説明

転写シートおよび樹脂成形品の製造方法

【課題】表面に機能層を有する場合や機能層が一様でない場合においてもシワが少なく外観に優れ、密着性を確保し、さらに安価に樹脂成形品を製造する方法、および、このような樹脂成形品の表面に金属等の導体層を形成するために用いる転写シートを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明における転写シート10は、フィルム転写成形に用いる転写シート10であって、樹脂層と1、前記樹脂層1中に埋め込まれ、所定材質の繊維を隙間を空けて織った織物2と、前記樹脂層1の一の面に形成され、転写対象の所定の機能を有する機能層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナや回路基板等の表面に導体を形成する樹脂成形品の製造方法とその樹脂成形品に用いる転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂層の表面に金属導体を形成するような機能を付加した樹脂成形品を製造する方法として、導体層をフィルム上に形成し、フィルムと樹脂層とを射出成形により一体化するフィルム一体化成形が考えられる。フィルム一体成形品には、導体層と樹脂層との密着力の確保と一体成形時に導体層にシワを発生させない外観に優れた成形品が求められる。このため、密着力を確保するために、接着剤を使用して樹脂層と導体層を接着する成形法が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。また、シワをなくす方法として、転写フィルムを予熱して真空成形を行った後に射出圧縮成形を行う成形法が提案されている(例えば下記特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−123694号公報
【特許文献2】特開2003−326576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、フィルム一体成形品には、導体層と射出成形樹脂層との密着力の確保と、一体成形時に導体層にシワを発生させない外観に優れた成形品が求められている。特許文献1に記載のように密着力を確保するためには、転写フィルムが射出成形樹脂層と接触する層に接着剤からなる接着層を形成している。しかしながら、射出成形樹脂層を形成する際に、接着剤が溶融してシワや気泡ができ、外観に満足した一体成形品が得られないという問題があった。また、誘電特性(誘電率、誘電正接)が重視されるアンテナ回路部品や電気回路の高周波用途向け部品の場合には、接着剤により電気特性低下が生じ、性能上の問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載のようにシワをなくすためには、射出成形樹脂層と同一のフィルムを用い、転写フィルムを予備加熱し、真空成形を行った後に射出圧縮成形を行っている。しかしながら、工程が複雑であり、また真空成形するためにはシートの温度が軟化温度に達するまで時間を要し、成形サイクルタイムが長い。すなわち、製造プロセスに要する時間が長く、生産性の問題があった。また、機能層が回路パターンのような場合、導電層のような機能層がある部分とない部分が存在する。すなわち、機能層が面内で一様でないために、一体成形時に機能層の変形やシワの発生が生じ、また機能層が無い部分では樹脂が飛び出し、外観に異常が生じるなどの問題があった。
【0006】
そこで本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、表面に機能層を有する場合や機能層が一様でない場合においても、シワが少なく外観に優れ、密着性を確保し、さらに安価に樹脂成形品を製造する方法、および、このような樹脂成形品の表面に金属等の導体層を形成するために用いる転写シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における転写シートは、フィルム転写成形に用いる転写シートであって、樹脂層と、前記樹脂層中に埋め込まれ、所定材質の繊維を隙間を空けて織った織物と、前記樹脂層の一の面に形成され、転写対象の所定の機能を有する機能層とを備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のように、転写シートの樹脂層中に剛性が高く、耐熱性に優れた織物が埋め込まれているため、織物の補強効果により織物より射出成形樹脂層側の転写シートの樹脂シートは溶融し、射出成形樹脂層と融着し高い密着強度を確保することができる。さらに、織物より射出成形樹脂層と反対側の樹脂シートは、織物の断熱効果及び剛性を保持することによって溶融することを防ぐことができる。よって、シート表面上の導体にシワが生じず、外観に優れ、かつ導体と一体化した成形品を得ることができる。このため、回路パターンのような機能層がある部分とない部分が存在し、機能層が面内で一様でない場合においても、一体成形時に機能層の変形やシワの発生を抑え、また機能層がない部分においても、樹脂の飛び出しを防いで、外観に優れた一体成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施の形態]
(転写シートの構成)
図1は、本発明における樹脂成形品20を示したものであり、表面に回路パターン等の機能を付加した転写シート10と射出成形樹脂層4を張り合わせたものである。図2は、図1における転写シート10を示したものである。図3は、本発明における樹脂成形品20を示したものであり、表面に銅箔等の機能を付加した転写シート10と射出成形樹脂層4を張り合わせたものである。図4は、図3における転写シート10を示したものである。図5は、転写シート10内部に含有される織物2を示したものである。
【0010】
転写シート10は、熱可塑性の樹脂層1(樹脂シート)とガラス繊維等からなる織物2(織物シート)で構成されている。また本実施の形態では、樹脂層1は2枚の樹脂シートにより構成して説明するが、特にこれに限定されない。
