために遮蔽部7を形成することが困難になる。もちろん、必要に応じて、遮蔽部7の膜厚が0.5〜1.0マイクロメートルの範囲以外の膜厚となっていてもよい。なお、遮蔽部7が必ずしも照射された軟X線の全部を遮蔽する必要はなく、回路部に入射しうる軟X線の量を低減すればよい。
【0055】
図2は、本実施例の軟X線検出装置の検出ユニット1の等価回路を示す。図1と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0056】
検出ユニット1は、さらにリセットトランジスタ8、選択トランジスタ9を含む。変換部3であるフォトダイオードのアノードが、転送トランジスタ5を介して検出ノード201に接続される。検出ノード201は図1のFD14及び増幅トランジスタ6のゲート電極15に対応するノードである。本実施例では、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15とが互いに接続されているので、両方が同一の検出ノード201に対応する。つまり、検出ノード201は増幅部の入力ノードでもある。
【0057】
リセットトランジスタ8のドレインには電源電圧VDDが供給され、リセットトランジスタ8のソースは検出ノード201に接続される。リセットトランジスタ8は、そのゲートに供給される電圧に応じて、検出ノード201の電圧をリセットする。リセットトランジスタ8は例えばNチャネル型のMOSトランジスタである。
【0058】
選択トランジスタ9のドレインは増幅トランジスタ6のソースに接続され、選択トランジスタ9のソースは不図示の出力線に接続される。選択トランジスタ9のゲートに供給される電圧によって選択トランジスタ9がオンすると、検出ノード201の電圧に応じた信号が出力線に出力される。つまり、1つの出力線に複数の検出ユニット1からの信号が出力される場合に、選択トランジスタ9によって信号を出力する検出ユニットを選択することが可能である。
【0059】
リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は必要に応じて省略される。例えば、非選択とする検出ユニットの検出ノード201の電圧を制御することで増幅トランジスタ6をオフにすれば、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、リニアセンサにおいては、選択トランジスタ9を省略することができる。あるいは、変換部3がフォトトランジスタであり、発生した電荷を光電流として読み出す場合には、リセットトランジスタ8は省略することができる。
【0060】
図3は検出ユニット1の平面構造の概略図である。図3(a)では、半導体基板2の平面構造を説明するために、遮蔽部7を省略している。図3(b)では、遮蔽部7が示されている。図1は、図3(a)の線ABに沿った断面構造を模式的に示している。
【0061】
図3(a)では、N型半導体領域11が配された領域が変換部3として示されている。また、図3(a)には、転送ゲート電極13が配される領域、FD14が配される領域、増幅トランジスタ6が配される領域、リセットトランジスタ8が配される領域、選択トランジスタ9が配される領域が、それぞれ対応する符号で示されている。例えば、8はリセットトランジスタ8が配される領域を示している。平面図でみたときに、変換部3の周囲に転送ゲート電極13、FD14、各トランジスタが配される。各トランジスタが配される領域には、具体的にソース領域、ドレイン領域、ゲート電極が配される。また、図3(a)には示されていないが、半導体基板2に所定の電圧を供給するための半導体領域や、電源電圧を供給するための半導体領域が配されてもよい。
【0062】
上述の各素子は、素子分離部301によって互いに電気的に分離される。ただし、変換部3とFD14との間であって、転送ゲート電極13が配された領域には、素子分離部301が配されなくてもよい。素子分離部301は酸化膜を用いた分離構造であり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)である。
【0063】
ここで、検出ユニット1における変換部3及び回路部4は、検出ユニット1の平面構造に基づいて決まる。検出ユニット1において、転送トランジスタ5(転送ゲート電極13及びFD14)、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9、素子分離部301が配された領域が回路部4である。ここで、変換部3の境界は、例えばN型半導体領域11の境界である。ただし、N型半導体領域11が他の素子の下部に延在している場合には、当該他の素子の端が変換部3の境界である。そして、当該他の素子が配された領域は回路部4である。例えば、N型半導体領域11が転送ゲート電極13の下部に延在している場合には、転送ゲート電極13の端が変換部3の境界である。そして転送ゲート電極13が配された領域は回路部4である。つまり、変換素子以外の素子が配された領域は、回路部4であってよい。
【0064】
図3(b)は、図3(a)に遮蔽部7を追加した図である。図3(b)を用いて、遮蔽部7の平面構造について説明する。なお、この説明に特に必要のない部分は、図3(a)に記載されていても、図3(b)では省略している。本実施例では、遮蔽部7は平面図でみたときに回路部4の全部と重なる。一方で、変換部3と重なる位置には、遮蔽部7が配されない。これによって、主に回路部4に向かって進む軟X線103が遮蔽される。
【0065】
なお、図3(a)、(b)に示された検出ユニット1が実際には複数並んで配される。複数の検出ユニット1は互いに対称性をもっていてもよい。例えば、図3に示された検出ユニット1をそのまま平行移動したような並進対称性を持っていてもよい。あるいは、ある直線に対して線対称なレイアウトや、ある点に対して点対称なレイアウトであってもよい。複数の検出ユニット1が互いに対称性を有することで、検出ユニットの特性のばらつきを低減することができる。特に、複数の検出ユニット1が並進対称性を有している場合、製造プロセスに起因する特性のばらつきを低減することができる。もちろん、複数の検出ユニット1の間で対称性がなくてもよい。
【0066】
続いて遮蔽部7を構成する材料の遮蔽性能について説明する。図4は、タンタルとアルミニウムとの間で軟X線の透過率を比較した図である。グラフの縦軸は、アルミニウムのユニット厚さあたりの透過率に対する、タンタルのユニット厚さあたりの透過率の比を表している。横軸は軟X線の波長を表している。すなわち、「透過率の比=タンタルの透過率/アルミニウムの透過率」である。なお透過率は、所定の量の軟X線が照射されたときに、透過する軟X線の量の割合である。
【0067】
図4が示す通り、10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、透過率の比が100%よりも小さい。つまり、10keV以下のエネルギーの軟X線に対しては、タンタルの透過率のほうがアルミニウムの透過率よりも低い。これは、タンタルの遮蔽係数がアルミニウムの遮蔽係数よりも高いことを示している。また、図には示していないが、タンタルの遮蔽係数は銅の遮蔽係数よりも高い。タンタルのように、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料で遮蔽部7を構成することによって、軟X線に対して回路部4を十分に遮蔽することができる。
【0068】
特に、5keV以下の軟X線に対するタンタルの遮蔽係数は、アルミニウムの遮蔽係数の2倍以上である。例えば、5keV以下の軟X線に対して同等の遮蔽性能を得るために、タンタルで構成される遮蔽部7の厚さはアルミニウムで構成される場合に比べて半分でよい。遮蔽部7が厚いと大きな応力が生じるので、装置の信頼性が低下する可能性がある。したがって、遮蔽部7がアルミニウムに比べて遮蔽係数が高い材料で構成されることは、遮蔽性能と信頼性のバランスを最適化する上で有利である。
【0069】
