説明

転がり軸受ユニットの状態量測定装置

【課題】合成樹脂製のセンサホルダ9aの射出成形時に、各センサ6a、6bからそれぞれ複数本ずつ導出したセンサリード10a、10a及び中継リード19が、溶融樹脂の熱と圧力とを受けて変形し、互いに接触する(短絡が起こる)と言った不都合が生じる事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】上記各センサリード10a、10aと中継リード19との接続部に、これら各接続部同士を互いに離隔した状態で保持する保護部材11を組み付ける。この様な構成を採用する事により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、転がり軸受ユニットを構成する外輪とハブとの間に作用する外力等の状態量を測定する為に利用する。更に、この求めた状態量を、自動車等の車両の走行安定性確保を図る為に利用する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の車輪は懸架装置に対し、複列アンギュラ型等の転がり軸受ユニットにより回転自在に支持する。又、自動車の走行安定性を確保する為に、例えばアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)、更には、電子制御式ビークルスタビリティコントロールシステム(ESC)等の車両用走行安定化装置が使用されている。この様な各種車両用走行安定化装置を制御する為には、車輪の回転速度、車体に加わる各方向の加速度等を表す信号が必要になる。そして、より高度の制御を行なう為には、車輪を介して上記転がり軸受ユニットに加わる荷重(例えばラジアル荷重とアキシアル荷重との一方又は双方)の大きさを知る事が好ましい場合がある。
【0003】
この様な事情に鑑みて、特許文献1には、特殊なエンコーダを使用して、転がり軸受ユニットに加わる荷重の大きさを測定する発明が記載されている。図6は、この特許文献1に記載された構造と同じ荷重の測定原理を採用している、転がり軸受ユニットの状態量測定装置に関する従来構造の1例を示している。この従来構造は、使用時にも回転しない外輪1の内径側に、使用時に車輪を支持固定した状態でこの車輪と共に回転するハブ2を、複数個の転動体3、3を介して、回転自在に支持している。これら各転動体3、3には、背面組み合わせ型の接触角と共に、予圧を付与している。尚、図示の例では、これら各転動体3、3として玉を使用しているが、重量が嵩む自動車用の軸受ユニットの場合には、玉に代えて円すいころを使用する場合もある。
【0004】
又、上記ハブ2の軸方向内端部(軸方向に関して「内」とは、自動車への組付け状態で車両の幅方向中央側を言い、図1、2、5、6の右側。反対に、車両の幅方向外側となる、図1、2、5、6の左側を、軸方向に関して「外」と言う。本明細書全体で同じ。)には、円筒状のエンコーダ4を、上記ハブ2と同心に支持固定している。又、上記外輪1の軸方向内端開口を塞ぐ有底円筒状のカバー5の内側に、合成樹脂製のセンサホルダ9を介して1対のセンサ6a、6bを支持固定すると共に、これら両センサ6a、6bの検出部を、上記エンコーダ4の被検出面である外周面に近接対向させている。このエンコーダ4は、芯金7とエンコーダ本体8とを組み合わせて成る。このうちの芯金7は、軟鋼板等の磁性金属板により、断面クランク形で全体を段付円筒状に構成している。又、上記エンコーダ本体8は、上記芯金7のうちで大径側部分の外周面の全周に円筒状の未着磁の磁性部材を添着固定した後、この磁性部材に着磁する事により構成している。
【0005】
被検出面である、上記エンコーダ本体8の外周面には、S極とN極とを、円周方向に関して交互に且つ等間隔で配置している。円周方向に隣り合うS極とN極との境界は、上記外周面の軸方向に対して所定方向に所定角度で漸次変化している。又、変化する方向は、この外周面の軸方向片半部と他半部とで、互いに逆にしている。従って、上記S極と上記N極とは、軸方向中央部が円周方向に関して最も突出した、「く」字形となっている。
【0006】
又、上記両センサ6a、6bの検出部には、ホールIC、ホール素子、MR素子、GMR素子等の磁気検知素子を組み込んでいる。そして、これら両センサ6a、6bのうち、一方のセンサ6aの検出部を上記エンコーダ本体8の外周面の軸方向片半部に、他方のセンサ6bの検出部を同じく軸方向他半部に、それぞれ近接対向させている。上記外輪1と上記ハブ2との間にアキシアル荷重が作用しない状態で、上記S極と上記N極との軸方向中央部で円周方向に関して最も突出した部分が、上記両センサ6a、6bの検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、各部材の軸方向の設置位置を規制している。同じ状態で、上記両センサ6a、6bの検出部と、上記エンコーダ本体8の外周面の変化の位相との関係が所定通りになる様に、上記両センサ6a、6bの円周方向の設置位置を規制している。
