説明

追尾装置

【課題】高精度で測角して追尾性能を向上させることができる追尾装置を提供する。
【解決手段】空中線6と、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる通常アンテナ開口によるモノパルス測角により、目標を所定の角度範囲に追尾するモノパルス測角処理部101と、モノパルス測角処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部102を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の目標を追尾する追尾装置に関し、特にSAR(Synthetic Aperture Radar;合成開口レーダ)を用いて高精度で目標を追尾する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に搭載され、移動しながら電波を目標に照射し、その反射波を解析して3次元の目標を追尾する追尾装置が知られている。この追尾装置では、図14に示すように、通常アンテナ開口(実開口)によるモノパルス測角によって得られた角度値に基づき、目標を追尾している。なお、モノパルス測角の詳細については、非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日、pp.260−264
【非特許文献2】(SAR方式)吉田孝監修、「改訂 レーダ技術」、初版、社団法人電子情報通信学会、平成15年2月15日、pp.280−283
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の移動体に搭載される追尾装置は、通常アンテナ開口の大きさに制約があるので、ビーム幅が広くなる。その結果、角度分解能が低くなり、測角精度を向上させるのにも限界があるので、追尾性能を向上させることができないという問題がある。
【0004】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、高精度で測角して追尾性能を向上させることができる追尾装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明は、空中線と、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる通常アンテナ開口によるモノパルス測角により、目標を所定の角度範囲に追尾するモノパルス測角処理部と、モノパルス測角処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、第2の発明は、空中線と、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる所定の合成開口長を有する合成開口によるモノパルス測角により目標を低角度分解能で所定の角度範囲に追尾する低角度分解能処理部と、低角度分解能処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる所定の合成開口長より長い合成開口長を有する合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、第3の発明は、空中線と、目標の像を検出する光波センサと、光波センサで検出された像に基づいて目標を所定の角度範囲に追尾する測角処理部と、測角処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
さらに、第4の発明は、空中線と、外部の他センサにより所定の角度範囲に追尾された目標を、空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、通常アンテナ開口によるモノパルス測角のみならず、通常アンテナ開口によるモノパルス測角によって目標を所定の角度範囲に追尾した後に、合成開口によるモノパルス測角により測角を行うので、角度精度を向上させることができ、その結果、追尾性能を向上させることができる。
【0010】
また、第2の発明によれば、所定の合成開口長(短い合成開口長)の合成開口によるモノパルス測角によって目標を所定の角度範囲に追尾した後に、所定の合成開口長より長い合成開口長の合成開口によるモノパルス測角により測角を行うので、角度精度を向上させることができ、その結果、追尾性能を向上させることができる。
【0011】
また、第3の発明によれば、光波センサからの像に基づき目標を所定の角度範囲に追尾した後に、合成開口によるモノパルス測角により測角を行うので、角度精度を向上させることができ、その結果、追尾性能を向上させることができる。
【0012】
また、第4の発明によれば、他センサにより目標を所定の角度範囲に追尾した後に、合成開口によるモノパルス測角により測角を行うので、角度精度を向上させることができ、その結果、追尾性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、本発明の実施例に係る追尾装置は、飛翔体に搭載されているものとする。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。この追尾装置は、基準信号発生器1、ミキサ2、ローカル発振器3、送信増幅器4、サーキュレータ5、空中線6、受信増幅器7a、7bおよび7c、ミキサ8a、8bおよび8c、AD変換器9a、9bおよび9c、測角処理部10ならびに誘導制御部11を備えている。
【0015】
