説明

透明で伝導性の酸化物層を持つ基板を洗浄およびエッチングする方法並びに該方法を実施する装置

【課題】 ZnO層を洗浄することができ並びにライン分離処理システムを行うことができ、層の湿式化学的粗面化と関連付けて層の構造化後にできるだけ少ない方法技術的な経費および時間消費量で大きな表面積、即ち一般に1mまたはそれ以上の表面積に再現可能で均質に実現できる方法および装置の提供。
【解決手段】 柔軟性のないまたは柔軟性のある支持体の上に配置された予備構造化された酸化亜鉛層を有する基板を処理する手段において、該基板をエッチング液で処理するための第一の手段、該基板を洗浄液で処理するための第二の手段および第一の手段から第二の手段に基板を運搬するための別の手段よりなることを特徴とする、上記装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーモジュールを製造する際に使用される様な、透明で伝導性の酸化物層(TCO)、特に酸化亜鉛層を有する基板、を洗浄およびエッチングする方法に関する。更に本発明は上記方法を実施するのに適する装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
非晶質のまたは微結晶質珪素あるいはそれの合金をベースとする珪素薄膜ソーラーモジュールの製造は、なかでも表面TCO(“透明で伝導性の酸化物”)接点の構造化を必要とする。この構造化は一般に殆ど専らレーザーでの部分除去によって行い、それによって表面に層残留物を残さとして残す。これらは、工業的にモジュールを製造するのに1mの寸法である基板全表面に更に被覆する前に除去しなければならない。それ故にいずれの場合にも洗浄段階が必要とされる。TCO−層を完全に分離することは部材の機能にとって重要であり且つ高い収率のためには必ず必要とされることである。
【0003】
ほぼ1mの基板寸法で工業的にモジュールを製造する場合には、洗浄は一般に、レーザーでのTCOの構造化の後でおよび別の層の適用前に行われる必要で且つ自主的なプロセス段階である。このために使用される工業的構造物の一つは例えばブラシ洗浄装置(Burstenwaschanlage)である。マグネトロンスパター(Magnetronsputtern)によって製造される酸化亜鉛をTCO−材料として使用する場合には、入射する太陽光を十分に散乱させることを保証するために、一般に追加的に層表面の粗面化を行わなければならない。この粗面化は最も簡単には薄い酸またはアルカリ中で湿式化学的エッチングによって行われる。従来には表面のTCO−材料として構造化済み酸化亜鉛をSi−薄膜ソーラーモジュールの製造では使用されていない。それ故に従来には湿式化学的エッチングのための大規模工業的的解決法も存在していなかった。
【0004】
10×10cmの一般的な基板の大きさの実験室規模で小さい表面積の太陽電池およびソーラーモジュールを製造する場合には、フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲーエムベーハー(Forschungszentrum Julich GmbH)社の光電池研究所においてマグネトロンスパッターによって製造されそして湿式化学的組織化されたZnOが表面TCO−材料として使用されている。この場合には10×10cmまでの基板表面積上にソーラーモジュールを製造する場合には、レーザーでの組織化の後に洗浄が一つの方法段階として湿式化学的組織化と組み合わせて行われる。これによって、ZnOで被覆された基板は室温で薄い(約0.5%濃度の)塩酸溶液に約数十秒間手動で浸漬される。この場合、正確な温度は全く制御できず、エッチング時間だけが手動的に制御される。乾燥工程は汚れのない乾燥窒素を基板に手動的に吹きつけることによって行われる。
【0005】
こび上述の手動エッチング法は特に以下の欠点を有する:
− 手動で実施することが、不可避的に、即ち例えば作業によって、再現性がなく且つ手違いをもたらす。
− 従来の方法は、手動での浸漬が大きな面積に不均一なエッチング結果を実質的に必ずもたらすので、10×10cmの大きな基板表面積に簡単にスケールアップすることができない。
− この従来の方法は僅かな生産量しか可能とせず、自動化が困難である。このことは工業生産においては不利にも高いコストをもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ZnO層を洗浄することができ並びにライン分離処理システム(Linientrennung)を行うことができ、層の湿式化学的粗面化と関連付けて層の構造化後にできるだけ少ない方法技術的な経費および時間消費量で大きな表面積、即ち一般に1mまたはそれ以上の表面積に再現可能で均質に実現できる方法を提供することである。更に本発明の課題は、上述のエッチングおよび洗浄の直後に、エッチングされたディスクを乾燥させる特に有利な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は特定発明の方法によって並びに同時に請求する、該方法を実施する装置によって解決される。該方法および装置の特に有利な実施態様はそれぞれに従属する請求項に記載してある。
