説明

輸液ポンプ

【課題】メイン基板と電源基板が相対的に動いてもメイン基板と電源基板との間の配線接続信頼性を向上し、しかもメンテナンスする際には、メイン基板と電源基板との間の接続を取り外してメイン基板と電源基板とを電気的に分離することでメンテナンス作業性を向上できる輸液ポンプを提供する。
【解決手段】輸液ポンプ10のケース11内には、メイン基板400と、電池Bに電気的に接続される電源基板500と、メイン基板400と電源基板500を電気的に接続する配線ケーブル601〜604が配置され、メイン基板400の電極には複数の配線ケーブル601〜604の第1端部670が接続されており、電源基板500には複数の電気コネクタ511〜514が配置され、各配線ケーブル601〜604の第2端部671が、各電気コネクタ511〜514にそれぞれ着脱可能に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に薬液を注入するための携帯型の輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者に薬液を投入するために使用する医療機器としては、例えば輸液ポンプが知られており、この輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入するのに広く使用されている。このような輸液ポンプのうち、例えば、医療機関だけでなく、一般の家庭において在宅でも使用できるようにコンパクトに形成した携帯型の輸液ポンプが知られている(特許文献1参照)。特許文献1の携帯型の輸液ポンプは、外部から導入される薬液を通す可撓性の輸液チューブを着脱式のカセットに導く構成とされている。
【0003】
具体的には、該着脱式のカセットのケース内に可撓性の輸液チューブ(以下、「チューブ」と言う。)を導入し、このケースから一部露出させたチューブに対して、回転ローラを押しつけることにより、輸液チューブに蠕動様運動を与えて、輸液チューブから薬液を所定の流速(mL/h)で注液を行なうようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−506355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯型の輸液ポンプのケースには、通常、制御部等が配置されているメイン基板と、このメイン基板の制御部等に対して電源を供給する電源基板が収容されており、電源基板側には乾電池のような電池が交換可能に電気的に接続されている。
患者や医療従事者は携帯型の輸液ポンプを携帯して使用するが、メイン基板と電源基板には振動が加わるか摺動する力が加わることから、メイン基板と電源基板が相対的に動く現象が発生することがある。このようにメイン基板と電源基板が相対的に動くと、メイン基板と電源基板との間の配線ケーブルにおいて接触不良や断線のおそれが発生する。メイン基板と電源基板との間の配線ケーブルにおいて接触不良や断線すると、輸液ポンプは、患者に対して時間当たり薬液を決められた量だけ長時間かけて注入することができなくなるおそれがある。
また、携帯型の輸液ポンプのケースを開けてメイン基板や電源基板をメンテナンスする際のメンテナンス作業性を向上したいという要望がある。
そこで、本発明は、メイン基板と電源基板が相対的に動いてもメイン基板と電源基板と電気的接続を維持でき、信頼性を向上し、しかもメンテナンスする際には、メイン基板と電源基板との間の接続を取り外してメイン基板と電源基板とを電気的に分離することでメンテナンス作業性を向上できる輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の輸液ポンプは、ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、電源用の電池を有する輸液ポンプであって、前記ケース内には、メイン基板と、前記電池に電気的に接続される電源基板が設けられ、前記メイン基板と前記電源基板は、プラス極側,マイナス極側にそれぞれ少なくとも2つの配線ケーブルが並列して接続され、前記メイン基板には前記配線ケーブルの第1端部が接続され、前記電源基板の電気コネクタには前記配線ケーブルの第2端部に設けられた接続端子がそれぞれ着脱可能に接続されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、メイン基板と電源基板が相対的に動いても複数の配線ケーブルにより、メイン基板と電源基板との間は少なくとも二重に接続されているから、例え一方の接続が切れても、電気的接続を維持できる。これにより配線接続信頼性を向上し、しかもメンテナンスする際には、各電気コネクタから各配線ケーブルの第2端部を外すことでメイン基板と電源基板との間の接続を取り外してメイン基板と電源基板とを電気的に分離することでメンテナンス作業性を向上できる。
