説明

透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材

【課題】透明性が高く、着色および干渉縞が抑制された、帯電防止性能、ハードコート性に優れた透明被膜の形成用塗布液を提供する
【解決手段】五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス形成成分と分散媒とからなり、五酸化アンチモン微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、全固形分の濃度が5〜60重量%の範囲にあり、表面処理五酸化アンチモン微粒子の濃度が固形分としての濃度が0.15〜18重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.7〜59.4重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高精細表示装置用の透明被膜の形成に好適な透明被膜形成用塗布液および該塗布液を用いて形成された透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
また、表示装置等に使用する場合、ハードコート性に加えてゴミ、埃等の静電付着を防止するために導電性を有する透明被膜を形成することも行われている。
このような導電性を付与するために導電性酸化物粒子を配合することが知られている。
【0004】
導電性酸化物粒子としては、酸化錫、Sb、FまたはPドープ酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFドープ酸化インジウム、五酸化アンチモン、低次酸化チタン等が知られている。(特許文献1:特開2002−79616号公報)
【0005】
また、本願出願人は、パイロクロア構造を有する五酸化アンチモン微粒子を含む透明帯電防止膜付基材(特許文献2:特開2001−72929号公報)、五酸化アンチモン微粒子を含むハードコート膜付基材(特許文献3:特開2004−50810号公報)、さらに鎖状五酸化アンチモン微粒子を含むハードコート膜付基材(特許文献4:特開2005−139026号公報)、さらに、導電性微粒子を有機珪素化合物の加水分解物で連結させた鎖状導電性微粒子(ATO他種々の)を含む透明導電性被膜付基材を開示している。(特許文献5:特開2006−339113号公報)
【0006】
また、酸化錫、酸化インジウムと同様に、導電性向上を目的として、本願出願人は、特許文献6:特開2005−139026号公報に、鎖状酸化アンチモン微粒子にスズ、リン等のドーピング剤を含ませることで、さらに体積抵抗値の低い鎖状酸化アンチモン微粒子が得られることを開示している。
【0007】
また、従来の導電性酸化物粒子を用いたハードコート膜、透明帯電防止膜では、まず、基材が設定され、基材との密着性、ハードコート性等を考慮してマトリックス成分が設定され、さらに基材との密着性、ハードコート性等を向上させ、帯電防止性能を付与するために導電性酸化物粒子、鎖状化した導電性酸化物粒子を配合することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−79616号公報
【特許文献2】特開2001−72929号公報
【特許文献3】特開2004−50810号公報
【特許文献4】特開2005−139026号公報
【特許文献5】特開2006−339113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より導電性金属酸化物として公知のPドープ酸化錫(PTO)を用いた場合は、五酸化アンチモン微粒子を用いた場合に比較して帯電防止性能は向上するものの透明性が不充分となり、Sbドープ酸化錫(ATO)を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性が低下したり、着色して透過率が低下する場合があった。さらに、Snドープ酸化インジウム(ITO)を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性が不十分であり、着色してしまうという問題点があった。
【0010】
さらにこれらの導電性金属酸化物粒子では、基材、マトリックス成分の屈折率によっては干渉縞を生じる場合があり、着色を抑制するために含有量を減少させると帯電防止性能が不充分となる場合があった。五酸化アンチモン微粒子をハードコート膜、透明帯電防止膜に用いようとしても、透明性には優れるものの屈折率が高くなり、用いる基材の屈折率によっては干渉縞が発生する場合があった。また、五酸化アンチモン微粒子、鎖状酸化アンチモン微粒子にリンをドーピングすると体積抵抗値は若干低下するものの、黄色に変色する問題があった。
【0011】
一方、五酸化アンチモン微粒子、鎖状五酸化アンチモン微粒子は着色の問題はないもののATO等より導電性能が低く、このため五酸化アンチモン微粒子の含有量を多くすると干渉縞を生じたり、経済性が低下する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、導電性微粒子として表面処理した五酸化アンチモン微粒子を用い、マトリックス形成成分としてエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂を用いると導電性が向上するとともに透明性が高く、着色および干渉縞が抑制された、帯電防止性能、ハードコート性に優れた透明被膜が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の構成は以下のとおりである。
[1]五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス形成成分と分散媒とからなり、五酸化アンチモン微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、全固形分の濃度が5〜60重量%の範囲にあり、表面処理五酸化アンチモン微粒子の濃度が固形分としての濃度が0.15〜18重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.7〜59.4重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【0014】
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
[2]前記五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にある[1]の透明被膜形成用塗布液。
[3]前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂である[1]〜[2]の透明被膜形成用塗布液。
[4]前記マトリックス形成成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、マトリックス形成成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%の範囲にある[1]〜[3]の透明被膜形成用塗布液。
【0015】
[5]前記分散媒がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルから選ばれる1種または2種以上のケトン類である[1]〜[4]の透明被膜形成用塗布液。
[6]前記分散媒のケトン類が、アセトンおよび/またはメチルエチルケトンである[1]〜[5]の透明被膜形成用塗布液。
[7]五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス成分とからなり、五酸化アンチモン微粒子が下記式(2)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、該表面処理五酸化アンチモン微粒子の含有量が3〜30重量%の範囲にあり、表面抵抗値が108〜1011Ω/□の範囲にあり、ヘーズが0.3%以下であり、全光線透過率が90%以上であり、基材の屈折率(NS)と前記透明被膜の屈折率(NH)との差が0.02以下であることを特徴とする透明被膜付基材。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0016】
