転動成形型とそれを用いた筒状金具の製造方法,筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法
【課題】筒状金具の軸方向端面に対して新規なパターンの突起を形成することが出来る転動成形型と、それを用いた筒状金具の製造方法及び筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法を、提供すること。
【解決手段】筒状金具14の軸方向端面に押し付けられるテーパ状外周面30を備えており、テーパ状外周面30には傾斜方向成形溝32を複数形成されたセレーション加工部が設けられている。セレーション加工部の軸方向大径側にはセレーション加工部より大径の立上げ押え部40が設けられており、セレーション加工部の大径側端部における立上げ押え部40との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝44が形成されている。周方向成形溝44に対して傾斜方向成形溝32が接続されていると共に、立上げ押え部40の軸方向端面によって、筒状金具14の軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面42が形成されている。
【解決手段】筒状金具14の軸方向端面に押し付けられるテーパ状外周面30を備えており、テーパ状外周面30には傾斜方向成形溝32を複数形成されたセレーション加工部が設けられている。セレーション加工部の軸方向大径側にはセレーション加工部より大径の立上げ押え部40が設けられており、セレーション加工部の大径側端部における立上げ押え部40との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝44が形成されている。周方向成形溝44に対して傾斜方向成形溝32が接続されていると共に、立上げ押え部40の軸方向端面によって、筒状金具14の軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面42が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状金具の軸方向端面に滑止め突起を転造するために用いられる転動成形型と、それを用いた筒状金具の製造方法、更には、本発明方法に基づいて製造された筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状金具は、単体での構造部材等のほか、防振ブッシュの内筒金具のような部品等としても、広く用いられている。
【0003】
ところで、かかる筒状金具には、その軸方向端面に対して、位置決めや他部材への取付面における回転防止等の目的で、径方向に延びる滑止め突起を、全体として放射状に周方向で複数形成したものがある。例えば特開平5−237582号公報(特許文献1)や特開2004−230740公報(特許文献2)に記載の如きである。
【0004】
ところが、筒状金具の軸方向端面に滑止め突起を形成すると、この筒状金具の軸方向端面を他部材の取付面に押し付けた状態でも、隣り合う滑止め突起の間において、内筒金具の軸方向端面と防振連結される一方の部材との対向面間に隙間が発生し易い。そのために、この隙間を通じて雨水等が内筒金具の内周面に入り込んで錆び付きや腐食等の問題が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−237582号公報
【特許文献2】特開2004−230740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、滑止め突起による回転阻止機能を損なうことなく、かかる滑止め突起に起因する隙間を通じての雨水等の侵入を防止し得る新規なパターンの突起を筒状金具の軸方向端面に形成することが出来る、新規な転動成形型を提供することにある。
【0007】
また、本発明は、そのような本発明に従う構造の転動成形型を用いた筒状金具の新たな製造方法と、本発明方法に従って製造された筒状金具を利用した防振ブッシュの新たな製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具を製造するための転動成形型であって、前記筒状金具の前記軸方向端面に押し付けられる成形面としてテーパ状外周面を備えており、該成形面にはテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成されたセレーション加工部が設けられている一方、該セレーション加工部の軸方向大径側には該セレーション加工部より大径の立上げ押え部が設けられており、該セレーション加工部の大径側端部における該立上げ押え部との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝が形成されて、該周方向成形溝に対して複数の該傾斜方向成形溝の大径側端部がそれぞれ接続されていると共に、該立上げ押え部における該セレーション加工部側の軸方向端面によって、該筒状金具の該軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
第一の態様に記載された転動成形型を用いて、筒状金具の軸方向端面に塑性加工(転造)を施すことにより、筒状金具の軸方向端面に、セレーション加工部による滑止め突起が形成されると共に、その外周側に周方向で連続的に延びる環状止水突起が同時に形成される。この環状止水突起が、滑止め突起の外周側に形成されていることにより、筒状金具の軸方向端面を他部材の取付面に押し付けた状態で隣り合う滑止め突起の間に発生する隙間の外周側への開口が塞がれる。それ故、かかる隙間への雨水等の進入が防止されて、雨水等の進入に起因する筒状金具の腐食等の問題が回避されるのである。
【0010】
なお、本発明を完成するに至る過程において、筒状金具の外周縁部に転造によって環状止水突起を形成することを試みた段階では、転造時の圧力によって外周側にバリが生じ易いと共に、環状止水突起の突出高さが不安定で充分な寸法精度を得難いという大きな問題があった。本発明は、かかる問題の解決策を見出したことによって、完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明の転動成形型には外周押え面が設けられており、この外周押え面が転造加工時に筒状金具の軸方向端部の外周角部に対して押し付けられるようになっている。そして、外周押え面が筒状金具の端部の外周側への変形を阻止することによって、外周側にバリが突出するのを防止し、その分の肉が周方向成形溝内に入り込んで環状止水突起の外周部分を形成するようになっている。加えて、本発明の転動成形型では、各傾斜方向成形溝が周方向成形溝に接続されており、筒状金具の軸方向端面において滑止め突起と環状止水突起とが一体的に塑性加工で形成されるようになっている。その結果、環状止水突起の外周部分及び内周部分における突出高さが充分に確保されて、周方向成形溝に対応する形状の環状止水突起が全周に亘って高精度に形成されるのであり、かかる環状止水突起による目的とする止水効果を有効に得ることが出来るのである。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された転動成形型において、前記セレーション加工部を外周面に備えた第一の転動成形型と、前記立上げ押え部を備えた第二の転動成形型とが、互いに別体とされており、それら第一の転動成形型と第二の転動成形型とが一体的に又は独立して同一中心軸上で支持されているものである。
【0013】
第二の態様によれば、2つの成形型を組み合わせた構造とすることで、セレーション加工部と立上げ押え部を備えた転動成形型の製造が容易になる。加えて、第一,第二の転動成形型が同一中心軸上で支持されており、転動成形型を中心軸周りで回転させることによって、転造加工を問題なく実施できる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された転動成形型において、前記第一の転動成形型と前記第二の転動成形型との材質が互いに異なっているものである。
【0015】
第三の態様によれば、互いに要求特性が異なる第一の転動成形型と第二の転動成形型が、それぞれの要求特性を実現するために適した材質とされて、耐久性の向上や摩擦抵抗の低減、低コスト化等を有利に実現することが出来る。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記第一の転動成形型及び前記第二の転動成形型の少なくとも一方において、その成形面にコーティング処理が施されているものである。
【0017】
第四の態様によれば、成形面において摩擦係数を低減したり硬度を増すことにより、成形面の磨耗や打当たり等による変形を抑えて、筒状金具の高精度な加工と、転動成形型の耐久性向上が有利に実現される。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝における幅方向両側の壁内面が、被成形面である前記筒状金具の前記軸方向端面に向かって、次第に幅方向両側で拡幅する方向の傾斜面とされているものである。
【0019】
第五の態様によれば、筒状金具の軸方向端面において転動成形型を押し付けられた部分の肉が、周方向成形溝を挟んだ幅方向外側から周方向成形溝側に入り込み易くなって、環状止水突起がより効率的に成形される。更に、環状止水突起の断面形状が先端側に向かって狭幅となることから、環状止水突起を先端までより高精度に成形することが出来る。
【0020】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝における前記セレーション加工部側の壁内面の開口端縁部には、該セレーション加工部の前記テーパ状外周面との接続角部に対してアール面取り状の湾曲面が形成されているものである。
【0021】
第六の態様によれば、筒状金具の肉が、筒状金具の端面における周方向成形溝を外れた領域から周方向成形溝内により効果的に案内されて、目的とする環状止水突起を高精度且つ効率的に形成することが出来る。
【0022】
本発明の第七の態様は、前記第一〜第六の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝の底面が平坦面とされているものである。
【0023】
第七の態様によれば、環状止水突起をより高精度な突出高さで成形することが出来ると共に、環状止水突起の先端部強度の向上も図られ得る。特に本態様において、好適には周方向成形溝の底面が傾斜方向成形溝の底面と滑らかに連続し、より好適には同一平面で面一に連続する平坦面とされる。このような好ましい構成では、滑止め突起の先端面と環状止水突起の先端面が、同一平面上に位置する平坦面とされて、滑止効果と止水効果の両立が一層効果的に達成される。また、滑止め突起と環状止水突起が何れも先端に所定幅の平坦面を有することで強度が向上され、他部材との当接による損傷等の不具合発生が一層効果的に防止される。
【0024】
本発明の第八の態様は、筒状金具の製造方法であって、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された転動成形型を用い、該転動成形型における前記セレーション加工部の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の前記成形面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けると共に該転動成形型の前記立上げ押え部を該筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、該筒状金具の軸方向端面において、径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起と、外周縁部で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起とを、同時に形成することを特徴とする。
【0025】
第八の態様によれば、本発明に従う構造の転動成形型を用いることで、放射状をなす複数の滑止め突起と、外周縁部を周方向に延びる環状止水突起とを、軸方向端面に備えた筒状金具が、高精度に製造される。しかも、それら突起が、立上げ押え部によって効率的に突出形成されることから、転動成形型の筒状金具への当接力を抑えることが出来る。加えて、立上げ押え部を筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けることで、外周側にバリが突出するのを回避することも出来る。
【0026】
