説明

透明なシリコーン材料及び光学デバイス製造用のシリコーン組成物

ヒドロシリル化硬化性組成物は高及び低粘度ポリオルガノシロキサン、シリコーン樹脂、架橋剤、並びに触媒の組み合わせを含有する。組成物、及びその硬化物は電荷結合素子(CCD)、発光ダイオード(LED)、光導体、光学カメラ、フォトカプラー、及び導波管のような光学デバイスにおいて有用である。光学デバイスの製造プロセスはオーバーモールドを含む各種成形技術を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は米国特許法第119(e)条に基づき2009年5月29日出願の米国仮特許出願第61/182,128号の優先権を主張する。米国仮特許出願第61/182,128号が、参照することにより本書に含まれる。
【0002】
シリコーン組成物、及びその硬化物は、電荷結合素子(CCD)、発光ダイオード(LED)、光導体、光学カメラ、フォトカプラー、及び導波管のような光学デバイスにおいて有用である。光学デバイスの製造プロセスは各種成形技術を含む。組成物は高及び低粘度線状ポリオルガノシロキサン並びに低ビニル含有量シリコーン樹脂の組み合わせを含有する。
【背景技術】
【0003】
LEDは白熱電球と比較して小型化及びエネルギー使用低減の利点を提供することができる。また、LEDは白熱電球より長い寿命を有することができる。LED、とくに高輝度LED(HB LED)は、LEDが高ルーメン出力を有するので、HB LEDが画面から凹んで配置される用途において有用である。こうした用途としては、ディスプレイのバックライトユニット、自動車ランプ用途、(例えば、ヘッドランプ及びテールランプ)、及び掲示板用途が挙げられる。
【0004】
光導体はHB LEDとともに用いられ、光を画面まで伝送する。光導体は、広域の均質な照射のための平面形状、又はより小さな特定の領域を照射するためのパイプ設計のようなさまざまな大きさ及び形状を有することができる。
【0005】
LEDは高熱流束及び高光束の両方を発生させることができる。従来の有機光導体及び、LEDと併用されるポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカルボネート(PC)、又はシクロオレフィンコポリマー(COC)から製造されるようなLEDパッケージは、熱並びに/又は放射線;紫外光(UV)及び/若しくは可視光線にさらされた際に不十分な安定性の欠点を有し得る。有機光導体は光導体が用いられるデバイスの寿命中の透過率の損失が問題となり得る。光電子産業には各種光学デバイス用途について所望の物理的特性を有する透明な材料の継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
組成物は高及び低粘度ポリオルガノシロキサン、低ビニル含有量シリコーン樹脂、架橋剤、並びに触媒の組み合わせを含有する。組成物、及びその硬化物は、光学デバイスにおいて有用である。組成物は光学デバイスの製造プロセスに用いるのに適し、プロセスは成形及びオーバーモールドを含む各種成形技術を含み、硬化物を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1a、1b、及び1cは本明細書に記載するシリコーン組成物で製造される光導体についての異なる構成を示す。
【図2】本明細書に記載するシリコーン組成物の硬化物を含有するLEDパッケージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
すべての量、比、及び割合はとくに指示のない限り重量による。以下は本出願において用いられる定義の一覧である。
【0009】
定義
冠詞「a」、「an」、及び「the」はそれぞれ1つ以上を指す。
【0010】
略称「M」とは式RSiO1/2のシロキサン単位を意味し、各Rは単独で一価原子又は基を表す。
【0011】
略称「D」とは式RSiO2/2のシロキサン単位を表し、各Rは単独で一価原子又は基を表す。
【0012】
略称「T」とは式RSiO3/2のシロキサン単位を表し、Rは一価原子又は基を表す。
【0013】
略称「Q」とは式SiO4/2のシロキサン単位を意味する。
【0014】
略称「Me」とはメチル基を表す。
【0015】
略称「Ph」とはフェニル基を表す。
【0016】
略称「Vi」とはビニル基を表す。
【0017】
「組み合わせ」とはいずれかの方法によりまとめた2つ以上の要素を意味する。
【0018】
「光導体」とは、LEDのような点状の光源から目標線又は目標面のような標的まで内部反射により光を伝える造形品を意味する。
【0019】
「シリル化アセチレン阻害剤」とはアセチレンアルコール阻害剤及びシランのいずれかの反応生成物を意味する。
【0020】
「非置換炭化水素基」とは水素及び炭素原子で構成されている基を意味する。
【0021】
「置換炭化水素基」とは、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、ハロゲン化有機基、又はシアノ基のような異なる置換原子又は基で置き換えられている以外は、水素及び炭素原子で構成されている基を意味する。
【0022】
組成物
組成物は硬化物を形成するヒドロシリル化硬化性である。組成物は:
(A)(A1)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、最大12,000mPa・sの粘度を有する低粘度ポリジオルガノシロキサン、及び、(A2)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、少なくとも45,000mPa・sの粘度を有する高粘度ポリジオルガノシロキサンを含有するポリマーの組み合わせと;
(B)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基、最大3.0%のビニル含有量を有するシリコーン樹脂と;
(C)1分子当たり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する架橋剤と;
(D)ヒドロシリル化触媒と;
を含む。ただし、成分が(A)、(B)、及び(C)を含み、組成物中のそれらの量が該組成物中のケイ素結合水素原子の総量/該組成物中の脂肪族不飽和有機基の総量比で1.2〜1.7の範囲となるように選択されるとき、前記硬化物が、少なくとも30のショアA硬度、少なくとも3mPa・sの引張強度及び少なくとも50%の破断伸びを有する。
【0023】
成分(A)ポリマーの組み合わせ
成分(A)はポリマーの組み合わせである。ポリマーは粘度が異なる脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンを含む。ポリマーの組み合わせは:
(A1)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、最大12,000mPa・sの粘度を有する低粘度ポリジオルガノシロキサン、及び、
(A2)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、少なくとも45,000mPa・sの粘度を有する高粘度ポリジオルガノシロキサンを含む。
【0024】
