説明

透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材

【課題】 ポリカーボネート基材に対して、密着性に優れたハードコートや透明被膜を提供する。
【解決手段】 下記成分(A)〜(D)を含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液;(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物、
(B)金属酸化物核粒子と、アンチモン酸化物からなる被覆層と、から構成される金属酸化
物微粒子、(C)ポリチオール化合物、有機多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体か
らなる群から選ばれる1種以上の硬化剤(硬化剤A)、および(D)塩基性窒素を含有する
化合物からなる硬化剤(硬化剤B)。前記金属酸化物微粒子(B)が有機ケイ素化合物また
はアミン化合物で表面改質処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な透明被膜形成用塗布液、および該透明被膜形成用塗布液より形成された透明被膜を有する透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明樹脂からなる光学プラスチック成形品は、その軽量性、優れた加工性・耐衝撃性などの特性により、従来ガラスが使用されていた用途に使用されるようになっている。
透明性樹脂にはその用途に応じて適宜屈折率が選択され使用される。
【0003】
たとえば、眼鏡レンズの分野では、低屈折率樹脂材料を使用すると、外周部がガラスレンズに比べ厚くなるという傾向があるので、高屈折率樹脂材料によって薄型化を図る試みが積極的に行われている。このような試みとして、特開昭59−133211号公報(特許文献1)、特開昭63−46213号公報(特許文献2)、特開平2−270859号公報(特許文献3)などでは1.60さらにはそれ以上の屈折率を有する高屈折率樹脂材料が提案されている。
【0004】
一方、プラスチック眼鏡レンズは傷が付き易いという欠点がある。このため、シリコーン系のハードコート被膜をプラスチックレンズ表面に設ける方法が一般的に行われている。しかしながら、1.54以上の高屈折率樹脂レンズに同様の方法を適用した場合には、樹脂レンズとコーティング膜の屈折率差による干渉縞が発生し、外観不良の原因となることがあった。この問題点を解決するために、透明性樹脂と屈折率差の少ない高屈折率ハードコーティングとして、特開平2−264902号公報(特許文献4)には酸化チタンと酸化セリウムの複合無機酸化物微粒子が開示されており、特開平3−68901号公報(特許文献5)には酸化チタンと必要に応じて酸化セリウムを含む酸化物粒子を有機ケイ素化合物で処理した微粒子を含むコーティング組成物が開示されている。
【0005】
また、特開平5−2102号公報(特許文献6)には酸化チタン、酸化鉄複合酸化物微粒子を用いたハードコート膜が開示され、特開平7−76671号公報(特許文献7)には、は酸化チタン、酸化鉄の複合酸化物微粒子を有機ケイ素化合物で処理した粒子と、不飽和多価カルボン酸およびイミダゾールなどの熱硬化触媒を含むコーティング組成物ならびに硬化被膜が開示されている。
【0006】
さらに、特開平8−48940号公報(特許文献8)には、Ti、Si、Zrおよび/ま
たはAlの複合無機酸化物をとマトリックスとからなるレンズ用コーティング組成物が開
示されている。
【0007】
また、このようなレンズ用基材として、特開平9−71580号公報、特開平9−110979号公報、特開平9−255781号公報には、屈折率が1.67から1.70と高く、かつアッベ数が30を超えるエビスルフィド化合物からなる光学材料が提案されている。このような光学材料に使用されるハードコート膜として、特開2000−204301号公報(特許文献9)にて、酸化チタンおよび酸化スズの複合固溶体酸化物からなる核粒子と、これを酸化ケイ素と、酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムとの複合酸化物とからなる被覆層が形成された微粒子が好適に使用できることを開示している。
【0008】
さらに、本出願人は、特開2002−363442号公報(特許文献10)で、酸化チタン含有核粒子とアンチモン酸化物被覆層とから構成される金属酸化物微粒子をレンズなどのハードコート膜に使用することを提案している。
【特許文献1】特開昭59−133211号公報
【特許文献2】特開昭63−46213号公報
【特許文献3】特開平2−270859号公報
【特許文献4】特開平2−264902号公報
【特許文献5】特開平3−68901号公報
【特許文献6】特開平5−2102号公報
【特許文献7】特開平7−76671号公報
【特許文献8】特開平8−48940号公報
【特許文献9】特開2000−204301号公報
【特許文献10】特開2002−363442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
酸化チタンをコーティング用組成物として用いた場合は、TiO2自身が他の無機酸化
物に比べ高い屈折率を有するために、形成された被膜は、1.60前後さらにはそれ以上の屈折率を示し、同時に被膜の屈折率の選択の幅も広くなるという長所がある。しかし、TiO2は耐候性が極めて劣るため、TiO2を含むコーティング組成物から形成される被膜では、被膜中の有機ケイ素化合物など有機成分の分解を引き起こしたり、被膜形成成分に使用したエポキシ樹脂成分の分解させたり、さらには樹脂基材表面での被膜の劣化が起こり、被膜耐久性に問題点があった。また、この被膜は基材との密着性に劣るという問題点もあった。
【0010】
このため、特許文献3〜6で提案されているように、酸化チタンに酸化セリウムなどを複合化させることで耐候性を高めることが試みられていたが、得られた被膜は耐候性の点で不充分であった。また、これらの複合ゾルから得られる硬化被膜は多少なりとも着色するという問題点もあった。
【0011】
さらに、必要に応じてこのようなハードコート層やプライマー層に染色することが行われていたが、前記した従来公知のチタン系の複合粒子などでは、その酸化チタンの作用によって染色が色褪せることがあり、即ち耐退色性が低下してしまうこともあった。
【0012】
そこで、本出願人は、特許文献10で、アンチモン酸化物被覆層を有する酸化チタン系微粒子の使用を提案している。このようにすれば、耐候性、密着性及び染色物の耐候退色性は改善され、従来のものよりも優れたハードコート膜が得られる。しかしながら、紫外線によりハードコート膜自体が変色(黄変)する問題があった。
【0013】
ところで、レンズ基材として、エビスルフィド化合物なども提案されていたが、米国などでは、高屈折率レンズとしては安全性の観点からポリカーボネートレンズが主流である。しかしながら、ポリカーボネート基材に対して、従来より提案されていたハードコートや透明被膜は密着性が乏しいという欠点があった。このため、ポリカーボネート基材と透明被膜との間にプライマー膜を形成することが行われていた。しかしながら、この場合、密着性は向上するものの膜の形成に時間を要したり、コスト高となる等の問題があった。このため、ポリカーボネート基材に対して、密着性に優れたハードコートや透明被膜の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような情況のもと、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、金属酸化物核粒子と、アンチモン酸化物からなる被覆層とから構成される金属酸化物微粒子を使用するとともに、有機ケイ素化合物(被膜形成成分)の硬化剤として特定のものを2種併用することで
、上記問題を解消し、ポリカーボネート基材であっても密着性が高く、しかも、高い屈折
率を有するとともに、耐候性、耐候退色性は改善され、耐擦傷性、染色性、耐候性に優れるとともに、紫外線による変色も起こることがない透明被膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)すなわち本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、下記成分(A)〜(D)を含むことを特徴
としている;
(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物、
(B)金属酸化物核粒子と、アンチモン酸化物からなる被覆層と、から構成される金属酸化
物微粒子、
(C)ポリチオール化合物、有機多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体からなる群か
ら選ばれる1種以上の硬化剤(硬化剤A)、および
(D)塩基性窒素を含有する化合物からなる硬化剤(硬化剤B)。
(2)前記金属酸化物微粒子(B)が有機ケイ素化合物またはアミン化合物で表面改質処理されている。
(3)前記有機ケイ素化合物(A)の少なくとも一部がエポキシ基含有有機ケイ素化合物であり、全有機ケイ素化合物中のエポキシ基含有有機ケイ素化合物の含有量が固形分として60重量%以上である。
(4)被覆層を構成するアンチモン酸化物が、アンチモンの酸化数が3〜5の範囲にあるも
のである。
(5)被覆層の割合が、Sb25換算で、1〜90重量%の範囲にある。
(6)金属酸化物核粒子が五酸化アンチモンまたは酸化チタンを主成分として含む。
(7)前記金属酸化物核粒子が、酸化チタンを主成分として含み、さらに、Si、Al、S
n、Zr、Fe、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を、酸化物換算で10重量%未満の割合で含む。
(8)前記金属酸化物核粒子と被覆層との間に、Si、Al、Sn、Zr、Sb、Nb、T
a、Wからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物からなる中間薄膜層が1層以上形成されている。
(9)ポリカーボネート基材表面に、前記透明被膜形成用塗布液を用いて形成された透明被
膜を有する透明被膜付基材。
(10)前記透明被膜の屈折率が1.54以上である。
(11)ポリカーボネート基材と透明被膜との間にプライマー膜を有する。
(12)前記透明被膜上にさらに反射防止膜を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い屈折率を有し、透過率が高く、干渉縞もなく、耐擦傷性、耐磨耗性、耐衝撃性、耐熱水性、耐汗性、耐薬品性、耐候性、耐光性、可撓性に優れた透明被膜を、プラスチック等の基材、特に従来困難であったポリカーボネート基材表面に、密着性よく形成できる。しかも得られた透明被膜は、染色性を向上でき、特に紫外線による変色の少ないという特性を有している。