【0007】
上述の様に構成する転がり軸受ユニットの状態量測定装置の場合、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用すると、上記両センサ6a、6bの出力信号が変化する位相がずれる。即ち、上記外輪1とハブ2との間にアキシアル荷重が作用しておらず、これら外輪1とハブ2とが相対変位していない、中立状態では、上記両センサ6a、6bの検出部は、上記エンコーダ4の外周面で、上記最も突出した部分から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、上記両センサ6a、6bの出力信号の位相は、上記所定の関係により定まる通り、一致若しくは所定値だけずれる。これに対し、上記エンコーダ4を固定したハブ2にアキシアル荷重が作用した場合には、上記両センサ6a、6bの検出部は、このアキシアル荷重の作用方向に応じた方向に、このアキシアル荷重の大きさに応じた分だけずれた部分に対向する。この状態では上記両センサ6a、6bの出力信号の位相は、上記アキシアル荷重の作用方向に応じた方向に、このアキシアル荷重の大きさに応じた分だけずれる。
【0008】
この様に、上述した従来構造の場合には、上記両センサ6a、6bの出力信号の位相が、上記外輪1とハブ2との間に加わるアキシアル荷重の作用方向(これら外輪1とハブ2とのアキシアル方向の相対変位の方向)に応じた向きにずれる。又、このアキシアル荷重(相対変位)により上記両センサ6a、6bの出力信号の位相がずれる程度は、このアキシアル荷重(相対変位)が大きくなる程大きくなる。従って、上記両センサ6a、6bの出力信号の位相ずれ(位相差)の有無、ずれが存在する場合にはその向き及び大きさに基づいて、上記外輪1とハブ2とのアキシアル方向の相対変位の向き及び大きさ、並びに、これら外輪1とハブ2との間に作用しているアキシアル荷重の作用方向及び大きさを求められる。尚、上記両センサ6a、6bの出力信号同士の間に存在する位相差(位相差比=位相差/1周期)に基づいて上記アキシアル方向の相対変位及び荷重を算出する処理は、図示しない演算器により行なう。この為、この演算器のメモリ中には、予め理論計算や実験により調べておいた、上記位相差(比)と、上記アキシアル方向の相対変位又は荷重との関係(零点及びゲイン)を表す、式やマップを記憶させておく。
【0009】
尚、上述した従来構造の場合には、エンコーダの被検出面にその検出部を対向させるセンサの数を、2個としている。これに対し、図示は省略するが、特許文献2〜3及び特願2006−345849には、当該センサの数を3個以上とする事で、多方向の変位或は外力を求められる構造が記載されている。
【0010】
ところで、上述の図6に示した従来構造で、1対のセンサ6a、6bはそれぞれ、図7に示す様に、複数本(図示の例では4本)のセンサリード(導体)10、10を備える。これら各センサリード10、10はそれぞれ、上記センサ6a(6b)の出力信号を取り出したり、このセンサ6a(6b)に電力を供給する役目を有する。この為に、上記各センサリード10、10の端部には、上記センサ6a(6b)の出力信号を上記演算器に送ったり、このセンサ6a(6b)に電力を供給する為の複数本の導体の端部を、ハンダ付、ろう付け等により接続する。そして、この様に接続した状態で、上記各センサリード10、10を上記センサ6a(6b)と共に、合成樹脂製のセンサホルダ9内の所定位置に包埋する。
【0011】
この様に、上記センサ6a(6b)及び各センサリード10、10を、上記センサホルダ9内に包埋する作業は、これらセンサ6a(6b)及び各センサリード10、10を、射出成形装置のキャビティ内の所定位置に保持した状態で、このキャビティ内に合成樹脂を射出成形する事により行なう。この際に、上記各センサリード10、10の端部と上記各導体の端部とは、予めハンダ付け、ろう付け等により接続しておく。そして、完成した上記センサホルダ9を、前記カバー5の内側に組み付ける。尚、このセンサホルダ9は、このカバー5に対し、インサート成形する事もできる。この場合には、このカバー5を、上記センサ6a(6b)及び各センサリード10、10と共に、上記キャビティ内の所定位置に保持した状態で、このキャビティ内に合成樹脂を射出成形する。
【0012】
何れにしても、上述の様にしてセンサホルダ9を射出成形する際に、上記センサ6a(6b)から導出した複数本のセンサリード10、10は、上記キャビティ内に送り込まれた溶融樹脂の熱と圧力とを受けて変形し、互いに接触する(短絡が起こる)可能性がある。この様な短絡が起こると、上記センサ6a(6b)が機能不良となって、演算器による状態量の算出を行なえなくなる。従って、上記短絡が起こったセンサリード10、10及びセンサ6a(6b)を包埋したユニットは、不良品として廃棄しなければならず、歩留悪化によるコスト上昇の原因となる為、改良が望まれる。
