説明

透明導電性フィルム

【課題】カール性が抑制されており、見栄えに優れる透明性導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの一面から順に、ハードコート層および中間層が積層された透明導電性フィルムであって、前記中間層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とからなり、かつ波長400nmの光の屈折率が1.65〜1.90、膜厚が60〜115nmであり、前記金属酸化物微粒子は酸化チタン又は酸化ジルコニウムであり、パターン化された錫ドープ酸化インジウム層が前記中間層の外面上に積層されており、前記錫ドープ酸化インジウム層は波長400nmの光の屈折率が1.85〜2.55、膜厚が5〜50nmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過光の着色とカール性が抑制され、更にパターン部と非パターン部とを視覚により識別することが困難であり、表示素子としての見栄えに優れた透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流して透明導電体層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有する。
【0003】
前記タッチパネルに用いられる透明導電性フィルムは、透明導電体層をパターン化する場合がある。しかし、透明導電体層をパターン化すると、透明導電体層を有するパターン部と透明導電体層を有しない非パターン部との相違が明確化して、表示素子としての見栄えが悪くなる。特に、静電容量方式のタッチパネルにおいては、透明導電体層が入射表面側に用いられるため、透明導電体層をパターン化した場合にも表示素子として見栄えが良好なものが求められる。
また、透明導電体層に錫ドープ酸化インジウムを用いた場合、透明導電体層による400nm付近の波長における光の吸収が透明導電性フィルムを黄色に着色する問題があり、黄色味の低減が求められている。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1には、例えば、透明導電体層をパターン化した場合にもアンダーコート層を有することで、表示素子としての見栄えの悪化を軽減した透明導電性フィルムが記載されている。具体的には、透明基材フィルムに少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムであって、前記透明導電層はパターン化されており、かつ前記透明導電体層を有しない非パターン部には少なくとも1層のアンダーコート層を有している。更に、透明導電体層の屈折率とアンダーコート層の屈折率の差が0.1以上であり、アンダーコート層の厚さは、1〜300nmであり、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することが出来、アンダーコート層が1層の場合には、有機物により形成され、アンダーコート層が2層の場合には、透明基材フィルムから第一層目のアンダーコート層は有機物により形成され、第二層目のアンダーコート層は無機物により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−76432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の透明導電体層がパターン化された透明導電性フィルムにおいては、アンダーコート層の膜厚や屈折率の制御が不十分であることから、透明導電体層をパターン化した際の表示素子としての見栄えの改良には不十分であり、更には、透明導電性フィルムが黄色に着色する傾向を示す。更に、透明基材フィルムの片面にアンダーコート層と透明導電体層のみを形成していることから、また、透明基材フィルムの表面に設けられているアンダーコート層と裏面に粘着層を介して設けられているハードコート層とは種類及び厚みが相違することから、透明導電体層を結晶化することを目的にアニール処理を行った場合、透明導電性フィルムのカール性が強くなり、透明導電性フィルムをタッチパネルとした場合絶縁不良が生じる、または、タッチパネルを作製する際の作業性が悪いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、透過光の着色とカール性が抑制され、更にパターン部と非パターン部とが視覚により識別困難な透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段を採る。
第1の発明の透明導電性フィルムは、透明基材フィルムの一面から順に、ハードコート層および中間層が積層された透明導電性フィルムであって、前記中間層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とからなり、かつ波長400nmの光の屈折率が1.65〜1.90、膜厚が60〜115nmであり、前記金属酸化物微粒子は酸化チタン又は酸化ジルコニウムであり、パターン化された錫ドープ酸化インジウム層が前記中間層の外面上に積層されており、前記錫ドープ酸化インジウム層は、波長400nmの光の屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmであることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の透明導電性フィルムは、第1の発明において、前記透明基材フィルムの裏面に、機能を付与する機能層が積層されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の透明導電性フィルムは、第2の発明において、前記機能層が、ハードコート層、防眩層、指紋なじみ層、自己修復層、反射防止層又は防眩性反射防止層であることを特徴とする。