基準信号発生器1は、基準信号を発生してミキサ2に送る。ミキサ2は、基準信号発生器1から送られてくる基準信号とローカル発振器3から送られてくる局発信号とを混合することにより高周波信号を生成し、送信増幅器4に送る。ローカル発振器3は、局発信号を生成してミキサ2に送る他、ミキサ8a、8bおよび8cにも送る。
【0016】
送信増幅器4は、ミキサ2から送られてくる高周波信号を増幅してサーキュレータ5に送る。サーキュレータ5は、送信増幅器4から送られてくる高周波信号を空中線6に送るか、空中線6から送られてくる和信号Σを受信増幅器7aに送るかの切り換えを制御する。
【0017】
空中線6は、送信増幅器4からサーキュレータ5を介して送られてくる送信信号を電波に変換して空中に放射するとともに、空中から受信された電波を電気信号に変換し、和信号Σ、アジマス方向の差信号ΔAZおよびエレベーション方向の差信号ΔELを生成する。この空中線6で生成された和信号Σは、サーキュレータ5を介して受信増幅器7aに送られ、差信号ΔAZは受信増幅器7bに送られ、差信号ΔELは受信増幅器7cに送られる。
【0018】
受信増幅器7aは、空中線6からサーキュレータ5を介して送られてくる和信号Σを低雑音増幅してミキサ8aに送る。受信増幅器7bは、空中線6から送られてくる差信号ΔAZを低雑音増幅してミキサ8bに送る。受信増幅器7cは、空中線6から送られてくる差信号ΔELを低雑音増幅してミキサ8cに送る。
【0019】
ミキサ8aは、受信増幅器7aから送られてくる受信信号とローカル発振器3から送られてくる局発信号とを混合することにより中間周波信号を生成し、和信号ΣとしてAD変換器9aに送る。ミキサ8bは、受信増幅器7bから送られてくる受信信号とローカル発振器3から送られてくる局発信号とを混合することにより中間周波信号を生成し、差信号ΔAZとしてAD変換器9bに送る。ミキサ8cは、受信増幅器7cから送られてくる受信信号とローカル発振器3から送られてくる局発信号とを混合することにより中間周波信号を生成し、差信号ΔELとしてAD変換器9cに送る。
【0020】
AD変換器9aは、ミキサ8aから送られてくるアナログの和信号Σを直交デジタル(I,Q)信号から成る和信号Σ(n)に変換して測角処理部10に送る。AD変換器9bは、ミキサ8bから送られてくるアナログの差信号ΔAZを直交デジタル(I,Q)信号から成る差信号ΔAZ(n)に変換して測角処理部10に送る。AD変換器9cは、ミキサ8cから送られてくるアナログの差信号ΔELを直交デジタル(I,Q)信号から成る差信号ΔEL(n)に変換して測角処理部10に送る。なお、上述した和信号Σ(n)、差信号ΔAZ(n)および差信号ΔEL(n)のnは、位置番号であり、n=1〜Nである。
【0021】
測角処理部10は、AD変換器9aから送られてくる和信号Σ(n)、AD変換器9bから送られてくる差信号ΔAZ(n)およびAD変換器9cから送られてくる差信号ΔEL(n)に基づき測角処理を実行する。この測角処理部10は、モノパルス測角処理部101と高角度分解能処理部102とから構成されている。
【0022】
モノパルス測角処理部101は、AD変換器9aから送られてくる和信号Σ(n)、AD変換器9bから送られてくる差信号ΔAZ(n)およびAD変換器9cから送られてくる差信号ΔEL(n)に基づき、通常アンテナ開口によるモノパルス測角処理を実行する。このモノパルス測角処理部101で得られた測角値は誘導制御部11に送られるとともに、測角範囲として高角度分解能処理部102に送られる。
【0023】
高角度分解能処理部102は、モノパルス測角処理部101から送られてくる測角範囲内で、AD変換器9aから送られてくる和信号Σ(n)に基づき合成開口によるモノパルス測角処理を実行する。高角度分解能処理部102で得られた測角値は、測角範囲を示す情報として誘導制御部11に送られる。
【0024】
誘導制御部11は、測角処理部10のモノパルス測角処理部101から送られてくる測角値および高角度分解能処理部102から送られてくる測角値に基づき、当該追尾装置が搭載された飛翔体の誘導制御を実行する。
【0025】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係る追尾装置の動作を説明する。まず、この追尾装置の動作の概要を説明する。図2は、通常アンテナ開口とSARの場合のモノパルスビームのアンテナパターン形状を示す。この追尾装置では、まず、破線で示す通常アンテナ開口によるアンテナパターンを用いて、誘導制御部11で飛翔体を誘導制御することにより、目標を所定の角度範囲に追い込む。そして、目標を所定の角度範囲に追い込んだら、実線で示すSARによるビーム幅の狭いアンテナパターンで、目標を測角する。所定の角度範囲は、例えば、SARによるΣビームが−3dBだけ低下した位置の幅とすることができる。
【0026】
次に、本発明の実施例1に係る追尾装置の動作の詳細を、追尾処理を中心に、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
追尾処理では、まず、モノパルス測角処理が行われる(ステップS11)。このモノパルス測角処理では、まず、送信信号の送信が行われる。すなわち、基準信号発生器1で生成された基準信号は、ローカル発振器3で発生された局発信号とミキサ2で混合されることにより高周波信号に変換され、送信増幅器4で増幅された後に、送信信号としてサーキュレータ5を介して空中線6に送られる。これにより、空中線6において、送信信号が電波に変換されて放射される。
【0028】
