説明

透明多層合成樹脂シート及び透明導電膜シート

【課題】耐衝撃性、剛性、及び耐熱性に優れ、タッチパネルの加工工程での問題を解消することができる透明多層合成樹脂シート基材及び当該シートを基材として使用した透明導電膜シートを提供する。
【解決手段】曲げ弾性率が2.5 GPa以上である透明硬質樹脂層の両面にポリカーボネート樹脂層を有する、透明導電膜の基材用の透明多層合成樹脂シート、及び当該透明多層合成樹脂シートの表面に透明導電膜が形成された透明導電膜シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明多層合成樹脂シート及び当該シートを基材として使用した透明導電膜シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめとして、各種のディスプレイ装置の操作用にタッチパネルが採用されることが多くなってきた。これらの画面操作用タッチパネルとしては、抵抗膜方式のタッチパネルや静電容量方式のタッチパネルが使用されることが多い。抵抗膜方式のタッチパネルの上部透明導電膜基材としては非常に薄い板ガラスが使用されることもあったが、割れの問題を回避するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの透明プラスチックフィルムが多く使用されるようになってきた。そのような構成のタッチパネルは、例えば特許文献1に開示されている。しかし、抵抗膜方式のタッチパネルの下部透明導電膜基材や静電容量方式のタッチパネルの透明導電膜基材としては、剛性が高いことから、依然として板ガラスが多く使用されている。板ガラスは剛性、耐熱性、耐薬品性などのすぐれている反面、耐衝撃性が低いため割れやすく、重い、加工がし難いという欠点を有していた。
【0003】
そのため、板ガラスをプラスチックに代替する研究が行われ、ポリカーボネートシートが使用されるようになってきた。
【0004】
ポリカーボネートシートを透明導電膜基材として使用した場合には、その荷重たわみ温度が約130℃と高いため、タッチパネルを組み立てる過程で加熱操作が行われても、その耐熱性のゆえに外観、寸法、表面特性などの問題を起こさないため、安定したパネルが加工できる。しかし、ポリカーボネートは剛性が低いため、耐衝撃性に優れているにもかかわらず、透明導電膜基材として使用するためには、厚さを厚くすることにより、撓みを抑える工夫をしながら使用されてきた。
【0005】
他方、メチルメタクリレートを主成分とするメタクリル系樹脂シートやスチレンを主成分とするスチレン系樹脂シートなどの透明硬質樹脂シートは、材料の弾性率が高いため、実用的に求められる剛性の点では有利である反面、通常その熱変形温度が約90から100℃前後であるため、タッチパネルを組み立てる過程で加熱操作が行われると、その耐熱性の不足ゆえに外観、寸法、表面特性の変化、表面に加工されたハードコート層へのクラックの発生などの問題を起こし、安定してパネルが加工できなかった。タッチパネルを組み立てる過程で加熱操作が行われるのに備えて、あらかじめアニーリング処理が施されるが、通常は120℃から130℃の温度で、30分から60分加熱してアニーリングが行われることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−158911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐衝撃性、剛性、及び耐熱性に優れ、タッチパネルの加工工程での問題を解消することができる透明多層合成樹脂シート、並びに当該シートを基材として使用した透明導電膜シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、透明硬質樹脂層上にポリカーボネート層を形成して、さらに必要に応じてポリカーボネート層の表面にハードコート層を形成することによりポリカーボネート樹脂の持つ耐熱特性と耐衝撃性、透明硬質樹脂の持つ剛性を両立できる透明導電膜用基材を製造できることを見出した。発明者は、さらに検討を加えることにより本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の透明多層合成樹脂シート及び当該シートを基材として使用した透明導電膜シートを提供する。
【0010】
項1.曲げ弾性率が2.5GPa以上である透明硬質樹脂層の両面にポリカーボネート樹脂層を有する、透明導電膜基材用の透明多層合成樹脂シート。
【0011】
項2.前記ポリカーボネート樹脂層の厚さの合計が前記シート全体の厚さに対して5%〜40%であることを特徴とする、項1に記載の透明多層合成樹脂シート。
【0012】
項3.前記シート全体の厚さが0.3〜2.0 mmであることを特徴とする、項1又は2に記載の透明多層合成樹脂シート。
【0013】
項4.少なくとも片面にハードコート層を有することを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シート。
【0014】
項5.前記透明硬質樹脂がメタクリル樹脂であることを特徴とする、項1〜4のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シート。
【0015】
項6.前記透明硬質樹脂がメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂であることを特徴とする、項1〜4のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シート。
【0016】
項7.項1〜6のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シートの表面に透明導電膜が形成された透明導電膜シート。