【0013】
【特許文献1】特開2006−317420号公報
【特許文献2】特開2006−322928号公報
【特許文献3】特開2007−93580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、上述の様な事情に鑑み、センサ及び複数本のセンサリードを包埋した、合成樹脂製のセンサホルダの射出成形時に、これら各センサリードが、射出成形装置のキャビティ内に送り込まれた溶融樹脂の熱と圧力とを受けて変形し、互いに接触する(短絡が起こる)と言った不都合が生じる事を防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置は、転がり軸受ユニットと、状態量測定装置とを備える。
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備える。
又、上記状態量測定装置は、エンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備える。
このうちのエンコーダは、上記ハブの端部にこのハブと同心に支持固定されたものであって、このハブと同心の被検出面を備え、この被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させている。
又、上記センサは、検出部を上記エンコーダの被検出面に対向させた状態で、上記外輪の端部開口を塞ぐ為にこの端部に固定した有底円筒状のカバー内に保持したセンサホルダ内に包埋支持されていて、上記被検出面の特性変化に対応して出力信号を変化させる。
又、上記演算器は、上記センサの出力信号に基づいて、上記ハブの回転速度と、上記外輪と上記ハブとの間の相対変位と、これら外輪とハブとの間に作用する外力とのうちの、少なくとも1種類の状態量を算出する機能を有する。
又、上記センサから導出した複数本のセンサリードを、このセンサと共に上記センサホルダに包埋している。
【0016】
特に、本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置に於いては、上記各センサリードにこれら各センサリード同士が接触するのを防止する為の絶縁体製の保護部材を組み付けた状態で、この保護部材を上記各センサリードと共に上記センサホルダに包埋している。
この様な特徴を有する本発明を実施する場合には、例えば請求項2に記載した様に、上記保護部材として、側面に複数本の保持溝を有し、これら各保持溝内に上記各センサリードを1本ずつ保持可能な部材を採用できる。
【発明の効果】
【0017】
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニットの状態量測定装置によれば、合成樹脂製のセンサホルダの射出成形時に、各センサリードが、射出成形装置のキャビティ内に送り込まれた溶融樹脂の熱と圧力とを受けて変形し、互いに接触する(短絡が起こる)と言った不都合が生じる事を防止できる。この為、歩留まりを良好にして、コストの低減を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1〜5は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、1対のセンサ6a(6b)から、それぞれセンサリード(導体)10a、10aを4本ずつ導出した構造で、これら各4本ずつのセンサリード10a、10aに対し、保護部材11を1個ずつ組み付けた点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図6に示した従来構造の場合とほぼ同様である。この為、同等部分には同一符号を付して、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分、並びに、上記従来構造と異なる部分を中心に説明する。
【0019】
本例の場合、金属板製で有底円筒状のカバー5aの内側に保持固定した、合成樹脂製のセンサホルダ9aは、このカバー5aに対し、インサート成形(射出成形)したものである。この様なセンサホルダ9aは、軸方向中間部に存在する円板部12と、この円板部12の外周縁部分から軸方向外方に突出する円筒状部13と、上記円板部12の中央部分から軸方向内方に突出するコネクタ部14とを備える。このうちのコネクタ部14の先端側部分は、上記カバー5aを構成する底板部15の中央部に設けた通孔16を通じて、このカバー5aの外部に突出させている。又、上記通孔16の周囲に存在する円筒部17の外周面の全周に、熱硬化性のシール剤(シール用樹脂)18を塗布し、更に硬化させている。即ち、上記円筒部17の外周面を、上記シール剤18ごと、全周に亙り、上記センサホルダ9aの一部により覆って、上記円筒部17の外周面と上記センサホルダ9aとの間の水密を保持している。
