説明

透明導電性フィルム及びタッチパネル

【課題】タッチパネル端部領域での筆記耐久性を向上させることができる導電性フィルム及びタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明導電性フィルムは、透明基材フィルムの一方の面に導電層が積層されて構成されている。そして、透明基材フィルムと導電層との間に膜厚8〜20μmのアンカー層が形成されている。また、透明導電性フィルムの導電層とは反対の面にハードコート層、防眩層、耐指紋性層等の機能層を形成し、それぞれハードコート機能、防眩機能、耐指紋性機能等の機能を発揮させることができる。タッチパネルは、その表面に上記透明導電性フィルムが配置されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記耐久性に優れた導電性フィルム及びこのフィルムを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチックフィルム上に透明かつ導電性の化合物の薄膜を形成した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば液晶ディスプレイ、ELディスプレイといったフラットディスプレイやタッチパネルの透明電極など電気電子分野で広く使用されている。かかる透明導電性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の透明基材フィルムの少なくとも片面に、酸化錫(SnO)、酸化インジウム(In)と酸化錫の混合焼結体(ITO)や酸化亜鉛等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライプロセスによって設けたものがよく知られている。
【0003】
近年、入力ペンでディスプレイ上に文字を書くという紙感覚で入力操作を行うことができる利点を生かして、携帯情報末端、電子手帳及びマルチメディア機器等、利用範囲が幅広く急速に普及している。この普及により透明導電性フィルムには、ペンによる文字入力の機能を有することが要求されるようになってきた。これに従って透明導電性フィルムの耐久性として、ペン入力による導電性劣化が起こらないことが求められるようになってきている。
【0004】
ところが、タッチパネル用に透明導電性フィルムを用いた場合、スペーサーを介して対向させた一対の導電性薄膜の筆記耐久性が劣るという問題があった。従来、基材フィルム由来のオリゴマーによる導電性能の低下抑制(特許文献1を参照)や光学干渉を用いた光線透過率の向上(特許文献2を参照)を目的としてアンカーコートを用いる方法が提案されている。しかしながら、得られるアンカー層が薄膜であるため、例えばタッチパネルの特に端部領域における筆記耐久性が不十分なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−229950号公報(第2頁、第3頁及び第14頁)
【特許文献2】特開2006−302562号公報(第2頁、第3頁及び第12頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、タッチパネル端部領域での筆記耐久性を向上させることができる導電性フィルム及びタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、第1の発明の透明導電性フィルムは、透明基材フィルムの一方の面に導電層が積層されている透明導電性フィルムであって、透明基材フィルムと導電層との間に膜厚8〜20μmのアンカー層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明の透明導電性フィルムは、第1の発明の透明導電性フィルムの導電層とは反対の面に機能層を形成してなるものである。
第3の発明のタッチパネルは、表面に第1又は第2の発明の透明導電性フィルムが配置されて構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の透明導電性フィルムによれば、透明基材フィルムと導電層との間に所定膜厚のアンカー層が形成されていることから、タッチパネル端部領域での筆記耐久性を向上させることができる。
【0010】
第2の発明の透明導電性フィルムによれば、透明基材フィルムの導電層とは反対の面に機能層が形成されていることから、第1の発明の効果に加えて、ハードコート機能、防眩機能、耐指紋機能等の機能を発揮することができる。
【0011】
第3の発明のタッチパネルによれば、特にその端部領域での筆記耐久性を向上させることができ、ペン入力による導電性の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
<透明導電性フィルム>
本実施形態の透明導電性フィルムは、透明基材フィルムの一方の面に導電層が積層され、透明基材フィルムと導電層との間に膜厚8〜20μmのアンカー層が形成されて構成されている。このアンカー層を形成することにより、ペン入力に基づく筆記耐久性を高め、導電性の劣化を抑えることができる。さらに、透明基材フィルムの導電層とは反対の面にハードコート機能、防眩機能、耐指紋機能、反射防止機能等の機能を発現する機能層を形成することができる。
【0013】
次に、透明導電性フィルムの各構成要素について順に説明する。