【0016】
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、金属酸化物核粒子とアンチモン酸化物からなる被覆層とから構成された金属酸化物微粒子と、硬化剤[a]としてポリチオール化合物、有
機多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体から選ばれる1種以上の化合物と、硬化剤[b]として塩基性窒素を含有する化合物とを含んでいるために、硬化触媒作用が増幅され、また、理由は明らかではないが、紫外線によるガードコート膜の変色も抑制され、このため耐候性、耐光性、耐薬品性、可撓性および染色性に優れた透明被膜を形成できる。また、金属酸化物微粒子が表面改質されていると、基材、特にポリカーボネート基材との密着性に優れるとともに表面硬度が高く、このため耐擦傷性および耐磨耗性に優れ、必要に応じて染色した場合にも染色の変色あるいは退色、褪色を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る透明被膜形成用塗布液ついて具体的に説明する。
透明被膜形成用塗布液
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、下記成分(A)〜(D)を含む。
(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物、
(B)金属酸化物核粒子と、アンチモン酸化物からなる被覆層と、から構成される金属酸化
物微粒子、
(C)ポリチオール化合物、有機多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体からなる群か
ら選ばれる1種以上の硬化剤(硬化剤A)、および
(D)塩基性窒素を含有する化合物からなる硬化剤(硬化剤B)。
【0018】
[有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物]
有機ケイ素化合物は、透明被膜の被膜形成成分として機能するもので、加水分解してシリカ系被膜を形成し、硬化しうるものであれば特に制限されるものではない。具体的には以下に示される有機ケイ素化合物およびその加水分解物が使用される。
【0019】
有機ケイ素化合物としては、次式で表される有機ケイ素化合物が用いられる。
1a2bSi(OR3)4-(a+b)
1a2bSiX4-(a+b)
(ここで、R1は、炭素数1〜6のアルキル基、ビニル基、エポキシ基、メタクリルオキ
シ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選ばれる有機基を有する炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は炭素数1〜3のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基、
ハロゲン化アルキル基、アリール基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基、アリールアルキル基である。Xはハロゲン原子である。また、a=0または1、b=0,1または2である)。
【0020】
上記式で表される有機ケイ素化合物としては、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン、トリメチルクロロシラン、α-グルシドキシメチルトリメトキシシラン
、α-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシ
シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキキシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノ
プロピルメチルジエトキキシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用することも可能である。
【0021】
有機ケイ素化合物は、未加水分解物であっても、加水分解物であってもよい。加水分解は、無溶媒下またはアルコール等の極性有機溶媒中で、酸の存在下で加水分解したものが望ましい。また加水分解物を使用する場合、有機ケイ素化合物はあらかじめ加水分解させたのち後述する金属酸化物微粒子と混合してもよいが、金属酸化物微粒子と有機系ケイ素化合物とを混合したのち、有機ケイ素化合物を加水分解させてもよい。このようにすれば、実質的に表面改質も同時に行うことができるので、生産工程を少なくでき、生産効率に優れる。
【0022】
本発明では、前記有機ケイ素化合物としてエポキシ基含有有機ケイ素化合物を用いることが好ましく、このとき、エポキシ基含有有機ケイ素化合物の含有量が全有機ケイ素化合物の内、固形分として60重量%以上であることが好ましい。
このようなエポキシ基含有有機ケイ素化合物としては、γ-グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキ
シシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0023】
このようなエポキシ基含有有機ケイ素化合物は、単独で使用してもよく、また、他の有機ケイ素化合物と併用してもよい。併用する場合は、エポキシ基含有有機ケイ素化合物の含有量が全有機ケイ素化合物のうち、固形分として60重量%以上とすることが望ましく、このようにすると、基材との密着性および耐擦傷性を高くすることができる。
【0024】
透明被膜中で、有機ケイ素化合物は被膜形成成分(マトリックス、バインダー、ビヒクルともいう)を形成しており、加水分解で生じたシラノールが縮重合している。また、エポキシ基を含有していると、エポキシ基が開環重合するので、耐擦傷性、耐候性、耐候退色性に優れた透明被膜を形成することができる。
【0025】
[金属酸化物微粒子]
金属酸化物微粒子は、金属酸化物核粒子とアンチモン酸化物からなる被覆層とから構成されている。金属酸化物微粒子の平均粒子径は特に制限はないものの、1〜100nm、好ましくは2〜60nmの範囲にあることが望ましい。
【0026】
このような平均粒子径の範囲にあると、得られる透明被膜は硬度が高く、耐擦傷性に優れ、しかも透明被膜の屈折率を充分に高くすることができる。
平均粒子径が前記範囲の下限より小さいと、金属酸化物微粒子を含む塗布液を用いて得られる透明被膜は硬度が不充分となり、耐擦傷性に劣り、しかも透明被膜の屈折率を充分に高くできないことがある。また、平均粒子径が前記範囲上限を超えると、得られる被膜が光の散乱により曇って見えることがある。
【0027】
金属酸化物核粒子
核粒子としては、屈折率が1.7〜3.0の範囲にあるものであって、後述するアンチモン酸化物の被覆層を形成することができれば特に制限はない。好適には、五酸化アンチモンまたは酸化チタンを主成分とするものが望ましい。
【0028】
五酸化アンチモン核粒子の場合、五酸化アンチモンからなるものであっても、他の酸化アンチモン(酸化数の異なるもの)を含むものであってもよい。
五酸化アンチモン核粒子は、アンチモン酸化物の被覆が容易であり、得られる金属酸化物微粒子の屈折率が概ね1.6〜1.7程度の狭い範囲にあり、これを用いて得られる透明被膜は染色性に優れるとともに、染色後の紫外線による褪色を抑制することができる。
【0029】
また、酸化チタン系核粒子は、酸化チタンまたはTi以外にSi、Al、Sn、Zr、
Fe、Sb、Nb、TaおよびWから選ばれる1種以上の元素の酸化物を含んでいてもよい。他の酸化物を含む場合、酸化チタン系核粒子中の酸化チタン含有量がTiO2として
10重量%以上、さらには20重量%以上であることが望ましい。このような含有量であれば透明被膜の屈折率を高くすることができるとともに、干渉縞を形成することもない。
【0030】
このような酸化チタンと酸化チタン以外の成分は、混合物であっても、互いに固溶状態であってもよく、他の複合状態であってもよい。また、酸化チタンは無定形であっても、アナタース型、ルチル型、ブルッカイト型など結晶性であってもよい。さらには、チタン酸バリウム(BaTiO3またはBaOTiO2)のようなペロブスカイト型チタン化合物であってもよい。
【0031】
酸化チタン系核粒子に酸化チタン以外の成分が含まれる場合、酸化スズを含む複合核粒子が挙げられる。この複合核粒子を使用すると、高屈折率レンズ基材に用いるに適切な高
屈折率の透明被膜が得られる。更に酸化チタン系核粒子として、酸化スズ以外に、シリカまたはジルコニアを含んでいてもよい。
【0032】
核粒子の平均粒子径は、最終的に使用される金属酸化物粒子の粒径に応じて適宜選択されるが、1〜100nm、好ましくは2〜50nmの範囲にあることが望ましい。
アンチモン酸化物被覆層
前記核粒子の表面にアンチモン酸化物からなる被覆層が形成されている。
【0033】
アンチモン酸化物被覆層の厚さはとくに制限はなく、前記核粒子の粒子径によっても異なるが、通常、核粒子の粒子径の1/200〜1/5の範囲にあることが好ましい。
また、金属酸化物微粒子中の被覆層を構成するアンチモン酸化物の含有量がSb25
して1〜90重量%、好ましくは5〜70重量%の範囲となるように形成されていればよい。このような範囲にあれば、金属酸化物粒子の粒子径が均一であり、耐褪色性が高く、透明被膜を形成することができる。このようなアンチモン酸化物被覆層を設けることで、耐候性を高めることが可能となり、さらに、アンチモン酸化物被覆層によって、酸化チタン本来の作用が抑制されるので、耐退色性にも優れ、さらに、アンチモン酸化物被覆層の厚みによって、屈折率を任意に変えることができるので、基材の屈折率に応じて干渉縞のない透明被膜を形成できる。
【0034】
金属酸化物微粒子中のアンチモン酸化物被覆層の含有量が酸化物換算で上記下限未満の場合は、前記した耐褪色性が不十分となることがある。アンチモン酸化物被覆層の含有量が上記上限を越えると得られる金属酸化物微粒子の粒子径が不均一になったり、凝集することがあり、得られる透明被膜の透明性が低下することがある。
【0035】
ここで被覆層を構成するアンチモン酸化物は「Sb25」に限定するものではなく、通
常Sb23〜Sb25、即ちアンチモンの酸化数が3〜5の範囲にある酸化物を意味している。このようなアンチモン酸化物被覆層を有していると、透明被膜に染料を含ませた場合、前記核粒子のみの場合に比べて、得られる透明被膜は耐褪色性が向上する。
【0036】
好ましいアンチモン酸化物は酸化数が5未満の酸化物である。酸化数が5未満であるとより染色物の耐退色性に優れている。
なお、本発明では、アンチモン酸化物は、無定型であっても結晶性であってもよく、またこれらは水和水や結晶水を含んでいてもよい。
