説明

軸受装置

【課題】シールリップの耐久性やシール性を向上可能な軸受装置を提供すること。
【解決手段】軸受装置は、転がり軸受と、転がり軸受の内部空間をシールするシール装置50とを具備する。シール装置50は、転がり軸受の外輪側に設けられたシール部材54、転がり軸受の内輪側に設けられた油切り62とを有する。軸方向に離隔した2箇所で油切り62と接触するメインリップ54aとダストリップ54bをシール部材54に設けた。ダストリップ54bより熱膨張率(線膨張係数)が高い材料で形成された環状の高膨張部54gを、ダストリップ54bに周方向に沿って取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を有する軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受装置には、例えば特許文献1に示されるような鉄道車両の車軸支持に使用されるものがあり、この種の軸受装置を図12に例示する。
【0003】
この軸受装置は、軸受100と、シール装置150とを具備する。軸受100は、転がり軸受の1種の複列の円すいころ軸受であり、外輪110と、内輪120と、転動体としての円すいころ130とを備える。円すいころ130は、外輪110の外側軌道面と内輪120の内側軌道面との間に介在し、複列である。
【0004】
シール装置150は、外輪110の内周面の軸方向両端部に嵌合固定されたシールケース152と、各シールケース152の内周に固定されたシール部材154と、内輪120の軸方向両側に配された油切り162とから成る。このシール部材154は、油切り162との間で接触シールを構成する。この構成により、シール装置150は、軸受100の外輪110と内輪120との間の空間(軸受100の内部空間)を軸方向両端においてシールする。
【0005】
詳述すれば、図13に示すように、シール部材154は、先端リップ部154dを具備する。先端リップ部154dは、軸受内部側のメインリップ154aと軸受外部側のダストリップ154bとを有し、各リップ154a,154bが軸方向に離隔した2箇所で油切り162と接触する。これにより、軸受100の内部空間からのグリース等の潤滑剤の漏洩や、内部空間への塵埃や水等の浸入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−255599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、内輪120が外輪110に対して回転すると、外輪110,内輪120と円すいころ130との摩擦、メインリップ154a,ダストリップ154bと油切り162との摩擦、あるいは潤滑剤の撹拌等により、軸受装置の温度が上昇する。この温度上昇に伴って、油切り162と各リップ154a,154bとで区画されたリップ間空間S’に存在する空気が膨張する。膨張量が大きくなると、リップ間空間S’内の空気が、主にダストリップ154bと油切り162との間を通りリップ間空間S’から流出する。
【0008】
この後、内輪120の回転が停止し、軸受装置の温度が低下すると、リップ間空間S’が負圧となり、各リップ154a,154bが油切り162に対して吸着する。
【0009】
この状態で、内輪120が再び回転すると、リップ154a,154bと油切り162との間の摩擦力が増大する。このため、リップ154a,154bと油切り162との摺接部分の周辺で温度の上昇が激しくなり、リップ154a,154bの摩耗が促進される。これにより、シール部材154の耐久性の低下、およびシール性の低下等の問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、リップの吸着を防止し、これによって、シール装置の耐久性やシール性を向上可能な軸受装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の軸受装置は、内周に外側軌道面を有する外輪と、外周に内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面と内側軌道面間に介在させた転動体と、回転側及び固定側の何れか一方の部材に設けられ、他方の部材と摺接する複数のリップを有するシール部材とを備える軸受装置において、少なくとも一つのリップに、低膨張部と、低膨張部の内径側もしくは外径側に密着し、低膨張部より線膨張係数の大きい高膨張部とを設けたことを特徴とする。
【0012】
リップに設けられた高膨張部は、環状もしくは部分環状に形成することで、昇温時にその内周面および外周面が拡径する方向に変形する。この高膨張部の変形に追従して、低膨張部が拡径方向に引っ張られるため、リップの接触圧が減じられ、より低い温度でリップ間空間が大気に開放される。これにより、軸受の停止による軸受温度の低下時にも、リップ間空間で生じる負圧が小さくなる。そのため、他方の部材に対するリップの吸着を抑制することができ、各リップの摩耗を抑制し、シール装置の耐久性やシール性を向上させることが可能となる。
【0013】
上記構成において、高膨張部と低膨張部とでリップを構成する場合、このリップは、例えば高膨張部を低膨張部の表面に接着剤等で貼着することによって得られる。
