軸流形流体機械
【課題】軸流形羽根車の羽根の前縁及び外周近傍の偏流と該羽根の前縁及び外周部の形状を好適な状態として羽根の前縁或いは外周部において流体流の剥離を抑制して、効率の低下、静圧上昇量の低下、振動や騒音が発生しない軸流形流体機械を提供すること。
【解決手段】軸流形羽根車10を、ケーシング22内に配設した軸流形流体機械であって、ボス11と羽根12の上流側辺の交点Aを始点とし、吸込みベルマウス21の変曲点23から半径方向に伸ばした垂面と羽根12の外周との交点Bを終点として、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根の前縁13として定義し、外部から吸込みベルマウス21に流入する流体の流入状況に好適となるように前縁13の形状を決定すると共に、終点(交点B)より下流側ではケーシング22の壁面と羽根車10の外周を略並行とした。
【解決手段】軸流形羽根車10を、ケーシング22内に配設した軸流形流体機械であって、ボス11と羽根12の上流側辺の交点Aを始点とし、吸込みベルマウス21の変曲点23から半径方向に伸ばした垂面と羽根12の外周との交点Bを終点として、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根の前縁13として定義し、外部から吸込みベルマウス21に流入する流体の流入状況に好適となるように前縁13の形状を決定すると共に、終点(交点B)より下流側ではケーシング22の壁面と羽根車10の外周を略並行とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に軸流形羽根車を配設した(納まった)構成の軸流形流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軸流形流体機械1の例を図1及び図2に示す。図1はボックスファン、図2は産業用有圧換気扇の事例である。図1はボス11の外周に羽根12を設けてなる軸流形羽根車10が吸込み部に吸込みベルマウス21を有するケーシング22内に配設された(納まった)構成のボックスファンであり、図2は軸流形羽根車10の上流側部分がケーシング22の外に出ている半開放型の構成の換気扇である。上記のようにボックスファンも換気扇もケーシング22には吸込み部に吸込みベルマウス21を有している。
【0003】
上記従来の吸込み部に吸込みベルマウス21を有するケーシング22内に軸流形羽根車10を配設した軸流形流体機械1において、軸流形羽根車10の設計時に通常は吸込みベルマウス21に流入する流体の流れの状態の影響、即ち流体は軸流形羽根車10に吸込まれ吐出されるわけであり、そのときに流体の流れの状態はベルマウス21の存在により影響を受けるが、その影響を考慮して羽根12の形状を決定していないのが現状である。
【0004】
上記図1及び図2に示すように、従来のボックスファンや産業用有圧換気扇は、ケーシング22の吸込みベルマウス21の上流側は開放された空間となっている事が多く、吸込みベルマウス21の部分で流体の流路断面が急に縮小するため、縮流効果によってケーシング22と軸流羽根車10とを備えて構成された軸流形回転機械1の流路の外周側における流体の流入速度が増加してその分流路中心近傍の流入速度が減少し、更に外周部において半径方向内向きの速度成分を有する偏流になることが知られている。また、図2に示すような半分開放のケーシング22となっている軸流形流体機械1の場合には、軸流形羽根車10のケーシング22に覆われていない部分では外周部から半径方向内向きに流体が流入することになる。
【特許文献1】特開昭61−142396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸流形羽根車10の例えば設計時に、上記のようにケーシング22の吸込みベルマウス21の部分或いはその上流における流体の偏流状態を考慮しない場合には、軸流形羽根車10の羽根12の前縁及び外周部または少なくともその一方においては偏流と羽根12の前縁及び外周部の形状が好適とならず、軸流形羽根車10の羽根12の前縁或いは外周部において流体流の剥離が増大して、軸流形流体機械1の効率の低下、静圧上昇量の低下、振動や騒音が発生する等の問題があった。また、上記軸流形流体機械1がポンプの場合には、キャビテーション(局所的な静圧の低下)が生じるという問題もあった。
【0006】
なお、特許文献1においては、軸流ファン羽根車を対象とし、上記偏流による剥離渦の発生による流入損失の解決策として、軸流ファン羽根車の羽根(ブレード)の軸流ファン入口側寄りの外周を吸込み側に傾斜させたことを特徴とするプロペラ形流体機械が開示されている。しかしながら、このような構成のプロペラ形流体機械では、傾斜の角度範囲及び傾斜領域が不明確であった。また、上記特許文献1のように偏流を考慮して流体の流れがブレードに沿うようにブレードの入口側より外周を吸込み側に傾斜させる場合、好適な傾斜角度の範囲が存在する一方で、該好適な傾斜角度の範囲を逸脱した傾斜角度に設定した場合にはかえって乱流境界層剥離が増大するという問題がある。
【0007】
本願発明は上述の点に鑑みてなされたもので、吸込みベルマウス部或いはその上流における流体の偏流状態と、そのように偏流した流体が軸流形流体機械に流入することを考慮し、当該軸流形流体機械の羽根車の羽根の前縁及び外周部での偏流に対して該羽根の前縁及び外周部の形状を好適な状態として羽根の前縁或いは外周部において流体流の流れの剥離を抑制して、効率の低下や静圧上昇量の低下を発生すること無く、振動や騒音を低減した軸流形流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ボス外周に複数枚の羽根を設けてなる軸流形羽根車を、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に配設した軸流形流体機械であって、前記軸流羽根車は前記ボスと前記羽根の上流側辺の交点Aを始点とし、前記吸込みベルマウスの変曲点から半径方向に伸ばした前記ボス中心軸線と垂直な平面とと前記羽根の外周との交点Bを終点として、前記始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで前記羽根の前縁として定義し、外部から前記軸流羽根車に流入する流体の流入の向きに好適となるように前記前縁形状を決定すると共に前記終点(交点B)より下流側では前記ケーシング壁面と前記羽根車外周を略平行とした羽根車であることを特徴とする。
