説明

送受信モジュール及び送受信モジュールを備えたレーダ装置

【課題】内部の受信系の初段の増幅器を少ない挿入損失で保護できる送受信モジュールを得る。
【解決手段】受信系の初段の増幅器としての低雑音増幅器に入力される受信信号のレベルをレベルモニタ部でモニタし、そのモニタ結果を比較駆動部において過大な入力レベルとならない上限値である保護レベル値と比較する。そして、受信信号のレベルが保護レベル値を超えて過大なレベルにあると判定された場合には、電力増幅器で増幅後の送信信号のレベルを低下させる。また、受信信号のレベルをモニタするために、低雑音増幅器の入力側に方向性結合器を設け、例えばダイオードやスイッチ素子等を挿入して低雑音増幅器を過大な入力から保護した場合と比べて、その挿入損失を減らしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信モジュールに係り、特に、レーダシステムにおけるアクティブフェーズドアレイアンテナ等に用いられる送受信モジュール及びこれを備えたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送受信モジュールは、送信信号を増幅する送信系の電力増幅器、受信信号を増幅する受信系の低雑音増幅器、及び送信と受信を切り換える送受切換器を含み、例えば、レーダシステムにおいて、ビーム走査を電子的に制御するアクティブフェーズドアレイアンテナに用いられる。この種の送受信モジュールの基本的な構成の一例をモデル化して図4に示す。
【0003】
図5は、従来の送受信モジュールの基本的な構成の一例を示すブロック図である。この図5に示す送受信モジュール100は、送受信切替器としてのサーキュレータ101、受信信号を増幅する低雑音増幅器102、送信信号を増幅する電力増幅器103から構成されている。
【0004】
また、送信信号及び受信信号を授受するためのサーキュレータ101に接続された信号入出力端子104、増幅後の受信信号を後段の機器に送出するために低雑音増幅器102に接続された受信信号出力端子105、前段の機器からの送信信号を受けとるために電力増幅器103に接続された送信信号入力端子106を備えている。さらに、信号入出力端子104には、例えば送信及び受信を兼ねたアンテナ素子107が接続され、受信信号出力端子105及び送信信号入力端子106には、それぞれに、例えば信号の位相を制御する移相器(図示せず)等が接続される。
【0005】
そして、送信期間中には、送信信号入力端子106に加えられた送信信号は電力増幅器103で電力増幅された後、サーキュレータ101を通過して信号入出力端子104に現れ、アンテナ素子107に供給される。一方、受信期間中には、アンテナ素子107で受信された受信信号は、信号入出力端子104からサーキュレータ101を通過して低雑音増幅器102に送られる。その後、低雑音増幅され、受信信号出力端子105から後段の機器に供給される。
【0006】
上記の構成の送受信モジュールを、例えば、レーダシステム内で、配列された多数のアンテナ素子を有するアクティブフェーズドアレイアンテナの各アンテナ素子に接続して動作させた場合、レーダシステムの運用環境によっては、特に図5における低雑音増幅器102のような、受信系の初段に設けられた増幅器に、過大なレベルの信号が入力される場合がある。すなわち、極めて近距離にある目標物からの反射信号を受信した場合、あるいは、ビーム形成時における配列された多数のアンテナ素子間の干渉によってアンテナ系のVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)が高くなり、各アンテナ素子自体からの反射が増加した場合等が考えられる。
【0007】
その結果、受信系の初段の増幅器が所期の性能を発揮できないばかりでなく、増幅素子の劣化や破損に至る可能性もある。
【0008】
このような事象を回避するため、送受信モジュールの受信系には、特に初段の増幅器を保護するための保護回路が設けられる。保護回路を有する送受信モジュールの一例は、例えば、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された構成では、受信系の初段増幅器の入力側に、リミッタ用ダイオードと抵抗を直列に接続した低反射型リミッタを挿入することによって保護回路を構成している。
