説明

逆流防止構造及び排水施設

【課題】流入口と流出口との落差を抑えるとともに、確実に止水できる逆流防止構造を提供する。
【解決手段】流入口11と、流入口11よりも低い流出口12と、流入口11から流出口12まで連続するインバート22と、を備える排水施設1に設けられて、流入口11への排水の逆流を防止する逆流防止構造Cである。
インバート22に沿って上方にガイド部材21,21が設けられ、インバート22の上縁とガイド部材21,21とに囲まれたガイド通路2が形成されるとともに、ガイド通路2には、流入口11の内径よりも大きい外径を有する球状浮子3が移動可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水マスに設けられて、流入口への排水の逆流を防止する逆流防止構造と、この逆流防止構造を備える排水施設と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨や台風などがもたらす大雨によって下水が逆流し、宅地内の半地下家屋や地下室において浸水被害が生じることが問題となっている。
【0003】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1では、下方に向いて開口した排水管と、格子状の定置装置の内部を浮力によって上下する浮子と、を備える構成が開示されている。
【0004】
したがって、排水マス中の水位が上昇した場合、浮子が排水管に当接して排水管の端部を塞ぐことで、排水の逆流を防止できる。
【0005】
また、特許文献2では、振り子のように回動するアームと、アームの先端に取り付けられたブイとを備えることで、逆流水の水勢や水位上昇によってアームが回動し、ブイが流入管を塞ぐことで逆流を防止している。
【特許文献1】実開平6−67588号公報
【特許文献2】特開2004−197927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、浮子を上下に移動させる構成では、流入口と流出口との落差を大きくとる必要がある。
【0007】
また、特許文献2のように、アームを備える構成では、アームにゴミなどが引っかかることで、アームの移動が阻害されて、確実に止水できない場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、流入口と流出口との落差を抑えるとともに、確実に止水できる逆流防止構造と、この逆流防止構造を備える排水施設と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の逆流防止構造は、流入口よりも低い流出口と、前記流入口から前記流出口まで連続するインバートと、を備える排水施設に設けられて、前記流入口への下水の逆流を防止する逆流防止構造であって、前記インバートに沿って上方にガイド部材が設けられ、前記インバートの上縁と前記ガイド部材とに囲まれたガイド通路が形成されるとともに、前記ガイド通路には、前記流入口の内径よりも大きい外径を有する球状浮子が移動可能に配置されていることを特徴とする。
【0010】
そして、前記ガイド部材は、前記流入口に近い側が高くなるように傾斜する構成とすることができる。
【0011】
また、前記インバートの上縁は、前記流入口に近い側が高くなるように傾斜して形成される構成とすることができる。
【0012】
さらに、前記インバートは、前記流入口から前記流出口に向かって深さが漸増するU字溝状に形成される構成とすることができる。
【0013】
そして、前記インバート又は前記ガイド部材は、前記球状浮子が前記流出口に近づかないように移動を制限する移動制限手段を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記ガイド部材は、一対の棒材によってレール状に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明の逆流防止構造は、インバートに沿って上方にガイド部材が設けられ、インバートの上縁とガイド部材とに囲まれたガイド通路が形成されるとともに、ガイド通路には、流入口の内径よりも大きい外径を有する球状浮子が移動可能に配置されている。
【0016】
このため、排水施設の内部の水位が上昇すると、ガイド通路の内部を球状浮子が浮力や流れを受けて流入口近傍に移動し、流入口に当接することで、排水の逆流を防止できる。しかも、排水施設における流入口と流出口との落差を最小限に抑えることができる。
【0017】
そして、前記ガイド部材は、前記流入口に近い側が高くなるように傾斜していることで、浮力によって球状浮子を斜め上方に移動させて流入口近傍に移動させることができる。
【0018】
また、インバートの上縁は、流入口に近い側が高くなるように傾斜して形成されていることで、平常時において重力によって球状浮子を斜め下方に移動させて流入口から遠ざけるため、排水が球状浮子に当たりにくくなって球状浮子が汚れにくくなる。