【0017】
項8.前記透明導電膜がITOであることを特徴とする、項7に記載の透明導電膜シート。
【0018】
項9.項7又は8に記載の透明導電膜シートを備えたタッチパネル。
【発明の効果】
【0019】
本発明の透明多層合成樹脂シート及び当該シートを基材として使用した透明導電膜シートは、耐衝撃性、剛性、及び耐熱性に優れ、タッチパネルの加工工程での問題を解消することができるという優れた特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】抵抗膜式タッチパネルの一例の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
透明多層合成樹脂シート
本発明の透明導電膜基材用の透明多層合成樹脂シートは、曲げ弾性率が2.5 GPa以上である透明硬質樹脂層の両面にポリカーボネート樹脂層を有することを特徴とし、表面部分の耐熱性などではポリカーボネートの性質を維持しつつ、剛性度が透明硬質樹脂に近い高い剛性度を有することが特徴である。
【0023】
本発明の透明多層合成樹脂シートの各層について以下説明する。
【0024】
・透明硬質樹脂層(コア層)
本発明の透明硬質樹脂層は、ポリカーボネート樹脂層を支持して透明多層合成樹脂シートに剛性を与えることを目的とする。
【0025】
本発明における透明硬質樹脂としては、ISO 178に準拠して測定した曲げ弾性率が2.5 GPa以上、好ましくは3.0〜4.0 GPaであるものであれば特に限定されないが、透明性が高く、ヘーズ値が低い材料でしかも弾性率が高い材料が好ましい。そのような材料としては、メタクリル樹脂が好適な例として挙げられる。本発明におけるメタクリル樹脂としては、メチルメタクリレートを重合して得られるメタクリル樹脂、及びメチルメタクリレートと共重合可能なモノマーとの共重合で得られるメタクリル樹脂が好適である。
【0026】
当該メタクリル樹脂の製法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などどのような方法で作られたものも使用可能であるが、製品の透明性からは塊状重合又は溶液重合で作られたものが好ましい。メチルメタクリレートと共重合可能なモノマーの共重合比率は、全モノマーの重量に対して、重量比で0.1%〜20.0%の範囲で選択することができる。また、メチルメタクリレートと共重合可能なモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、及びエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルから選択することができる。
【0027】
本発明における透明硬質樹脂はその使用環境によっては材料の吸湿性が低いものが好ましいことがある。そのような使用環境に好適な材料としては、ポリスチレンを代表とするスチレン系樹脂、スチレンとメタクリル酸メチルが共重合されたメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂などを挙げることができる。
【0028】
本発明では、透明硬質樹脂層の両面の表層にポリカーボネート樹脂層を積層するので、多層構造を形成するため積層部分での相溶性が低すぎると、界面で剥離するため多層構造を形成することができない。メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂はメチルメタクリレートとの共重合の結果、ポリカーボネート樹脂との相溶性が向上し、本発明の透明硬質樹脂として好適に使用することができる。
【0029】
本発明におけるメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などどのような方法で作られたものも使用可能であるが、製品の透明性からは塊状重合又は溶液重合で作られたものが好ましい。本発明のメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂におけるメチルメタクリレートモノマーとスチレンモノマーとの共重合比率は重量比で95.0%対5.0%から50.0%対50.0%の範囲で選択することができる。使用環境における吸湿の影響により対応する必要のあるときには、50.0%対50.0%に近い組成のメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂を選択することが望ましいことになる。
【0030】
本発明における透明硬質樹脂には重合反応に必要な重合開始剤、連鎖移動剤のほかに、一般に用いられる各種の添加剤を添加しても良く、たとえば、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤など各種の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0031】
本発明における透明硬質樹脂層の厚さとしては、使用方法などにより適切に決定されるが、透明多層合成樹脂シートの全体厚さ(ハードコート層を含まない透明硬質樹脂とポリカーボネート樹脂層のみの厚さ)の好ましくは60〜95%、より好ましくは70〜90%である。
【0032】
・ポリカーボネート樹脂層(表面層)
本発明のポリカーボネート樹脂層は、透明多層合成樹脂シートに耐熱特性、耐衝撃性等を与えることを目的とする。
【0033】