【0011】
織物2は、熱可塑性の樹脂層1に覆われるように樹脂層1中に埋め込まれており、所定材質の繊維を隙間を空けて織ったものである。本実施の形態では、隙間部分5の面積の割合は50%とした。さらに転写シート10は、樹脂層1の片側表面に、回路パターン等を形成した銅箔を貼り付けることにより、片側に金属導体層等の転写対象の所定の機能を有する機能層(金属導体シート、以下、導体層3と記載)を形成する。
【0012】
織物2は、ガラス繊維、セラミック繊維や炭素繊維からなるガラスクロスやチョップドストランドマット、ローピングクロスが望ましく、平織りや綾織り、朱子織りなどの一般的な織物構造でよい。織物2用繊維の材料は、ガラス繊維や炭素繊維の他に樹脂製繊維でもよく、芳香族ポリエステル繊維やアラミド繊維などが望ましいが特にこれに限定されない。
【0013】
熱可塑性の樹脂層1として用いる材料は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、オレフィン系グラフトポリマー、環状オレフィン系ポリマー、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂などが好ましいが特に限定されるものではない。
【0014】
表面の導体層3は銅箔の他に、アルミニウム箔等の金属箔でもよい。また、金属箔の他に樹脂の表面にメッキや蒸着等、他のプロセスにより金属の導体層3を形成してもよい。金属の導体層3は、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、スズ、金等の金属でもよい。本実施の形態では、回路パターンを形成した銅箔を用いたが、前面導体層3をシート表面上に貼り付け、貼り付け後にエッチング等によって回路パターンを形成してもよい。
【0015】
(転写シートおよび樹脂成形品の製造方法)
転写シート10の製造方法は、まず2枚の熱可塑性の樹脂シートの間に織物シートを挟み、樹脂シートの最外表面に金属導体層3等のシートを貼り付ける。次に貼り付けられた樹脂シート、織物シート、金属導体層等のシートに熱プレスを行い接着する。その他の製造方法として、熱可塑性樹脂シート、織物シート、金属導体層シートを加熱しながらロールによって成形する方法でも良く、特に限定されない。
【0016】
次に、射出成形を用いてこの転写シート10と射出成形樹脂から樹脂成形品20を形成する製造方法について説明する。まず、射出成形用の金型を準備する。この射出成形用の金型は、キャビティ用材料としてセラミックスや燒結金属等のポーラスな材料を使用し、真空ポンプによって金型キャビティ内を真空引きできる構造とする。
【0017】
次に、金型キャビティ内に転写シート10を配置する。転写シート10を配置後、金型を型締めしながら金型内を真空吸引を行うことによって、転写シート10を金型内に密着して固定する。
【0018】
次に、金型キャビティ内に熱可塑性の樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と成形樹脂を一体化する。樹脂の冷却後に金型から取り出せば、転写シート10と射出成形樹脂層4が張り合わされた樹脂成形品20が得られる。
【0019】
(効果)
以上の工程から、転写シート10と射出成形樹脂層4が張り合わされた樹脂成形品20を形成することができる。また、この転写シート10の樹脂層1中に、剛性が高く、耐熱性に優れた織物2が埋め込まれているため、織物2の補強効果により織物2より射出成形樹脂層4側の樹脂シート(樹脂層1)は溶融し、射出成形樹脂層4と融着し高い密着強度を確保することができる。さらに、織物2より射出成形樹脂層4と反対側の樹脂シート(樹脂層1)は、織物2の断熱効果及び剛性を保持することによって溶融することを防ぐことができる。よって、シート表面上の導体層3にシワが生じず、外観に優れ、かつ導体層3と一体化した成形品を得ることができる。このため、回路パターンのような機能層がある部分とない部分が存在し、機能層が面内で一様でない場合においても、一体成形時に機能層の変形やシワの発生を抑え、また機能層がない部分においても外観に優れた一体成形品を得ることができる。
【0020】
また、転写シート10を金型内でセットし射出成形によって転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化することができるため、成形サイクルタイムが短く、生産性に優れた安価な樹脂成形品20を得ることができる。また、得られた樹脂成形品20の金属導体層3と射出成形樹脂層4は、耐環境性に優れた密着力を得ることができる。
【0021】
以下、具体的に構成例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の構成例に限定されるものではない。
【0022】
[第1の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをオレフィン系グラフトポリマー樹脂からなる厚さ50μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シートの上に厚さ18μmの回路パターンを形成した銅箔を熱プレスを行い図2に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は50%とする。ここで、織物2の構造は平織りとする。
【0023】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0024】
次に、転金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるオレフィン系グラフトポリマー樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図1に示す樹脂成形品20を形成する。
