説明

透明板状体の印刷方法及び透明板状体の印刷装置

【課題】本発明は、エネルギーロスの増大、印刷位置精度の低下及び転写体が受ける熱サイクルの温度高低差を抑制することが可能な透明板状体の印刷方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】透明板状体の印刷方法は、感光体15を帯電する工程、帯電された感光体を露光することにより画像パターンを形成する工程、感光体に形成された画像パターンをトナー14で現像する工程、感光体に現像されたトナーを冷却された中間体21に転写する工程、中間体に転写されたトナーを加熱された中間転写体25に転写する工程及び中間転写体に転写され加熱されたトナーを透明板状体11の表面に転写する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板状体などの透明板状体の表面に所望の画像パターンを付与するための透明板状体の印刷方法及び透明板状体の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス板面に印刷するために、スクリーン印刷の技術が利用されていた。スクリーン印刷では、まずスクリーン版を作成する必要があるが、その製造には複雑な工程を必要とするため、高いコストを要することが問題とされた。
【0003】
ところで、自動車の窓に用いられているガラス板に、窓の曇りを除去するヒータ線や、テレビ又はラジオなどのアンテナ線としての導電プリント線が設けられているが、これらの導電プリント線は、主に銀を含有するペーストの焼成体からなる。このペーストをスクリーン印刷により所定のパターンでガラス板面に印刷し、加熱焼成することにより導電プリント線をガラス板面に設けていた。しかしながら、印刷対象としての自動車の窓ガラスは多種多様で、しかも導線プリントのパターンも多数あるため、それらの種類に対応したスクリーン版を作成しストックする必要があった。加えて導線プリントパターンを修正する必要も生じ、一層のコスト高を招いていた。
【0004】
一方、近年、電子印刷技術を利用して、セラミックトナーを用いて装飾及び/又は文字パターンをガラスやセラミックス板面に印刷する技術が開発されている。図1にその概念図を示す(特許文献1参照)。
【0005】
この技術は、感光体5を帯電手段により帯電させ、該帯電した感光体上に露光6により所望の画像パターンを形成し、そのパターン上にトナー8で現像し、現像された該トナーを転写ロール7を用いてガラス又はセラミックス製品2の面上に静電気(コロナ放電)により転写すると共に、転写されたトナーを加熱することにより製品に焼き付ける方法である。この方法によると、画像パターンをコンピュータ3により変化させるだけで、パターンの種類に対応することができるあるいはパターンの修正を行うことができるので、柔軟で機動的なパターン設計が可能となる。なお、図1において、1はベルトコンベア、9及び10はコロナ放電電極を示す。
【0006】
また、転写体としてドラム又はエンドレスベルトを使用し、感光体上で現像されたトナーを、回転移動しているドラム又はエンドレスベルトに転写し、該ドラム又はエンドレスベルト上でトナーを赤外線ヒータで加熱した後に、セラミックス板上に押圧転写するものが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3460084号公報
【特許文献2】特開平8−146819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に示されているような公知技術においては、静電気のみでガラスの表面にトナーを転写させるのは難しく、転写率が低いという問題があった。この問題を解決するために、ガラス板を予め加熱することにより転写されたトナーを加熱・溶融してトナーの粘着性を高め、それによりガラス板面への転写率を向上させることが知られている。しかし、ガラスは熱容量が大きいので、それを加熱するのに大量のエネルギーを要するのと、温度制御が難しいという問題があった。更に、加熱されたガラス板の表面に冷たい転写ロールを圧接してトナーを転写すると、ガラス板が熱割れを起こす場合があった。
【0008】