本発明におけるポリカーボネート樹脂としては、これに限定されないが、例えばビスフェノールAを主原料とする炭酸エステル重合物が使用される。このポリカーボネート樹脂の製造方法については特に限定せず、ホスゲン法、エステル交換法あるいは固相重合法のいずれにより製造されたものでも使用できる。このポリカーボネート樹脂の分子量は特に限定されないが、通常の押出成形によりシート、ボード、及びプレートを製造できることが必要で、粘度平均分子量が1.5万〜3万程度のものが好ましい。このポリカーボネート樹脂には、一般に用いられる各種の添加剤を添加しても良く、添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、難燃剤、着色剤などが挙げられる。
【0034】
ポリカーボネート樹脂層の2層の合計の厚さは、好ましくは透明多層合成樹脂シートの全体厚さ(ハードコート層を含まない透明硬質樹脂とポリカーボネート樹脂層のみの厚さ)の5〜40%であり、より好ましくは10〜30%である。厚さがこの範囲であると全体の剛性及び表面層の耐熱性の両方が良好となる。
【0035】
本発明において、透明硬質樹脂層の両方の表層にポリカーボネート樹脂層を積層し、透明多層合成樹脂シートを形成する方法としては、透明硬質樹脂及びポリカーボネート樹脂のシート又はフィルムを重ね合わせて、熱プレスにより積層する方法、硬質透明樹脂をシート押出成形機によりシート又はフィルムに加工するときに、表面にポリカーボネートフィルムを貼合する方法なども適用が可能であるが、最も好ましいのは、透明硬質樹脂及びポリカーボネート樹脂を同時にシート押出成形機により共押出する方法である。2種類の材料を共押出により積層する方法としては、フィードブロック方式とマルチマニホールド方式とが一般に知られているが、各層の厚さをより均一にするにはマルチマニホールド方式が優れている。本発明の透明多層合成樹脂シートにおいては、各層の厚さを均一にすることが望ましいので、マルチマニホールド方式の共押出が好適である。
【0036】
透明多層合成樹脂シートの厚さ(ハードコート層を含まない透明硬質樹脂とポリカーボネート樹脂層のみの厚さ)は、好ましくは0.3〜2.0 mm、より好ましくは0.5〜1.2 mmである。
【0037】
・ハードコート層
本発明の透明多層合成樹脂シートの表面には、表面の硬さを高め、透明導電性被膜の耐久性を向上させたり、加工工程での傷つきを防止することが望ましく、そのために透明多層合成樹脂シートの少なくとも片面に、ハードコート処理を施すことが望ましい。即ち、ポリカーボネート樹脂層の透明硬質樹脂層に接していない表面にハードコート層を施すことになる。
【0038】
本発明の透明多層合成樹脂シートの表面にハードコートを施す方法は、表面の傷つき性や透明導電性被膜の耐久性を向上させることができる方法であれば、何れの方法であっても良い。
【0039】
透明多層合成樹脂シートの表面にハードコートを形成するための方法としては、金属酸化物の真空蒸着、スパッタリングなどにより、無機系の被膜を形成する方法、メラミン樹脂系、ウレタン樹脂系、アルキッド樹脂系、フッ素系、多官能アクリレート系、オルガノシリコーン系などの液をコーティングし、硬化させる方法、いわゆる有機系ハードコート液を使用する方法、シリカと多官能アクリレートのハイブリッドよりなる、いわゆる有機・無機ハイブリッドタイプハードコートの液を塗装し、硬化させる方法などいずれも使用できる。
【0040】
本発明におけるハードコート層の厚さは薄すぎると十分な硬さが出にくくなり、厚すぎると基材樹脂シートと被膜との特性の差により、クラック等が発生しやすくなるため、適当に選ぶ必要がある。有機系ハードコートや有機・無機ハイブリッドタイプハードコートの場合、1〜10μm、好ましくは2〜8μmの厚さが望ましい。この範囲の厚さであれば、十分な硬さが得られる上に、クラック等も発生し難くなる。ここで、ハードコート層の厚さは、ハードコート層が2層ある場合は、1層の厚さを意味する。
【0041】
透明導電膜シート
本発明の透明導電膜シートは、上記透明多層合成樹脂シートの表面に透明導電膜が形成されていることを特徴とする。上記透明多層合成樹脂シートの表面に透明導電膜を形成させる方法としては、上記透明多層合成樹脂シートの表面に直接透明導電膜を形成させる方法でも良く、又は予め透明導電膜が形成されたシート若しくはフィルムを上記透明多層合成樹脂シートの表面に積層することにより透明導電膜を形成させる方法でも良い。
【0042】
予め透明導電膜が形成されたシート又はフィルムに基材としては、透明なフィルムで透明導電膜を形成することができる基材であれば良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアミド、これらの混合物又は積層物などを挙げることができる。また、透明導電膜を形成させる前に、これらの基材表面硬さの改良、ニュートンリングの防止、帯電防止性の付与などを目的として、上記シート又はフィルムにコーティングを施すことも可能である。
【0043】
予め透明導電膜が形成されたシート又はフィルムを上記透明多層合成樹脂シートの表面に積層する方法としては、常温又は加熱、紫外線若しくは可視光線により硬化する接着剤により積層する方法を用いても良いし、透明な粘着テープにより張り合わせても良い。
【0044】
本発明における透明導電膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、必要とする膜厚に応じて、前記の方法を適宜用いることができる。
【0045】
例えば、スパッタリング法の場合、酸化物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法、あるいは、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が用いられる。この時、反応性ガスとして、酸素、窒素等を導入したり、オゾン添加、プラズマ照射、イオンアシスト等の手段を併用したりしてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、基板に直流、交流、高周波などのバイアスを印加してもよい。透明導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)が好適である。