[8]前記五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にある[7]の透明被膜付基材。
[9]前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂である[7]または[8]の透明被膜付基材。
[10]前記マトリックス成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、マトリックス成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%の範囲にある[7]〜[9]の透明被膜付基材。
[11]前記透明被膜の膜厚が1〜20μmの範囲にある[7]〜[10]の透明被膜付基材。
[12]前記基材がトリアセチルセルロースである[7]〜[11]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導電性無機酸化物微粒子の配合量が少なくても、帯電防止性能発現するに充分な導電性能を有し、特に、透明性に優れるとともに着色、干渉縞が無く、帯電防止性能に優れ、且つ、基材との密着性、耐擦傷性、スクラッチ強度、鉛筆硬度等に優れ、経済性にも優れた透明被膜付基材の形成に用いる透明被膜形成用塗布液と透明被膜付基材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス形成成分と分散媒とからなる。
【0019】
五酸化アンチモン微粒子
本発明に用いる五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は5〜50nm、さらには5〜30nm、特に5〜25nmの範囲にあることが好ましい。この範囲の粒子径であれば導電性、透明性が高い。
【0020】
五酸化アンチモン微粒子が小さいと、結晶構造が充分に発達してない場合があり、加えて凝集粒子を形成する傾向があり、導電性を向上させる効果が不充分となる場合がある。また、凝集すると透明性が低下したりヘーズが高くなる場合がある。五酸化アンチモン微粒子が大きすぎても、粒子径に起因した光の散乱が生じるようになり、透明被膜の透明性が低下したりヘーズが高くなる場合がある。
【0021】
なお、五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真(TEM)を測定し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として求める。
本発明で使用される五酸化アンチモン微粒子は、下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されていることが好ましい。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0022】
このような式(1)で表される有機珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
五酸化アンチモン微粒子の表面処理は、例えば、五酸化アンチモン微粒子のアルコール分散液に前記有機ケイ素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて有機ケイ素化合物の加水分解用触媒として酸またはアルカリを加え、有機ケイ素化合物を加水分解する。この時の有機ケイ素化合物の使用量は五酸化アンチモン微粒子の大きさにもよるが、Rn-SiO(4-n)/2として五酸化アンチモン微粒子の概ね2〜30重量%、さらには3〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0024】
このように、有機ケイ素化合物で表面処理されていると透明被膜形成用塗布液中では均一に高分散するとともに安定性が向上し、透明被膜中でも凝集することがなく高分散し、導電性を有し、透明性、光透過率、硬度等に優れた透明被膜を得ることができる。
【0025】
透明被膜形成用塗布液中の五酸化アンチモン微粒子の濃度は、固形分として0.15〜18重量%、さらには0.2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中の五酸化アンチモン微粒子の濃度が低すぎると、導電性能が不充分となり、得られる透明被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合がある。また、五酸化アンチモン微粒子の濃度が高すぎても、透明被膜の屈折率が高くなるために基材の屈折率によっては干渉縞を生じる場合がある。
【0026】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としてはアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)が好適に用いられる。アルキレンオキサイド変性とは、エチレンオキサイド(−CH2−CH2−O−)、プロピレンオキサイド(−CH2−CH2−CH2−O−)などのアルキレンオキサイドのブロック構造を持たせることを意味する。
アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)としては、エチレンオキサイド変性アクリル樹脂、プロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂、ブチレンオキサイド変性アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0027】
特に、エチレンオキサイド変性アクリル系樹脂、プロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂は好適に用いることができる。アルキレンオキサイド変性させることによって、アクリル樹脂が親水性を有し、金属酸化物微粒子との親和性も向上し、五酸化アンチモン粒子のプロトン伝導性を促進することが考えられる。このようなアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を用いると、塗布液中で表面処理された五酸化アンチモン微粒子が凝集することなく高分散し、導電性を有するとともに透明性、光透過率、硬度等に優れた透明被膜を得ることができる。また、塗布液の分散媒に特にケトン系の分散媒を用いた場合、得られる透明被膜中で表面処理された五酸化アンチモン微粒子が鎖状化する傾向があり、導電性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0028】
本発明では前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)に加えて非変性アクリル系樹脂(B)を含むことが好ましい。
このような非変性アクリル系樹脂(B)を、アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)とともに含むことで、強度、硬度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0029】
非変性アクリル系樹脂(B)としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメテクリレート、イソデシルメテクリレート、n-ラウリルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、ウレタンアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
マトリックス形成成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%、さらには10〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が少ないと、非変性アクリル系樹脂(B)を用いる効果、すなわち得られる透明被膜の強度、硬度、耐擦傷性を向上させる効果が不充分となり、多すぎると、アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)が少なくなるので、少ない五酸化アンチモン微粒子の使用量で導電性を向上させる効果が充分得られない場合がある。
