説明

逆流入警告装置

【課題】 低コストで逆流入を警告可能な逆流入警告装置を提供すること。
【解決手段】 逆流入警告装置の一例であるETC車載器1において、処理部13は、高速道路に設置された単一の路側機との間で行われた通信結果に基づき、車両が一般道路から高速道路の出口方向へと逆流入しているか否かを判断し、逆流入と判断した場合、その旨を示す警告を、LED18及び/又はスピーカ19は出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流入警告装置に関し、より特定的には、高速道路(有料道路を含む)の出口への誤進入を警告する逆流入警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路等に於いて流入ランプを間違えて進入し交通事故を起こすこと、つまり逆走事故が増えてきている。逆走事故の原因の一つとして、流出ランプからの誤進入が挙げられている。
【0003】
従来、料金所近傍の道路上の2箇所にそれぞれアンテナを1つずつ設置し、その2アンテナ間を車両が通過する方向により、逆流入を検知する方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−304647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、特別なアンテナを道路上の2箇所に設置する必要があり、システムの敷設・維持にコストがかかるという問題点があった。
【0005】
それ故に、本発明は、低コストで逆流入を警告可能な逆流入警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一局面は、逆流入警告装置であって、ETC(Electronic Toll Collection System)の路側アンテナとの通信を行う無線通信部と、高速道路の出口近傍に設置された単一の路側機と、無線通信部との間で行われた通信結果に基づき、車両が一般道路から高速道路の出口方向へと逆流入しているか否かを判断する判断部と、判断部が逆流入と判断した場合、その旨を示す警告を出力する警告出力部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記逆流入警告装置によれば、単一の路側機との通信で高速道路等への車両の逆流入を警告可能となるため、システムの敷設・維持等のコストを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る逆流入警告装置について、ETC車載器に実装したいくつかの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るETC車載器(以下、単に車載器という)1の全体構成を示すブロック図である。なお、図1には、車載器1とともにETCの路側機2も示されている。
【0010】
まず、説明の便宜上、路側機2の構成について説明する。図1に示すように、路側機2は、アンテナ21と、無線通信部22と、処理部23とを備えている。
【0011】
アンテナ21は、例えば高速道路(有料道路も含む)の出口近傍に設置されるフリーフロータイプのアンテナである。アンテナ21は、各種データが載せられた電波を無線通信部22から受け取り、車載器1に送信する。他にも、アンテナ21は、車載器1から送られてくる電波を受信して、無線通信部22に出力する。
【0012】
無線通信部22は、車載器1への送信すべきデータを処理部23から受け取り符号化して、アンテナ21に出力する。他にも、無線通信部22は、アンテナ21を介して車載器1から送られてきた電波を復号し、これによって得られたデータを処理部23に出力する。
【0013】
処理部23は、例えばプロセッサ及びメインメモリを含んでいる。このような処理部23は、車載器1へ送信すべきデータを生成して、無線通信部22に出力する。他にも、処理部23は、無線通信部22からのデータを処理する。
【0014】
次に、車載器1の構成について説明する。車載器1は、アンテナ11と、無線通信部12と、例えばマイコン及びメインメモリから構成される処理部13と、不揮発性メモリ14と、SAM(Secure Application Module)15と、ICカードソケット16と、HMI制御部17と、LED18と、スピーカ19とを備えている。
【0015】
アンテナ11は、各種データが載せられた電波を無線通信部12から受け取り、路側機2に送信する。他にも、アンテナ11は、路側機2から送られてくる電波を受信して、無線通信部12に出力する。