【0046】
また本発明における透明導電膜を形成する方法として、透明導電性被膜を形成することができる各種の導電性高分子を含むコーティング剤を塗布し、熱あるいは紫外線などの電離放射線を照射することにより硬化させることにより形成させる方法なども適用できる。導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等が知られており、これらの導電性高分子を用いることができる。
【0047】
透明導電膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常50Å〜2000Å、好ましくは70Å〜1000Åである。この範囲であれば導電性及び透明性の両方に優れる。
【0048】
タッチパネル
本発明の透明導電膜シートは、タッチパネルなどの透明電極として好適に用いることができる。具体的には、本発明の透明導電膜シートを抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルの下部電極として用いることができ、このタッチパネルを液晶ディスプレイの前面に配置することでタッチパネル機能を有する表示装置が得られる。
【0049】
図1は、本発明の透明導電膜シートを用いた一般的な抵抗膜式タッチパネルの断面を示す模式図である。図中、1はITOフィルムを、2はスペーサーを、3は透明導電膜シートをそれぞれ示す。駆動時にはユーザーがITOフィルム上の任意の位置を指やペンで押圧すると、当該押圧位置でITOフィルムと透明導電膜シートが接触して通電し、各抵抗膜の基準位置から接触位置までの抵抗値の大きさから押圧位置が検出される。これにより,パネル上の前記接触部分の座標を認識し、適切なインターフェース機能が図られるようになっている。
【実施例】
【0050】
以下、実施例をあげて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例により制約をうけるものではない。
【0051】
[試験方法]
実施例及び比較例における各試験は、具体的には次のようにして行った。
【0052】
・曲げ弾性率
曲げ試験装置(東洋精機社製 ストログラフ VE100)を用い、ISO 178に準拠して曲げ弾性率を測定した。
【0053】
・衝撃強さ(50%破壊エネルギー)
デュポン衝撃試験機(東洋精機社製 シートインパクトテスタ H-100)を用いて、ASTM-D2794に準拠し、試験片の50%に割れが発生する高さを求め、50%破壊エネルギーを求めるとともに、破壊状態を観察し、破断片が散乱するような破壊であるか、クラックが発生するが、破断片の散乱がないのかを評価した。
【0054】
・表面抵抗率
低抵抗率計(三菱化学製 ロレスターGP MCP-600)を用い、ASPプローブを使用して4端子法にて測定した。
【0055】
実施例1
押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数30 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層約710μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層70μmの表面層を積層した3層の0.85 mmのシートを得た。
【0056】
この透明多層合成樹脂シート上に、多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 9 g、新中村化学工業(株) A-LEN-10 1 g)を用いてフローコート法により両面にハードコート層約4μmを形成した。
【0057】
本実施例で透明硬質樹脂として使用したメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)の曲げ弾性率は3.3 GPaであった。また、本実施例で透明硬質樹脂の両面に積層した樹脂材料はポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)で、その曲げ弾性率は2.3 GPaであった。
【0058】
実施例2
押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂(製造元:電気化学工業株式会社、品種:デンカTXポリマーTX−100S)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数30 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層約710μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層70μmの表面層を積層した3層の0.85 mmのシートを得た。
【0059】
この透明多層合成樹脂シート上に、多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 9 g、新中村化学工業(株) A-LEN-10 1 g)を用いてフローコート法により両面にハードコート層約4μmを形成した。
【0060】
本実施例で透明硬質樹脂として使用したメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂(製造元:電気化学工業株式会社、品種:デンカTXポリマーTX−100S)の曲げ弾性率は3.4 GPaであった。また、本実施例で透明硬質樹脂の両面に積層した樹脂材料はポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)で、その曲げ弾性率は2.3 GPaであった。