【0037】
中間薄膜層
さらに、本発明に係る金属酸化物微粒子は、前記核粒子とアンチモン酸化物被覆層との間には、Si、Al、Sn、Zr、Zn、Sb、Nb、TaおよびWから選ばれる1種以上の元素の酸化物、複合酸化物、これらの混合物の少なくとも1種からなる中間薄膜層が1層以上形成されていてもよい。中間薄膜層は1層であっても、2層以上の多層であってもよい。
【0038】
核粒子とアンチモン酸化物被覆層との間に中間薄膜層を少なくとも1層形成することによって、金属酸化物微粒子の屈折率を調整することができるほか、得られる透明被膜の耐光性、耐候性(酸化チタン系核粒子の活性によるビヒクル成分の分解による膜の劣化に対する耐性等)、透明被膜と基材との密着性を向上でき、さらに粒子の着色を抑制したり、無色化したりすることができ、透明被膜の透明性を向上することができる。
【0039】
また、少なくとも1層設ける中間薄膜層の層の数、層の厚さは、金属酸化物微粒子中の核粒子の割合が10〜99重量%の範囲にあり、アンチモン酸化物被覆層の割合がSb25として1〜90重量%の範囲となるように形成されていればとくに制限はない。
【0040】
中間薄膜層としては、特に酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムからなる複合酸化物が好適であり、その複合形態としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムが単成分毎に積層して薄膜層を形成していてもよく、あるいはシリカ・ジルコニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア・アルミナ成分により薄膜層を形成していてもよい。このような中間薄膜層が形成されていると、優れた耐候性、耐光性、基材との密着性、膜硬度、耐擦傷性等を有する透明被膜を形成することが可能な金属酸化物微粒子を得ることができる。
【0041】
また、中間薄膜層に酸化ケイ素を用いることで、金属酸化物微粒子分散液の安定性が向上し、これを用いて得られる塗布液のポットライフが長くなる。そして、このような金属酸化物微粒子を含む塗布液を塗布して得られる透明被膜の硬度の向上と透明被膜上に形成される反射防止膜との密着性の向上を図ることができる。そして、その結果、さらにこの場合も耐候性、耐光性、基材との密着性、膜硬度、耐擦傷性等が向上する。
【0042】
このような金属酸化物微粒子の調製方法としては、上記した金属酸化物微粒子が得られればとくに制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。なかでも、本願出願人の出願による特開2002−363442号公報に開示したアンチモン酸化物で被覆された酸化チタン含有複合酸化物粒子の製造方法を好適に採用することができる。
【0043】
酸化チタン系核粒子としては、本願出願人の出願による特開平8−48940号公報などに開示された複合酸化物粒子が好適に使用される。たとえば、ペルオキソチタン酸水溶液を加水分解する方法や、チタンアルコキシド、チタン塩を加水分解する方法が挙げられる。このうち、粒径、結晶性の制御の点で、ペルオキソチタン酸(過酸化チタン)を使用することが望ましい。
【0044】
また五酸化アンチモン核粒子としては、本願出願人の出願による特開平2−180717号公報などに開示された五酸化アンチモン粒子が好適に使用される。たとえば三酸化アンチモンを酸化剤とアルカリとを溶解したのち反応させて得られたアンチモン酸化物ゾルが好適に使用される。
【0045】
また中間薄膜層を形成する場合、核粒子に被覆層を形成する方法と同様の方法で中間薄膜層を形成すればよい。
アンチモン酸化物被覆層の形成方法としては、まず、核粒子または中間薄膜層を設けた核粒子の水分散液を調製する。この分散液の濃度は固形分として0.01〜40重量%、
さらに好ましくは0.1〜30重量%の範囲にあることが望ましい。この範囲であれば効
率的に形成できるとともに、分散液の分散性も高い。
【0046】
ついで、上記分散液にアンチモン化合物を添加する。アンチモン化合物の添加量は、最終的に得られる金属酸化物微粒子中のアンチモン酸化物被覆層の割合がSb25として1
〜90重量%の範囲となるようにする。
【0047】
本発明に用いるアンチモン化合物としては特に制限はなく、塩化アンチモン等のアンチモン鉱酸塩、吐酒石酸アンチモン等の有機酸塩、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等のアンチモン酸アルカリ、およびアンチモンアルコキシドなどを用いることができる。
【0048】
上記アンチモン化合物を水および/または有機溶媒に溶解した溶液を、上記核粒子または中間薄膜層を設けた核粒子の水分散液に、必要に応じて溶液のpH、温度を適宜調節しながら添加し、ついで酸化剤を添加することによって被覆層を形成することができる。核粒子とアンチモン化合物とを混合したのち、熟成を行っても良い。またあらかじめ酸化剤
はアンチモン化合物に添加され、反応していていてもよく、アンチモン化合物が酸化剤を含むものであってもよい。
【0049】
このように被覆することで、アンチモン化合物が酸化され、アンチモン酸化物からなる被覆層が形成される。得られた粒子は、必要に応じて洗浄して不要物を除去してもよい。
上記酸化剤としてはアンチモンの酸化数を3〜5価に維持できればとくに制限はなく、具体的には酸素、オゾン、過酸化水素、次亜塩素酸等を用いることができる。洗浄方法としては、限外濾過膜法やイオン交換樹脂による脱イオン法等が挙げられる。
[表面改質処理]
本発明に係る金属酸化物微粒子は、その表面が有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で処理されて改質されていることが好ましい。改質処理されていると、透明被膜形成用塗布液中での金属酸化物微粒子の分散状態が長期にわたって安定となる。
【0050】
また、表面改質処理された金属酸化物微粒子はマトリックス(有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物)との反応性が低く、しかもマトリックスとの親和性が高い。このため得られる透明被膜は、表面改質処理されていないものに比べて、得られる透明被膜の硬度がより高く、さらに、基材との親和性も高くなり、特に従来密着性に高い被膜を形成することが困難であったポリカーボネート基材に対して、密着性に優れ、耐擦傷性、可撓性および染色性等に優れた透明被膜を形成することができる。
【0051】
表面改質処理に使用される有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤として公知の有機ケイ素化合物を用いることができ、その種類は、用途や溶媒の種類などに応じて適宜選定される。具体的には、以下のものが使用される。
・式:R3SiXで表される単官能性シラン
・式:R2SiX2で表される二官能性シラン
・式:RSiX3で表される三官能性シラン
・式:SiX4で表される四官能性シラン。
(Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、エポキシ基を有するアルキル基、Xは、加水分解性基(アルコキシ基またはハロゲン、水素である。)
具体的には、トリメチルシラン、ジメチルフェニルシラン、ジメチルビニルシラン等の一官能性シラン、ジメチルシラン、ジフェニルシラン等の二官能性シラン、メチルシラン、フェニルシラン等の三官能性シラン、テトラエトキシシランなど四官能性シランなどが挙げられる。表面改質処理に際して、加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また、処理後は、加水分解性基が微粒子表面の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部が残存した状態でも何ら問題がない。
【0052】
このような有機ケイ素化合物は、被膜形成成分として前記した(A)有機ケイ素化合物お
よびその加水分解物と同一であってもよい。同じ物を使用すれば、透明被膜形成用塗布液中で親和性が高く、より安定な塗布液を得ることができる。
【0053】
また、アミン系化合物としては、アンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど第4級アンモニウム塩や第4級アンモニウムハイドロオキサイドがある。
【0054】
金属酸化物微粒子の表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物で改質するには、例えばこれら化合物のアルコール溶液中に金属酸化物微粒子を混合し、所定量の水および必
要に応じて触媒を加えた後、所定時間常温で放置するか、あるいは加熱処理を行うとよい。
【0055】
また、これら化合物の加水分解物と金属酸化物微粒子とを水とアルコールの混合液に加えて加熱処理することによっても金属酸化物微粒子の表面をこれら化合物で改質することができる。
【0056】
上記方法で得られた金属酸化物微粒子は、通常、溶媒に分散した分散液で得られる。溶媒としては、後述するものが挙げられる。
塗布液に配合される際に、金属酸化物微粒子は、分散液から固液分離・乾燥された粉体として配合されてもよいが、通常、分散液をそのまま配合してもよい。また、必要に応じて分散液は溶媒置換してもよい。
【0057】
[硬化剤[a]]
本発明の透明被膜形成用塗布液に用いる硬化剤[a]としては、ポリチオール化合物、有機
多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体から選ばれる1種以上の化合物が用いられる
。これらの化合物は、エポキシ基の開環重合硬化剤および/またはシラノール基の縮合触媒として機能する。
【0058】
ポリチオール化合物
本発明に用いるポリチオール化合物としては、1分子内に2個以上のチオール基を有していれば特に制限はない。例えば、エチレングリコールジチオグリコレート等のポリオールとメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られる分子内にチオール基を2個有するチオール化合物、トリメチルールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等のポリオールとメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られる分子内にチオール基を3個以上有するチオール化合物、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られる末端チオール基含有チオール化合物、1,4−ブタンジチオール、1,6−へキサンジチオール、1,10−デカンジチオール等のアルキルポリチオール化合物等が挙げられる。