【0016】
無線通信部12は、路側機2への送信すべきデータを処理部13から受け取り符号化して、アンテナ11に出力する。他にも、無線通信部12は、アンテナ11を介して路側機2から送られてきた電波を復号して必要なデータを抽出し、処理部13に出力する。
【0017】
ここで、処理部13が無線通信部12から受け取るデータは暗号化された状態にある。処理部13は、暗号化されているデータを編集せずに、SAM15に送信する。SAM15は、暗号化されているデータを復号して、復号データを処理部13に送る。ここで、復号データとしては、例えば、車載器1が運転者へのHMI表示する際に必要なデータがある。他にも、SAM15は、路側機2に送信すべきデータを暗号化して、それによって得られた暗号化データを処理部13に送ることもある。
【0018】
上述の通り、処理部13は、SAM15から各種データを受信することになる。処理部13は、受信データの内容を判断し、運転者に通知が必要なデータであれば、HMI制御部17に送る。HMI制御部17は、受信データの内容に合わせて、LED18を点滅・点灯させたり、スピーカ19を鳴動させたりする。これによって、様々な警告又は案内が運転者に対して行われる。
【0019】
処理部13は、受け取ったデータのうち所定のものを、EEPROM等からなる不揮発性メモリ14に書き込む場合もある。この不揮発性メモリ14は、典型的には、車載器1の電源が落ちた後に再投入されたときのために、電源が落ちる直前のデータを記憶する。具体例を挙げると、運転者が設定した警告・案内用の音量などがデータとして不揮発性メモリ14に書き込まれる。これによって、運転者が電源再投入後も同じ音量で警告等を聞くことが可能となる。
【0020】
また、SAM15は、ICカードソケット16に挿入されたICカード110との通信機能もある。SAM15は、ICカード110から、そこに記録されている情報を読み出して、路側機2との通信に備えると共に、通信終了時に通信内容をICカード110に書き込み保存する。保存されるものとしては、例えば、高速道路等の入口料金所に関するデータがある。これをICカード110に書き込むことにより、サービスエリアで運転者等が降車し休憩するために、車載器1の電源を落としたとしても、SAM15は、車載器1を再起動したときにICカード110から入口料金所のデータを読み出すことが可能となる。これによって、車載器1は、出口料金所で必要な入口料金所のデータを再設定することができる。
【0021】
次に、図2のシーケンスチャートを参照して、車載器1と路側機2との通信(以下、路車間通信という)の概略ついて説明する。車載器1は、路側機2のアンテナ21に近づくと電波を検知して、路側機2に対して通信開始の要請を行うために、ACTC(Activation Channel)を少なくとも1度送信する(SQ201)。
【0022】
ACTCに対し、路側機2は、路車間通信を開始するための基準に合致したと判断すると、BST(Beacon Service Table)を送信する(SQ202)。これによって、通信スロットの割り当て等の準備が完了し、実際の路車間通信が開始される。
【0023】
車載器1は、路側機2から送信されたBSTを受信すると、初期通信を完了させるために、VST(Vehicle Service Table)を送信する(SQ203)。
【0024】
路側機2は、車載器1から送信されたVSTを受信すると、車載器1にデータを要求するために、Action1.Reqを送信する(SQ204)。Action1.Reqの受信に応答して、車載器1は、Action1.indを返送する(SQ205)。Action.Req及びAction.indの送信回数は、例えば料金所の形態に依存する。本実施形態では例示的に、Action.Req及びAction.indは4回ずつ送信されるとする(SQ204〜SQ204,SQ205〜SQ2054 )。ここで、Action.Req及びAction.indの各内容は暗号化されているため、車載器1側の処理部13では、具体的な通信内容を解釈することはできない。
【0025】
路側機2は、Action.Req及びAction.indのやり取りが終了すると、EventReportを車載器1に送信し(SQ206)、これによって、路車間通信は完了する。
【0026】