【0061】
比較例1
押出機(田辺プラスチックス製の単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、シリンダー温度280℃、スクリュウ回転数60 rpmとして単層シートを作製した。以上より厚さ0.85 mmの単層よりなるポリカーボネート樹脂シートを得た。
【0062】
この透明多層合成樹脂シート上に、多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 9 g、新中村化学工業(株) A-LEN-10 1 g)を用いてフローコート法により両面にハードコート層約4μmを形成した。
【0063】
本比較例で透明樹脂として使用したポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)の曲げ弾性率は2.3 GPaであった。
【0064】
比較例2
押出機(田辺プラスチックス製の単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を投入し、シリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60rpmとして単層シートを作製した。以上より厚さ0.85mmの単層よりなるメタクリル樹脂シートを得た。
【0065】
この透明多層合成樹脂シート上に、多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 9 g、新中村化学工業(株) A-LEN-10 1 g)を用いてフローコート法により両面にハードコート層約4μmを形成した。
【0066】
比較例3
押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットIRG304)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数30 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層約710μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層70μmの表面層を積層した3層の0.85 mmのシートを得た。
【0067】
この透明多層合成樹脂シート上に、多官能アクリル樹脂からなる紫外線硬化型ハードコート塗料(日本合成化学工業(株) UV-1700B 9 g、新中村化学工業(株) A-LEN-10 1 g)を用いてフローコート法により両面にハードコート層約4μmを形成した。
【0068】
本実施例で透明硬質樹脂として使用したメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットIRG304)の曲げ弾性率は2.3 GPaであった。また、本実施例で透明硬質樹脂の両面に積層した樹脂材料はポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)で、その曲げ弾性率は2.3 GPaであった。
【0069】
実施例3
実施例1で得られた、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートをアニーリングのために、130℃で30分加熱したのち徐冷した。アニーリングし、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートに、DCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、400Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜し、透明導電膜シートを得た。
【0070】
実施例4
実施例2で得られた、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートをアニーリングのために、130℃で30分加熱したのち徐冷した。アニーリングし、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートに、DCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、400Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜し、透明導電膜シートを得た。
【0071】
比較例4
比較例1で得られた、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートをアニーリングのために、130℃で30分加熱したのち徐冷した。アニーリングし、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートに、DCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、400Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜し、透明導電膜シートを得た。
【0072】
比較例5
比較例2で得られた、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートをアニーリングのために、130℃で30分加熱したのち徐冷した。アニーリングし、ハードコートされた透明多層合成樹脂シートに、DCマグネトロン・スパッタ法によって真空圧力4.0×10-5 Torrの真空圧のもとで、400Åの物理的膜厚を有するITO薄膜を成膜し、透明導電膜シートを得た。
【0073】
実施例5