【0008】
好ましくは、前記電源基板には、前記電池のプラス極に電気的に並列に接続されたプラス側の複数の電気コネクタと、前記電池のマイナス極に電気的に並列に接続されたマイナス側の複数の電気コネクタを有することを特徴とする。
上記構成によれば、電源基板と電池のプラス極とマイナス極の間では、それぞれ電気接続を少なくとも二重化しているので、電気接続の二重化を図っていない場合に比べて、電池と電源基板との間の電気的接続状態の信頼性をさらに向上できる。
【0009】
好ましくは、複数の前記配線ケーブルの前記第1端部は、前記メイン基板の前記電極に対して半田付けにより接続されていることを特徴とする。
上記構成によれば、配線ケーブルの第1端部とメイン基板の電極との接続を半田付けを用いて行っているので、強固に接続されていることから、接続信頼性を上げることができる。
【0010】
好ましくは、前記ケースは、前筐体と後筐体からなり、前記メイン基板は前記前筐体に配置され、前記電源基板は前記後筐体に配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前筐体から後筐体を外してメンテナンスを行う際に、前筐体のメイン基板と後筐体の電源基板との接続を外すことで、メンテナンス作業を容易に行える。
好ましくは、ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、電源用の電池を有する輸液ポンプであって、前記ケース内には、前記メイン基板と、前記電源基板が設けられ、前記メイン基板と前記電源基板は、一体化されるとともに、プラス極側,マイナス極側それぞれ少なくとも2つの配線が並列して接続され、前記電源基板の前記電池と接続するプラス極側,マイナス極側にそれぞれ並列して設けられた複数の電気コネクタはそれぞれ着脱可能に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、メイン基板と電源基板が相対的に動いてもメイン基板と電源基板と電気的接続を維持でき、信頼性を向上し、しかもメンテナンスする際には、メイン基板と電源基板との間の接続を取り外してメイン基板と電源基板とを電気的に分離することでメンテナンス作業性を向上できる輸液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の輸液ポンプの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いた様子を示す概略正面図である。
【図3】図1の輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開いて、カセットを収容する様子を示す概略斜視図である。
【図4】輸液ポンプの電気的な構成を示すブロック図である。
【図5】メイン基板と電源基板の一例を示す図である。
【図6】図5に示すメイン基板と電源基板の間における配線構造例を示す斜視図である。
【図7】本発明の輸液ポンプの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の医療機器である携帯型の輸液ポンプのカセット収納部のカバー(透明)を閉じた概略斜視図であり、図2はそのカセット収納部のカバーを開いた状態を示す概略正面図、図3は輸液ポンプのカセット収納部のカバーを開き、カセットを収納した状態を示す概略斜視図である。
図1から図3に示す輸液ポンプ10は、例えば、略矩形の本体(筐体)11を有している。本体11は、前筐体49と後筐体44を有する。本体11は、輸液ポンプ10の構成物を収容するためのケースであり、好ましくは、耐薬品性、耐衝撃性を有する熱可塑性合成樹脂、例えばハイインパクトスチロールやABS樹脂で形成されている。
【0014】
図1に示すように、本体11は、本体11の上面側のほぼ半分程度の面積を閉めるように、開閉可能なカバー12を有しており、該カバー12を、ヒンジ13を中心として回動可能として開閉できる。カバー12は、図示しない付勢手段、例えば、ヒンジ13の軸周りにトーションコイル等を配設することにより、図2と図3に示すように、常時開方向に付勢されている。カバー12を閉じて押し込むことにより、カバー12は本体11側の図示しないラッチ等に係合されるようになっており、本体11の側部外縁に突出する解除ボタン16,16を、矢印方向に手指にて押し込むことにより、該ラッチ等が解除されてカバー12を開けることができる。
【0015】