本発明の第九の態様は、第八の態様に記載された筒状金具の製造方法において、前記転動成形型による加工に先立って又は加工と同時に、前記筒状金具における軸方向端部の外周側角部と内周側角部の少なくとも一方に面取り加工を施すものである。
【0027】
第九の態様によれば、製造された筒状金具の他部材への当接による角部の損傷を回避することが出来ると共に、バリを防止して筒状金具の形状を安定させることが出来る。また、外周側角部に面取り加工を施すことにより、立上げ押え部を筒状金具における軸方向端部の外周側角部に対して安定して当接させることが出来て、外周側へのバリの形成が効果的に防止される。更に、転造前の段階で、筒状金具の軸方向端部にバリがある場合にも、面取り加工によってバリが取り除かれることから、周上で部分的に存在するバリの肉が環状止水突起の断面形状に影響するのを防いで、環状止水突起の断面形状を安定させることが出来る。一方、内周側角部に面取り加工を施すことにより、筒状金具に挿通されるボルトやロッドがバリに引っ掛かるのを回避できて、筒状金具の他部材への装着作業が容易になる。
【0028】
本発明の第十の態様は、防振ゴムブッシュの製造方法であって、第八又は第九の態様に記載された筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする。
【0029】
軸方向端面に滑止め突起と環状止水突起とを形成された筒状金具を有する防振ゴムブッシュでは、筒状金具の軸方向端面が防振ゴムブッシュによって防振連結される一方の部材に押し付けられて取り付けられることにより、防振連結される一方の部材に対する防振ゴムブッシュの回転が阻止されると共に、筒状金具と防振連結される一方の部材との間における雨水の浸入が阻止される。本態様の製造方法によれば、このような優れた効果を奏する防振ゴムブッシュが、転動成形型を用いた転動加工で滑止め突起と環状止水突起を同時に形成することによって少ない工程数で容易に形成される。
【発明の効果】
【0030】
本発明に従えば、回転阻止機能を発揮する滑止め突起と、隣り合う滑止め突起間の隙間を塞いで雨水等の侵入を防止する環状止水突起とを、筒状金具の軸方向端面に対して同時に且つ高精度に成形し得る、転動成形型が実現される。また、本発明方法に従うことにより、滑止め突起と環状止水突起とによって優れた回転阻止効果と止水効果を発揮する筒状金具を、安定した形状で容易に製造することが出来る。更に、滑止め突起と環状止水突起が形成された筒状金具を用いることにより、例えば自動車用のサスペンションブッシュ等に用いられる防振ブッシュを有利に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態としての筒状金具の縦断面図。
【図2】図1に示された筒状金具の側面図。
【図3】図1に示された筒状金具の要部を拡大して示す斜視図。
【図4】図1に示された筒状金具の一製造工程としての塑性加工を示す説明図。
【図5】図4に示された塑性加工で用いられる転動成形型を示す縦断面図であって、図6におけるV−V断面図。
【図6】図5に示された転動成形型の右側面図。
【図7】図5に示された転動成形型のホルダへの装着状態を示す側面図。
【図8】図5に示された転動成形型のホルダへの装着部分を抜き出して示す要部拡大図。
【図9】図7に示されたホルダに装着される内周切削刃を示す側面図。
【図10】図7に示されたホルダに装着される外周切削刃を示す側面図。
【図11】図1に示された筒状金具を用いて本発明方法に従って製造された防振ブッシュの一実施形態を示す縦断面図であって、図12におけるXI−XI断面図。
【図12】図11に示された防振ブッシュの左側面図。
【図13】図11に示された防振ブッシュの装着状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1〜3には、本発明方法に従って製造された筒状金具10が示されている。この筒状金具10は、円筒形状を有しており、その軸方向両端面に対して特定形状の突起が形成されている。なお、筒状金具10の軸方向中央部分には、膨らんだ大径部12がバルジ加工等で形成されているが、この大径部12は、後述する防振ブッシュに適用した場合に、目的とするばね特性を実現するためのものであり、本発明において必須のものでない。
【0034】
かかる筒状金具10を本発明方法に従って製造するに際しては、先ず加工素材としての円筒素管14を準備する。なお、この円筒素管14は、図4に示されており、例えば押出加工や引抜加工等の公知の管材製造方法によって得られた円筒金属管を適当な長さで切断することによって、製造することが出来る。なお、円筒素管14の材質は、目的とする筒状金具10に要求される特性に応じてステンレス等の適当な材質が選択される。また、この円筒素管14には、上述の大径部12の形成など、適当な形状加工が施されても良い。
【0035】
次いで、この円筒素管14に対して、その軸方向端面に対して塑性加工を施すことにより、図3に示されているように、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とを、形成する。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有しているのである。
【0036】
これらの突起16,18を形成するに際しては、図4に示されているように、特定の成形駒としての転動成形型22を用い、円筒素管14の軸方向端面20に対して塑性加工を施す。この転動成形型22は、図5,6に示されているように、全体として略環状とされており、互いに別体とされた第一の転動成形型24と第二の転動成形型26を組み合わせて形成されている。
【0037】
第一の転動成形型24は、全体として略円錐台形状を有しており、ハイス(高速度工具鋼)によって形成されていると共に、表面をチタン等でコーティング処理されて耐久性の向上と摩擦抵抗の低減が図られている。なお、第一の転動成形型24の材質は、加工対象である円筒素管14の材質や、形成する突起の形状や大きさ、加工速度等を考慮して、例えば炭素工具鋼,超硬合金なども適宜に採用され得る。
【0038】
第一の転動成形型24は、中心軸上に貫通する第一の支持孔28を有していると共に、そのテーパ状に傾斜した側面(外周面)が成形面の一部を構成するテーパ状外周面30とされている。このテーパ状外周面30には、複数の傾斜方向成形溝32が設けられている。傾斜方向成形溝32は、テーパ状外周面30のテーパ傾斜方向に向かって母線と平行に、テーパ状外周面30の小径側端部から大径側端部に亘って連続して延びており、且つ周方向で等間隔に位置している。なお、傾斜方向成形溝32がテーパ状外周面30の母線方向全長に亘って形成されており、テーパ状外周面30の全体がセレーション加工部とされている。
【0039】
転動成形型22のテーパ状外周面30に形成された傾斜方向成形溝32は、目的とする筒状金具10の軸方向端面20に設けられる複数の突起形状に対応した形状を有するものであり、その具体的形状は、目的とする筒状金具10の突起形状に応じて設計される。
【0040】
具体的には、傾斜方向成形溝32は、内周側端縁部近くから外周側端縁部近くまで、周方向に傾斜することなく径方向に直線的に延びている。また、各傾斜方向成形溝32は、何れも台形の溝断面形状で径方向に延びており、その断面の幅寸法が開口部側に行くに従って大きくなる拡開断面形状とされている。更に、この傾斜方向成形溝32は、周方向で相互に近接して複数形成されており、全体として第一の転動成形型24の中心軸を中心として放射線状に延びる多数の傾斜方向成形溝32が形成されている。即ち、第一の転動成形型24の周方向断面では、多数の傾斜方向成形溝32によって連続した鋸歯様の形状を呈している。
【0041】
更にまた、全ての傾斜方向成形溝32の形状及び大きさは同じとされており、全ての傾斜方向成形溝32の底面は、第一の転動成形型24の成形面と対応する1つの円錐面上に位置せしめられている。
【0042】
一方、第二の転動成形型26は、略一定の角丸矩形断面で周方向に延びる略円環形状を有しており、超硬合金によって形成されている。なお、第二の転動成形型26の材質は、第一の転動成形型24と同様に、加工対象である円筒素管14の材質や、形成する突起の形状や大きさ、加工速度等に応じて選択されて、例えばハイスや炭素工具鋼なども適宜に採用され得る。また、第一の転動成形型24の材質と第二の転動成形型26の材質は、互いに同一であっても良く、第一の転動成形型24と同様に、第二の転動成形型26の成形面にコーティング処理が施されていても良い。
【0043】
また、第二の転動成形型26の外径寸法は、第一の転動成形型24の大径側端部における外径寸法よりも大きくされている。また、第二の転動成形型26の径方向中央では、軸方向に貫通する第二の支持孔34が、第一の転動成形型24の第一の支持孔28と略同一直径で形成されている。更に、第二の転動成形型26の外周部分には、テーパ状の段差36が設けられており、段差36を挟んだ外周部分が内周部分よりも薄肉とされている。なお、段差36の傾斜は、第一の転動成形型24におけるテーパ状外周面30の傾斜に対応している。
【0044】
これら第一の転動成形型24の大径側端面が、第二の転動成形型26の軸方向一方の端面に重ね合わされて、第一の転動成形型24と第二の転動成形型26が同一中心軸上に配置される。更に、第一の転動成形型24の第一の支持孔28と第二の転動成形型26の第二の支持孔34に支軸38が挿通されることにより、第一の転動成形型24と第二の転動成形型26が相互に組み合わされて、転動成形型22が形成される。なお、第一,第二の転動成形型24,26は、互いに独立して回転するように組み合わされていても良いし、嵌合部を設けて一体的に回転するように組み合わされていても良い。
【0045】
このように第一の転動成形型24と第二の転動成形型26を組み合わせた転動成形型22では、第二の転動成形型26の外周部分が、全周に亘って第一の転動成形型24の大径側端部よりも外周側に突出している。そして、かかる第二の転動成形型26の外周突出部分が、立上げ押え部40とされている。また、立上げ押え部40の軸方向端面において、第一の転動成形型24を重ね合わされた側の面が、外周押え面42とされている。
【0046】
また、転動成形型22には、周方向成形溝44が形成されている。周方向成形溝44は、第一の転動成形型24の大径側端部と立上げ押え部40との間に形成されており、その幅方向両側の壁内面45が何れも傾斜面とされて、開口部側に向かって次第に拡幅する略一定の台形溝断面形状で全周に亘って延びている。この周方向成形溝44には、複数形成された傾斜方向成形溝32の大径側の端部がそれぞれ接続されている。また、周方向成形溝44における第一の転動成形型24側の壁内面45の開口端縁部には、第一の転動成形型24のテーパ状外周面30との接続角部に対してアール状の面取り加工が施されて、湾曲面46が形成されている。また、周方向成形溝44の底壁面は、第二の転動成形型26に設けられた段差36によって形成されており、一対の壁内面45,45が底壁側端部において幅方向に離隔している。更に、周方向成形溝44の底壁面は、凹凸のない平坦な湾曲面とされており、テーパ状外周面30と略平行に広がっていると共に、傾斜方向成形溝32の底壁面と滑らかに連続している。
【0047】
この転動成形型22は、図7に示されているように、ホルダ48によって支持される。ホルダ48は、全体として円形ブロック形状であって、逆向きの略円錐台形状を有する工具装着部50と、工具装着部50の大径側端面から突出する連結部52とを備えている。工具装着部50の外周面には、3つの独立した平坦部が設けられており、支持金具54と、内周面取用バイト56と、外周面取用バイト58とが、各平坦部に重ね合わされて固定されている。連結部52は、略円柱形状で外周面に複数の規制平面60を有しており、図示しない工作機械に差し入れられて固定されるようになっている。
【0048】
支持金具54は、図8に示されているように、金属製のプレートであって、その上部には厚さ方向に2つのボルト孔が貫通形成されている。また、支持金具54の下端には、転動成形型22に挿通された支軸38の先端が固着されるようになっており、転動成形型22が支持金具54によって支軸38回りで回転可能に支持されるようになっている。
【0049】
内周面取用バイト56は、図9に示されているように、刃部とシャンクが一体形成されたむくバイトであって、先端部分(図9中の下端部分)が先細となっていると共に、該先端部分の幅方向一端に直線的な切刃が設けられている。また、シャンク部分には、厚さ方向に貫通するボルト孔が2つ形成されている。なお、内周面取用バイト56の材質は、加工対象である円筒素管14の材質や加工速度等に応じて設定されるものであり、特に限定されないが、例えばハイスや超硬合金,炭素工具鋼等が採用される。また、内周面取用バイト56は、刃部とシャンクが別体とされた鑞付けバイトやクランプバイト等であっても良い。