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムは、透明樹脂フィルム等が用いられ、特に制限されない。透明基材フィルムを形成する樹脂材料として具体的には、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース(TAC)系樹脂及びポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が好ましい。
【0014】
透明基材フィルムの厚さは通常10〜5000μm、好ましくは25〜1000μm、さらに好ましくは35〜500μmである。
<アンカー層>
続いて、アンカー層について説明する。
【0015】
このアンカー層を形成する材料は特に限定されず、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート及びテトラエトキシシランなどの反応性珪素化合物などの硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度を両立させる観点より、鉛筆硬度(評価法:JIS−K5600−5−4)がH以上となる紫外線硬化性多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが好ましい。そのような紫外線硬化性多官能(メタ)アクリレートを含む組成物としては特に限定されるものではない。例えば、公知の紫外線硬化性多官能(メタ)アクリレートを2種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの、或いはこれら以外に本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
【0016】
アンカー層の膜厚は、8.0μm未満では筆記圧に絶えられずに導電層が傷付き、電気抵抗の増大や断線が発生するなどして筆記耐久性が不十分となる。その一方20μmを超えると皮膜の屈曲性が低下して透明導電性フィルムを曲げた際に割れやすくなる。従って、アンカー層の膜厚は8.0〜20μmの範囲に設定される。
<導電層>
前記導電層を形成する材料としては透明性及び導電性を併せ持つ導電性材料であれば特に制限されないが、具体的には無機系金属と有機導電高分子が挙げられる。無機系金属としては、例えば金、銀、銅、白金、ニッケル、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)が挙げられる。有機導電高分子としては、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等を用いた有機導電性組成物が挙げられる。これらのなかでも、光学特性、外観、導電性が良好なITO及びポリチオフェン系材料が好ましい。
<機能層>
機能層は、例えばハードコート層、防眩ハードコート層、耐指紋性層、減反射層、防眩層、減反射防眩層、ペン入力時の表面での筆記感を向上することができる自己修復性を有する軟質樹脂層などである。機能層としては、公知のいずれの機能層も適用することができる。
<各層の形成方法>
前記アンカー層、導電層及び機能層は、各層を形成する塗液を塗布して硬化させることにより形成される。
【0017】
この場合の塗布方法は特に限定されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0018】
硬化方法としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の活性エネルギー線源等が使用される。この場合、活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cmであることが好ましい。照射量が50mJ/cm未満のときには、塗液の硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cmを超えるときには、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
<タッチパネル>
タッチパネルは、その表面に前述した透明導電性フィルムが配置されて構成されている。具体的には、2枚の透明導電性フィルムがそれらの導電層が対向するように配置されて構成される。そして、特にタッチパネル端部領域での筆記耐久性を向上させることができ、指やペン入力による導電性の劣化を抑制することができる。
【実施例】
【0019】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例における部は質量部を表す。また、各例における(1)ヘイズ値、(2)全光線透過率、(3)表面抵抗率及び(4)筆記耐久性については、下記に示す方法により測定した。
(1)ヘイズ値
日本電飾工業(株)製のNDH−2000を使用し、光学特性としてのヘイズ値(%)を測定した。
(2)全光線透過率
日本電飾工業(株)製のNDH−2000を使用し、光学特性としての全光線透過率(%)を測定した。
(3)表面抵抗率
三菱(株)製のロレスターGP(4探針プローブ)を使用して、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
(4)筆記耐久性
作製した透明導電性フィルムを2枚用いて導電層が対向するように、厚さ30μmの両面粘着テープを介して貼り合わせたものをガラス上に配置した。次いで、透明導電性フィルムの導電層形成面とは反対面の両面粘着テープから2mm間隔を離した箇所をポリアセタール樹脂製のタッチパネル入力ペン(先端部:φ0.8mm)を用い、荷重:25N(250gf)、速度100mm/sec、10万往復の条件で筆記耐久性を測定した。そして、下記に示す3段階で評価を行った。
【0020】
◎:目視及び光学顕微鏡観察(倍率:280倍)で有機導電層の剥離、クラック、キズが全くなし。