図1の前筐体49における符号17は、開始停止スイッチであり、この開始停止スイッチ17は、図1において横方向に「停止―開始」のスライド操作をすることができる。符号18は液晶表示装置等で形成した表示部であり、運転状態や報知情報等を表示するようになっている。これらの他に、本体11は、図示しないモード選択スイッチ等を備えることができる。
前筐体49には、発光ダイオードランプのような点灯表示部LPが、表示部18の付近に配置されている。この点灯表示部LPは、例えば点滅することにより警報内容を、例えば患者あるいは周囲の家族の人に目視で報知するようになっている。
また、前筐体49には、表示部18の付近にブザー88とスピーカ89が配置されている。ブザー88は警報内容を警報音で報知でき、スピーカ89は警報内容を鳴動することで音声で報知する機能を有する。
【0016】
図2と図3に示すように、本体11からカバー12を開くと、カセット収納部15が露出するようになっている。カセット収納部15は、本体11の厚みの約半分程度の寸法で形成された空間であり、この空間であるカセット収納部15には、図3に示すように、輸液チューブ21を引きこみかつ導出するためのカセット20を着脱可能にセットすることができるようになっている。
【0017】
本体11のカセット収納部15内には、図1から図3には図示していないが駆動部としてのモータが配置されている。また、カセット収納部15上には、輸液送り部としてのロータユニット31と、閉塞検出部83が配置されている。このモータの出力軸からの駆動力が、ロータユニット31に対して図示しない皿歯車等を介して伝達されることにより、ロータユニット31が軸Lを中心にして回転する。
図2に示すように、このロータユニット31の外周には、例えば、4か所以上の図示例では5つの回転ローラであるチューブ押圧部31Rが設けられており、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rが図2の矢印方向の回転することにより、順次図3に示すチューブ21を順次押圧して、チューブ21に対して蠕動様運動を付与することができる。このロータユニット31は、外部から薬液を導入するためのチューブ21に対して圧接し、このチューブ21に対して蠕動様運動をさせて、薬液を送出するための輸液送り部の一例である。本発明の実施形態では、ロータユニット31を用いて蠕動様運動させて薬液を送出しているが、これに限らず、フィンガ方式で薬液を送出するようにしても良い。
【0018】
図1から図3に示す上記閉塞検出部83は、カセット20がカセット収納部15内に収納されたことを検出して、カセット20のチューブ21の内部が閉塞されているか否かを検出する。この閉塞検出部83には、カセット検出用の突起部材99が設けられている。この突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力により、カセット収納部15内においてC方向に沿って突出している。しかし、図3に示すように、カセット20がカセット収納部15内に収納された状態では、突起部材99は、図1と図2に示す付勢部材133の力に抗してD方向に押されることで、図2に示すスイッチ134がオンとなり、このスイッチ134のオン信号は制御部100に通知されるようになっている。すなわち、閉塞検出部83は、チューブ21内が閉塞されてチューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液がチューブ21内に通過していないことを制御部100に通知するものである。
【0019】
図2に示すように、カセット収納部15には、このロータユニット31の付近の上方位置に、第1のスライダ32と、該第1のスライダ32に隣接して第2のスライダ33が配置されている。第1のスライダ32と第2のスライダ32はそれぞれ係止片を備えており、これら係止片は、付勢手段により常時矢印C方向に付勢されている。しかも、第1のスライダ32と第2のスライダ33のそれぞれ係止片は、後述するカセット20がカセット収納部15にセットされる際に矢印D方向に移動されて、カセット20を保持するとともに、該カセット20に内蔵された可撓性のチューブ21をロータユニット31に対して押圧することができる。図2において、第2のスライダ33の右方の下側には、カセット20をカセット収納部15に配置する際の目印となる傾斜部34aを有するマーク34と、該マーク34の下方にはカセット20を装着する際のストッパとして機能する突起部35が設けられている。
【0020】
図3を参照して、カセット20の構造例を説明する。