【0020】
又、上記センサホルダ9aを構成する円筒状部13及び円板部12の径方向外端部には、それぞれが4本ずつのクランク形のセンサリード10a、10aを備えた1対のセンサ6a、6bと、これら各センサリード10a、10aと同数のコ字形の中継リード(導体)19と、1対の保護部材11とを、それぞれ包埋している。本例の場合、上記両センサ6a、6bは、軸方向及び円周方向に関して互いにずれた位置に配置している。又、上記各センサリード10a、10aはそれぞれ、上記両センサ6a、6bから軸方向内方に向け、互いに間隔をあけて平行に導出している。尚、本例の場合には、上記両センサ6a、6b同士で、上記各センサリード10a、10aの長さを互いに異ならせる事により、上記両センサ6a、6bを軸方向に関して互いに異なる位置に配置できる様にしている。又、上記各中継リード19の一端部は、上記各センサリード10a、10aの先端部に、ハンダ付け、ろう付け等により接続している。これに対し、上記各中継リード19の他端部は、上記円板部12の軸方向外側面の径方向外端部から、軸方向内方に向け突出させている。
【0021】
又、上記1対の保護部材11はそれぞれ、図4に示す様に、上記センサホルダ9aを構成する合成樹脂よりも融点の高い合成樹脂、或いはセラミックス等の絶縁材により、全体を矩形板状に形成したもので、片側面に互いに平行な4本の保持溝24、24を有する。この様な1対の保護部材11は、上記4本ずつのセンサリード10a、10aに対し、それぞれ1個ずつ組み付けている。具体的には、上記各保護部材11の4本の保持溝24、24内に、それぞれ上記各センサ6a(6b)から導出した4本のセンサリード10a、10aの先半部と、上記各中継リード19の一端部との各接続部を、それぞれ1本ずつ保持した状態で組み付けている。又、上記センサホルダ9aを構成するコネクタ部14及び円板部12の径方向中央寄り部分には、複数本のコネクタリード(導体端子)20、20の中間部を包埋している。この状態で、これら各コネクタリード20、20の一端部は、それぞれ上記円板部12の軸方向外側面の径方向中央寄り部分から、軸方向内方に向け突出させている。
【0022】
又、上記カバー5aの内側には、センサ基板、演算器基板等の電子回路基板21を設置している。具体的には、この電子回路基板21を、上記センサホルダ9aを構成する円板部12の軸方向外側面に対し、ねじ止め、接着、モールド等により固定している。又、この状態で、上記電子回路基板21に、上記各中継リード19の他端部と、上記各コネクタリード20、20の一端部とを、それぞれハンダ付け等により接続している。これにより、上記各センサリード10a、10a及び上記各中継リード19のうちの一部のリードを通じて、上記両センサ6a、6bから上記電子回路基板21に向け、これら両センサ6a、6bの出力信号を送信可能としている。これと共に、上記各コネクタリード20、20のうちの一部のリードを通じて、上記電子回路基板21から車体側のABSコントローラ等に向け、この電子回路基板21で処理取得された各種信号{例えば、波形成形された上記両センサ6a、6bの出力信号や位相差(比)を表す信号、この位相差(比)に基づいて算出した外輪1とハブ2との間の状態量(相対変位、外力)を表す信号等}を送信可能としている。更には、上記各コネクタリード20、20のうちの他の一部のリード、並びに、上記各中継リード19及び上記各センサリード10a、10aのうちの他の一部のリードを通じて、それぞれ上記電子回路基板21及び上記各センサ6a、6bに対し、必要な電力の供給を可能としている。
【0023】
尚、本例の場合、転がり軸受ユニットを構成するハブ2aの中心部に、この中心部を軸方向に貫通する中心孔22を設けている。この為、この中心孔22を通じて上記カバー5aの内側に異物が侵入する事を防止すべく、この中心孔22の軸方向外端部にキャップ23を装着して、この軸方向外端開口を塞いでいる。
【0024】
上述の様に構成する本例の場合、金属板製のカバー5aに対して合成樹脂製のセンサホルダ9aをインサート成形する際には、先ず、図5の(A)に示す様に、センサ6b{図示しないセンサ6a(図1参照)に就いても同様}から導出した4本のセンサリード10aの先半部と、4本の中継リード19の一端部との各接続部に、保護部材11を組み付ける。具体的には、これら4本の接続部を、この保護部材11に設けた4本の保持溝24内に、それぞれ1本ずつ保持する。次いで、同図の(B)に示す様に、上記カバー5a(予め円筒部17の外周面にシール剤18を塗布し、更に硬化させたもの)と、上述の様に保護部材11を組み付けたセンサ6b(6a)及び各リード10a、19と、各コネクタリード20とを、射出成形装置のキャビティ(図示せず)内の所定位置に保持する。そして、この状態で、同図の(C)に示す様に、上記キャビティ内に合成樹脂を射出成形する事により、上記センサホルダ9aを完成させる。この状態で上記シール剤18が、射出成形後の冷却固化に伴って収縮した上記センサホルダ9aと上記円筒部17とに密着する。