以上は、路車間通信の一般的なシーケンスである。上述のように、Action.Req及びAction.indの送信回数は変化し、さらに、それらの内容は暗号化されているために、車載器1側では、上記の路車間通信のみによって、現在通信中の路側機2が高速道路の入口側に設置されているのか、出口側に設置されているのかを判別できない。Action.Req及びAction.indに対し、SQ202で受信するBSTは暗号化されていないため、車載器1の処理部13でも、BSTの内容を解釈可能である。本実施形態では、逆流入警告のためにBSTの内容が用いられる。以下、車載器1側における逆流入警告処理について詳細に説明する。
【0027】
図3は、逆流入警告処理のフローチャートである。
【0028】
図3において、処理部13は、車載器1の搭載車両が路側機2の通信エリアに進入し、路側機2からの電波をアンテナ11が検知したと判断すると、路車間通信の開始要請のためにACTCを、無線通信部12及びアンテナ11を介して送信する(ST301)。
【0029】
その後、処理部13は、路車間通信のために自分用のスロットが路側機2により割り付けられたか否かを、つまり、路車間通信を行える状況になったか否かを判断する(ST302)。Noと判断すると、ST301が再度行って、車載器1はACTCを再送信する。
【0030】
ST302でYesと判断すると、車載器1は、以降、割り当てられたスロットを用いて路側機2と路車間通信を行う。処理部13は、ST302の後、路側機2から送信されてくるBSTを、アンテナ11及び無線通信部12を介して受信する(ST303)。
【0031】
ここで、図4は、BSTのデータ構成を示す模式図である。
【0032】
図4において、BSTはrsu401を含んでおり、rsu401は、manufacturerid402と、individualid403とで構成されている。manufacturerid402は、路側機2のメーカーを示しかつ予め割り当てられている識別情報である。また、individualid403は、予め一意に割り当てられる路側機2の個体番号である。
【0033】
なお、図4には、rsu401以外にもBSTを構成するデータが示されている。しかしながら、これらデータは逆流入警告処理では使用されないため、それぞれの説明を省略する。
【0034】
再度、図3を参照する。車載器1の処理部13は、ST303で受信したBSTから、individualid403を取り出し、例えば不揮発性メモリ14に記憶する(ST304)。
【0035】
ST304の後、図2に示す路車間通信が終了すると(ST305)、処理部13は、
今回の路側機2との通信内容に基づき、車両の運転者に対し逆流入警告を行うか否かの判断処理を開始する。
【0036】
まず、処理部13は、今回の路車間通信で車載器指示情報を路側機2から受信したか否かを判断する(ST306)。ここで、車載器指示情報は路側機2が車載器1に何かしらの指示(例えば、停止指示等)を与えたい場合に送信される。何も指示することがなければ車載器指示情報は車載器1は受信しない。具体例を挙げると、車両が一般道から高速道路を走行することなく出口近傍(つまり、高速道路の出口近傍に設置された路側機2の通信エリア)に進入した場合、その車載器1は、その路側機2とは路車間通信の対象外であるため、車載器指示情報は路側機2から送信されない。従って、車載器指示情報が受信している場合(つまり、ST306でYes)は、処理部13は、通常の運用で発生した通信ということで、逆流入警告を行う必要なしとみなす。
【0037】
そのように判断すると、処理部13は、路車間通信を今回行った路側機2が入口側であることを示す情報を、例えば不揮発性メモリ14に書き込む(ST310)。なお、詳細は後で説明するが、この通信相手(入口)は、次回の逆流入警告処理のステップS308で用いられる。次回の逆流入警告処理から見れば、今回のST310で書き込まれる情報は前回のものになる。この意味で、この情報を、前回の通信相手情報(入口)という。前回の通信相手情報(入口)は、ST306でYes、ST307でNo又はST308でYesと判断した場合にST310で書き込まれる。ST310は、図3からも分かるように、ST308でNoと判断された後にも行われる。この場合、ST310では、前回の通信相手情報(出口)が書き込まれる。ST310の後、処理部13は、図3の処理を終了する。
【0038】
次に、車両が一般道から逆流入して出口近傍に設置された路側機2の通信エリアに進入したか否かを判断するために、処理部13は、ST306でNoと判断すると、ST307及びST308の処理を行う。
【0039】