【特許文献1】特開2004−153653号公報(第7ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、レーダシステムの性能を表すひとつのパラメータとして、目標の最大探知距離がある。この最大探知距離は、レーダ諸元や伝搬路損失等を含む複数の要素によって定量化される。レーダシステムにおいては、この値を維持して所期の性能が確保されるように、レーダシステム内の各装置で取り扱う種々の信号、特に、送信信号及び受信信号に対する損失を極力減らすように構成される。上述の送受信モジュールにおいても、その内部における、特に受信信号に対する損失を低減する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来の送受信モジュールにおいては、受信系の初段の増幅器を過大入力から保護するための保護回路が挿入損失を有し、これを組み込むことによって、受信信号に対する損失が増加していた。また、受信系の初段の増幅器は、特に低雑音指数を持たせて構成されているため、上記の保護回路をこの増幅器の入力側に挿入した場合には、受信信号に対する損失が増加することによって増幅器の雑音指数が悪化した状態と等価になり、最大探知距離など、レーダシステムの性能にも影響を及ぼしていた。
【0011】
また、被測定物(反射物)との距離が著しく近い場合は、アンテナパターン等の乱れ等が発生し、送受信モジュールの送信時負荷VSWRが著しく劣化してしまう。その場合、サーキュレータ101を通った送信波はアンテナ107で反射してサーキュレータ101を通り低雑音増幅器102を劣化、又は破壊させる可能性がある。尚、送信信号の出力が大きくなるに従い破壊の可能性が高くなる。
【0012】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、内部の受信系の初段の増幅器を少ない挿入損失で保護する送受信モジュール、およびそれを備えたレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために提供される本発明の送受信モジュールは、送信信号を増幅する第1の増幅手段と、受信信号を増幅する第2の増幅手段と、この第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記第1の増幅手段から出力される信号のレベルを下げるよう制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
上記特徴を有するの送受信モジュールは下記の好適な実施例を有する。
【0015】
前記第1の増幅手段により増幅される信号を減衰する減衰手段を備え、前記検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記制御手段は前記減衰手段の減衰量を増加させるようにする事ができる。
【0016】
前記第1の増幅手段が可変利得増幅手段であるとき前記制御手段は前記第1の増幅手段を制御することができる。
【0017】
前記制御手段は電圧源と電流増幅素子を含み、この電流増幅素子のエミッター端子が前記第1の増幅手段の利得制御端子に接続され、前記電流増幅素子のコレクタ端子が前記電圧源に接続され、前記電流増幅素子のベース端子を制御することにより前記第1の増幅手段を制御するようにしても良い。
【0018】
前記制御手段は前記第1の増幅手段の利得を制御する。
【0019】
前記検出手段は、前記第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を分岐する方向性結合器と、この分岐された受信信号を検波する検波器とを含む。
【0020】
前記制御手段は、前記検出手段により検出された受信信号のレベルを保持するピークホールド回路と、このピークホールド回路で保持されたレベルを前記所定レベルと比較する比較回路と、この比較回路による比較結果を所定の時定数で積分する積分回路と、この積分回路からの信号に基づき前記第1の増幅手段から出力される信号のレベルを下げるよう制御する駆動回路を含む用に構成できる。
【0021】
前記第1の増幅手段の出力側と前記検出手段の入力側はサーキュレータを介して外部アンテナに接続されている。
【0022】
前記第1の増幅手段の出力側は第1の外部アンテナに接続され、前記検出手段の入力側は第2の外部アンテナに接続されている。
【0023】
前記受信信号は前記送信信号の送信に起因して生じた信号である。
【0024】