【0025】
上述の様に、本例の転がり軸受ユニットの状態量測定装置の場合には、センサ6b(6a)から導出した4本のセンサリード10a、10aの先半部と、4本の中継リード19の一端部との各接続部を、保護部材11に設けた4本の保持溝24、24内に、それぞれ1本ずつ保持した状態で、上記センサホルダ9aの射出成形を行なう。この為、この射出成形時に、上記各リード10a、19が、射出成形装置のキャビティ内に送り込まれた溶融樹脂の熱と圧力とを受けて変形し、互いに接触する(短絡が起こる)と言った不都合が生じる事を、有効に防止できる。この為、歩留まりを良好にして、コストの低減を図れる。
【0026】
尚、上述した実施の形態では、複数本のセンサリード(及び中継リード)の一部分(これら両リード同士の接続部)に保護部材を組み付ける構造を採用したが、これに代えて、複数本のセンサリード(及び中継リード)の全体(これら両リード同士の接続部及びこの接続部から外れた部分、又は、接続部を含む複数部分)に保護部材を組み付ける構造を採用すれば、センサホルダの射出成形時に、上記各センサリード(及び各中継リード)同士が接触するのを、より有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】複数本のセンサリードを備えたセンサの平面図。
【図4】保護部材の斜視図。
【図5】合成樹脂製のセンサホルダを射出成形する工程を順番に示す部分断面図。
【図6】転がり軸受ユニットの状態量測定装置の従来構造の1例を示す断面図。
【図7】複数本のセンサリードを備えたセンサの平面図。
【符号の説明】
【0028】
1 外輪
2、2a ハブ
3 転動体
4 エンコーダ
5、5a カバー
6a、6b センサ
7 芯金
8 エンコーダ本体
9、9a センサホルダ
10、10a センサリード
11 保護部材
12 円板部
13 円筒状部
14 コネクタ部
15 底板部
16 通孔
17 円筒部
18 シール剤
19 中継リード
20 コネクタリード
21 電子回路基板
22 中心孔
23 キャップ
24 保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受ユニットと、状態量測定装置とを備え、
このうちの転がり軸受ユニットは、内周面に複列の外輪軌道を有し、使用時にも回転しない外輪と、外周面に複列の内輪軌道を有し、使用時に回転するハブと、これら両列の内輪軌道と上記両列の外輪軌道との間に、両列毎に複数個ずつ転動自在に設けられた転動体とを備えたものであり、
上記状態量測定装置は、エンコーダと、少なくとも1個のセンサと、演算器とを備えたものであって、
このうちのエンコーダは、上記ハブの端部にこのハブと同心に支持固定されたものであって、このハブと同心の被検出面を備え、この被検出面の特性を円周方向に関して交互に変化させたものであり、
上記センサは、検出部を上記エンコーダの被検出面に対向させた状態で、上記外輪の端部開口を塞ぐ為にこの端部に固定した有底円筒状のカバー内に保持したセンサホルダ内に包埋支持されていて、上記被検出面の特性変化に対応して出力信号を変化させるものであり、
上記演算器は、上記センサの出力信号に基づいて、上記ハブの回転速度と、上記外輪と上記ハブとの間の相対変位と、これら外輪とハブとの間に作用する外力とのうちの、少なくとも1種類の状態量を算出する機能を有するものであり、
上記センサから導出した複数本のセンサリードを、このセンサと共に上記センサホルダに包埋している
転がり軸受ユニットの状態量測定装置に於いて、
上記各センサリードにこれら各センサリード同士が接触するのを防止する為の絶縁材製の保護部材を組み付けた状態で、この保護部材を上記各センサリードと共に上記センサホルダに包埋している事を特徴とする転がり軸受ユニットの状態量測定装置。
【請求項2】
保護部材が、側面に複数本の保持溝を有し、これら各保持溝内にセンサリードを1本ずつ保持可能な部材である、請求項1に記載した転がり軸受ユニットの状態量測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−186392(P2009−186392A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28474(P2008−28474)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】