まず、ST307の一例について詳細に説明する。車載器1において、例えば不揮発性メモリ14には、図5に示すように、individualid403毎に、そのindividualid403で特定される路側機2が入口側に設置されているか、出口側に設置されているかを示すテーブルが少なくとも格納されている。図5の例では、individualid403は、X(iは、1〜nの自然数)と記載される。また、入口側に設置されていることを示す情報として「0」というフラグが立てられ、出口側のそれとして「1」というフラグが立てられる。
【0040】
処理部13は、ST307において、ST304で記憶したindividualid403に基づき、今回路車間通信を行った路側機2が高速道路の出口近傍に設置されているものか否かを判断する(ST307)。具体的には、処理部13は、テーブルにアクセスして、ST304で記憶したindividualid403に対し割り当てられているフラグが「1」か否かを判断する。No(つまり、フラグが「0」)の場合、今回路車間通信を行った路側機2が高速道路の出口近傍以外に設置されているとして、逆流入警告を行う必要なしとみなす。この場合も、処理部13は、ST310を行った後、図3の処理を終了する。
【0041】
それに対し、フラグが「1」の場合、逆流入警告が必要か不要かをまだ判断できないため、処理部13はST308を行う。ST308で必要となるのは、前回の通信相手情報である。前回の通信相手情報とは、前述の通り、前回の逆流入警告処理のステップS310で記録された通信相手を示す情報である。言い換えると、前回の通信相手情報は、前回の路車間通信を行った路側機2が入口側に設置されていたのか否かを示す情報であり、本実施形態では例示的に、前回の通信相手情報(入口)及び前回の通信相手情報(出口)の2種類があるとして説明される。
【0042】
処理部13は、ST308において、現在不揮発性メモリ14に記録されている前回の通信相手情報を読み出し、それが前回の通信相手情報(入口)であるか否かを判断する(ST308)。車両が、正しく高速道路の入口を通過し、その次に出口を通過した場合に、それは、高速道路内から一般道路へ出る方向であり、通常の運用である。従って、処理部13は、逆流入警告処理の対象外としてみなす。
【0043】
なお、通常の運用の場合、払い戻しを行うために、路車間通信により車載器指示情報が発生する。この場合、ST306で逆流入警告処理の対象外として、ST307〜ST309が行われず、処理部13の処理は即座にST310に遷移する。しかし、払い戻しが行われない場合もあり、このような場合には、たとえ通常の運用であっても、車載器指示情報が発生しない。このような場合、ST306からST307に処理が遷移してしまう。そのような問題点を解消するため、ST308で改めて、車両が高速道路内から一般道路へと移ろうとしているか否かを処理部13は判断する必要が発生する。
【0044】
ST308で読み出したものが前回の通信相手(入口)であれば、処理部13は、ST308でYesと判断する。この場合、処理部13は、ST310を行った後、図3の処理を終了する。
【0045】
それに対し、ST308でNoと判断すると、処理部13は、逆流入警告処理の対象として、HMI制御部17に対し、LED18及び/又はスピーカ18を使って逆流入であることを示す通知を運転者に対し出力するように指示する。
【0046】
以上、本実施形態によれば、出口近傍にある単一のETC路側機2と路車間通信を行うだけで、高速道路への逆流入を運転者に対し警告できる。これによって、システムの敷設・維持等のコストを抑えることが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態において、図3のST307の処理では、individualid403と、図5に示すテーブルとが用いられていた。しかしこれに限らず、以下のような手法によっても、ST307における判断を行うことが可能である。まず、individualid403は、路側機2が出口側に設置される場合、個体番号の上位3桁としては予め定められた数が割り当てられている。この上位3桁は例えば不揮発性メモリ14に予め記憶される。処理部13は、ST304で記憶されたindividualid403の上位3桁を、予め記憶する上位3桁と比較する。両者が一致する場合、ST307の判断はYesとなる。
【0048】