成分(A)中の脂肪族不飽和有機基はアルケニル基、例えば、これらに限定されないが、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びへキセニル基であり;選択的にはビニル基である。脂肪族不飽和有機基はアルキニル基、例えば、これらに限定されないが、エチニル基、プロピニル基、及びブチニル基であってもよい。成分(A)中の脂肪族不飽和有機基は末端、ペンダント、又は末端及びペンダント両方の位置にあってもよい。選択的には、成分(A)中の脂肪族不飽和有機基はポリジオルガノシロキサンの末端位置にあってもよい。
【0025】
成分(A)のポリジオルガノシロキサン中の残りのケイ素結合有機基は脂肪族不飽和を含まない置換又は非置換炭化水素基である一価有機基であってもよい。一価非置換炭化水素基の例としては、こられに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル基;シクロへキシルのようなシクロアルキル基;並びにエチルベンジル、ナフチル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、1−フェニルエチル、及び2−フェニルエチルのような芳香族基であり、選択的にはフェニルである。一価置換炭化水素基の例としては、これらに限定されないが、クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フルオロメチル、2−フルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロへキシル、及び8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチルのようなハロゲン化アルキル基がある。
【0026】
成分(A1)及び(A2)のポリジオルガノシロキサンはそれぞれ1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有する。成分(A1)は単一のポリジオルガノシロキサン又は以下の特性:構造、平均分子量、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のポリジオルガノシロキサンを含む組み合わせとすることができる。成分(A1)の粘度は最大12,000mPa・sである。あるいは、成分(A1)の粘度は300mPa・s〜12,000mPa・s、あるいは300mPa・s〜2,500mPa・s、あるいは300mPa・s〜2,000mPa・sの範囲とすることができる。組成物中の成分(A1)の量は成分(A)の総重量に対して10%〜90%、あるいは70%〜80%の範囲とすることができる。
【0027】
成分(A1)は一般式(I):RSiO−(RSiO)−SiRを有することができ、各R及び各Rは単独で上述のような置換及び非置換炭化水素基のような脂肪族不飽和有機基及び一価有機基からなる群から選択され、下付き文字aは成分(A)に最大12,000mPa・sの粘度をもたらすのに十分な値を有する整数であるが、ただし、R及び/又はRの平均少なくとも2つは非置換有機基である。あるいは、式(I)はα,ω−ジアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンであってもよい。
【0028】
成分(A2)は単一のポリジオルガノシロキサン又は以下の特性:構造、平均分子量、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のポリジオルガノシロキサンを含む組み合わせとすることができる。成分(A2)の粘度は少なくとも45,000mPa・sである。あるいは、成分(A2)の粘度は45,000〜65,000mPa・sの範囲とすることができる。組成物中の成分(A2)の量は成分(A)中のポリマーの総重量に対して10〜90%、あるいは20〜30%の範囲とすることができる。
【0029】
成分(A2)は一般式(II):RSiO−(RSiO)−SiRを有することができ、各R及び各Rは単独で上述の置換及び非置換炭化水素基のような脂肪族不飽和有機基及び一価有機基からなる群から選択され、下付き文字bは成分(A)に少なくとも45,000mPa・s、あるいは45,000mPa・s〜65,000mPa・sの粘度をもたらすのに十分な値を有する整数であるが、ただし、R及び/又はRの平均少なくとも2つは非置換有機基である。あるいは、式(II)はα,ω−ジアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンであってもよい。
【0030】
成分(B)シリコーン樹脂
本明細書において有用なシリコーン樹脂は1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を含有する。樹脂中の脂肪族不飽和有機基の量はシリコーン樹脂の重量に対して最大3.0%とすることができる。あるいは、シリコーン樹脂中の脂肪族不飽和有機基の量は同じく1.9%〜3.0%、あるいは2.0%〜3.0%、あるいは1.5%〜3.0%、あるいは1.9%〜3.0%、あるいは1.5%〜2.0%の範囲とすることができる。シリコーン樹脂はRSiO1/2により表される単一官能性(M)単位及びSiO4/2により表される四官能性(Q)単位を含む。Rは置換又は非置換一価炭化水素基である一価有機基を表す。シリコーン樹脂はベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン等のような液体炭化水素に、又は低粘度環状及び線状ポリジオルガノシロキサンのような液体有機ケイ素化合物に可溶性である。例としては以下に記載される溶剤が挙げられる。
【0031】
SiO1/2単位では、Rは一価非置換炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル及びへキセニルのようなアルケニル基;シクロへキシル及びシクロへキセニルエチルのような脂環式ラジカル;エチニル、プロピニル、及びブチニルのようなアルキニル基;シクロペンチル及びシクロへキシルのようなシクロアルキル基;並びにエチルベンジル、ナフチル、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、1−フェニルエチル、及び2−フェニルエチルのような芳香族基、あるいはフェニルであってもよい。R上に存在し得る非反応性置換基としては、これらに限定されないが、ハロゲン及びシアノが挙げられる。置換炭化水素基である一価有機基の例としては、これらに限定されないが、クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、フルオロメチル、2−フルオロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、4,4,4−トリフルオロブチル、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3−ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3−ノナフルオロへキシル、及び8,8,8,7,7−ペンタフルオロオクチルのようなハロゲン化アルキル基がある。
【0032】
シリコーン樹脂は0.6:1〜1.1:1の範囲のM単位のQ単位に対する比(M:Q比)を有することができる。シリコーン樹脂は2,000〜5,000の範囲の数平均分子量を有することができるが、適切なシリコーン樹脂及びどのようにそれらを調製するかの記載については米国特許第6,124,407号を参照されたい。
