説明

通信システム、通信装置及び通信方法

【課題】一の通信装置の動作異常による他の通信装置への影響を最小限に留め、動作異常による過大な暗電流を防止することができる通信システム、通信装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】車載通信装置1aは、他の車載通信装置1b,1b,…から車内通信回線2を介して送信されるデータにより各車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定する。各車載通信装置1b,1b,…の車内通信回線2と接続している通信制御部13bには、切断要求信号が入力された場合に接続が切断されるスイッチ回路SWbが備えられている。車載通信装置1aは、車載通信装置1bの動作が異常であると判定した場合、切断要求信号を出力部14から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信装置を通信回線で接続し、各通信装置間でのデータの多重化通信を実現する通信システムに関し、特に、各通信装置のソフトウェアによる動作異常を検知してシステムへの影響を最小限に留め、且つ通信装置の動作異常による過大な暗電流を防止することができる通信システム、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)の機能の増加に伴い、車輌に配される車載通信装置の数及び種類も増加する傾向にある。
【0003】
車載通信装置の機能の増加又は複雑化に伴い、車載通信装置間を通信回線で接続して車内LAN(Local Area Network)を構成し、各車載通信装置間でデータを送受信して共有し、連携して動作する。したがって、複数の車載通信装置の内の一の動作が異常な場合は、通信回線への負荷が大きくなるなど他の車載通信装置の動作に影響する虞がある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されている技術では、ディジーチェーン方式の車内LANで構成されている通信システムで、各車載通信装置がソフトウェアの処理により自身のハードウェアの異常を判定し、異常であると判定した場合は通信回線から切り離すようにしてある。これにより、他の車載通信装置間の通信に影響を与えずにシステム全体としての動作を正常に復旧して処理を継続することができる。
【特許文献1】特開平10−49506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、通信回線と接続するための接続回路のショートのようなハードウェアの故障の場合、各車載通信装置は自身の故障を検知して復旧することが可能である。しかしながら、車輌に配される車載通信装置のみならず、通信装置は一般に、自身のソフトウェアによる動作異常をソフトウェアの処理によって判定することは困難である。したがって、通信装置のソフトウェアによる動作が異常となった場合にシステムを復旧することは難しい。
【0006】
また、例えば車輌が駐車されて一部を除く各車載通信装置が省電力モードに移行する場合、省電力モードに移行すべき一の車載通信装置が、ソフトウェアの動作異常にによって省電力モードに移行せずにデータを送信し続けることがあったときは、他の車載通信装置がデータが受信し続けることで省電力モードに移行することができず、暗電流が抑えられないという問題もある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車輌に配されるのみならず複数の通信装置が通信回線に接続して相互にデータの送受信をする場合、各通信装置が他の通信装置の動作の正常/異常を判定し、動作が異常な通信装置をシステムから切断させることにより、一の通信装置の動作異常による他の通信装置への影響を最小限に留め、動作異常による過大な暗電流を防止することができる通信システム、通信装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、各通信装置の内の一の通信装置をマスタとして他の通信装置の動作の正常/異常を一元的に判定して動作が異常な通信装置をシステムから切断することにより、正常/異常の判定を一元化させて判定の誤りを防ぎ、一の通信装置の動作異常による他の通信装置への影響を最小限に留めることができる通信システムを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、動作が異常な通信装置をシステムから切断させるために、データを送受信するための通信回線とは異なる信号線を用い、動作が異常な通信装置が通信回線と切断されるようにハードウェア的に切り替えることにより、ソフトウェアが関与せずに動作が異常な通信装置をシステムから切り離し、他の通信装置への影響を最小限に留めることができる通信システムを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、所定数以上の通信装置が異常と判定した場合に該当する通信装置へ切断要求信号が入力されるように構成される論理回路を含む構成により、正常/異常の判定の精度を向上させて一の通信装置の動作異常による他の通信装置への影響を最小限に留めることができる通信システム及び通信装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、通信装置から定期的にデータを送信させ、各通信装置から送信されるデータが所定の条件を満たしているか否かに基づいて各通信装置の動作の正常/異常を相互に判定することにより、ソフトウェアの処理の動作の正常/異常を判定することができる通信システムを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、通信装置のシステムへの接続を切断する前に、ソフトウェアによる自己復旧を促し、自己復旧できないと判断されてからシステムから切断する構成とすることにより、不要にシステムから切断してしまうことを防止して他の通信装置への影響を最小限に留めることができる通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る通信システムは、データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、各通信装置は、入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、該判定手段により異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力する切断要求出力手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