【0050】
外周面取用バイト58は、図10に示されているように、シャンク62の先端部分に刃部としてのチップ64を鑞付けや機械的な固定によって取り付けた構造とされており、内周面取用バイト56と同様に先端部分(図10中の下端部分)が先細となっていると共に、その幅方向一端に直線的な切刃が設けられている。また、シャンク62には、厚さ方向に貫通するボルト孔が2つ形成されている。この外周面取用バイト58も内周面取用バイト56と同様に材質が限定されるものではないが、ハイスや超硬合金,炭素工具鋼等が好適に採用される。また、外周面取用バイト58としてむくバイトを用いることも出来る。
【0051】
そして、転動成形型22を装着された支持金具54と、内周面取用バイト56と、外周面取用バイト58とを、それぞれホルダ48にセットする。即ち、ホルダ48の工具装着部50に形成された複数の平坦部に対して、支持金具54及びバイト56,58を各別に重ね合わせてそれぞれボルト固定することにより、それら支持金具54及びバイト56,58を、転動成形型22とバイト56,58の刃部とがホルダ48の先端側(工具装着部50の小径側)に突出するように装着する。かかる取付状態において、転動成形型22と内周面取用バイト56と外周面取用バイト58は、周方向で相互に離隔して略等間隔に配設されている。なお、転動成形型22の小径側端部が内周側を向くと共に、内周面取用バイト56の切刃が外周側に、外周面取用バイト58の切刃が内周側にそれぞれ向くように、それら支持金具54及びバイト56,58をホルダ48にセットする。
【0052】
さらに、ホルダ48を工作機械に取り付けると共に、ワークとしての円筒素管14をワークベース等によって支持させる。円筒素管14は、図4に一点鎖線で示されているように、その中心軸66がホルダ48の中心軸と略一致しており、軸方向に離隔して対向するようにセットされると共に、中心軸66回りに回転可能に支持される。
【0053】
更にまた、転動成形型22の中心軸68と円筒素管14の中心軸66との交角が第一の転動成形型24における母線の傾斜角に対応する角度となるように、転動成形型22をホルダ48に傾斜支持させて、テーパ状とされた第一の転動成形型24のテーパ状外周面30を円筒素管14の軸方向端面20に対して略平行に正対させる。また、内周面取用バイト56の切先が円筒素管14の内周側に位置すると共に、外周面取用バイト58の切先が円筒素管14の外周側に位置するように、各バイト56,58をセットする。
【0054】
そして、ワークベース等で軸直角方向に固定支持された円筒素管14を、モータ等の駆動手段で回転させると共に、転動成形型22に向けて軸方向で接近方向に移動させて、円筒素管14の軸方向端面20を転動成形型22のテーパ状外周面30に押し付けて成形加工を行なう。即ち、円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って、支軸38によって位置固定に且つ回転可能に支持された転動成形型22は、円筒素管14の軸方向端面20に押し付けられることにより、かかる加工面となる円筒素管14の軸方向端面20を塑性変形させると共に、円筒素管14との接触抵抗により円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って円筒素管14もその中心軸回りで回転する。これら円筒素管14と転動成形型22との連れ回りによって、円筒素管14の軸方向端面20に対して、その全周に亘って、転動成形型22のテーパ状外周面30による塑性加工が施されて、テーパ状外周面30に形成された周方向成形溝44及び傾斜方向成形溝32に対応した突起16,18が同時に形成される。
【0055】
かかる塑性加工において、転動成形型22のテーパ状外周面30を円筒素管14の軸方向端面20に押し付けると同時に、立上げ押え部40の外周押え面42を円筒素管14における軸方向端面20の外周角部に対して外周側から押し付ける。転動成形型22のホルダ48への装着下、外周押え面42は、円筒素管14の中心軸66に対して傾斜して広がっており、転動成形型22と円筒素管14が軸方向に接近することによって、外周押え面42が円筒素管14における軸方向端面20の外周角部に押し付けられるようになっている。なお、テーパ状外周面30と、傾斜方向成形溝32の溝内面と、外周押え面42と、周方向成形溝44の溝内面とによって、円筒素管14の軸方向端面20に押し付けられる転動成形型22の成形面が構成されている。
【0056】
また、転動成形型22による塑性加工と同時に或いは塑性加工に先立って、円筒素管14の軸方向端部のエッジ部には、内周面取用バイト56及び外周面取用バイト58による面取り加工を施す。即ち、円筒素管14がバイト56,58に対して回転しながら軸方向で接近することによって、円筒素管14の角部が内周面取用バイト56及び外周面取用バイト58の切刃によって切削されて、円筒素管14の内周側及び外周側の両縁部に所定の傾斜面が形成される。これにより、円筒素管14の軸方向端部における内外周エッジ部への面取り加工が施される。
【0057】
面取り加工は、上述の如き面加工用バイトを用いた切削加工の他にも、転動駒等による塑性加工でテーパ面を成形することによっても実現される。また、面取り加工用の転動駒を特別に用いることなく、転動成形型22の立上げ押え部40を利用すると共に、転動成形型22の母線方向小径側端部において外周面上に突出して周方向に延びるテーパ加工用の環状成形突部を一体形成することにより、転動成形型22にテーパ加工機能を併せ持たせて、面取り加工と突起16,18の成形加工を同時に行うことも出来るが、転動成形型22とは別にテーパ加工用の転動駒や面加工用バイトを設けることが望ましい。
【0058】
なお、円筒素管14の軸方向両側に、転動成形型22とバイト56,58を配置して、円筒素管14の軸方向両端面に同時に塑性加工を施すことも可能であり、作業工程数の削減が実現される。また、上述の円筒素管14の中心軸66回りの回転駆動に代えて、円筒素管14を非回転状態に支持させつつ、ホルダ48を中心軸66回りに回転させることにより、転動成形型22をその中心軸68回りでの自転状の回転に加えて円筒素管14の中心軸66回りに公転状に転動変位させて、目的とする塑性加工を行なうことも可能である。
【0059】
このような転動成形型22を用いた塑性変形によって滑止め突起16及び環状止水突起18を備えた筒状金具10を形成すれば、1つの転動成形型22によって複数の滑止め突起16と環状止水突起18とを同時に形成することが出来る。それ故、円筒素管14に対して突起16,18を形成するための設備が簡単且つ少なく抑えられると共に、突起16,18を形成する加工工程が少なく済んで、筒状金具10を容易に製造することが出来る。
【0060】
しかも、本発明方法では、円筒素管14の軸方向端面20に転動成形型22による塑性加工を施す際に、立上げ押え部40を円筒素管14の軸方向端面20の外周角部に押し付けるようになっている。これにより、転造時の圧力によって押し出される円筒素管14の肉が、外周側に突出してバリになることなく、外周押え面42よりも内周側において軸方向外方に盛り上げられて、環状止水突起18が効率良く突出形成される。
【0061】
加えて、周方向成形溝44の第一の転動成形型24側の開口縁部に湾曲面46が形成されていることにより、円筒素管14にテーパ状外周面30を押し付けることによって移動する円筒素管14の肉が、湾曲面46に沿って周方向成形溝44側に案内される。その結果、環状止水突起18がより効率的に突出形成されて、目的とする形状(突出高さ)の環状止水突起18を精度良く成形することが出来る。
【0062】
また、転動成形型22が、テーパ状外周面30を備えた第一の転動成形型24と、立上げ押え部40を備えた第二の転動成形型26とを、組み合わせた分割構造とされている。それら第一の転動成形型24と第二の転動成形型26は、何れも製造し易い簡単な形状とされていることから、転動成形型22が一体で形成されている場合に比べて、製造が容易である。しかも、第一の転動成形型24の材質と第二の転動成形型26の材質を簡単に異ならせることが出来て、テーパ状外周面30の要求特性と立上げ押え部40の要求特性が異なる場合にも、高度に対応することが可能となる。更に、第一,第二の転動成形型24,26の何れか一方のみが損傷した場合等には、損傷した側だけを交換することで再び塑性加工を行うことが出来る。
【0063】
上述の転動成形型22による塑性加工を円筒素管14に施すことによって得られた、目的とする筒状金具10には、図1〜3に示されているように、その軸方向端面20に対して、転動成形型22の周方向成形溝44と傾斜方向成形溝32とに対応して、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とが、形成されている。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有している。
【0064】
特に滑止め突起16は、筒状金具10の軸方向端面20において、内周側端縁部近くから外周側端縁部近くまで、周方向に傾斜せずに径方向に直線的に延びている。なお、滑止め突起16の長さ方向(筒状金具10の軸方向端面20の径方向)の両端面は、それぞれ、山裾状に広がる傾斜面とされており、他部材の打当りや干渉に伴う滑止め突起16の長さ方向端部の欠損や変形の防止が図られている。
【0065】
また、滑止め突起16は、台形の断面形状で径方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。更に、この滑止め突起16は、周方向で相互に近接して複数形成されており、全体として筒状金具10の中心軸を中心として放射線状に延びる多数の滑止め突起16が形成されている。即ち、筒状金具10の周方向断面では、多数の滑止め突起16によって連続した鋸歯様の形状を呈している。
【0066】
更にまた、全ての滑止め突起16の形状及び大きさは同じとされており、全ての滑止め突起16の突出先端面は、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16の突出先端部が当接するようになっている。尤も、滑止め突起16の突出先端面全体が一つの平面上にあることは必須ではなく、例えば、全ての滑止め突起16の突出先端面が、外周側に向かって軸方向外側に傾斜するテーパ面上に位置せしめられていても良い。
【0067】
一方、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20において、径方向外周縁部を周方向に連続して延びる円環形状を有している。なお、環状止水突起18も、滑止め突起16と同様に、台形の断面形状で周方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。
【0068】
また、環状止水突起18は、周方向の全長に亘って一定の断面形状で延びており、環状止水突起18の突出先端面は、全長に亘って、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。しかも、この環状止水突起18の突出先端面は、上述の滑止め突起16の突出先端面が位置する平面と同じ平面上に位置するようにされている。要するに、複数の滑止め突起16と環状止水突起18は、全ての突出先端面が同一平面上に設定されている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16だけでなく環状止水突起18の突出先端部も押し付けられるようになっている。
【0069】
さらに、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20の径方向外周縁部に形成されており、全ての滑止め突起16が、外周縁部でこの環状止水突起18と繋がっている。これら各交差点でも、環状止水突起18の突出先端面は周方向に連続しており、これにより、周方向に閉じた円環状面をもって、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。また、各滑止め突起16は、何れも、環状止水突起18との交差点から、環状止水突起18の内周側に延び出しており、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。
【0070】
さらに、筒状金具10の軸方向端面20において周方向に隣り合う滑止め突起16,16間には、それぞれ、径方向に延びる溝状凹部69が存在しているが、この溝状凹部69の長さ方向外周端部を周方向に横切って環状止水突起18が形成されている。この環状止水突起18は周方向の全周に亘って連続していることから、全ての溝状凹部69は、外周縁部において、環状止水突起18で塞き止められるようにして消失されている。