また、上記目的は、送信信号ポート、受信信号ポート、及び共通信号ポートを有し、送信時は前記送信信号ポートに与えられた送信信号を共通信号ポートに通過させるとともに、受信時は前記共通信号ポートに与えられた受信信号を前記受信信号ポートに通過させる送受信切換器と、出力側が前記送受信切換器の送信信号ポートに接続された、送信信号を増幅する第1増幅器と、前記第1増幅器の入力側に接続された可変減衰器を含む比較駆動回路と、入力側が前記送受信切換器の受信信号ポートに接続された、受信信号を増幅する第2増幅器と、前記第2増幅器の入力側における受信信号のレベルをモニタするレベルモニタ部とを備え、前記レベルモニタ部でのモニタ結果があらかじめ設定された所定のレベルを超えたときに前記可変減衰器の減衰量を増加させるようにしたことを特徴とする送受信モジュールを提供する事により達成される。
【0025】
さらにまた、上記目的は、送信信号を増幅する第1の増幅手段と、受信信号を増幅する第2の増幅手段と、前記第1の増幅手段により増幅された信号を送信し、前記受信信号を受信するアンテナと、前記第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を検出する検出手段と、この検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記アンテナから送信される信号のレベルを下げるよう制御する制御手段とを具備することを特徴とするレーダ装置を提供する事により達成される。
【0026】
上記レーダ装置においては、アンテナはアクティブフェーズドアレイアンテナとする事が望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、最大探知距離等を犠牲にせずに受信系の初段の増幅器を少ない挿入損失で保護できる送受信モジュール、および送受信モジュールを備えたレーダ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明に係る送受信モジュールの実施例を添付図を参照して説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、実施例1に係る送受信モジュールの例を示すブロック図である。図1に示すように、この送受信モジュール1は、送受信切換器としてのサーキュレータ2、送信信号を増幅する第1の増幅器としての電力増幅器3、この電力増幅器3の入力側に接続された可変減衰器4、受信信号を増幅する第2の増幅器としての低雑音増幅器5、制御部としてのレベルモニタ部6、及び比較駆動部7を含んでいる。
【0030】
レベルモニタ部6は、挿入損失の少ない方向性結合器61、及び検波器62を含んでいる。比較駆動部7は、ピークホールド回路71、比較回路72、積分回路73、及び駆動回路74を含んでいる。
【0031】
また、送受信モジュール1は、送信信号及び受信信号を授受するための信号入出力端子8、増幅後の受信信号を後段の機器に送出するための受信信号出力端子9、及び前段の機器からの送信信号を受けとるための送信信号入力端子10を備えている。そして、信号入出力端子8には、例えば送信及び受信を兼ねたアンテナ素子11が接続され、受信信号出力端子9及び送信信号入力端子10には、それぞれに、例えば通過する信号の位相を制御する移相器(図示せず)等が接続される。また、後述するが、アンテナ素子11は、送信用、受信用に別個に設け、サーキュレータ2を省略する事も可能であるが、本実施例では送信及び受信を兼ねたアンテナ素子11及びサーキュレータ2を用いた例で説明する。
【0032】
サーキュレータ2は、送信信号ポート2a、受信信号ポート2b、及び共通信号ポート2cを有する。送信信号ポート2aは電力増幅器3の出力側に、受信信号ポート2bはレベルモニタ部6の入力側に、また、共通信号ポート2cは信号入出力端子3に、それぞれ接続されている。基本的に送信時においては、送信信号ポート2aに供給された電力増幅器3からの送信信号が共通信号ポート2cを介して信号入出力端子8へ出力される。また、受信時においては、信号入出力端子8から共通信号ポート2cに供給された受信信号が受信信号ポート2bを介してレベルモニタ部6に出力される。
【0033】
電力増幅器3は、送信信号を増幅してサーキュレータ2の送信信号ポート2aに送出する。この電力増幅器3の入力側には、送信信号入力端子10との間に可変減衰器4が接続されている。この可変減衰器4は、比較駆動部7での制御に基づいて、前段の機器から送信信号入力端子10に印加された送信信号を所定量減衰させて電力増幅器3に送出する。
【0034】
低雑音増幅器5は、受信信号を低雑音増幅して受信信号出力端子9に送出する。この低雑音増幅器5の入力側には、サーキュレータ2の受信信号ポート2bとの間にレベルモニタ部6が接続されている。このレベルモニタ部6は、サーキュレータ2の受信信号ポート2bから低雑音増幅器5へ送られる受信信号のレベルを低損失な構成でモニタし、そのモニタ結果を比較駆動部7に送出する。