また、以上の実施形態では、図3のST307の処理では、図5に示す通り、路側機2が入口側に設置されているか、出口側に設置されているかを示すテーブルが用いられていた。しかしこれに限らず、テーブルには、ETCカード未挿入お知らせアンテナであることを示す情報がさらに記録されていても構わない。この情報が記録されている場合であっても、ST307で説明した通り、処理部13は、No(つまり、フラグが「1」以外)の場合、処理シーケンスを終了し、フラグが「1」の場合、ST308を行うようにすれば良い。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0050】
第2の実施形態に係る車載器及び路側機の構成や処理を説明する前に、本実施形態で用いられる正規運用/不正規運用について定義する。現在の出口側の路側機は、現在の車載器が通信エリアに進入すると、車両が高速道路の入口を通過したことを特定可能な情報(以下、入口通過情報という)を取得する。しかしながら、この時の車載器の状況として、以下の(1)〜(3)がある。
(1)入口通過情報があり、課金(又は払い戻し)対象である場合;
具体的には、出口に近い料金所を通っているため、払い戻しの対象車両と判断される場合
(2)入口通過情報があるが、課金(又は払い戻し)対象ではない場合;
具体的には、出口から遠い料金所を通っているなどの理由により、払い戻しの対象車両ではないと判断される場合
(3)入口通過情報がない場合;
具体的には、高速道路の入口を通過した形跡がない場合
本実施形態では、上記(1)及び(2)を正規運用と定義し、上記(3)を不正規運用と定義する。しかしながら、現状の路側機では、(2)の場合と(3)の場合では同一の通信内容となる。よって、現状の車載器側は、(2)及び(3)を区別することができない。つまり、逆流入か否かの区別をつけることはできない。本実施形態では、路側機は、上記(2)と(3)を区別して、本実施形態に特有な車載器指示情報を車載器側に送信し、車載器側は、特有の車載器指示情報に基づき、逆流入か否かを判断する。以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0051】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る車載器3の全体構成を示すブロック図である。なお、図6には、車載器3とともにETCの路側機4も示されている。
【0052】
路側機4は、図1に示す路側機2と比較すると、SAM41と、料金計算用テーブル421が格納された記憶装置42とをさらに備える点で相違する。それ以外の構成について、路側機4は、路側機2と同様の構成を有する。それ故、図6の構成において、図1の構成に相当するものには同一の参照符号を付け、それぞれの説明を省略する。
【0053】
第1の実施形態では便宜上説明しなかったが、車載器1の場合と同様、路側機4の処理部23が無線通信部22から受け取るデータは暗号化された状態にある。処理部23は、暗号化されているデータを編集せずに、SAM41に送信する。SAM41は、暗号化されているデータを復号して、復号データを処理部23に送る。
【0054】
処理部23は、一般的には、図2のシーケンスを用いて説明したように、SAM41からの受信データの内容を解釈し、車載器3(車両)に指示が必要な場合は、車載器指示情報が路側機4から送信される。具体的には、第1の実施形態で説明したように、料金などが発生する場合は、車載器指示情報が路車間通信の内容に含まれる。
【0055】
次に、図7のフローチャートを参照して、路車間通信の最中における特徴的な処理について説明する。処理部23は、受信データから、車両が高速道路の入口を通過したか否かを入り口情報の有無に基づき判断し、つまり、正規運用か不正規運用(入口通過情報なし)であるかの判断を行う(ST701)。
【0056】
処理部23はさらに、正規運用である場合は、料金計算用データテーブル421を参照して、料金(払い戻し料金)の対象であるか否かを決定する(ST702)。
【0057】
ST701及びST702の結果、処理部23は、車両の現状が上記(1)〜(3)のいずれかであることを特定する(ST703〜ST705)。
【0058】
処理部23は、上記(1)及び(2)であることを特定した場合には、警告対象外の車載器であることを示す第1のコード(正規運用)を作成し(ST706)、上記(3)の場合には、警告対象の車載器であることを示す第2のコード(不正規運用)を作成する(ST707)。ここで、本実施形態では、図8に示すように、車両指示情報の未使用領域である情報コード13以降のうち、情報コード13に第1のコードが割り当てられ、情報コード14に第2のコードが割り当てられる。
【0059】