【0033】
シリコーン樹脂はいずれかの適切な方法により調製することができる。このタイプのシリコーン樹脂は、報告されているように、対応するシランの共加水分解により又は当技術分野において知られているシリカヒドロゾルキャッピング法により調製されてきた。シリコーン樹脂はDaudt他、米国特許第2,676,182号;Rivers−Farrell他、米国特許第4,611,042号;Butler、米国特許第4,774,310号;及びLee他、米国特許第6,124,407号のシリカヒドロゾルキャッピングプロセスにより調製することができる。
【0034】
シリコーン樹脂を調製するのに用いられる中間体は一般的には式RSiX’のトリオルガノシランであり、Rは上述のとおりであり、X’は加水分解性基、及びハロゲン、アルコキシ若しくはヒドロキシルのような4つの加水分解性基を有するシラン、又はケイ酸ナトリウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩を表す。
【0035】
シリコーン樹脂中のケイ素結合ヒドロキシル基(すなわち、HOSiO3/2基)の含有量はシリコーン樹脂の総量の0.7%より低い、あるいは0.3%より低いことが望ましい。シリコーン樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、シリコーン樹脂を適当な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンと反応させることによりトリヒドロカルビルシロキシ基又は加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは一般的にはシリコーン樹脂のケイ素結合ヒドロキシル基と反応するのに要する量を超えて添加される。
【0036】
シリコーン樹脂は1つのシリコーン樹脂であってもよい。あるいは、シリコーン樹脂は、樹脂が以下の特性:構造、ヒドロキシル及び/又は加水分解性基含有量、分子量、シロキサン単位、並びに配列の少なくとも1つが異なる場合、2つ以上のシリコーン樹脂を含むことができる。組成物中のシリコーン樹脂の量は存在するポリマーのタイプ及び量、並びに成分(A)及び(B)の脂肪族不飽和有機基(例えば、ビニル)含有量に応じて異なり得るが、シリコーン樹脂の量は組成物の25重量%〜40重量%、あるいは26重量%〜38重量%の範囲とすることができる。
【0037】
成分(C)架橋剤
成分(C)は1分子当たり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する架橋剤である。成分(C)はポリオルガノ水素シロキサンを含むことができる。成分(C)は単一のポリオルガノ水素シロキサン又は以下の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のポリオルガノ水素シロキサンを含む組み合わせとすることができる。
【0038】
成分(C)は一般式(III):HRSiO−(RSiO)−SiRHの線状ポリオルガノ水素シロキサンを含むことができ、各Rは単独で水素原子、又はRについて上で例示したような一価置換若しくは非置換炭化水素基である一価有機基であるが、ただし、1分子当たり平均少なくとも2つのRは水素原子であり、下付き文字cは1以上の値を有する整数である。あるいは、1分子当たり少なくとも3つのRは水素原子であり、cは1〜20、あるいは1〜10の範囲とすることができる。成分(C)は水素末端ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。あるいは、成分(C)はポリ(ジメチル/メチル水素)シロキサンコポリマーを含むことができる。
【0039】
あるいは、成分(C)は単位式(IV):(RSiO3/2(RSiO2/2(RSiO1/2(SiO4/2(X’O)の分岐ポリオルガノ水素シロキサンを含むことができ、X’はアルコキシ官能基である。各Rは単独で水素原子又はRについて上で例示したように一価置換若しくは非置換炭化水素基である一価有機基であるが、ただし、Rの1分子当たり平均少なくとも2つは水素原子である。式(IV)中、ポリオルガノ水素シロキサンは1分子当たり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有するが、Rの0.1mol%〜40mol%は水素原子であってもよい。
【0040】
式(IV)中、下付き文字dは正の数であり、下付き文字eは0又は正の数であり、下付き文字fは0又は正の数であり、下付き文字gは0又は正の数であり、下付き文字hは0又は正の数であり、e/dは0〜10の範囲の値を有し、f/eは0〜5の範囲の値を有し、g/(d+e+f+g)は0〜0.3の範囲の値を有し、h/(d+e+f+g)は0〜0.4の範囲の値を有する。
【0041】
添加される成分(C)の量は上述の範囲内のSiH/Vi比をもたらすのに十分である。
【0042】
成分(D)ヒドロシリル化触媒
成分(D)はヒドロシリル化触媒である。成分(D)は組成物の硬化を促進するのに十分な量で添加される。しかしながら、成分(D)の量はこのシリコーン組成物の重量に対して白金族金属の0.01〜1,000ppm、あるいは0.01〜100ppm、あるいは0.01〜50pp、あるいは1〜18ppm、あるいは1〜7ppmの範囲とすることができる。
【0043】
適切なヒドロシリル化触媒は当技術分野において知られ、市販されている。成分(D)は白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム若しくはイリジウム金属又はこれらの有機金属化合物からなる群から選択される白金族金属、及びこれらの組み合わせを含むことができる。成分(D)の例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸及び一価アルコールの反応生成物、白金ビス−(エチルアセトアセテート)、白金ビス−(アセチルアセトネート)、二塩化白金、並びにマトリクス又はコアシェル型構造中にマイクロカプセル化した前記化合物とオレフィン、低分子量オルガノポリシロキサン又は白金化合物との錯体のような化合物がある。低分子量オルガノポリシロキサン白金錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体が挙げられる。これらの錯体は樹脂マトリクス中にマイクロカプセル化することができる。あるいは、触媒は1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体を含むことができる。
【0044】
成分(D)に適したヒドロシリル化触媒については、例えば、米国特許第3,159,601号、第3,220,972号、第3,296,291号、第3,419,593号、第3,516,946号、第3,814,730号、第3,989,668号、第4,784,879号、第5,036,117号、及び第5,175,325号並びに欧州特許第0347895B号に記載されている。マイクロカプセル化したヒドロシリル化触媒及びその調製方法も、米国特許第4,766,176号及び米国特許第5,017,654号に例示されるように、当技術分野において知られている。