押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数15 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層800μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層20μmの表面層を積層した3層のシートを得た。
【0074】
実施例6
実施例5と同様に、押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数25 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層800μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層40μmの表面層を積層した3層のシートを得た。
【0075】
実施例7
実施例5と同様に、押出機(田辺プラスチックス製の主単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32、プラ技研製の副単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ25 mm L/D=24)とマルチマニホールドダイを用い、主押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を、そして副押出機にポリカーボネート樹脂(製造元:住友ダウ株式会社、品種:カリバー301−10)を投入し、主押出機をシリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpm、副押出機をシリンダー温度280℃、スクリュウ回転数35 rpmとして多層シートを作製した。以上よりメタクリル層約800μmのコア層の両面にポリカーボネート樹脂層60μmの表面層を積層した3層のシートを得た。
【0076】
比較例6
押出機(田辺プラスチックス製の単軸押出機、押出機スクリュウ径 φ40 mm L/D=32)と単層シートダイを用い、押出機にメタクリル樹脂(製造元:三菱レイヨン株式会社、品種:アクリペットVH001)を投入し、シリンダー温度240℃、スクリュウ回転数60 rpmとして単層シートを作製した。以上より厚さ800μmの単層よりなるメタクリル樹脂シートを得た。
【0077】
実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた透明多層合成樹脂シート及び透明導電膜シートについて、上記の試験を行い、得られた結果を表1、2及び3に示した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
表1の実施例1および2に示した通り、本発明による透明多層合成樹脂シートは比較例1のポリカーボネートシートに比べて、20%以上も曲げ弾性率が向上し、タッチパネルのサポート性能に優れることが分かる。また、表2の比較例5(比較例2)に示したメタクリル樹脂シートでは、アニーリング過程で表面に施したハードコートにクラックが発生するため、使用に堪えないことが分かる。さらに、比較例3の結果から、コア層の樹脂として曲げ弾性率の高くない透明樹脂を使用しても、透明多層合成樹脂シートの曲げ弾性率が向上せず、タッチパネルのサポート性能に劣ることが分かる。
【0082】
また、表2に示された通り、アニール工程でクラックが発生したシートに透明導電膜をつけても、十分な導電性能が発現しない。
【0083】
表3に示されるように、本発明の透明多層合成樹脂シートは50%破壊エネルギーがメタクリル樹脂シートのみのものに比べて優れていることが分かる。
【0084】
上記の結果から本発明の透明多層合成樹脂シートは剛性、耐熱性及び耐衝撃性に優れることが分かる。
【0085】
実施例3及び4の透明導電膜シートを使用することにより、図1に示す構成のタッチパネルを作れる。
【符号の説明】
【0086】
1 ITOフィルム
2 スペーサー
3 透明導電膜シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ弾性率が2.5 GPa以上である透明硬質樹脂層の両面にポリカーボネート樹脂層を有する、透明導電膜基材用の透明多層合成樹脂シート。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂層の厚さの合計が前記シート全体の厚さに対して5〜40%であることを特徴とする、請求項1に記載の透明多層合成樹脂シート。
【請求項3】
少なくとも片面にハードコート層を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明多層合成樹脂シート。
【請求項4】
前記透明硬質樹脂がメタクリル樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シート。
【請求項5】
前記透明硬質樹脂がメチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の透明多層合成樹脂シートの表面に透明導電膜が形成された透明導電膜シート。
【請求項7】
請求項6に記載の透明導電膜シートを備えたタッチパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−201093(P2011−201093A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69089(P2010−69089)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(597051757)名阪真空工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】