処理部23は、ST706の後に、車載器表示情報の情報コード13に第1のコードを設定して、無線通信部22及びアンテナ21を介して、車載器3に送信する(図7,ST708)。処理部23は、ST707の後に、車載器表示情報の情報コード14に第2のコードを設定し、車載器3に送信する(ST709)。
【0060】
次に、図9のフローチャートを参照して、車載器3における逆流入警告処理について説明する。図9は、図3と比較すると、ST303,ST304,ST306〜ST308及びST310が行われない代わりに、ST901及びST902が行われる点で相違する。それ以外に両フローチャートの間に相違点は無い。それ故、図9において、図3に示されるステップに相当するものには同一のステップ番号をつけ、それぞれの説明を省略する。
【0061】
ST305が終了すると、車載器3の処理部13は、SAM15で復号された車載器指示情報を受け取る(ST901)。
【0062】
その後、処理部13は、車載器指示情報における全情報コードをチェックし、情報コード14が設定されているか否かを判断する(ST902)。Noならば、第2のコードが設定されていないことになるため、処理部13は、少なくともST309の逆流入警告は行わずに、図9の処理を終了する。
【0063】
それに対し、ST902でYesと判断すると、処理部13は、前述同様の逆流入警告を行う(ST309)。
【0064】
以上説明したとおり、車載器3は車載器指示情報を受信したときに、不正規運用を示す情報コード(この場合は情報コード14)を受信した時に、本来の正規運用でない状況が発生したことを検知して、運転者に対して警告を行い、逆走していることを伝える。
【0065】
以上、第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、出口近傍にある単一のETC路側機2と路車間通信を行うだけで、高速道路への逆流入を運転者に対し警告できる。これによって、システムの敷設・維持等のコストを抑えることが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態によれば、路側機4から送信される車載器指示情報の内容が不正規運用であることを設定できるようにすることにより、車載器3のステップ数が相対的に少なくなる。
【0067】
以下、本発明に係る逆流入警告装置について、ナビゲーション装置に実装した場合の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0068】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るナビゲーション装置6の全体構成を示すブロック図である。なお、図10には、ナビゲーション装置6とともに、ETCの車載器5と路側機2も示されている。
【0069】
まず、路側機2は周知の構成であれば良いため、その詳細な説明を省略する。
【0070】
次に、車載器5の構成について説明する。車載器5は、図1に示す車載器1と比較すると、通信部51をさらに備える点で相違する。それ以外に両車載器1及び5の間で構成面で相違点は無い。それ故、図10において、図1の構成に相当するものには同一の参照符号を付け、それぞれの説明を省略する。なお、説明の便宜上、図1には示されていた不揮発性メモリ14等は図10には示されていない。
【0071】
通信部51は、車載器5とナビゲーション装置6とを有線又は無線で接続するための通信ポートである。通信部51は、車載器5が路側機2の通信エリアに進入したことを示す通知を処理部13を受け取ると、受け取った通知をナビゲーション装置6に送信する。
【0072】
次に、ナビゲーション装置6の構成について説明する。図10において、ナビゲーション装置6は、車載器5と共に車両に搭載可能に構成されており、通信部61と、記憶装置62と、ロケータ63と、処理部64と、表示部65とを備えている。
【0073】
通信部61は、車載器5とナビゲーション装置6とを有線又は無線で接続するための通信ポートである。通信部61は、車載器5の通信部51から通知を受け取ると、受け取った通知を処理部64に送信する。
【0074】
記憶装置62は、例えばハードディスクドライブからなり、経路探索又は地図表示用の地図データを格納する。地図データは、周知のものでよく、典型的には、道路網における各特徴点(例えば交差点)を表すノード情報と、2つの特徴点を結ぶ道路区間を表すリンク情報とを含んでいる。また、各リンク情報には、そのリンクが一般道路を表現しているものか、高速道路を表現しているものかを示す道路種別が割り当てられている。
【0075】