【0031】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は固形分として3.5〜58.2重量%、さらには3.75〜57.0重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度(変性・非変性のアクリル樹脂の合計量)が少ないと、所望の膜厚の透明被膜が得られない場合があり、マトリックス形成成分が少なくなる場合は得られる透明被膜の耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。マトリックス形成成分の濃度が多すぎても、五酸化アンチモン微粒子が少なくなるために導電性が不充分となり、得られる透明被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0032】
分散媒
本発明に用いる分散媒としてはケトン類が好適に用いられる。
具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類およびこれらの混合分散媒が挙げられる。
【0033】
なかでも、特に、アセトン、メチルエチルケトンおよびこれらの混合物は、基材がTACの場合には、TAC基材を一部溶解したり膨潤させ、透明被膜成分が相互進入し、境界における界面が不鮮明になるため、干渉縞を抑制できる点で好ましい。
【0034】
分散媒にはケトン類以外の分散媒を含んでいてもよく、ケトン類以外の分散媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレン等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
分散媒中のケトン類の割合は30重量%以上、さらには40重量%以上であることが好ましい。
なお、ケトン類以外の溶媒が多すぎると、基材がTACなどの場合、TACの表面が膨潤あるいは溶解して透明被膜成分と相互進入し(水や低級アルコールではこのような膨潤効果はない)は、境界における光学界面が不鮮明になるためか、干渉縞を抑制できる場合があるが、ケトン類の割合が少ないとこのような干渉縞を抑制する効果が得られない場合がある。
【0036】
これらの混合分散媒を前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)と併用して用いると、基材にTACフィルムを用いた場合、特に干渉縞の抑制された透明被膜を得ることができる。
【0037】
透明膜形成用塗布液の濃度は、全固形分として5〜60重量%、さらには10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度が低すぎると、1回の塗布で厚膜の透明導電性被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥を繰り返すと、膜の強度が低下したり、経済性が低下する問題がある。全固形分濃度が高すぎると、塗布液の粘度が高くなり、塗布性が低下し、透明被膜にクラックやカーリングが生じたり、ヘーズが高くなることがあり、また、耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0038】
このような塗布液には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤などが含まれていてもよい、たとえばビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0039】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
つぎに、本発明に係る透明被膜付基材について説明する。
【0040】
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、前記五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス成分とからなる透明被膜が形成されてなる。
【0041】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等の材質からなるシート、フィルム、パネル等を用いることができる。
【0042】
なかでもTAC、ポリカーボネート、アクリル樹脂基材等が好適に用いられる。特にTACは、前記五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス成分とからなる透明被膜を形成したときに干渉縞を抑制できるので好適である。
【0043】
本発明に用いる基材の屈折率(NS)は1.49〜1.59、さらには1.49〜1.56、特に1.49〜1.52の範囲にあることが好ましい。
基材の屈折率(NS)が前記範囲にない場合は、透明被膜の屈折率の調整が困難で、干渉縞を抑制できない場合がある。
【0044】
五酸化アンチモン微粒子
五酸化アンチモン微粒子としては、前記した表面処理された五酸化アンチモン微粒子を用いる。
【0045】
透明被膜中の表面処理された五酸化アンチモン微粒子の含有量は、固形分として3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲にある。当該五酸化アンチモン微粒子が少ないと、導電性が不充分となる場合がある。透明被膜中の当該五酸化アンチモン微粒子が多すぎても、導電性は向上するものの、屈折率が高くなり、基材によっては干渉縞が生じる場合がある。
【0046】
マトリックス成分
本発明に用いるマトリックス成分としては前記したアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)が硬化した樹脂が好適に用いられる。
【0047】
アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)としては、エチレンオキサイド変性アクリル樹脂、プロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明では前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)に加えて非変性アクリル系樹脂(B)を含むことが好ましい。
【0048】
マトリックス成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%、さらには10〜80重量%の範囲にあることが好ましい。
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は、固形分として70〜97重量%、さらには75〜99重量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜中のマトリックス成分が少ないと、五酸化アンチモン微粒子が多くなり、導電性は向上するものの、屈折率が高くなり、基材によっては干渉縞が生じる場合がある。
【0049】
透明被膜中のマトリックス成分が多すぎても、五酸化アンチモン微粒子が少なくなるために導電性が不充分となり、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
本発明では、透明被膜の屈折率(N)が1.49〜1.59、さらには1.49〜1.56、特に1.49〜1.52の範囲にあることが好ましい。
【0050】
透明被膜の屈折率(N)が前記範囲にあると、使用する基材の屈折率(N)にもよるが、屈折率差小さくすることができ、干渉縞を生じることもない。
透明被膜の表面抵抗値は、用途に応じて適宜選択され、通常108〜1011Ω/□、好ましくは108〜1010Ω/□の範囲にある。かかる表面抵抗は、目的に応じて、マトリックス成分の割合を調整することで、調整可能である。ただし、前記下限を超えて表面抵抗値を小さくすることは五酸化アンチモン微粒子の含有量を多くしてしまうので、屈折率が高くなり干渉縞が生じる場合がある。透明被膜の表面抵抗値を大きくしても、目的によっては、帯電防止性能が不充分となる場合がある。