【0059】
なかでも、ポリオールとメルカプト有機酸とのエステル化反応によって得られるチオール化合物が好ましく、特に、分子内にチオール基を3個以上の有するチオール化合物が好ましい。
【0060】
このポリチオール化合物を合成する際に、触媒としてアルカリ金属化合物(塩基性物質)を使用した場合は、精製したポリチオール化合物中の脱アルカリ処理を行い、アルカリ金属イオン濃度を50ppm以下とすることが望ましく、特に10ppm以下とすることが望ましい。
【0061】
ポリチオール化合物中のアルカリ金属イオン濃度が高いと塗布液の粘度が高くなることがある。
有機多価カルボン酸
本発明に用いる有機多価カルボン酸としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸、リンゴ酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘット酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水フマル酸、無水アジピン酸、無水リンゴ酸、無水ナジック酸、無水トリメリト酸、無水ピロメリト酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0062】
なかでも、アジピン酸、イタコン酸、ヘット酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸、無
水ピロメリト酸はシラノール基を有する化合物の縮合触媒、エポキシ基を有する化合物の硬化剤として好適に採用することができる。
【0063】
アセチルアセトン金属錯体
本発明に用いるアセチルアセトン金属錯体としては、下記一般式で示される化合物が使用される。
【0064】
M(CH2COCH2COCH3)n
(但し、Mは、Al(III)、Cr(III)、Co(III)、Cu(II)、Fe(III)から選ばれる元素で
ある。)
具体的には、アルミニウムアセチルアセトネート、クロムアセチルアセトネート、チタニルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネートなどのアセチルアセトン金属錯体が挙げられる。なかでも、Al(III)、Fe(III)のアセチルアセトン金属錯体は好適に用いることができる。これらのアセチルアセトン金属錯体は、シラノール基を有する化合物の縮合触媒、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物の硬化に有用である。
【0065】
[硬化剤[b]]
つぎに、本発明の透明被膜形成用塗布に用いる硬化剤[b]は、塩基性窒素を含有する化
合物からなっている。
【0066】
塩基性窒素含有化合物としては、分子内に3級アミノ基を有するアミン化合物、あるいはヒドラジド化合物、アミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、それ自体が硬化剤として働き、しかも、前記硬化剤[a]との併用でより硬化を促進することができる。そ
して、前記硬化剤[a]と併用することで、理由は明らかでないものの、シラノール基を有
する化合物、有機ケイ素化合物の加水分解物のシラノール基の反応と、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物のエポキシ基の反応がバランスよく促進させることができるので、従来のものよりも優れた耐候性、密着性及び耐擦傷性を有する透明被膜が得られる。しかも、紫外線により被膜が変色(黄変)する問題が解消され、しかもポリカーボネートなどの従来透明被膜を形成することが困難であった基材に対しても、透明性に優れた透明被膜を密着性よく形成できる。
【0067】
アミン化合物としては、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルア
ミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン-n-メチルピペラジン等のアミン化合物
、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-
フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物、等の分子内に3級アミノ基を有する1級アミン類または2級アミン類。2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル−2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル−2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)−2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)−2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)−2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)−2-フェニルイミダゾリ
ン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)−2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルア
ミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-n-ジメチルアミノ安息香酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等の分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、カルボン酸類が挙げられる。
【0068】
なかでも、1級アミン類または2級アミン類は好適に採用することができる。
また、ヒドラジド化合物、アミド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、P−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカル
ボン酸ジヒドラジドやジシアンジアミド等が挙げられる。なかでもアジピン酸ジヒドラジド、ジシアンジアミドは好適に採用することができる。
【0069】
[溶媒]
本発明に係る塗布液では、塗布液に流動性を付与したり、塗布液に含まれている固形分濃度を調整したり、塗布液の表面張力、粘度、蒸発スピード等を調整する目的で、溶媒が用いられる。溶媒としては、水または有機溶媒が使用され、有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコール等のグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、カルボン酸類およびN,N-ジメチルホルムアミド等を使用することができる。
これらの有機溶媒は2種以上を混合して用いることもできる。
【0070】
[塗布液の組成]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、上記した成分(A)、(B)、(C)および(D)と、必要に応じてその他の成分とを混合することによって得られる。
【0071】
また、透明被膜形成用塗布液の固形分濃度は、必要に応じて混合して用いるその他の成分に由来する固形分を含めた合計濃度で1〜70重量%、さらには5〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0072】
塗布液中、(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物の含
有量は、得られる透明被膜中の含有量(換言すれば全固形分中の含有量)が、固形分(シリカ換算で)として20〜70重量%、さらには30〜60重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、基材や反射防止膜との密着性が高く、さらに、耐擦傷性に優れた被膜を得ることができる。(A)成分の含有量が少ないと、基材や反射防止膜との密着
性が低下し、含有量が多くとも耐擦傷性が不十分となり被膜傷つきやすくなることがある。
【0073】
塗布液中、(B)金属酸化物微粒子の含有量は、得られる透明被膜中の含有量(換言すれ
ば全固形分中の含有量)が、固形分(酸化物換算)で、20〜80重量%、さらには30〜70重量%の範囲とあることが望ましい。この範囲にあれば耐擦傷性が高く、また、屈折率を基材の屈折率に応じて変化させることが可能となるので、干渉縞の発生が少ない透明被膜を得ることができる。
【0074】
金属酸化物微粒子の含有量が少ないと、耐擦傷性が不充分となることがあり、また、屈折率を基材と同程度に高くできないために干渉縞を抑制できない場合がある。
透明被膜の屈折率の調整は、(A)有機ケイ素化合物と(B)金属酸化物微粒子との量比、および、(B)金属酸化物微粒子を構成するアンチモン被覆層の厚さを変えたり、また中間層
の厚さ、酸化物種を変えたりすることによって調製することが可能である。たとえば、(B)金属酸化物微粒子との量を増やせば、屈折率は高くなり、また、アンチモン被覆層の厚
さを厚くしたり、中間層を屈折率の高いものを使用すれば、屈折率を高めることができる。
【0075】
透明被膜中の金属酸化物微粒子の含有量が多すぎると、基材や反射防止膜との密着性が低下することがあり、さらに、塗膜の白化したり、クラックが発生することがあり、外観上の問題が発生したり膜の強度が低下することがある。
【0076】
硬化剤[a]として使用される、ポリチオール化合物の透明被膜形成用塗布液中の使用量
は、(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物を固形分と
して1重量部当たり、0.01〜0.2重量部、さらには0.01〜0.1重量部の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、充分に被膜を硬化させることができるとともに、基材との密着性も高くすることができる。ポリチオール化合物の量が少ないと、触媒量が少ないので、硬化が不充分であり、基材との密着性が不充分となり、多くすると、臭気が強いため、作業環境上好ましくないことがある。
【0077】