【0035】
比較駆動部7は、レベルモニタ部6からのモニタ結果に基づいて、可変減衰器4の減衰量を制御する。本実施例において、比較駆動部7は、レベルモニタ部6からのモニタ結果を保護レベル値としてあらかじめ設定された所定のレベルと比較し、モニタ結果のレベルがその所定レベルを超えたときに、可変減衰器4の減衰量を増加させるように制御している。
【0036】
次に、上述のように構成された送受信モジュール1の動作について説明する。
【0037】
まず、送信時には、送信信号入力端子10に供給された送信信号は、可変減衰器4に入力される。ここで、可変減衰器4の減衰量としては、例えば6dB程度の適正な値が設定されており、送信信号は、この設定値に従って可変減衰器4で減衰され、電力増幅器3に入力される。通常可変減衰器4のダイナミックレンジは20dB程度であるため、設定値より10dB以上レベルを下げることが可能である。
【0038】
電力増幅器3は、入力された送信信号を増幅する。増幅された送信信号は、電力増幅器3からサーキュレータ2の送信信号ポート2aに送出され、サーキュレータ2の共通信号ポート2cから信号入出力端子8に出力され、ついでアンテナ素子11に供給される。
【0039】
次に、受信時には、アンテナ素子11で受信された受信信号は、信号入出力端子8に送られてくる。この受信信号は、信号入出力端子8からサーキュレータ2の共通信号ポート2cに送られ、サーキュレータ2の受信信号ポート2bからレベルモニタ部6に送出される。
【0040】
レベルモニタ部6では、この受信信号は、挿入損失の少ない方向性結合器61を通過して低雑音増幅器5に送られるとともに、低雑音増幅器5に入力される受信信号のレベルモニタのために、その一部が方向性結合器61で分岐される。方向性結合器61から低雑音増幅器5に送られた受信信号は、低雑音増幅されて受信信号出力端子9へ出力され、さらに後段の機器に送られる。
【0041】
一方、方向性結合器61で分岐された受信信号は、検波器62で検波されてレベルモニタ信号となる。そして、このレベルモニタ信号は、低雑音増幅器5に入力される受信信号レベルのモニタ結果として比較駆動部7に送出される。
【0042】
比較駆動部7は、まず、レベルモニタ部6からのレベルモニタ信号をピークホールド回路71で受けとってそのレベルを所定の時定数で保持し、比較回路72に送出する。比較回路72には、低雑音増幅器5に入力される受信信号レベルが過大とならない範囲の、例えば、上限に相当する比較用の値が、保護レベル値としてあらかじめ設定されている。そして、比較回路72は、この保護レベル値と、ピークホールド回路71からのレベルモニタ信号のレベルとを比較する。
【0043】
この比較の結果、低雑音増幅器5に入力される受信信号が保護レベル値を超えて過大なレベルにあると判定された場合には、可変減衰器4の減衰量を増加させて、電力増幅器3から出力される送信信号の出力レベルを下げる。すなわち、比較回路72は、この比較結果に基づき積分回路73に向けて判定信号を出力し、積分回路73で所定の時定数を持たせた可変減衰器4の駆動信号を生成した後、これを駆動回路74から可変減衰器4に送出する。
【0044】
比較駆動部7からのこの駆動信号によって可変減衰器4の減衰量が増加すると、電力増幅器3の入力レベルが下がり、電力増幅器3で増幅後の送信信号のレベルも低下する。そして、これに伴って送信信号に対する反射波としての受信信号のレベルも低下し、低雑音増幅器5に入力される受信信号のレベルも適正な範囲内となって、低雑音増幅器5は、過大な入力から保護される。
【0045】
以上説明したように、本実施例における送受信モジュールにおいては、受信系の初段の増幅器としての低雑音増幅器5に入力される受信信号のレベルをレベルモニタ部6でモニタし、そのモニタ結果を比較駆動部7において過大な入力レベルとならない上限値である保護レベル値と比較している。そして、受信信号のレベルが保護レベル値を超えて過大なレベルにあると判定された場合には、電力増幅器4の入力側に設けた可変減衰器4の減衰量を増加させることによって、電力増幅器4で増幅後の送信信号のレベルを低下させている。これにより、この送信信号に起因する目標からあるいはアンテナ素子自体からの反射波としての受信信号やサーキュレータによる送信信号の受信側への一部まわり込み信号のレベルを適正な範囲内にし、低雑音増幅器5を過大な入力レベルから保護することができる。
【0046】