【0014】
前記リップに、その突出方向に沿って内径側と外径側とに二分し、二分したうちの一方を高膨張部とし、他方を低膨張部とした部分を設けてもよい。
【0015】
上記何れの構成においても、高膨張部と低膨張部は異なるゴム材料で形成することができる。例えば低膨張部をフッ素ゴムで形成し、高膨張部をアクリルゴムもしくはニトリルゴムで形成することが考えられる。
【0016】
その他、上記構成において、高膨張部および低膨張部の双方を金属で形成し、これらを前記リップに埋め込んでもよい。この場合、例えば低膨張部をニッケル−鉄合金で形成し、高膨張部を銅、ニッケル、銅−亜鉛合金の何れかで形成することができる。
【0017】
更に、前記課題は、以下の手段(1)〜(3)の何れかによっても解決することができる。
【0018】
(1)内周に外側軌道面を有する外輪と、外周に内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面と内側軌道面間に介在させた転動体と、回転側及び固定側の何れか一方の部材に設けられ、他方の部材と摺接する複数のリップを有するシール部材とを備える軸受装置において、前記他方の部材に、複数のリップで区画されたリップ間空間を大気に連通させる通気路を設ける。
【0019】
これにより、リップ間空間を、通気路を介して大気と連通させることができるので、リップ間空間での負圧の発生を防止することができ、他方の部材に対するリップの吸着を防止することができる。
【0020】
通気路においては、これを介した潤滑剤の漏洩や塵埃等の浸入防止を図るのが望ましい。具体的には、通気路に弁部材を設け、通気路の開閉状態を切替可能とする。弁部材としては、通気路に常時は閉鎖し、差圧発生時に開放するベント部を設ける、通気路に、遠心力に応じて開閉状態を切り替える遠心力作用弁を設ける等の手段が考えられる。また、通気路にラビリンス構造を設けることによっても上記効果を得ることができる。
【0021】
通気路は、他方の部材に形成した孔で構成することができる。通気路のラビリンス構造は、例えば、該孔に切り欠き付きのピンを挿入し、ピンの切り欠き部で通気路の一部を構成することによって得ることができる。この他、他方の部材を軸方向と半径方向に屈曲した分割面で分割し、分割面間に通気路を介在させることでラビリンス構造を得ることもできる。
【0022】
(2)内周に外側軌道面を有する外輪と、外周に内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面と内側軌道面間に介在させた転動体と、回転側及び固定側の何れか一方の部材に設けられ、他方の部材と摺接するメインリップおよびダストリップを有するシール部材とを備える軸受装置において、シール部材に、メインリップに沿ってリップ間空間内に延びる芯金を設ける。
【0023】
この構成によれば、リップ間空間での負圧発生時にも、内径側へのメインリップの変形が芯金で規制されるため、メインリップの他方の部材への吸着を防止することができる。これによりメインリップの摩耗を抑制し、シール装置の耐久性・シール性向上を図ることができる。
【0024】
(3)内周に外側軌道面を有する外輪と、外周に内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面と内側軌道面間に介在させた転動体と、回転側及び固定側の何れか一方の部材に設けられ、他方の部材と摺接するリップを有するシール部材とを備え、シール部材が、芯金および芯金を被覆する被覆部からなり、被覆部に前記リップが形成された軸受装置において、被覆部に軸受内部と軸受外部を連通する貫通孔を設け、この貫通孔を、通気可能で液体および固体の流通を遮断する延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムにより閉塞する。
【0025】
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、空気を通過させるので、上記構成により、貫通孔を介して、軸受内部空間と軸受外部空間とが通気され、軸受内部空間の高圧化を防止することができる。これにより、軸受運転中のシール部材の変形が抑制されるので、他方の部材に対するリップの吸着を抑制することができる。その一方で、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、液体・固体を通過させないので、上記構成により、軸受内部空間からの潤滑剤の漏洩や軸受内部空間への塵埃等の浸入を抑制できる。被覆部に形成された貫通孔は芯金を通過していない。そのため、芯金に貫通孔を形成する必要がなく、既存の芯金をそのまま使用することができる。従って、新たな専用芯金を製造する必要がなく、製造コストの増大を抑制できる。
【0026】
この構成においては、軸受内部に封入されたグリース等の潤滑剤が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに被着して通気性を阻害するのを防止するため、被覆部に、貫通孔の軸受内部側の開口部近傍から他方の部材の近接位置まで突出する副リップを設けるのが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、軸受の運転・停止後、再運転する際のリップの吸着を防止することができる。これにより、シール装置の耐久性を向上させ、安定したシール性を長期間維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る軸受装置の軸方向断面図である。