この送信信号は目標で反射される。目標で反射された反射波を受信した空中線6において生成された和信号Σは、サーキュレータ5を介して受信増幅器7aに送られ、受信増幅器7aで低雑音増幅されてミキサ8aに送られる。そして、ミキサ8aでローカル発振器3からの局発信号と混合されることにより周波数変換された後、AD変換器9aでデジタルの和信号Σ(n)に変換され、測角処理部10のモノパルス測角処理部101および高角度分解能処理部102に送られる。
【0029】
同様に、空中線6からの差信号ΔAZは、受信増幅器7bに送られ、受信増幅器7bで低雑音増幅されてミキサ8bに送られる。そして、ミキサ8bでローカル発振器3から局発信号と混合されることにより周波数変換された後、AD変換器9bでデジタルの差信号ΔAZ(n)に変換されて測角処理部10のモノパルス測角処理部101に送られる。
【0030】
同様に、空中線6からの差信号ΔELは、受信増幅器7cに送られ、受信増幅器7cで低雑音増幅されてミキサ8cに送られる。そして、ミキサ8cでローカル発振器3から局発信号と混合されることにより周波数変換された後、AD変換器9cでデジタルの差信号ΔEL(n)に変換されて測角処理部10のモノパルス測角処理部101に送られる。
【0031】
モノパルス測角処理部101においては、通常アンテナ開口の、空中線6の位相モノパルスデータ、すなわち、和信号Σ(n)と、差信号Δ(n)(差信号ΔAZ(n)および差信号ΔEL(n)の総称)とを用いて、次式により誤差電圧Eが算出される。
【数1】

【0032】
ここで、*は複素共役
誤差電圧E(n)と、あらかじめ取得されたアンテナパターンから求めた誤差電圧のテーブルとを比較することにより、空中線6の開口による測角値ψ(AZ、EL)が得られる(非特許文献1参照)。測角値ψ(AZ、EL)は、誘導制御部11および高角度分解能処理部102に送られる。誘導制御部11は、モノパルス測角処理部101から送られてくる測角値ψ(AZ、EL)に基づき、当該追尾装置が搭載された飛翔体の誘導制御を実行する。
【0033】
次いで、目標は所定の角度範囲内であるかどうかが調べられる(ステップS12)。ステップS12において、目標は所定の角度範囲内でないことが判断されると、ステップS11の処理に戻って、再度、モノパルス測角処理が行われる。ステップS11およびS12の繰り返し実行により、目標は、次のSARによる高精度での追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれる。
【0034】
ステップS12において、目標が所定の角度範囲内に入ったことが判断されると、すなわち、目標がSARによる追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれると、次いで、高精度SAR処理が行われる(ステップS13)。すなわち、高角度分解能処理部102においては、SAR出力によって目標を高精度で追い込むために、取得データx(n)(=Σ(n))を用いて、次式の演算が行われる。
【0035】
角度方向の演算:
Σビーム
【数2】

【0036】
次いで、SARによるモノパルス測角処理が行われる(ステップS14)。すなわち、上記式(1)により得られたEsおよび式(2)により得られたEdを用いて、次式により誤差電圧εが算出される。
【数3】

【0037】
ここで、
Re ; 複素数の実数部
式(4)により得られた誤差電圧εと、あらかじめ取得されたアンテナパターンから求めた誤差電圧のテーブルとを比較することにより、合成開口による測角値φが得られる(非特許文献1参照)。測角値φは、移動経路を軸とした円錐状の角度であり、誘導制御部11に送られる。誘導制御部11は、モノパルス測角処理部101から送られてくる測角値φの絶対値が小さくなるように制御し、当該追尾装置が搭載された飛翔体の精密な誘導制御を実行して追尾を行う。
【0038】
以上の処理の概念を図2に示す。図2に示すように、通常アンテナ開口によるモノパルス測角では低い精度で測角が行われるが、通常アンテナ開口によるモノパルス測角により目標を所定の角度範囲内に追い込んだ後に行われる大開口のSARによるモノパルス測角では、高い精度で測角が行われる。
【0039】
なお、上述した実施例1に係る追尾装置では、合成開口の位相モノパルス演算および空中線6の位相モノパルス演算を行うように構成したが、これらの代わりに振幅モノパルス測角を行うように構成することもできる。なお、振幅モノパルス測角については、非特許文献1を参照されたい。
【0040】
また、測角を行わずに、Ed/Esの絶対値のレベルを低減するように追尾するヌル追尾方式を採用するように構成することもできる。この場合、図3に示したフローチャートのステップS11およびS14では、ヌル追尾処理が実行される。
【0041】
また、空中線6は、モノパルスビームを出力できれば、固定ビームであっても、電子走査アンテナでもよい。さらに、モノパルスビームとして、Σビーム、ΔAZビームおよびΔELビームを用いたが、Δビームとしては、ΔAZビームまたはΔELビームのいずれか一方を用いるように構成することもできる。
【実施例2】
【0042】
図5は、本発明の実施例2に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。この追尾装置は、実施例1に係る追尾装置から、受信増幅器7bおよび7c、ミキサ8bおよび8cならびにAD変換器9bおよび9cが除去されるとともに、測角処理部10のモノパルス測角処理部101が合成開口による低角度分解能処理部103に置き換えられて構成されている。以下では、実施例1に係る追尾装置と同一の構成要素には、実施例1で使用した符号と同一の符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