【0025】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。また、一体成形品の耐久性評価として、高温試験、ヒートサイクル試験、耐湿試験後の外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。各試験条件は、高温試験が80℃、1000時間、ヒートサイクル試験が−40℃〜80℃、各30分、500回、耐湿試験が60℃、95%Rh、1000時間とした。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、外観に優れ、密着性、耐久性に優れる金属導体層3を表面に形成した樹脂成形品20を得ることができる。
【0026】
[第2の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをABS樹脂からなる厚さ50μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シートの上に厚さ12μmの回路パターンを形成した銅箔を熱プレスを行い図2に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は70%とする。ここで、織物2の構造は平織りとする。
【0027】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0028】
次に、金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるABS樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図1に示す樹脂成形品20を形成する。
【0029】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。また、一体成形品の耐久性評価として、高温試験、ヒートサイクル試験、耐湿試験後の外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。各試験条件は、高温試験が85℃、1000時間、ヒートサイクル試験が−40℃〜85℃、各30分、500回、耐湿試験が60℃、95%Rh、1000時間とした。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、外観に優れ、密着性、耐久性に優れる金属導体層3表面に形成した樹脂成形品20を得ることができる。
【0030】
[第3の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをポリカーボネート樹脂からなる厚さ70μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シートの上に厚さ12μmの回路パターンを形成した銅箔を熱プレスを行い図2に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は20%とする。ここで、織物2の構造は平織りとする。
【0031】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0032】
次に、金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるポリカーボネート樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図1に示す樹脂成形品20を形成する。
【0033】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。また、一体成形品の耐久性評価として、高温試験、ヒートサイクル試験、耐湿試験後の外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。各試験条件は、高温試験が85℃、1000時間、ヒートサイクル試験が−40℃〜85℃、各30分、500回、耐湿試験が60℃、95%Rh、1000時間とした。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、外観に優れ、密着性、耐久性に優れる金属導体層3を表面に形成した樹脂成形品20を得ることができる。
【0034】
[第4の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをオレフィン系グラフトポリマー樹脂からなる厚さ50μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シートの上に厚さ18μmの銅箔を熱プレスを行い図4に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は50%とする。ここで、織物2の構造は平織りとする。
【0035】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0036】
次に、金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるオレフィン系グラフトポリマー樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図3に示す樹脂成形品20を形成する。
【0037】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。また、一体成形品の耐久性評価として、高温試験、ヒートサイクル試験、耐湿試験後の外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。各試験条件は、高温試験が80℃、1000時間、ヒートサイクル試験が−40℃〜80℃、各30分、500回、耐湿試験が60℃、95%Rh、1000時間とした。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、外観に優れ、密着性、耐久性に優れる金属導体層3を表面に形成した樹脂成形品20を得ることができる。