なお、正確な定義は後述するが、本発明の透明導電性フィルムにおいて、パターン化された錫ドープ酸化インジウム層を有する部分をパターン部、錫ドープ酸化インジウム層を有さない部分を非パターン部という。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明の透明導電性フィルムでは、パターン部と非パターン部との、視感度中心である波長500〜600nm領域の光の透過率差を小さく抑えることができる。従って、パターン部と非パターン部との間の明確化による不具合が解消され、フィルムの見栄えが良好となる。また、パターン部は、ハードコート層、中間層、および錫ドープ酸化インジウム層が、上述した波長400nmの屈折率と膜厚の範囲内で積層されていることから、波長400nm付近の透過率を高くすることが出来、透過光の着色が抑えられる。一般に、各層の屈折率調整は波長589nmの光を用いるが、本発明のように金属酸化物微粒子を含む層は、波長が短くなるにつれて屈折率の波長分散性が大きくなる。従って、波長589nmの屈折率で各層の屈折率を調整した場合、波長400nmの透過率を十分に調整することは出来ない。本発明においては、波長400nmの屈折率にて各層の屈折率を調整していることから、400nmの透過率向上に優れ、透過光の着色が抑制され、更にパターン部と非パターン部とが視覚により識別困難となり、表示素子としての見栄えに優れる。
更に、透明基材フィルムの裏面には、表面のハードコート層の膜厚に対して、機能層が適切に形成されていることからカール性が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】透明導電性フィルムのカール試験におけるカール状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の透明導電性フィルムは、透明基材フィルムの一面から順に、ハードコート層、中間層、および錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)が積層されており、ITO層はパターン化されている。一方、透明基材フィルムの他面に機能層が積層されている。
次に、透明導電性フィルムの構成要素について順に説明する。
【0014】
〔透明基材フィルム〕
透明基材フィルムは透明導電性フィルムの基材(ベース材)となるものであって、透明樹脂フィルム等が用いられる。透明樹脂フィルムを形成する樹脂材料は特に制限されず、具体的には、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。それらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース(TAC)系樹脂及びポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂が好ましい。
透明基材フィルムの厚みは通常10〜500μm、好ましくは25〜188μmである。
【0015】
〔ハードコート層〕
続いて、ハードコート層について説明する。ハードコート層は、従来公知のものでよく、特に制限されない。ハードコート層を形成する材料は特に限定されず、例えばテトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物と、活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなるハードコート用塗液を紫外線(UV)硬化させた硬化物により形成される。また、ハードコート層は、光の波長400nmにおける屈折率が、1.45〜1.60となるように調整されることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらのうち生産性及び硬度を両立させる観点より、鉛筆硬度(評価法:JIS−K5600−5−4)がH以上となる活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物の重合硬化物であることが好ましい。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂を含む組成物としては特に限定されるものではない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化型樹脂を2種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
【0016】
また、ハードコート層は、易滑性又は、硬度向上の観点より、上記活性エネルギー線硬化型樹脂に加えて微粒子を含む組成物の重合硬化物であることが好ましい。微粒子としては、無機微粒子としてコロイダルシリカ等が挙げられ、有機微粒子としては、例えばスチレン単量体、(メタ)アクリル単量体、スチレン及び(メタ)アクリルから選択される少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体などから形成される微粒子が挙げられる。
この様に微粒子を配合することで、表面に微細な凹凸が出来、易滑性が向上すると共に、無機微粒子を配合した場合には、無機微粒子の硬度がハードコート層に付与されることで、硬度が向上する。
【0017】
乾燥硬化後のハードコート層の膜厚は、好ましくは1〜10μmである。乾燥硬化後の膜厚が1μmよりも薄い場合は、アニール処理時に原反から発生するオリゴマーの析出を抑えることが不十分となると共に、光学干渉が生じ、見栄えが悪化する。また、後述するように、カール性は透明基材フィルム表面のハードコート層の膜厚と裏面の機能層の膜厚との関係により制御されるため、乾燥後の膜厚が10μmよりも厚い場合は、カール性の制御が困難になると共に、不必要に厚くなり生産性が低下するため好ましくない。
【0018】
〔中間層〕
中間層は金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とからなり、例えば、金属酸化物微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる中間層用塗液を紫外線(UV)硬化させた硬化物により形成される。中間層は、金属酸化物微粒子および活性エネルギー硬化型樹脂の屈折率から、光の波長400nmにおける屈折率が1.65〜1.90になるように調製され、乾燥硬化後の膜厚は60〜115nmである。この範囲外では、透明導電性フィルムにおける透過色の黄色味の着色が明確となると共に、透明導電体層をパターン化した際にパターン部と非パターン部との視覚による識別が容易になり、表示素子としての見栄えが悪化する。
【0019】