低角度分解能処理部103は、AD変換器9aから送られてくる和信号Σ(n)に基づき、合成開口長を短くした小開口で、つまり、低精度で、合成開口によるモノパルス測角処理を実行する。低角度分解能処理部103で得られた測角値は誘導制御部11に送られるとともに、測角範囲を示す情報として高角度分解能処理部102に送られる。
【0044】
なお、高角度分解能処理部102は、低角度分解能処理部103から送られてくる測角範囲内で、AD変換器9aから送られてくる和信号Σ(n)に基づき、合成開口長を長くした大開口で、つまり、高精度で、合成開口によるモノパルス測角処理を実行する。
【0045】
次に、上記のように構成される本発明の実施例2に係る追尾装置の動作を、追尾処理を中心に、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
追尾処理では、まず、低精度SAR処理が行われる(ステップS21)。すなわち、低角度分解能処理部103においては、SAR出力によって目標を低精度で追い込むために、SAR処理が実行される。次いで、SARによるモノパルス測角処理が行われる(ステップS22)。すなわち、低角度分解能処理部103は、ステップS21における処理結果に基づき、合成開口長を短くして(低精度で)、合成開口によるモノパルス測角処理を実行する。モノパルス測角処理で得られた測角値は、誘導制御部11および高角度分解能処理部102に送られる。誘導制御部11は、低角度分解能処理部103から送られてくる測角値に基づき、当該追尾装置が搭載された飛翔体の誘導制御を実行する。
【0047】
次いで、目標は所定の角度範囲内であるかどうかが調べられる(ステップS23)。ステップS23において、目標は所定の角度範囲内でないことが判断されると、ステップS21の処理に戻って、再度、上述した処理が繰り返される。ステップS21〜S23の繰り返し実行により、目標は、次のSARによる高精度での追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれる。
【0048】
ステップS23において、目標が所定の角度範囲内に入ったことが判断されると、すなわち、目標がSARによる高精度の追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれると、次いで、高精度SAR処理が行われる(ステップS24)。ステップS24の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS13の処理と同じである。次いで、SARによるモノパルス測角処理が行われる(ステップS25)。ステップS25の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS14の処理と同じである。
【0049】
以上の処理の概念を図7に示す。図7に示すように、小開口のSARによるモノパルス測角では低い精度で測角が行われるが、この小開口のSARによるモノパルス測角により目標を所定の角度範囲内に追い込んだ後に行われる大開口のSARによるモノパルス測角では、高い精度で測角が行われる。
【0050】
なお、上述した実施例2に係る追尾装置では、合成開口の位相モノパルス演算を行うように構成したが、これらの代わりに振幅モノパルス測角を行うように構成することもできる。また、測角を行わずに、Ed/Esの絶対値のレベルを低減するように追尾するヌル追尾方式を採用するように構成することもできる。この場合、図6に示したフローチャートのステップS22およびS25では、ヌル追尾処理が実行される。
【0051】
また、空中線6としては、モノパルスビーム(Σビーム、ΔAZビームおよびΔELビーム)でなく、Σビームのみを出力できるものを用いることができる。
【実施例3】
【0052】
図8は、本発明の実施例3に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。この追尾装置は、実施例1に係る追尾装置から、受信増幅器7bおよび7c、ミキサ8bおよび8cならびにAD変換器9bおよび9cが除去されるとともに、光波センサ20およびAD変換器21が追加され、さらに、測角処理部10のモノパルス測角処理部101が信号処理部104に置き換えられて構成されている。以下では、実施例1に係る追尾装置と同一の構成要素には、実施例1で使用した符号と同一の符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
光波センサ20は、例えば可視光や赤外線を検出する撮像装置から構成されており、目標の像を検出する。この光波センサ20により得られた目標の像を表す信号は、AD変換器21に送られる。
【0054】
AD変換器21は、光波センサ20から送られてくるアナログの信号をデジタルの信号に変換して測角処理部10の信号処理部104に送る。
【0055】
信号処理部104は、AD変換器21から送られてくる画像信号に基づき、目標の位置を大まかな精度で測角する。信号処理部104で得られた測角値は誘導制御部11に送られるとともに、測角範囲を示す情報として高角度分解能処理部102に送られる。
【0056】