【0045】
追加の成分
上述の組成物は追加の成分をさらに含むことができる。適切な追加の成分としては、(E)阻害剤、(F)離型剤、(G)光学活性剤、(H)充填剤、(I)接着促進剤、(J)熱安定剤、(K)難燃剤、(L)反応性希釈剤、(M)顔料、(N)難燃剤、(O)酸化防止剤、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
成分(E)阻害剤
成分(E)は阻害剤である。適切な阻害剤の例としては、アセチレンアルコール、シクロアルケニルシロキサン、エンイン化合物、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、アミン、及びこれらの組み合わせがある。適切なアセチレンアルコールの例としては、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルへキシノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オル、及びこれらの組み合わせ;メチルビニルシクロシロキサン、例えば1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラへキセニルシクロテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせのようなシクロアルケニルシロキサン;3−メチル−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−インのようなエンイン化合物;ベンゾトリアゾールのようなトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;テトラメチルエチレンジアミンのようなアミン、フマル酸ジアルキル、フマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキル、マレイン酸ジアリルのようなマレイン酸エステル、並びにこれらの組み合わせがある。適切な阻害剤については、例えば、米国特許第3,445,420号、第3,989,667号、第4,584,361号、及び第5,036,117号に開示されている。あるいは、成分(E)は有機アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、又はこれらの組み合わせを含むことができる。有機アセチレンアルコール阻害剤の例については、例えば、欧州特許第0764703号及び米国特許第5,449,802号に開示され、1−ブチン−3−オル、1−プロピン−3−オル、2−メチル−3−ブチン−2−オル、3−メチル−1−ブチン−3−オル、3−メチル−1−ペンチン−3−オル、3−フェニル−1−ブチン−3−オル、4−エチル−1−オクチン−3−オル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オル、及び1−エチニル−1−シクロヘキサノールを含む。あるいは、組成物中の成分(E)はシリル化アセチレン阻害剤とすることができる。理論に縛られることを望むことなしに、シリル化アセチレン阻害剤を添加することは、阻害剤を含有しない、又は有機アセチレンアルコール阻害剤を含有するヒドロシリル化硬化性組成物から調製される硬化物と比較して組成物から調製される硬化物の黄変を低減することができると考えられる。シリコーン組成物は有機アセチレンアルコール阻害剤を含まなくてもよい。「有機アセチレンアルコール阻害剤を含まない」とは、組成物中にいずれかの有機アセチレンアルコールが存在する場合、存在する量は、200℃で14日間加熱した後、硬化物の光透過性を2.0mm以下の厚さ、400nmの波長で<95%まで低減するのに不十分であることを意味する。
【0047】
成分(E)は組成物の総重量に対して0.001〜1重量部、あるいは0.01〜0.5重量部の量で添加することができる。成分(E)に適したシリル化アセチレン阻害剤は一般式(V):
【化1】

、若しくは、一般式(VI):
【化2】

又はこれらの組み合わせを有することができ、式中、各Rは単独で水素原子又は一価有機基であり、下付き文字nは0、1、2、又は3であり、下付き文字qは0〜10であり、下付き文字rは4〜12である。あるいは、nは1又は3である。あるいは、一般式(V)中、nは3である。あるいは一般式(VI)中、nは1である。あるいはqは0である。あるいは、rは5、6、又は7であり、あるいはrは6である。Rの一価有機基の例としては、上述のように、脂肪族不飽和有機基、芳香族基、又は芳香族を含まない及び脂肪族不飽和を含まない一価置換若しくは非置換炭化水素基である一価有機基が挙げられる。Rは共有結合又は二価炭化水素基である。
【0048】
シリル化アセチレン阻害剤の例としては、(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)トリメチルシラン、((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルシラン、ビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ))シラン、(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルへキセニルシラン、(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)トリエチルシラン、ビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)トリメチルシラン、(3−フェニル−1−ブチン−3−オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3−フェニル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3−フェニル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルビニルシラン、(3−フェニル−1−ブチン−3−オキシ)ジメチルへキセニルシラン、(シクロへキシル−1−エチン−1−オキシ)ジメチルへキセニルシラン、(シクロへキシル−1−エチン−1−オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロへキシル−1−エチン−1−オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロへキシル−1−エチン−1−オキシ)トリメチルシラン、及びこれらの組み合わせがある。あるいは、成分(E)の例としては、メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ))シラン、((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせがある。
【0049】
シリル化アセチレン阻害剤は式RSiCl4−nのクロロシランと式
【化3】

又は
【化4】

のアセチレンアルコールとの酸受容体の存在下での反応のようなアルコールのシリル化の技術分野において知られる方法により調製することができる。これらの式中、n、q、r、及びRは上述のとおりであり、Rは共有結合又は二価炭化水素基である。シリル化アセチレン阻害剤及びその調製方法の例については、例えば、欧州特許第0764703A2号及び米国特許第5,449,802号に開示されている。