【0008】
本発明は、有利にも、柔軟性のないまたは柔軟性のある種々の支持材料、例えばガラスまたは合成樹脂フィルムの上のレーザーで構造化されたZnO層の洗浄およびエッチングの組合せを大きな表面積の基板に対して唯一の方法段階で可能とする。本発明の有利な一つの実施形態においては、基板の追加的乾燥工程を、後続の方法段階で被覆すべき基板全表面を後続乾燥工程の間にコンベアーローラーの様な如何なる物質とも接触さない様にして続ける。
【0009】
本発明は、洗浄および必要なエッチングを、洗浄/エッチングのための装置をコンベアー型噴霧−エッチング装置の形で使用することによって唯一の方法段階で実施することができる方法にも関する。この場合、基板の大きさには根本的な制限はない。支持体上に配置されたZnOは基板全面に均一に且つ正確に制御可能なエッチング時間で粗面化でき、噴霧できそしてそれ故に洗浄もされそして有利にも直ちに乾燥もされ得る。
【0010】
本発明の方法を実施するのに適する本発明に従う装置は、ZnOで被覆された大きな表面積の基板が入口域からエッチング、洗浄および乾燥室を通って出口域に搬送されるコンベアー型エッチング装置である。この場合、エッチングあるいは洗浄溶液は好ましくは噴霧ノズルによって適用される。コンベアーは耐酸性および耐アルカリ性コンベアーローターのシステムによって有利に行うことができる。
【0011】
本発明の方法経路をシステム的に以下に説明する:
方法段階1:TCO被覆された基板を超純水の水で濡らす。
【0012】
目的 :後続のエッチング段階においてできるだけ故意でなく下方に滴るエッチング剤を直ちに希釈する。
方法段階2:エッチング溶液の噴霧。
【0013】
目的 :基板全面にエッチング剤を均一に適用するために。
方法段階3:基板を水または洗浄溶液で洗う。
【0014】
目的 :エッチング工程の終了直後にエッチング剤を速やかに除く。
方法段階4:方法段階3を場合によっては1度または数度繰り返す。
【0015】
目的 :噴霧結果の改善。方法段階3および4についての付記:残留物のない基板表面を得るためには、洗浄溶液の残りが不利にも乾燥してしまうのを避けるために、洗浄した基板を乾燥工程の開始直前まで洗浄溶液で湿らせ続けるのが有利であるからである。
【0016】
本発明の有利な一つの実施態様は、更に基板を乾燥する別の方法段階5を設けるものである。この目的は場合によってはこれらの方法段階の直後に被覆するために洗浄媒体の残り全部を一様に残留物ない状態に除去することである。
【0017】
本発明の有利な一つの実施態様においては、エッチング剤の温度を調節制御できる。再現性あるエッチング結果を得るためには、エッチングの前に追加的にエッチング媒体の伝導性を測定しそして理論値から擦れている場合に再調整してもよい。エッチング媒体の種類は使用する材料の耐久性との関係で当業者によって自由に選択し、方法の要求に適合させることができる。装置全体は耐酸性で耐アルカリ性で製作され、ガスを引き出すための少なくとも1つの排気用開口を有しているべきである。装置の有利な一つの実施態様においては、基板の運搬速度は無断階に調節できそしてそれ故にエッチング時間を正確に制御するのに役立つ。層の性質はプロセスの直前および直後に測定する。層の性質の結果は自動的にエッチング条件、特に基板速度(即ち、エッチング時間)に影響を及ぼし、その結果調和するエッチング結果が保証される。
【0018】
基板の任意の乾燥工程も同様にコンベアー型装置において例えば基板の直ぐ上および直ぐ下に非常に近い位置のエアカーテンを用いて行うこともできる。調整された空気の吹き付け角度および基板の上方および下方の空気圧は、被覆すべき全面が乾燥工程の間にあらゆる物質、例えば運搬用ローラーと接触することがないが、絶え間なく搬送することを保証するよう配慮する。
【発明の有利な実施の形態】
【0019】
以下に本発明の対象を図面によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