以上に述べた本実施例の効果について説明する。変換部3に軟X線101が入射することによって、変換部3の近傍で複数の電子が発生する。つまり、電荷発生領域102の位置が変換部3に近い。電荷発生領域102が変換部3の近傍であれば、全部あるいはほとんどの電子を信号電荷として読み出すことが可能である。
【0070】
しかし、回路部4に軟X線103が入射すると、変換部3から比較的遠い位置で複数の電子が発生する。つまり、電荷発生領域104の位置が変換部3から遠い。この場合、発生した電子のうち、一部の電子のみが変換部3に収集される。一方で、変換部3に収集されない電子が電源部などに排出されうる。
【0071】
これに対して本発明に係る軟X線検出装置100は、回路部4に入射し得る軟X線を遮蔽する遮蔽部7を有する。そして、遮蔽部7を構成する材料の軟X線に対する遮蔽係数が高い。このため、回路部4に入射した軟X線103に基づく信号が出力される割合を低減することができる。別の言い方をすれば、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合が低減される。その結果、入射した軟X線のエネルギーが正確に反映された信号が出力される割合が増える。すなわち、正確に軟X線のエネルギーを測定することが可能となる。
【0072】
さらに、アルミニウム及び銅と比べて遮蔽係数の高い材料で遮蔽部7を構成してもよい。また、原子番号が70以上の材料であれば、遮蔽部7の材料として十分な程度の遮蔽係数を有している。したがって、原子番号が70以上の材料で遮蔽部7を構成してもよい。このような構成によれば、さらに正確な軟X線の検出を行うことが可能となる。
【0073】
[実施例1の変形例]
次に、実施例1の各部位の変形例を説明する。以下で述べる変形例は、適宜組み合わせることができる。さらに、これらの変形例は後述の実施例2〜6についても適用可能である。
【0074】
実施例1では、電子が信号電荷となる構成を例に説明したが、ホールが信号電荷となる構成としてもよい。ホールが信号電荷となる構成では、半導体領域の導電型が本実施例とは反対になる。例えば、埋め込み型のフォトダイオードは、表面側からN型半導体領域、P型半導体領域、N型半導体領域が順に配された構造となる。そして、軟X線によって発生した電荷がP型半導体領域に収集される。また、FD14はP型半導体領域を含んで構成される。
【0075】
半導体基板2は、シリコン基板に限らず、ゲルマニウム基板、ガリウムヒ素基板などの各種の半導体基板が用いられる。半導体基板2はP型の基板、N型の基板のいずれでもよい。半導体基板2はエピタキシャル成長によって形成された基板であってもよい。あるいは、半導体基板2はSOI(Silicon On Insulator)基板であってもよい。また、必要に応じて半導体基板2にP型のウェル、またはN型のウェルが配されてもよい。ウェルが配された場合には、ウェルの内部に、変換部3や増幅トランジスタ6を構成する半導体領域が配される。
【0076】
実施例1では、転送トランジスタ5の転送ゲート電極13には、転送トランジスタ5のオンとオフに対応した少なくとも2つの電圧が印加される。さらに、オンに対応する電圧とオフに対応する電圧との中間の電圧が印加されてもよい。あるいは、N型半導体領域11とFD14との間のポテンシャルを一定に制御するように固定の電圧が印加されるのみでもよい。なお、転送トランジスタ5は必須の構成ではなく、必要に応じて省略される。転送トランジスタ5が省略される場合には、例えば変換部3のN型半導体領域11が増幅トランジスタ6のゲート電極と接続される構成となっていればよい。
【0077】
FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との電気的な接続は、例えば、金属配線、金属配線とFD14とを接続するコンタクトプラグ、及び金属配線とゲート電極15とを接続するコンタクトプラグによって構成される。あるいは、ゲート電極15とFD14とが直接接触していてもよい。または、FD14とゲート電極15との両方に接続される共通のコンタクトプラグによって、FD14とゲート電極15とが接続されてもよい。コンタクトプラグは例えばタングステンで構成される。
【0078】
また、FD14と増幅トランジスタ6のゲート電極15との間の電気的経路にスイッチが配されてもよい。このような構成においては、FD14が電子を一時的に保持することが可能となる。すなわち、FD14が検出ユニットごとに配された電荷保持部として機能してもよい。
【0079】
実施例1では、増幅トランジスタ6としてMOSトランジスタが用いられた。しかし、増幅トランジスタとしては、バイポーラトランジスタ、接合型電界効果トランジスタ(JFET)、静電誘導型トランジスタ(SIT)などの各種の能動素子を用いることができる。また、実施例1では、増幅トランジスタ6はソースフォロア回路を構成する。しかし、増幅部はこのような構成に限られない。例えば、MOSトランジスタを用いた反転増幅回路、演算増幅器を用いたボルテージフォロアなどが用いられる。
【0080】
図2において、選択トランジスタ9は、増幅トランジスタ6のソースと不図示の出力線との間の電気的経路に配された。しかし、選択トランジスタ9が増幅トランジスタ6のドレインと電源との間に配されてもよい。
【0081】
FD14、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9は、複数の検出ユニット1で共有されてもよい。例えば、複数の検出ユニット1の変換部3のそれぞれに対して転送ゲート電極13が配され、各変換部3の電子が独立に共通のFD14に転送される構成であってもよい。この場合、複数の検出ユニット毎に、増幅トランジスタ6、リセットトランジスタ8、選択トランジスタ9が1つずつ配されればよい。複数の検出ユニットがこれらの素子を共有することによって、変換部3に対する回路部4の割合を小さくできる。そのため、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0082】
遮蔽部7を構成する材料は、タンタルに限られない。遮蔽部7を構成する材料は、軟X線に対する遮蔽係数がアルミニウム及び銅よりも高い材料であればよい。もしくは、遮蔽部7を構成する材料は、原子番号70以上の元素であればよい。半導体プロセスとの整合性を考慮すると、タンタル、タングステン、金などが挙げられる。または、タンタル、タングステン、または金が主成分となっている合金であってもよい。なお、本明細書において、主成分とは化合物あるいは混合物に含まれる成分のうち組成比あるいは構成比が最も多い成分である。
【0083】
また、遮蔽部7は単層である必要はない。間にシリコン酸化膜等の絶縁膜を挟んだ多層構成でも構わない。多層構造の場合、応力を下げるために各層の膜厚を小さくしても高い遮蔽性能を達成できる。多層構造の場合に、回路部4の一部の上には第1層の遮蔽部7が配され、第1層とは別の第2層の遮蔽部7は配されず、一方で、回路部4の別の一部の上には第2層の遮蔽部7が配される構造でもよい。このように層ごとに回路部4の遮蔽される領域が異なることで、レイアウトの自由度が向上する。また、遮蔽部7を構成する材料が導電体である場合には、遮蔽部7が配線の機能を備えていてもよい。例えば、遮蔽部7が各トランジスタを接続したり、半導体基板2や回路部4に電源を供給したりしてもよい。
【0084】
図3(b)において、遮蔽部7は回路部4の全部の領域に重なって配されている。しかし、遮蔽部7が回路部4の一部の領域だけの上に配されていてもよい。つまり、回路部4のうち、一部の領域の上には回路部4が配されていなくてもよい。例えば、遮蔽部7が、転送ゲート電極13及びFD14の上には配されていなくてもよい。または、遮蔽部7が変換部3に隣接する素子分離部301の上には配されていなくてもよい。あるいは、遮蔽部7は増幅トランジスタ6のみを覆うように配されていてもよい。または、遮蔽部7はリセットトランジスタ8のみを覆うように配されていてもよい。
【0085】