【0019】
さらに、インバートは、流入口から流出口に向かって深さが漸増するU字溝状に形成されていることで、排水を流すインバートが傾斜するため、排水施設内に排水が滞留することを防止できる。
【0020】
そして、インバート又はガイド部材は、球状浮子が流出口に近づかないように移動を制限する移動制限手段を備えていることで、平常時において排水の流出を妨げることがない。
【0021】
また、ガイド部材は、一対の棒材によってレール状に形成されることで、排水施設の上方から夾雑物などを取り除くことができるため、メンテナンス性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
まず、図2を用いて本発明の排水マス1を備える排水システムSの全体構成を説明する。
【0024】
本実施の形態の排水システムSは、図2に示すように、建物6の半地下部分61にトイレ62と風呂63とを備えるとともに、このトイレ62や風呂63には宅地内マス51,52が接続されて、排水管531,532,533,534によって公共マス55を経て下水本管54に接続されている。
【0025】
そして、本実施の形態の排水システムSでは、宅地内マス51,52と公共施設である下水本管54との間に、排水マス1が配置されている。すなわち、宅地内マス51の下流側の排水管532に流入口11(図1参照)が接続されるとともに、公共マス55の上流側の排水管533に流出口12が接続されている。
【0026】
この排水マス1は、図1に示すように、円筒容器状の本体筒10と、この本体筒10の上端を閉塞する点検蓋13と、本体筒10の中間に設けられた流入口11と、本体筒10においてこの流入口11より低い位置に設けられた流出口12と、を備えている。なお、この図1では、説明の便宜のために、本体筒10の一部を破断して説明している。
【0027】
この流入口11は、塩化ビニルなどの樹脂によって、円筒状に形成されるもので、樹脂製の本体筒10の側面の中間に本体筒10の内部と外部とを連通するように設置されている。さらに、この流入口11には、ゴムなどによって形成された円環状のパッキン14が取り付けられている。
【0028】
また、流出口12は、上記した流入口11と同様に、塩化ビニルなどの樹脂によって、円筒状に形成されるもので、本体筒10の側面の中間に本体筒10の内部と外部とを連通するように設置されている。
【0029】
さらに、この流出口12は、上記した流入口11の管底よりも管底が低くなるような高さに配置され、円周方向には流入口11と正対するように位置している。
【0030】
この流入口11と流出口12との高低差は、後述するように、大雨時に球状浮子3が浮き上がって流入口11の近傍に移動できる程度あればよいが、高低差が小さすぎると球状浮子3が平常時の排水の流れを妨害することになるため、流出口12の内周面上端よりも流入口11の内周面下端が高くなるように配置されていることが望ましい。
【0031】
加えて、この流出口12の径は、同一の排水量を流すことができるように、上記した流入口11の径と略同一に形成されている。なお、この流出口12の径は、流入口11の径と略同一に限定されるものではなく、排水施設に設けられる流入口11や流出口12の数や径などに応じて設定することができる。
【0032】
そして、本実施の形態の排水マス1は、円筒容器状の本体筒10の内部に、逆流防止構造Cを備えている。
【0033】
この逆流防止構造Cは、一対の平行な棒材としてのガイド棒21,21と、インバート22と、球状浮子3と、によって主に構成されている。
【0034】
このガイド部材としてのガイド棒21は、樹脂などによって円柱状に形成されるもので、図3(a),(b)に示すように、流入口11の上部と流出口12の上部とに架け渡すように、本体筒10の内周面に接着剤などによって取り付けられている。
【0035】
そして、ガイド棒21は、球状浮子3が浮力を受けて流入口11の方向に移動できるように、流入口11に近い側が高くなるように傾斜して取り付けられている。
【0036】
この傾斜角度は、水平面から仰角30度以下の緩やかな角度とすることで、流入口11と流出口12との高低差を大きくせずに、大雨時に浮力によって球状浮子3を移動させることができる。
【0037】
さらに、このガイド棒21は、球状浮子3がガイド通路2から逸脱しないように形成されている。つまり、ガイド棒21は、インバート22の上方において球状浮子3の直径よりも狭い間隔で2本が平行に設けられるとともに、底版24の上面から球状浮子3の直径よりも低い高さに設けられている。
【0038】
また、インバート22は、本体筒10の下端面を閉塞する底版24の中央に直径方向に連続する略U字溝状に形成されるもので、図3(b)に示すように、平常時に排水を流すための流路面22bと、球状浮子3を保持するために上縁22d,22dの近傍が斜めに傾斜したガイド面22a,22aと、このガイド面22a,22aの流出口12に近い側に形成された移動制限手段としてのストッパー面22c,22cと、を備えている。