カセット20は、合成樹脂で形成された図示のような横長のケース体である。チューブ21の一部分は、カセット20内に収容されており、チューブ21は該ケース体の外縁に沿って矢印F方向から導入され、カセット20の右端部でほぼU字状に曲折され、そして矢印E方向に導出されている可撓性チューブ(輸液チューブともいう。)である。該チューブ21に対しては、薬液が外部から矢印F方向に導入され、矢印E方向に導出され、チューブ21の該矢印E方向の延長には留置針などが接続されており、チューブ21内の薬液がこの留置針を通じて患者に対して輸液される。
【0021】
図3に示すように、チューブ21内の輸液の移動を目視できるように、カバー12とカセット20は好ましくは透明部材で作られている。なお、カバー12には切欠き部19が設けられており、該切欠き部19からチューブ21がカバー12の外部に導出されるようになっている。
また、図3に示すように、カセット20の下部の一端寄りには露出部24が形成されており、該露出部24はカセット20の一部を切欠き、チューブ21の一部を外部に露出させている。このチューブ21の露出部24には、ロータユニット31のチューブ押圧部31R(図2を参照)が押圧されることで、図3に示すように蠕動様運動がチューブ21に付与されるようになっている。
【0022】
図3のカセット20のほぼ中央部には、横に並んで2つの係合用スリット22,23が形成されており、これらスリット22,23はカセット20のケース体を貫通している。
スリット22,23には、図2で説明した第1のスライダ32と第2のスライダ33がそれぞれ入り込むようになっている。そして、図3に示すように、カバー12を矢印A方向に閉じた際には、ヒンジ13よりも該カバー12の内側に設けられた当接部14がカセット20を押すことにより、該カセット20がカセット収納部15において矢印B方向に移動される。
【0023】
このカセット20の矢印B方向への移動により、各係合用スリット22,23に入り込んだ第1のスライダ32と第2のスライダ33の付勢方向(図2の矢印C方向)に働く付勢力に抗して、第1のスライダ32と第2のスライダ33を矢印D方向に移動させることができる。これにより、カセット20は、カバー12を閉止した状態においては、カバー12の当接部14と第1のスライダ32と第2のスライダ33に挟まれて固定されるとともに、チューブ21はロータユニット31側に押圧されている。
【0024】
図3に示すカセット20には、縦スリット25a及び横スリット25bを有する逆L字状の規制用スリット25が形成されている。縦スリット25aにはストッパ26が収容されており、そのストッパ26の先端の当接部は付勢手段26aにより矢印C方向に常時押圧されており、カセット20内の図示しない箇所で、チューブ21の一部を押し潰してチューブ21内の輸液の流れを止めている。横スリット25bには、スライダ29が配置されている。
図3のように、本体11のカセット収納部15内にカセット20を収納してカバー12を閉じると、カセット20の横スリット25bのスライダ29が、ストッパ26を付勢手段26aの力に抗して矢印D方向に押し込むことにより、ストッパ26の先端部はチューブ21から離れる。これにより、チューブ21は開放されてチューブ21内の輸液の流れ止めは解除でき、チューブ21には輸液を導入でき、ロータユニット31のチューブ押圧部31Rの動きにより患者に対してチューブ21を通じて薬液を送液できる。このとき、送液される設定流量の範囲は、例えば5〜300mL/hであり、輸液ポンプ10の総重量は、電池を入れた状態で約320gである。
【0025】
次に、図4を参照して、上述した輸液ポンプ10の電気的な構成を説明する。図4は、輸液ポンプ10の電気的な構成を示すブロック図である。
図4に示すブロック図では、本体11の前筐体49と後筐体44と、カバー12を示しており、カバー12側にはカセット20とこのカセット20のチューブ21が配置されて
いる。後筐体44には、ジャック78と電源回路80と電池(乾電池もしくは充電池)Bが配置され、ジャック78と電池Bが電源回路80に対して電気的に接続されて
いる。ジャック78は、電源コネクタ127を介して、例えば100Vの商用交流電源に接続可能である。電源コネクタ127は、100Vの交流電源を所定の直流電圧に変換して電源回路80に供給する。
【0026】
図4に示すように、前筐体49には、ロータユニット31と、空液検出部82と、閉塞検出部83を備えている。ロータユニット31は、ギア31Gを介してモータMに連結されており、モータMはモータ駆動回路81からの駆動信号により、ロータユニット31を連続回転させることができる。回転検出回路81Tは、モータMの回転状態を検出して制御部100にモータの回転状態信号を送る。電源回路80は、モータ駆動回路18と制御部100とショックセンサ200に電気的に接続されており、モータ駆動回路18と制御部100に対して電源供給を行う。