遮蔽部7は回路部4のより多くの部分と重なって配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。遮蔽部7が回路部4の全部と重なって配される場合には、さらに正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。
【0086】
また、回路部4のうち変換部3に近い領域の上にのみ遮蔽部7が配されていてもよい。回路部4のなかでも特に変換部3に近い領域と重なって遮蔽部7が配されていれば、正確性を十分に向上させることができる。これは、変換部3に近い領域に軟X線が入射すると、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が排出される可能性が高いからである。
【0087】
回路部4のなかでも変換部3から遠い領域の上には、遮蔽部7が配されなくてもよい。変換部3から遠い領域に軟X線が入射した場合には、発生したすべての電荷が排出される可能性が高いからである。具体的には、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域の上には、遮蔽部7が配されていなくてもよい。この理由は、変換部3の端から1マイクロメートル以上離れた領域で電子が発生したとしても、その電子が変換部3に収集される可能性はほとんどないからである。例えば、回路部4のうち変換部3から所定の距離より遠い領域の上に遮蔽部7を配さないことによって、配線やコンタクトプラグのレイアウトの自由度を向上させてもよい。
【0088】
回路部4に配される素子によって、遮蔽されたほうが良い素子と、遮蔽が必要でない素子を区別してもよい。例えば、電荷が排出されてしまう領域、及びその近傍の領域の上に、遮蔽部7が配されると、より正確な軟X線のエネルギーの測定が可能となる。このような領域には電源部や電源部と電気的に接続された半導体領域などが挙げられる。一方で、電荷が蓄積される領域の上には遮蔽部7が配されなくてもよい。例えばFDや容量素子の上には遮蔽部7が配されなくてもよい。
【0089】
従来のCCD型の軟X線用撮像装置は検出ユニットに回路部を有していないため、増幅部を含む回路部の遮光構造については検討されていない。上述のように、検出ユニットが増幅部を含む場合の遮蔽構造を工夫することによって、より正確な軟X線検出を可能にすることができる。
【0090】
図1では省略されているが、遮蔽部7とは別に複数の配線層が配されてもよい。各配線層には各トランジスタやFD14を接続するための導電部材、電源電圧やグラウンド電圧を供給するための導電部材が配される。導電部材は、例えばアルミニウムや銅で形成される。特に、導電部材には遮蔽部7を構成する材料よりも電気伝導度の高い材料が用いられてもよい。アルミニウムや銅はタンタルに比べて電気伝導度が高い。複数の配線層の間には、層間絶縁膜が配される。層間絶縁膜によって複数の配線層に配された導電部材が互いに絶縁される。導電部材と層間絶縁膜の間には、必要に応じてバリアメタルとして機能する導電体が配されうる。バリアメタルにはチタンやチタン合金、タンタルやタンタル合金、チタンやチタン合金が用いられる。バリアメタルは、当該バリアメタルに接している導電部材を構成する金属原子の拡散を低減してもよい。この場合、当該バリアメタルにおける導電部材を構成する金属の拡散係数が、層間絶縁膜における拡散係数より低いことが好ましい。遮蔽部7とバリアメタルとに同じ材料(例えばタンタル)が用いられる場合、遮蔽部7がバリアメタルより厚いほうがよい。
【0091】
遮蔽部7を配線として用いることもできる。つまり、遮蔽部7が信号を伝達してもよいし、電源電圧を供給してもよい。このように配線が遮蔽部7の機能を兼ねる場合には、当該配線が他の配線を構成する材料よりも軟X線の遮蔽性能の高い材料を含んで構成されることが好ましい。あるいは、遮蔽部7の機能を兼ねる配線の厚さを、他の配線より厚くすることが好ましい。
【0092】
軟X線を吸収する吸収部が、半導体基板2の軟X線の入射する主面とは反対側の主面に配されていてもよい。吸収部は半導体基板2を透過した軟X線を吸収することによって、半導体基板2を透過した軟X線が軟X線検出装置の他の部分に及ぼす可能性を低減することができる。
【0093】
図3(a)において、素子分離部301がSTIである例を説明した。しかし、素子分離部301はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)分離であってもよい。STIやLOCOS分離などで用いられる酸化膜の下部に、変換部の電荷が蓄積される領域とは反対導電型の半導体領域が配されてもよい。あるいは、素子分離部301は、酸化膜を用いないPN接合分離であってもよい。また、これらの素子分離構造が併用されてもよい。
【0094】
PN接合分離が用いられる場合や、酸化膜の下部に反対導電型の半導体領域が配される場合、N型半導体領域11に接するようにP型半導体領域が配される。この構成では、N型半導体領域とP型半導体領域との両方にわたって空乏層が伸びる。P型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分は変換部3の一部であると考えてもよい。つまり、ある場所で発生した電荷が所定の領域に収集されるならば、その場所は変換部3の一部であってもよい。
【0095】
変換部3の上に、特定の波長の電磁波を遮蔽するフィルターが配されてもよい。これによって、変換部3に主として検出したい波長帯の軟X線が入射するので、より高精度に軟X線を検出することができる。
【実施例2】
【0096】
本発明に係る第2の実施例の軟X線検出装置500について説明する。図5は軟X線検出装置500の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1(実施例1)と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例2では、遮蔽部501の配置及び軟X線の入射方向が実施例1とは異なっている。以下では、実施例1と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1と共通の構成とすることができる。
【0097】
図5が示す通り、半導体基板2の第1の主面510の側に、転送トランジスタ5の転送ゲート電極13及び増幅トランジスタ6のゲート電極15が配される。さらに、第1の主面510の側には、配線が配されてもよい。半導体基板2の第2の主面511の側に遮蔽部501が配される。第2の主面511は、第1の主面510とは反対側の主面である。つまり、半導体基板2の対向する2つの主面のうち、一方が第1の主面510であり、他方が第2の主面である。本実施例では、軟X線502、504は第2の主面511から第1の主面510の方向に向かって半導体基板2に入射する。つまり、本実施例の軟X線検出装置500は、いわゆる裏面照射型である。
【0098】
このような裏面照射型の軟X線検出装置500では、半導体基板2の軟X線が入射する主面(第2の主面511)と、トランジスタや配線が配される主面(第1の主面510)とが異なる主面である。そのため、軟X線の入射面側において変換部3の開口を大きくすることができ、感度を向上させることが可能となる。この利点を最大限生かすために、裏面照射型のセンサでは通常は入射面側に光や電磁波を遮蔽する構造が配されない。
【0099】
しかしながら、裏面照射型であっても、軟X線504が回路部4に入射するとエネルギーが正確に反映されていない信号が出力される可能性がある。軟X線504が入射したことによって複数の電子が発生した場合に、電荷発生領域505はマイクロメートルオーダーの広がりを持つからである。そのため、電子の一部が入射面側から数マイクロメートル離れた回路の電源部に吸収され、他の一部が変換部3に収集されうる。半導体基板2を厚くしても、軟X線504は半導体基板2の深部まで侵入することが考えられるので、第1の主面510の近傍の回路部4で複数の電子が発生する可能性がある。つまり、電荷発生領域505が回路部4の近傍であることが考えられる。したがって、裏面照射型の軟X線検出装置の場合に、回路部4に向かって入射する軟X線504を遮蔽部501によって遮蔽することで、軟X線検出の精度を向上させることが可能となる。