【0039】
この流路面22bは、略U字溝状に形成され、流入口11から流出口12に向かって下り勾配が設けられているため、流入口11から流入した排水を流出口12へ滑らかに流すことができるようになっている。
【0040】
さらに、ガイド面22a,22aは、球状浮子3がインバート22の上縁22d,22dを移動する際に傷がつかないように保護するとともに、端部にストッパー面22c,22cが設けられて球状浮子3の移動を制限している。
【0041】
加えて、略U字溝状のインバート22の流出口12側の端部は、流出口12の管の厚み分だけ径が大きくなっており、流出口12を嵌め込んで固定できるように形成されている。
【0042】
さらに、底版24の上面は、排水がインバート22から溢れた際にゴミが滞留することを防止するために、インバート22が設けられた中央近傍が低くなるように傾斜している。
【0043】
そして、本実施の形態では、インバート22の上縁22d,22dと、ガイド棒21,21と、によって囲まれてガイド通路2が形成されている。
【0044】
このガイド通路2は、球状浮子3が移動できるように、球状浮子3よりもひと回り大きく形成されている。
【0045】
すなわち、ガイド通路2の下方にはインバート22があるために、球状浮子3は下方への移動が制限され、上方には間隔が調整された一対のガイド棒21,21があるために、上方への移動が制限され、さらにこの一対のガイド棒21,21は底版24からの高さが調整されているために、側方への移動が制限されている。
【0046】
そして、球状浮子3は、樹脂などによって、流入口11の内径よりも大きい外径を有する球状に形成されるもので、上記したガイド通路2に流入口11と流出口12を結ぶ方向に移動可能に配置されている。
【0047】
また、球状浮子3は、大雨時に作用する浮力と重力との大きさを考慮して、比重が0.9〜1.0の範囲に調整されている。なお、この比重としては0.95が好ましい。
【0048】
したがって、この球状浮子3は、平常時には、重力を受けてインバート22の上縁22d,22dやガイド面22a,22aに載置され、流入口11から流入した宅内排水に押されて転がるように移動してストッパー面22c,22cの位置で静止している。
【0049】
他方、大雨時にマス内の水位が上昇すると、球状浮子3は、浮力を受けてガイド棒21,21に沿って斜め上方に移動し、流入口11に流入する流れによって流入口11のパッキン14に吸い寄せられて当接する。
【0050】
次に、本実施の形態の逆流防止構造Cの作用について説明する。
【0051】
従来、地表56よりも低い半地下部分61を備える建物6では、大雨時に下水本管54の容量を超えた下水が逆流して、半地下部分61に下水が溢れたり、下水と共にエアーが逆流したりすることがあった。
【0052】
つまり、大雨時に、排水を下水本管54に流しきれなくなると、公共マス55などから地表56に溢れ出ることになるが、地表56よりも水頭が低い半地下部分61があると、まずこの半地下部分61に溢れるように逆流することになる。
【0053】
ここにおいて、下水本管54と宅地内マス51との間に逆流防止構造Cを備える排水マス1が配置されていれば、下水の逆流を防止できる。
【0054】
すなわち、本実施の形態の逆流防止構造Cは、インバート22に沿って流入口11に近い側が高くなるように傾斜したガイド部材としてのガイド棒21,21が設けられ、インバート22の上縁22d,22dとガイド棒21,21とに囲まれたガイド通路2が形成され、このガイド通路2には、流入口11の内径よりも大きい外径を有する球状浮子3が移動可能に配置されている。
【0055】
このため、排水マス1の内部の水位が上昇すると、ガイド通路2の内部を、浮力や流れを受けた球状浮子3がガイド棒21,21に沿って斜め上方に移動し、流入口11に当接して流入口11を閉塞することで、下水の逆流を防止できる。
【0056】
つまり、図4(a)に示すように、下流側の流出口12から下水が逆流して排水マス1に貯留されると、排水マス1の内部の水位が上昇し、やがて流入口11に逆流する。
【0057】
そうすると、球状浮子3は、比重が1.0よりも小さいため、浮力を受けて浮き上がり、ガイド部材としてのガイド棒21,21に接するまで上昇すると、ガイド棒21,21に誘導されるとともに流れを受けることでガイド棒21,21に沿って斜め上方に移動する。
【0058】
そして、図4(b)に示すように、球状浮子3が流入口11の近傍まで移動すると、流入口11に向かって流れ込む下水の流れによって流入口11に吸い寄せられ、流入口11の端部に取り付けられたパッキン14に当接する。
【0059】
さらに、排水マス1の内部の水位が上昇すると、球状浮子3は水圧によって流入口11に押し付けられるため、完全な止水が達成される。