【0050】
成分(F)離型剤
成分(F)は任意の離型剤である。成分(F)は一般式(VI):R10SiO(R10SiO)(R1011SiO)SiR10を有することができ、式中、各R10は単独でヒドロキシル基又は一価有機基であり、各R11は単独で組成物中の脂肪族不飽和有機基及びケイ素結合水素原子と反応しない一価有機基であり、下付き文字iは0以上の値を有し、下付き文字jは1以上の値を有するが、ただし、i及びjは離型剤が成形プロセス温度で50〜3,000mPa・sの粘度を有するのに十分な値を有することができる。あるいは、各R10は単独でメチル、エチル、プロピル、若しくはブチルのようなアルキル基、又はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、若しくはブトキシのようなアルコキシ基であってもよく、各R11は単独でフェニル、トリル、又はキシリルのような芳香族基であってもよい。あるいは、各R10はメチルであってもよく、各R11はフェニルであってもよい。適切な離型剤の例としては、25℃で100〜500mPa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端(ジメチルシロキサン/フェニルメチルシロキサン)コポリマーが挙げられる。
【0051】
あるいは、成分(F)は組成物の重量に対して0%〜5%、あるいは0.25%〜2%の範囲の量で組成物に添加することができるα,ω−ジヒドロキシ官能性ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。成分(F)は単一のポリジオルガノシロキサン又は以下の特性:構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位、及び配列の少なくとも1つが異なる2つ以上のポリジオルガノシロキサンを含む組み合わせとすることができる。成分(F)の粘度は重要ではなく、25℃で50〜1,000mPa・sの範囲とすることができる。成分(F)は1分子当たり少なくとも1つの芳香族基を含有することができ、芳香族基は上で例示したとおりである。成分(F)は少なくとも15mol%、あるいは少なくとも30mol%の芳香族基を含有することができる。
【0052】
成分(F)は一般式(VI’):HOR12SiO−(R12SiO)SiR12OHのα,ω−ジヒドロキシ官能性ポリジオルガノシロキサンを含むことができ、式中、各R12は単独で上で例示したような芳香族基、又は上で例示したような芳香族を含まない及び脂肪族不飽和を含まない一価置換若しくは非置換炭化水素基であるが、ただし、1分子当たり平均少なくとも1つのR12は芳香族基であり、下付き文字kは1以上の値を有する整数である。あるいは、1分子当たり少なくとも1つのR12はフェニルであり、kは2〜8の範囲とすることができる。あるいは、有機離型剤を上述のシロキサンの代わりに用いることができる。
【0053】
成分(G)光学活性剤
成分(G)は光学活性剤である。成分(G)の例としては、光拡散剤、蛍光体粉末、フォトニック結晶、量子ドット、カーボンナノチューブ、蛍光染料又は吸収染料のような染料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。成分(G)の正確な量は選択される特定の光学活性剤によって決まるが、成分(G)はシリコーン組成物の重量に対して0%〜20%、あるいは1%〜10%の量で添加することができる。成分(G)はシリコーン組成物と混合又はシリコーン組成物を硬化して硬化物とすることにより調製される光学デバイスの表面上をコーティングすることができる。
【0054】
成分(H)充填剤
成分(H)は充填剤である。適切な充填剤は当技術分野において知られ、市販されている。例えば、成分(H)はシリカ、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、石英粉末、酸化チタン、ガラス、アルミナ、酸化亜鉛、又はこれらの組み合わせのような無機充填剤を含むことができる。充填剤は50ナノメーター以下の平均粒径を有することができ、散乱又は吸収により透過パーセントを低下させない。あるいは、成分(H)はポリ(メタ)アクリレート樹脂粒子のような有機充填剤を含むことができる。成分(H)はシリコーン組成物の重量に対して0%〜50%、あるいは1%〜5%の量で添加することができる。
【0055】
上述のシリコーン組成物は、すべての成分の周囲温度又は高温での混合のような、いずれかの便利な手段により調製することができる。シリコーン組成物は一液型組成物又は多液型組成物として調製することができる。一液型シリコーン組成物は成分(A)、(B)、(C)、及び(D)並びに、存在する場合、いずれかの追加の成分を混合することにより調製することができる。一液型シリコーン組成物を調製する場合、組成物のポットライフは上述の成分(E)を添加することにより伸ばすことができる。シリコーン組成物を本明細書に記載するような成形プロセス(又はオーバーモールドプロセス)に用いる場合、成分(F)を添加することができる。二液型組成物のような多液型組成物中、成分(C)及び(D)は別々の部分に保存される。例えば、ベース部分は60%〜75%の成分(A)、25%〜40%の成分(B)、及び6ppmの成分(D)を含む成分を混合することにより調製することができる。ベース部分は任意で0.2〜5部の成分(F)、(G)、及び/又は(H)をさらに含むことができる。硬化剤部分は50%〜70%の成分(A)、20%〜37%の成分(B)、7%〜16%の成分(C)、及び0.001〜1%の成分(E)を含む成分を混合することにより調製することができる。硬化剤部分は任意で0.2〜5部の成分(F)、(G)、及び/又は(H)をさらに含むことができる。ベース部分及び硬化剤部分は、2つの部分を硬化剤1部当たりベース1〜10部の比で混合する場合、別々の容器に使用の直前まで保存することができる。これらの量は典型例(別の出願からとった)である。
【0056】
組成物の硬化物
上記組成物の硬化物は室温で又は加熱しながら硬化することにより得ることができるが、加熱は硬化を加速することができる。加熱の正確な時間及び温度は触媒の量並びに(もしあれば)存在する阻害剤のタイプ及び量を含む各種要因に応じて変化するが、硬化は50℃〜200℃の範囲の温度で数分〜数時間の範囲の時間加熱することにより行うことができる。
【0057】
上述の組成物の硬化物は、当技術分野において知られる組成物の硬化物と比較して物理的及び/又は機械的特性を向上させた。本明細書に記載する組成物の硬化物は、ASTM D2240に従ってタイプAデュロメーターにより測定されるように、少なくとも30のショアA硬度を有することができ、あるいはショアA硬度は30〜80の範囲とすることができる。(ショアAデュロメーターについてのASTM D2240はプラスチックのデュロメーター硬度の試験方法を定めるJIS K 6253タイプAに対応する。)あるいは、硬化物は最大55の硬度を有することができ、あるいは硬度は30〜55の範囲とすることができる。
【0058】