る通信システムは、データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、一の通信装置は、他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、該判定手段により異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力する切断要求出力手段とを備え、他の通信装置は、入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段を備えることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る通信システムは、各通信装置に接続されており、前記通信回線と異なる信号線を備え、前記切断要求出力手段は、前記信号線を介して切断要求信号を出力するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る通信システムは、データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、各通信装置は、前記通信回線と異なる信号線に接続する手段と、入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、該判定手段によって判定された正常/異常を示す判定結果信号を前記信号線へ出力する手段とを備え、各通信装置から出力される判定結果信号を受信し、所定数以上の通信装置から出力された判定結果信号が異常を示す場合に切断要求信号を出力するように構成された論理回路を備えることを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る通信システムは、前記論理回路は、各通信装置に備えられていることを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る通信システムは、前記信号線に接続されており、前記論理回路を含み前記各通信装置間を中継する中継装置を備えることを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る通信システムは、各通信装置は、所定期間が経過する都度、他の通信装置へ前記通信回線を介して所定のデータを送信する手段と、他の通信装置から送信された前記所定のデータを受信する手段とを備え、前記判定手段は、一の通信装置から送信された前記所定のデータが所定条件を満たすか否かを判断する判断手段を備え、前記一の通信装置からのデータが所定条件を満たさないと判断した場合に、異常であると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
第8発明に係る通信システムは、各通信装置は、割り込み要求を受け付ける割込受付手段と、前記判定手段が異常と判定した場合に、割り込み要求を送信する割込要求送信手段とを備え、動作が異常と判断された他の通信装置へ前記切断要求出力手段により切断要求信号を出力する前に、前記割込要求送信手段により割り込み要求を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
第9発明に係る通信システムは、各通信装置は、リセット要求を受け付けるリセット受付手段と、前記判定手段が異常と判定した場合に、リセット要求を送信するリセット要求送信手段とを備え、動作が異常と判断された他の通信装置へ前記割込要求送信手段により割り込み要求を送信した後に、前記他の通信装置の動作が異常と判定された場合、前記リセット要求送信手段によりリセット要求を送信し、前記切断要求出力手段は、リセット要求を出力した後更に前記他の通信装置の動作が異常と判定された場合に切断要求信号を出力するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
第10発明に係る通信装置は、通信回線に接続する接続手段と、前記通信回線を介してデータを送受信する手段とを備える通信装置において、入力された切断要求信号により前記接続手段の通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、外部装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、該判定手段により異常と判定された場合に前記外部装置へ切断要求信号を出力する手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
第11発明に係る通信装置は、前記判定手段により判定された正常/異常を示す判定結果信号を出力する手段と、外部装置から出力された判定結果信号を夫々受信する手段と、所定数以上の外部装置から受信した判定結果信号が異常を示す場合に、前記スイッチ手段へ切断要求信号を入力するように構成された論理回路とを備えることを特徴とする。
【0024】
第12発明に係る通信方法は、データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムで各通信装置の動作を監視する通信方法において、入力された切断要求信号により通信回線への接続を切断するスイッチ手段を各通信装置に備えて用い、各通信装置は、他の通信装置の動作の正常/異常を判定し、異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力することを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、各通信装置により他の通信装置の動作の正常/異常が判定され、異常と判定された場合は、当該他の通信装置が通信回線と接続している接続手段に含まれるスイッチへ切断要求信号が入力され、通信回線との接続が切断される。
【0026】
本発明にあっては、通信装置夫々が正常/異常を判定せずに、一の通信装置により他の通信装置の動作の正常/異常が判定され、判定された場合の切断要求信号の出力処理が実行される。
【0027】
本発明にあっては、各通信装置はデータを伝送する通信回線とは異なる信号線によって接続され、信号線を介して出力される切断要求信号により通信回線との接続を切断するスイッチを有する。データの送受信について正常/異常を判定する場合でもそのデータを伝送する通信回線とは独立した信号線を介して通信回線からの切断が図られる。
【0028】