【0060】
また、水位が下がってくると、球状浮子3は重力によって流入口11から離れて落下し、インバート22に載置された状態となり、流入口11から排水が流れてくることで、流出口12側に移動する。
【0061】
なお、この図4(a)の初期の場合において、下水が流入口11を通じて逆流しているが、図2に示すように、流入口11は半地下部分61の下に設置された宅地内マス51,52に接続されているため、半地下部分61が浸水することはない。
【0062】
加えて、本実施の形態の逆流防止構造Cでは、排水マス1における流入口11と流出口12との落差を最小限に抑えることができる。
【0063】
つまり、球状浮子3は、上下方向ではなく、ガイド棒21,21に沿って斜めに移動することで、上下方向の移動距離が小さくなるため、この流入口11と流出口12との高低差を少なくすることができる。
【0064】
このため、排水管531,532,533,534,公共マス55や下水本管54などが埋設される深さが浅い場合にも、逆流防止構造Cを設置することができる。
【0065】
ここにおいて、ガイド部材としてのガイド棒21,21は、流入口11に近い側が高くなるように傾斜していることで、浮力のガイド棒21,21に沿う方向の成分によって球状浮子3を斜め上方に移動させて流入口11近傍に移動させることができる。
【0066】
また、平常時においては、球状浮子3が、ガイド通路2とある程度の間隔を持って配置されてため、夾雑物などが引っ掛かることを防止できるうえに、夾雑物などが引っ掛かった場合には取り除きやすい構造となっている。
【0067】
特に、本実施の形態では、ガイド部材としてのガイド棒21,21は、一対の平行な棒材によってレール状に形成されることで、排水マス1の上方から夾雑物などを取り除くことができるため、メンテナンスの作業性が格段に向上する。
【0068】
さらに、この球状浮子3は、平常時には重力や宅内排水の流れによって移動し、大雨時には浮力や下水逆流の流れによって移動するため、機械的な構造を用いることなく、簡易な構造によって、確実に止水することができる。
【0069】
そして、本実施の形態の逆流防止構造Cは、排水マス1がもともと備えているインバート22を利用してガイド通路2を形成することで、より簡易な構造となっている。
【0070】
また、インバート22は、球状浮子3が流出口12に近づかないように移動を制限する移動制限手段としてのストッパー面22c,22cを備えていることで、平常時において宅内排水の流出を妨げることがない。
【0071】
つまり、平常において、排水流量が多い場合などには、球状浮子3が流出口12に近づいて流出口12の内空断面を侵して流れを妨害する可能性があるが、移動制限手段を設けておけば、宅内排水の流れを妨害することはない。
【0072】
さらに、球状浮子3は、比重が0.9以上1.0未満に調整されていることで、ガイド部材21,21が傾斜していないときでも、流れの影響を受けて球状浮子3が流入口11側に動きやすくなるため、止水しやすくなるとともに、水位が下がると重力によって落下しやすくなる。
【0073】
すなわち、比重が1.0を超えると、球状浮子3が浮かび上がらなくなるとともに、比重が小さいと水位が下がった際に、重力を受けて落下しなくなるために、上記の範囲に調整されている。
【0074】
そして、本実施の形態の排水施設としての排水マス1は、上記した逆流防止構造Cを備えることで、排水の逆流を防止できる排水施設となる。
【0075】
このように、逆流を防止できれば、下水本管54から溢れた下水が逆流して排水マス1に達しても、この位置で逆流を阻止できるため、建物6の半地下部分61が浸水することがなくなる。
【実施例】
【0076】
以下、図5,6,7を用いて、前記実施の形態とは別の形態の逆流防止構造C1を備える排水施設としての排水マス1Aについて説明する。
【0077】
なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0078】
まず、構成から説明すると、本実施例の排水マス1Aは、図5に示すように、円筒容器状の本体筒10の内部に、逆流防止構造C1を備えている。なお、この図5では、説明の便宜のために、本体筒10の一部を破断して説明している。
【0079】
この逆流防止構造C1は、ガイド部材としてのガイド庇23と、インバート22と、球状浮子3と、によって主に構成されている。
【0080】
このガイド部材としてのガイド庇23は、樹脂などによって円弧庇状に形成されるもので、図6(a),(b)に示すように、本体筒10の内周面の流入口11の上部に、本体筒10の内周面に接着剤などによって取り付けられている。
【0081】
そして、ガイド庇23は、球状浮子3が浮力を受けて流入口の方向に移動できるように、流入口11に近い側が高くなるように傾斜して取り付けられている。
【0082】