硬化物は、ASTM D412により測定されるように、少なくとも3mPa・sの引張強度を有することができ、あるいは引張強度は3mPa・s〜14mPa・sの範囲とすることができる。硬化物は、同様にASTM D412により測定されるように、少なくとも50%の破断伸びを有することができ、あるいは破断伸びは50%〜250%の範囲とすることができる。硬化物は優れた熱光学安定性、向上した機械的特性、耐候性及び耐熱性を示すことができる。透過率は試料についてまず硬化後測定し、その後試料を150℃で1000時間加熱し、透過率は中度の走査速度、1ナノメーターのスリット幅で紫外線可視分光光度計を用いて再度測定し、黄変を測定する。
【0059】
プロセス
光学デバイス部品はi)組成物を成形するステップ及びii)組成物を硬化して光学デバイスに用いる硬化物を形成するステップを含むプロセスにより上述の組成物を用いて調製することができる。ステップi)は射出成形、トランスファー成形、キャスティング、押出、オーバーモールド、圧縮成形、及びキャビティ成形のようなプロセスにより行うことができる。ステップi)について選択されるプロセスは製造される光学デバイスの大きさ及び形状並びに選択される組成物を含む各種要因によって決まるだろう。
【0060】
光学デバイス
上述のプロセス及びシリコーン組成物を用い、各種光学デバイスを製造することができる。例えば、こうした光学デバイスとしては、CCD、光学カメラ、フォトカプラー、光導波路、光導体、光変換素子、及びHB LEDパッケージ、例えば、LEDパッケージレンズのようなLEDパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上述のプロセス及び組成物を用いて調製される光導体は、単体で又は別のデバイスの一部として製造することができる。デバイスは光導体の入口に連結しているLED又はHB LEDのような光源をさらに含むことができる。デバイスは有機光導体又は光導体の出口のレンズのような別の光学デバイスをさらに含むことができる。例えば、図1a、1b、及び1cはLED101及び上述のシリコーン組成物から調製される光導体102を含む光学デバイスを示す。光導体102は、図1aに示すようにLED101から光が光導体102の入口103に入るように単純にLED101を光導体102に隣接して配置することによりLED101と連結していてもよい。LED101と光導体102の出口103との間のいくらかの隙間は任意で空気又はゲル若しくはエラストマーのような光結合剤106で埋めることができる。光導体102は任意で光導体102の表面を囲むクラッド107をさらに含むことができる。クラッドは光導体102のRIより低いRIを有することができる。
【0062】
あるいは、LED101は、図1bに示すように、LED101と接触しながら、上述のシリコーン組成物が硬化して光導体102を形成するように光導体102と一体化することができる。光学デバイスは、組成物の硬化物から製造される光導体102の出口105と連結している有機光導体104をさらに含むことができる。理論に縛られることを望むことなしに、LED101に連結している光導体102を用いることは光学デバイスの安定性を向上させる一方、PMMA、PC、及びCOC光導体のような有機光導体104は上述の組成物の硬化物から製造される光導体102と比較して製造費用が安くあり得るので光導体102の出口105と連結している有機光導体104を用いることは得られる光学デバイスのコストを低減させるが、有機光導体104は、硬化物から製造される光導体102なしにLED101と連結している場合、有機建築材料の本明細書に記載する組成物を硬化することにより調製される硬化物と比較して低い安定性のため劣化の欠点を有すると考えられる。あるいは、LED101は、図1cに示すように、突き合わせ結合により光導体102の入口103と連結していてもよい。内部反射に影響を与えるために光導体102の少なくとも1つの表面108を処理することができる。例えば、光導体102の表面108を部分的に又は完全に鏡面加工し、内部反射を向上させることができる。あるいは、光導体102の表面108を部分的に又は完全に粗面化することができる。
【0063】
当業者であれば、図1a、1b、及び1cに示す光導体が例示的であり非限定的であることを認識するだろう。光導体は光導体と連結させる光源及び光導体が用いられる用途を含む各種要因に応じて複数の構成を有することができる。例えば、光導体は棒又は円筒形状を含むことができる。本明細書に記載するシリコーン組成物及びプロセスを用い、例えば、米国特許第5,594,424号、第5,673,995号、第6,174,079号、第6,568,822号、米国特許公開第2005/0213341号及び第2006/0105485号公報、並びに国際公開第2005/033207号及び第2006/033375号公報に開示される光導体を製造することができる。
【0064】
上述のシリコーン組成物の成分は、シリコーン組成物を硬化することにより調製される光導体が所定の用途について所望の特性を有するように選択することができる。光導体は、例えば、ディスプレイのバックライトユニット、車両照明、及び掲示板用途に用いることができる。光導体をこれらの用途に用いる場合、光導体はデュロメーターにより測定されるように50〜80、あるいは60〜80のショアA硬度を有することができる。光導体は、1.5mm〜4mmの範囲の厚さを有する部分において50%より大きい、あるいは50%〜100%の光学透明度を有することができる。いくつかの自動車ヘッドランプ用途について、光導体は紫外線にさらされた際に非黄変性であってもよい。光導体は、(同様に1.5mm〜4mmの範囲の厚さを有する部分において)150℃で少なくとも7日、あるいは7〜60日間、20%より以下、あるいは15%の透過損失を有することができる。光導体の屈折指数(RI)は1.4〜1.46の範囲とすることができる。コアのRIは、存在する場合、クラッドのRIより少ない。RIは、光導体を製造するのに硬化させ、用いられた組成物の成分中の芳香族基(例えば、フェニル)及び非芳香族基(例えば、メチル)の量を変化させることにより調整することができる。有機光導体を連結させる場合、上述の組成物の硬化物から製造される光導体のRIは有機光導体のRIと一致させることができる。例えば、PMMA光導体はRI1.49を有することができるが、PC光導体はRI1.57を有することができる。
【0065】
あるいは、光導体以外の成形形状は、本明細書に記載する成形プロセスにより調製することができる。成形形状は、例えば、平面レンズ、曲面レンズ、又はフレネルレンズのようなLEDパッケージに用いられるレンズであってもよい。
【0066】
あるいは、シリコーン組成物はLEDデバイスのような光電子デバイスのパッケージングに用いることができる。例えば、シリコーン組成物は硬化物がハードレンズとして形成されるように成形及び硬化することができる。レンズはタックフリー及び耐吸塵性とすることができる。組成物を用い、例えば、国際公開第2005/017995号公報に開示されるような射出成形プロセスにおいてレンズを形成することができる。
【0067】