硬化剤[a]として使用される、有機多価カルボン酸の量は、(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物を固形分として1重量部当たり、有機多価カルボン酸を0.03〜0.4重量部、さらには0.1〜0.3重量部の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、充分に被膜を硬化させることができるとともに、基材との密着性も高くすることができる。有機多価カルボン酸が少ないと、縮合触媒、硬化触媒としての作用が不充分となり、充分な耐擦傷性、耐熱水性を有する被膜が得られないことがあり、有機多価カルボン酸が多くてもポットライフが低下したり、有機多価カルボン酸の種類によっては硬化時に析出して外観不良を引き起こすことがある。
【0078】
硬化剤[a]として使用される、アセチルアセトン金属錯体の量は、(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物を固形分として1重量部当たり、アセチルアセトン金属錯体を0.005〜0.07重量部、好ましくは0.01〜0.05重量部である。この範囲にあれば、充分に被膜を硬化させることができるとともに、基材との密着性も高くすることができる。アセチルアセトン金属錯体が少ないと、縮合触媒、硬化触媒としての作用が不充分となり、
耐擦傷性、耐熱水性を有する被膜が得られず、アセチルアセトン金属錯体が多くても、アセチルアセトン金属錯体の種類によっては得られる透明被膜(硬化物)が着色することがある。
【0079】
また、硬化剤[b]として使用される、塩基性窒素含有化合物の量は、(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物を固形分として1重量部当たり、0.001〜0.1重量部、さらには0.002〜0.08重量部の範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、充分に被膜を硬化させることができるとともに、基材との密着性が高く、透明被膜の紫外線による変色を制御することが可能である。塩基性窒素含有化合物の使用量が少ないと、得られる透明被膜と基材との密着性が低下したり、透明被膜の紫外線による変色を制御できないことがある。塩基性窒素含有化合物の量が多くなると、全体としてイオンが増えることになるので、塗布液の安定性が低下してポットライフの低下を招き、場合によっては透明被膜形成用塗布液がゲル化することがある。
【0080】
本発明に係る透明被膜形成用塗布液には、上記成分を溶媒に溶解または分散させるが、必要に応じ、希釈溶剤に希釈して用いることができる。
希釈溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類およびセロソルブ類等が利用できる。また、透明被膜に染色性を付与させたり、更なる密着性を得たい場合には、多価アルコールやエポキシ樹脂の添加も可能である。
【0081】
さらに、塗布性を高めたり、透明被膜の性能を改善するため、必要に応じてシリコーン系またはフッ素系の界面活性剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤等の添加も有用である。
塗布液の塗布方法は、ディッピング法、スピンコート法等の公知の方法から選ばれる。そして、硬化は加熱処理により行われ、硬化条件は50℃〜150℃、好ましくは80℃〜130℃で0.5時間〜5時間の間で行われることが望ましい。この際、透明被膜形成用塗布液の硬化後の膜厚は、0.5〜10μm、さらには1.0〜5.0μmの範囲となるように透明被膜形成条件を制御することが好ましい。透明被膜の膜厚が薄いと充分な耐擦傷性が得られないことがあり、また透明被膜の膜厚が厚くすると、表面の平滑性が低下
したり、クラック等の問題が生じることがある。
【0082】
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、基材表面に、前記透明被膜形成用塗布液を用いて形成された透明被膜(以下、ハードコート膜ということがある)を有する。
【0083】
本発明に用いる基材としては、ポリカーボネート、ポリチオウレタン、脂肪族アリルカーボネートなどのプラスチックなどからなる各種基材が挙げられる。これらの基材は、眼鏡レンズ、カメラなどの各種光学レンズ、各種表示素子フィルター、ルッキンググラス、窓ガラス、自動車などの塗料膜、および自動車などに用いられるライトカバーなどに使用されている。これらの基材の屈折率は、通常1.55〜1.74の範囲にある。
【0084】
このような透明基材表面に形成される透明被膜の屈折率は1.55以上であることが好ましい。透明被膜の屈折率が1.55以上であると、基材との屈折率差が小さいので干渉縞を抑制することができる。
【0085】
なお干渉縞を抑制するには、屈折率差を0.03以内、好適には0.01以内の範囲にすることが望まれる。
また、透明被膜の膜厚は、被膜付基材の用途によって異なるが、0.5〜10μmが好ましい。
【0086】
本発明に係る透明被膜付基材は、上述したような基材表面に本発明に係る塗布液をディッピンク法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法あるいはフロー法など従来公知の方法で塗布・乾燥して透明被膜を形成し、次いでこのようにして基材表面に形成された透明被膜を基材の耐熱温度以下に加熱することによって製造することができる。特に熱変形温度が100℃未満のレンズ基材に対しては治工具でレンズ基材を固定する必要のないスピナー法が好適である。また、基材が樹脂レンズである場合、基材上に塗布液を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥してもよい。
【0087】
さらに、本発明に係る透明被膜付基材を製造するに際し、基材、例えばレンズ基材と透明被膜との密着性を向上させる目的で、基材表面を予めアルカリ、酸または界面活性剤で処理したり、無機または有機微粒子で研磨処理したり、プライマー処理またはプラズマ処理を行ってもよい。
【0088】
[合成樹脂製レンズ]
上記基材が合成樹脂製レンズである場合は、本発明に係る透明被膜付基材の代表例であり、樹脂レンズ基材の表面に、前記透明被膜形成用塗布液から形成された透明被膜を有することを特徴としている。
【0089】
本発明に係る塗布液より形成される透明被膜は、高屈折樹脂材料から構成された薄型合成樹脂製レンズに広く形成することができる。
具体的には、屈折率が1.54以上の高屈折率レンズに適用することが可能であり、特にポリカーボネートレンズに好適である。
【0090】
ポリカーボネートレンズは、従来の塗布液を使用して透明薄膜を設けても、密着性が低いので、強度が弱く、直ぐにはがれたり、傷ついたりすることがあった。これに対して、本発明に係る塗布液を使用すれば、理由は明らかでないものの、シラノール基を有する化合物、有機ケイ素化合物の加水分解物のシラノール基の反応と、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物のエポキシ基の反応がバランスよく促進させることができるので、従来のものよりも優れた耐候性、密着性及び耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。そし
て、従来プライマー膜を形成することが行われていたが、本発明の塗布液を使用すれば必ずしもプライマー膜を必要としない。なお、反射防止を目的として屈折率の異なる2種以上の透明被膜形成することは可能であり、透明被膜の屈折率の調整は、(、(A)有機ケイ素化合物と(B)金属酸化物微粒子との量比、および、(B)金属酸化物微粒子を構成するアンチモン被覆層の厚さを変えたり、また中間層の厚さ、酸化物種を変えたりすることによって調製することが可能である。また、レンズ基材と透明被膜との屈折率差を徐々に減らすよう透明被膜を積層させてもよく、このようにすればより干渉縞を解消するのに効果的である。
【0091】
ポリカーボネートレンズ以外に、高屈折率レンズであって、透明性、染色性、耐熱性、曲げ強度、耐衝撃性、耐候性、耐光性、可撓性、加工性などの点で、レンズ基材としては、含硫ウレタン系や(メタ)アクリル系、エピスルフィド系レンズ基材、エピスルフィド化合物から得られるレンズ基材などにも本発明の塗布液が好適に使用できる。
【0092】
さらに、上記透明被膜上に、無機物質からなる単層・多層の反射防止膜を設けることにより、反射の低減、透過率の向上を図ることができ、眼鏡レンズとしての機能をより向上させることができる。無機物質としては、SiO、SiO2、Si34、TiO2、ZrO2、Al23、MgF2、Ta25、CaF2等を用い、真空蒸着法等の薄膜形成方法により反射防止膜を形成することができる。また、上記成分を含む塗布液を調製し、湿式法で反射防止膜を形成することもできる。
【0093】
さらに、本発明では、レンズ基材と透明被膜(ハードコート膜)との間にプライマー膜を設けても何ら差し支えることはない。プライマー膜を設ければ、染色性の向上や、染色ムラを防止することができる。プライマー膜としては、マトリックスとして従来公知の塗料用樹脂、好ましくはポリエステル系樹脂またはウレタン系樹脂を含む被膜形成用塗布液によって形成することができる。
【0094】
さらに、本発明によれば、透明被膜に染色を施した場合、透明被膜には特定の金属酸化物微粒子が含まれているので、染色が変色あるいは退色することがない、すなわち耐退色性に優れた薄型の合成樹脂製レンズを得ることができ、たとえば着色メガネレンズやサングラスにも好適である。
【0095】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
チタン系核粒子(TN-1)分散ゾルの調製
TiO2に換算した濃度が0.4重量%の硫酸チタン水溶液250kgを、攪拌しながら、これに濃度15重量%のアンモニア水を徐々に添加して硫酸チタンを加水分解し、pH8.5の白色スラリー液を得た。このスラリーを濾過した後洗浄し、固形分濃度が9重量%の含水チタン酸ゲルのケーキ11.11kgを得た。
【0097】
このケーキ5.55kgに、濃度33重量%の過酸化水素水6.06kgと、水13.4kgとを加えた後、80℃で5時間加熱し、TiO2として2.0重量%の過酸化チタ
ン酸水溶液25kgを得た。この過酸化チタン酸水溶液は、黄褐色透明でpHは8.1であった。
【0098】
平均粒子径が7nmでありSiO2濃度が15重量%のシリカゾル750gと、上記の
チタン酸水溶液22.5kgと、純水27.25kgとを混合し、オートクレーブ中で2
00℃、96時間加熱した。加熱後得られたコロイド溶液を濃縮し、固形分濃度10重量%のチタン系核粒子(TN-1)分散ゾルを得た。
【0099】
中間薄膜層の形成
オキシ塩化ジルコニウム5.26kgを水9.474kgに溶解したZrO2濃度2重
量%のオキシ塩化ジルコニウム水溶液に濃度15重量%のアンモニア水を添加して加水分解し、pH8.5のスラリーを得た。このスラリーを濾過して洗浄し、ZrO2として濃