また、自動車の窓ガラス用のガラス板面に導電性材料パターンを印刷する場合は、通常、トナーを160℃に加熱してガラス板面に転写する。この場合、上述した特許文献2に示されているような、回転移動しているドラム又はエンドレスベルト上でトナーを160℃に加熱した後にガラス板面へ転写すると、トナーの加熱に伴ってドラム又はエンドレスベルトも加熱されるので、感光体の温度が次第に上昇し、ついには感光層が破壊してしまうことになる。そこで、加熱されたトナーをガラス板面に転写したのち、再び、感光体上の現像されたトナーをドラム又はエンドレスベルトに転写させる前に、ドラム又はエンドレスベルトを冷却して、感光体に熱が伝達されないようにする必要が生じた。
【0009】
ところで、感光体の感光層が有機系感光体で作られる場合等においては、感光層の温度が変わると帯電の電位が変化し、安定した画像パターンができなくなる。とくに、自動車の窓ガラスの導線プリントパターンのように、複雑で精緻なパターンを大量にかつ安定的に作るためには、鮮明で安定した画像パターンを作るのが不可欠であり、そのためには、感光体の感光層の温度は室温ないし室温よりやや高い温度(約30℃)で、ほぼ一定に維持する必要がある。
【0010】
その結果、同じドラム又はエンドレスベルトに対して、160℃への加熱と約30℃以下までの冷却を繰り返すこととなり、エネルギーロスが大きくなる問題が生じた。特に、ドラム又はエンドレスベルトの冷却が十分でないと、感光体の温度が上昇して感光層の電位が変化し画像パターンの安定性が低下するために、冷却手段として大型の装置を必要とし、印刷装置全体が大型化すると共に、エネルギーロスも更に大きくなる問題が生じる。
【0011】
また、ドラム又はエンドレスベルトに対する加熱と冷却のサイクルの温度高低差が大きくなるので、温度制御が容易ではなく、また、長時間の使用による転写体の熱疲労への対応も必要となる。加えて、エンドレスベルトを用いてガラス板状体表面に印刷する場合、エンドレスベルトに対して加熱と冷却を繰り返すと、エンドレスベルト自体が伸縮して蛇行し、印刷位置精度が低くなる問題が生じた。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、エネルギーロスを少なくする共に、加熱と冷却のサイクルの温度高低差を小さくして、温度制御が容易に行うことができ、かつ、高い転写率と高い印刷位置精度を維持することができる、透明板状体の表面に所望の画像パターンを付与するための透明板状体の印刷方法及び透明板状体の印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の透明板状体の印刷方法は、感光体を帯電する工程、該帯電された感光体を露光することにより画像パターンを形成する工程、該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する工程、該感光体に現像されたトナーを冷却された中間体に転写する工程、該中間体に転写されたトナーを加熱された中間転写体に転写する工程、及び、該中間転写体に転写されたトナーを透明板状体の表面に転写する工程を有するように構成することができる。
【0014】
また、本発明の透明板状体の印刷方法は、感光体を帯電する工程、該帯電された感光体を露光することにより画像パターンを形成する工程、該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する工程、該感光体に現像されたトナーを中間転写体に転写する工程、該中間転写体に転写されたトナーを透明板状体に転写する直前に該透明板状体の裏面から加熱手段により該トナーを加熱する工程、及び、加熱されたトナーを該透明板状体の表面に転写する工程を有するように構成することができる。
【0015】
更に、本発明の透明板状体の印刷方法は、前記透明板状体としてガラス板状体とするように構成することができる。
【0016】
更にまた、本発明の透明板状体の印刷方法は、加熱されたトナーの温度は、80〜180℃とするように構成することができる。
【0017】
更にまた、本発明の透明板状体の印刷方法は、前記透明板状体の表面にトナーが転写される前か転写されるときに、該透明板状体の表面にコロナ放電電圧を印加するように構成することができる。
【0018】
更にまた、本発明の透明板状体の印刷方法は、印加されるコロナ放電電圧は+5〜+30KVとするように構成することができる。
【0019】
本発明の透明板状体の印刷装置は、感光体を帯電する手段、該帯電された感光体を露光する手段、該露光により該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する手段、該感光体に現像されたトナーが転写されると共に該トナーを透明板状体の表面に転写する中間転写体とを有する透明板状体の印刷装置であって、該感光体と該中間転写体との間に中間体を設けると共に該中間体を冷却する手段を設けて、該感光体上のトナーが該中間体上に転写され、転写された該中間体上のトナーが該中間転写体に転写されるように構成すると共に、該中間転写体を加熱する手段を設けるように構成することができる。