さらに、このガイド庇23は、球状浮子3がガイド通路2Aから逸脱しないように形成されている。つまり、ガイド庇23は、インバート22の上方に設けられるとともに、円弧の両端が底版24の上面から球状浮子3の直径よりも低い位置に設けられている。
【0083】
また、インバート22は、本体筒10の下端面を閉塞する底版24の中央に直径方向に連続するU字溝状に形成されるもので、図6(b)に示すように、平常時に排水を流すための流路面22bを備えている。
【0084】
加えて、本実施例では、図6(b)に示すように、底版24の上面が、インバート22が設けられた中央近傍が低くなるように傾斜しているとともに、流入口11に近い側が高くなるように傾斜している。
【0085】
さらに、インバート22は、流入口11から流出口12に向かって深さが漸増する略U字溝状に形成されていることで、流路面22bは流入口11に近い側が高くなるように傾斜している。
【0086】
上記したように、本実施例では、インバート22の上縁22d,22dと、ガイド庇23と、によって囲まれてガイド通路2Aが形成されている。
【0087】
次に作用について説明すると、本実施例の逆流防止構造C1は、インバート22に沿って流入口11に近い側が高くなるように傾斜したガイド部材としてのガイド庇23が設けられ、インバート22の上縁22d,22dとガイド庇23とに囲まれたガイド通路2Aが形成され、このガイド通路2Aには、流入口11の内径よりも大きい外径を有する球状浮子3が移動可能に配置されている。
【0088】
このため、排水施設としての排水マス1Aの内部の水位が上昇すると、ガイド通路2Aの内部を、浮力を受けた球状浮子3がガイド庇23に沿って斜め上方に移動し、流入口11に当接して流入口11を閉塞することで、下水の逆流を防止できる。
【0089】
つまり、図7(a)に示すように、下流側の流出口12から下水が逆流して排水マス1に貯留されると、排水マス1の内部の水位が上昇し、やがて流入口11に逆流する。
【0090】
そうすると、球状浮子3は、比重が1.0よりも小さいため、浮力を受けて浮き上がり、ガイド部材としてのガイド庇23に接するまで上昇すると、このガイド庇23に沿って斜め上方に移動する。
【0091】
次に、図7(b)に示すように、球状浮子3が流入口11の近傍まで移動すると、流入口11に向かって流れ込む下水の流れによって流入口11に吸い寄せられ、流入口11の端部に取り付けられたパッキン14に当接する。
【0092】
さらに、排水マス1の内部の水位が上昇すると、球状浮子3は水圧によって流入口11に押し付けられるため、完全な止水が達成される。
【0093】
そして、水位が下がってくると、球状浮子3は重力によって流入口11から離れて落下し、インバート22に載置された状態となり、流入口11からの排水の流れや重力によって流出口12側に移動する。
【0094】
また、本実施例では、底版24の上面が流入口11に近い側が高くなるように傾斜しているため、インバート22の上縁22d,22dも、流入口11に近い側が高くなるように傾斜している。
【0095】
このため、平常時において重力によって球状浮子3を斜め下方に移動させて、流入口11から遠ざけることができる。したがって、排水が球状浮子3に衝突し、排水に含まれる夾雑物が球状浮子3近傍の流路面22bに溜まって排水の流れを阻害することはない。
【0096】
さらに、インバート22は、流入口11から流出口12に向かって深さが漸増する略U字溝状に形成されていることで、排水を流すインバート22の流路面22bが傾斜するため、平常時において排水マス1内に排水が滞留することを防止できる。
【0097】
このように排水の滞留を防止することで、滞留した排水が腐敗して臭気が発生したり、微生物が繁殖したりすることを防止できる。
【0098】
加えて、底版24の上面は、インバート22が設けられた中央近傍が低くなるように傾斜しており、流路面22bから溢れた排水は再び流路面22bに戻るため、排水マス1内に排水が滞留することを防止できる。
【0099】
また、ガイド部材としてのガイド庇23は、球状浮子3が流出口12に近づかないように移動を制限する移動制限手段としての折曲部231を備えていることで、平常時において排水の流出を妨げることがない。
【0100】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0101】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0102】
例えば、本実施の形態及び実施例では、排水マス1,1Aが樹脂によって形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コンクリートなどによって形成されるものであってもよい。
【0103】