【0009】
図3は上記前縁定義を説明するための図であり、ボス11と羽根12の上流側辺の交点Aを始点とし、吸込みベルマウス21の変曲点23から吸込ベルマウス21の半径方向にボスの中心軸線と垂直に伸ばした平面と羽根12の外周との交点Bを終点として、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根12の前縁13として定義する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軸流形流体機械において、前記軸流形羽根車は該羽根車の回転軸と同心の仮想円筒と前記羽根のキャンバ面との交線に対し、前記前縁において引いた接線と前記ボスの中心軸線との2つの直線が成す角度として定義される羽根角度βが、前記前縁に沿った任意位置における羽根角度βと前記終点(交点B)における羽根角度βBとの間の角度差Δβ=β−βBとして定義される角度差Δβに対し、前記ボス側端部を始点とする無次元前縁距離が0.9の位置で前記Δβが5°以上となること、及び前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲5°≦Δβ≦25°の関係を満たすこと、の少なくとも一方の条件を満足する羽根車であることを特徴とする。なお、本発明においては、前縁距離とは前記始点(交点A)から前記終点(交点B)までの前縁に沿った長さを意味する。なお、上記羽根角度βはある平面上において成す角度であるから、具体的には前記接線と前記平面上における前記中心軸線の平行線とが成す角度であることは言うまでも無い。
【0011】
図4を用いて説明すると、軸流形羽根車10の回転軸(ボス11)と同心の仮想円筒110と羽根12のキャンバ面との交線に対し、前縁13において引いた接線(例えば111,112)とボス11の中心軸線113との2つの直線(換言すれば2種類の直線、即ち接線と中心軸線)が成す角度として定義される羽根角度βが、前縁13に沿った任意位置における羽根角度βと終点(交点B)における羽根角度βBとの間の角度差Δβの好適範囲として上記図3における始点(交点A)と終点(交点B)の間を前縁距離の全長とし、これを無次元化した無次元前縁距離の全長の値を1とした場合、始点からの前記無次元前縁距離が0.9の位置で羽根角度差Δβを5°以上となること及び、前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲で5°≦Δβ≦25°の関係を満たすことの2つの条件のうち、少なくとも1つの条件を満たすこととした。なお、図4(a)は(b)のA−A矢視、図4(b)は羽根車の一部を半径方向外側から中心に向かってみた図である。また、12aは羽根12の外周、矢印114は流体の流れ方向を示す。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の軸流形流体機械において、前記軸流形羽根車を駆動する駆動機を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根の前縁として定義し、外部から吸込みベルマウスに流入する流体の流入状況に好適となるように前縁形状を決定すると共に終点(交点B)より下流側ではケーシング壁面と羽根車外周を略平行としたことにより、軸流形羽根車の羽根の前縁及び外周部において、既に偏流している流体が当該羽根車に流入する向き(ボスの中心軸線に対する角度)に対して前縁部の向き(ボスの中心軸線に対する角度)を適合させて前記前縁及びその近傍からの流体流れの剥離を抑制できる。即ちこのように軸流形羽根車の羽根の向き(ボスの中心軸線に対する角度)を軸流形流体機械の外部から流入する流体の流入の向き(ボスの中心軸線に対する角度)に適合させることにより、軸流形流体機械の効率低下の防止や静圧上昇量の低下防止を図り、騒音や振動の発生を抑制できると共に、羽根車の外周を吸込みベルマウスの下流部分においてケーシング内周と略平行にすることにより、該平行部分において羽根車外周部の圧力面から負圧面への漏れを低減することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、軸流羽根車に吸込みベルマウスを有するケーシングを備えてなる軸流形回転機械の当該軸流形羽根車に対し、偏流した流体の流入流速に起因して、軸流形流体機械の外周部において相対流れ角が急変した流体の流入流れの向き(ボスの中心軸心に対する角度)に対し、軸流形羽根車外周部分においても流体が羽根に沿って流れ、剥離を生じない範囲に前記羽根の前縁における羽根角度(ボスの中心軸線に対する角度)の分布が好適に調整され、羽根面からの流体の流れの剥離が抑制されて、軸流形流体機械の効率上昇、静圧上昇量を向上させる効果がある。また、本発明に係る軸流形流体機械がファンの場合には流体の流れの羽根面からの剥離防止による騒音低下の効果もあり、ポンプの場合は前縁における流体流れの衝突を回避することにより局所的な静圧降下を防止してキャビテーションを抑制する効果もある。
【0015】
なお、図5に示すように、羽根周速は、101としてしめされているが、この周速で回転する羽根車に対して流体の流入速度が偏流によってその速度の値が102から103でしめされるように増大した場合、相対速度の値は104で示される状態から105で示される状態に増大し、相対的流入角度はβ1からβ2に減少する。前記終点(交点B)において偏流による流体の流入流速の増大を考慮するとβBの値は減少する。従って、Δβ=β−βBの値は流体の偏流を考慮しない場合と比較して増大することになる。羽根の中央部では、偏流による流体の流入速度は減少するので、βが増加し、その位置におけるΔβは増加する傾向がある。このように偏流を考慮するとΔβは増加する傾向を示すが、偏流による流入流速の増大量や減少量には限界がある。