プリント回路基板製造の分野の既存のエッチング装置を実施態様として使用しそして本発明に従う目的のために改良した(ZnOで被覆された広い基板表面をエッチング)。フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲーエムベーハー(Forschungszentrum Julich GmbH)社に在るデモ用装置において40×40cmまでの面積を持つ基板を使用することができる。記載した実施例においては以下の修正部がある。
− 装置が水平位置の運搬用ローラーおよび水平の基板コンベアーを備える水平型装置として配置する。
− 湿潤(方法段階1)は装置の外側から手動で行う。エッチング剤として0.5%濃度塩酸(HCl)を使用する。
− エッチング剤は装置の使用前後には密閉された容器中に入れられている。これは、方法が経過しない限り、エッチング剤が蒸発するのを防止するものである。− 速度はデジタル制御装置による高度な精度で且つ再現性をもって調整される。− 第一の洗浄段階(第一の洗浄室)では脱塩水が噴霧されそして第二の洗浄室では脱イオン水が噴霧される。
− 乾燥装置を含めたエッチング溶液と接触する全ての部分は耐酸性の合成樹脂かまたはチタンで製作されている。
− 側面部のチタン製レールは鋭いエッジのあるガラス板によって引っかかったままになるのを防ぐ。
− 基板の厚さは適当な楔型物質の使用によって1〜4mmの間で選択できる。図1:以下を領域を有するフォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲーエムベーハー(Forschungszentrum Julich GmbH)にあるコンベアー型エッチング装置の概略図:
1・・・入口域
2・・・エッチング領域
3、5・・・絞り領域
4、6・・・洗浄領域
7・・・出口域
AM=エッチング剤;SM=洗浄剤;SD=噴霧ノズル;
TW=運搬用ローラー;QW=絞り用ローラー
図2:ホルシュングセントルム・ユーリッヒ・ゲーエムベーハー(Forschungszentrum Julich GmbH)で入手できる、コンベアー型エッチング装置(前部)およびコンベアー型乾燥装置(後部)を持つデモ装置の写真。このコンベアー型装置は未だ開発下にあり、絶えず最適化されている。
【0021】
このデモ装置は正に柔軟性があり、10×10cm〜40×40cmの基板サイズを受け入れることができる。別のサイズに使用することも難なく可能である。決められた基板サイズに使用する場合には、狭い運搬用ローラーを各室の縁部だけに準備しそしてZnO/ガラス基板の境界部でだけで基板と接触させることが考えられる。これは、それによってガラスを運搬システムと下側でも決して接触されることがなくそしてそれ故に理想的には如何なる汚染および/またはその他の影響を受けないので有利である。
【0022】
柔軟性のある基板を用いるためには、ZnO被覆された柔軟性のある膜(金属、合成樹脂)がガラス基板の代わりに使用され、該膜を装置の入口のリールから解きそして出口で再度巻く、いわゆるロール・ツー・ロール法(roll-to-roll process)が考えられる。この目的のためには膜を予め乾燥しておくのが有利であろう。
【0023】
この場合、装置中で基板が水平な状態であることが必須の前提条件ではない。それどころか垂直な配置は、噴霧されるエッチング剤が例えばZnO/ガラス基板に直接的に当たらないので有利であり得る。他方、垂直の状態は、エッチング剤および洗浄剤が重力だけで基板上を下方に流れそしてそれ故にエッチング工程の均一性に悪影響を及ぼし得るという欠点を有している。垂直状態の場合には、エッチング剤が一般に均一に分配されそして均一に洗去されもする。
【0024】
基板に溶液を上述の通り噴霧することも必須ではない。しかしながら噴霧ノズルは一般に非常に効果的で、簡単でそして経済的でもある。本発明の関係では以下の変法も考えられ、また有利でもある。
【0025】
A:基板を、エッチング剤あるいは洗浄剤が存在している広い面積のエッチング浴および洗浄浴に通す。この場合、エッチング時間によって方法を制御することが困難であることが欠点として挙げられ得る。20〜40秒より少ない範囲内の比較的に短いエッチング時間は一般に制御することが困難である。更に基板は
浴への入り込みまたは引出しの時に、垂直高低差を克服しなければならないので、この様な配置は機械的に複雑である。
【0026】
B:酸の膜を基板の全幅に上から流すことを可能とする。更に困難な技術的手段、制御および再現性がここでも予想できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】はコンベアー型エッチング装置の概略図である。
【図2】はコンベアー型エッチング装置(前部)およびコンベアー型乾燥装置(後部)のデモ装置の写真
【符号の説明】
【0028】
1・・・入口域
2・・・エッチング領域
3、5・・・絞り領域
4、6・・・洗浄領域
7・・・出口域