【0020】
また、本発明の透明板状体の印刷装置は、感光体を帯電する手段、該帯電された感光体を露光する手段、該露光により該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する手段、該感光体に現像されたトナーが転写されると共に該トナーを透明板状体の表面に転写する中間転写体とを有する透明板状体の印刷装置であって、該中間転写体の表面に転写されたトナーが該透明板状体の表面に転写される直前に該トナーを加熱するための加熱手段を該透明板状体の裏面側に設けると共に、トナーが該透明板状体に転写された後の該中間転写体の表面を冷却する手段を設けるように構成することができる。
【0021】
更にまた、本発明の透明板状体の印刷装置は、上記透明板状体の表面にトナーが転写される前か転写されるときに、該透明板状体の表面にコロナ放電電圧を印加する手段を設けるように構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、感光体からトナーが転写される中間体は冷却し、トナーを透明板状体に転写する中間転写体は加熱するようにしたので、エネルギーロスを大幅に減少させることができるとともに、温度制御が容易になる。また、中間体及び中間転写体共に、加熱と冷却の熱サイクルを受けるが、サイクルにおける温度の高低差を小さくすることができるので、中間体及び中間転写体の熱疲労を小さくすることができる。更に、高い転写率と高い印刷位置精度を維持することができる。
【0023】
また、本発明によれば、中間転写体から透明板状体に転写される直前のトナーを透明板状体の裏面から加熱手段により加熱するので、トナーの加熱から転写までの時間を極めて短時間とすることができる。その結果、中間転写体自体への熱の影響はより小さくすることがでるので、中間転写体の冷却は少なくて済み、エネルギーロスを大幅に減少させることができると共に、温度制御が容易になる。また、中間転写体は加熱と冷却の熱サイクルを受けるが、サイクルにおける温度の高低差を小さくすることができるので、中間転写体の熱疲労を小さくすることができる。更に、高い転写率と高い印刷位置精度を維持することができる。加えて、加熱手段を透明板状体の裏面に配置するので、トナーが転写される透明板状体の表面側近傍の装置の簡素化が可能となる。
【0024】
更に、本発明によれば、トナーが転写される前あるいは転写されるときに、透明板状体の表面にコロナ放電電圧を印加するので、トナーの転写率を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するためのいくつかの最良の形態を、図面を参照して、説明する。以下の実施例では、透明板状体がガラス板状体である場合を中心に説明するが、自動車の窓等に用いられる透明なプラスチックス板状体の場合も実施することができる。
【実施例1】
【0026】
図2は、本発明の実施例1による、透明板状体の印刷方法及び印刷装置を示す概念図である。
【0027】
図2において、ST1は、ガラス板状体11を前処理する工程、ST2は、ガラス板状体11に印刷する工程、ST3は、印刷されたガラス板状体11を焼成する工程を示す。
【0028】
ST1においては、矩形状のガラス板状体11が所定形状に切断され、切断面が面取りされる。その後、ガラス板状体11は、洗浄され、必要に応じて、予備加熱されて搬送ロール12により搬送される。
【0029】
ST2においては、電子印刷装置13により、トナー14がガラス板状体11に所定のパターンで印刷される。具体的には、感光体15を回転させながら、帯電器16で感光体15を帯電させた後、LEDアレイ、半導体レーザー等の露光器17から露光光を照射して、画像パターンを形成する。次に、−380〜−1450Vの電圧(現像バイアス)を現像装置18の現像スリーブ18aに印加して、トナー14を感光体15に供給することにより現像される。このとき、現像されるトナー画像は、ポジ画像及びネガ画像のいずれであってもよい。感光体15上で現像されたトナーを中間体21に転写する。なお、図2では、感光体として感光ドラムを用いているが、感光ドラムの代わりに感光ベルト、感光フィルム等を用いても良い。