本発明にあっては、各通信装置夫々によって他の通信装置の動作の正常/異常が判定され、判定結果を示す判定結果信号が通信回線とは異なる信号線へ出力される。通信装置から出力される判定結果信号を受信する論理回路により、所定数以上の通信装置から異常と判定された場合に、異常と判定された他の通信装置の通信回線との接続を切断するスイッチに切断要求信号が入力される。論理回路は各通信装置に備えられる構成であっても、各通信装置とは独立した中継装置に備えられる構成であっても同様の作用が得られる。
【0029】
本発明にあっては、各通信装置から送信されるデータを受信して所定条件を満たすか否かを他の通信装置が判断して、動作の異常/正常が判定される。データを送信するタイミング、送信するデータの内容等はソフトウェアの制御によることから、受信するデータが正常が推定される所定条件を満たすか否かによりソフトウェアの処理の動作の正常/異常の判定が可能になる。
【0030】
本発明にあっては、動作が異常であると判定された通信装置へ切断要求信号が出力される前に、当該通信装置へ割り込み要求が送信される。
【0031】
本発明にあっては、さらに、割り込み要求が送信された後に動作が異常であると判定された場合は、動作が異常であると判定された通信装置へ更にリセット要求が送信される。リセット要求が送信されたにも拘わらず、それでも動作が異常であると判定された場合に初めて切断要求信号が出力される。
【発明の効果】
【0032】
本発明による場合、通信回線との接続回路のショートなどのハードウェア的な故障のみならず、ソフトウェアの処理による動作の正常/異常を判定し、動作が異常な通信装置をハードウェア的にシステムから切り離すことができる。したがって、一の通信装置のソフトウェアを含む動作異常による他の通信装置への影響を最小限に抑えることができる。また、これにより、本来であれば省電力モードに遷移すべきにも拘わらず、動作が異常な通信装置が通常モードで動作をし続けて過大な暗電流が流れることになる事態を防止することができる。
【0033】
本発明による場合、各通信装置の内の一の通信装置が一元的に他の通信装置の動作の正常/異常を判定する。これにより、複数の通信装置が判定することによって判定結果が複雑になり判定が誤りとなることを回避することができる。さらに、一の通信装置に判定を一元化するので簡易な構成で動作異常による他の通信装置への影響を最小限に抑えることができる。
【0034】
本発明による場合、通信装置間でデータを送受信する車内LANを構成する通信回線とは異なる信号線を用いて通信装置間を接続し、動作が異常な通信装置へ、信号線を介して通信回線との接続を切断する信号を出力することによって動作が異常な通信装置を通信回線からハードウェア的に切断させることができる。したがって、動作が異常な通信装置をシステムから切り離して他の通信装置への影響を最小限に留めることができる。
【0035】
本発明による場合、所定数以上の複数の通信装置によって動作が異常であると判定されて初めて、一の通信装置の動作が異常と判定される。これにより、動作が異常な一部の通信装置によって判定結果そのものが誤りとなることを防いで正常/異常の判定の精度を上げ、誤って動作が正常な通信装置をシステムから切り離してしまうことを防止することができる。
【0036】
本発明による場合、ソフトウェアの処理による動作異常を判定することができ、動作が異常な通信装置をシステムから切り離して他の通信装置への影響を最小限に留めることができる。
【0037】
本発明による場合はさらに、動作が異常な通信装置を切断する前に割り込み要求又はリセット要求を送信して自己普及を促すことにより、動作が異常な通信装置による他の通信装置への影響を最小限に留めることができる。また、通信装置の動作が異常ではあるが自己復旧が可能であるにも拘わらず、その機会を与えずに不要に当該通信装置をシステムから切断し、システム全体が当該通信装置なしに動作して機能が低下してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態1及び2では、本発明の通信システムを車輌に配される車載通信システムに適用した例を挙げて説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態1における車載通信システムは、各種物理量の測定値、計算値、制御値等のデータを送受信する車載通信装置1a及び1b,1b,…と、各車載通信装置1a及び1b,1b,…を接続する車内通信回線2と、各車載通信装置1a及び1b,1b,…を接続する車内通信回線2とは異なる信号線3及び信号線4とを備える。
【0040】
車載通信装置1a及び1b,1b,…は車内通信回線2に接続されており、車内通信回線2に送出されたデータを受信し、車内通信回線2へデータを送信することができる。なお、接続形態(トポロジー)バス型、スター型、ディジーチェーン型等、いずれの形態でもよい。車内通信回線2はシリアルバスである。
【0041】
車載通信装置1a及び1b,1b,…は、電子制御装置(ECU)を用いて例えば接続しているセンサが検知した温度、角度、速度等の各種物理量の測定値、計算値、制御値等のデータの送信、又はエンジン、ブレーキ等の各種装置のマイクロコンピュータによる制御が可能である。例えば、車載通信装置1b,1b,…の内の一は、操舵角を検知する図示しないセンサに接続されている。車載通信装置1bは、センサから入力された操舵角の測定値のデータを車内通信回線2へ送信し、他の車載通信装置1a及び1b,1b,…がデータを受信する。
【0042】
車載通信装置1a及び1b,1b,…は、マスタの車載通信装置1aとスレーブの車載通信装置1b,1b,…とに区別されている。実施の形態1における車載通信システムでは、マスタの車載通信装置1aがスレーブの車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定し、異常であると判定した場合はスレーブの車載通信装置1b,1b,…へ信号線3を介して車内通信回線2からの切断要求信号を出力する。
【0043】
なお、実施の形態1においては、マスタの車載通信装置1aは、スレーブの車載通信装置1b,1b,…と信号線4を介して接続されている。車載通信装置1b,1b,…の動作が異常であると判定した場合、車載通信装置1aは、信号線4を介して各車載通信装置1b,1b,…へ自己復旧を促す信号を入力する。
【0044】
車載通信装置1a及び1bは、以下に示す各構成部の動作を制御するCPU等の制御部10a,10bと、各構成部へ電力を供給する電源回路11a,11bと、制御に必要なデータを記憶する記憶部12a,12bと、車内通信回線2との通信を制御する通信制御部13a,13bとを備える。マスタの車載通信装置1aは更に、信号線3と接続する出力部14を備える。一方、スレーブの車載通信装置1b,1b,…は、車内通信回線2と通信制御部13aとの間の接続が切断されるスイッチ回路SWbを更に備えている。