中間層に用いられる金属酸化物微粒子は、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムであり、金属酸化微粒子の光の波長400nmにおける屈折率は、製法によって異なるが、2.0〜3.0が好ましい。一方、金属酸化物微粒子に混合される活性エネルギー線硬化型樹脂としては、光の波長400nmにおける屈折率が1.4〜1.7であることが好ましいため、金属酸化物微粒子の光の波長400nmにおける屈折率が2.0未満の場合、活性エネルギー線硬化型樹脂の混合量が少量となり、塗膜強度が弱くなる。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0020】
〔錫ドープ酸化インジウム層〕
錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)は、膜厚が5〜50nmであり、光の波長400nmにおける屈折率が1.85〜2.35の範囲となるように従来公知の方法で形成される。膜厚が50nmより厚く、屈折率がこれらの範囲外では透明導電フィルムにおける透過色の黄色味の着色が明確となり、更に、透明導電体層をパターン化した際にパターン部と非パターン部との視覚による識別が容易になり、表示素子としての見栄えが悪化するため好ましくない。また、膜厚が5nmより薄い場合は、均一に製膜することが難しく、安定した抵抗が得られないため好ましくない。
【0021】
錫ドープ酸化インジウム層の形成方法としては、具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を必要とする膜厚に応じて適時選択することが出来る。尚、錫ドープ酸化インジウム層を形成した後、必要に応じて、100℃〜200℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することが出来る。また、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は、前記アニール処理等により調整することが出来る。具体的には、高い温度で結晶化すると錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は小さくなる傾向を示す。従って、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率の調整は、アニール処理の温度と時間を制御することで調整可能である。
【0022】
本発明では、錫ドープ酸化インジウム層は、エッチングによりパターン化されてもよい。その場合、錫ドープ酸化インジウム層を結晶化するとエッチングが困難になる場合があるため、錫ドープ酸化インジウム層のアニール処理は、錫ドープ酸化インジウム層をパターン化した後に行うことが好ましい。
【0023】
〔機能層〕
透明基材フィルムの裏面には、機能を付与する機能層が設けられる。この機能層は、従来公知のものでよく、特に制限されない。該機能層は、例えば硬度向上を目的としたハードコート層、指紋なじみ層、自己修復層、防眩層、反射防止層又は防眩性反射防止層などである。
【0024】
指紋なじみ層は、透明導電性フィルムの裏面に付着した指紋(生体由来脂質成分)に対してなじみ性(親和性)を示す層であり、例えば単官能重合体、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー及びビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する重合体の中から1種又は2種以上が選択して使用され、それらの有機溶媒溶液を塗布、乾燥し、硬化させた層である。
【0025】
自己修復層は、透明導電性フィルムの裏面へペン入力する際、筆記感を向上させ、自己修復性、すなわち一度生じた凹み痕が経時的に消失して元の形状に戻る性質を有する軟質樹脂からなる層である。自己修復層を形成する樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性の不飽和アクリル系樹脂、ウレタン変性(メタ)アクリレート等の不飽和ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等が用いられる。
【0026】
防眩層は、蛍光灯などの外部光源から照射された光線を表面凹凸により散乱させ、光の反射を低減する層である。防眩層は、熱硬化性樹脂や、紫外線硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂に粒径が数μmの球形または不定形の無機又は有機微粒子を分散した塗液を、または、粒子を用いないで凹凸を形成することが可能なポリマーを含有した塗液を、塗布、硬化させた層である。
【0027】
反射防止層は、蛍光灯などの外部光源から照射された光線を、光の干渉により低減する層である。屈折率が1.5〜1.6の支持体上に反射防止層を一層で形成する場合は、該支持体よりも屈折率が低い、例えば、屈折率が1.3〜1.5の低屈折率層を一層積層し形成される。前記支持体上に反射防止層を二層で形成する際は、該支持体よりも屈折率が高い、例えば、屈折率が1.6〜1.8の高屈折率層、更にその上層に、高屈折率層よりも屈折率が低い低屈折率層をそれぞれ積層し形成される。
【0028】
低屈折率層は、平均粒子径が10〜100nmの無機微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合した塗液を、塗布、硬化させた層である。無機微粒子としては、コロイダルシリカや中空シリカ微粒子が挙げられ、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えばビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する単官能重合体、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー及びビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する重合体が挙げられる。
【0029】
高屈折率層は、平均粒子径が10〜100nmの金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合した塗液を、塗布、硬化させた層である。