また、受信信号のレベルをモニタするために、低雑音増幅器5の入力側に方向性結合器61を設けている。方向性結合器は、例えば、同じく低雑音増幅器5の保護のために、この増幅器の入力側にダイオードやスイッチ素子等を挿入した場合と比べて、その挿入損失は1dB程度少ない。従って、低雑音増幅器5を保護するにあたって、受信信号に起因する損失をより少なくすることができる。
【0047】
さらに、可変減衰器4の減衰量を増加させた場合には、電力増幅器3に対する入力レベルが低下することによって、この電力増幅器3はディレーティングされる。従って、増幅された送信信号中の歪みを低減させて良好な直線性を得ることができるとともにその信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0048】
図2は、実施例2に係る送受信モジュールの例を示すブロック図である。図2に示すように、この送受信モジュール1は、前記実施例1における電力増幅器3の代わりに可変電力増幅器3aを用い、可変減衰器4を設置せずに、電流増幅素子15および正の定電圧源20を設けて送受信モジュールとして構成している。尚、その他の構成に関しては実施例1と同じであるので詳細な説明は同一符号を付す事により省略する。
【0049】
図2に示すように、比較駆動部7の出力は電流増幅素子15のベース入力端子に接続される。電流増幅素子15のコレクタ端子は正の定電圧電源20に、電流増幅素子15のエミッター端子は可変電力増幅器3aの正の電源入力に接続されている。
【0050】
このように構成された送受信モジュールにおける受信時の動作は実施例1の場合と基本的に同じである。一方、送信時において送信信号入力端子10を介して送受信モジュール1に供給された送信信号は可変電力増幅器3aで電力増幅される。増幅された送信信号はサーキュレータ2の送信信号ポート2aおよび共通信号ポート2cを介してアンテナ素子11から送信される。
【0051】
実施例1の場合と同様に、例えば、本送受信モジュールと被測定物(反射物)との距離が著しく近い場合は、アンテナパターン等の乱れ等が発生し、送受信モジュール1の送信時負荷VSWRが著しく劣化し、サーキュレータ2のポート送信信号ポート2aおよび共通信号ポート2cを通った送信波はアンテナ11で反射してサーキュレータ2のポート共通信号ポート2cおよび受信信号ポート2bを通り受信系に戻ってきてしまう。同送信波はレベルモニタ部6で分岐、検波されて比較駆動部7のピークホールド回路、比較回路、積分回路で同様に処理され駆動回路の出力が小さくなるために電流増幅素子15のベース入力端子の電圧が下がることにより、エミッタ端子の電圧も下がる。尚、エミッタ端子の電圧が低下しても電流増幅素子15の電流増幅率は一定のため、定電圧効果は劣化しない。
【0052】
結果として可変電力増幅器3aの飽和出力電力が低下して送信系出力電力を低下させるため、送受信モジュールの送信時負荷VSWRが著しく劣化しても、低雑音増幅器5の入力レベルを小さくでき、低雑音増幅器5の劣化、又は破壊を防止できる。尚、受信系保護として低雑音増幅器の前にスイッチ又はリミターを入れて対応する場合があるが、挿入損により最大探知距離等が劣化してしまう欠点がある。
【0053】
本実施例によれば、最大探知距離等を犠牲にせず低雑音増幅器の劣化、又は破壊を防止できる電圧可変形保護回路を備えた送受信モジュールを提供できる。
【実施例3】
【0054】
図3は、実施例3に係る送受信モジュールの例を示すブロック図である。図3に示すように、この送受信モジュール1は、前記実施例1における電力増幅器3の代わりに可変利得電力増幅器3bを用い、実施例1における可変減衰器4を設置せずに、可変利得電力増幅器3bにその機能を持たせた送受信モジュールとして構成している。比較駆動部7の出力は可変利得電力増幅器3bの利得制御用入力端子に接続されている。尚、その他の構成に関しては実施例1と同じであるので詳細な説明は同一符号を付す事により省略する。
【0055】
このように構成された送受信モジュールにおける受信時の動作は実施例1の場合と基本的に同じである。一方、送信時において送信信号入力端子10を介して送受信モジュール1に供給された送信信号は可変利得電力増幅器3bで電力増幅される。増幅された送信信号はサーキュレータ2の送信信号ポート2aおよび共通信号ポート2cを介してアンテナ素子11から送信される。
【0056】