【0051】
通常、透明被膜のヘーズは0.3%以下、好ましくは0.2%以下である。ヘーズが0.3%を越えると、透明性が不充分となり、所望の光学特性、例えば、コントラスト、視認性が得られない場合がある。また、透明被膜の全光線透過率は90%以上、好ましくは92%以上である。全光線透過率が低ければ、前記所望の光学特性が得られないばかりか、着色して全光線透過率が低い場合には光学部材の設計や意匠性に悪影響を与える場合がある。
【0052】
本発明では、基材の屈折率(N)と前記透明被膜の屈折率(N)との差が0.02以下、好ましくは0.01以下とすることが望ましい。
前記屈折率差が大きくなると鮮明な干渉縞を生じ、外観上の問題となったり、表示装置に用いる場合は画像の視認性が低下する場合がある。
【0053】
透明被膜の膜厚は1〜20μm、さらには4〜15μmの範囲で、目的に応じて、適宜選択される。
透明被膜の膜厚が1μm未満の場合は、充分な硬度、耐擦傷性が得られない場合があり、 透明被膜の膜厚が20μmを越えると、膜が厚いために着色が助長されたり、透過率が不充分となる場合がある。
【0054】
本発明では、前記透明被膜の上に、該透明被膜の屈折率よりも低い屈折率を有する透明被膜を反射防止膜として形成することができる。反射防止膜としては従来公知の反射防止膜を形成することができ、例えば、本願出願人の出願による特開2006−339133号公報に開示した反射防止膜形成用塗布液、反射防止膜は好適に用いることができる。
【0055】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
五酸化アンチモン微粒子分散液(1)の調製
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)56.2gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:PATOX-K 純度98.5重量%)111gを懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35重量%)57.6gを純水194.9gで希釈した水溶液を6時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後14時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂層(三菱化学(株)製:pk-216)に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.1、電導度は3.0mS/cmであった。
【0057】
ついで、温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子分散液(1)を調製した。得られた酸化アンチモン微粒子分散液(1)のpHは2.0、電導度は1.2mS/cmであった。
【0058】
また、電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について測定した結果、五酸化アンチモン微粒子(1)の平均粒子径は20nmであった。
次に五酸化アンチモン微粒子分散液(1)200gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後メタノ−ル200gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7重量%であった。
【0059】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、メタノ−ルをメタノ−ルに置換し、固形分濃度30重量%の表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)を調製した。
【0060】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度30重量%の表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)41.6gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0061】
透明被膜付基材(1)の調製
透明被膜形成用塗布液(1)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.5)にバーコーター法(バー#10)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0062】
この透明被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、鎖状粒子の分散状態および耐擦傷性を表1に示す。全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により、反射率は分光光度計(日本分光社、Ubest-55)により夫々測定した。表面抵抗値は、表面抵抗計(三菱化学(株)製:ハイレスタ)にて測定した。
【0063】
なお、未塗布のTACフィルムは全光線透過率が93.2%、ヘーズが0.2%、波長550nmの光線の反射率が6. 0%であった。また、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性は以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示した。
【0064】
屈折率
透明被膜形成用塗布液(1)をシリコンウェハー上に塗布し、乾燥し、硬化して透明被膜を形成し、透明被膜の屈折率をエリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)で測定した。
【0065】
着色
透明被膜付基材(1)に蛍光灯の光をあて、目視で透過での着色の有無を観察した。結果を表1に示す。
評価基準:
無色透明で着色が全く認められない :◎
ごく薄く着色が僅かに認められる :○
薄く着色が認められる :△
濃く着色が認められる :×
【0066】
密着性
透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテ−プを接着し、ついで、セロハンテ−プを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数90〜99個 :○
残存升目の数85〜89個 :△
残存升目の数84個以下 :×
【0067】
耐擦傷性
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で10回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる :○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0068】
干渉縞
透明被膜付基材(1)の背景を黒にした状態で蛍光灯の光を透明被膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様の発生を目視観察し、以下の基準で評価した。
虹模様が全く認められない :◎
虹模様がわずかに認められる :○
虹模様が明らかに認められる :△
虹模様が鮮明に認められる :×
【0069】
[実施例2]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)16.64g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)24.96g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0070】
透明被膜付基材(2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(2)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)17.33gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)18.72g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)28.08g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.74g、メタノール11.73gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0072】