金属酸化物微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が上げられ、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、例えばビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する単官能重合体、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー及びビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する重合体が挙げられる。
【0030】
防眩性反射防止層は、防眩性と反射防止性の機能を合わせ持った層であり、上記防眩層上に反射防止層を積層することにより形成される。
【0031】
これらの機能層は、各種単独で用いることも出来、適時、組み合わせて用いることも出来る。例えば、カール性の抑制に対しては、表面のハードコート層と同じ材料からなるハードコート層を機能層の一層目として用い、その上に、視認性の改良を目的に反射防止層等を積層することが出来る。
【0032】
本発明の透明導電性フィルムを縦50mm、横100mmにカットし、150℃で1時間アニール処理した後、機能層を下にして平滑な面に透明導電性フィルムを静置した場合、四隅の反りあがりの平均値が0.5〜15.0(mm)となることが好ましい。すなわち、機能層を下にしたときには、四隅が平滑な面に接することが好ましい。
四隅の反りあがりの平均値を上述の範囲とするための具体的な手段としては、透明基材フィルム裏面の機能層の総膜厚aと、表面のハードコート層の膜厚bとの関係を、好ましくは2.0a≧b≧0.6a、より好ましくは2.0a≧b≧0.9a、特に好ましくは1.1a≧b≧0.9aに設定する。透明基材フィルム表面のハードコート層の膜厚bが0.6aより小さくなると、アニール処理された透明導電性フィルムが表面を凸にしてカールしてしまい、タッチパネルの形態で絶縁不良を生じる可能性がある。一方、透明基材フィルム表面のハードコート層の膜厚bが2.0aより大きくなってしまうと、アニール処理された透明導電性フィルムのカールの度合いが強くなり、タッチパネル形成時に不具合が生じることがある。
【0033】
〔透明導電性フィルムのパターン化〕
透明導電性フィルムのパターン化は、例えば、パターンを形成するためのマスクにより透明導電性フィルムを覆い、無機酸水溶液等のエッチング液により透明導電性フィルムをエッチングすることにより行われる。エッチング液として無機酸水溶液を用いてエッチングを行った場合、無機酸水溶液と接触したITO層が除去され、中間層及びハードコート層は維持したままとなる。ここで、マスクによりITO層が保護されエッチング加工後にITO層が残っている部分をパターン部、ITO層が除去された部分を非パターン部と定義する。
【0034】
パターン化された透明導電性フィルムのパターン部と非パターン部との透過率差は、3%未満が好ましく、1%未満がより好ましい。透過率差が3%以上の場合、パターン部と非パターン部とが明確化し、フィルムの見栄えが悪くなる。上記透過光の着色は、JIS Z 8729に規定されるLab表色系のb*で評価でき、好ましくは−2≦b*≦2、より好ましくは−1≦b*≦1である。b*>2の場合、透明導電性フィルムが黄色に着色して見えるため好ましくない。一方、b*<−2の場合、透明導電性フィルムが青色に着色して見えるため好ましくない。
【実施例】
【0035】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、屈折率、透過色、透過率、見栄え評価及びカール試験は以下のように測定した。
【0036】
<屈折率>
(1)錫ドープ酸化インジウム層は、屈折率1.63のPETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、膜厚20nmとなるようインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより屈折率測定用フィルムを作製した。
錫ドープ酸化インジウム層以外の層は、屈折率1.63のPETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nmになるように層の厚さを調製して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニール処理を施して屈折率測定用フィルムを作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔「FE-3000」、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ+b/λ+c (式1)
a、b、c:波長分散定数
【0037】
<透過色>
色差計〔「SQ−2000」、日本電色工業(株)製〕を用いて透過色のb*を測定した。
【0038】
<透過率>
分光光度計〔「UV−1600PC」(株)島津製作所製〕を用いて透過スペクトルを測定した。透過スペクトルより500〜600nmの透過率を読み取り、その平均値をそれぞれパターン部の透過率、非パターン部の透過率とした。
【0039】
<見栄え評価>
黒い板の上に、透明導電性フィルムを中間層およびITO層が積層された面が上になるように置き、目視によりパターン部と非パターン部の判別ができるか否かを下記基準で評価した。
◎:パターン部と非パターン部の判別が困難。
○:パターン部と非パターン部とをわずかに判別できる。
×:パターン部と非パターン部とをはっきりと判別できる。
【0040】
<カール試験>
縦50mm、横100mmにカットした透明導電性フィルムを150℃の恒温槽に1時間静置してアニール処理(前処理)を行う。この前処理後、図1に示すように、透明導電性フィルムを平坦面に機能層又はITO層を下にして置き、四隅の反り上がり量(1)、(2)、(3)及び(4)を測定し、それらの平均値(カール平均値)を測定する。機能層を下にした場合に反り上がる場合は+(プラス)表記、ITO層を下にした場合に反り上がる場合は−(マイナス)表記とする。
【0041】