【0045】
次に各構成部について説明する。まずマスタの車載通信装置1aとスレーブの車載通信装置1bとで共通の制御部10a,10b、電源回路11a,11b、記憶部12a,12b及び通信制御部13a,13bについての詳細な説明は、マスタの車載通信装置1aの制御部10a,電源回路11a,記憶部12a及び通信制御部13aを説明することで省略する。
【0046】
制御部10aは、電源回路11aを介して図示しない車輌のバッテリ、オルタネータ等の電力供給装置から電力の供給を受けており、各構成部の動作を制御する。
【0047】
記憶部12aは揮発性のメモリからなり、制御部10aの処理の過程で発生する測定値、計算値、制御値等のデータを一時的に記憶する。
【0048】
通信制御部13aは、ネットワークコントローラチップを有しており、車内通信回線2を介した通信を実現する。制御部10aは、通信制御部13aにより車内通信回線2を介してデータを送受信する。
【0049】
次に、マスタの車載通信装置1aとスレーブの車載通信装置1b,1b,…とで異なる構成部について説明する。
【0050】
スレーブの車載通信装置1bの制御部10bは、NMI割り込み端子、リセット入力端子を備えており、夫々に信号が入力されることによって割り込み処理又はリセット処理が実行される。
【0051】
スレーブの車載通信装置1bの記憶部12bには、自身を他の車載通信装置1b,1b,…と識別するための識別情報を含む判定用データと、判定用データを送信するタイミングが記憶されている。スレーブの車載通信装置1bは、一定期間が経過する都度、判定用データを記憶部12bに記憶してあるタイミングで通信制御部13bにより送信するようにしてある。
【0052】
マスタの車載通信装置1aが更に備える出力部14は信号線3に接続してあり、動作が異常と判定される他の車載通信装置1bを車内通信回線2から切断させるための切断要求信号を信号線3を介して出力する。制御部10aは他の車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定し、異常であると判定した場合、異常であると判定された車載通信装置1bのスイッチ回路SWbへ切断要求信号を出力部14により入力する。
【0053】
また、出力部14は、車載通信装置1b,1b,…の制御部10b,10b,…が備えている割り込み端子、リセット入力端子と信号線4を介して接続してあり、車載通信装置1b,1b,…の制御部10b,10b,…へ割り込み要求信号又はリセット要求信号を入力することが可能である。制御部10aは、車載通信装置1bの動作が異常であると判定した場合、切断要求信号を出力する前に割り込み要求信号を入力し、更に場合によってはリセット要求信号を入力する。
【0054】
スレーブの車載通信装置1bが更に備えるスイッチ回路SWbは、車内通信回線2と通信制御部13bとの間に存在しており、マスタの車載通信装置1aの出力部14から出力される切断要求信号によってスイッチがオフになり、ハードウェア的に車内通信回線2との接続が切断されるように構成されている。
【0055】
次に、マスタである車載通信装置1aの制御部が、車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定する処理について説明する。
【0056】
まず、車載通信装置1bの制御部10bは、夫々の記憶部12bに記憶してあるタイミングで、記憶してある識別情報を含む判定用データを送信する。車載通信装置1aの記憶部12aには、各車載通信装置1b,1b,…毎に送信されるべきタイミングが記憶されている。車載通信装置1aの制御部10aは、各車載通信装置1b,1b,…夫々から送信される識別情報を含む判定用データを通信制御部13aにより受信したタイミングが、各々から送信されるべきタイミングであるか否かを判断する。これにより、車載通信装置1aの制御部10aは、各車載通信装置1b,1b,…夫々から送信される判定用データを受信したタイミングが、各々から送信されるべきタイミングでないと判断した場合、その判定用データに含まれる識別情報に基づいて車載通信装置1b,1b,…のうちのいずれかの動作が異常であることを判定する。
【0057】
例えば、車載通信装置1bの制御部10bは、省電力モードに遷移した場合は判定用データを送信しないように設定されているにも拘らず、判定用データを送信し続けることにより、マスタの車載通信装置1aの制御部10aが判定用データを受信し続けた場合、異常であると判定する。
【0058】
図2は、実施の形態1における車載通信装置1aの制御部10aによる他の車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定する処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
車載通信装置1aの制御部10aは、通信制御部13aにより判定用データを受信したか否かを判断する(ステップS11)。制御部10aは、判定用データを受信していないと判断した場合は(S11:NO)、処理をステップS11へ戻して判定用データを受信したと判断するまで待機する。
【0060】
制御部10aは、判定用データを受信したと判断した場合(S11:YES)、受信した判定用データに含まれる識別情報に基づいて、各車載通信装置1b,1b,…のうちのいずれから送信されたかを特定する(ステップS12)。
【0061】
制御部10aは、ステップS12で特定した車載通信装置1bから送信されるべきタイミングを記憶部12aから読み出し(ステップS13)、ステップS11で判定用データを受信したタイミングが、ステップS13で読み出したタイミングに合致しているか否かを判断する(ステップS14)。制御部10aは、タイミングが合致していないと判断した場合は(S14:NO)、ステップS12で特定した車載通信装置1bの動作が異常であると判定する(ステップS15)。制御部10aは、タイミングが合致していると判断した場合は(S14:YES)、ステップS12で特定した車載通信装置1bの動作は正常であると判定し(ステップS16)、正常/異常を判定する処理を終了する。
【0062】
図2のフローチャートに示した動作の正常/異常を判定する処理では、スレーブの車載通信装置1b,1b,…から送信された判定用データが受信された場合に、その受信のタイミングが各車載通信装置1b,1b,…から送信されるべきタイミングと合致したか否かにより判定した。しかしながら、各車載通信装置1b,1b,…のうちの一の車載通信装置1bから判定用データが送信されるべきであるにも拘らず、その車載通信装置1bから判定用データを受信しない場合に、動作が異常であると判定するようにしてもよい。
【0063】