○:目視では剥離、クラック、キズが観察されず、光学顕微鏡観察(倍率:280倍)で剥離、クラック、キズが見られる。
【0021】
△:目視で剥離、クラック、キズが見られ、その面積がペンを摺動させた箇所(面積)の1/5以下である。
×:目視で剥離、クラック、キズが見られ、その面積がペンを摺動させた箇所(面積)の1/5以上である。
〔製造例1、導電層用塗液(EC−1)の調製〕
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスルホン酸を主成分とし、シランカップリング剤を含んでなる水分散溶媒導電性塗料〔日本アグファ・ゲバルト(株)製、商品名:Orgacon S−300〕100部に、エチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕5部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、EX−810)0.3部と、前記アルコキシ基含有化合物として3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製〕0.3部とを、それぞれ添加して各成分が均一になるまで1時間攪拌混合し、調製した。
〔製造例2、アンカー層用塗液(AN−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールへキサアクリレート70部、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシー2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン30部、光重合開始剤〔チバガイギー(株)製のIRUGACURE184〕4部及びイソプロパノール100部を混合してアンカー層用塗液(AN−1)を調製した。この塗液は、ハードコート層(HC)用塗液としても利用可能である。
〔製造例3、高屈折率層用塗液(H)の調製〕
平均粒子径0.07μmのITO微粒子85部、テトラメチロールメタントリアクリレート15部、光重合開始剤〔日本化薬(株)製のKAYACURE BMS〕5部及びブチルアルコール900部を混合し、高屈折率層用塗液(H)を調製した。
〔製造例4、低屈折率用塗液(L−1)の調製〕
1,10−ジアクリロイルオキシー2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン70部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部、シリカゲル微粒子分散液〔日産化学(株)製のXBA−ST〕60部及び光重合開始剤〔日本化薬(株)製のKAYACURE BMS〕5部を混合して低屈折率用塗液(L−1)を調製した。
〔製造例5−1、防眩層用塗液(AG−1)の調製〕
ウレタンアクリレート〔大日本インキ化学工業(株)製、GRANDIC PC6−6150F、光重合開始剤入り〕50部及びメチルイソブチルケトン(MIBK)83.4部を混合してバインダーを調製し、それに透光性微粒子として架橋アクリル樹脂の微粒子〔綜研化学(株)製、MX−500、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径5μm〕17部を混合して防眩層用塗液(AG−1)を調製した。
〔製造例5−2、防眩層用塗液(AG−2)〕
6官能ウレタンアクリレート〔日本合成化学工業(株)製、紫光UV−7600B〕80部、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:分子量40×10)10部、架橋ポリスチレンビーズ〔綜研化学(株)製、SX−130H、平均粒子径1.3μm〕10部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2部及びメチルイソブチルケトン150部を混合して防眩層用塗液(AG−2)を調製した。
〔製造例6、軟質樹脂層用塗液(F−1)の調製〕
ヘキサメチレンジイソシアネート〔三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネート700〕2.1部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート〔ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA10L、カプロラクトン単位の繰り返し数=10)97.9部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート〔東亞合成(株)製、商品名:M−5400〕6.8部と、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン3質量部と、表面調整剤(ビックケミー社製、商品名「BYK−381」)0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合して軟質樹脂層用塗液(F−1)を調製した。
〔実施例1−1〕