【0100】
本発明に係る軟X線検出装置のうち裏面照射型の軟X線検出装置においては、光の入射面側にはトランジスタが配されない場合がある。そのため、必ずしも遮蔽部501がトランジスタのゲート電極の配線層よりも上の層である必要はない。
【0101】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1の検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。また、半導体基板2の主面511の側には、遮蔽部501以外に配線やゲート電極が一切配されていなくてもよい。あるいは、半導体基板2の主面511の側に、遮蔽部501の他に配線やゲート電極が配されていてもよい。また、本実施例のような裏面照射型の軟X線検出装置においても、軟X線の入射面とは反対側(第2の主面511の側)に軟X線の吸収部材が配されてもよい。
【0102】
なお、実施例1の説明において、N型半導体領域11が他の素子の下部に延在している場合には、当該他の素子の端が変換部3の境界であると説明した。裏面照射型の場合でも、この考え方は同じである。裏面照射型の場合では、受光面を広くするために変換部を構成するN型半導体領域11が、増幅トランジスタ6やリセットトランジスタ8などと重なって配されることが考えられる。このような場合でも、増幅トランジスタ6やリセットトランジスタ8が配された領域が回路部4である。
【実施例3】
【0103】
本発明に係る第3の実施例の軟X線検出装置600について説明する。図6は軟X線検出装置600の検出ユニット1の平面構造を示す概略図である。図3(実施例1)と同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例3では、遮蔽部601の配置が実施例1及び実施例2とは異なっている。以下では、実施例1及び実施例2と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1または実施例2と共通の構成とすることができる。
【0104】
実施例3では、遮蔽部601の一部が変換部3の上に配される。以下の説明では、遮蔽部601について、変換部3の上に配された部分を第1部分601a、回路部4の上に配された部分を第2部分601bと呼ぶ。
【0105】
第1部分601aは変換部3のうち回路部4に近い領域の上に配される。第1部分601aと第2部分601bとは連続して配されてもよい。つまり、1つの層として配された遮蔽部601が、回路部4の上から変換部3の上にまで延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分601aと第2部分601bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0106】
あるいは、第1部分601aと第2部分601bとが別の層として配されていてもよい。つまり、半導体基板2の表面から第1部分601aまでの距離と、該表面から第2部分601bまでの距離が異なっていてもよい。この場合に、第1部分601a及び第2部分601bが、互いに重なるように延在していてもよい。平面で見たときに、第1部分601aと第2部分601bとの間で変換部3または回路部4が露出している領域をなくすことができるので、遮蔽性能が高くなる。
【0107】
また、別の層に配された第1部分601aと第2部分601bとを接続する部分が、遮蔽部601に含まれてもよい。これによって、第1部分601aと第2部分601bとが重なっていなくても、遮蔽性能を高めることができる。もちろん、第1部分601aと第2部分601bとが互いに分離されていてもよい。
【0108】
図6が示す通り、変換部3のうち、変換部3と回路部4との境界から所定の距離L以内の領域は、全て第1部分601aで覆われてもよい。このとき、変換部3のうち、境界から所定の距離Lより離れた領域の上には、遮蔽部601が全く配されていなくてもよいし、一部に遮蔽部601の第1部分601aが配されてもよい。
【0109】
次に本実施例の効果について説明する。そのために、実施例1のバリエーションの1つである、変換部3の上に遮蔽部7が配されていない軟X線検出装置を比較対象とする。このような、軟X線検出装置の検出ユニット1の平面構造の概略図を図7に示す。図7において、図1と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0110】
図7において、変換部3のうち回路部4の近傍に軟X線が入射すると、電荷発生領域701が変換部3及び回路部4の両方に渡る。そうすると、発生した電子の一部が回路部4の電源部などに排出され、他の一部が変換部3に収集される。
【0111】
これに対して、本実施例では、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から所定の距離以内の領域に、遮蔽部601の第1部分601aが配される。以下、所定の距離をLとする。これによって、境界付近に入射する軟X線を遮蔽することができる。結果として、入射した軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合が減少する。つまり、実施例1に比べて、より正確に軟X線を検出することが可能となる。さらに、変換部3のうち変換部3と回路部4との境界から所定の距離L以内の全ての領域の上に第1部分601aが配されれば、変換部3に入射した軟X線602によって発生する電子をほぼすべて収集することが可能になる。つまり、軟X線のエネルギーを正確に反映していない信号が出力される割合をさらに低減することができる。このように、変換部3の上に遮蔽部601を配することによって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0112】
所定の距離Lは必要に応じて設定すればよい。例えば、検出したいエネルギーの軟X線が半導体基板2に入射したときの電荷発生領域の広がりに基づいて、所定の距離Lを決定することができる。所定の距離Lが電荷発生領域の平均的な半径よりも大きければ、高い遮蔽性能が期待される。具体的には、電荷発生領域を包含する最小の球を想定し、その球の半径よりも大きいLを設定するとよい。
【0113】
あるいは、変換部3のサイズに基づいて所定の距離Lを決定してもよい。変換部3のサイズに対して所定の距離Lを小さくすれば、感度を落とすことがない。所定の距離Lが大きいと回路部4への電子の排出を抑制する効果が高くなるが、同時に軟X線が変換部3に入射する確率も下がる。つまり、軟X線検出の感度と正確性とはトレードオフの関係にある。したがって、必要とされる性能に応じて、所定の距離Lは適宜設定される。具体例として、検出する軟X線のエネルギーが10keV以下であって、検出ユニットサイズが約10マイクロメートルの場合、所定の距離Lは0.1〜2.0マイクロメートルの範囲であればよい。
【0114】
あるいは、所定の距離L(マイクロメートル)が以下の式(1)で表される値であってもよい。ただし、E(keV)は入射する軟X線のエネルギーである。
【0115】
【数2】
【0116】
なお、境界から所定の距離L以内の領域の上に、遮蔽部601が配されていなくてもよい。変換部3のどの領域の上に第1部分601aを配するかは、必要に応じて変更することができる。
【0117】
本実施例では、N型半導体領域11と重なるように遮蔽部601が配された。しかし、実施例1の変形例で説明したように、N型半導体領域11と平面方向に隣接するP型半導体領域のうち、空乏層が生じる部分が変換部3の一部であってもよい。このような場合、必ずしもN型半導体領域11と重なるように遮蔽部601を配さなくても、所定の距離L以内の領域と重なるように遮蔽部601を配することができる。