度10重量%のケーキを得た。
【0100】
このケーキ1.22kgに水3.08kgを加え、さらにKOH水溶液を加えてアルカリ性にしたのち、これに過酸化水素9.0kgを加え、ついで加熱して溶解し、ZrO2
として濃度が2重量%のジルコニウムの過酸化水素溶解液6.1kgを調製した。
【0101】
別途、市販の水ガラスを水で希釈したのち、陽イオン交換樹脂で脱アルカリし、SiO2濃度2重量%のケイ酸液18.9kgを調製した。
チタン系核粒子(TN-1)分散ゾル5kgに、水20kgを加えて固形分濃度2重量%にしたのち90℃に加熱し、これにジルコニウムの過酸化水素溶解液1.525kgと、ケイ酸液4.725kgとを添加した。
【0102】
ついでこの混合液をオートクレーブ中、200℃で18時間加熱処理を行った後、限外濾過膜法で濃縮し、固形分濃度10重量%の淡乳白色をした透明な酸化ケイ素と酸化ジルコニウムからなる中間薄膜層を有するチタン系核粒子(TN-1)の水分散ゾルを得た。このゾルの平均粒子径は9.0nmであった。
【0103】
アンチモン酸化物被覆層の形成
水9000gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)285gを溶解した水溶液中に、三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:ATOX−R、純度重量99%)555gを懸濁させた。この懸濁液を100℃に加熱し、次いで酸化剤(濃度35重量%の過酸化水素水146.5g)を水1100gで希釈した水溶液を14時間かけて添加しアンチモン
酸化合物水溶液を調製した。
【0104】
前記中間薄膜層を有するチタン系核粒子(TN-1)の水分散ゾル5kgに水20kgを加えて固形分濃度2重量%になるようにしておき、これに前記アンチモン酸化合物水溶液9.09kgに水15.91kg加えてSb25換算の濃度を2重量%にしたアンチモン酸化合物水溶液を添加し、イオン交換樹脂で脱イオンして、アンチモン酸化合物による核粒子の被覆処理を行った。
【0105】
ついで、固形分濃度が1重量%になるように水を加え、ついでオートクレーブにて98℃で18時間の加熱処理を行った(酸化剤によって、アンチモン酸化合物が酸化されて、アンチモン酸化物被覆層が形成される)。得られたコロイド溶液を濃縮して固形分濃度が10重量%のアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-1)分散水ゾルを調製した。
【0106】
アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-1)の平均粒子径は9.1nmであった。
また、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-1)の分散媒の水をメタノールに置換し、固形分濃度が20重量%になるまで濃縮してアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-1)のオルガノゾルを調製した。
【0107】
表面改質処理
アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-1)のオルガノゾル1000gを反応容器にとり、これを撹拌しながらメチルトリメトキシシラン56gと水20gを加え、50℃に加温した。ついで濃縮して、固形分濃度が20重量%のメチルトリメトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)のオルガノゾルを調製した。
【0108】
なお、粒子の屈折率は、屈折率計((株)アタゴ製:RX-5000α)により、粒子の水分散
ゾルの屈折率を測定し、別途、該ゾルの比重を測定し、計算によって求めた。
透明被膜形成用塗布液(FS-1)の調製
攪拌装置を備えたフラスコ中に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン110.5g、テトラメトキシシラン11.3g、メチルアルコール30.1gを順次加え、ついで0.05N塩酸水39.19gを加え30分間攪拌した。続いてシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−7001)0.4g加え、5℃で24時間熟成してマトリ
ックス形成成分を含む液を調製した。
【0109】
このマトリックス形成成分を含む液に、上記アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)のオルガノゾル280gを添加し、硬化剤[a]としてポリチオール化合物(東
レ・ファインケミカル(株)製、「ポリチオールQE−340M」)1.5g、無水ピロメリト酸15g、硬化剤[b]として2-エチルー4−メチルイミダゾール2gを添加し、充分攪拌した後、0℃で48時間熟成して、透明被膜形成用塗布液(FS-1)を調製した。
【0110】
透明被膜付基材(PL-1)の作成
市販のポリカーボネート板(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製 ユーピロン・シート)、屈折率=1.59)を洗浄した後、透明被膜形成用塗布液(FS-1)をディッピング法(引き上げ速度160mm/min)にて塗布し、1分間の風乾後、120℃で2時間加熱して硬化させ、透明被膜付基材(PL-1-1)を作成した。
【0111】
透明被膜付基材(PL-1-1)を真空蒸着装置にセットし、真空室を60℃に加熱しながら圧力1.33×10-3まで排気し、酸素イオンクリーニングを行った後、シリカ源として(
株)オプトロン製SiO2M1、ジルコニア源として (株)オプトロン製ZrO2Gを用い、先
ずシリカおよびジルコニア層(厚さ1/4λ(λ=520nm))、ついでジルコニア層(厚さ1/2λ)、ついでシリカ層(厚さ1/4λ)を形成して透明被膜上に反射防止膜を形成して透明被膜付基材(PL-1)を作成した。
【0112】
得られた透明被膜付基材(PL-1)について、以下の特性を評価し、結果を表1に示した。(1)外観
背景を黒くした中に蛍光灯(東芝ライテック(株)製:メロウ5N、三波長型昼白色蛍光灯)を置き、蛍光灯の光を試験片の反射防止膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様(干渉縞)の発生を目視にて確認した。
◎:干渉縞が認められない。
○:干渉縞が僅かに認められるが目立たない。
△:干渉縞が認められ目立つ。
×:ぎらつきのある干渉縞がある。
(2)耐擦傷性試験
ボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)に700gの荷重を加え、試験片の表面を30ストローク/60秒にて擦り、傷の入り具合を目視にて判定した。
◎:傷の入った面積が10%未満
○:傷の入った面積が10%以上20%未満
△:傷の入った面積が20%以上50%未満
×:傷の入った面積が50%以上
(3)密着性試験
ナイフによりレンズ表面に1mm間隔で切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成し、セロハン製粘着テープを強く押し付けた後、90度方向へ急激に引っ張り、剥離しないマス目の数を数え、以下の基準により評価した。
◎:残存マスメ100個
○:残存マスメ90〜99個
△:残存マスメ80〜89個
×:残存マスメ80個未満
(4)耐熱水性試験
80℃の湯中に試験片を10分間浸漬させた後、前記密着性試験を行い、以下の基準により評価した。
◎:残存マスメ100個
○:残存マスメ90〜99個
△:残存マスメ80〜89個
×:残存マスメ80個未満
(5)耐候性試験(外観)
キセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製:SX75型)にて100時間の暴露を行い、外観(クラックの発生状況)を観察し、以下の基準で評価した。
○:クラックが認められない。
△:クラックが僅かに認められるが目立たない。
×:クラックが認められ目立つ。
(6)耐候性試験(密着性)
キセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製:SX75型)にて100時間の暴露を行い、前記密着性試験を行い、以下の基準により評価した。
◎:残存マスメ91個以上
○:残存マスメ70〜90個
△:残存マスメ50〜69個
×:残存マスメ50個未満
(7)耐侯性試験(変色性)
QUV試験装置(Q-Panel Lab Products社製:UVAランプ使用)にて70時間の紫外線暴露を行ない、三波長蛍光灯下にて透明被膜付基材の変色を目視観察した。そして以下の基準により評価した。
○:わずかに変色が認められる
△:明らかに変色が認められる
×:著しい変色が認められる
[実施例2]
チタン系核粒子(TN-2)分散ゾルの調製
TiO2に換算したときの濃度が7.75重量%の四塩化チタン溶液93.665kgと、濃度15重量%のアンモニア水36.295kgとを混合して中和して白色スラリーを調製した。このスラリーを濾過した後洗浄し、固形分濃度が13.3重量%である含水チタ
ン酸ゲルのケーキ54.579kgを得た。
【0113】
このケーキ7.519kgに、濃度35重量%の過酸化水素水11.429kgと水5
9.148kgとを添加し、80℃で2時間加熱して溶解した後、水21.9kgを添加してTiO2として濃度1.0重量%の過酸化チタン酸水溶液を調製した。
【0114】
得られた過酸化チタン酸水溶液に、SnO2としての濃度1.02重量%のスズ酸カリウム水溶液8.906kgを添加し、充分攪拌した後、陽イオン交換樹脂で脱イオン処理を行った。脱イオン処理後、SiO2に換算して272.7gになるようにシリカゾル18
18g(シリカ濃度15重量%)を加え、ついで固形分濃度が1重量%となるように水25.6kgを加えた後、オートクレーブにて140℃で18時間加熱して加水分解し、ついで得られたコロイド溶液を濃縮し、固形分濃度が10重量%のチタン系核粒子(TN-2)分散ゾルを得た。チタン系核粒子(TN-2)の平均粒子径は12.8nmであった。
【0115】
透明被膜形成用塗布液(FS-2)の調
チタン系核粒子として、前記チタン系核粒子(TN-2)を使用し、実施例1において、中間薄膜層を有するチタン系核粒子(TN-1)の水分散ゾルの調製の際に、ジルコニウムの過酸化水素溶解液の量を427g、ケイ酸液の量を1323gとし、アンチモン酸化物被覆層形成時のアンチモン酸化合物水溶液の量を9.09kgとし、水を15.91kg加え