【0027】
図4の空液検出部82と閉塞検出部83は制御部100に電気的に接続され、空液検出部82は、チューブ21内が薬液により満たされているか気泡が存在するかを検出して、制御部100に通知する。閉塞検出部83は、チューブ21が閉塞されてチューブ21の直径が大きくなったことを検出することで、薬液がチューブ21内に通過していないことを制御部100に通知する。
開始停止スイッチ17は、開始停止検出回路84に電気的に接続され、開始停止検出回路84は、開始停止スイッチ17が、図1に示す開始位置に位置されているか停止位置に位置されているかを検出して、その状態を制御部100に通知する。制御部100はCPU110を有しており、メモリ部111は、制御部100のCPU111に電気的に接続されている。メモリ部111は、CPU110との間で情報を記憶したり、記憶した情報を読み出したりするもので、しかもメモリ部111はCPU110により処理すべきプログラムが記憶されているROM(読み出し専用メモリ)をも含んでいる。
【0028】
図4の表示部18は、制御回路18Tに電気的に接続され、点灯表示部LPは、制御回路85に電気的に接続されている。制御回路18Tと制御回路85は制御部100に電気的に接続され、制御部100の指令により、制御回路18Tは表示部18に必要な内容を表示させる。また、制御部100の指令により、制御回路85は点灯表示部18を例えば点滅させて、患者に点滅により警報があることを報知することができる。
ブザー88は、ブザー回路90に電気的に接続され、スピーカ89は、音声回路91に電気的に接続されている。ブザー回路90と音声回路91は、制御部100に電気的に接続されている。その他に、外部通信回路101が制御部100に電気的に接続されている。
【0029】
図4のブロック図に示すように、輸液ポンプ10は、ショックセンサ200と内部バッテリ201を有している。
図4に示すショックセンサ200は、本体11に加わる衝撃力を検出すためのセンサであり、例えば本体11の前筐体49内に配置されている。内部バッテリ201は、電源オフ時にショックセンサ200に電源を供給するためのバックアップ用のバッテリであり、例えばボタン電池である。
【0030】
図5は、メイン基板400と電源基板500を示す図である。
図5に示すメイン基板400には、図4に示す前筐体49側の制御部100等の各要素が配置されており、電源基板500には、図4に示す後筐体44側の電源回路80等の各要素が配置されている。メイン基板400のサイズは、電源基板500のサイズよりも大きい。図5に示す例示では、メイン基板400は前筐体49内に配置され、電源基板500は後筐体44内に配置されている。メイン基板400と電源基板500はそれぞれ長方形状の基板である。
【0031】
図5に示す例示では、メイン基板400と前筐体49の一部分が図示され、電源基板500の全部が図示されている。メイン基板400には、制御部100と音声回路91、リセット回路350等が搭載されている。これに対して、電源基板500には、電源回路80のダイオード591とヒューズ592と、第1電気コネクタユニット510と、第2電気コネクタユニット550が搭載されている。
第1電気コネクタユニット510は、電源基板500の第1縁部分501側に配置され、第2電気コネクタユニット550は、電源基板500の第1縁部分501とは反対側の第2縁部分502側に配置されている。
【0032】
図5に示す第1電気コネクタユニット510は、4つ(プラス極側,マイナス極側にそれぞれ2つずつ)の電気コネクタ511,512,513,514により構成され、第2電気コネクタユニット550は、4つ(プラス極側,マイナス極側にそれぞれ2つずつ)の電気コネクタ551,552,553,554により構成されている。こうすることで実装の容易性の向上と電気的接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
第1電気コネクタユニット510の一方の組の電気コネクタ511,512は、電気配線520により電気的に接続されている。同様にして、第1電気コネクタユニット510の他方の組の電気コネクタ513,514は、電気配線521により電気的に接続され、しかも電気的に接地されている。
なお、第1電気コネクタユニット510が、少なくとも4つ(プラス極側,マイナス極側にそれぞれ2つずつ以上)の電気コネクタにより構成され、第2電気コネクタユニット550が、3つ以上(プラス極側,マイナス極側にそれぞれ3つずつ以上)の電気コネクタにより構成されるようにしてもよい。この場合、電気的接続状態の信頼性を、より向上させることができる。