次に、上述のような判定処理に基づいて異常であると判定した場合の車載通信装置1aの制御部10aによる処理について説明する。図3は、実施の形態1における車載通信装置1aの制御部10aが、他の車載通信装置1bの動作が異常であると判定した場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0064】
車載通信装置1aの制御部10aは、各車載通信装置1b,1b,…の内のいずれかの動作の異常を判定したか否かを判断する(ステップS21)。動作の異常を判定したか否かの判断は、各車載通信装置1b,1b,…から送信された判定用データを受信する都度、図2のフローチャートに示した処理手順を実行することによって判断することができる。また、ステップS21で動作の異常を判定したと判断した場合は、図2のフローチャートに示した処理手順により、動作の異常な車載通信装置1bを特定することができる。
【0065】
制御部10aは、動作の異常を判定していないと判断した場合(S21:NO)、処理をステップS21へ戻して動作の異常を判定したと判断するまで待機し、判定用データを受信する都度、図2のフローチャートに示した処理手順を実行する。
【0066】
制御部10aは、動作の異常を判定したと判断した場合(S21:YES)、動作の異常を判定された車載通信装置1bの制御部10bに、信号線4を介して割り込み要求信号を入力する(ステップS22)。
【0067】
制御部10aは、ステップS22で割り込み要求信号を入力した車載通信装置1bと同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したか否かを判断する(ステップS23)。制御部10aはステップS23において、動作の異常を判定した車載通信装置1bの制御部10bに割り込み要求信号を入力してから所定期間が経過するまでに動作が異常であると判定されるか否かにより、同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したか否かを判断する。所定期間は、車載通信装置1bの制御部10bが割り込み入力を検知した場合に割り込み処理に要する時間よりも長く設定される時間である。
【0068】
制御部10aは、割り込み要求信号を入力後に同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定しなかったと判断した場合(S23:NO)、車載通信装置1bの動作は割り込み処理により自己復旧がなされたので処理を終了する。
【0069】
制御部10aは、同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したと判断した場合(S23:YES)、制御部10bに割り込み要求信号を入力したにも拘らず自己復旧がなされなかったので、車載通信装置1bの制御部10bに更にリセット要求信号を入力する(ステップS24)。
【0070】
制御部10aは、ステップS24でリセット要求信号を入力した車載通信装置1bと同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したか否かを判断する(ステップS25)。制御部10aはステップS25において、ステップS23と同様に、動作の異常を判定した車載通信装置1bの制御部10bにリセット要求信号を入力してから所定期間が経過するまでに動作が異常であると判定されたか否かにより、同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したか否かを判断する。
【0071】
制御部10aは、リセット要求信号を入力後に同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定しなかったと判断した場合(S25:NO)、車載通信装置1bの動作はリセット処理により自己復旧がなされたので処理を終了する。
【0072】
制御部10aは、同一の車載通信装置1bの動作の異常を判定したと判断した場合(S25:YES)、制御部10bにリセット要求信号を入力したにも拘らず自己復旧がなされなかったので、車載通信装置1bへ最終的に切断要求信号を出力し(ステップS26)、当該車載通信装置1bを車内通信回線2から切り離すようにして処理を終了する。
【0073】
図3のフローチャートの処理手順に示したように、マスタの車載通信装置1aの制御部10aは、各車載通信装置1b,1b,…から送信される判定用データのタイミングに基づいて各車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を判定する。マスタの車載通信装置1aの制御部10aは、異常と判定した場合は自己復旧を促すための割り込み要求信号、リセット要求信号を入力した後、さらに異常と判定した場合に初めて車載通信装置1bの車内通信回線2と接続しているスイッチをオフにするための切断要求信号を出力する。
【0074】
これにより、ソフトウェアの処理の動作が異常となり、設定されたタイミングで所定の判定用データを送信できなくなった車載通信装置1bを自己復旧させること、又は車内通信回線2から物理的に切り離すようにすることができる。これにより、他の車載通信装置1b,1b,…、又は車内通信回線2への影響を最小限に留めることができ、一の車載通信装置1bの動作に異常によって過大になる暗電流を抑えることができる。
【0075】
また、一の車載通信装置1aをマスタとして他の車載通信装置1b,1b,…の動作の正常/異常を一元的に判定するようにすることにより、簡易な構成で実現することができると共に、各車載通信装置1b,1b,…から設定された判定用データを定期的に送信させるように構成し、マスタの車載通信装置1aを追加することによって既存のシステムへの導入も容易になる。
【0076】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態2における車載通信システムは、車載通信装置1c,1d,1e,1fと、各車載通信装置1c,1d,1e,1fを接続する車内通信回線2と、各車載通信装置1c,1d,1e,1fを接続する車内通信回線とは異なる信号線3とを備える。
【0077】
車載通信装置1c,1d,1e,1fは、車内通信回線2に接続されており車内通信回線2に送出されたデータを受信し、車内通信回線2へデータを送信することができる。なお、接続形態(トポロジー)バス型、スター型、ディジーチェーン型等、いずれの形態でもよい。車内通信回線2はシリアルバスである。
【0078】