【図2】図1のB部分の拡大図である。
【図3】(A)が本発明の実施形態に係る軸受装置の要部拡大軸方向断面図であり、(B)が効果を説明するための図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る軸受装置の要部拡大軸方向断面図である。
【図5】本発明に係る軸受装置の構成例の要部拡大軸方向断面図である。
【図6】本発明に係る軸受装置の他の構成例の要部拡大軸方向断面図である。
【図7】本発明に係る軸受装置の他の構成例であり、(A)が要部拡大断面図、(B)が(A)のX2矢視図である。
【図8】本発明に係る軸受装置の他の構成例であり、(A)が要部拡大断面図、(B)が(A)のX3矢視図である。
【図9】本発明に係る軸受装置の他の構成例であり、(A)が要部拡大断面図、(B)が(A)のX5矢視図である。
【図10】本発明に係る軸受装置の他の構成例であり、(A)が要部拡大断面図、(B)が(A)のX6矢視図である。
【図11】(A)が本発明に係る軸受装置の他の構成例の軸方向断面図であり、(B)が(A)のC部分の拡大図である。
【図12】従来の軸受装置の軸方向断面図である。
【図13】図12のA部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0030】
図1に、本発明の実施形態に係る軸受装置を示す。この軸受装置は、鉄道車両の車軸支持用として使用されるものであり、軸受1と、シール装置50とを具備する。軸受1は、転がり軸受の1種である複列の円すいころ軸受であり、外輪10と、内輪20と、転動体としての複数の円すいころ30と、保持器40とを備える。外輪10は、内周面に複列の円すい状の外側軌道面12を有し、内輪20は、外周面に複列の円すい状の内側軌道面22を有する。円すいころ30は、外輪10の外側軌道面12と内輪20の内側軌道面22との間に転動自在に介在し、複列である。保持器40は、複数の円すいころ30を円周方向等間隔に保持する。外輪10と内輪20との間に形成される空間(軸受1の内部空間)にはグリース等の潤滑剤が封入され、この空間を軸方向両端部においてシール装置50はシールしている。
【0031】
外輪10は、外周面が鉄道車両の軸箱(図示省略)に固定され、内輪20は、各内側軌道面22ごとに分割されて形成される。内輪20の軸方向両側には、摺接部材としての油切り62が配される。車軸2の軸端には蓋部材64がボルト66で固定され、この蓋部材64と車軸2の肩部との間で、車軸2の外周に嵌合した油切り62及び内輪20が挟持固定される。
【0032】
図2に拡大して示すように、シール装置50は、段付き円筒状を成したシールケース52と、シール部材54と、断面L字型の仕切り板55と、油切り62とで構成される。2つのシールケース52は、それぞれの軸方向一端部(軸受内部側の端部)が、外輪10の軸方向両端の開口部内周に圧入固定される。2つのシールケース52の先端部は、油切り62の端面に形成された凹部62aに挿入され、これにより非接触シールを構成している。なお、以下の説明では、軸方向一方側のシール装置50(図面右側のシール装置)を例に挙げて説明しているが、一方のシール装置だけではなく、他方のシール装置にも同様の構成を適用することができる。
【0033】
シールケース52の内周に仕切り板55が圧入固定され、仕切り板55の内周にシール部材54が圧入固定される。仕切り板55の内径端は、油切り62の外周面に近接して非接触シールを構成する。この仕切り板55は、軸受1の内部空間に充填されたグリース等の潤滑剤が直接シール部材54に押し寄せる事態を防止する。
【0034】
シール部材54は、内輪20の軸方向両側に配された油切り62との間で接触シールを構成する。
【0035】
詳述すれば、図2に示すように、シール部材54は、金属製の芯金541と、芯金541の先端部に一体形成され、ゴムあるいは樹脂等の弾性材料からなる先端リップ部542とを具備する。芯金541の外周面が仕切り板55の内周面に圧入固定され、芯金541の外側端面がシールケース52の内側端面に軸方向で当接している。先端リップ部542は、軸受内部側のメインリップ54aと、軸受外部側のダストリップ54bとを有し、各リップ54a,54bが軸方向に離隔した2箇所で全周にわたって油切り62と弾性的に接触する。メインリップ54aの外周にはガータスプリング54cが装着され、ガータスプリング54cの弾性力によって、メインリップ54aの油切り62の外周面62bへの接触圧が強化されている。
【0036】
油切り62の外周面62bに各リップ54a,54bの先端が接触することにより、他の空間から区画された空間(以下、リップ間空間Sと記す)が形成されている。なお、軸受装置の用途によっては、各リップ54a,54bの先端を内輪20の外周面に直接摺接させて接触シールを構成する場合もある。その場合、各リップ54a,54bと内輪20との間でリップ間空間Sが形成される。
【0037】