【0033】
これに対して、図5に示す第2電気コネクタユニット550の一方の組の、並列して設けられた2つの電気コネクタ551,552は、電気配線522により電気的に接続されている。同様にして、第2電気コネクタユニット550の他方の組の、並列して設けられた2つの電気コネクタ553,554は、電気配線523により電気的に接続されている。電気配線520と電気配線522は、ダイオード591とヒューズ592を介して接続されている。電気配線521と電気配線523は、接続されている。こうすることで実装の容易性の向上と電気的接続状態の信頼性の向上を図ることができる。
なお、第2電気コネクタユニット550の一方の組の電気コネクタを3つ以上並列に、第2電気コネクタユニット550の他方の組の電気コネクタを3つ以上並列にして設けてもよい。こうすることで電気的接続状態の信頼性をより向上させることができる。
一方の組の電気コネクタ551,552の電気配線524は、電池Bのプラス極に対して電気的に並列に接続され、電気コネクタ553,554の電気配線525は、電池Bのマイナス極に対して電気的に並列に接続されている。電池Bとしては、例えば1.5Vの単三乾電池あるいは単三充電電池を2本直列接続したものであり、2本の直列接続された消耗した電池Bは、新しい2本の電池Bに交換可能である。
【0034】
図5に示すメイン基板400には、一例として制御部400の昇圧回路351が、CPU110とリセット回路350と音声回路91に対して電気配線355を介して電気的に接続されている。この昇圧回路351は、仮に電池Bの電圧が低くても、電池Bの電圧を昇圧してCPU110とリセット回路350と音声回路91に対して供給できるようになっている。この昇圧回路351と音声回路91にはそれぞれコンデンサ353、354が接続されている。リセット回路350は、例えば昇圧回路351の電圧が所定の電圧になっていない場合に制御部100をリセットし、輸液ポンプ10の動作を安全に停止することができる。
メイン基板400の縁部分401には、4つ(プラス極側,マイナス極側にそれぞれ2つずつ)の電極パッド411,412,413,414が並べて配列されている。2つの電極パッド411,412は、昇圧回路351に電気配線360を介して共に並列に接続され、残りの2つの電極パッド413,414は、昇圧回路351に電気配線361を介して共に並列に接続されている。コンデンサ353は電気配線360,361の間に接続され、しかも接地されている。
なお、電極パッドは、プラス極側,マイナス極側にそれぞれ3つ以上を並列に設けてもよい。こうすることで電気的接続状態の信頼性をより向上させることができる。
【0035】
電極パッド411,412は、電気コネクタ511,512に対して、それぞれ配線ケーブル601,602を介して接続されている。同様にして、電極パッド413,414は、電気コネクタ513,514に対して、それぞれ配線ケーブル603,604を介して接続されている。
図6は、図5に示すメイン基板400と電源基板500の間における配線構造例を示し、電極パッド411,412と電気コネクタ511,512と配線ケーブル(配線ハーネス)601,602の接続例を示す斜視図である。電極パッド413,414と電気コネクタ513,514と配線ケーブル(配線ハーネス)603,604の接続構造も、図6に示すように同様である。
【0036】
図6に示す配線ケーブル601,602の導体線の第1端部670は、電極パッド411,412に対して半田付け660により電気的に機械的に接続されている。これに対して、配線ケーブル601,602の導体線の第2端部671には、オス型の接続端子672が取り付けられており、この接続端子672は、電気コネクタ511,512のメス型の接続端子673に対して着脱可能に接続されている。
同様にして、配線ケーブル603,604の導体線の第1端部670は、電極パッド413,414に対して半田付け660により電気的に接続されている。これに対して、配線ケーブル603,604の導体線の第2端部671には、オス型の接続端子672が取り付けられており、この接続端子672は、電気コネクタ513,514のメス型の接続端子673に対して着脱可能に接続されている。
このため、患者が携帯型の輸液ポンプ10を携帯しながら使用する際にメイン基板400と電源基板500が相対的に動いても、メイン基板400と電源基板500との間は、二重に接続されているので、いずれか一方が切れても、他方で電気的接続が維持できる。これにより、配線接続信頼性を向上できる。しかもメンテナンスする際には、配線ケーブルの第2端部671の接続端子672を電気コネクタの接続端子673から取り外すことで、メイン基板400と電源基板500との間の接続を取り外して、メイン基板400と電源基板500とを電気的に分離することでメンテナンス作業性を向上できる。