【0016】
また、流体の流入流速を軸流形流体機械の吸込側の全面について一様と仮定した場合、羽根車の内径側(換言すれば、羽根車において半径の比較的小さい領域)では流入速度は外周側(換言すれば羽根車において、その外周も含めて半径の比較的大きい領域)と等しいが羽根周速が半径に比例して減少するために内周側になるほど前記羽根角度βは小さくなる傾向があり、前記Δβは減少する傾向がある。また元々流体の偏流を考慮しないで設計した羽根車の羽根の前縁における羽根角度βの分布も設計条件により様々であるので、上記の効果を全て加味した偏流を考慮した軸流形羽根車として請求項2に記載の発明のようにΔβの範囲を好適条件として設定した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施の形態例〕
図6は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図で、図6(a)、(b)は2種類の軸流形羽根車10の羽根12の子午面形状を示す図である。同図(a)は子午面1の形状を、同図(b)は子午面2の形状を夫々示す図で、いずれも始点(ボス11と羽根12の上流側辺の交点A)と終点(吸込みベルマウスの変曲点23から半径方向に伸ばした垂面と羽根12との交点B(図3参照))を自由曲線で滑らかに結んで羽根12の前縁13としている。なお、本実施形態例ではボックスファンの事例を示す。子午面1及び子午面2はその始点(交点A)が終点(交点B))より下流側に位置し、子午面1の前縁13−1は図6(a)に示すように始点Aと終点Bを略直線に近い自由曲線としており、子午面2の前縁13−2は図6(b)に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0018】
図7は図6(a)の子午面1の前縁13−1、図6(a)の子午面2の前縁13−2における上記角度差Δβの分布を示す図である。図7において縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβ=β−βBを示す。図中の曲線Aは子午面1に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面1に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面2に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面2に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。
【0019】
図7により、子午面2の様に前縁13−2を上流側に張り出すと、角度差Δβは若干大きくなる(曲線C参照)が、請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、上記流体の偏流を考慮すると特に無次元子午面距離が1.0〜0.9の間でΔβが急増し、無次元子午面距離0.9以下では10°〜15°の間、即ち請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入っていることが分かる。無次元子午面距離が1.0〜0.9の間でΔβが急増する理由は、この領域で上記偏流による外周部の流体の流入流速の増大の影響が大きいためである。
【0020】
〔第2の実施の形態例〕
図8は第2の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。なお、本実施形態例では第1の実施形態例と同様、ボックスファンの事例を示す。本実施形態例では羽根車の羽根の子午面形状及び設計仕様は上記第1の実施形態例と同一で、設計コンセプトを変更した例である。図8において、図7と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面1に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面1に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面2に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面2に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。
【0021】
図8に示すように、設計コンセプトの相違から、図7とはΔβの分布は異なっているが、曲線A、Cに示すように子午面1、2に対して流体が一様に流入として設計した場合は、角度差Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線B、Dに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0022】
〔第3の実施の形態例〕
図9は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図で、図9(a)、(b)は2種類の羽根車の羽根の子午面形状を示す図で、同図(a)は子午面3の形状を、同図(b)は子午面4の形状を夫々示す図である。なお、本実施形態例ではクリーンファンの事例を示す。子午面3及び子午面4はその始点A及び終点Bが軸方向同位置に位置し、子午面3の前縁13−3は図9(a)に示すように始点Aと終点Bを直線で結んだ形状としており、子午面4の前縁13−4は図9(b)に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。設計仕様(流量、回転数、静圧上昇量)及び設計コンセプトは両子午面で同じであるとして設計した。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0023】