【0071】
従って、上述の如き滑止め突起16と環状止水突起18を併せ備えた軸方向端面20を有する筒状金具10は、他部材への装着に際して軸方向端面20を他部材の取付面に押し付けて装着することにより、筒状金具10の他部材に対する中心軸回りでの相対変位が効果的に防止されると共に、筒状金具10の軸方向端面20と他部材の取付面との隙間を通じての筒状金具10の内周面への雨水等の侵入も効果的に防止されるのである。なお、これらの技術的効果を理解し易くするために、上述の筒状金具10を用いた製品の一例として防振ゴムブッシュを示し、この防振ゴムブッシュについて、本発明の作用効果を具体的に説明する。
【0072】
すなわち、図11,12には、前述の筒状金具10を用いた製品の一実施形態としての防振ゴムブッシュ70が示されている。この防振ゴムブッシュ70は、自動車のサスペンション機構を構成するサスペンションアームの車両ボデー側又は車輪側への取付部位に装着されて、路面振動の車両ボデー側への伝達軽減等を図るものである。
【0073】
より詳細には、防振ゴムブッシュ70は、前述の筒状金具10によって構成された内筒金具72を備えており、この内筒金具72が防振ゴムブッシュ70の中心軸上で軸方向に貫通して配設されている。また、内筒金具72の外周面には、本体ゴム弾性体74が固着されている。本体ゴム弾性体74は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、その内周面が内筒金具72の外周面に固着されている。更に、本体ゴム弾性体74の外周面には、円筒形状の外筒金具76が固着されている。外筒金具76は、内筒金具72よりも薄肉で軸方向長さが短くされており、内筒金具72の軸方向中央部分で内筒金具72から径方向外方に離隔して内筒金具72と同一中心軸上に配設されている。このような防振ゴムブッシュ70は、例えば内外筒金具72,76の存在下で本体ゴム弾性体74を成形及び加硫することにより一体加硫成形品として製造される。
【0074】
なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体74に対して、径方向中間部分を軸方向に貫通して延びる一対のすぐり部78,78が形成されている。これら一対のすぐり部78,78は、径方向一方向で対向位置して、それぞれ、内外筒金具72,76間を周方向に円弧状に1/4周弱の長さで延びており、一対のすぐり部78,78の対向方向とそれに直交する径方向とのばね比の調節等のチューニングがされている。
【0075】
そして、防振ゴムブッシュ70は、図13に示されているように、サスペンションアーム80の車両ボデー側部材82に対する取付部位に装着される。かかる装着に際しては、先ず、サスペンションアーム80の一方の端部に形成された円筒形状のアームアイ84の装着孔86に対して、防振ゴムブッシュ70の外筒金具76を圧入固定する。その後、サスペンションアーム80に装着された防振ゴムブッシュ70を、他部材としての車両ボデー側部材82に形成された一対の取付部88,88の対向面間に嵌め入れる。そして、一対の取付部88,88に形成された挿通孔90,90に対して、内筒金具72の内孔92を位置合わせして、取付ボルト94を一方の取付部88の挿通孔90から挿し入れ、内筒金具72の内孔92に挿通させて、他方の取付部88の挿通孔90から外方に突出させる。この突出させた取付ボルト94の先端ねじ部96に対して締付ナット98を螺着し、締め付けることによって内筒金具72の軸方向両端面を一対の取付部88,88の取付面としての各対向面に押し付けて固定する。
【0076】
このような防振ゴムブッシュ70の車両サスペンション機構への装着状態下では、目的とする防振効果が安定して発揮されるように、本体ゴム弾性体74における一対のすぐり部78,78を車両前後方向等の特定方向に位置決めすることが必要となる。この周方向の位置決めが、内筒金具72の軸方向両端面20,20に突設された前述の滑止め突起16によって実現される。即ち、滑止め突起16が、取付ボルト94への締付ナット98の締付力に基づいて、取付部88に押し付けられることでくい込むことにより、取付部88に対する内筒金具72の周方向での相対回転変位が阻止されるようになっているのである。
【0077】
しかも、内筒金具72の軸方向端面20には、滑止め突起16に加えて環状止水突起18が形成されていることから、滑止め突起16によって発揮される内筒金具72の取付部88に対する回転阻止機能を充分に確保しつつ、内筒金具72と取付部88との間の隙間を通じての雨水等の内筒金具72の内孔92への侵入も効果的に防止され得るのである。
【0078】
すなわち、上述の如き構造とされた防振ゴムブッシュ70では、図13に示されている如き装着状態下において、車両ボデー側部材82の取付部88と内筒金具72の軸方向端面20との間で、周方向に隣り合う滑止め突起16,16間の隙間(溝状凹部69)の外周側開口部から、たとえ雨水等が侵入した場合でも、環状止水突起18で塞き止められる。それ故、雨水等が内筒金具72の軸方向端面20の内周縁部まで至ることがなく、内筒金具72の内孔92にまで入り込むことがない。
【0079】
しかも、環状止水突起18の突出先端が、転動成形型22における周方向成形溝44の底壁面(段差36)によって、周方向環状に延びる平坦面に成形されていることから、取付部88に対して安定して当接(食込み)して、目的とする止水効果が安定して発揮される。加えて、転動成形型22の立上げ押え部40によって、環状止水突起18が略一定の断面形状で高精度に成形されて、止水機能の不良が全周に亘って防止される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態の具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、転動成形型22による塑性加工は、筒状金具10の軸方向一方の端面だけに施されていても良い。即ち、筒状金具10は、その軸方向を鉛直方向に向けて装着されたり、軸方向の片側にシールゴムが装着されたり、さまざまな装着態様があり、筒状金具10の軸方向端面における止水機能の要求が軸方向一方の側だけにある場合には、筒状金具10における軸方向一方の側だけに環状止水突起18を形成すれば良い。また、滑止め突起16も同様に、筒状金具10の軸方向一方の端面だけが取付部材等に押し当てられて装着される場合や、軸方向一方の端面だけで充分な回転阻止機能が発揮される場合などは、当該軸方向一方の端面だけに形成されていれば良い。
【0081】
また、傾斜方向成形溝32は、何れも、径方向に直線的に延びている必要はない。例えば径方向線に対して傾斜していたり、傾斜且つ湾曲して延びるらせん状等の態様でも良い。傾斜方向成形溝32を周方向一方に向かってらせん状に湾曲させれば、それによって形成される滑止め突起16において特定の回転方向への回転阻止力の向上効果も期待できる。
【0082】
さらに、複数の周方向成形溝44が形成されることにより、要求される止水能力や押し付けられる相手側部材の性状等に応じて、環状止水突起18が径方向に離隔して複数形成されていても良い。
【0083】
更にまた、傾斜方向成形溝32と周方向成形溝44の深さ寸法は必ずしも同じでなくても良く、それら溝32,44を利用して形成される滑止め突起16と環状止水突起18の各突出先端面が筒状金具10の軸直角方向に広がる同一平面上に位置していなくても良い。例えば、滑止め突起16よりも環状止水突起18の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を滑止め突起16よりも環状止水突起18において大きくして、より高度な止水効果を一層安定して得ることが可能となる。一方、環状止水突起18よりも滑止め突起16の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を環状止水突起18よりも滑止め突起16において大きくして、より大きな回転阻止力を設定することが可能となる。なお、要求される回転阻止力や他部材の性状等を考慮して、滑止め突起16の幾つかにおいて突出高さや形状を異ならせたり、一つの滑止め突起16の突出高さや形状を長さ方向で変化させたりして調節することも可能である。
【0084】
また、転動成形型22は、互いに独立した第一,第二の転動成形型24,26を組み合わせた構造に限定されるものではなく、セレーション加工部と立上げ押え部を何れも備えた一体成形品によって形成されていても良い。一方、3つ以上の部品によって転動成形型が形成されていても良い。
【0085】
さらに、テーパ状外周面30の全体が傾斜方向成形溝32を備えたセレーション加工部とされている必要はなく、テーパ状外周面30の母線方向で部分的にセレーション加工部を設けることも可能である。具体的には、例えば、傾斜方向成形溝32がテーパ状外周面30の小径側端部までは至らない領域に形成されて、小径側端部を外れた領域がセレーション加工部となっていても良い。
【0086】
更にまた、転動成形型22における段差36は省略可能であり、環状止水突起の突出先端を尖ったままにしても良いし、環状止水突起の転造後に先端部分を平坦に加工しても良い。
【符号の説明】
【0087】
10:筒状金具、16:滑止め突起、18:環状止水突起、22:転動成形型、24:第一の転動成形型、26:第二の転動成形型、30:テーパ状外周面、32:傾斜方向成形溝、40:立上げ押え部、42:外周押え面、44:周方向成形溝、70:防振ゴムブッシュ、74:本体ゴム弾性体
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状金具の軸方向端面に滑止め突起を転造するために用いられる転動成形型と、それを用いた筒状金具の製造方法、更には、本発明方法に基づいて製造された筒状金具を用いた防振ゴムブッシュの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状金具は、単体での構造部材等のほか、防振ブッシュの内筒金具のような部品等としても、広く用いられている。
【0003】
ところで、かかる筒状金具には、その軸方向端面に対して、位置決めや他部材への取付面における回転防止等の目的で、径方向に延びる滑止め突起を、全体として放射状に周方向で複数形成したものがある。例えば特開平5−237582号公報(特許文献1)や特開2004−230740公報(特許文献2)に記載の如きである。
【0004】
ところが、筒状金具の軸方向端面に滑止め突起を形成すると、この筒状金具の軸方向端面を他部材の取付面に押し付けた状態でも、隣り合う滑止め突起の間において、内筒金具の軸方向端面と防振連結される一方の部材との対向面間に隙間が発生し易い。そのために、この隙間を通じて雨水等が内筒金具の内周面に入り込んで錆び付きや腐食等の問題が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−237582号公報
【特許文献2】特開2004−230740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、滑止め突起による回転阻止機能を損なうことなく、かかる滑止め突起に起因する隙間を通じての雨水等の侵入を防止し得る新規なパターンの突起を筒状金具の軸方向端面に形成することが出来る、新規な転動成形型を提供することにある。
【0007】
また、本発明は、そのような本発明に従う構造の転動成形型を用いた筒状金具の新たな製造方法と、本発明方法に従って製造された筒状金具を利用した防振ブッシュの新たな製造方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具を製造するための転動成形型であって、前記筒状金具の前記軸方向端面に押し付けられる成形面としてテーパ状外周面を備えており、該成形面にはテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成されたセレーション加工部が設けられている一方、該セレーション加工部の軸方向大径側には該セレーション加工部より大径の立上げ押え部が設けられており、該セレーション加工部の大径側端部における該立上げ押え部との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝が形成されて、該周方向成形溝に対して複数の該傾斜方向成形溝の大径側端部がそれぞれ接続されていると共に、該立上げ押え部における該セレーション加工部側の軸方向端面によって、該筒状金具の該軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