透明被膜付基材(3)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(3)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0073】
[実施例4]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)43.33gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)15.60g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)23.40g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.12gおよびケトン系溶媒としてアセトン11.55g、メチルエチルケトン2.99gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0074】
透明被膜付基材(4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(4)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)8.32g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)33.28gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0076】
透明被膜付基材(5)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(5)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0077】
[実施例6]
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)24.96g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)16.64g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0078】
透明被膜付基材(6)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(6)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(6)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0079】
[実施例7]
五酸化アンチモン微粒子分散液(2)の調製
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)56.2gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:PATOX-K 純度98.5重量%)111gを懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35重量%)40.1gを純水194.9gで希釈した水溶液を6時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後14時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂層(三菱化学(株)製:pk-216)に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.0、電導度は3.2mS/cmであった。
【0080】
ついで、温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子分散液(2)を調製した。得られた五酸化アンチモン微粒子分散液(2)のpHは2.1、電導度は1.3mS/cmであった。
【0081】
また、電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について測定した結果、五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は15nmであった。
次に五酸化アンチモン微粒子分散液(2)200gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後メタノ−ル200gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7重量%であった。
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、メタノ−ルをメタノ−ルに置換し、固形分濃度30重量%の表面処理した5五酸化アンチモン微粒子分散液(2)を調製した。
【0082】
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
固形分濃度30重量%の表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散液(2)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)16.64g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)24.96g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32gとメチルエチルケトン4.08gとを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0083】
透明被膜付基材(7)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(7)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(7)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0084】
[実施例8]
五酸化アンチモン微粒子分散液(3)の調製
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85重量%)56.2gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製:PATOX-K 純度98.5重量%)111gを懸濁させた。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、純度35重量%)72.9gを純水194.9gで希釈した水溶液を6時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後14時間熟成した。冷却後、得られた溶液から1000gを取り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂層(三菱化学(株)製:pk-216)に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.2、電導度は3.0mS/cmであった。
【0085】
ついで、温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子分散液(3)を調製した。得られた五酸化アンチモン微粒子分散液(3)のpHは2.2、電導度は1.1mS/cmであった。
【0086】
また、電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について測定した結果、五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は40nmであった。