【0118】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び断面構造は、実施例1または実施例2の検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。また、変換部3と回路部4との境界については、実施例1あるいは実施例2で説明した通りである。なお、本実施例で説明した別の層に遮蔽部が配される構造は、実施例1〜2に適用することが可能である。つまり、回路部4と重なって配された遮蔽部7が、別の層に配される2つの部分を含んでいてもよい。
【実施例4】
【0119】
本発明に係る第4の実施例の軟X線検出装置800について説明する。図8は軟X線検出装置800の検出ユニット1の断面を示す概略図である。図1(実施例1)または図5(実施例2)と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例4では、半導体基板801内部の構造が実施例1〜3とは異なっている。以下では、実施例1〜3と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1〜3のいずれかと共通の構成とすることができる。
【0120】
本実施例では半導体基板801がN型のシリコン基板である。半導体基板801に、P型ウェル802が配される。P型ウェル802は、変換部3に配された第1ウェル802aと回路部4に配された第2ウェル802bとを含む。変換部3を構成するN型半導体領域11、P型半導体領域12は第1ウェル802aの内部に配される。N型半導体領域11は第1ウェル802aとPN接合を構成する。つまり、P型半導体領域12、N型半導体領域11、第1ウェル802aが埋め込み型のフォトダイオードを構成している。転送トランジスタ5、増幅トランジスタ6の各半導体領域は第2ウェル802bに配される。なお、便宜的に第1ウェル802a及び第2ウェル802bという二つのウェルについて説明したが、実際には両者が1つの半導体領域であってもよい。もちろん、2つの半導体領域が第1ウェル802a及び第2ウェル802bに対応していてもよい。
【0121】
本実施例の1つめの特徴は、各半導体領域が配されたP型ウェル802の下に、反対導電型であるN型の半導体領域(半導体基板801)が配されたことである。2つめの特徴は、第1ウェル802aの下端が第2ウェル802bの下端よりも深い位置にあることである。本明細書においては、転送ゲート電極13や、増幅トランジスタ6のゲート電極15が配された側の主面810が深さの基準である。半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが浅く、当該主面810から遠いほうが深い。上下については、半導体基板内部であって、当該主面810に近いほうが上、当該主面810から遠いほうが下とする。また、半導体領域の下端とはP型ウェル802と半導体基板801とのPN接合面としてよい。
【0122】
このようなP型ウェル802の製造方法について簡単に説明する。まずN型の半導体基板801を用意する。次に、第1ウェル802aに対応する位置に開口を有する第1マスクを形成する。第1マスクを用いたイオン注入により第1ウェル802aを形成する。続いて、第2ウェル802bに対応する位置に開口を有する第2マスクを形成する。第2マスクを用いたイオン注入により第2ウェル802bを形成する。イオン注入のエネルギーを変えることで、下端の深さが異なる第1ウェル802a及び第2ウェル802bを形成することができる。
【0123】
別の形成方法としては、N型の半導体基板801を用意し、P型ウェル802が配される領域の全面に同じ深さのP型半導体領域を形成する。そして、第1ウェル802aに対応する領域にだけ、最初に形成したP型半導体領域よりも深い位置にP型半導体領域を形成するためのイオン注入を行う。あるいは、第2ウェル802bに対応する領域にだけ、カウンターでN型の不純物(ドナー)をイオン注入する。なお、これらの方法は一例であり、P型ウェル802を形成するために他の公知の方法を用いてもよい。
【0124】
次に本実施例の効果について説明する。本実施例においては、P型ウェル802の下部に、N型の半導体基板801が配される。そのため、P型ウェル802と半導体基板801との境界付近では、電子がP型ウェル802から半導体基板801に向かうようなポテンシャル勾配が形成される。つまり、P型ウェル802は半導体基板801にある電子にとってのポテンシャル障壁となりうる。
【0125】
回路部4が遮蔽部7で覆われていても、例えば斜めに入射する軟X線803が回路部4に入射し、回路部4で複数の電子が発生することが考えられる。つまり、回路部4が遮蔽部7で覆われていても、回路部4に近い領域が電荷発生領域804に含まれる場合がある。本実施例の構造によれば、第2ウェル802bの下端近傍や下端よりも深い位置で発生した電子は、ポテンシャル障壁のために変換部3に収集される可能性が低い。また、回路部4の第2ウェル802bの下端は、浅い位置にある。そのため、回路部4の第2ウェル802bの下端よりも浅い領域で発生した電子は、近くの電源部などに排出されやすい。つまり、回路部4で発生した電子は、いずれも変換部3に収集されることなく、電源部などに排出されやすいのである。一方、変換部3においては、第1ウェル802aの下端が深い位置にある。そのため、変換部3で発生した電子は半導体基板801に排出されにくい。
【0126】
先述の通り、発生した電子の一部が変換部3に収集され、他の一部が別の場所に排出されると、軟X線のエネルギーを反映していない信号が出力されうる。発生した電子の全てを読み出すか、あるいは発生した電子の全てが排出されることで、エネルギーを正確に反映した信号を得ることができる。本実施例の構成によれば、変換部3に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが変換部3に収集される可能性を高くすることができる。そして、回路部4に軟X線が入射した場合には、発生した電子の全てが排出される可能性を高くすることができる。したがって、より正確な軟X線の検出が可能となる。
【0127】
なお、本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1〜3のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。
【実施例5】
【0128】
本発明に係る第5の実施例の軟X線検出装置900について説明する。図9は軟X線検出装置900の検出ユニット1及び配線部の断面を示す概略図である。図1(実施例1)または図5(実施例2)または図8(実施例4)と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例では、半導体基板2の上に配された絶縁体の構造が特徴である。実施例1〜4と異なっている部分について説明する。特に説明がない構成については、実施例1〜4のいずれかと共通の構成とすることができる。
【0129】
半導体基板2の上に、3つの配線層901〜903が配される。第1配線層901は、導電部材901a、902bを含む。第2配線層902は、第1配線層901の上に配される。第2配線層902は、導電部材902a、902bを含む。第3配線層903は、第2配線層902の上に配される。第3配線層は、導電部材903a、903bを含む。導電部材はアルミニウムで構成される。3つの配線層901〜903の上に、第4配線層904が配される。第4配線層904は遮蔽部7を含む。つまり、遮蔽部7は、複数の配線層のうち、半導体基板2から最も遠い位置にある配線層に含まれる。
【0130】