あるいは、シリコーン組成物及びプロセスを用い、米国特許第6,204,523号又は国際公開第2005/033207号公報に開示されるようなLEDデバイスをカプセル化することができる。図2は上述の組成物から調製される硬化物を有するLEDデバイスの断面図を示す。LEDデバイスは、ゴム若しくはゲルのような軟質シリコーン203、又は上述のシリコーン組成物の硬化物にカプセル化したLEDチップ204を含む。LEDチップ204はワイヤー202によりリードフレーム205に結合している。LEDチップ204、ワイヤー202、及び軟質シリコーン203は、軟質シリコーン203より高い硬度を有するように配合される、上述のシリコーン組成物の硬化物で製造することができるドーム201に囲まれている。
【実施例】
【0068】
これらの実施例は当業者に本発明を示すことを意図するものであり、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
以下の実施例及び比較例では以下の成分を用いた。ポリマー(A1)は2,000mPa・sの粘度及び0.228%のビニルを有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとした。ポリマー(A2)は45,000mPa・s〜65,000mPa・sの範囲の粘度及び0.088%のビニルを有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとした。ポリマー(A3)は7,000mPa・s〜12,000mPa・sの範囲の粘度及び0.11〜0.23%のビニルを有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンとした。樹脂(B1)はジメチルビニルクロロシラン並びにケイ酸、ナトリウム塩、クロロトリメチルシラン、イソプロピルアルコール、及び水の反応生成物の反応により調製される1.95%のビニル含有量を有するジメチルビニル化及びトリメチル化シリカとした。樹脂(B2)はジメチルビニルクロロシラン並びにケイ酸、ナトリウム塩、クロロトリメチルシラン、イソプロピルアルコール、及び水の反応生成物の反応により調製される、3.17%のビニル含有量を有するジメチルビニル化及びトリメチル化シリカとした。架橋剤(C1)は5mm/sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル水素)シロキサンコポリマーとした。架橋剤(C2)は23mm/sの粘度を有するジメチル水素シロキシ変性シリカとした。触媒(D1)は98重量部の300〜600mPa・sの範囲の粘度及び0.38%〜0.60%の範囲のビニル含有量を有するジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、0.2重量部の1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体、並びに1重量部のテトラメチルテトラビニルジシロキサンを含有する混合物とした。阻害剤(E1)はエチニルシクロヘキサノールとした。阻害剤(E1)は3,5−ジメチル−1−へキシン−3−オルとした。
【0069】
(参照例1)試験方法
硬度はASTM D2240に従ってタイプAデュロメーターにより測定した。ショアA値を各実施例について3回測定し、平均値を硬度として記録した。
【0070】
引張強度及び伸びはASTM D412に従って測定した。引張強度試験は10%の分散を有した。各値を各実施例について3回測定し、平均を記録した。
【0071】
透過率は試料についてまず硬化後に測定した後、試料を150℃で1000時間加熱し、透過率は中度の走査速度、1ナノメーターのスリット幅で紫外線可視分光光度計を用いて再度測定し、黄変を測定する。
【0072】
(比較例1〜2)1つのポリマーを含有する組成物、及び、(実施例1)ポリマーの組み合わせを含有する組成物
表1の成分を混合及び硬化した。表1の各成分の量はとくに指定のない限り重量部とした。成分をカップ中で混合し、歯科用ミキサーで混合した。得られるシリコーン組成物を任意で研磨したモールド中に射出し、モールド中に130℃〜180℃で、一般的には1分〜5分間保持することにより硬化した。モールドは、参照例1において上述したように、引張強度の測定についてのASTM D412に記載されるような引張棒を形成した。硬度及び透過率を引張強度試験前に各引張棒について測定した。硬度、引張強度、伸び、及び透過率を参照例1の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1並びに比較例1及び2は、許容可能な硬度及び伸びをポリマーの組み合わせを用いて達成することができ、引張強度はポリマーの組み合わせを用いる場合いずれかのポリマーを単独で用いる場合と比較して予想外に増加することを示す。
【0075】
(比較例3〜4及び実施例2)
表2の成分を混合及び硬化した。表2の各成分の量はとくに指定のない限り重量部とした。成分を混合してシリコーン組成物を生成し、硬化して実施例1について上述の同じ方法を用いて引張棒を作成した。硬度、引張強度、伸び、及び透過率を参照例1において上述の方法に従って測定した。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例2並びに比較例3及び4は、許容可能な硬度及び伸びをポリマーの組み合わせを用いて達成することができ、引張強度はポリマーの組み合わせを用いる場合いずれかのポリマーを単独で用いる場合と比較して予想外に増加することを示す。
【0078】
(実施例3〜9及び比較例5〜8)
表3の成分を混合及び硬化した。表3の各成分の量はとくに指定のない限り重量部とした。成分を混合してシリコーン組成物を生成し、硬化して実施例1について上述の同じ方法を用いて引張棒を作成した。硬度、引張強度、伸び、及び透過率を参照例1において上述の方法に従って測定した。結果を表3に示す。実施例3〜9は、特性の所望の組み合わせを有する硬化物をさまざまなシリコーン樹脂中のビニル含有量並びに低粘度及び高粘度ポリマーの異なる組み合わせを用いて調製することができることを示す。
【0079】
【表3】

【0080】
比較例5〜7は、高すぎるビニル含有量を有する樹脂を用いる場合、生成物が高い硬度を有し、オーバーモールドのような特定の用途について望ましくないものとすることができることを示す。実施例1は比較例5より良好な(低い)硬度及び良好な(高い)伸びを有する。比較例6は、架橋剤は同じだが、実施例2より低い引張強度及び伸び、並びに高い硬度を有する。実施例2は比較例6及び7のいずれかより良好な(低い)硬度及び良好な(高い)伸びを有する。比較例8は、2つの低粘度ポリマーを低粘度ポリマー及び高粘度ポリマーの組み合わせの代わりに用いる場合、伸びはこの硬化物において悪影響を受け、従って特性の有益な組み合わせは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