次に、上記のように構成される本発明の実施例3に係る追尾装置の動作を、追尾処理を中心に、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
追尾処理では、まず、光波センサ20による測角が行われる(ステップS31)。すなわち、光波センサ20で検出された像を表す信号は、AD変換器21でデジタル信号に変換されて測角処理部10の信号処理部104に送られる。信号処理部104においては、AD変換器21から送られてくる信号を処理することにより測角が行われる。信号処理104で得られた測角値は、誘導制御部11および高角度分解能処理部102に送られる。誘導制御部11は、低角度分解能処理部103から送られてくる測角値に基づき、当該追尾装置が搭載された飛翔体の誘導制御を実行する。
【0058】
次いで、目標は所定の角度範囲内であるかどうかが調べられる(ステップS32)。ステップS32において、目標は所定の角度範囲内でないことが判断されると、ステップS31の処理に戻って、再度、光波センサ20による測角が行われる。ステップS31およびS32の繰り返し実行により、目標は、次のSARによる高精度での追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれる。
【0059】
ステップS32において、目標が所定の角度範囲内に入ったことが判断されると、すなわち、目標がSARによる高精度の追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれると、次いで、高精度SAR処理が行われる(ステップS33)。ステップS33の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS13の処理と同じである。次いで、SARによるモノパルス測角処理が行われる(ステップS34)。ステップS34の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS14の処理と同じである。
【0060】
以上の処理の概念を図10に示す。図10に示すように、光波センサ20による測角では低い精度で測角が行われるが、光波センサ20による測角により目標を所定の角度範囲内に追い込んだ後に行われるSARによるモノパルス測角では、高い精度で測角が行われる。
【0061】
なお、上述した実施例3に係る追尾装置では、合成開口の位相モノパルス演算を行うように構成したが、これらの代わりに振幅モノパルス測角を行うように構成することもできる。また、測角を行わずに、Ed/Esの絶対値のレベルを低減するように追尾するヌル追尾方式を採用するように構成することもできる。この場合、図9に示したフローチャートのステップS34では、ヌル追尾処理が実行される。
【0062】
また、空中線6としては、モノパルスビーム(Σビーム、ΔAZビームおよびΔELビーム)でなく、Σビームのみを出力できるものを用いることができる。
【実施例4】
【0063】
図11は、本発明の実施例4に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。この追尾装置は、実施例1に係る追尾装置から、受信増幅器7bおよび7c、ミキサ8bおよび8cならびにAD変換器9bおよび9cが除去されるとともに、測角処理部10のモノパルス測角処理部101が除去されて構成されている。以下では、実施例1に係る追尾装置と同一の構成要素には、実施例1で使用した符号と同一の符号を付して説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
この追尾装置においては、高角度分解能処理部102に送られる測定情報および誘導制御部11に送られる測角値は、外部の他センサからの情報が使用される。他センサとしては、地上のセンサ(レーダ、光波センサ、赤外センサ等)、別機体に搭載されたセンサ等を用いることができる。他センサから情報を用いて誘導する方法としては、通信器材を用いてアップリンクする方法、機体発射前に、飛翔経路をプログラムしておき、その飛翔経路にしたがって、所定の角度範囲まで誘導する方式等を用いることができる。
【0065】
次に、上記のように構成される本発明の実施例4に係る追尾装置の動作を、追尾処理を中心に、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0066】
追尾処理では、まず、他センサによる誘導が行われる(ステップS41)。すなわち、他センサからの情報が誘導制御部11および高角度分解能処理部102に送られることにより、誘導制御部11は、他センサからの情報に含まれる測角値に基づき、当該追尾装置が搭載された飛翔体の誘導制御を実行する。
【0067】
次いで、目標は所定の角度範囲内であるかどうかが調べられる(ステップS42)。ステップS42において、目標は所定の角度範囲内でないことが判断されると、ステップS41の処理に戻って、再度、他センサによる誘導が行われる。ステップS41およびS42の繰り返し実行により、目標は、次のSARによる高精度での追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれる。
【0068】
ステップS42において、目標が所定の角度範囲内に入ったことが判断されると、すなわち、目標がSARによる高精度の追尾が可能な所定の角度範囲に追い込まれると、次いで、高精度SAR処理が行われる(ステップS43)。ステップS43の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS13の処理と同じである。次いで、SARによるモノパルス測角処理が行われる(ステップS44)。ステップS44の処理は、上述した図3に示すフローチャートのステップS14の処理と同じである。