第一の態様に記載された転動成形型を用いて、筒状金具の軸方向端面に塑性加工(転造)を施すことにより、筒状金具の軸方向端面に、セレーション加工部による滑止め突起が形成されると共に、その外周側に周方向で連続的に延びる環状止水突起が同時に形成される。この環状止水突起が、滑止め突起の外周側に形成されていることにより、筒状金具の軸方向端面を他部材の取付面に押し付けた状態で隣り合う滑止め突起の間に発生する隙間の外周側への開口が塞がれる。それ故、かかる隙間への雨水等の進入が防止されて、雨水等の進入に起因する筒状金具の腐食等の問題が回避されるのである。
【0010】
なお、本発明を完成するに至る過程において、筒状金具の外周縁部に転造によって環状止水突起を形成することを試みた段階では、転造時の圧力によって外周側にバリが生じ易いと共に、環状止水突起の突出高さが不安定で充分な寸法精度を得難いという大きな問題があった。本発明は、かかる問題の解決策を見出したことによって、完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明の転動成形型には外周押え面が設けられており、この外周押え面が転造加工時に筒状金具の軸方向端部の外周角部に対して押し付けられるようになっている。そして、外周押え面が筒状金具の端部の外周側への変形を阻止することによって、外周側にバリが突出するのを防止し、その分の肉が周方向成形溝内に入り込んで環状止水突起の外周部分を形成するようになっている。加えて、本発明の転動成形型では、各傾斜方向成形溝が周方向成形溝に接続されており、筒状金具の軸方向端面において滑止め突起と環状止水突起とが一体的に塑性加工で形成されるようになっている。その結果、環状止水突起の外周部分及び内周部分における突出高さが充分に確保されて、周方向成形溝に対応する形状の環状止水突起が全周に亘って高精度に形成されるのであり、かかる環状止水突起による目的とする止水効果を有効に得ることが出来るのである。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された転動成形型において、前記セレーション加工部を外周面に備えた第一の転動成形型と、前記立上げ押え部を備えた第二の転動成形型とが、互いに別体とされており、それら第一の転動成形型と第二の転動成形型とが一体的に又は独立して同一中心軸上で支持されているものである。
【0013】
第二の態様によれば、2つの成形型を組み合わせた構造とすることで、セレーション加工部と立上げ押え部を備えた転動成形型の製造が容易になる。加えて、第一,第二の転動成形型が同一中心軸上で支持されており、転動成形型を中心軸周りで回転させることによって、転造加工を問題なく実施できる。
【0014】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された転動成形型において、前記第一の転動成形型と前記第二の転動成形型との材質が互いに異なっているものである。
【0015】
第三の態様によれば、互いに要求特性が異なる第一の転動成形型と第二の転動成形型が、それぞれの要求特性を実現するために適した材質とされて、耐久性の向上や摩擦抵抗の低減、低コスト化等を有利に実現することが出来る。
【0016】
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記第一の転動成形型及び前記第二の転動成形型の少なくとも一方において、その成形面にコーティング処理が施されているものである。
【0017】
第四の態様によれば、成形面において摩擦係数を低減したり硬度を増すことにより、成形面の磨耗や打当たり等による変形を抑えて、筒状金具の高精度な加工と、転動成形型の耐久性向上が有利に実現される。
【0018】
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝における幅方向両側の壁内面が、被成形面である前記筒状金具の前記軸方向端面に向かって、次第に幅方向両側で拡幅する方向の傾斜面とされているものである。
【0019】
第五の態様によれば、筒状金具の軸方向端面において転動成形型を押し付けられた部分の肉が、周方向成形溝を挟んだ幅方向外側から周方向成形溝側に入り込み易くなって、環状止水突起がより効率的に成形される。更に、環状止水突起の断面形状が先端側に向かって狭幅となることから、環状止水突起を先端までより高精度に成形することが出来る。
【0020】
本発明の第六の態様は、前記第五の態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝における前記セレーション加工部側の壁内面の開口端縁部には、該セレーション加工部の前記テーパ状外周面との接続角部に対してアール面取り状の湾曲面が形成されているものである。
【0021】
第六の態様によれば、筒状金具の肉が、筒状金具の端面における周方向成形溝を外れた領域から周方向成形溝内により効果的に案内されて、目的とする環状止水突起を高精度且つ効率的に形成することが出来る。
【0022】
本発明の第七の態様は、前記第一〜第六の何れか1つの態様に記載された転動成形型において、前記周方向成形溝の底面が平坦面とされているものである。
【0023】
第七の態様によれば、環状止水突起をより高精度な突出高さで成形することが出来ると共に、環状止水突起の先端部強度の向上も図られ得る。特に本態様において、好適には周方向成形溝の底面が傾斜方向成形溝の底面と滑らかに連続し、より好適には同一平面で面一に連続する平坦面とされる。このような好ましい構成では、滑止め突起の先端面と環状止水突起の先端面が、同一平面上に位置する平坦面とされて、滑止効果と止水効果の両立が一層効果的に達成される。また、滑止め突起と環状止水突起が何れも先端に所定幅の平坦面を有することで強度が向上され、他部材との当接による損傷等の不具合発生が一層効果的に防止される。
【0024】
本発明の第八の態様は、筒状金具の製造方法であって、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された転動成形型を用い、該転動成形型における前記セレーション加工部の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の前記成形面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けると共に該転動成形型の前記立上げ押え部を該筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、該筒状金具の軸方向端面において、径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起と、外周縁部で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起とを、同時に形成することを特徴とする。
【0025】
第八の態様によれば、本発明に従う構造の転動成形型を用いることで、放射状をなす複数の滑止め突起と、外周縁部を周方向に延びる環状止水突起とを、軸方向端面に備えた筒状金具が、高精度に製造される。しかも、それら突起が、立上げ押え部によって効率的に突出形成されることから、転動成形型の筒状金具への当接力を抑えることが出来る。加えて、立上げ押え部を筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けることで、外周側にバリが突出するのを回避することも出来る。
【0026】
本発明の第九の態様は、第八の態様に記載された筒状金具の製造方法において、前記転動成形型による加工に先立って又は加工と同時に、前記筒状金具における軸方向端部の外周側角部と内周側角部の少なくとも一方に面取り加工を施すものである。
【0027】
第九の態様によれば、製造された筒状金具の他部材への当接による角部の損傷を回避することが出来ると共に、バリを防止して筒状金具の形状を安定させることが出来る。また、外周側角部に面取り加工を施すことにより、立上げ押え部を筒状金具における軸方向端部の外周側角部に対して安定して当接させることが出来て、外周側へのバリの形成が効果的に防止される。更に、転造前の段階で、筒状金具の軸方向端部にバリがある場合にも、面取り加工によってバリが取り除かれることから、周上で部分的に存在するバリの肉が環状止水突起の断面形状に影響するのを防いで、環状止水突起の断面形状を安定させることが出来る。一方、内周側角部に面取り加工を施すことにより、筒状金具に挿通されるボルトやロッドがバリに引っ掛かるのを回避できて、筒状金具の他部材への装着作業が容易になる。
【0028】
本発明の第十の態様は、防振ゴムブッシュの製造方法であって、第八又は第九の態様に記載された筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする。
【0029】
軸方向端面に滑止め突起と環状止水突起とを形成された筒状金具を有する防振ゴムブッシュでは、筒状金具の軸方向端面が防振ゴムブッシュによって防振連結される一方の部材に押し付けられて取り付けられることにより、防振連結される一方の部材に対する防振ゴムブッシュの回転が阻止されると共に、筒状金具と防振連結される一方の部材との間における雨水の浸入が阻止される。本態様の製造方法によれば、このような優れた効果を奏する防振ゴムブッシュが、転動成形型を用いた転動加工で滑止め突起と環状止水突起を同時に形成することによって少ない工程数で容易に形成される。
【発明の効果】
【0030】
本発明に従えば、回転阻止機能を発揮する滑止め突起と、隣り合う滑止め突起間の隙間を塞いで雨水等の侵入を防止する環状止水突起とを、筒状金具の軸方向端面に対して同時に且つ高精度に成形し得る、転動成形型が実現される。また、本発明方法に従うことにより、滑止め突起と環状止水突起とによって優れた回転阻止効果と止水効果を発揮する筒状金具を、安定した形状で容易に製造することが出来る。更に、滑止め突起と環状止水突起が形成された筒状金具を用いることにより、例えば自動車用のサスペンションブッシュ等に用いられる防振ブッシュを有利に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態としての筒状金具の縦断面図。
【図2】図1に示された筒状金具の側面図。
【図3】図1に示された筒状金具の要部を拡大して示す斜視図。
【図4】図1に示された筒状金具の一製造工程としての塑性加工を示す説明図。
【図5】図4に示された塑性加工で用いられる転動成形型を示す縦断面図であって、図6におけるV−V断面図。
【図6】図5に示された転動成形型の右側面図。
【図7】図5に示された転動成形型のホルダへの装着状態を示す側面図。
【図8】図5に示された転動成形型のホルダへの装着部分を抜き出して示す要部拡大図。
【図9】図7に示されたホルダに装着される内周切削刃を示す側面図。
【図10】図7に示されたホルダに装着される外周切削刃を示す側面図。
【図11】図1に示された筒状金具を用いて本発明方法に従って製造された防振ブッシュの一実施形態を示す縦断面図であって、図12におけるXI−XI断面図。
【図12】図11に示された防振ブッシュの左側面図。
【図13】図11に示された防振ブッシュの装着状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1〜3には、本発明方法に従って製造された筒状金具10が示されている。この筒状金具10は、円筒形状を有しており、その軸方向両端面に対して特定形状の突起が形成されている。なお、筒状金具10の軸方向中央部分には、膨らんだ大径部12がバルジ加工等で形成されているが、この大径部12は、後述する防振ブッシュに適用した場合に、目的とするばね特性を実現するためのものであり、本発明において必須のものでない。
【0034】
かかる筒状金具10を本発明方法に従って製造するに際しては、先ず加工素材としての円筒素管14を準備する。なお、この円筒素管14は、図4に示されており、例えば押出加工や引抜加工等の公知の管材製造方法によって得られた円筒金属管を適当な長さで切断することによって、製造することが出来る。なお、円筒素管14の材質は、目的とする筒状金具10に要求される特性に応じてステンレス等の適当な材質が選択される。また、この円筒素管14には、上述の大径部12の形成など、適当な形状加工が施されても良い。
【0035】
次いで、この円筒素管14に対して、その軸方向端面に対して塑性加工を施すことにより、図3に示されているように、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とを、形成する。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有しているのである。