導電部材901a〜903bのそれぞれは配線を構成する。例えば、導電部材901aは変換部3からの信号が出力される出力線を構成する。例えば、導電部材901bはFDと増幅トランジスタのゲート電極とを接続する配線を構成する。例えば、導電部材902a、902bは、それぞれ転送ゲート電極及びリセットトランジスタのゲート電極に電圧を供給するための配線を構成する。また、例えば導電部材903a、903bは電源電圧を供給する配線を構成する。
【0131】
各導電部材901a〜903b及び遮蔽部7は、層間絶縁膜905によって互いに絶縁される。層間絶縁膜905には例えばシリコン酸化膜を用いることができる。本実施例において、変換部3の上の層間絶縁膜905の厚さd1は、半導体基板2の表面から遮蔽部7の半導体基板2の側の面までの距離d2よりも小さい。つまり、変換部3において、層間絶縁膜905が薄くなっている。さらに、本実施例では変換部3の上には、光を集めるためのマイクロレンズが配されない。このような構成によれば、変換部3の上に配される部材の厚さが小さいため、吸収される軟X線の量を小さくすることができる。つまり、感度を向上させることが可能となる。
【0132】
導電部材は、例えばアルミニウムや銅で形成される。特に、導電部材には遮蔽部7を構成する材料よりも電気伝導度の高い材料が用いられてもよい。アルミニウムや銅はタンタルに比べて電気伝導度が高い。
【0133】
導電部材901a〜903bと層間絶縁膜905の間には、必要に応じてバリアメタルが配されてもよい。バリアメタルは配線の材料となる金属が拡散することを低減しうる。そのため、バリアメタルにおける金属の拡散係数は、層間絶縁膜905における金属の拡散係数より低くてもよい。バリアメタルの材料は、タンタル、タングステン、チタンであってもよい。なお、バリアメタルは電気伝導を主たる目的としないので、バリアメタルの膜厚は接触している導電部材の膜厚よりも薄くてもよい。これに対して、遮蔽部7は別の導電部材とは接触していなくてよい。もちろん、遮蔽部7が別の導電部材と接触してもよい。この場合には、遮蔽部7の膜厚は、遮蔽部7と接触している別の導電部材の膜厚よりも厚くてもよい。あるいは、遮蔽部7の膜厚は、バリアメタルの膜厚より厚くてもよい。
【0134】
このような構成によれば、遮蔽の機能と信号伝達の機能を別々の配線層で分離することができるので、高い遮蔽性能と高い信号伝達能力を両立させることが容易になる。
【0135】
本実施例の検出ユニット1の等価回路及び平面構造は、実施例1〜4のいずれかの検出ユニット1と同様であってもよい。また、実施例1の変形例で説明した変形が可能である。本実施例の構成は、実施例1〜4と組み合わせることが可能である。例えば、配線の構造、層間絶縁膜905の構造をそれぞれ単独に上述の実施例1〜4と組み合わせてもよい。実施例2と組み合わせる場合には、軟X線が入射する側に遮蔽部7が配され、それとは反対側に配線層901〜903が配される。また、実施例1〜4において、マイクロレンズが配されない構成とすることも可能である。
【実施例6】
【0136】
本発明に係る第6の実施例の軟X線検出装置1000について説明する。図10は本実施例の軟X線検出装置1000の断面の概略図を示す図である。図10において、図8(実施例4)と同様の機能を有する部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施例の軟X線検出装置1000は、遮蔽部7を有していないことが特徴である。それ以外の構成は、実施例4と同様とすることができる。つまり、実施例4の変形例として、遮蔽部7を省略することが可能である。
【0137】
この理由は、実施例4で説明されたように、変換部3のP型ウェル802aと回路部4のP型ウェル802bの下端の位置が異なることによって、正確な軟X線の検出が可能となるからである。先に述べたように、半導体基板2に軟X線が入射したことによって発生した電荷のうち、一部の電荷のみが読み出されることが、正確性の向上における課題である。本実施例のウェル構造によって、回路部4に軟X線が入射したことによって発生した電荷は、全てが排出される可能性が高い。つまり、遮蔽部7を省略しても、P型ウェルの構造のみによって、軟X線検出の正確性を向上させることができるのである。
【実施例7】
【0138】
本発明に係る軟X線検出装置を含む軟X線撮像システムの実施例について図11を用いて説明する。本実施例の軟X線撮像システムは、実施例1〜6の軟X線検出装置100、500、600、800、900、1000のいずれかを有する。軟X線撮像システムは、さらに軟X線検出装置からの信号を処理する信号処理回路1101、軟X線検出装置を駆動するための駆動回路1102を有する。信号処理回路1101や駆動回路1102には固体撮像装置に適用しうる公知の回路を用いることができる。信号処理回路1101の一部または全部、及び駆動回路1102の一部または全部が1つの半導体基板に配されてもよい。あるいは、信号処理回路1101、または駆動回路1102が、軟X線検出装置の有する半導体基板とは別の半導体基板に配されてもよい。
【0139】
また、軟X線撮像システムは、推進装置を備えていてもよい。例えば、推進装置は衛星軌道上に配された軟X線検出システムの位置を制御するものである。あるいは、推進装置は地球の地表から衛星軌道上に軟X線検出システムを移動させるためのロケットエンジンであってもよい。これらの推進装置は着脱可能であってもよい。
【0140】
このような軟X線撮像システムの駆動方法の例について説明する。軟X線のエネルギーを測定する目的の場合には、1回の蓄積期間に1つの検出ユニットに入射するフォトンの平均数が1以下になるように、駆動回路1102が軟X線検出装置を駆動する。つまり、入射する軟X線の量に基づいて、十分に短い蓄積期間を設定すればよい。具体的には、軟X線の量はあるユニット面積においてユニット時間あたりに照射されるフォトンの数で表される。そこで、検出ユニットの面積から、ユニット時間あたりに1つの検出ユニットに照射されるフォトンの数を計算すれば、蓄積期間をいくつに設定すればよいか決定することができる。そして1回の蓄積動作を行ったあとに軟X線検出装置が信号電荷を信号として出力し、信号処理回路1101が画像を作成する。この画像は、各検出ユニットに入射した軟X線のエネルギーを2次元平面にマッピングしたものであってもよい。
【0141】
さらに、入射する軟X線の量(強度)、つまり、フォトンの数を検出する場合には、上述の蓄積動作を複数回繰り返して、蓄積のたびに信号を読み出せばよい。例えば、地球の衛星軌道上で太陽が発する軟X線を検出すると、軟X線検出装置の1つの検出ユニットに毎秒数百個のフォトンが入射する場合がある。これらのフォトンの数とエネルギーを測定するためには、1秒間に数百〜数千枚の画像を撮像し、読み出す必要がある。CCD型の軟X線検出装置でこのような高速の読み出しを行うためには、検出ユニット数を減らして解像度を犠牲にする必要がある。これに対して、本発明に係る軟X線検出装置は検出ユニットに増幅部を有するので、解像度を犠牲にすることなく高速の撮影を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1 検出ユニット
2 半導体基板
3 変換部
4 回路部
6 増幅トランジスタ
7 遮蔽部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、
を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記遮蔽部は前記複数の増幅トランジスタのゲート電極よりも上に配され、
前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項2】
変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、
を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記複数の増幅トランジスタのゲート電極は、前記半導体基板の2つの主面のうち第1主面に配され、
前記遮蔽部は、前記半導体基板の2つの主面のうち、前記第1主面とは反対側の第2主面に配され、