図3(A)に拡大して示すように、ダストリップ54bの外径側の表面には、ダストリップ54bより熱膨張率(線膨張係数)が高い材料で形成された環状の高膨張部54gが例えば接着剤で取り付けられている。高膨張部54gは環状に形成する他、これを円周方向で等配した部分環状とし、これらを周方向に並べて構成することもできる。図示例のように、ダストリップ54bを含む先端リップ部542の全体(ガータスプリング54cおよび高膨張部54gを除く)を単一材料で一体形成した場合、先端リップ部542の全体が低膨張部54dを構成する。
【0038】
低膨張部54dおよび高膨張部54gの材料としては、線膨張係数の大小関係が上記条件を満たす限り任意の組合せが使用できる。一例として低膨張部54dをフッ素ゴムで形成し、高膨張部54gをニトリルゴムやアクリルゴムで形成することができる。例えばフッ素ゴムとして線膨張係数が1.0×10-5/℃程度のものを使用することができ、ニトリルゴムとして線膨張係数が2.4×10-5/℃程度のものを使用することができる。
【0039】
そのほか、低膨張部54dおよび高膨張部54gの何れか一方もしくは双方を樹脂で形成することもできる。例えば低膨張部54dとしてポリフェニレンサルファイド(線膨張係数4.0〜8.0×10-5/℃、高膨張部54gとしてポリエチレン(線膨張係数17〜20×10-5/℃)を使用することができる。
【0040】
高膨張部54gは、図2に示すようにダストリップ54bの外径側の表面に配置する他、内径側(リップ間空間の内部側)の表面に配置しても構わない。
【0041】
以上の構成において、高膨張部54gおよび低膨張部54dからなる先端リップ部542の機能を、図3(B)に基づき説明する。図3(B)は、リップ間空間S内の圧力と温度の関係を模式的に示すものであり、縦軸が圧力、横軸が温度を示す。
【0042】
点Oは、軸受装置が停止した初期状態を表す。この時点で、圧力は大気圧、温度は常温である。
【0043】
点Oの状態から、軸受装置が回転し、リップ間空間S内の温度が上昇すると、リップ間空間S内の空気の圧力も上昇し、点Aの状態となる。リップ間空間S内の圧力が限度を超えると、ダストリップ54bの先端が油切り62から離隔し、リップ間空間S内の空気が大気に放出される。これに伴い、リップ間空間Sの圧力が大気圧まで低下して点Bの状態となる。その後、軸受装置が回転を停止すると、リップ間空間S内の温度低下に伴って圧力が低下し、常温下でリップ間空間Sが負圧となって点Cの状態となる。この負圧が大きいと、ダストリップ54b、さらにはメインリップ54aが油切り62に吸着し、再運転時に各リップ54a,54bの摩耗が進行する。
【0044】
これに対し、ダストリップ54bに環状の高膨張部54gを設けると、昇温時には高膨張部54gが熱膨張によって拡径するため、この高膨張部54gの変形に追従して、ダストリップ54b全体が拡径方向に引っ張られ、油切り62に対するダストリップ54bの接触圧が低下する。これにより、リップ間空間Sがより低圧で大気に開放され易くなるので、点Aより温度の低い点A’で、リップ間空間S内が大気と連通して大気圧となり、点B’の状態となる。軸受装置が回転を停止すると、リップ間空間S内の温度低下に伴って圧力が低下して常温下で点C’に至るが、その時の圧力降下d’は、高膨張部54gがない場合(d)に比べると小さい。そのため、油切り62に対する各リップ54a、54bの吸着度合いが低下し、再運転時における各リップ54a,54bの摩耗を抑制することができる。
【0045】
図4(A)に、シール装置50の他の実施形態を示す。本実施形態では、ダストリップ54bをその突出方向に沿って内径側と外径側に二分し、二分したうちの内径側を低膨張部54dとし、外径側を低膨張部54dよりも線膨張係数の大きい高膨張部54gとしている。低膨張部54dと高膨張部54gは異種のゴム材からなり、例えば低膨張部54dをフッ素ゴムで形成し、高膨張部54gをアクリルゴムやニトリルゴムで形成することができる。このダストリップ54bは、例えば加硫接着で一体化される。ダストリップ54bを除く先端リップ部542の材料は任意に選択することができ、低膨張部54dおよび高膨張部54gの何れとも異なる材料で形成し、あるいは低膨張部54dと共通する材料で形成することもできる。先端リップ部542を樹脂で形成する場合、低膨張部54dおよび高膨張部54gを上記条件を満たす樹脂で形成することができる。なお、低膨張部54dおよび高膨張部54gは、少なくともダストリップ54bの先端に形成されていれば足りる。従って、ダストリップ54bの先端部にのみ低膨張部54dおよび高膨張部54gを設け、ダストリップ54bの残りの部分を先端リップ部542と同材料で一体形成してもよい。
【0046】
かかる構成においても、昇温時の高膨張部54gの変形に追従して、低膨張部54dが拡径方向に引っ張られるため、リップ間空間Sがより低圧で大気に開放される。これにより、図3で説明したのと同様の理由から、リップ間空間Sで生じる負圧が小さくなり、油切り62対する各リップ54a,54bの吸着を抑制できる。従って、各リップ54a,54bの摩耗が抑制される。
【0047】