次に五酸化アンチモン微粒子分散液(3)200gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後メタノ−ル200gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7重量%であった。
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、メタノ−ルをメタノ−ルに置換し、固形分濃度30重量%の表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散液(3)を調製した。
【0087】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
固形分濃度30重量%の表面処理した五酸化アンチモン微粒子分散液(3)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)16.64g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)24.96g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびアセトン16.32gとメチルエチルケトン4.08gとを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0088】
透明被膜付基材(8)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(8)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。得られた透明被膜付基材(8)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0089】
[実施例9]
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
実施例2において、エチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)16.64gの代わりにプロピレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4P、樹脂濃度100重量%)16.64gを用いた以外は同様にして固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0090】
透明被膜付基材(9)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(9)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0091】
[実施例10]
反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)の調製
シリカ系微粒子分散液(日揮触媒化成(株)製:スルーリア4320、粒子屈折率=1.30、固形分濃度20重量%、分散媒=メチルイソブチルケトン)6.5gにメチルイソブチルケトン5.9gを加えて稀釈し、ついで、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:DPE-6A、固形分濃度100重量%)1.03gと1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリレート1.6HX−A)0.09gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184:IPAで固形分濃度10重量%に溶解)0.76gとイソプロピルアルコール70.66g、イソプロピルグリコール15.00gを混合して、固形分濃度2.5重量%の反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0092】
透明被膜付基材(10)の調製
実施例2と同様にして透明被膜付基材(2)を調製し、ついで、反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(バー#3)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止膜を設けた透明被膜付基材(10)を調製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
得られた透明被膜付基材(10)の全光線透過率、ヘーズ、反射率、被膜の屈折率、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞、耐擦傷性を表1に示す。
【0093】
[比較例1]
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)34.67gと非変性アクリル系樹脂として紫外線硬化樹脂(共栄社化学(株)製:DPE−6A、固形分濃度100重量%)41.6gに光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32gとメチルエチルケトン4.08gとを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0094】
透明被膜付基材(R1)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R1)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0095】
[比較例2]
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)0.18gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)20.78g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)31.17g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184) 4.16g、メタノール23.31gおよびケトン系溶媒としてアセトン16.32g、メチルエチルケトン4.08gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0096】
透明被膜付基材(R2)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R2)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R2)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0097】
[比較例3]
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1と同様にして調製した五酸化アンチモン微粒子分散液(1)60.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)13.52g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)20.28g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)2.70gおよびケトン系溶媒としてアセトン2.83gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0098】
透明被膜付基材(R3)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。得られた透明被膜付基材(R3)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0099】
[比較例4]
アンチモンドープ酸化錫微粒子分散液(4)の調製