【0036】
これらの突起16,18を形成するに際しては、図4に示されているように、特定の成形駒としての転動成形型22を用い、円筒素管14の軸方向端面20に対して塑性加工を施す。この転動成形型22は、図5,6に示されているように、全体として略環状とされており、互いに別体とされた第一の転動成形型24と第二の転動成形型26を組み合わせて形成されている。
【0037】
第一の転動成形型24は、全体として略円錐台形状を有しており、ハイス(高速度工具鋼)によって形成されていると共に、表面をチタン等でコーティング処理されて耐久性の向上と摩擦抵抗の低減が図られている。なお、第一の転動成形型24の材質は、加工対象である円筒素管14の材質や、形成する突起の形状や大きさ、加工速度等を考慮して、例えば炭素工具鋼,超硬合金なども適宜に採用され得る。
【0038】
第一の転動成形型24は、中心軸上に貫通する第一の支持孔28を有していると共に、そのテーパ状に傾斜した側面(外周面)が成形面の一部を構成するテーパ状外周面30とされている。このテーパ状外周面30には、複数の傾斜方向成形溝32が設けられている。傾斜方向成形溝32は、テーパ状外周面30のテーパ傾斜方向に向かって母線と平行に、テーパ状外周面30の小径側端部から大径側端部に亘って連続して延びており、且つ周方向で等間隔に位置している。なお、傾斜方向成形溝32がテーパ状外周面30の母線方向全長に亘って形成されており、テーパ状外周面30の全体がセレーション加工部とされている。
【0039】
転動成形型22のテーパ状外周面30に形成された傾斜方向成形溝32は、目的とする筒状金具10の軸方向端面20に設けられる複数の突起形状に対応した形状を有するものであり、その具体的形状は、目的とする筒状金具10の突起形状に応じて設計される。
【0040】
具体的には、傾斜方向成形溝32は、内周側端縁部近くから外周側端縁部近くまで、周方向に傾斜することなく径方向に直線的に延びている。また、各傾斜方向成形溝32は、何れも台形の溝断面形状で径方向に延びており、その断面の幅寸法が開口部側に行くに従って大きくなる拡開断面形状とされている。更に、この傾斜方向成形溝32は、周方向で相互に近接して複数形成されており、全体として第一の転動成形型24の中心軸を中心として放射線状に延びる多数の傾斜方向成形溝32が形成されている。即ち、第一の転動成形型24の周方向断面では、多数の傾斜方向成形溝32によって連続した鋸歯様の形状を呈している。
【0041】
更にまた、全ての傾斜方向成形溝32の形状及び大きさは同じとされており、全ての傾斜方向成形溝32の底面は、第一の転動成形型24の成形面と対応する1つの円錐面上に位置せしめられている。
【0042】
一方、第二の転動成形型26は、略一定の角丸矩形断面で周方向に延びる略円環形状を有しており、超硬合金によって形成されている。なお、第二の転動成形型26の材質は、第一の転動成形型24と同様に、加工対象である円筒素管14の材質や、形成する突起の形状や大きさ、加工速度等に応じて選択されて、例えばハイスや炭素工具鋼なども適宜に採用され得る。また、第一の転動成形型24の材質と第二の転動成形型26の材質は、互いに同一であっても良く、第一の転動成形型24と同様に、第二の転動成形型26の成形面にコーティング処理が施されていても良い。
【0043】
また、第二の転動成形型26の外径寸法は、第一の転動成形型24の大径側端部における外径寸法よりも大きくされている。また、第二の転動成形型26の径方向中央では、軸方向に貫通する第二の支持孔34が、第一の転動成形型24の第一の支持孔28と略同一直径で形成されている。更に、第二の転動成形型26の外周部分には、テーパ状の段差36が設けられており、段差36を挟んだ外周部分が内周部分よりも薄肉とされている。なお、段差36の傾斜は、第一の転動成形型24におけるテーパ状外周面30の傾斜に対応している。
【0044】
これら第一の転動成形型24の大径側端面が、第二の転動成形型26の軸方向一方の端面に重ね合わされて、第一の転動成形型24と第二の転動成形型26が同一中心軸上に配置される。更に、第一の転動成形型24の第一の支持孔28と第二の転動成形型26の第二の支持孔34に支軸38が挿通されることにより、第一の転動成形型24と第二の転動成形型26が相互に組み合わされて、転動成形型22が形成される。なお、第一,第二の転動成形型24,26は、互いに独立して回転するように組み合わされていても良いし、嵌合部を設けて一体的に回転するように組み合わされていても良い。
【0045】
このように第一の転動成形型24と第二の転動成形型26を組み合わせた転動成形型22では、第二の転動成形型26の外周部分が、全周に亘って第一の転動成形型24の大径側端部よりも外周側に突出している。そして、かかる第二の転動成形型26の外周突出部分が、立上げ押え部40とされている。また、立上げ押え部40の軸方向端面において、第一の転動成形型24を重ね合わされた側の面が、外周押え面42とされている。
【0046】
また、転動成形型22には、周方向成形溝44が形成されている。周方向成形溝44は、第一の転動成形型24の大径側端部と立上げ押え部40との間に形成されており、その幅方向両側の壁内面45が何れも傾斜面とされて、開口部側に向かって次第に拡幅する略一定の台形溝断面形状で全周に亘って延びている。この周方向成形溝44には、複数形成された傾斜方向成形溝32の大径側の端部がそれぞれ接続されている。また、周方向成形溝44における第一の転動成形型24側の壁内面45の開口端縁部には、第一の転動成形型24のテーパ状外周面30との接続角部に対してアール状の面取り加工が施されて、湾曲面46が形成されている。また、周方向成形溝44の底壁面は、第二の転動成形型26に設けられた段差36によって形成されており、一対の壁内面45,45が底壁側端部において幅方向に離隔している。更に、周方向成形溝44の底壁面は、凹凸のない平坦な湾曲面とされており、テーパ状外周面30と略平行に広がっていると共に、傾斜方向成形溝32の底壁面と滑らかに連続している。
【0047】
この転動成形型22は、図7に示されているように、ホルダ48によって支持される。ホルダ48は、全体として円形ブロック形状であって、逆向きの略円錐台形状を有する工具装着部50と、工具装着部50の大径側端面から突出する連結部52とを備えている。工具装着部50の外周面には、3つの独立した平坦部が設けられており、支持金具54と、内周面取用バイト56と、外周面取用バイト58とが、各平坦部に重ね合わされて固定されている。連結部52は、略円柱形状で外周面に複数の規制平面60を有しており、図示しない工作機械に差し入れられて固定されるようになっている。
【0048】
支持金具54は、図8に示されているように、金属製のプレートであって、その上部には厚さ方向に2つのボルト孔が貫通形成されている。また、支持金具54の下端には、転動成形型22に挿通された支軸38の先端が固着されるようになっており、転動成形型22が支持金具54によって支軸38回りで回転可能に支持されるようになっている。
【0049】
内周面取用バイト56は、図9に示されているように、刃部とシャンクが一体形成されたむくバイトであって、先端部分(図9中の下端部分)が先細となっていると共に、該先端部分の幅方向一端に直線的な切刃が設けられている。また、シャンク部分には、厚さ方向に貫通するボルト孔が2つ形成されている。なお、内周面取用バイト56の材質は、加工対象である円筒素管14の材質や加工速度等に応じて設定されるものであり、特に限定されないが、例えばハイスや超硬合金,炭素工具鋼等が採用される。また、内周面取用バイト56は、刃部とシャンクが別体とされた鑞付けバイトやクランプバイト等であっても良い。
【0050】
外周面取用バイト58は、図10に示されているように、シャンク62の先端部分に刃部としてのチップ64を鑞付けや機械的な固定によって取り付けた構造とされており、内周面取用バイト56と同様に先端部分(図10中の下端部分)が先細となっていると共に、その幅方向一端に直線的な切刃が設けられている。また、シャンク62には、厚さ方向に貫通するボルト孔が2つ形成されている。この外周面取用バイト58も内周面取用バイト56と同様に材質が限定されるものではないが、ハイスや超硬合金,炭素工具鋼等が好適に採用される。また、外周面取用バイト58としてむくバイトを用いることも出来る。
【0051】
そして、転動成形型22を装着された支持金具54と、内周面取用バイト56と、外周面取用バイト58とを、それぞれホルダ48にセットする。即ち、ホルダ48の工具装着部50に形成された複数の平坦部に対して、支持金具54及びバイト56,58を各別に重ね合わせてそれぞれボルト固定することにより、それら支持金具54及びバイト56,58を、転動成形型22とバイト56,58の刃部とがホルダ48の先端側(工具装着部50の小径側)に突出するように装着する。かかる取付状態において、転動成形型22と内周面取用バイト56と外周面取用バイト58は、周方向で相互に離隔して略等間隔に配設されている。なお、転動成形型22の小径側端部が内周側を向くと共に、内周面取用バイト56の切刃が外周側に、外周面取用バイト58の切刃が内周側にそれぞれ向くように、それら支持金具54及びバイト56,58をホルダ48にセットする。
【0052】
さらに、ホルダ48を工作機械に取り付けると共に、ワークとしての円筒素管14をワークベース等によって支持させる。円筒素管14は、図4に一点鎖線で示されているように、その中心軸66がホルダ48の中心軸と略一致しており、軸方向に離隔して対向するようにセットされると共に、中心軸66回りに回転可能に支持される。
【0053】
更にまた、転動成形型22の中心軸68と円筒素管14の中心軸66との交角が第一の転動成形型24における母線の傾斜角に対応する角度となるように、転動成形型22をホルダ48に傾斜支持させて、テーパ状とされた第一の転動成形型24のテーパ状外周面30を円筒素管14の軸方向端面20に対して略平行に正対させる。また、内周面取用バイト56の切先が円筒素管14の内周側に位置すると共に、外周面取用バイト58の切先が円筒素管14の外周側に位置するように、各バイト56,58をセットする。
【0054】
そして、ワークベース等で軸直角方向に固定支持された円筒素管14を、モータ等の駆動手段で回転させると共に、転動成形型22に向けて軸方向で接近方向に移動させて、円筒素管14の軸方向端面20を転動成形型22のテーパ状外周面30に押し付けて成形加工を行なう。即ち、円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って、支軸38によって位置固定に且つ回転可能に支持された転動成形型22は、円筒素管14の軸方向端面20に押し付けられることにより、かかる加工面となる円筒素管14の軸方向端面20を塑性変形させると共に、円筒素管14との接触抵抗により円筒素管14の中心軸回りの回転に伴って円筒素管14もその中心軸回りで回転する。これら円筒素管14と転動成形型22との連れ回りによって、円筒素管14の軸方向端面20に対して、その全周に亘って、転動成形型22のテーパ状外周面30による塑性加工が施されて、テーパ状外周面30に形成された周方向成形溝44及び傾斜方向成形溝32に対応した突起16,18が同時に形成される。
【0055】
かかる塑性加工において、転動成形型22のテーパ状外周面30を円筒素管14の軸方向端面20に押し付けると同時に、立上げ押え部40の外周押え面42を円筒素管14における軸方向端面20の外周角部に対して外周側から押し付ける。転動成形型22のホルダ48への装着下、外周押え面42は、円筒素管14の中心軸66に対して傾斜して広がっており、転動成形型22と円筒素管14が軸方向に接近することによって、外周押え面42が円筒素管14における軸方向端面20の外周角部に押し付けられるようになっている。なお、テーパ状外周面30と、傾斜方向成形溝32の溝内面と、外周押え面42と、周方向成形溝44の溝内面とによって、円筒素管14の軸方向端面20に押し付けられる転動成形型22の成形面が構成されている。
【0056】
また、転動成形型22による塑性加工と同時に或いは塑性加工に先立って、円筒素管14の軸方向端部のエッジ部には、内周面取用バイト56及び外周面取用バイト58による面取り加工を施す。即ち、円筒素管14がバイト56,58に対して回転しながら軸方向で接近することによって、円筒素管14の角部が内周面取用バイト56及び外周面取用バイト58の切刃によって切削されて、円筒素管14の内周側及び外周側の両縁部に所定の傾斜面が形成される。これにより、円筒素管14の軸方向端部における内外周エッジ部への面取り加工が施される。
【0057】