AM・・・エッチング剤
SM・・・洗浄剤
SD・・・噴霧ノズル
TW・・・運搬用ローラー
QW・・・絞り用ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のないまたは柔軟性のある支持体の上に配置された予備構造化された酸化亜鉛層を有する基板を処理する手段において、該基板をエッチング液で処理するための第一の手段、該基板を洗浄液で処理するための第二の手段および第一の手段から第二の手段に基板を運搬するための別の手段よりなることを特徴とする、上記装置。
【請求項2】
運搬用ローラーを別の手段として用いる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
運搬用ローラーを運転することができる駆動機構を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
0.16mより大きい、特に0.5mより大きい酸化亜鉛表面を有する基板を処理することができる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
運搬用ローラーが基板を水平に搬送できるように配置されている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
第一の手段または第二の手段として1つ以上の噴霧ノズルを用いる、請求項1〜5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
噴霧ノズルが運搬用ローラーの上部に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
第一または第二の手段として少なくとも1つの温度制御可能な噴霧ノズルを備える、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
洗浄処理後に基板を乾燥する手段を備える、請求項1〜8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
エッチング液で基板を処理するための手段と洗浄液で基板を処理するための第二の手段との間にローラーが、該ローラーが基板の表面の液体を除去できるように配置されている、請求項1〜9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
ZnOをエッチング媒体で処理し、次いで洗浄液で処理することによって、柔軟性のないまたは柔軟性のある支持体の上に配置された予備構造化された酸化亜鉛層を有する基板を処理する方法において、エッチング液および洗浄液での処理を、基板が装置を通って搬送される間に行うことを特徴とする、上記方法。
【請求項12】
複数の基板を連続的に処理する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基板が運搬用ローラーによって装置を通って搬送される請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
0.16mより大きい、特に0.5mより大きい予備構造化された酸化亜鉛表面を有する基板を処理する、請求項11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
複数の基板を連続的に処理する、請求項11〜14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
エッチング媒体および洗浄液での基板処理を噴霧ノズルによって行う、請求項11〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
基板を、装置を通ってTCO−層を上向きにして水平に搬送しそしてエッチング媒体および洗浄液での処理を該表面に上方から行う、請求項11〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
エッチング媒体および/または洗浄液を温度制御する、請求項11〜17のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−533125(P2007−533125A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506647(P2007−506647)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000563
【国際公開番号】WO2005/101522
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】