前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項3】
前記遮蔽部の別の一部の前記半導体基板へ射影が前記変換部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軟X線検出装置。
【請求項4】
前記遮蔽部の前記一部と、前記遮蔽部の前記別の一部とが連続して配されたことを特徴とする請求項3に記載の軟X線検出装置。
【請求項5】
前記遮蔽部の前記一部と、前記遮蔽部の前記別の一部とが、互いに分離されて配されたことを特徴とする請求項3に記載の軟X線検出装置。
【請求項6】
前記遮蔽部の前記別の一部は、前記変換部のうち、前記変換部と前記回路部との境界から所定の距離以内の第1領域と重なるように配され、
前記変換部のうち、前記第1領域を除く第2領域には、前記遮蔽部が重ならないことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項7】
前記所定の距離は、0.1〜2.0マイクロメートルの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【請求項8】
前記所定の距離は、1つの前記軟X線のフォトンが前記半導体基板に入射したときに電荷が発生する領域を包含する最小の球の半径よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【請求項9】
前記所定の距離をL(マイクロメートル)、前記半導体基板に入射した前記軟X線のエネルギーをE(keV)としたとき、前記所定の距離Lが以下の式で表されることを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【数1】
【請求項10】
前記半導体基板の上に配された複数の配線層を有し、
前記遮蔽部は前記複数の配線層のうちの一つの配線層に含まれ、
前記一つの配線層とは別の配線層に含まれる配線を構成する材料のうち少なくとも一つの材料の電気伝導度が、前記遮蔽部を構成する材料の電気伝導度よりも高いこと特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項11】
前記一つの配線層が、前記複数の配線層のなかで前記半導体基板から最も遠い位置に配されたことを特徴とする請求項10に記載の軟X線検出装置。
【請求項12】
前記遮蔽部が、前記一つの配線層を含む少なくとも二つの配線層のそれぞれに含まれることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の軟X線検出装置。
【請求項13】
前記別の配線層に含まれる前記配線は、第1の導電部材と、前記第1の導電部材に接するように配され、前記第1の導電部材よりも電気伝導度の低い第2の導電部材とを含んで構成され、
前記遮蔽部の厚さが前記第2の導電部材の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項14】
前記第2の導電部材が、前記第1の導電部材を構成する材料の拡散を低減することを特徴とする請求項13に記載の軟X線検出装置。
【請求項15】
前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、
前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、
前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、
前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項16】
前記遮蔽部の厚さが0.5〜1.0マイクロメートルの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項17】
前記遮蔽部は、アルミニウム及び銅よりも前記軟X線の遮蔽係数が高い材料を含んで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項18】
前記遮蔽部は原子番号が70以上の材料を含んで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項19】
前記遮蔽部を構成する材料はタングステン、タンタル、金のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項20】
前記軟X線検出装置は、前記半導体基板の上に配された絶縁体をさらに有し、
前記絶縁体の前記変換部の上に配された部分の厚さが、前記半導体基板の表面から前記遮蔽部までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項21】
前記変換部の上にマイクロレンズが配されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項22】
0.1nm〜10nmの波長を有する軟X線を、0.1nmより小さい波長、あるいは、10nmより大きい波長の電磁波に変換する波長変換部が配されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項23】
前記半導体基板に入射する軟X線の波長は0.1nm〜10nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項24】
前記半導体基板に入射する軟X線のエネルギーは10keV以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項25】
変換部と回路部とを含む半導体基板を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、
前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、
前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、
前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項26】
請求項1乃至請求項25のいずれか一項に記載の軟X線検出装置と、
前記軟X線検出装置から出力された信号を処理する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路が前記信号に基づいて前記半導体基板に入射した軟X線のエネルギーを計算することを特徴とする軟X線検出システム。
【請求項27】
請求項1乃至請求項25のいずれか一項に記載の軟X線検出装置と、
前記軟X線検出装置から出力された信号を処理する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路が前記信号に基づいて画像を作成することを特徴とする軟X線検出システム。
【請求項1】
変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、
を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記遮蔽部は前記複数の増幅トランジスタのゲート電極よりも上に配され、
前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項2】
変換部と回路部とを含む半導体基板と、
前記半導体基板へ入射する軟X線の量を低減する遮蔽部と、
を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、前記半導体基板に入射した軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記複数の増幅トランジスタのゲート電極は、前記半導体基板の2つの主面のうち第1主面に配され、
前記遮蔽部は、前記半導体基板の2つの主面のうち、前記第1主面とは反対側の第2主面に配され、