【0037】
このように、配線ケーブル601,602の導体線の第1端部670は、メイン基板400側の電極パッド411,412に対して半田付け660により電気的に接続するとともに、配線ケーブル603,604の導体線の第1端部670は、メイン基板400側の電極パッド413,414に対して半田付け660により電気的に接続することで、配線ケーブル601,602とメイン基板400側との電気的な接続は、半田付けにより安定した電気接続状態を確保できる。
なお、メイン基板400では、電極パッド411,412,413,414に対して半田付け660により接続する構造を採用しているが、メイン基板400は電源基板500に比べて広いので、半田付けする領域を簡単に確保できる。
【0038】
そして、配線ケーブル601,602,603,604の導体線の第1端部670は、メイン基板400側の電極パッド411,412,413,414に対して半田付け660により電気的に接続されている。このため、メイン基板400側で電極パッドと半田付けを用いずに電気コネクタを用いる場合に、電気コネクタと配線ケーブルの導体線の第1端部670との接続作業を行う際に生じる恐れがある圧着不良を避けることができる。これにより、圧着不良により生じる恐れがある電気接触抵抗の増加を避けて、高電流時の電圧降下の発生を避けることができる。
【0039】
また、図1に示す輸液ポンプ10のメンテナンスは、前筐体49と後筐体44を分離して、内部のメイン基板400と電源基板500を露出して行うが、このメンテナンスの際には、図6に示す配線ケーブル601,602,603,604の導体線の接続端子672は、電気コネクタ511,512,513,514から容易に取り外すことができる。
これにより、メイン基板400と電源基板500は簡単に切り離すことができるので、メンテナンスをする際には、メイン基板400と電源基板500との間の配線を取り外して、メイン基板400と電源基板500とを電気的に機械的に分離できることでメンテナンス作業性を向上できる。そして、患者が携帯型の輸液ポンプ10を携帯しながら使用する際に、メイン基板400と電源基板500が相対的に動いても、メイン基板400と電源基板500との間の配線において接触不良状態や断線状態を防ぐことができる。
【0040】
本発明の実施形態の輸液ポンプ10を主に電池Bで駆動させる場合に、電池Bに対して電源基板500とメイン基板400が確実に電気的に接続されていることが重要である。そこで、電源基板500の第1電気コネクタユニット510は、一方の組の電気コネクタ511,512と他方の組の電気コネクタ513,514により構成されており、それぞれ電気接続の二重化を図っているので、電気接続の二重化を図っていない場合に比べて、メイン基板400と電源基板500との間の電気的接続状態の信頼性を向上できる。これにより、電気接続の二重化を図っているので、電源基板500において、圧着不良により生じる恐れがある電気接触抵抗の増加を避けて、高電流時の電圧降下の発生を避けることができる。
しかも、電源基板500の第2電気コネクタユニット550は、一方の組の電気コネクタ551,552と他方の組の電気コネクタ553,554により構成されている。すなわち、電源基板500には、電池Bのプラス極に電気的に並列に接続されたプラス側の複数の電気コネクタ551,552と、電池Bのマイナス極に電気的に並列に接続されたマイナス側の複数の電気コネクタ553,554を有する。これにより、電源基板500と、直列接続配置の電池Bのプラス極とマイナス極の間では、それぞれ電気接続の二重化を図っているので、電気接続の二重化を図っていない場合に比べて、電池Bと電源基板500との間の電気的接続状態の信頼性をさらに向上できる。
【0041】
次に、図7を参照して、本発明の輸液ポンプの別の実施形態を説明する。
図7に示す本発明の別の実施形態は、図5と図6に示す本発明の実施形態とほぼ同じ構成であるが、図7に示す本発明の別の実施形態は、図5と図6に示す本発明の実施形態に比べて、直列接続配置の電池Bに対して接続されている電源基板500の第2電気コネクタユニット750の構成が異なる。すなわち、第2電気コネクタユニット750は、2つの電気コネクタ751,752だけを有しており、一方の電気コネクタ751は電池Bのプラス極側に電気配線724を介して接続され、他方の電気コネクタ752は電池Bのマイナス極側に電気配線725を介して接続されている。このように、電源基板500の電池B側の第2電気コネクタユニット750は、第1電気コネクタユニット510とは異なり、簡単な構成とすることができる。