実施例1の場合と同様に、本送受信モジュール1と被測定物(反射物)との距離が著しく近い場合は、アンテナパターン等の乱れ等が発生し、送受信モジュール1の送信時負荷VSWRが著しく劣化し、サーキュレータ2のポート送信信号ポート2aおよび共通信号ポート2cを通った送信波はアンテナ11で反射してサーキュレータ2の共通信号ポート2cおよび受信信号ポート2bを通り受信系に戻ってきてしまう。同送信波はレベルモニタ部6で分岐、検波されて比較駆動部7のピークホールド回路、比較回路、積分回路で同様に処理され駆動回路7の出力が大きくなるために可変利得電力増幅器3bの利得が低下して送信系出力電力を低下させる。これにより、送受信モジュールの送信時負荷VSWRが著しく劣化しても、低雑音増幅器5の入力レベルを小さくでき、低雑音増幅器5の劣化、又は破壊を防止できる。尚、受信系保護として低雑音増幅器の前にスイッチ又はリミターを入れて対応する場合があるが、挿入損により最大探知距離等が劣化してしまう欠点がある。
【0057】
本実施例3によれば、最大探知距離等を犠牲にせず低雑音増幅器の劣化、又は破壊を防止できる利得可変形保護回路を備えた送受信モジュールを提供できる。
【0058】
尚、上記各実施例において、アンテナ素子11はアクティブフェーズドアレイアンテナとし、サーキュレータを用いる事により送受信兼用としたが、アンテナ素子は、図4に示すように送信用、受信用に別個に設け、サーキュレータ2を省略するる事も可能である。
【0059】
即ち、図4において、受信用、送信用アンテナを別に設けた例を図1の実施例に適応させて説明する。受信アンテナ11aは受信信号レベルモニタ部6を介して受信系低雑音増幅器5の入力に接続され、受信系低雑音増幅器5の出力は受信信号出力端子9に接続されている。一方送信信号入力端子10は、可変減衰器4を介して送信系電力増幅器3の入力に接続され、送信系電力増幅器3の出力は送信アンテナ11bに接続されている。その他の構成は図1と同じであるので同一符号を付してその説明は省略する。
【0060】
受信信号レベルモニタ部6のモニタ出力は可変減衰器4の比較駆動部7の入力に接続され、比較駆動部7の出力は可変減衰器4に接続されている。ここで、本送受信モジュールと被測定物(反射物)との距離が著しく近い場合は、アンテナパターン等の乱れ等が発生し、送信アンテナ11bと受信アンテナ11a間のアイソレーションが悪化し、送信アンテナ11bから出力された信号は殆ど減衰されず受信アンテナ11aに入力され、受信系に戻ってくるが、レベルモニタ部6と比較駆動部7と可変減衰器4により、送信信号レベルを低下させる為、送受信モジュールの送信アンテナ11bと受信アンテナ11a間のアイソレーションが著しく悪化しても、受信系低雑音増幅器5の入力レベルを小さくでき、低雑音増幅器5の劣化、又は破壊を防止できる。このように本実施例によれば、最大探知距離等を犠牲にせず低雑音増幅器の劣化、又は破壊を防止できる送受信モジュールを備えたレーダ装置を提供できる。
【0061】
尚、本発明は上記した実施例に限定される事無く、添付の特許請求の範囲に記載の内容を逸脱しない限り、更に、その変形又は変更実施例も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施例1に係る送受信モジュールのブロック図。
【図2】本発明の実施例2に係る送受信モジュールのブロック図。
【図3】本発明の実施例3に係る送受信モジュールのブロック図。
【図4】本発明に係る送受信モジュールを備えたレーダ装置において、送受信用アンテナを個別に設けた例を示す概略ブロック図。
【図5】従来の送受信モジュールの基本的な構成の一例を示すブロック図。
【符号の説明】
【0063】
1 送受信モジュール
2 サーキュレータ
3 電力増幅器
3a 可変電力増幅器
3b 可変利得電力増幅器
4 可変減衰器
5 低雑音増幅器
6 レベルモニタ部
7 比較駆動部
8 信号入出力端子
9 受信信号出力端子
10 送信信号入力端子
11(11a、11b) アンテナ
15 電流増幅素子
20 定電圧電源
61 方向性結合器
62 検波器
71 ピークホールド回路
72 比較回路
73 積分回路
74 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を増幅する第1の増幅手段と、
受信信号を増幅する第2の増幅手段と、
この第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を検出する検出手段と、
この検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記第1の増幅手段から出力される信号のレベルを下げるよう制御する制御手段と
を具備することを特徴とする送受信モジュール。
【請求項2】