図4(B)に、シール装置50の他の実施形態を示す。本実施形態では、低膨張部54dおよび高膨張部54gを何れも金属材料で形成し、これらを積層してダストリップ54bの内部に埋め込んでいる。低膨張部54dおよび高膨張部54gの何れも、第1の実施形態と同様に環状もしくは部分環状に形成されている。
【0048】
低膨張部54dおよび高膨張部54gの材料としては、線膨張係数の大小関係が上記条件を満たす限り任意の金属の組合せが使用できる。一例を挙げれば、低膨張部54dをニッケル−鉄合金(例えばFN-36)で形成し、高膨張部54gを銅(例えばC1100P)、ニッケル(例えばNi-200)、もしくは銅−亜鉛合金(例えばC2600P)の何れかで形成することができる。なお、ニッケル−鉄合金の線膨張係数は、0.1×10-5/℃程度、銅の線膨張係数は1.7×10-5/℃程度、ニッケルの線膨張係数は1.3×10-5/℃程度、銅−亜鉛合金の線膨張係数は1.9×10-5/℃程度である。
【0049】
以上の構成により、昇温時には、低膨張部54dより高膨張部54gは軸方向に伸びるため、ダストリップ54bの先端が油切り62から離隔する方向の力を受けるため、リップ間空間Sの大気への開放がより低圧で行われるようになる。従って、回転停止時にリップ間空間Sで生じる負圧が小さくなり、油切り62対する各リップ54a,54bの吸着を抑制することが可能となる。
【0050】
なお、図4(A)に示す実施形態では、低膨張部54dを内径側に配置し、高膨張部54gを外径側に配置しているが、これとは逆に低膨張部54dを外径側に、高膨張部54gを外径側に配置しても同様の作用効果が得られる。
【0051】
以上の説明では、ダストリップ54bに低膨張部54dおよび高膨張部54gを設けた構成を例示したが、メインリップ54aおよびダストリップ54bの油切り62に対する吸着防止は、低膨張部54dおよび高膨張部54gを用いない、以下の構成のシール装置50でも達成することができる。
【0052】
図5に示すシール装置50では、芯金541として、主芯金541aと補助芯金541bとを積層状態で設けている。主芯金541aの先端に、メインリップ54aを有する第1先端リップ部542aが形成され、補助芯金541bの先端にダストリップ54bを有する第2先端リップ部542bが形成されている。補助芯金541bの外周面が仕切り板55の内周に圧入固定され、補助芯金541bの内周に主芯金541aが圧入固定されている。第1先端リップ部542aと第2先端リップ部542bとは分離した状態にあり、両者は独立して弾性変形可能である。
【0053】
補助芯金541bの先端は、主芯金541aの先端を越えて軸受内部側に延び、第1先端リップ部542aの内径側に達している。第1先端リップ部542aと補助芯金541bの対向面間には、僅かな隙間がある。そのため、第1先端リップ部542aは補助芯金541bと接触するまでは内径側に変形可能であるが、補助芯金541bとの接触後は第1先端リップ部542aの内径側への変形が規制される。
【0054】
また、補助芯金541bの先端は、ダストリップ54bの基端を越えて軸受内部側に延びている。そのため、第2先端リップ部542bの弾性変形量が制限を受け、これに応じてダストリップ54bの弾性変形も制限を受けることになる。
【0055】
以上の構成から、メインリップ54aとダストリップ54bの間のリップ間空間Sで負圧が発生しても、メインリップ54aおよびダストリップ54bの双方がリップ間空間Sの縮小方向に変形し難くなる。従って、両リップ54a,54bの油切り62に対する吸着を防止することができ、両リップ54a,54bの摩耗進行を抑えることができる。
【0056】
図6に、シール装置50の他の構成例の要部を示す。このシール装置50では、油切り62に、リップ間空間Sと大気とを連通する通気路63が形成されており、図6では、油切り62に形成した半径方向のストレートな貫通孔62cで通気路63を形成した場合を例示している。貫通孔62cの外径端は、リップ間空間Sに開口し、内径端は油切り62の内周面62dと車軸2の外周面との間の空間Saに開口している。油切り62の内周面62dと車軸2の外周面との間の空間Saは、油切り62と車軸2との間の微小な隙間を介して大気とつながっている(以下、この空間Saを「大気側空間」と称する)。
【0057】
このシール装置50における通気路63以外の構成は、図2に示すシール装置50から高膨張部54gを取り去った形態と同じであるので、重複説明を省略する。
【0058】
図6に示すシール装置50において、車軸2が回転し、内輪20が外輪10に対して回転すると、リップ間空間S内の温度が上昇し、リップ間空間S内の膨張した空気が通気路63を介して大気側空間Saに放出される。その一方、回転停止後の温度低下時には、リップ間空間Sの減圧に伴って大気側空間Saからリップ間空間Sに空気が流入する。これにより、リップ間空間Sが常時大気圧に保持されるため、メインリップ54aとダストリップ54bの油切り62に対する吸着を防止することができる。
【0059】
図7は、図6に示すシール装置50の通気路63としての貫通孔62fに、通気路63を開閉する弁部材3の一例として、ベント部(差圧弁)を取り付けた例である。図示例の貫通孔62fは大径部62f1と小径部62f2とを有する段付き孔であり、図示例では両者を同心状態にした場合を例示している。この貫通孔62fの大径部62f1内周にベント部3が固定されている。