図10は第3の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。図10において、図7及び図8と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面3に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面3に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面4に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面4に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。本実施形態例でも、曲線A、Cに示すように子午面3,4に対して流体が一様流入として設計した場合は、角度差Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線B、Dに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0024】
〔第4の実施の形態例〕
図11は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。図示するように、子午面5はその始点A及び終点Bが軸方向同位置に位置し、子午面5の前縁13−5は図11に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。なお、本実施形態例では、ボックスファンの事例を示す。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0025】
図12は第4の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。図12において、図7、図8、図10と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面5に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面5に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。本実施形態例でも、曲線Aに示すように子午面5に対して流体が一様流入として設計した場合は、Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線Bに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0026】
上記実施形態例では、軸流形流体機械として、ボックスファン(第1、第2、第4の実施形態例)、クーリングファン(第3の実施形態例)を例に説明したが、吸込みベルマウスを持つケーシングと組み合わせた場合に、羽根車への流入に偏流が生じ、外周部で流入する流体の流速が増大するために羽根の内径側でΔβが増大する原理については共通なので、本願発明は斜流ファンの入口部で流路断面積に急減少がある場合にも適用できる。また、ファンなどの気体機械にとどまらずポンプの液体を移送する流体機械にも適用できる。
【0027】
なお、図示は省略するが、上記軸流形羽根車10のボス11はモータ等の駆動機の駆動回転軸に直接又は間接的に連結され、軸流形流体機械を構成する。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のボックスファンの概略構成例を示す図である。
【図2】従来の産業用有圧換気扇の概略構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の前縁定義を説明するための図である。
【図4】軸流形流体機械の羽根車の羽根角度βの定義の説明図である。
【図5】偏流による流体の流入の流れ角の変化を説明するための図である。
【図6】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第1、第2実施形態)
【図7】本発明の第1実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図9】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第3実施形態)
【図10】本発明の第3実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図11】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第4実施形態)
【図12】本発明の第4実施形態のΔβ分布を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 軸流形流体機械
10 軸流形羽根車
11 ボス
12 羽根
13 前縁
21 吸込みベルマウス
22 ケーシング
23 変曲点
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に軸流形羽根車を配設した(納まった)構成の軸流形流体機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軸流形流体機械1の例を図1及び図2に示す。図1はボックスファン、図2は産業用有圧換気扇の事例である。図1はボス11の外周に羽根12を設けてなる軸流形羽根車10が吸込み部に吸込みベルマウス21を有するケーシング22内に配設された(納まった)構成のボックスファンであり、図2は軸流形羽根車10の上流側部分がケーシング22の外に出ている半開放型の構成の換気扇である。上記のようにボックスファンも換気扇もケーシング22には吸込み部に吸込みベルマウス21を有している。
【0003】
上記従来の吸込み部に吸込みベルマウス21を有するケーシング22内に軸流形羽根車10を配設した軸流形流体機械1において、軸流形羽根車10の設計時に通常は吸込みベルマウス21に流入する流体の流れの状態の影響、即ち流体は軸流形羽根車10に吸込まれ吐出されるわけであり、そのときに流体の流れの状態はベルマウス21の存在により影響を受けるが、その影響を考慮して羽根12の形状を決定していないのが現状である。