また、車載通信装置1c,1d,1e,1fは、信号線3によって相互に接続されている。図4中の信号線3に付されているアルファベットは、信号の出力元を示している。車載通信装置1cは、信号線3を介して信号を他の車載通信装置1d,1e,1fへ出力し、信号線3を介して他の車載通信装置1d,1e,1fから受信する。
【0079】
車載通信装置1c,1d,1e,1fの基本構成は、実施の形態1における車載通信装置1a及び1bと同様である。ただし、実施の形態2における車載通信装置1c,1d,1e,1fは、マスタ/スレーブの違いはなく、同一の構成である。そこで以下の説明では、車載通信装置1fに注目してその内部構成について説明する。他の車載通信装置1c,1d,1eは、車載通信装置1fと同一の構成であるので詳細な説明を省略する。
【0080】
実施の形態2における車載通信装置1fは、実施の形態1における車載通信装置1a及び1b,1b,…同様に、制御部10f、電源回路11f、記憶部12f、通信制御部13f及びスイッチ回路SWfを備えている。電源回路11f、記憶部12f、通信制御部13fの機能は、実施の形態1における車載通信装置1a及び1b,1b,…における各部の機能と同様である。各車載通信装置1c(1d,1e,1f)の制御部10c(10d,10e,10f)は、電源回路11c(11d,11e,11f)から電力の供給を受けて記憶部12c(12d,12e,12f)に記憶してある判定用データを設定されたタイミングで定期的に送信する。また、各車載通信装置1c(1d,1e,1f)の制御部10c,10d,10e,10fは、他の車載通信装置1c(1d,1e,1f)から送信される判定用データを通信制御部13c(13d,13e,13f)により受信し、判定用データの受信タイミングに基づいて正常/異常の判定を行う。
【0081】
車載通信装置1fは、他に出力部15fを備えている。車載通信装置1fの制御部10fは、他の車載通信装置1c,1d,1eの動作の正常/異常を判定し、判定結果を示す判定結果信号を出力部15fにより出力する。
【0082】
なお、出力部15fから出力される判定結果信号は、「0」が正常を表わし、「1」が異常を表わしている。車載通信装置1fの制御部10fは、他の車載通信装置1c,1d,1eの内の例えば車載通信装置1cの動作が異常であると判定した場合、「1」を示す判定結果信号を出力部15fにより車載通信装置1cへ出力する。
【0083】
また、車載通信装置1fはスイッチ回路SWfに、論理回路LCfを備えている。論理回路LCfは、他の車載通信装置1c,1d,1eから出力される判定結果信号を受信し、車載通信装置1c,1d,1eの内の過半数から動作が異常であると判定された場合に切断要求信号をスイッチに入力するように構成されている。
【0084】
図5は、実施の形態2における車載通信装置1fのスイッチ回路SWfに備えられている論理回路LCfを示す回路図である。図5(a)に論理回路LCfを示し、図5(b)に入力と出力との関係を示す。
【0085】
図5(a)に示すように、論理回路LCfは、NOT回路、AND回路及びOR回路を組み合わせた回路である。他の車載通信装置1c,1d,1e夫々から入力された3つの信号c,d,eを受信し、3つの信号をAND回路に入力した出力と、3つの内いずれか1つをNOT回路で反転してAND回路に入力した3通りの出力との4つの信号を、OR回路に入力するように構成されている。そして、論理回路LCfは、OR回路からの出力結果Rが切断要求信号となるように構成されている。なお、切断要求信号は、「1」を示す場合「切断」することを表わし、スイッチ回路SWfのスイッチに「1」を示す信号が入力された場合、車内通信回線2との接続が切断されるように構成されている。
【0086】
図5(b)は、他の車載通信装置1c,1d,1e夫々から入力された3つの信号c,d,eの入力値と、論理回路LCfによって出力される値Rとの関係を表で表わしている。図5(b)に示すように、各車載通信装置1c,1d,1eの内、過半数から異常であると判定されたことを示す判定結果信号が入力された場合に、出力される値Rは異常であることを表わしている。
【0087】
図6は、実施の形態2における車載通信装置1fの制御部10fによる他の車載通信装置1c,1d,1eの動作の正常/異常を判定し、判定結果信号を出力する処理手順を示すフローチャートである。他の車載通信装置1c,1d,1eの制御部10c,10d,10eが行う処理手順も同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0088】
車載通信装置1fの制御部10fは、他の車載通信装置1c,1d,1eの動作の正常/異常を判定する(ステップS31)。ステップS31における制御部10fの処理は、実施の形態1において図2に示した動作の正常/異常を判定する処理と同様である。車載通信装置1fの制御部10fは、他の車載通信装置1c,1d,1eから通信制御部13fによりデータを受信する都度、正常/異常を判定する。
【0089】
制御部10fは、ステップS31によって判定した結果を示す判定結果信号を出力部15fにより出力し(ステップS32)、処理を終了する。
【0090】
各車載通信装置1c,1d,1e,1fの制御部10c,10d,10e,10fは、図6のフローチャートに示した処理手順を逐次繰り返し、判定結果信号を出力する。
【0091】
このような処理により、車載通信装置1fが送信した判定用データを他の車載通信装置1c,1d,1eが受信し、その受信タイミングに基づいて車載通信装置1fの動作の正常/異常を判定した結果、過半数に異常であると判定された場合、車載通信装置1fのスイッチ回路SWfのスイッチがオフになり、車内通信回線2から物理的に切り離される。
【0092】
過半数の所定数以上の車載通信装置による判定結果により、動作が異常な通信装置自体の誤判定によって判定結果そのものが誤りとなることを防いで正常/異常の判定の精度を上げ、不要に車内通信回線2から車載通信装置が切り離されてしまうことを防止することができる。
【0093】
なお、実施の形態2では、論理回路LCc,…,LCfを、過半数から動作が異常であると判定された場合に切断要求信号をスイッチに入力するように構成した。しかしながら、本発明はこれに限らず、いずれか1つが異常であると判定した場合に切断要求信号をスイッチに入力するように構成してもよいし、他の車載通信装置全部が異常であると判定した場合に切断要求信号をスイッチに入力するように構成してもよい。また、車載通信システムが車載通信装置をさらに多数備えている場合、全車載通信装置が他の車載通信装置の動作の正常/異常を判定する構成とせず、一部の車載通信装置が正常/異常を判定する構成としてもよい。さらに、過半数の車載通信装置が異常と判定した場合に切断要求信号をスイッチに入力するのではなく、いくつかの特定の車載通信装置がいずれも異常と判定した場合は切断要求信号をスイッチに入力するような構成でもよい。