【0060】
ベント部3はゴム等の弾性材料からなり、貫通孔62fの内周に嵌合固定した筒部3cと、筒部3cから大気側空間Sa側に突出した半球形状の弁部3aとを有する。弁部3aの頂部に直線状の切れ込み3eが形成されている。リップ間空間S側と大気側空間Saとの間に一定以上の差圧を生じると、弁部3aの弾性変形により切れ込み3eが開いてリップ間空間Sと大気側空間Saとを連通させる一方で、差圧がない若しくは小さい状態では、弁部3aの弾性復帰により切れ込み3eが閉じてリップ間空間Sと大気側の空間Saを隔絶させる。従って、軸受の運転に伴ってリップ間空間Sの圧力が上昇すると、ベント部3が開いてリップ間空間Sを大気に開放する。同様にリップ間空間Sが負圧になった場合でも、ベント部3が開いてリップ間空間Sを大気に開放する。そのため、リップ間空間Sを軸受の運転状態を問わず大気圧と同等程度に保持することができ、メインリップ54aとダストリップ54bの油切り62に対する吸着を防止することができる。また、リップ間空間Sと大気側の空間Saの間の差圧が小さい時は、ベント部3が閉じているため、リップ間空間Sからの潤滑剤の漏洩やリップ間空間Sへの塵埃や水等の浸入を抑制できる。
【0061】
図8は、通気路63としての貫通孔62eに、弁部材3として、遠心力に応じて開閉する遠心力作用弁を取り付けた例である。図示例の貫通孔62eは大径部62e1と小径部62e2とを有する段付き孔であり、図示例では両者を偏心状態にした場合を例示している。この貫通孔62eの大径部62e1内周に遠心力作用弁3が固定されている。
【0062】
図8に例示する遠心力作用弁3は、一定以上の遠心力の作用下で開放する一方、それ以下の遠心力の作用下では閉じるもので、貫通孔62eの内周に嵌合固定した筒部3iと、筒部3i内周の直径方向の対向位置から互いに接近方向に延びる板状の弁体3fとを主要な構成要素とするものである。筒部3iおよび弁体3fはゴム等の弾性材料で一体形成され、両弁体3fは、図中に実線と二点差線で示すように、筒部3iとの境界部分を中心として弾性的に揺動可能である。
【0063】
軸受の運転中は、弁体3fに作用する遠心力により、実線で示すように、2つの弁体3fが弾性変形し、これらの先端が離反した状態にある。そのため、リップ間空間Sと大気側の空間Saとの間で空気の流通が可能であり、高温化してもリップ間空間Sが高圧となることがない。そのため、軸受の停止後のリップ間空間Sでの負圧の発生を防止することができ、メインリップ54aとダストリップ54bの油切り62に対する吸着を防止することができる。その一方で、軸受の停止中は、弁体3fが弾性復帰して、二点鎖線で示すように、弁体3fの先端同士が密着状態となり、貫通孔62eが閉鎖された状態となる。そのため、リップ間空間Sからの潤滑剤の漏洩やリップ間空間Sへの塵埃や水等の浸入を抑制できる。
【0064】
図8では、一定以上の遠心力の作用下で開放する一方、それ以下の遠心力の作用下では閉じる遠心力作用弁3を例示しているが、これとは逆に、一定以上の遠心力の作用下で閉じ、それ以下の遠心力の作用下で開放する遠心力作用弁3も使用可能である。かかる構成の遠心力作用弁3は、図8に示す弁体3fを、自然状態で弁体3fが車軸の内径側に向かって傾斜し、遠心力の作用下で両弁体3fが衝合するように形成することで得ることができる。この場合、軸受停止中に貫通孔62eが開放するので、リップ間空間Sでの負圧発生を防止することができる。
【0065】
図9は、通気路63にラビリンス構造を設けるため、貫通孔62gに切欠き付きのピン4を挿入・固定した例である。貫通孔62gは、大径部62g1および小径部62g2を有する段付き孔状をなし、大径部62g1と小径部62g2との間にテーパ状の中間部62g3が形成されている。この貫通孔62gの大径部62g1内周面に、円周方向一部領域を軸方向全長にわたって切り欠いた切り欠き部4aを有するピン4が圧入等の手段で固定されている。
【0066】
この構成であれば、通気路63としての小径部62g2、中間部62g3、および切り欠き部4aを介してリップ間空間Sと大気側の空間Saとが常時連通状態となるため、軸受運転中のリップ間空間Sの昇圧や軸受停止中のリップ空間の減圧を防止することができ、メインリップ54aとダストリップ54bの油切り62に対する吸着を防止することができる。また、切り欠き部4aの存在により、貫通孔62gが狭小幅でかつ屈曲したラビリンス構造となるので、リップ間空間Sからの潤滑剤の漏洩やリップ間空間Sへの塵埃や水等の浸入を抑制することができる。この種のラビリンス構造として、微小な貫通孔を油切り62に直接形成しようとすると、加工が困難となるが、上記構成であれば、低コストにラビリンス構造を得ることができる。
【0067】