記憶装置62にはさらに、図11に示すようなテーブルが格納される。このテーブルは、少なくとも、道路網上の料金所の設置位置毎に、その料金所が入口側に設置されているか、出口側に設置されているかを示すフラグとを含んでいる。図10の例では、料金所の設置位置は、P(iは、1〜nの自然数)と記載される。また、入口側に設置されていることを示す情報として「0」というフラグが立てられ、出口側のそれとして「1」というフラグが立てられる。
【0076】
ロケータ63は、電波航法のためのGPS受信機及び/又は自立航法のための各種センサを含んでおり、車両の現在位置を求める。
【0077】
処理部64は、運転者等が入力した出発地から目的地までの経路を地図データを用いて求めたり、表示用の地図データを作成したりする。
【0078】
表示部65は、処理部64が作成した地図データに従って、画面上に地図を表示する。
【0079】
次に、図12のフローチャートを参照して、車載器5と協働して行うナビゲーション装置6の逆流入警告処理について説明する。図12において、処理部64は、記憶装置62に格納された地図データを用いて、入力された出発地から目的地までの経路を探索し、探索経路をノード及びリンクで表現した経路データを作成する(ST1101)。ここで、経路データを構成する各リンクにも、道路種別が割り当てられている。
【0080】
次に、処理部64は、例えばマップマッチングを行って、ロケータ63から受け取った現在位置を地図上の現在位置に補正する(ST1102)。
【0081】
次に、処理部64は、ST1101で求められた経路と、ST1102で得られた現在位置とが重畳された地図を表す地図データを作成する。このようにして作成された地図データに従って、表示部65は地図を表示する(ST1103)。
【0082】
例えばST1103が終了すると、処理部64は、通信部61が車載器5からの通知(前述)を受け取ったか否かを判断する(ST1104)。Noと判断した場合、処理部64は、ST1102に戻る。
【0083】
それに対し、Yesと判断した場合は、処理部64は、ST1101で得られた経路データの道路種別をチェックする。具体的には、現在位置に到達するまでに通った過去のリンク情報に割り当てられた道路種別を、車両が一般道路から高速道路に流入したか否かを判断する(ST1105)。なお、本実施形態では、好ましい処理の例示として、処理部64は、車両が通過済のリンク情報の道路種別をチェックしている。このようにするのは、図13に示すように、一般道路Rと高速道路Hとが平行に並んで建設されている場合があり、このような場合、ロケータ63が検出した過去の現在位置Cだけでは、車両が一般道路Rから高速道路Hに進入したか否かを処理部64が判断しづらいからである。
【0084】
ST1105においてNoと判断した場合、処理部64は、ST1102に戻るが、Yesと判断した場合、処理部64は、記憶装置62のテーブル(図11を参照)にアクセスして、ST1102で得られた現在位置から最も設置位置が近い料金所のフラグを取得する(ST1106)。
【0085】
次に、処理部64は、取得したフラグが出口側に設置された料金所を示すか否かを判断する(ST1107)。Noと判断した場合、処理部64は、ST1102に戻る。
【0086】
それに対し、処理部64は、逆流入警告処理の対象として、表示部65に対し、逆流入であることを示す通知を表示し、これによって、運転者に対し逆流入であることを警告する(ST1108)。
【0087】
以上のような処理により、図13に示す一般道路Rから、出口料金所側に設置された路側機2の通信エリアを車両が通過した場合に、ナビゲーション装置6は警告を発する。それに対し、一般道路Rから、入口料金所近傍に設置された路側機2の通信エリアを通過して高速道路Hに車両が進入しようとした場合には、警告は出ない。
【0088】
以上、本実施形態によっても、出口近傍にある単一のETC路側機2と路車間通信を行うだけで、高速道路への逆流入を運転者に対し警告できる。これによって、システムの敷設・維持等のコストを抑えることが可能となる。
【0089】
なお、以上の実施形態では、ナビゲーション装置6が逆流入警告処理を行う例について説明した。しかし、これに限らず、記憶装置62内の各種データ及びロケータ63が車載器5に持たせるのであれば、車載器5でも同様の逆流入警告処理を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る逆流入警告装置は、低コストが要求されるETC車載器やナビゲーション装置等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るETC車載器1の全体構成を示すブロック図