【0069】
以上の処理の概念を図13に示す。図13に示すように、他センサによる誘導では低い精度で誘導が行われるが、他センサによる誘導によって目標を所定の角度範囲内に追い込んだ後に行われるSARによるモノパルス測角では、高い精度で測角が行われる。
【0070】
なお、上述した実施例4に係る追尾装置では、合成開口の位相モノパルス演算を行うように構成したが、これらの代わりに振幅モノパルス測角を行うように構成することもできる。また、測角を行わずに、Ed/Esの絶対値のレベルを低減するように追尾するヌル追尾方式を採用するように構成することもできる。この場合、図9に示したフローチャートのステップS34では、ヌル追尾処理が実行される。
【0071】
また、空中線6としては、モノパルスビーム(Σビーム、ΔAZビームおよびΔELビーム)でなく、Σビームのみを出力できるものを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、目標を精密に追尾することが要求される追尾装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る追尾装置の動作の概要を説明するための通常アンテナ開口とSARの場合のモノパルスビームのアンテナパターン形状を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る追尾装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1に係る追尾装置で行われる処理の概念を示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2に係る追尾装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る追尾装置で行われる処理の概念を示す図である。
【図8】本発明の実施例3に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例3に係る追尾装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例3に係る追尾装置で行われる処理の概念を示す図である。
【図11】本発明の実施例4に係る追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施例4に係る追尾装置の動作の詳細を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施例4に係る追尾装置で行われる処理の概念を示す図である。
【図14】従来の追尾装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0074】
1 基準信号発生器
2、8a、8b、8c ミキサ
3 ローカル発振器
4 送信増幅器
5 サーキュレータ
6 空中線
7a、7b、7c 受信増幅器
9a、9b、9c、21 AD変換器
10 測角処理部
11 誘導制御部
20 光波センサ
101 モノパルス測角処理部
102 高角度分解能処理部
103 低角度分解能処理部
104 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中線と、
前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる通常アンテナ開口によるモノパルス測角により、目標を所定の角度範囲に追尾するモノパルス測角処理部と、
前記モノパルス測角処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
空中線と、
前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる所定の合成開口長を有する合成開口によるモノパルス測角により目標を低角度分解能で所定の角度範囲に追尾する低角度分解能処理部と、
前記低角度分解能処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる前記所定の合成開口長より長い合成開口長を有する合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項3】
空中線と、
目標の像を検出する光波センサと、
前記光波センサで検出された像に基づいて目標を所定の角度範囲に追尾する測角処理部と、
前記測角処理部により所定の角度範囲に追尾された目標を、前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。
【請求項4】
空中線と、
外部の他センサにより所定の角度範囲に追尾された目標を、前記空中線からのモノパルスビームを用いて行われる合成開口によるモノパルス測角により高角度分解能で追尾する高角度分解能処理部と、
を備えたことを特徴とする追尾装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−304321(P2008−304321A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151700(P2007−151700)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】