前記第1の増幅手段により増幅される信号を減衰する減衰手段を備え、前記検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記制御手段は前記減衰手段の減衰量を増加させることを特徴とする請求項1に記載の送受信モジュール。
【請求項3】
前記第1の増幅手段が可変利得増幅手段であるとき前記制御手段は前記第1の増幅手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の送受信モジュール。
【請求項4】
前記制御手段は電圧源と電流増幅素子を含み、この電流増幅素子のエミッター端子が前記第1の増幅手段の利得制御端子に接続され、前記電流増幅素子のコレクタ端子が前記電圧源に接続され、前記電流増幅素子のベース端子を制御することにより前記第1の増幅手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の送受信モジュール。
【請求項5】
前記制御手段は前記第1の増幅手段の利得を制御することを特徴とする請求項3に記載の送受信モジュール。
【請求項6】
前記検出手段は、前記第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を分岐する方向性結合器と、この分岐された受信信号を検波する検波器とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項7】
前記制御手段は、前記検出手段により検出された受信信号のレベルを保持するピークホールド回路と、このピークホールド回路で保持されたレベルを前記所定レベルと比較する比較回路と、この比較回路による比較結果を所定の時定数で積分する積分回路と、この積分回路からの信号に基づき前記第1の増幅手段から出力される信号のレベルを下げるよう制御する駆動回路を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項8】
前記第1の増幅手段の出力側と前記検出手段の入力側はサーキュレータを介して外部アンテナに接続されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項9】
前記第1の増幅手段の出力側は第1の外部アンテナに接続され、前記検出手段の入力側は第2の外部アンテナに接続されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項10】
前記受信信号は前記送信信号の送信に起因して生じた信号であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項11】
送信信号ポート、受信信号ポート、及び共通信号ポートを有し、送信時は前記送信信号ポートに与えられた送信信号を共通信号ポートに通過させるとともに、受信時は前記共通信号ポートに与えられた受信信号を前記受信信号ポートに通過させる送受信切換器と、
出力側が前記送受信切換器の送信信号ポートに接続された、送信信号を増幅する第1増幅器と、
前記第1増幅器の入力側に接続された可変減衰器を含む比較駆動回路と、
入力側が前記送受信切換器の受信信号ポートに接続された、受信信号を増幅する第2増幅器と、
前記第2増幅器の入力側における受信信号のレベルをモニタするレベルモニタ部とを備え、
前記レベルモニタ部でのモニタ結果があらかじめ設定された所定のレベルを超えたときに前記可変減衰器の減衰量を増加させるようにしたことを特徴とする送受信モジュール。
【請求項12】
送信信号を増幅する第1の増幅手段と、
受信信号を増幅する第2の増幅手段と、
前記第1の増幅手段により増幅された信号を送信し、前記受信信号を受信するアンテナと、
前記第2の増幅手段により増幅される前記受信信号を検出する検出手段と、
この検出手段により検出された信号が所定レベルを超えるとき前記アンテナから送信される信号のレベルを下げるよう制御する制御手段と
を具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項13】
前記アンテナはアクティブフェーズドアレイアンテナであることを特徴とする請求項12に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−311512(P2006−311512A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61346(P2006−61346)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】