〔ハードコート層用塗液(HC−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート80質量部、トリアクリル酸テトラメチロールメタン20質量部、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシー2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン20質量部、および光重合開始剤〔商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕4質量部、イソブチルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−1)を調製した。
【0042】
〔ハードコート層用塗液(HC−2)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、シリカゲル微粒子分散液〔商品名:XBA−ST、日産化学(株)製〕50質量部、および光重合開始剤〔商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕4質量部、イソプロピルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−2)を調製した。
【0043】
〔中間層用塗液(I−1)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕78質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕22質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−1)を調製した。I−1の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.75であった。
【0044】
〔中間層用塗液(I−2)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕89質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕11質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−2)を調製した。I−2の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.90であった。
【0045】
〔中間層用塗液(I−3)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕66質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕34質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−3)を調製した。I−3の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.65であった。
【0046】
〔中間層用塗液(I−4)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕92質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕8質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−4)を調製した。I−4の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.95であった。
【0047】
〔中間層用塗液(I−5)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕57質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕43質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−5)を調製した。I−5の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.60であった。
【0048】
(実施例1)
ハードコート層用塗液(HC−1)をロールコーターにて、厚さ125μmのPETフィルムの一面上に、乾燥膜厚が4μmになるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコート処理PETフィルムを作製した。
上記ハードコート層上に、中間層用塗液(I−1)をロールコーターにて乾燥膜厚が90nmとなるよう塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させた。
次に、中間層を積層したハードコート処理PETフィルムの反対面にハードコート層用塗液(HC−1)をロールコーターにて、乾燥膜厚が4μmになるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、透明導電用フィルムを作製した。
続いて、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚20nmのITO層を中間層上に形成し、透明導電性フィルムを作製した。この透明導電性フィルムのITO層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5質量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して透明導電性フィルムのエッチングを行い、更に、ITO層の屈折率が2.1となるように150度30分間アニール処理を施しエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
なお、実施例および比較例の透明導電性フィルムにおいては、中間層およびITO層を積層した面を表面とし、他方の面を裏面とする。
【0049】
(実施例2)
中間層用塗液をI−2とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0050】
(実施例3)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が65nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0051】