【図2】図1に示すETC車載器1と路側機2の通信手順を示すシーケンスチャート
【図3】図1に示すETC車載器1の処理を示すフローチャート
【図4】図2に示すBSTのデータ構造を示す模式図
【図5】図3に示すST307で用いられるテーブルの構成を示す模式図
【図6】本発明の第2の実施形態に係るETC車載器3の全体構成を示すブロック図
【図7】図6に示す路側機4の処理を示すフローチャート
【図8】図7のST706及びST707で用いられる第1及び第2のコードを示す模式図
【図9】図6に示すETC車載器3の処理を示すフローチャート
【図10】本発明の第3の実施形態に係る車載用ナビゲーション装置6の全体構成を示すブロック図
【図11】図10に示す記憶装置62に格納されたテーブルの構成を示す模式図
【図12】図10に示すナビゲーション装置6の処理を示すフローチャート
【図13】図10に示すナビゲーション装置6の逆流入警告処理の概要を示す模式図
【符号の説明】
【0092】
1,3,5 ETC車載器
11 アンテナ
12 無線通信部
13 処理部
14 不揮発性メモリ
15 SAM(Secure Application Module)
16 ICカードソケット
17 HMI制御部
18 LED
19 スピーカ
110 ICカード
51 通信部
2,4 路側機
21 アンテナ
22 無線通信部
23 処理部
41 SAM(Secure Application Module)
42 記憶装置
421 料金計算用テーブル
6 ナビゲーション装置
61 通信部
62 記憶装置
63 ロケータ
64 処理部
65 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速道路に設置された単一の路側機との間で行われた通信結果に基づき、車両が一般道路から高速道路の出口方向へと逆流入しているか否かを判断する処理部と、
前記処理部が逆流入と判断した場合、その旨を示す警告を出力する警告出力部とを備える、逆流入警告装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記路側機から送信されてくるBST(Beacon Service Table)を取得し、取得したBSTを用いて、前記車両が逆流入しているか否かを判断する、請求項1に記載の逆流入警告装置。
【請求項3】
前記逆流入警告装置はさらに、前記BSTに記述されており各路側機の個体番号であるindividualidが高速道路の入口のものか出口のものかが記述されたテーブルを記憶するメモリを備え、
前記処理部は、取得したBST内のindividualidが、前記メモリに記憶されたテーブルに出口のものとして記述されている場合に、前記車両が逆流入していると判断する、請求項2に記載の逆流入警告装置。
【請求項4】
前記処理部は、取得したBSTに記述されており前記路側機の個体番号であるindividualidから、前記車両が逆流入しているか否かを判断する、請求項2に記載の逆流入警告装置。
【請求項5】
前記路側機は、前記高速道路の入口を車両が通過したことを意味する正規運用か否かを示すコードを、車載器指示情報の未使用領域に設定して送信し、
前記処理部は、前記路側機から送信されてくるコードに基づいて、前記車両が逆流入しているか否かを判断する、請求項1に記載の逆流入警告装置。
【請求項6】
高速道路に設置された単一の路側機の通信エリアに車両が進入したか否かを判断する第1の判断部と、
前記車両の現在位置を検出するロケータと、
前記ロケータにより検出された現在位置に基づき、前記車両が一般道路から高速道路に進入したか否かを判断する第2の判断部と、
前記第1の判断部により車両が通信エリアに進入したと判断され、かつ前記第2の判断部により該車両が一般道路から高速道路に進入したと判断されると、前記ロケータが検出した現在位置の周囲に高速道路の出口があるか否かを判断する第3の判断部と、
前記第3の判断部で出口があると判断された場合、その旨を示す警告を出力する警告出力部とを備える、逆流入警告装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−79509(P2010−79509A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245824(P2008−245824)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】