図10は、図9と同様に、通気路63にラビリンス構造を設けた他例を示す。このシール装置は、油切り62を半径方向および軸方向に屈曲した分割線で分割することで、軸方向一方側の第1部材62hと軸方向他方側の第2部材62iとに区画し、両部材62h,62iの分割面間に通気路63を介在させたものである。第1部材62hの端面の内径側、および第2部材62iの端面の外径側には、それぞれ円筒状の薄肉部62h1,62i1が突出して形成され、これら薄肉部62h1,62i1は、第1部材62hの薄肉部62h1の先端面を第2部材62iの端面に当接させ、第2部材62iの薄肉部62i1の先端面を第1部材62hの端面に当接させた状態で嵌合されている。第1部材62hの薄肉部62h1の外径面と、第2部材62iの薄肉部62i1の内径面との間の円周方向一部領域には隙間Sd2が形成されている。第1部材62hの薄肉部62h1の先端面、および第2部材62iの薄肉部62i1の先端面に、それぞれに半径方向の溝6c、8cが形成されている。溝6c、8cの円周方向位相は、ずらしておくのが望ましい。以上の構成から、溝6c、8cと隙間Sd2からなる通気路63が形成される。
【0068】
以上の構成から、リップ間空間S内が通気路を介して大気側の空間Saと連通状態となり、軸受の運転中および停止中を問わずリップ間空間Sは常時大気圧となるため、メインリップ54aとダストリップ54bの油切り62に対する吸着を防止することができる。この際、通気路63は、狭小幅でかつ屈曲したラビリンス構造を有するので、リップ間空間Sからの潤滑剤の漏洩や塵埃や水等のリップ間空間Sへの浸入を防止することができる。
【0069】
図11に、単列の深溝玉軸受からなる軸受装置を示す。深溝玉軸受80は、外輪81、内輪82、転動体としての玉83、保持器84、およびシール装置50を備える。外輪81はその内周面に玉83の外側軌道面81aを有し、内輪82はその外周面に玉83の内側軌道面82aを有する。外側軌道面81aと内側軌道面82aとの間に、複数の玉83が、保持器84に保持された状態で、円周方向で等配置されている。
【0070】
外輪81の肩部81b内周面には、環状の取付溝81cが形成されている。この取付け溝81cに、芯金95bおよび芯金95bを被覆する被覆部95aからなるシール部材54の外径端が嵌着されている。被覆部95aはゴム等の弾性材料からなり、その先端には、複数(図面では3つ)のリップ95d1、95d2、95hが設けられている。このうち、被覆部95aの内径端に設けられた2つのリップ95d1、95d2は、内輪82の肩部82b外周面に設けた環状のシール溝82cと肩部82bにそれぞれ摺接し、軸受80の軸方向両側を密封する。残りの一つは副リップ95hであり、この副リップ95hは、シール溝82cと肩部82bに摺接する2つのリップ95d1、95d2よりも外径側に形成され、先端を内輪82の外周面に近接させている。
【0071】
芯金95bの内径端よりも内径側の被覆部95aの先端には、軸方向の貫通孔95fが設けられている。この貫通孔95fの一方の開口部、例えば軸受内部側の開口部は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eにより閉塞されている。このフィルム95eの外径側から軸受内部側に向けて副リップ95hが延び、内輪82の外周面に近接している。
【0072】
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eは、テトラフルオロエチレン(PTFE)のファインパウダーと成形助剤とを混合したペーストを成形し、得られた成形体から成形助剤を除去した後、高温,高速度で延伸し、さらに焼成することにより得られるもので、例えば、ジャパンゴアテックス株式会社製の商品名ゴアテックスオレオベントフィルターパッチタイプが使用可能である。
【0073】
一軸延伸の場合には、ノード(折畳み結晶)が延伸方向に対して直角に伸びる細い島状となっていて、このノード間を繋ぐようにすだれ状にフィブリル(折畳み結晶が延伸により解けて引き出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している。これにより、フィブリル間又はフィブリルとノードとで画された空間が空孔を形成する微細な網目構造となっている。また、二軸延伸の場合には、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の微細な網目構造となっている。延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、一軸延伸及び二軸延伸のいずれの方法により製造されたものでも、通気材として使用することができる。
【0074】
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、前述したフィブリルとノード(両者は繊維状物に相当する)が連結してなる微細な網目構造によって多孔質構造となっている。このフィブリル及びノードの表面を、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体1質量部と、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体0.01質量部以上100質量部以下と、からなる含フッ素重合体組成物で被覆すると、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの耐水性、撥油性、および耐油性が向上する。
【0075】