透明基材として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡(株)製のA4300〕を用いた。そのPETフィルムの一方の面に、アンカー層用塗液AN−2:多官能ウレタンアクリレート〔大日本インキ化学工業(株)製、GRANDIC PC6−6150F、光重合開始剤入り〕を乾燥膜厚8μmになるようバーコーターにより成膜した後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させ、アンカー層を形成した。該アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。さらにそのアンカー層上に導電層用塗液EC−1を、乾燥膜厚150nm程度になるようにバーコーターにより積層した後、室温で1分間、150℃で1分間乾燥することにより、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、ヘイズ値、全光線透過率、表面抵抗率及び筆記耐久性を前述の方法で測定し、それらの結果を表1に示した。
〔実施例1−2〕
実施例1−1において、アンカー層の乾燥膜厚を15μmに変更した以外は実施例1−1と同様にして透明導電性フィルムを作製し、それらの特性を評価して表1に示した。
〔実施例1−3〕
実施例1−1において、アンカー層塗液AN−2:ウレタンアクリレート〔大日本インキ化学工業(株)製、GRANDIC PC6−6150F、光重合開始剤入り〕をAN−1に変更した以外は実施例1−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。得られた透明導電性フィルムについて、実施例1−1と同様に特性を評価して表1に示した。
〔実施例1−4〕
実施例1−3において、アンカー層の乾燥膜厚を20μmに変更した以外は実施例1−3と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、4Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例1−3と同様に特性を評価して表1に示した。
〔比較例1−1〕
実施例1−1において、アンカー層の乾燥膜厚を7μmに変更した以外は実施例1−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例1−1と同様に特性を評価して表1に示した。
〔比較例1−2〕
実施例1−3において、アンカー層の乾燥膜厚を7μmに変更した以外は実施例1−3と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例1−3と同様に特性を評価して表1に示した。
【0022】
【表1】

表1に示した結果より、実施例1−1〜1−4においては、PETフィルム上に膜厚8〜20μmのアンカー層(AN−1又はAN−2)を介して導電層が形成されていることから、良好なヘイズ値、全光線透過率及び表面抵抗率を維持しながら、タッチパネル端部領域での筆記耐久性を向上させることができた。その一方、比較例1−1及び1−2では、アンカー層の膜厚が7μmという薄い膜厚であったため、タッチパネル端部領域での筆記耐久性が悪化した。
〔実施例2−1〕
実施例1−1と同様の方法で作製した透明導電性フィルムの導電層面とは反対の面に、アンカー層用塗液AN−2(この塗液はハードコート層用塗液としても利用可能である):ウレタンアクリレート〔大日本インキ化学工業(株)製、GRANDIC PC6−6150F、光重合開始剤入り〕を乾燥膜厚8μmになるようバーコーターにより成膜した後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層(HC)を形成し、透明導電性フィルムを作製した。ハードコート層の鉛筆硬度は、2Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例1−1と同様に特性を評価して表2に示した。
【0023】
その結果、実施例1−1の効果に加え、タッチパネル端部領域での筆記耐久性を一層向上させることができた。
〔実施例2−2〕
透明基材フィルムとして、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡(株)製のA4300〕を用いた。その透明基材フィルム上にアンカー層用塗液AN−1を、乾燥膜厚5μmになるようにバーコーターを用いて塗布後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。次いで、ハードコート層上に高屈折率用塗液H及び低屈折率用塗液L−1を光学膜厚がそれぞれ110〜125nmになるようにスピンコーターを用いて塗布、乾燥後、窒素雰囲気下に400mJ/cmの出力で紫外線を照射して硬化させ、PETフィルムの一方の面に減反射層(AR)を形成した。
【0024】
続いて、PETフィルムの他方の面に、アンカー層用塗液AN−1を乾燥膜厚10μmになるようバーコーターにより成膜した後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させ、アンカー層を形成した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。さらに、そのアンカー層上に導電層用塗液EC−1を、乾燥膜厚150nm程度になるようにバーコーターにより積層した後、室温で1分間、150℃で1分間乾燥することにより導電層を形成し、透明導電性フィルムを作製した。この透明導電性フィルムについて、前述した方法により特性を測定し、それらの結果を表2に示した。
【0025】
その結果、減反射層が形成された透明基材フィルムの裏面に導電層を形成することにより、減反射機能と導電性機能の両方の機能を発現できることを確認した。
〔実施例2−3〕