【0030】
中間体21には感光体15に対し、+1〜+1.5kVの電圧(転写バイアス)が印加されており、これにより、感光体15のトナーは、中間体21に転写される。なお、トナーを転写した感光体15は、クリーニングブレード、クリーニングブラシ、バキューム等のクリーナー19により残存したトナーが除去された後に除電器20で除電される。そして、再び帯電器16で帯電される。
【0031】
中間体21は回転ドラムで構成され、冷却手段22及びクリーニングブレード、クリーニングブラシ、バキューム等のクリーナー23を備えている。
【0032】
冷却手段22は、後述する加熱手段を有する中間転写体25へのトナーの転写の際に、中間転写体25から中間体21に伝達された熱を、感光体15からトナーが中間体21に転写される前に、冷却するためのものである。この冷却手段22により、中間体21の表面付近の温度は室温ないし室温よりやや高めの温度(約30℃)に冷却されるので、中間転写体25の熱が中間体21を介して感光体15に伝達されて、感光体15の温度が上昇するのを防ぐことができる。その結果、感光体15の温度を一定に保つことができるので、感光体15の感光層を帯電する際の電位を安定的に維持することができる。また、安定した画像パターンの形成を持続することができる。冷却手段としては、例えば、水冷式ローラ又は空冷式ローラ等を用いることができるが、それに限定する必要はなく、中間体21の表面付近の温度を適切に冷却するものであれば良い。
【0033】
クリーナー23は、トナー14を中間転写体25に転写した後、中間体21に残存したトナー14を除去する。また、図2においては、冷却手段22とクリーナー23とは別々に構成して配置されているが、クリーナーに冷却機能を付けて残存トナーの除去と中間体の冷却をほぼ同時に行う構成としても良い。
【0034】
中間体21は、ステンレス鋼、アルミニウム、青銅等の金属性の円筒形材料表面に、導電性を有する樹脂で被覆されたものが良い。被覆樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などが適しているが、これらに限定されるものではなく、その機能を果たすものであれば他の樹脂でも良い。
【0035】
中間転写体25に転写されたトナーは、中間転写体上で加熱されて溶融した後、搬送されてきたガラス板状体11に転写される。中間転写体25もまた、回転ドラムで構成され、加熱手段26及び中間体21と同様のクリーニングブレード、クリーニングブラシ、バキューム等のクリーナー27を備えている。加熱手段26は、中間転写体25の内部に設けられている。加熱手段26としては、例えば、電熱ヒータ、赤外線ヒータ、ハロゲンランプ等を用いることができるが、これに限定されるものではなく、中間転写体25を適切な温度に、効率的かつ安定的に加熱できるものであればよい。なお、本実施例1では、加熱手段はドラム内部に設けているが、加熱手段を回転ドラムの外部に設けて、中間転写体及びトナーを加熱しても良い。
【0036】
トナーの加熱温度は、トナーの種類にもよるが、通常、自動車窓用の導線プリントパターンの場合は、80〜180℃、好ましくは120〜160℃に加熱する。80℃以下だと、転写画像の低下やトナーの転写率の低下の問題が生じる。180℃以上だと、エネルギーのロスが大きくなると共にトナーに含まれる樹脂成分が変質したり、その一部が蒸発する等の問題が生じるほか、中間転写体が樹脂で被覆されている場合は、その樹脂成分が変質したり、その一部が溶融、蒸発したりする問題が生じる場合がある。
【0037】
中間転写体25からの輻射熱で中間体21やその他の装置が加熱されることがないよう、また、中間転写体25から熱が放散されて加熱効率の低下を招かないように、中間転写体25は断熱部材28で覆われている。中間転写体25は、中間体21の回転ドラムと同様の、ステンレス鋼、アルミニウム、青銅等の金属性の円筒形材料表面に、導電性機能を有する樹脂で被覆されたものが良い。被覆する樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などが適している。また、中間転写体25は中間体21に対して+1〜+1.5KVの電圧(転写バイアス)が印加されており、これにより、中間体上のトナーが中間転写体25に転写される。
【0038】