面取り加工は、上述の如き面加工用バイトを用いた切削加工の他にも、転動駒等による塑性加工でテーパ面を成形することによっても実現される。また、面取り加工用の転動駒を特別に用いることなく、転動成形型22の立上げ押え部40を利用すると共に、転動成形型22の母線方向小径側端部において外周面上に突出して周方向に延びるテーパ加工用の環状成形突部を一体形成することにより、転動成形型22にテーパ加工機能を併せ持たせて、面取り加工と突起16,18の成形加工を同時に行うことも出来るが、転動成形型22とは別にテーパ加工用の転動駒や面加工用バイトを設けることが望ましい。
【0058】
なお、円筒素管14の軸方向両側に、転動成形型22とバイト56,58を配置して、円筒素管14の軸方向両端面に同時に塑性加工を施すことも可能であり、作業工程数の削減が実現される。また、上述の円筒素管14の中心軸66回りの回転駆動に代えて、円筒素管14を非回転状態に支持させつつ、ホルダ48を中心軸66回りに回転させることにより、転動成形型22をその中心軸68回りでの自転状の回転に加えて円筒素管14の中心軸66回りに公転状に転動変位させて、目的とする塑性加工を行なうことも可能である。
【0059】
このような転動成形型22を用いた塑性変形によって滑止め突起16及び環状止水突起18を備えた筒状金具10を形成すれば、1つの転動成形型22によって複数の滑止め突起16と環状止水突起18とを同時に形成することが出来る。それ故、円筒素管14に対して突起16,18を形成するための設備が簡単且つ少なく抑えられると共に、突起16,18を形成する加工工程が少なく済んで、筒状金具10を容易に製造することが出来る。
【0060】
しかも、本発明方法では、円筒素管14の軸方向端面20に転動成形型22による塑性加工を施す際に、立上げ押え部40を円筒素管14の軸方向端面20の外周角部に押し付けるようになっている。これにより、転造時の圧力によって押し出される円筒素管14の肉が、外周側に突出してバリになることなく、外周押え面42よりも内周側において軸方向外方に盛り上げられて、環状止水突起18が効率良く突出形成される。
【0061】
加えて、周方向成形溝44の第一の転動成形型24側の開口縁部に湾曲面46が形成されていることにより、円筒素管14にテーパ状外周面30を押し付けることによって移動する円筒素管14の肉が、湾曲面46に沿って周方向成形溝44側に案内される。その結果、環状止水突起18がより効率的に突出形成されて、目的とする形状(突出高さ)の環状止水突起18を精度良く成形することが出来る。
【0062】
また、転動成形型22が、テーパ状外周面30を備えた第一の転動成形型24と、立上げ押え部40を備えた第二の転動成形型26とを、組み合わせた分割構造とされている。それら第一の転動成形型24と第二の転動成形型26は、何れも製造し易い簡単な形状とされていることから、転動成形型22が一体で形成されている場合に比べて、製造が容易である。しかも、第一の転動成形型24の材質と第二の転動成形型26の材質を簡単に異ならせることが出来て、テーパ状外周面30の要求特性と立上げ押え部40の要求特性が異なる場合にも、高度に対応することが可能となる。更に、第一,第二の転動成形型24,26の何れか一方のみが損傷した場合等には、損傷した側だけを交換することで再び塑性加工を行うことが出来る。
【0063】
上述の転動成形型22による塑性加工を円筒素管14に施すことによって得られた、目的とする筒状金具10には、図1〜3に示されているように、その軸方向端面20に対して、転動成形型22の周方向成形溝44と傾斜方向成形溝32とに対応して、放射状に延びる複数本の滑止め突起16と、周方向に延びる環状止水突起18とが、形成されている。即ち、これら滑止め突起16と環状止水突起18は、何れも、筒状金具10と一体形成されており、筒状金具10の軸方向端面20から軸方向外方に突出する突起形状を有している。
【0064】
特に滑止め突起16は、筒状金具10の軸方向端面20において、内周側端縁部近くから外周側端縁部近くまで、周方向に傾斜せずに径方向に直線的に延びている。なお、滑止め突起16の長さ方向(筒状金具10の軸方向端面20の径方向)の両端面は、それぞれ、山裾状に広がる傾斜面とされており、他部材の打当りや干渉に伴う滑止め突起16の長さ方向端部の欠損や変形の防止が図られている。
【0065】
また、滑止め突起16は、台形の断面形状で径方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。更に、この滑止め突起16は、周方向で相互に近接して複数形成されており、全体として筒状金具10の中心軸を中心として放射線状に延びる多数の滑止め突起16が形成されている。即ち、筒状金具10の周方向断面では、多数の滑止め突起16によって連続した鋸歯様の形状を呈している。
【0066】
更にまた、全ての滑止め突起16の形状及び大きさは同じとされており、全ての滑止め突起16の突出先端面は、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16の突出先端部が当接するようになっている。尤も、滑止め突起16の突出先端面全体が一つの平面上にあることは必須ではなく、例えば、全ての滑止め突起16の突出先端面が、外周側に向かって軸方向外側に傾斜するテーパ面上に位置せしめられていても良い。
【0067】
一方、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20において、径方向外周縁部を周方向に連続して延びる円環形状を有している。なお、環状止水突起18も、滑止め突起16と同様に、台形の断面形状で周方向に延びており、その断面の幅寸法が突出先端側に行くに従って小さくなる先細断面形状とされている。
【0068】
また、環状止水突起18は、周方向の全長に亘って一定の断面形状で延びており、環状止水突起18の突出先端面は、全長に亘って、筒状金具10の中心軸に直交する一つの平面上に位置せしめられている。しかも、この環状止水突起18の突出先端面は、上述の滑止め突起16の突出先端面が位置する平面と同じ平面上に位置するようにされている。要するに、複数の滑止め突起16と環状止水突起18は、全ての突出先端面が同一平面上に設定されている。これにより、筒状金具10が他部材に装着されて、その軸方向端面20が他部材の平坦な取付面に対して重ね合わされた際、かかる取付面に対して、全ての滑止め突起16だけでなく環状止水突起18の突出先端部も押し付けられるようになっている。
【0069】
さらに、環状止水突起18は、筒状金具10の軸方向端面20の径方向外周縁部に形成されており、全ての滑止め突起16が、外周縁部でこの環状止水突起18と繋がっている。これら各交差点でも、環状止水突起18の突出先端面は周方向に連続しており、これにより、周方向に閉じた円環状面をもって、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。また、各滑止め突起16は、何れも、環状止水突起18との交差点から、環状止水突起18の内周側に延び出しており、筒状金具10の軸方向端面20に重ね合わされる他部材の取付面に対して押し付けられるようになっている。
【0070】
さらに、筒状金具10の軸方向端面20において周方向に隣り合う滑止め突起16,16間には、それぞれ、径方向に延びる溝状凹部69が存在しているが、この溝状凹部69の長さ方向外周端部を周方向に横切って環状止水突起18が形成されている。この環状止水突起18は周方向の全周に亘って連続していることから、全ての溝状凹部69は、外周縁部において、環状止水突起18で塞き止められるようにして消失されている。
【0071】
従って、上述の如き滑止め突起16と環状止水突起18を併せ備えた軸方向端面20を有する筒状金具10は、他部材への装着に際して軸方向端面20を他部材の取付面に押し付けて装着することにより、筒状金具10の他部材に対する中心軸回りでの相対変位が効果的に防止されると共に、筒状金具10の軸方向端面20と他部材の取付面との隙間を通じての筒状金具10の内周面への雨水等の侵入も効果的に防止されるのである。なお、これらの技術的効果を理解し易くするために、上述の筒状金具10を用いた製品の一例として防振ゴムブッシュを示し、この防振ゴムブッシュについて、本発明の作用効果を具体的に説明する。
【0072】
すなわち、図11,12には、前述の筒状金具10を用いた製品の一実施形態としての防振ゴムブッシュ70が示されている。この防振ゴムブッシュ70は、自動車のサスペンション機構を構成するサスペンションアームの車両ボデー側又は車輪側への取付部位に装着されて、路面振動の車両ボデー側への伝達軽減等を図るものである。
【0073】
より詳細には、防振ゴムブッシュ70は、前述の筒状金具10によって構成された内筒金具72を備えており、この内筒金具72が防振ゴムブッシュ70の中心軸上で軸方向に貫通して配設されている。また、内筒金具72の外周面には、本体ゴム弾性体74が固着されている。本体ゴム弾性体74は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、その内周面が内筒金具72の外周面に固着されている。更に、本体ゴム弾性体74の外周面には、円筒形状の外筒金具76が固着されている。外筒金具76は、内筒金具72よりも薄肉で軸方向長さが短くされており、内筒金具72の軸方向中央部分で内筒金具72から径方向外方に離隔して内筒金具72と同一中心軸上に配設されている。このような防振ゴムブッシュ70は、例えば内外筒金具72,76の存在下で本体ゴム弾性体74を成形及び加硫することにより一体加硫成形品として製造される。
【0074】
なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体74に対して、径方向中間部分を軸方向に貫通して延びる一対のすぐり部78,78が形成されている。これら一対のすぐり部78,78は、径方向一方向で対向位置して、それぞれ、内外筒金具72,76間を周方向に円弧状に1/4周弱の長さで延びており、一対のすぐり部78,78の対向方向とそれに直交する径方向とのばね比の調節等のチューニングがされている。
【0075】
そして、防振ゴムブッシュ70は、図13に示されているように、サスペンションアーム80の車両ボデー側部材82に対する取付部位に装着される。かかる装着に際しては、先ず、サスペンションアーム80の一方の端部に形成された円筒形状のアームアイ84の装着孔86に対して、防振ゴムブッシュ70の外筒金具76を圧入固定する。その後、サスペンションアーム80に装着された防振ゴムブッシュ70を、他部材としての車両ボデー側部材82に形成された一対の取付部88,88の対向面間に嵌め入れる。そして、一対の取付部88,88に形成された挿通孔90,90に対して、内筒金具72の内孔92を位置合わせして、取付ボルト94を一方の取付部88の挿通孔90から挿し入れ、内筒金具72の内孔92に挿通させて、他方の取付部88の挿通孔90から外方に突出させる。この突出させた取付ボルト94の先端ねじ部96に対して締付ナット98を螺着し、締め付けることによって内筒金具72の軸方向両端面を一対の取付部88,88の取付面としての各対向面に押し付けて固定する。
【0076】
このような防振ゴムブッシュ70の車両サスペンション機構への装着状態下では、目的とする防振効果が安定して発揮されるように、本体ゴム弾性体74における一対のすぐり部78,78を車両前後方向等の特定方向に位置決めすることが必要となる。この周方向の位置決めが、内筒金具72の軸方向両端面20,20に突設された前述の滑止め突起16によって実現される。即ち、滑止め突起16が、取付ボルト94への締付ナット98の締付力に基づいて、取付部88に押し付けられることでくい込むことにより、取付部88に対する内筒金具72の周方向での相対回転変位が阻止されるようになっているのである。
【0077】
しかも、内筒金具72の軸方向端面20には、滑止め突起16に加えて環状止水突起18が形成されていることから、滑止め突起16によって発揮される内筒金具72の取付部88に対する回転阻止機能を充分に確保しつつ、内筒金具72と取付部88との間の隙間を通じての雨水等の内筒金具72の内孔92への侵入も効果的に防止され得るのである。
【0078】
すなわち、上述の如き構造とされた防振ゴムブッシュ70では、図13に示されている如き装着状態下において、車両ボデー側部材82の取付部88と内筒金具72の軸方向端面20との間で、周方向に隣り合う滑止め突起16,16間の隙間(溝状凹部69)の外周側開口部から、たとえ雨水等が侵入した場合でも、環状止水突起18で塞き止められる。それ故、雨水等が内筒金具72の軸方向端面20の内周縁部まで至ることがなく、内筒金具72の内孔92にまで入り込むことがない。