透明基材として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡(株)製のA4300〕を用いた。その透明基材フィルム上に防眩層用塗液AG−1を、乾燥膜厚が6μmとなるようにバーコーターを用いて塗布後、窒素雰囲気下に250mJ/cmの出力で紫外線を照射して硬化させ、PETフィルムの他方の面に凹凸部を有する防眩層(AG)を形成した。
【0026】
続いて、PETフィルムの一方の面に、アンカー層用塗液AN−2:ウレタンアクリレート〔大日本インキ化学工業(株)製、GRANDIC PC6−6150F、光重合開始剤入り〕を乾燥膜厚8μmになるようバーコーターにより成膜した後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させ、アンカー層を形成した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。さらにそのアンカー層上に導電層用塗液EC−1を、乾燥膜厚150nm程度になるようにバーコーターにより積層した後、室温で1分間、150℃で1分間乾燥することにより、透明導電性フィルムを作製した。この透明導電性フィルムについて、前述した方法により特性を測定し、それらの結果を表2に示した。
【0027】
その結果、防眩層が形成された透明基材フィルムの裏面に導電層を形成することにより、防眩性機能と導電性機能の両方の機能を発現できることを確認した。
〔実施例2−4〕
実施例2−3において、アンカー層の乾燥膜厚を18μmに変更し、防眩層用塗液AG−1をAG−2に変更した以外は実施例2−3と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、4Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例2−3と同様に特性を評価して表2に示した。
【0028】
その結果、防眩層が形成された透明基材フィルムの裏面に導電層を形成することにより、防眩性機能(耐指紋性機能)と導電性の両方の機能を発現できることを確認した。
〔実施例2−5〕
実施例2−3において、防眩層上に低屈折率層用塗液L−1を光学膜厚がそれぞれ110〜125nmになるようにスピンコーターを用いて塗布、乾燥後、窒素雰囲気下に400mJ/cmの出力で紫外線を照射して硬化させたこと以外は実施例2−3と同様にして減反射防眩層(AGAR)を形成し、透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例2−3と同様に特性を評価して表2に示した。
【0029】
その結果、低屈折率層が形成された透明基材フィルムの裏面に導電層を形成することにより、減反射防眩機能と導電性機能の両方の機能を発現できることを確認した。
〔実施例2−6〕
透明基材フィルムとして、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡(株)製のA4300〕を用いた。その透明基材フィルム上に軟質樹脂層用塗液F−1を、乾燥膜厚が30μmとなるようにバーコーターを用いて塗布後、窒素雰囲気下に250mJ/cmの出力で紫外線を照射して硬化させ、PETフィルムの一方の面に軟質樹脂層(PF)を形成した。
【0030】
続いて、PETフィルムの他方の面に、アンカー層用塗液AN−1を乾燥膜厚15μmになるようバーコーターにより成膜した後、400mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して硬化させ、アンカー層を形成した。アンカー層の鉛筆硬度は、3Hであった。さらにそのアンカー層上に導電層用塗液EC−1を、乾燥膜厚150nm程度になるようにバーコーターにより積層した後、室温で1分間、150℃で1分間乾燥することにより、透明導電性フィルムを作製した。この透明導電性フィルムについて、前述した方法により特性を測定し、それらの結果を表2に示した。
【0031】
その結果、軟質樹脂層が形成された透明基材フィルムの裏面に導電層を形成することにより、筆記感向上機能と導電性機能の両方の機能を発現できることを確認した。
〔実施例2−7〕
実施例2−1において、導電層用塗液EC−1に代えて、インジウム:錫(質量比)=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚を40nmの導電層に変更した以外は実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。アンカー層の鉛筆硬度は、2Hであった。この透明導電性フィルムについて、実施例2−1と同様に特性を評価して表2に示した。
【0032】
その結果、実施例2−1と同様の効果が得られると共に、十分な導電性を発揮することができた。
【0033】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一方の面に導電層が積層されている透明導電性フィルムであって、透明基材フィルムと導電層との間に膜厚8〜20μmのアンカー層が形成されていることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電性フィルムの導電層とは反対の面に機能層を形成してなる透明導電性フィルム。
【請求項3】
表面に請求項1又は請求項2に記載の透明導電性フィルムが配置されて構成されているタッチパネル。

【公開番号】特開2010−176357(P2010−176357A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17878(P2009−17878)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】