説明

農作業機のステップ構造

【課題】 運転部の足元に配備された板金構造のステップの上に弾性樹脂材からなるフロアマットを敷設した農作業機のステップ構造において、ステップに形成したメンテナンス用の開口の開閉操作を簡単に行えるようにする。
【解決手段】 ステップ21にメンテナンス用の開口30を形成し、この開口30を閉塞する板金構造の蓋板31をフロアマット22に保持してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機やコンバインなどの農作業機におけるステップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の一例である田植機では、運転部の足元に配備された板金構造のステップの上に弾性樹脂材からなるフロアマットを敷設することが多い(特許文献1参照)。また、ステップの下方に配備されたバッテリなどの備品を点検するためのに、ステップにメンテナンス用の開口を形成して蓋板で閉塞する構造も多用されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−175864号公報
【特許文献2】特開平9−300986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ステップにメンテナンス用の開口を形成して蓋板で閉塞する構造においてステップの上にフロアマットを敷設する場合、開口を開放するにはマットをめくり上げてから蓋板を開放操作することになり、操作が煩わしいものとなる。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、メンテナンス用の開口の開閉操作を簡単に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、運転部の足元に配備された板金構造のステップの上に弾性樹脂材からなるフロアマットを敷設した農作業機のステップ構造であって、
前記ステップにメンテナンス用の開口を形成し、この開口を閉塞する板金構造の蓋板を前記フロアマットに保持してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、フロアマットをめくり上げることで蓋板が外されて開口が露出され、また、フロアマットを敷き戻すと蓋板が開口に装着されて、開口の上を歩くことが可能となる。
【0007】
従って、第1の発明によると、フロアマットのめくり上げおよび敷き戻し操作で蓋板の開閉をも行うことができ、メンテナンス作業性を向上することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記開口に対向するマット部分をめくり上げるための切り込みを前記マットに形成してあるものである。
【0009】
上記構成によると、開口を開放する場合に、小さいマット部分だけをめくり上げればよく、マットめくり上げ操作が一層容易となる。
【0010】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記蓋板を前記マットに埋設してあるものである。
【0011】
上記構成によると、フロアマットに埋設された蓋板は外部に露出することがないので錆付くおそれがなく、長期間好適に使用することができる。
【0012】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記蓋板に前記開口に嵌入する下向きの凸部を形成するとともに、この凸部の外周をマット材で覆ってあるものである。
【0013】
上記構成によると、蓋板が開口に嵌入装着された際、蓋板の凸部が開口の口縁に直接に接触することがなく、機体振動によって開口の口縁と凸部との金属接触による騒音が発生することを回避することができる。
【0014】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記開口を、ステップ下方に配備されたバッテリの出し入れに足る大きさに形成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、バッテリを出し入れする大きい開口でも板金構造の蓋板で閉塞してステップと面一にすることで、開口にフロアマットを落込み変形させることなくその上を歩行することができる。
【0016】
第6の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記開口を、ステップ下方に配備された燃料タンクの補給口に臨設してあるものである。
【0017】
上記構成によると、ステップ上に補給用タンクを載置して燃料補給を行うことができ、例えば、エンジンボンネット上部や運転座席後方の後部フェンダに燃料タンクの補給口が配備される仕様のものに比較して燃料補給作業を低い位置で容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、農作業機の一例にあげた乗用型田植機の全体側面が、また、図2にその平面がそれぞれ示されている。この田植機は、操向自在な前輪1と操向不能な後輪2を備えた四輪駆動型の走行機体3の後部に、油圧シリンダ4で駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構5を介して苗植付け装置6が連結され、また、走行機体3の後部に設けた運転座席7の後方箇所に施肥装置8が配備されるとともに、走行機体3の前部中央にエンジンボンネット9、操縦パネル10、ステアリングハンドル11、等が備えられ、更に、エンジンボンネット9の左右両脇に予備苗のせ台12が立設装備された構造となっている。
【0019】
前記苗植付け装置6は6条植え仕様に構成されて前記昇降リンク機構5の後端下部にローリング自在に連結支持されており、マット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動する苗のせ台13、この苗のせ台13の下端から1株分づつ苗を切り出して田面に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構14、田面の植付け箇所を均平整地する3個の整地フロート15、等を備えている。
【0020】
前記施肥装置8は、肥料ホッパ16に貯留した粒状の肥料を設定量づつ繰出して、電動ブロワ17からの搬送風によって6本の供給ホース18に送り出し、前記整地フロート15に取り付けた6個の作溝器19にまで風力搬送し、作溝器19によって植付け苗の横側近傍の田面に形成した施肥溝に肥料を送込んで埋設するように構成されている。
【0021】