組成物は光導体及びLEDパッケージのような光学デバイスの製造に有用である。これらの組成物を硬化することにより調製されるシリコーンカプセル材料のような組成物の硬化物はLEDパッケージの向上した光透過率、向上した信頼性、及び向上した寿命の利点をもたらすことができる。シリコーンカプセル材料はエポキシカプセル材料と比較してLED用途において耐温度性及び耐湿性に優れた性能を示すことができる。組成物及びプロセスを用い、これらに限定されないが、円筒、長方形、単純な凸レンズ、パターン化レンズ、型押表面、ドーム、及びキャップを含む形状有する硬化物を調製することができる。光学デバイス用途では、カプセル材料は成形(射出又はトランスファー)又はキャスティングプロセスにより予備製造することができる。あるいは、「オーバーモールド」又は「インサート成形」と称される、リジッド又はフレキシブル基板上の光学デバイスアセンブリに対する成形プロセスは本明細書に記載する組成物を用いて行うこともできる。組成物は堅い(高い引張強度を有する)硬化物を形成する。硬化物の所望の最終用途に応じて、比較的高い、又は比較的低い硬度を有する硬化物を生成するように組成物を配合することができる。硬化物の表面は粘着性がなく、弾塑性を有する。この特性の組み合わせは組成物をオーバーモールド及び他の用途に適したものにする。上述の光導体を用い、光を光源から画面まで内部反射により伝送することができる。こうした用途としては、ディスプレイのバックライトユニット、車両照明、及び掲示板用途が挙げられる。
【符号の説明】
【0082】
101 LED
102 光導体
103 光導体の入口
104 有機光導体
105 光導体の出口
106 光結合剤
107 クラッド
108 光導体の表面
201 ドーム
202 ワイヤー
203 軟質シリコーン
204 LEDチップ
205 リードフレーム
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化して硬化物とすることができる組成物であって、該組成物は、
(A)(A1)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、最大12,000mPa・sの粘度を有する低粘度ポリジオルガノシロキサン、及び、(A2)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基を有し、少なくとも45,000mPa・sの粘度を有する高粘度ポリジオルガノシロキサンを含有するポリマーの組み合わせと;
(B)1分子当たり平均少なくとも2つの脂肪族不飽和有機基、最大3.0%のビニル含有量を有するシリコーン樹脂と;
(C)1分子当たり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する架橋剤と;
(D)ヒドロシリル化触媒と;を含み、
成分が(A)、(B)、及び(C)を含み、組成物中のそれらの量が該組成物中のケイ素結合水素原子の総量/該組成物中の脂肪族不飽和有機基の総量比で1.2〜1.7の範囲となるように選択されるとき、前記硬化物が、少なくとも30のショアA硬度、少なくとも3mPa・sの引張強度及び少なくとも50%の破断伸びを有する、組成物。
【請求項2】
成分(A1)は300mPa・s〜2,000mPa・sの範囲の粘度を有し、成分(A2)は45,000〜65,000mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分(B)は1.5%〜3.0%の範囲のビニル含有量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分(A1)は成分(A)の総重量に対して10%〜90%の量で存在し、成分(A2)は成分(A)の総重量に対して10%〜90%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分(B)は前記シリコーン組成物の25重量%〜40重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分(C)は前記シリコーン組成物中の前記SiH/Vi比をもたらすのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分(D)は前記シリコーン組成物の重量に対して0.1ppm〜1,000ppmの白金族金属をもたらすのに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(E)阻害剤、(F)離型剤、(G)光学活性剤、(H)充填剤、(I)接着促進剤、(J)熱安定剤、(K)難燃剤、(L)反応性希釈剤、(M)顔料、(N)難燃剤、(O)酸化防止剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される追加の成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項10】
30〜800の範囲のショアA硬度を有する、請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
3〜14mPa・sの範囲の引張強度を有する、請求項9に記載の硬化物。
【請求項12】
50%〜250%の範囲の破断伸びを有する、請求項9に記載の硬化物。
【請求項13】
(1)シリコーン樹脂の第1部分及び第1有機溶剤を含む溶液を低粘度のポリジオルガノシロキサンと混合し、その後該第1有機溶剤を除去して第1樹脂/ポリマーの組合せを調製するステップと;
(2)シリコーン樹脂の第2部分及び第2有機溶剤を含む溶液を高粘度のポリジオルガノシロキサンと混合し、その後該第2有機溶剤を除去して第2樹脂/ポリマーの組合せを調製するステップと;
(3)ステップ(1)及びステップ(2)の生成物を成分(C)及び成分(D)を含む成分と混合して請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を形成するステップとを含む方法。
【請求項14】
(4)ステップ(3)において形成される組成物を加熱して硬化物を形成するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(3)の後、前記組成物を射出成形、トランスファー成形、キャスティング、押出、オーバーモールド、圧縮成形、及びキャビティ成形から選択される方法により成形するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(3)後、前記組成物をオーバーモールド法により成形するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
請求項9に記載の硬化物の光学デバイス用途における使用。
【請求項18】
請求項9に記載の硬化物の、電荷結合素子、発光ダイオード、光導体、光学カメラ、フォトカプラー、及び導波管から選択される光学デバイスにおける使用。
【請求項19】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物のオーバーモールドについての使用。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の、射出成形、トランスファー成形、キャスティング、押出、オーバーモールド、圧縮成形、及びキャビティ成形から選択される方法における使用。

【図2】
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【公表番号】特表2012−528231(P2012−528231A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513066(P2012−513066)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025302
【国際公開番号】WO2010/138221
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】