【0042】
図5に示す電池Bが所定電圧以下になった場合に、図4に示す制御部100は、電流を多く消費するスピーカ89の鳴動やモータMの駆動等をカットして、消費電力の少ない圧電ブザー88の鳴動だけを行わせることができる。さらに電池Bの電圧が降下した場合には、圧電ブザー88の鳴動以外の回路を遮断して、圧電ブザー88の鳴動だけは確保するようにして、警報を発するようにしても良い。
【0043】
メイン基板と電極基板との接続は、図5に示すような第1電気コネクタユニット,配線ケーブルを用いずに、複数の配線パターンと複数の電極パットを用いて、半田付けで電気的に接続し、メイン基板と電極基板を一体化させてもよい。
【0044】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明は様々な修正と変更が可能であり、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形が可能である。
本発明の実施形態である携帯型の輸液ポンプ10では、図5に示すように、第1電気コネクタユニット510が2つの電気コネクタ511,512と2つの電気コネクタ513,514により構成され、第2電気コネクタユニット550が2つの電気コネクタ551,552と2つの電気コネクタ553,554により構成されている。しかし、これに限らず、第1電気コネクタユニット510が3つ以上の電気コネクタと3つ以上の電気コネクタにより構成され、第2電気コネクタユニット550が3つ以上の電気コネクタと3つ以上の電気コネクタにより構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
10・・・輸液ポンプ(医療機器の一例)、11・・・本体(ケースともいう)、31・・・輸液送り部としてのロータユニット、44・・・後筐体、49・・・前筐体、400・・・メイン基板、411〜414・・・電気パッド、500・・・電源基板、510・・・第1電気コネクタユニット、550,750・・・第2電気コネクタユニット、511〜514・・・電気コネクタ、551〜554・・・電気コネクタ、670・・・配線ケーブルの第1端部、671・・・配線ケーブルの第2端部、751,752・・・電気コネクタ、601〜604・・・配線ケーブル、660・・・半田付け、B・・・電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、電源用の電池を有する輸液ポンプであって、
前記ケース内には、メイン基板と、前記電池に電気的に接続される電源基板が設けられ、
前記メイン基板と前記電源基板は、プラス極側,マイナス極側にそれぞれ少なくとも2つの配線ケーブルが並列して接続され、
前記メイン基板には前記配線ケーブルの第1端部が接続され、
前記電源基板の電気コネクタには前記配線ケーブルの第2端部に設けられた接続端子がそれぞれ着脱可能に接続されていることを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
複数の前記配線ケーブルの前記第1端部は、前記メイン基板の前記電極に対して半田付けにより接続されていることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
前記ケースは、前筐体と後筐体からなり、前記メイン基板は前記前筐体に配置され、前記電源基板は前記後筐体に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
ケースと、前記ケースに配置されて薬液を送出するための輸液送り部と、電源用の電池を有する輸液ポンプであって、
前記ケース内には、前記メイン基板と、前記電源基板が設けられ、
前記メイン基板と前記電源基板は、一体化されるとともに、プラス極側,マイナス極側それぞれ少なくとも2つの配線が並列して接続され、
前記電源基板の前記電池と接続するプラス極側,マイナス極側にそれぞれ並列して設けられた複数の電気コネクタはそれぞれ着脱可能に接続されていることを特徴とする輸液ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148008(P2012−148008A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10245(P2011−10245)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】