、175℃で加熱した以外は、実施例1と同様にしてアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-2)分散水ゾル、オルガノゾル及び表面改質処理ゾル(ST-2)を調製し、次いで透明被膜形成用塗布液(FS-2)を調製した。中間層薄膜層を形成した後の平均粒子径は12.8nmであった。また、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-2)の平均粒子径は13.4nmであった。
【0116】
透明被膜付基材(PL-2)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-2)を作成し、透明被膜付基材(PL-2)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0117】
[実施例3]
透明被膜形成用塗布液(FS-3)の調製
特開平10−245224号公報の実施例3、(a)工程〜(d)工程に記載の方法に準拠し、固形分濃度10重量%の酸化チタンと酸化錫とからなるチタン系核粒子(TN-3)分散ゾル(平均粒子径5.9nm)を得た。
【0118】
ついで、実施例1において酸化ケイ素と酸化ジルコニウムからなる中間薄膜層を有するチタン系核粒子(TN-1)分散ゾルの代わりに、チタン系核粒子(TN-3)分散ゾルを用いて、実施例1と同様にしてアンチモン酸化物被覆層を形成して、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-3)分散水ゾル、オルガノゾル及び表面改質処理ゾル(ST-3)を調製し、次いで透明被膜形成用塗布液(FS-3)を調製した。アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-3)の平均粒子径は6.3nmであった。
【0119】
透明被膜付基材(PL-3)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-3)を作成し、透明被膜付基材(PL-3)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0120】
[実施例4]
五酸化アンチモン系核粒子(TN-1)分散ゾルの調製
水89kgに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)2.86kgを溶解した溶液中に、三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:ATOX−R、純度重量99%)5.56kgを懸濁した。この懸濁液を100℃に加熱し、次いで酸化剤(濃度35重量%の過酸化水素水2.93kg)を水9.65kgで希釈した水溶液を7時間で添加し、98℃にて10時間の熟成を行った後、冷却、濾過を行い、固形分濃度7%のアンチモン酸カリ水溶液を調製した。この時の水溶液のPHは12.5であった。
【0121】
次いでこの水溶液55kgを冷却攪拌しながら、水243kgを加え希釈し、陽イオン交換樹脂にて脱アルカリを行い、98℃にて20時間加熱した後、濃縮し固形分濃度14
.5%の五酸化アンチモン系核粒子(TN-4)分散水ゾルを調製した。
【0122】
五酸化アンチモン系核粒子(TN-4)の平均粒子径は21.2nmであった。
アンチモン酸化物被覆層の形成
水9000gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)285gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:ATOX−R、純度重量99%)555gを懸濁した。この懸濁液を100℃に加熱し、次いで酸化剤(濃度35重量%の過酸化水素水146.5g)を水1100gで希釈した水溶液を14時間で添加しアンチモン酸化合物水
溶液を調製した。
【0123】
五酸化アンチモン系核粒子(TN-4)分散水ゾル3kgに水21.75kgを加えて固形分濃度2重量%になるようにし、これにアンチモン酸化合物水溶液9.09kgに水15.91kg加えてSb25換算の濃度を2重量%にしたアンチモン酸化合物水溶液を添加し、イオン交換樹脂で脱イオンしながらアンチモン酸化物前駆体被覆処理を行った。
【0124】
固形分濃度が1重量%になるように水を加え、ついでオートクレーブにて98℃で18時間の加熱処理を行った。得られたコロイド溶液を濃縮して固形分濃度が10重量%のアンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(AT-4)分散水ゾルを調製した。アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(AT-4)の平均粒子径は22.5nmであった。
【0125】
また、アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(AT-4)の分散媒の水をメタノールに置換し、固形分濃度が20重量%になるまで濃縮してアンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(AT-4)のオルガノゾルを調製した。
【0126】
表面改質処理の実施
アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(AT-4)のオルガノゾル1000gを反応容器にとり、これを撹拌しながらメチルトリメトキシシラン56gと水20gを加え、ついで50℃に加温した。ついで濃縮して、固形分濃度が20重量%のメチルトリメトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(ST-4)のオルガノゾルを調製した。
透明被膜形成用塗布液(FS-4)の調製
実施例1において、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)オルガノゾル280gの代わりに、アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(ST-4)オルガノゾル510gを使用した以外は実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-4)の調製をした。
【0127】
透明被膜付基材(PL-4)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-4)を作成し、透明被膜付基材(PL-4)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0128】
[実施例5]
アンチモン酸化物被覆のチタン系複合酸化物粒子(ST-5)の調製
実施例1で調製したアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)を使用し、表面改質処理を行う際に、メチルトリメトキシシランをテトラエトキシシランに代えた以外は実施例1と同様にしてテトラエトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-5)を調製した。
【0129】
透明被膜形成用塗布液(FS-5)の調製
ついで、メチルトリメトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物被覆チタン
系複合酸化物粒子(ST-1)の代わりにテトラエトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-5)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-5)の調製をした。
【0130】
透明被膜付基材(PL-5)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-5)を作成し、透明被膜付基材(PL-5)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0131】
[実施例6]
アンチモン酸化物で被覆された五酸化アンチモン微粒子(ST-6)の調製
実施例4において、メチルトリメトキシシラン56gをγ-グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン82gに代えた以外は実施例4と同様にしてγ-グリシドキシプロピルト
リメトキシシランで表面改質処理されたアンチモン酸化物で被覆された五酸化アンチモン微粒子(ST-6)を調製した。
【0132】
透明被膜形成用塗布液(FS-6)の調製
ついで、アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(ST-4)の代わりに、アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(ST-6)を用いた以外は実施例4と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-6)の調製をした。
【0133】
透明被膜付基材(PL-6)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-6)を作成し、透明被膜付基材(PL-6)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0134】
[実施例7]
透明被膜形成用塗布液(FS-7)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-1)の調製の際に、硬化剤[a]として無
水トリメリト酸20g(すなわちポリチオール化合物は使用しない)、硬化剤[b]として
2-エチルイミダゾール2gに変更する以外は実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布
液(FS-7)の調製をした。
【0135】
透明被膜付基材(PL-7)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(PL-7)を作成し、透明被膜付基材(PL-7)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0136】
[実施例8]
透明被膜形成用塗布液(FS-8)の調製
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(FS-7)の調製の際に、硬化剤[a]としてア
セチルアセトン第2鉄3.5g(すなわち、無水トリメリト酸は使用しない)に変更した外は実施例7と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-8)の調製をした。
【0137】
透明被膜付基材(PL-8)の作成