【0004】
上記図1及び図2に示すように、従来のボックスファンや産業用有圧換気扇は、ケーシング22の吸込みベルマウス21の上流側は開放された空間となっている事が多く、吸込みベルマウス21の部分で流体の流路断面が急に縮小するため、縮流効果によってケーシング22と軸流羽根車10とを備えて構成された軸流形回転機械1の流路の外周側における流体の流入速度が増加してその分流路中心近傍の流入速度が減少し、更に外周部において半径方向内向きの速度成分を有する偏流になることが知られている。また、図2に示すような半分開放のケーシング22となっている軸流形流体機械1の場合には、軸流形羽根車10のケーシング22に覆われていない部分では外周部から半径方向内向きに流体が流入することになる。
【特許文献1】特開昭61−142396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸流形羽根車10の例えば設計時に、上記のようにケーシング22の吸込みベルマウス21の部分或いはその上流における流体の偏流状態を考慮しない場合には、軸流形羽根車10の羽根12の前縁及び外周部または少なくともその一方においては偏流と羽根12の前縁及び外周部の形状が好適とならず、軸流形羽根車10の羽根12の前縁或いは外周部において流体流の剥離が増大して、軸流形流体機械1の効率の低下、静圧上昇量の低下、振動や騒音が発生する等の問題があった。また、上記軸流形流体機械1がポンプの場合には、キャビテーション(局所的な静圧の低下)が生じるという問題もあった。
【0006】
なお、特許文献1においては、軸流ファン羽根車を対象とし、上記偏流による剥離渦の発生による流入損失の解決策として、軸流ファン羽根車の羽根(ブレード)の軸流ファン入口側寄りの外周を吸込み側に傾斜させたことを特徴とするプロペラ形流体機械が開示されている。しかしながら、このような構成のプロペラ形流体機械では、傾斜の角度範囲及び傾斜領域が不明確であった。また、上記特許文献1のように偏流を考慮して流体の流れがブレードに沿うようにブレードの入口側より外周を吸込み側に傾斜させる場合、好適な傾斜角度の範囲が存在する一方で、該好適な傾斜角度の範囲を逸脱した傾斜角度に設定した場合にはかえって乱流境界層剥離が増大するという問題がある。
【0007】
本願発明は上述の点に鑑みてなされたもので、吸込みベルマウス部或いはその上流における流体の偏流状態と、そのように偏流した流体が軸流形流体機械に流入することを考慮し、当該軸流形流体機械の羽根車の羽根の前縁及び外周部での偏流に対して該羽根の前縁及び外周部の形状を好適な状態として羽根の前縁或いは外周部において流体流の流れの剥離を抑制して、効率の低下や静圧上昇量の低下を発生すること無く、振動や騒音を低減した軸流形流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、ボス外周に複数枚の羽根を設けてなる軸流形羽根車を、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に配設した軸流形流体機械であって、前記軸流羽根車は前記ボスと前記羽根の上流側辺の交点Aを始点とし、前記吸込みベルマウスの変曲点から半径方向に伸ばした前記ボス中心軸線と垂直な平面とと前記羽根の外周との交点Bを終点として、前記始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで前記羽根の前縁として定義し、外部から前記軸流羽根車に流入する流体の流入の向きに好適となるように前記前縁形状を決定すると共に前記終点(交点B)より下流側では前記ケーシング壁面と前記羽根車外周を略平行とした羽根車であることを特徴とする。
【0009】
図3は上記前縁定義を説明するための図であり、ボス11と羽根12の上流側辺の交点Aを始点とし、吸込みベルマウス21の変曲点23から吸込ベルマウス21の半径方向にボスの中心軸線と垂直に伸ばした平面と羽根12の外周との交点Bを終点として、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根12の前縁13として定義する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軸流形流体機械において、前記軸流形羽根車は該羽根車の回転軸と同心の仮想円筒と前記羽根のキャンバ面との交線に対し、前記前縁において引いた接線と前記ボスの中心軸線との2つの直線が成す角度として定義される羽根角度βが、前記前縁に沿った任意位置における羽根角度βと前記終点(交点B)における羽根角度βBとの間の角度差Δβ=β−βBとして定義される角度差Δβに対し、前記ボス側端部を始点とする無次元前縁距離が0.9の位置で前記Δβが5°以上となること、及び前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲5°≦Δβ≦25°の関係を満たすこと、の少なくとも一方の条件を満足する羽根車であることを特徴とする。なお、本発明においては、前縁距離とは前記始点(交点A)から前記終点(交点B)までの前縁に沿った長さを意味する。なお、上記羽根角度βはある平面上において成す角度であるから、具体的には前記接線と前記平面上における前記中心軸線の平行線とが成す角度であることは言うまでも無い。
【0011】