また、本実施の形態及び実施例では、球状浮子3の移動制限手段としてストッパー面22c,22cや折曲部231が設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、移動制限手段が設けられないものであってもよい。
【0104】
さらに、本実施の形態及び実施例では、球状浮子3の比重が0.9以上1.0未満に調整されているが、これに限定されるものではなく、パッキン14の構造などによっては、この範囲以下の比重を有する球状浮子3を用いることもできる。
【0105】
そして、本実施の形態及び実施例では、宅地内マス51,52とは別個に、逆流防止構造C,C1を備える排水施設としての排水マス1,1Aを設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、宅地内マスに逆流防止構造を設けるものであってもよい。
【0106】
また、本実施の形態及び実施例では、ガイド部材としてのガイド棒21,21やガイド庇23が傾斜している場合について説明したが、これに限定されるものではなく、まったく傾斜せずに略水平に設置されるガイド部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の最良の実施の形態の逆流防止構造を備える排水施設の構成を説明する斜視図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の排水施設を備える排水システムの構成を説明する説明図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の逆流防止構造の構成を説明する断面図である。(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の逆流防止構造の作用を説明する説明図である。(a)は球状浮子が浮上した状態であり、(b)は球状浮子が流入口に当接した状態である。
【図5】実施例の逆流防止構造を備える排水施設の構成を説明する斜視図である。
【図6】実施例の逆流防止構造の構成を説明する断面図である。(a)は縦断面図であり、(b)は横断面図である。
【図7】実施例の逆流防止構造の作用を説明する説明図である。(a)は球状浮子が浮上した状態であり、(b)は球状浮子が流入口に当接した状態である。
【符号の説明】
【0108】
1,1A 排水マス(排水施設)
C,C1 逆流防止構造
11 流入口
12 流出口
2,2A ガイド通路
21 ガイド棒(ガイド部材)
22 インバート
22c ストッパー面(移動制限手段)
22d 上縁
23 ガイド庇(ガイド部材)
231 折曲部(移動制限手段)
3 球状浮子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口よりも低い流出口と、前記流入口から前記流出口まで連続するインバートと、を備える排水施設に設けられて、前記流入口への下水の逆流を防止する逆流防止構造であって、
前記インバートに沿って上方にガイド部材が設けられ、前記インバートの上縁と前記ガイド部材とに囲まれたガイド通路が形成されるとともに、
前記ガイド通路には、前記流入口の内径よりも大きい外径を有する球状浮子が移動可能に配置されていることを特徴とする逆流防止構造。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記流入口に近い側が高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の逆流防止構造。
【請求項3】
前記インバートの上縁は、前記流入口に近い側が高くなるように傾斜して形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の逆流防止構造。
【請求項4】
前記インバートは、前記流入口から前記流出口に向かって深さが漸増するU字溝状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の逆流防止構造。
【請求項5】
前記インバート又は前記ガイド部材は、前記球状浮子が前記流出口に近づかないように移動を制限する移動制限手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の逆流防止構造。
【請求項6】
前記ガイド部材は、一対の棒材によってレール状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の逆流防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−299308(P2009−299308A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152968(P2008−152968)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【Fターム(参考)】