テトラエトキシシランで表面改質処理したチタン系複合微粒子のオルガノゾル(触媒化成工業(株)製:オプトレイク1130Z(S−7・A8)、平均粒子径9nm、固形分濃度30重量%、分散媒:メチルアルコール)70gに、濃度30重量%のウレタンエラストマーの水分散体(第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス150)100g、メチルアルコール400g及びシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製:L−7604
)0.2g加え混合して、プライマー膜形成用塗布液を調製した。
まず、市販のポリカーボネート板(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製:ユーピロンシート、屈折率=1.59)を洗浄した後、プライマー膜形成用塗布液をディッピング法(引き上げ速度120mm/min)にて塗布し、1分間の風乾後、90℃で20分間加熱して硬化させプライマー膜を形成した。つぎに、実施例1と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-8)をディッピング法(引き上げ速度160mm/min)にて塗布し、1分間の風乾後、120℃で2時間加熱して硬化させ、透明被膜付基材(PL-8-1)を作成し、ついで、透明被膜上に実施例1と同様に反射防止膜を形成して透明被膜付基材(PL-8)を作成し、透明被膜付基材(PL-8)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0138】
[実施例9]
透明被膜形成用塗布液(FS-9)の調製
実施例7において、透明被膜形成用塗布液(FS-7)の調製の際に、硬化剤[b]としてジ
シアンジアミド4.7gに変更した以外は実施例7と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-9)の調製をした。
【0139】
透明被膜付基材(PL-9)の作成
実施例8において、透明被膜形成用塗布液(FS-8)の代わりに透明被膜形成用塗布液(FS-9)を用いた以外は実施例8と同様にして透明被膜付基材(PL-9)を作成し、透明被膜付基材(PL-9)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0140】
[実施例10]
透明被膜形成用塗布液(FS-10)
実施例4において、透明被膜形成用塗布液(FS-4)の調製の際に、アンチモン酸化物被覆五酸化アンチモン微粒子(ST-4)オルガノゾルの代わりにアンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(AT-4)分散オルガノゾル(すなわち、表面改質処理をしていない)を用いた以外は、実施例4と同様にして透明被膜形成用塗布液(FS-10)を調製した。塗布
液は僅かに白濁を起こし、凝集物が確認された。
透明被膜付基材(PL-10)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(FS-10)を用いた以外は同様にして透明被
膜付基材(PL-10)を作成し、透明被膜付基材(PL-10)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0141】
[比較例1]
透明被膜形成用塗布液(CFS-1)
実施例1において、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)を添加しない以外は、実施例1と同様に透明被膜形成用塗布液(CFS-1)を調製した。
透明被膜付基材(CPL-1)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(CFS-1)を用いた以外は同様にして透明被
膜付基材(CPL-1)を作成し、透明被膜付基材(CPL-1)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0142】
[比較例2]
透明被膜形成用塗布液(CFS-2)
実施例2において、アンチモン酸化物被覆チタン系複合酸化物粒子(ST-1)の代わりにアンチモン酸化物で被覆されておらず、テトラエトキシシランで表面改質処理したチタン系複合微粒子のオルガノゾル(触媒化成工業(株)製:オプトレイク1120Z(S−7/A8)、平均粒子径9nm、固形分濃度30重量%、分散媒:メチルアルコール)を固形分濃度20重量%にメチルアルコールで希釈して用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(CFS-2)を調製したが、調製時にゲル化した。このため透明被膜付基材は作成し
なかった。
(なお、オプトレイク1120Z(S-7/A8)の酸化チタン含有核粒子:TiO2/ZrO2=51.
2、中間薄膜層:SiO2+ZrO2/酸化チタン含有複合酸化物粒子=4.88)
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(CFS-3)
実施例3において、透明被膜形成用塗布液(FS-3)の調製の際に、硬化剤として硬化剤[a]アセチルアセトンアルミニウム2.2gのみを用いた以外は実施例3と同様にして透
明被膜形成用塗布液(CFS-3)を調製した。
透明被膜付基材(CPL-3)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(CFS-3)を用いた以外は同様にして透明被
膜付基材(CPL-3を作成し、透明被膜付基材(CPL-3)について各特性を評価し、結果を表1
に示した。
【0143】
[比較例4]
透明被膜形成用塗布液(CFS-5)
実施例8において、透明被膜形成用塗布液(FS-8)の調製の際に、硬化剤として硬化剤[b]2−エチルイミダゾール2.0gのみを用いた以外は実施例8と同様にして透明被膜
形成用塗布液(CFS-5)の調製をした。
透明被膜付基材(CPL-5)の作成
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(CFS-5)を用いた以外は同様にして透明被
膜付基材(CPL-5)を作成し、透明被膜付基材(CPL-5)について各特性を評価し、結果を表1に示した。
【0144】
【表1】

【0145】
表1の結果から判別できるように、本発明の特徴である必須成分を含んでなる透明被膜形成用塗布を用いた透明皮膜付基板(実施例1〜8)は、良好な外観及び優れた耐擦傷性
、密着性、耐熱水性及び耐候性を有している。
【0146】
これらと比較し、金属酸化物核粒子とアンチモン酸化物からなる被覆層とから構成される金属酸化物微粒子を含んでいない比較例1は、密着性、耐熱水性及び耐候性は良好であるが、外観及び耐擦傷性に劣る。
【0147】
アンチモン酸化物で被覆されていないチタン系複合微粒子を使用した比較例2は、調製の際にゲル化を起こした。硬化触媒(A)のみしか入っていない比較例3は、密着性、耐熱水性及び耐候性に劣る。硬化触媒(B)のみしか入っていない比較例4は、耐擦傷性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(D)を含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液;
(A)有機ケイ素化合物および/または該有機ケイ素化合物の加水分解物、
(B)金属酸化物核粒子と、アンチモン酸化物からなる被覆層と、から構成される金属酸化
物微粒子、
(C)ポリチオール化合物、有機多価カルボン酸、アセチルアセトン金属錯体からなる群か
ら選ばれる1種以上の硬化剤(硬化剤A)、および
(D)塩基性窒素を含有する化合物からなる硬化剤(硬化剤B)。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子(B)が有機ケイ素化合物またはアミン化合物で表面改質処理され
ていることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物(A)の少なくとも一部がエポキシ基含有有機ケイ素化合物であり
、全有機ケイ素化合物中のエポキシ基含有有機ケイ素化合物の含有量が固形分として60重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項4】
被覆層を構成するアンチモン酸化物が、アンチモンの酸化数が3〜5の範囲にあるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項5】
被覆層の割合が、Sb25換算で、1〜90重量%の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記金属酸化物核粒子が五酸化アンチモンまたは酸化チタンを主成分として含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記金属酸化物核粒子が、酸化チタンを主成分として含み、さらに、Si、Al、Sn、Zr、Fe、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物を、酸化物換算で10重量%未満の割合で含むことを特徴とする請求項6の記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項8】
前記金属酸化物核粒子と被覆層との間に、Si、Al、Sn、Zr、Sb、Nb、Ta、Wからなる群から選ばれる1種以上の元素の酸化物からなる中間薄膜層が1層以上形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項9】
ポリカーボネート基材表面に、請求項1〜8のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を用いて形成された透明被膜を有することを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項10】
前記透明被膜の屈折率が1.54以上であることを特徴とする請求項9に記載の透明被膜付基材。
【請求項11】
前記ポリカーボネート基材と透明被膜との間にプライマー膜を有することを特徴とする請求項9または10に記載の透明被膜付基材。
【請求項12】
前記透明被膜上にさらに反射防止膜を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の透明被膜付基材。

【公開番号】特開2006−70144(P2006−70144A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254559(P2004−254559)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】