図4を用いて説明すると、軸流形羽根車10の回転軸(ボス11)と同心の仮想円筒110と羽根12のキャンバ面との交線に対し、前縁13において引いた接線(例えば111,112)とボス11の中心軸線113との2つの直線(換言すれば2種類の直線、即ち接線と中心軸線)が成す角度として定義される羽根角度βが、前縁13に沿った任意位置における羽根角度βと終点(交点B)における羽根角度βBとの間の角度差Δβの好適範囲として上記図3における始点(交点A)と終点(交点B)の間を前縁距離の全長とし、これを無次元化した無次元前縁距離の全長の値を1とした場合、始点からの前記無次元前縁距離が0.9の位置で羽根角度差Δβを5°以上となること及び、前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲で5°≦Δβ≦25°の関係を満たすことの2つの条件のうち、少なくとも1つの条件を満たすこととした。なお、図4(a)は(b)のA−A矢視、図4(b)は羽根車の一部を半径方向外側から中心に向かってみた図である。また、12aは羽根12の外周、矢印114は流体の流れ方向を示す。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の軸流形流体機械において、前記軸流形羽根車を駆動する駆動機を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで羽根の前縁として定義し、外部から吸込みベルマウスに流入する流体の流入状況に好適となるように前縁形状を決定すると共に終点(交点B)より下流側ではケーシング壁面と羽根車外周を略平行としたことにより、軸流形羽根車の羽根の前縁及び外周部において、既に偏流している流体が当該羽根車に流入する向き(ボスの中心軸線に対する角度)に対して前縁部の向き(ボスの中心軸線に対する角度)を適合させて前記前縁及びその近傍からの流体流れの剥離を抑制できる。即ちこのように軸流形羽根車の羽根の向き(ボスの中心軸線に対する角度)を軸流形流体機械の外部から流入する流体の流入の向き(ボスの中心軸線に対する角度)に適合させることにより、軸流形流体機械の効率低下の防止や静圧上昇量の低下防止を図り、騒音や振動の発生を抑制できると共に、羽根車の外周を吸込みベルマウスの下流部分においてケーシング内周と略平行にすることにより、該平行部分において羽根車外周部の圧力面から負圧面への漏れを低減することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、軸流羽根車に吸込みベルマウスを有するケーシングを備えてなる軸流形回転機械の当該軸流形羽根車に対し、偏流した流体の流入流速に起因して、軸流形流体機械の外周部において相対流れ角が急変した流体の流入流れの向き(ボスの中心軸心に対する角度)に対し、軸流形羽根車外周部分においても流体が羽根に沿って流れ、剥離を生じない範囲に前記羽根の前縁における羽根角度(ボスの中心軸線に対する角度)の分布が好適に調整され、羽根面からの流体の流れの剥離が抑制されて、軸流形流体機械の効率上昇、静圧上昇量を向上させる効果がある。また、本発明に係る軸流形流体機械がファンの場合には流体の流れの羽根面からの剥離防止による騒音低下の効果もあり、ポンプの場合は前縁における流体流れの衝突を回避することにより局所的な静圧降下を防止してキャビテーションを抑制する効果もある。
【0015】
なお、図5に示すように、羽根周速は、101としてしめされているが、この周速で回転する羽根車に対して流体の流入速度が偏流によってその速度の値が102から103でしめされるように増大した場合、相対速度の値は104で示される状態から105で示される状態に増大し、相対的流入角度はβ1からβ2に減少する。前記終点(交点B)において偏流による流体の流入流速の増大を考慮するとβBの値は減少する。従って、Δβ=β−βBの値は流体の偏流を考慮しない場合と比較して増大することになる。羽根の中央部では、偏流による流体の流入速度は減少するので、βが増加し、その位置におけるΔβは増加する傾向がある。このように偏流を考慮するとΔβは増加する傾向を示すが、偏流による流入流速の増大量や減少量には限界がある。
【0016】
また、流体の流入流速を軸流形流体機械の吸込側の全面について一様と仮定した場合、羽根車の内径側(換言すれば、羽根車において半径の比較的小さい領域)では流入速度は外周側(換言すれば羽根車において、その外周も含めて半径の比較的大きい領域)と等しいが羽根周速が半径に比例して減少するために内周側になるほど前記羽根角度βは小さくなる傾向があり、前記Δβは減少する傾向がある。また元々流体の偏流を考慮しないで設計した羽根車の羽根の前縁における羽根角度βの分布も設計条件により様々であるので、上記の効果を全て加味した偏流を考慮した軸流形羽根車として請求項2に記載の発明のようにΔβの範囲を好適条件として設定した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
〔第1の実施の形態例〕
図6は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図で、図6(a)、(b)は2種類の軸流形羽根車10の羽根12の子午面形状を示す図である。同図(a)は子午面1の形状を、同図(b)は子午面2の形状を夫々示す図で、いずれも始点(ボス11と羽根12の上流側辺の交点A)と終点(吸込みベルマウスの変曲点23から半径方向に伸ばした垂面と羽根12との交点B(図3参照))を自由曲線で滑らかに結んで羽根12の前縁13としている。なお、本実施形態例ではボックスファンの事例を示す。子午面1及び子午面2はその始点(交点A)が終点(交点B))より下流側に位置し、子午面1の前縁13−1は図6(a)に示すように始点Aと終点Bを略直線に近い自由曲線としており、子午面2の前縁13−2は図6(b)に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0018】
図7は図6(a)の子午面1の前縁13−1、図6(a)の子午面2の前縁13−2における上記角度差Δβの分布を示す図である。図7において縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβ=β−βBを示す。図中の曲線Aは子午面1に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面1に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面2に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面2に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。