例示した深溝玉軸受等をはじめとする転がり軸受では、軸受内部側と軸受外部側をシール部材54によって完全に隔絶すると、軸受運転中に軸受80の温度が上昇した際に、軸受内部空間の空気の膨張によってシール部材54が変形し、リップ95d1、95d2がシール溝82cに吸着する場合がある。
【0076】
本発明では、被覆部95aに貫通孔95fを設け、かつ通気性を有する延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eで貫通孔95fを閉塞しているので、軸受内部と軸受外部が貫通孔95fを介して連通状態にあり、軸受内部と軸受外部間で圧力差を生じにくい。そのため、圧力差によるシール部材54の変形を防止することができ、リップ95d1、95d2のシール溝82cへの吸着を防止することができる。また、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eは、通気性は有するものの液体および固体は通過しない性質を有するので、水、油、塵埃等が貫通孔95fを介して軸受内部に浸入することがなく、かつグリース等の潤滑剤が貫通孔95fを介して軸受外部に漏出することもない。
【0077】
特に本発明では、貫通孔95fが芯金95bの内径側に、芯金95bを避ける形で形成されているので、貫通孔を有する専用の芯金95bを準備する必要がなく、既存の芯金をそのまま使用することができる。従って、設備投資を抑制して低コスト化を図ることができる。延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eで貫通孔95fを閉塞しただけでは、経時的に、軸受内部に封入されたグリース等の潤滑剤がフィルム95eに付着し、通気性を阻害するおそれがあるが、上記のようにシール部材95に副リップ95hを設け、これを内輪82の外周面に近接させれば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eよりも軸受内部側に非接触シールを構成することができ、フィルム95eへの潤滑剤の付着を防止することができる。
【0078】
図11に示す軸受装置のシール部材54は、深溝玉軸受だけでなく、他の転がり軸受(例えばアンギュラ玉軸受)のシール部材としても使用することが可能である。また、図1等に示す複列の軸受装置のシール部材54としても使用することができる。また、以上に述べた延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム95eは、図6に示す軸受装置の通気路63に装着してもよい。
【0079】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内であれば、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 軸受
10 外輪
12 外側軌道面
20 内輪
22 内側軌道面
30 円すいころ(転動体)
54 シール部材
54a メインリップ
54b ダストリップ
54d 低膨張部
54g 高膨張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に外側軌道面を有する外輪と、外周に内側軌道面を有する内輪と、外側軌道面と内側軌道面間に介在させた転動体と、回転側及び固定側の何れか一方の部材に設けられ、他方の部材と摺接する複数のリップを有するシール部材とを備える軸受装置において、
少なくとも一つのリップに、低膨張部と、低膨張部の内径側もしくは外径側に密着し、低膨張部より線膨張係数の大きい高膨張部とを設けたことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記リップが高膨張部と低膨張部とからなり、高膨張部を低膨張部の表面に貼着した請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記リップに、その突出方向に沿って内径側と外径側とに二分し、二分したうちの一方を高膨張部とし、他方を低膨張部とした部分を設けた請求項1記載の軸受装置。
【請求項4】
高膨張部と低膨張部を異なるゴム材料で形成した請求項1〜3何れか1項に記載の軸受装置。
【請求項5】
低膨張部をフッ素ゴムで形成し、高膨張部をアクリルゴムもしくはニトリルゴムで形成した請求項4記載の軸受装置。
【請求項6】
高膨張部および低膨張部の双方を金属で形成し、これらをリップに埋め込んだ請求項1記載の軸受装置。
【請求項7】
低膨張部をニッケル−鉄合金で形成し、高膨張部を銅、ニッケル、もしくは銅−亜鉛合金の何れかで形成した請求項6記載の軸受装置。
【請求項8】
転動体として複列円錐ころを使用した請求項1〜7何れか1項に記載の軸受装置。
【請求項9】
転動体として複列円筒ころを使用した請求項1〜7何れか1項に記載の軸受装置。
【請求項10】
鉄道車両に用いる請求項8または9記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−47297(P2012−47297A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190897(P2010−190897)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】