前記遮蔽部の少なくとも一部の前記半導体基板へ射影が前記回路部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項3】
前記遮蔽部の別の一部の前記半導体基板へ射影が前記変換部と重なるように前記遮蔽部が配されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軟X線検出装置。
【請求項4】
前記遮蔽部の前記一部と、前記遮蔽部の前記別の一部とが連続して配されたことを特徴とする請求項3に記載の軟X線検出装置。
【請求項5】
前記遮蔽部の前記一部と、前記遮蔽部の前記別の一部とが、互いに分離されて配されたことを特徴とする請求項3に記載の軟X線検出装置。
【請求項6】
前記遮蔽部の前記別の一部は、前記変換部のうち、前記変換部と前記回路部との境界から所定の距離以内の第1領域と重なるように配され、
前記変換部のうち、前記第1領域を除く第2領域には、前記遮蔽部が重ならないことを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項7】
前記所定の距離は、0.1〜2.0マイクロメートルの範囲内であることを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【請求項8】
前記所定の距離は、1つの前記軟X線のフォトンが前記半導体基板に入射したときに電荷が発生する領域を包含する最小の球の半径よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【請求項9】
前記所定の距離をL(マイクロメートル)、前記半導体基板に入射した前記軟X線のエネルギーをE(keV)としたとき、前記所定の距離Lが以下の式で表されることを特徴とする請求項6に記載の軟X線検出装置。
【数1】
【請求項10】
前記半導体基板の上に配された複数の配線層を有し、
前記遮蔽部は前記複数の配線層のうちの一つの配線層に含まれ、
前記一つの配線層とは別の配線層に含まれる配線を構成する材料のうち少なくとも一つの材料の電気伝導度が、前記遮蔽部を構成する材料の電気伝導度よりも高いこと特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項11】
前記一つの配線層が、前記複数の配線層のなかで前記半導体基板から最も遠い位置に配されたことを特徴とする請求項10に記載の軟X線検出装置。
【請求項12】
前記遮蔽部が、前記一つの配線層を含む少なくとも二つの配線層のそれぞれに含まれることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の軟X線検出装置。
【請求項13】
前記別の配線層に含まれる前記配線は、第1の導電部材と、前記第1の導電部材に接するように配され、前記第1の導電部材よりも電気伝導度の低い第2の導電部材とを含んで構成され、
前記遮蔽部の厚さが前記第2の導電部材の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項14】
前記第2の導電部材が、前記第1の導電部材を構成する材料の拡散を低減することを特徴とする請求項13に記載の軟X線検出装置。
【請求項15】
前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、
前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、
前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、
前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項16】
前記遮蔽部の厚さが0.5〜1.0マイクロメートルの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項17】
前記遮蔽部は、アルミニウム及び銅よりも前記軟X線の遮蔽係数が高い材料を含んで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項18】
前記遮蔽部は原子番号が70以上の材料を含んで構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項19】
前記遮蔽部を構成する材料はタングステン、タンタル、金のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項20】
前記軟X線検出装置は、前記半導体基板の上に配された絶縁体をさらに有し、
前記絶縁体の前記変換部の上に配された部分の厚さが、前記半導体基板の表面から前記遮蔽部までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項21】
前記変換部の上にマイクロレンズが配されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項22】
0.1nm〜10nmの波長を有する軟X線を、0.1nmより小さい波長、あるいは、10nmより大きい波長の電磁波に変換する波長変換部が配されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項21のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項23】
前記半導体基板に入射する軟X線の波長は0.1nm〜10nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項24】
前記半導体基板に入射する軟X線のエネルギーは10keV以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれか一項に記載の軟X線検出装置。
【請求項25】
変換部と回路部とを含む半導体基板を備えた軟X線検出装置であって、
前記変換部には、軟X線を電荷に変換する複数の変換素子が配され、
前記回路部には、前記複数の変換素子のぞれぞれで生じた電荷に基づく信号を出力する複数の増幅トランジスタが配され、
前記複数の変換素子のそれぞれは、前記電荷が収集される第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の下に配された第2導電型の第2半導体領域とを含み、
前記回路部は、前記複数の増幅トランジスタのそれぞれのソース領域またはドレイン領域が配される第2導電型の第3半導体領域を含み、
前記第2半導体領域の下、及び前記第3半導体領域の下に、第1導電型の第4半導体領域が配され、
前記第2半導体領域の下端は、前記第3半導体領域の下端よりも前記半導体基板の深い位置にあることを特徴とする軟X線検出装置。
【請求項26】
請求項1乃至請求項25のいずれか一項に記載の軟X線検出装置と、
前記軟X線検出装置から出力された信号を処理する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路が前記信号に基づいて前記半導体基板に入射した軟X線のエネルギーを計算することを特徴とする軟X線検出システム。
【請求項27】
請求項1乃至請求項25のいずれか一項に記載の軟X線検出装置と、
前記軟X線検出装置から出力された信号を処理する信号処理回路と、を備え、
前記信号処理回路が前記信号に基づいて画像を作成することを特徴とする軟X線検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−36814(P2013−36814A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171973(P2011−171973)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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