【0079】
しかも、環状止水突起18の突出先端が、転動成形型22における周方向成形溝44の底壁面(段差36)によって、周方向環状に延びる平坦面に成形されていることから、取付部88に対して安定して当接(食込み)して、目的とする止水効果が安定して発揮される。加えて、転動成形型22の立上げ押え部40によって、環状止水突起18が略一定の断面形状で高精度に成形されて、止水機能の不良が全周に亘って防止される。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はかかる実施形態の具体的な記載によって限定されるものでない。例えば、転動成形型22による塑性加工は、筒状金具10の軸方向一方の端面だけに施されていても良い。即ち、筒状金具10は、その軸方向を鉛直方向に向けて装着されたり、軸方向の片側にシールゴムが装着されたり、さまざまな装着態様があり、筒状金具10の軸方向端面における止水機能の要求が軸方向一方の側だけにある場合には、筒状金具10における軸方向一方の側だけに環状止水突起18を形成すれば良い。また、滑止め突起16も同様に、筒状金具10の軸方向一方の端面だけが取付部材等に押し当てられて装着される場合や、軸方向一方の端面だけで充分な回転阻止機能が発揮される場合などは、当該軸方向一方の端面だけに形成されていれば良い。
【0081】
また、傾斜方向成形溝32は、何れも、径方向に直線的に延びている必要はない。例えば径方向線に対して傾斜していたり、傾斜且つ湾曲して延びるらせん状等の態様でも良い。傾斜方向成形溝32を周方向一方に向かってらせん状に湾曲させれば、それによって形成される滑止め突起16において特定の回転方向への回転阻止力の向上効果も期待できる。
【0082】
さらに、複数の周方向成形溝44が形成されることにより、要求される止水能力や押し付けられる相手側部材の性状等に応じて、環状止水突起18が径方向に離隔して複数形成されていても良い。
【0083】
更にまた、傾斜方向成形溝32と周方向成形溝44の深さ寸法は必ずしも同じでなくても良く、それら溝32,44を利用して形成される滑止め突起16と環状止水突起18の各突出先端面が筒状金具10の軸直角方向に広がる同一平面上に位置していなくても良い。例えば、滑止め突起16よりも環状止水突起18の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を滑止め突起16よりも環状止水突起18において大きくして、より高度な止水効果を一層安定して得ることが可能となる。一方、環状止水突起18よりも滑止め突起16の突出先端面を筒状金具10の軸方向外方に大きく突出させることにより、他部材へのくい込み量を環状止水突起18よりも滑止め突起16において大きくして、より大きな回転阻止力を設定することが可能となる。なお、要求される回転阻止力や他部材の性状等を考慮して、滑止め突起16の幾つかにおいて突出高さや形状を異ならせたり、一つの滑止め突起16の突出高さや形状を長さ方向で変化させたりして調節することも可能である。
【0084】
また、転動成形型22は、互いに独立した第一,第二の転動成形型24,26を組み合わせた構造に限定されるものではなく、セレーション加工部と立上げ押え部を何れも備えた一体成形品によって形成されていても良い。一方、3つ以上の部品によって転動成形型が形成されていても良い。
【0085】
さらに、テーパ状外周面30の全体が傾斜方向成形溝32を備えたセレーション加工部とされている必要はなく、テーパ状外周面30の母線方向で部分的にセレーション加工部を設けることも可能である。具体的には、例えば、傾斜方向成形溝32がテーパ状外周面30の小径側端部までは至らない領域に形成されて、小径側端部を外れた領域がセレーション加工部となっていても良い。
【0086】
更にまた、転動成形型22における段差36は省略可能であり、環状止水突起の突出先端を尖ったままにしても良いし、環状止水突起の転造後に先端部分を平坦に加工しても良い。
【符号の説明】
【0087】
10:筒状金具、16:滑止め突起、18:環状止水突起、22:転動成形型、24:第一の転動成形型、26:第二の転動成形型、30:テーパ状外周面、32:傾斜方向成形溝、40:立上げ押え部、42:外周押え面、44:周方向成形溝、70:防振ゴムブッシュ、74:本体ゴム弾性体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具を製造するための転動成形型であって、
前記筒状金具の前記軸方向端面に押し付けられる成形面としてテーパ状外周面を備えており、該テーパ状外周面にはテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成されたセレーション加工部が設けられている一方、
該セレーション加工部の軸方向大径側には該セレーション加工部より大径の立上げ押え部が設けられており、
該セレーション加工部の大径側端部における該立上げ押え部との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝が形成されて、該周方向成形溝に対して複数の該傾斜方向成形溝の大径側端部がそれぞれ接続されていると共に、
該立上げ押え部における該セレーション加工部側の軸方向端面によって、該筒状金具の該軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面が形成されている
ことを特徴とする転動成形型。
【請求項2】
前記セレーション加工部を外周面に備えた第一の転動成形型と、前記立上げ押え部を備えた第二の転動成形型とが、互いに別体とされており、それら第一の転動成形型と第二の転動成形型とが一体的に又は独立して同一中心軸上で支持されている請求項1に記載の転動成形型。
【請求項3】
前記第一の転動成形型と前記第二の転動成形型との材質が互いに異なっている請求項2に記載の転動成形型。
【請求項4】
前記第一の転動成形型及び前記第二の転動成形型の少なくとも一方において、その成形面にコーティング処理が施されている請求項1〜3の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項5】
前記周方向成形溝における幅方向両側の壁内面が、被成形面である前記筒状金具の前記軸方向端面に向かって、次第に幅方向両側で拡幅する方向の傾斜面とされている請求項1〜4の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項6】
前記周方向成形溝における前記セレーション加工部側の壁内面の開口端縁部には、該セレーション加工部の前記テーパ状外周面との接続角部に対してアール面取り状の湾曲面が形成されている請求項5に記載の転動成形型。
【請求項7】
前記周方向成形溝の底面が平坦面とされている請求項1〜6の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載された転動成形型を用い、
該転動成形型における前記セレーション加工部の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の前記テーパ状外周面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けると共に該転動成形型の前記外周押え面を該筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、
該筒状金具の軸方向端面において、径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起と、外周縁部で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起とを、同時に形成することを特徴とする筒状金具の製造方法。
【請求項9】
前記転動成形型による加工と同じ工程又はそれ以前の工程において、前記筒状金具における軸方向端部の外周側角部と内周側角部の少なくとも一方に面取り加工を施す請求項8に記載の筒状金具の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする防振ゴムブッシュの製造方法。
【請求項1】
軸方向端面に滑止め突起が形成された筒状金具を製造するための転動成形型であって、
前記筒状金具の前記軸方向端面に押し付けられる成形面としてテーパ状外周面を備えており、該テーパ状外周面にはテーパ傾斜方向に延びる傾斜方向成形溝が周方向で複数形成されたセレーション加工部が設けられている一方、
該セレーション加工部の軸方向大径側には該セレーション加工部より大径の立上げ押え部が設けられており、
該セレーション加工部の大径側端部における該立上げ押え部との間には外周面に開口して周方向に延びる周方向成形溝が形成されて、該周方向成形溝に対して複数の該傾斜方向成形溝の大径側端部がそれぞれ接続されていると共に、
該立上げ押え部における該セレーション加工部側の軸方向端面によって、該筒状金具の該軸方向端面の外周角部に対して外周側から押し付けられる外周押え面が形成されている
ことを特徴とする転動成形型。
【請求項2】
前記セレーション加工部を外周面に備えた第一の転動成形型と、前記立上げ押え部を備えた第二の転動成形型とが、互いに別体とされており、それら第一の転動成形型と第二の転動成形型とが一体的に又は独立して同一中心軸上で支持されている請求項1に記載の転動成形型。
【請求項3】
前記第一の転動成形型と前記第二の転動成形型との材質が互いに異なっている請求項2に記載の転動成形型。
【請求項4】
前記第一の転動成形型及び前記第二の転動成形型の少なくとも一方において、その成形面にコーティング処理が施されている請求項1〜3の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項5】
前記周方向成形溝における幅方向両側の壁内面が、被成形面である前記筒状金具の前記軸方向端面に向かって、次第に幅方向両側で拡幅する方向の傾斜面とされている請求項1〜4の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項6】
前記周方向成形溝における前記セレーション加工部側の壁内面の開口端縁部には、該セレーション加工部の前記テーパ状外周面との接続角部に対してアール面取り状の湾曲面が形成されている請求項5に記載の転動成形型。
【請求項7】
前記周方向成形溝の底面が平坦面とされている請求項1〜6の何れか1項に記載の転動成形型。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載された転動成形型を用い、
該転動成形型における前記セレーション加工部の小径側を前記筒状金具の内周側に且つ大径側を該筒状金具の外周側に向けて該転動成形型の前記テーパ状外周面を該筒状金具の軸方向端面に押し付けると共に該転動成形型の前記外周押え面を該筒状金具の軸方向端面の外周角部に押し付けつつ周方向に転動させることにより、該筒状金具の軸方向端面に対して該転動成形型による塑性加工を施して、
該筒状金具の軸方向端面において、径方向に延びる突状形態とされて全体として放射状をなす周方向で複数の滑止め突起と、外周縁部で軸方向外方に突出して周方向に延びる環状止水突起とを、同時に形成することを特徴とする筒状金具の製造方法。
【請求項9】
前記転動成形型による加工と同じ工程又はそれ以前の工程において、前記筒状金具における軸方向端部の外周側角部と内周側角部の少なくとも一方に面取り加工を施す請求項8に記載の筒状金具の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された筒状金具の製造方法に従って、前記筒状金具の軸方向両側の端面にそれぞれ前記転動成形型による塑性加工を施した後、該筒状金具の外周面に本体ゴム弾性体を加硫接着することを特徴とする防振ゴムブッシュの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−45915(P2011−45915A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197699(P2009−197699)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(501073943)関戸機鋼株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(501073943)関戸機鋼株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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