(実施例4)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層用塗液をI−3とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0052】
(実施例5)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が115nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(実施例6)
アニール処理を150度2時間へと変更し、ITO層の屈折率が1.9となるように調整した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(実施例7)
アニール処理を100度1時間へと変更し、ITO層の屈折率が2.3となるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0053】
(比較例1)
中間層用塗液をI−4とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0054】
(比較例2)
中間層の乾燥膜厚が55nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0055】
(比較例3)
中間層用塗液をI−5とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0056】
(比較例4)
ハードコート液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が140nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0057】
(比較例5)
厚さ125μmのPETフィルムに、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚20nmのITO層を形成し、透明導電性フィルムを作製した。
次いで、透明導電性フィルムのITO層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5質量%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、透明導電性フィルムのエッチングを行い、更に、ITO層の屈折率が2.0となるように150度1時間アニール処理を施しエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例6)
表面のハードコート層を形成しない以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例7)
表面のハードコート層の乾燥膜厚を12μmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例8)
表面のハードコート層の乾燥膜厚を1.5μmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例9)
ITO層を膜厚60nmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0058】
以上の実施例1〜7並びに比較例1〜9の透明導電性フィルムについて、透過色、透過率、見栄え評価及びカール試験を行い、それらの結果を表1および2に示した。表1および2における記号は以下の意味を表している。
HC層:ハードコート層
I層:中間層
【表1】


【表2】

【0059】
表1に示した結果より、実施例1〜7では、透過色の着色がほとんどなく、透過率が高く、見栄えに優れ、カール性が十分に抑制された。
その一方、表2に示した結果より、比較例1では、中間層の屈折率が高いことから、透過光が着色し、見栄えが悪化した。
比較例2では、中間層の膜厚が薄いために見栄えが悪化した。比較例3では中間層の屈折率が小さいために見栄えが悪化した。
比較例4では、中間層の膜厚が厚いことから、透過光が着色する結果となった。
比較例5では、透明基材フィルム上にハードコート層および中間層が設けられていないことから、透過光が着色し、更に、見栄えが悪い結果であった。
比較例6では、透明基材フィルムの表面にハードコート層が設けられてないことから、カール性が悪化した。
比較例7では、表面側のハードコート層の膜厚が、裏面のハードコート層より非常に厚いことから、カール性が悪化した。
比較例8では、表面側のハードコート層の膜厚が、裏面のハードコート層より非常に薄いことから、カール性が悪化した。
比較例9では、ITO層の膜厚が厚いことから、透過光が着色する結果となった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一面から順に、ハードコート層および中間層が積層された透明導電性フィルムであって、
前記中間層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とからなり、かつ波長400nmの光の屈折率が1.65〜1.90、膜厚が60〜115nmであり、
前記金属酸化物微粒子は酸化チタン又は酸化ジルコニウムであり、
パターン化された錫ドープ酸化インジウム層が前記中間層の外面上に積層されており、
前記錫ドープ酸化インジウム層は波長400nmの光の屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmである透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明基材フィルムの他面に、機能を付与する機能層が積層されている請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記機能層が、ハードコート層、防眩層、指紋なじみ層、自己修復層、反射防止層又は防眩性反射防止層である請求項2に記載の透明導電性フィルム。


【図1】
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【公開番号】特開2012−25066(P2012−25066A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166900(P2010−166900)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】