【0038】
[第5の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをオレフィン系グラフトポリマー樹脂からなる厚さ50μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シートの上に厚さ18μmの回路パターンを形成した銅箔を熱プレスを行い図2に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は80%とする。ここで、織物2の構造は平織りとする。
【0039】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0040】
次に、金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるオレフィン系グラフトポリマー樹脂を射出成形により充鎮し、金型の型締めを行って、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図1に示す樹脂成形品20を形成する。
【0041】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、高い密着力を確保することができるが、銅箔表面にシワが一部発生した。
【0042】
[第6の構成例]
厚さ30μmのガラスクロスの織物シートをABS樹脂からなる厚さ50μmの2枚のシートで挟み、さらに樹脂製シート10の上に厚さ18μmの銅箔を熱プレスを行い図4に示す転写シート10を作製する。ガラスクロスは図5に示すようにガラス繊維を隙間を空けて織った織物シートであり、隙間部分5の面積の割合は9%とする。ここで、織物構造は平織りとする。
【0043】
金型キャビティおよびコアの材料は燒結金属からなるポーラスな材料を使用し、転写シート10をこの金型キャビティ内に配置する。転写シート10を配置後、真空ポンプによってキャビティ内を真空引きを行い、転写シート10を固定する。
【0044】
次に、金型キャビティ内に転写シート10と同一の樹脂であるABS樹脂を射出成形により充鎮し、転写シート10と射出成形樹脂層4を一体化した図1に示す樹脂成形品20を形成する。
【0045】
形成した樹脂成形品20について外観および密着強度評価を行う。また、一体成形品の耐久性評価として、高温試験、ヒートサイクル試験、耐湿試験後の外観および密着強度評価を行う。密着性評価はピール試験とする。各試験条件は、高温試験が80℃、1000時間、ヒートサイクル試験が−40℃〜80℃、各30分、500回、耐湿試験が60℃、95%Rh、1000時間とした。評価の結果は後掲の表1に示すとおりである。その結果、シワが無く外観に優れる樹脂成形品20を得ることができたが、耐久性試験後に膨れが一部発生した。
【0046】
【表1】

【0047】
以上の構成例より、剛性の高い織物2によって密着力を確保するためには、織物2の内部に樹脂層1となる隙間部分5が必要であることがわかる。隙間部分5の面積の割合が70%以上では織物2による補強効果が小さく剛性や耐熱性が悪くなる。また、隙間部分5の面積の割合が10%以下の場合、織物2の隙間部分5に樹脂層1が少ないために織物2内部で剥離し、密着強度が小さくなる。よって、隙間部分5の面積が10〜70%のときに、高い密着性、剛性、耐熱性を有する織物2を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】回路パターン付き転写シートと射出成形樹脂層を一体化した樹脂成形部品を示した図である。
【図2】回路パターン付き転写シートを示した図である。
【図3】金属導体層付き転写シートと射出成形樹脂層を一体化した樹脂成形部品を示した図である。
【図4】金属導体層付き転写シートを示した図である。
【図5】織物の形状を示した図である。
【符号の説明】
【0049】
1 樹脂層、2 織物、3 導体層、4 射出成形樹脂層、5 隙間部分、10 転写シート、20 樹脂成形品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム転写成形に用いる転写シートであって、
樹脂層と、
前記樹脂層中に埋め込まれ、所定材質の繊維を隙間を空けて織った織物と、
前記樹脂層の一の面に形成され、転写対象の所定の機能を有する機能層と、を備えた転写シート。
【請求項2】
前記織物は、前記隙間部分の面積の割合が10〜70%である請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
前記所定材質の織物は、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、樹脂製繊維のいずれかからなる請求項1または2記載の転写シート。
【請求項4】
前記織物は、前記樹脂層の厚み方向の中央部に位置する請求項1から3のいずれか記載の転写シート
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の転写シートと樹脂とを射出成形によって一体成形した樹脂成形品の製造方法であって、
前記射出成形用の金型を準備する工程と、
前記転写シートを前記金型内に配置する工程と、
前記金型内を真空吸引し、前記転写シートを前記金型内に固定する工程と、
前記金型内に前記樹脂を射出成形により充鎮する工程と、を備えた樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−246673(P2008−246673A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87022(P2007−87022)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】