【0094】
なお、実施の形態2では各車載通信装置1c,1d,1e,1fが夫々、論理回路LCc,…,LCfを備える構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、各車載通信装置から出力される判定結果信号を受信し、各々へ切断要求信号を出力する中継装置を車載通信システムに備える構成でもよい。この場合、各車載通信装置は論理回路を備えない。図7は、本発明に係る車載通信システムに中継装置を含む場合の構成を示すブロック図である。図7に示す車載通信システムは、各車載通信装置1g,1h,1i,1jと、車内通信回線2と、信号線3とに加え、中継装置5を備えている。
【0095】
車載通信装置1gは、制御部10gと、電源回路11gと、記憶部12gと、通信制御部13gと、スイッチ回路SWgと、出力部15gとを備えている。他の車載通信装置1h,1i,1jも、車載通信装置1gと同一の構成であるため説明を省略する。
【0096】
なお、この場合出力部15gは、実施の形態2における車載通信装置1fが備える出力部15fと同様の機能を有し、制御部10gは出力部15gを介して判定結果信号を出力する。
【0097】
また、この場合スイッチ回路SWgは、実施の形態1におけるスレーブの車載通信装置1b,1b,…が備えるスイッチ回路SWbと同様の構成であり、入力される切断要求信号によってスイッチがオフになり、ハードウェア的に車内通信回線2との接続が切断されうように構成されている。
【0098】
中継装置5は、論理回路LCを備えている。論理回路LCは車載通信装置1h,1i,1jから出力される車載通信装置1gの動作の判定結果信号を受信して結果を切断要求信号として出力する論理回路と、車載通信装置1g,1i,1jから出力される車載通信装置1hの動作の判定結果信号を受信して結果を切断要求信号として出力する論理回路と、車載通信装置1g,1h,1jから出力される車載通信装置1iの動作の判定結果信号を受信して結果を切断要求信号として出力する論理回路と、車載通信装置1g,1h,1iから出力される車載通信装置1jの動作の判定結果信号を受信して結果を切断要求信号として出力する論理回路とを夫々含んで構成されている。
【0099】
論理回路は夫々、実施の形態2において各車載通信装置1c,1d,1e,1fがスイッチ回路SWc,SWd,SWe,SWfに備えたLCc,LCd,LCe,LCfと同様の構成である。
【0100】
各車載通信装置1g,1h,1i,1jから出力される判定結果信号を中継装置5の論理回路LCに入力するように信号線3により接続する。また、中継装置5の論理回路LCから出力される切断要求信号を、各車載通信装置1g,1h,1i,1jが備えるスイッチ回路SWc,SWd,SWe,SWfに入力するように信号線3により接続する。
【0101】
このように中継装置5を備える構成とすることにより、車載通信装置1g,1h,1i,1j夫々に論理回路を備えずとも、実施の形態2と同様の効果を奏する。この場合、配設される信号線3を省線化することができる。
【0102】
さらに、車載通信システムが中継装置を備える場合、判定結果は中継装置に集約されるので、中継装置に実施の形態1におけるマスタの車載通信システム1aの機能を備える構成としてもよい。この場合、中継装置5は、出力部14を備えて信号線4を介して各車載通信装置1g,1h,1i,1jの各制御部10g,10h,10i,10jへ割り込み要求信号又はリセット要求信号を入力することができるように構成する。中継装置5は、制御部を備えることにより、論理回路LCによる判定結果をそのまま出力する前に一度自身に入力するようにする。そして、中継装置5の制御部は判定結果の正常/異常を識別して異常であると判定した場合、切断要求信号を出力する前に、異常と判定された車載通信装置の制御部に割り込み要求信号を入力し、その後なお異常であると判定した場合に、異常と判定された車載通信装置の制御部にリセット要求信号を入力する。その後なお、当該車載通信装置の動作が異常であるを判定した場合に初めて、中継装置5の制御部が切断要求信号を出力する構成でもよい。
【0103】
なお、実施の形態2における論理回路LCc,LCd,LCe,LCfの構成は夫々、図5の回路図に示したように、3つの装置から出力された判定結果信号をAND回路に入力した出力、及び、一の信号をNOT回路に入力し、反転させてAND回路に入力した出力をOR回路に入力した出力を切断要求信号とする構成とした。過半数の装置が異常であると判定した場合に、切断要求信号によってスイッチをオフにするためである。しかしながら、本発明の論理回路は図5の回路図に示した構成とは限らない。例えば他の車載通信装置から出力された全判定結果信号を夫々受信するように構成し、一の車載通信装置からの動作の異常を表わす判定結果信号を受信する都度カウントし、カウントに桁あふれが発生した場合に異常と判定して、スイッチをオフにする切断要求信号を出力するような構成としてもよい。
【0104】
なお、実施の形態1及び2では、各車載通信装置が判定用データを定期的に送信し、他の車載通信装置が判定用データを受信して、受信タイミングに基づいて送信元の車載通信装置の動作の正常/異常を判定する構成とした。しかしながら、他の車載通信装置のソフトウェアによる動作の異常を検知することができれば、この構成に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施の形態1における車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における車載通信装置の制御部による他の車載通信装置の動作の正常/異常を判定する処理手順を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1における車載通信装置の制御部が、他の車載通信装置1bの動作が異常であると判定した場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2における車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態2における車載通信装置のスイッチ回路に備えられている論理回路を示す回路図である。
【図6】実施の形態2における車載通信装置の制御部による他の車載通信装置の動作の正常/異常を判定し、判定結果信号を出力する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る車載通信システムに中継装置を含む場合の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0106】