図2に示すように、ガラス板状体にトナーが転写される前に、ガラス板状体の表面を帯電させるコロナ放電電圧印加手段30が設けられている。コロナ放電電圧印加手段30による印加電圧は、前記中間転写体25に対して少なくとも+5KV以上高くすることが必要であり、また、+30KV以下とすることが必要である。中間転写体よりも+5KV以下だと、転写不良の問題が生じ、また、+30KV以上とすると、絶縁破壊の問題が生じるからである。後述するように、中間転写体をガラス板状体表面に押圧して転写を行う場合は、コロナ放電電圧印加手段30によるガラス板状体への印加電圧は+10〜+20KVとするのが好ましい。なお、図2では、該コロナ放電電圧印加手段30は、トナーが該ガラス板状体に転写される前に、コロナ放電してガラス板状体の表面を荷電しているが、中間転写体25の内部とガラス板状体11の裏面側にコロナ放電電極を設けて、荷電と転写を同時に行うように構成しても良い。
【0039】
中間転写体25からガラス板状体11への加熱されたトナーの転写は、中間転写体25を該ガラス板状体の表面に接触させて、押圧しつつ行うのが好ましい。その際の線圧は、3〜5kgf/cm(3,000〜5,000N/m)程度が好ましい。
【0040】
ST3においては、トナー14が熱融着されたガラス板状体11が加熱炉31内に搬送され、焼成される。これにより、画像パターンに対応したパターンの導電プリント線がガラス板状体11に形成される。なお、得られた導電プリント線付きガラス板状体を自動車窓に用いる場合には、曲げ加工を経て強化処理が行われる。このとき、強化処理の代わりに、徐冷処理(合わせガラス用のガラス板の曲げ加工)を行ってもよい。
【0041】
コンピュータCには、露光器17から露光光を照射する際の画像パターンの情報が保管されている。したがって、コンピュータCからの指令により、露光器17から露光光が、指令された画像パターンで照射される。ガラス板状体11を自動車窓に用いる場合には、自動車の型式に応じて、ガラス板状体11の形状、導電プリント線のパターン等が異なる。したがって、自動車の型式に応じたこれらのデータに基づき、指令信号を変更することで、容易にある型式のガラス板状体11の製造から別の型式のガラス板状体11の製造に変更することができる。さらに、型式に関するデータのうち、ガラス板状体11の形状に基づく指令をST1に送信することで、ある型式から別の型式への変更を容易にし、各型式に応じた切断及び面取りを行うことができる。
【実施例2】
【0042】
図3は、本発明の実施例2による、透明板状体への印刷方法及び印刷装置を示す概念図である。なお、図3において、図2と同一の構成については、同一の符号を付して、説明は省略ないし簡潔に行う。
【0043】
ST2における、電子印刷装置13の構成は図2と同様である。感光体15に現像されたトナー14は、+1〜+1.5kVのコロナ放電電圧(転写バイアス)が印加された中間転写体40に転写される。
【0044】
ガラス板状体11の下面側には加熱手段41が設けられており、中間転写体40に転写されたトナー14は、中間転写体40からガラス板状体11に転写される直前に、ガラス板状体の下面から80〜180℃、好ましくは120〜160℃に加熱された後、ガラス板状体11表面に転写される。加熱手段としては、透明(ガラス)板状体で減衰せずに透過して、トナーに選択的に吸収されてトナーを加熱・溶融するものであれば、可視光、赤外線、紫外線その他の電磁波発生手段が使用できるが、ハロゲンランプ(波長2μm)が好ましい。
【0045】
加熱手段41による加熱は、中間転写体40からガラス板状体11に転写されるトナーのパターンに対応して行うのが好ましい。そのために、加熱手段41をコンピュータCに連結してコンピュータからの指令により加熱手段41を作動させるか、あるいは、中間転写体上のトナーのパターンを予め検知する手段を設けて(図示せず)、この検知手段からの信号に応じて、加熱手段41を作動させることができる。また、加熱手段41は常時ONの状態にしておき、加熱光を遮光シャッターなどの手段(図示せず)でON/OFF制御して行っても良い。
【0046】
中間転写体40は、図2の中間転写体25と同様の材料で構成される。また、中間転写体40は、冷却手段42及びクリーニングブレード、クリーニングブラシ、バキューム等のクリーナー43を備えている。クリーナー43は図2におけるクリーナー23と同様のものでよい。
【0047】