錫酸カリウム130gと酒石酸アンチモニルカリウム30gを純水400gに溶解した混合溶液を調製した。この調製した溶液を12時間かけて、60℃、攪拌下の硝酸アンモニウム1.0gと15%アンモニア水12gを溶解した純水1000g中に添加して加水分解を行った。このとき10%硝酸溶液をPH8.8に保つよう同時に添加した。生成した沈殿物を濾別洗浄した後、再び水に分散させて固形分濃度20重量%の金属酸化物前駆体水酸化物分散液を調製した。
【0100】
この分散液を温度100℃で噴霧乾燥して金属酸化物前駆体水酸化物粉体を調製した。この粉体を空気雰囲気下、550℃で2時間加熱処理することによりSbド−プ酸化錫(ATO)粉末を得た。
【0101】
この粉末60gを濃度4.3重量%の水酸化カリウム水溶液140gに分散させ、分散液を30℃に保持しながらサンドミルで3時間粉砕してゾルを調製した。
次に、このゾルをイオン交換樹脂でPHが3.0になるまで脱アルカリの処理を行い、固形分濃度14重量%のSbド−プ酸化錫微粒子分散液を調製した。この分散液のPHは3.2であった。また粒子の平均粒子径は20nmであった。
【0102】
次にATO微粒子分散液(4)200gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)5gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後メタノ−ル200gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7重量%であった。
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、メタノ−ルをメタノ−ルに置換し、固形分濃度30重量%の表面処理したATO微粒子分散液(4)を調製した。
【0103】
透明被膜形成用塗布液(R4)の調製
固形分濃度30重量%の表面処理したATO微粒子分散液(4)34.67gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)16.64g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)24.96g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184) 3.33gおよびケトン系溶媒としてアセトン20.40ggを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(R-4)を調製した。
【0104】
透明被膜付基材(R4)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R4)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
得られた透明被膜付基材(R4)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0105】
[比較例5]
透明被膜形成用塗布液(R5)の調製
比較例4と同様にして調製したATO微粒子分散液(4)17.33gとエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂(新中村化学工業(株)製:NKエステルATM−4E、樹脂濃度100重量%)18.72g、非変性アクリル系樹脂(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A、樹脂濃度100重量%)28.08g、に光開始剤(チバスペシャリティ(株)製:イルガキュア184)3.74g、メタノール11.73gおよびケトン系溶媒としてアセトン20.40gを充分に混合して固形分濃度52重量%の透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
【0106】
透明被膜付基材(R5)の調製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R5)を調製した。透明被膜の膜厚は5μmであった。
【0107】
得られた透明被膜付基材(R5)の全光線透過率、ヘーズ、被膜の屈折率、表面抵抗値、密着性、鉛筆硬度、着色、干渉縞および耐擦傷性を表1に示す。
【0108】
【表1−1】

【0109】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス形成成分と分散媒とからなり、五酸化アンチモン微粒子が下記式(1)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、全固形分の濃度が5〜60重量%の範囲にあり、表面処理五酸化アンチモン微粒子の濃度が固形分としての濃度が0.15〜18重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の固形分としての濃度が0.7〜59.4重量%の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【請求項2】
前記五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項3】
前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項4】
前記マトリックス形成成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、マトリックス形成成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記分散媒がアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルから選ばれる1種または2種以上のケトン類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項6】
前記分散媒のケトン類が、アセトンおよび/またはメチルエチルケトンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項7】
五酸化アンチモン微粒子とアルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)を含むマトリックス成分とからなり、五酸化アンチモン微粒子が下記式(2)で表される有機珪素化合物で表面処理されてなり、該表面処理五酸化アンチモン微粒子の含有量が3〜30重量%の範囲にあり、表面抵抗値が108〜1011Ω/□の範囲にあり、ヘーズが0.3%以下であり、全光線透過率が90%以上であり、基材の屈折率(NS)と前記透明被膜の屈折率(NH)との差が0.02以下であることを特徴とする透明被膜付基材。
n-SiX4-n (2)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【請求項8】
前記五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の透明被膜付基材。
【請求項9】
前記アルキレンオキサイド変性アクリル系樹脂(A)がエチレンオキサイド変性アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項7または8に記載の透明被膜付基材。
【請求項10】
前記マトリックス成分がさらに非変性アクリル系樹脂(B)を含み、マトリックス成分中の非変性アクリル系樹脂(B)の含有量が固形分として5〜85重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項11】
前記透明被膜の膜厚が1〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項12】
前記基材がトリアセチルセルロースであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の透明被膜付基材。

【公開番号】特開2012−140534(P2012−140534A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294029(P2010−294029)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】