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j 車載通信装置
10a,10b,…,1f,1g,… 制御部
13a,13b,…,13f,13g,13h,13i,13j 通信制御部
14 出力部
15f,15g,15h,15i,15j 出力部
SWb,…,SWf,SWg,SWh,SWi,SWj スイッチ回路
LCf,LC 論理回路
2 車内通信回線
3,4 信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、
各通信装置は、
入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、
他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、
該判定手段により異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力する切断要求出力手段と
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、
一の通信装置は、
他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、
該判定手段により異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力する切断要求出力手段と
を備え、
他の通信装置は、
入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項3】
各通信装置に接続されており、前記通信回線と異なる信号線を備え、
前記切断要求出力手段は、前記信号線を介して切断要求信号を出力するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムにおいて、
各通信装置は、
前記通信回線と異なる信号線に接続する手段と、
入力された切断要求信号により前記通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、
他の通信装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、
該判定手段によって判定された正常/異常を示す判定結果信号を前記信号線へ出力する手段と
を備え、
各通信装置から出力される判定結果信号を受信し、所定数以上の通信装置から出力された判定結果信号が異常を示す場合に切断要求信号を出力するように構成された論理回路
を備えること
を特徴とする通信システム。
【請求項5】
前記論理回路は、各通信装置に備えられていること
を特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記信号線に接続されており、前記論理回路を含み前記各通信装置間を中継する中継装置を備えること
を特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項7】
各通信装置は、
所定期間が経過する都度、他の通信装置へ前記通信回線を介して所定のデータを送信する手段と、
他の通信装置から送信された前記所定のデータを受信する手段と
を備え、
前記判定手段は、
一の通信装置から送信された前記所定のデータが所定条件を満たすか否かを判断する判断手段を備え、
前記一の通信装置からのデータが所定条件を満たさないと判断した場合に、異常であると判定するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の通信システム。
【請求項8】
各通信装置は、
割り込み要求を受け付ける割込受付手段と、
前記判定手段が異常と判定した場合に、割り込み要求を送信する割込要求送信手段と
を備え、
動作が異常と判断された他の通信装置へ前記切断要求出力手段により切断要求信号を出力する前に、前記割込要求送信手段により割り込み要求を送信するようにしてあること
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の通信システム。
【請求項9】
各通信装置は、
リセット要求を受け付けるリセット受付手段と、
前記判定手段が異常と判定した場合に、リセット要求を送信するリセット要求送信手段と
を備え、
動作が異常と判断された他の通信装置へ前記割込要求送信手段により割り込み要求を送信した後に、前記他の通信装置の動作が異常と判定された場合、前記リセット要求送信手段によりリセット要求を送信し、
前記切断要求出力手段は、リセット要求を出力した後更に前記他の通信装置の動作が異常と判定された場合に切断要求信号を出力するようにしてあること
を特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
通信回線に接続する接続手段と、前記通信回線を介してデータを送受信する手段とを備える通信装置において、
入力された切断要求信号により前記接続手段の通信回線への接続を切断するスイッチ手段と、
外部装置の動作の正常/異常を判定する判定手段と、
該判定手段により異常と判定された場合に前記外部装置へ切断要求信号を出力する手段と
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項11】
前記判定手段により判定された正常/異常を示す判定結果信号を出力する手段と、
外部装置から出力された判定結果信号を夫々受信する手段と、
所定数以上の外部装置から受信した判定結果信号が異常を示す場合に、前記スイッチ手段へ切断要求信号を入力するように構成された論理回路と
を備えることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項12】
データを送受信する複数の通信装置と、該通信装置を接続する通信回線とを含む通信システムで各通信装置の動作を監視する通信方法において、
入力された切断要求信号により通信回線への接続を切断するスイッチ手段を各通信装置に備えて用い、
各通信装置は、他の通信装置の動作の正常/異常を判定し、
異常と判定された場合に前記他の通信装置へ切断要求信号を出力すること
を特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−278246(P2008−278246A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119987(P2007−119987)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】