本実施例2においては、トナー14の加熱はガラス板状体11にトナーが転写される直前に行われるので、中間転写体40への熱の伝達を少なくすることができる。しかし一定の熱の伝達は避けられない。冷却手段42は、加熱手段41により加熱されたトナー14から中間転写体40に熱が伝達され、更に、中間転写体40から感光体15に熱が伝達されて感光体15の温度が上昇するのを防ぐために備えられたものである。この冷却手段42は、図2の中間体21に備えられた冷却手段22と同様のもので良い。なお、実施例2においても、中間転写体40に備えられた冷却手段42とクリーナー43とは別々に構成して配置しているが、クリーナーに冷却機能を付けて残存トナーの除去と中間転写体40の冷却をほぼ同時に行う構成としても良い。
【0048】
図3に示すように、ガラス板状体にトナーが転写される前に、ガラス板状体表面を帯電させるコロナ放電電圧印加手段30が設けられている。実施例1において説明したように、該コロナ放電電圧印加手段30による印加電圧は、前記中間転写体40に対して少なくとも+5KV以上高くすることが必要であり、また、+30KV以下とすることが必要である。後述するように、中間転写体をガラス板状体表面に押圧して転写を行う場合は、コロナ放電電圧印加手段30によるガラス板状体への印加電圧は+10〜+20KVとするのが好ましい。
【0049】
中間転写体40からガラス板状体11への加熱されたトナーの転写は、中間転写体40を該ガラス板状体の表面に接触させて、押圧しつつ行うのが好ましい。その際の線圧は、3〜5kgf/cm(3,000〜5,000N/m)程度が好ましい。
【0050】
上述した実施例1又は実施例2の変形例として、実施例1(図2)のガラス板状体11の裏面側に、実施例2(図3)における加熱手段41を設けて、図2の中間転写体25からガラス板状体11の表面に転写されるトナーの加熱を、加熱された中間転写体25とガラス板状体の下面側に設けた加熱手段との双方で行うことができる(図示せず)。この場合においては、中間転写体の加熱手段及びガラス板状体下面側に設けた加熱手段共、その規模(加熱容量)を小さくすることができる。
【0051】
上記実施例1及び実施例2において、ガラス板状体11としては、平板状の、普通単板ガラス、強化ガラス、複層ガラス、合わせガラス等を用いることができる。また、材質としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機ガラスが好適に用いることができる。なお、所謂エンジニアリングプラスチックである、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート類等の有機ガラスも使用可能であるが、その場合の加熱温度は、通常、無機ガラスよりも低くする必要がある。これらの有機ガラスについても、単独又は2種以上の積層物等を用いることができる。
【0052】
また、実施例1及び実施例2におけるトナーとしては、通常の黒色系トナーであれば使用できる。特に、実施例2の場合は、加熱光をより選択的に吸収する黒色系トナーが好ましい。
【0053】
自動車の窓ガラスの導線プリント線のような導電性材料パターンをガラス板状体に印刷する場合は、熱可塑性樹脂、導電性粒子及びガラスフリットを含有する粒子であることが好ましい。
【0054】
導電性粒子としては、金属粒子、導電性酸化物粒子等が挙げられる。導電プリント線付きガラス板を自動車窓用に用いる場合、導電プリント線の線幅は、視界を遮らないようにする必要がある。このような線幅で所望の抵抗値を得るためには、導電性粒子として、銀の微粒子を用いることが特に好ましい。
【0055】
トナーの平均粒径は、5〜40μmであることが好ましい。平均粒径が5μm以上であることにより、導電性粒子が表面に露出して、帯電量を確保することができるため、地かぶり等の印刷不良の発生を抑制することができる。また、平均粒径が40μm以下であることにより、繊細な印字品質が得られる。
【0056】
なお、トナーは、必要に応じて、黒色酸化鉄、コバルトブルー、ベンガラ等の無機顔料、アゾ系含金染料、サリチル酸系含金染料、4級アンモニウム塩等の電荷制御剤等を含有することができる。
【0057】
トナーの焼成温度は、600〜740℃であることが好ましい。焼成温度が600℃以上であることにより、導電性粒子同士が十分に焼結する。また、焼結温度が740℃以下であることにより、透明板上体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来の技術を示す概念図である。
【図2】本発明の印刷方法及び印刷装置の一例を示す図である。
【図3】本発明の印刷方法及び印刷装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