【0019】
図7により、子午面2の様に前縁13−2を上流側に張り出すと、角度差Δβは若干大きくなる(曲線C参照)が、請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、上記流体の偏流を考慮すると特に無次元子午面距離が1.0〜0.9の間でΔβが急増し、無次元子午面距離0.9以下では10°〜15°の間、即ち請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入っていることが分かる。無次元子午面距離が1.0〜0.9の間でΔβが急増する理由は、この領域で上記偏流による外周部の流体の流入流速の増大の影響が大きいためである。
【0020】
〔第2の実施の形態例〕
図8は第2の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。なお、本実施形態例では第1の実施形態例と同様、ボックスファンの事例を示す。本実施形態例では羽根車の羽根の子午面形状及び設計仕様は上記第1の実施形態例と同一で、設計コンセプトを変更した例である。図8において、図7と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面1に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面1に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面2に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面2に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。
【0021】
図8に示すように、設計コンセプトの相違から、図7とはΔβの分布は異なっているが、曲線A、Cに示すように子午面1、2に対して流体が一様に流入として設計した場合は、角度差Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線B、Dに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0022】
〔第3の実施の形態例〕
図9は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図で、図9(a)、(b)は2種類の羽根車の羽根の子午面形状を示す図で、同図(a)は子午面3の形状を、同図(b)は子午面4の形状を夫々示す図である。なお、本実施形態例ではクリーンファンの事例を示す。子午面3及び子午面4はその始点A及び終点Bが軸方向同位置に位置し、子午面3の前縁13−3は図9(a)に示すように始点Aと終点Bを直線で結んだ形状としており、子午面4の前縁13−4は図9(b)に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。設計仕様(流量、回転数、静圧上昇量)及び設計コンセプトは両子午面で同じであるとして設計した。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0023】
図10は第3の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。図10において、図7及び図8と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面3に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面3に対して流体の偏流を考慮して設計した場合を、曲線Cは子午面4に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Dは子午面4に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。本実施形態例でも、曲線A、Cに示すように子午面3,4に対して流体が一様流入として設計した場合は、角度差Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線B、Dに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0024】
〔第4の実施の形態例〕
図11は本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。図示するように、子午面5はその始点A及び終点Bが軸方向同位置に位置し、子午面5の前縁13−5は図11に示すように始点Aと終点Bを羽根12の外周側(終点B側)を上流側に張り出した自由曲線としている。なお、本実施形態例では、ボックスファンの事例を示す。また、終点Bより下流側はケーシング壁面(図示せず)と略並行としている。
【0025】
図12は第4の実施の形態例の角度差Δβの分布を示す図である。図12において、図7、図8、図10と同様、縦軸は無次元前縁距離を示し、横軸は上記角度差Δβを示し、曲線Aは子午面5に対して流体が一様に流入するとして設計した場合を、曲線Bは子午面5に対して流体の偏流を考慮して設計した場合をそれぞれ示す。本実施形態例でも、曲線Aに示すように子午面5に対して流体が一様流入として設計した場合は、Δβは請求項2の5°≦Δβ≦25°の範囲に入らず、曲線Bに示すように流体の偏流を考慮するとこの範囲に入ることが分かる。
【0026】
上記実施形態例では、軸流形流体機械として、ボックスファン(第1、第2、第4の実施形態例)、クーリングファン(第3の実施形態例)を例に説明したが、吸込みベルマウスを持つケーシングと組み合わせた場合に、羽根車への流入に偏流が生じ、外周部で流入する流体の流速が増大するために羽根の内径側でΔβが増大する原理については共通なので、本願発明は斜流ファンの入口部で流路断面積に急減少がある場合にも適用できる。また、ファンなどの気体機械にとどまらずポンプの液体を移送する流体機械にも適用できる。