走行機体3の上部に板金プレス構造のステップ21が搭載連結されるとともに、その上にゴム製のフロアマット22が敷設されている。図3に示すように、ステップ21は、エンジンボンネット9を前部および左右から囲む前部ステップ21Fと、その後部に接続される主ステップ21Mとから構成され、主ステップ21Mの後部が隆起されてフェンダ部21Bが一体形成されるとともに、このフェンダ部21Bの左右扁平部に滑り止め状にプレス成形された足載せ部Sが形成されている。
【0022】
また、ステップ21の左右には、苗のせ台13の左右端部への苗補給を容易にするために拡張ステップ38が配備されている。この拡張ステップ38は、前輪1を透視可能に樹脂成形されたスノコ状の前部拡張ステップ38aと、板金プレス構造の後部拡張ステップ38bとから構成されており、この後部拡張ステップ38bの外端下部に乗降用ステップ39が連結されている。
【0023】
図4〜6に示すように、前記前部ステップ21Fの右側下面には、帯板材をU形に屈曲形成してなる前後一対のステー24が取付けられており、このステー24に亘ってバッテリ25が支持ケース26を介して吊り下げ装備されている。前記支持ケース26は板材をU形に屈曲形成して構成されており、その前後壁26aの上部から前後に突設した切出し片26bをステー24の下辺24aに載せ付け支持するとともに、バッテリ25の上に被せた押え棒27の前後両端部を切出し片26bに重ね、これら押え棒27、切出し片26b、および、ステー24の下辺24aに亘って樹脂製のホック28を貫通係止することでバッテリ25を固定支持するよう構成されている。また、支持ケース26の前後壁26aの上部は切出し片26bの切り抜き孔に手指を挿通孔する取っ手に構成されており、図7に示すように、ホック28を抜き外すことでバッテリ25を支持ケース26ごと前部ステップ21Fに形成した開口30から持上げ脱着することができるようになっている。
【0024】
前部ステップ21Fに形成された開口30は、バッテリ25を支持ケース26ごと出し入れするに足る大きさの矩形に形成されており、この開口30がフロアマット22に埋設された板金構造の蓋板31で閉塞されるようになっている。蓋板31の下面には開口30に嵌入する凸部31aが形成されるとともに、この凸部31aもマット材で覆われており、蓋板31は金属接触することなく開口30を閉塞するようになっている。
【0025】
また、走行機体3における右側後部に 燃料タンク33が配備されており、この燃料タンク33の補給口33aに臨む円形の開口34が前記主ステップ21Mの右側後部に形成されている。そして、図8に示すように、この開口34を閉塞する円形の蓋板35がフロアマット22に埋設保持されるとともに、この蓋板35にもマット材で覆われた凸部35aが円形に形成されて開口34に嵌入されるようになっている。なお、図2に示すように、この蓋板保持箇所の前方において、フロアマット22に切り込み36が形成されており、切り込み36より後方の小さいマット部分22aをめくり上げることで蓋板35を外して開口34を開放し、補給口33aを露出させることができるようになっている。
【0026】
〔他の実施例〕
【0027】
(1)図9に示すように、前記蓋板31,35をフロアマット22の下面に沿って位置決め装備するとともに、フロアマット22から突設した連結突起22bを貫通止着してフロアマット22に蓋板31,35を保持するようにして実施することもできる。
【0028】
(2)図10に示すように、前記拡張ステップ38における板金構造の後部拡張ステップ38bの内の右側の後部拡張ステップ38bに蓋板40で開閉される開口41を形成し、この開口41の下部に燃料タンク33の補充口33aを臨設する形態で実施することもできる。
【0029】
(3)予備苗を巻き込んで機体に収容する南方地域向けの機種では、図11に示すように、前部拡張ステップ39aを機体前端まで延長してフロア面積を大きき確保し、ここに多数の巻き苗Mを載置収容できるようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】田植機の全体平面図
【図3】フロアマットを取り除いたステップの平面図
【図4】フロアマットめくり上げ状態の開口を示す平面図
【図5】開口部位の縦断側面図
【図6】開口部位の縦断正面図
【図7】バッテリ取り出し状態における開口部位の縦断側面図
【図8】別の開口部位の縦断面図
【図9】別手段で蓋板を支持したマットの縦断面図
【図10】別実施例の田植機を示す全体平面図
【図11】更に別の実施例の田植機を示す全体平面図
【符号の説明】
【0031】
21 ステップ
22 フロアマット
22a マット部分
30 開口
31 蓋板
31a 凸部
33 燃料タンク
33a 補給口
34 開口
35 蓋板
35a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部の足元に配備された板金構造のステップの上に弾性樹脂材からなるフロアマットを敷設した農作業機のステップ構造であって、
前記ステップにメンテナンス用の開口を形成し、この開口を閉塞する板金構造の蓋板を前記フロアマットに保持してあることを特徴とする農作業機のステップ構造。
【請求項2】
前記開口に対向するマット部分をめくり上げるための切り込みを前記フロアマットに形成してある請求項1記載の農作業機のステップ構造。
【請求項3】
前記蓋板を前記フロアマットに埋設してある請求項1または2記載の農作業機のステップ構造。
【請求項4】
前記蓋板に前記開口に嵌入する下向きの凸部を形成するとともに、この凸部の外周をマット材で覆ってある請求項1〜3のいずれか一項に記載の農作業機のステップ構造。
【請求項5】
前記開口を、ステップ下方に配備されたバッテリの出し入れに足る大きさに形成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の農作業機のステップ構造。
【請求項6】
前記開口を、ステップ下方に配備された燃料タンクの補給口に臨設してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の農作業機のステップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−205915(P2006−205915A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21331(P2005−21331)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】