C コンピュータ
ST1 前処理工程
ST2 印刷工程
ST3 焼成工程
11 透明板状体(ガラス板状体)
12 搬送ロール
13 電子印刷装置
14 トナー
15 感光体
16 帯電器
17 露光器
18 現像装置
18a 現像スリーブ
19、23、27、43 クリーナー
20 除電器
21 中間体(回転ドラム)
22、42 冷却手段
25、40 中間転写体(回転ドラム)
26 加熱手段
30 コロナ放電電圧印加手段
31 加熱炉
41 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を帯電する工程、該帯電された感光体を露光することにより画像パターンを形成する工程、該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する工程、該感光体に現像されたトナーを冷却された中間体に転写する工程、該中間体に転写されたトナーを加熱された中間転写体に転写する工程、及び、該中間転写体に転写されたトナーを透明板状体の表面に転写する工程を有することを特徴とする透明板状体の印刷方法。
【請求項2】
感光体を帯電する工程、該帯電された感光体を露光することにより画像パターンを形成する工程、該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する工程、該感光体に現像されたトナーを中間転写体に転写する工程、該中間転写体に転写されたトナーを透明板状体の表面に転写する直前に該透明板状体の裏面から加熱手段により該トナーを加熱する工程、及び、該加熱されたトナーを該透明板状体の表面に転写する工程を有することを特徴とする透明板状体の印刷方法。
【請求項3】
前記透明板状体は、ガラス板状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明板状体の印刷方法。
【請求項4】
前記加熱されたトナーの温度は、80〜180℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明板状体の印刷方法。
【請求項5】
前記透明板状体の表面にトナーが転写される前か転写されるときに、該透明板状体の表面にコロナ放電電圧を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明板状体の印刷方法。
【請求項6】
印加されるコロナ放電電圧は+5〜+30KVであることを特徴とする請求項5に記載の透明板状体の印刷方法。
【請求項7】
感光体を帯電する手段、該帯電された感光体を露光する手段、該露光により該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する手段、該感光体に現像されたトナーが転写されると共に該トナーを透明板状体の表面に転写する中間転写体とを有する透明板状体の印刷装置であって、
該感光体と該中間転写体との間に中間体を設けると共に該中間体を冷却する手段を設けて、該感光体上のトナーが該中間体上に転写され、転写された該中間体上のトナーが該中間転写体に転写されるように構成すると共に、該中間転写体を加熱する手段を設けることを特徴とする透明板状体の印刷装置。
【請求項8】
感光体を帯電する手段、該帯電された感光体を露光する手段、該露光により該感光体に形成された画像パターンをトナーで現像する手段、該感光体に現像されたトナーが転写されると共に該トナーを透明板状体の表面に転写する中間転写体とを有する透明板状体の印刷装置であって、
該中間転写体の表面に転写されたトナーが該透明板状体の表面に転写される直前に該トナーを加熱するための加熱手段を該透明板状体の裏面側に設けると共に、トナーが該透明板状体に転写された後の該中間転写体の表面を冷却する手段を設けることを特徴とする透明板状体の印刷装置。
【請求項9】
上記透明板状体の表面にトナーが転写される前か転写されるときに、該透明板状体の表面にコロナ放電電圧を印加する手段を設けたことを特徴とする請求項7又は8に記載の透明板状体の印刷装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−83542(P2008−83542A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265168(P2006−265168)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】