【0027】
なお、図示は省略するが、上記軸流形羽根車10のボス11はモータ等の駆動機の駆動回転軸に直接又は間接的に連結され、軸流形流体機械を構成する。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来のボックスファンの概略構成例を示す図である。
【図2】従来の産業用有圧換気扇の概略構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の前縁定義を説明するための図である。
【図4】軸流形流体機械の羽根車の羽根角度βの定義の説明図である。
【図5】偏流による流体の流入の流れ角の変化を説明するための図である。
【図6】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第1、第2実施形態)
【図7】本発明の第1実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図9】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第3実施形態)
【図10】本発明の第3実施形態のΔβ分布を示す図である。
【図11】本発明に係る軸流形流体機械の羽根車の羽根の子午面を示す図である。(第4実施形態)
【図12】本発明の第4実施形態のΔβ分布を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 軸流形流体機械
10 軸流形羽根車
11 ボス
12 羽根
13 前縁
21 吸込みベルマウス
22 ケーシング
23 変曲点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボス外周に複数枚の羽根を設けてなる軸流形羽根車を、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に配設した軸流形流体機械であって、
前記軸流羽根車は前記ボスと前記羽根の上流側辺の交点Aを始点とし、前記吸込みベルマウスの変曲点から半径方向に伸ばした前記ボスの中心軸線と垂直な平面と前記羽根の外周との交点Bを終点として、
前記始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで前記羽根の前縁として定義し、外部から前記軸流羽根車に流入する流体の流入の向きに好適となるように前記前縁形状を決定すると共に、前記終点(交点B)より下流側では前記ケーシング壁面と前記羽根車外周を略平行とした羽根車であることを特徴とする軸流形流体機械。
【請求項2】
請求項1に記載の軸流形流体機械において、
前記軸流形羽根車は該羽根車の回転軸と同心の仮想円筒と前記羽根のキャンバ面との交線に対し、前記前縁において引いた接線と前記ボスの中心軸線との2つの直線が成す角度として定義される羽根角度βが、前記前縁に沿った任意位置における羽根角度βと前記終点(交点B)における羽角度βBとの間の角度差Δβ=β−βBとして定義される角度差Δβに対し、前記ボス側端部を始点とする無次元前縁距離が0.9の位置で前記Δβが5°以上となること、及び前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲5°≦Δβ≦25°の関係を満たすこと、の少なくとも一方の条件を満足する羽根車であることを特徴とする軸流形流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸流形流体機械において、
前記軸流形羽根車を駆動する駆動機を備えたことを特徴とする軸流形流体機械。
【請求項1】
ボス外周に複数枚の羽根を設けてなる軸流形羽根車を、吸込み部に吸込みベルマウスを有するケーシング内に配設した軸流形流体機械であって、
前記軸流羽根車は前記ボスと前記羽根の上流側辺の交点Aを始点とし、前記吸込みベルマウスの変曲点から半径方向に伸ばした前記ボスの中心軸線と垂直な平面と前記羽根の外周との交点Bを終点として、
前記始点(交点A)と終点(交点B)を自由曲線で滑らかに結んで前記羽根の前縁として定義し、外部から前記軸流羽根車に流入する流体の流入の向きに好適となるように前記前縁形状を決定すると共に、前記終点(交点B)より下流側では前記ケーシング壁面と前記羽根車外周を略平行とした羽根車であることを特徴とする軸流形流体機械。
【請求項2】
請求項1に記載の軸流形流体機械において、
前記軸流形羽根車は該羽根車の回転軸と同心の仮想円筒と前記羽根のキャンバ面との交線に対し、前記前縁において引いた接線と前記ボスの中心軸線との2つの直線が成す角度として定義される羽根角度βが、前記前縁に沿った任意位置における羽根角度βと前記終点(交点B)における羽角度βBとの間の角度差Δβ=β−βBとして定義される角度差Δβに対し、前記ボス側端部を始点とする無次元前縁距離が0.9の位置で前記Δβが5°以上となること、及び前記無次元前縁距離の全長の7割以上の範囲5°≦Δβ≦25°の関係を満たすこと、の少なくとも一方の条件を満足する羽根車であることを特徴とする軸流形流体機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸流形流体機械において、
前記軸流形羽根車を駆動する駆動機を備えたことを特徴とする軸流形流体機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−270779(P2007−270779A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100179(P2006−100179)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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