説明

通信システム及び通信方法

【課題】不揮発性であって、作製工程が簡単であり、追記が可能な記憶回路およびアンテ
ナを有する半導体装置及びその作製方法の提供を課題とし、さらに不本意な無線チップの
情報の書き換え防止や、無線チップ自体の偽造防止を図り、無線チップのセキュリティの
確保を課題とする。
【解決手段】無線通信信号により情報確認が可能なICタグであり、且つ、ICタグのメ
モリ(書き換え不可能なメモリ)の情報確認が光学読み取り装置でも可能とすることを特
徴とする。本発明のICタグのメモリには情報確認が光学読み取り装置で可能な識別面を
有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、商品、或いは人物の識別や管理を行うためのアンテナ及びメモリーを
有する集積回路、代表的には無線ICタグに関する。例えば、無線ICタグとその関連商
品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を識別するものとしてバーコードがある。このバーコードは、フレキソ印刷(ゴム
製の凸版やフレキシブルな合成樹脂製の凸版を用いた印刷)、オフセット印刷、グラビア
印刷などの印刷法により、直接物品に印刷したり、或いは一旦ラベルに印刷した後に物品
に貼着している。バーコードを用いれば、バーコードリーダーとも呼ばれる光学読み取り
機でバーコードのデータ(価格や商品名)を読み取り、そのデータをもとに販売量や、在
庫、物流を管理することができる。しかしながら、バーコードは、情報面、機能面におい
て、桁数が少ない、セキュリティがない等の問題がある。
【0003】
また、近年では、バーコードに代えて、無線によるデータの送受信が可能な半導体装置
、代表的には、無線チップ(IDタグ、ICタグ、ICチップ、RF(Radio Fr
equency)タグ、無線タグ、電子タグ、RFID(Radio Frequenc
y Identification)ともよばれる)と呼ばれるものを物品に実装し、各
種の情報を記録して物品の管理や物流の合理化或いは商品情報の管理を行うことが試みら
れている。しかしながら、無線チップの情報を把握するには、アンテナを有するリーダラ
イタで交信する必要があり、リーダライタが無い場合は情報を知ることができず、不便な
面がある。また、無線チップ管理者に無断で無線チップの情報が書き換えられる恐れや、
無線チップ自体が偽造される恐れもあり、セキュリティがない問題がある。また、何らか
の事情によってICタグが破損した場合は、情報自体が失われるか、読み取りできなくな
るという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体基板上に集積回路とアンテナを設けることにより、無線によるデータの送受
信が可能な半導体装置の開発が進められている。従来の無線チップは、メモリを有してお
らず、無線チップが存在するかどうかの有無の識別しかできなかった。
【0005】
半導体基板上に集積する回路として、データを記憶する記憶回路(単にメモリともよぶ)
を設けると、より高機能で、付加価値が高い半導体装置を提供することができる。
【0006】
本発明は、不揮発性であって、作製工程が簡単であり、追記が可能な記憶回路およびア
ンテナを有する半導体装置及びその作製方法の提供を課題とし、さらに不本意な無線チッ
プの情報の書き換え防止や、無線チップ自体の偽造防止を図り、無線チップのセキュリテ
ィの確保を課題とする。
【0007】
また、店などで商品に無線チップを使用する場合には、無線チップとは別に、視覚で確
認できる表示札やラベルを添付することになるが、無線チップと表示札やラベルは別々に
添付されるものなので、無線チップが壊れたり、一方がはがれたり、他のものと付け替え
られたりすると、相互の情報が不一致となりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、無線通信信号により情報確認が可能なICタグであり、且つ、IC
タグのメモリ(書き換え不可能なメモリ)の情報確認が光学読み取り装置でも可能とする
ことを特徴とする。本発明のICタグのメモリには情報確認が光学読み取り装置で可能な
識別面を有している。
【0009】
従来の半導体基板を用いたメモリは電気信号で読み取るタイプであり、光学読み取り装
置では読み取ることはなかった。既に知られているメモリとしては、DRAM、SRAM
、FeRAM、マスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリなどが挙げ
られる。このうち、DRAM、SRAMは揮発性の記憶回路であり、電源をオフするとデ
ータが消去されてしまうため、電源をオンにする度にデータを書き込む必要がある。Fe
RAMは不揮発性の記憶回路であるが、強誘電体層を含む容量素子を用いているため、作
製工程が増加してしまう。また、マスクROMは、簡単な構造であるが、製造工程でデー
タを書き込む必要があり、追記することはできない。また、EPROM、EEPROM、
フラッシュメモリは、不揮発性の記憶回路ではあるが、2つのゲート電極を含む素子を用
いているため、作製工程が増加してしまうといった問題があった。
【0010】
本発明は、半導体基板を用いず、TFTを用いてメモリなどの様々な回路を形成するこ
とを特徴としている。TFTを用いることによって、半導体基板を用いた場合に比べて製
造コストを大幅に削減することができる。また、半導体基板を用いた場合に比べて、IC
タグの基材上にTFTを形成することができるため、密着性がよい。半導体基板を用いた
場合、ICタグの基材とアンテナとICチップとを接続および接着することが困難であっ
た。加えて、半導体基板を用いたICタグは、外力により曲げられた時にそれぞれの接続
部分および接着部分が破壊しやすい欠点があった。TFTを用いれば、外力による曲げに
も強く、さらに半導体基板よりもICタグ全体を薄くすることができる。
【0011】
本発明のICタグは、アンテナと、情報確認が光学読み取り装置でも可能なメモリと、
アンテナとメモリとを接続する導電回路とを有している。アンテナはメモリへの情報デー
タの書き込み記録や、記録した情報データをメモリから読み取る動作電力を供給するため
の誘導起電力を発生させる。
【0012】
本発明により、異なる確認手段、例えば無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段
との両方で情報を照合し、一致することを確認することで読み取りエラーをなくすことが
できる。また、光学読み取り装置を使用しなくともメモリの識別面の書き込み情報の有無
を視認でも可能とすれば、情報書き込み済みのICタグと、情報書き込みがなされていな
いICタグとを簡単に視認で確認ができる。
【0013】
また、メモリの識別面に文字や数字や記号やバーコードなどを表示できるようにしてもよ
い。なお、メモリの識別面はディスプレイではなく、情報を書き込むことによってメモリ
の識別面の一部の光学的特性を変化させ、照射された光の反射光により模様のようなパタ
ーンとして表示するものである。従って、光学読み取り装置としてCCDなどの撮像手段
を用いれば、CCDでパターン画像を取り込み、その画像を解析することによってメモリ
の情報識別および情報の読み取りを行うこともできる。
【0014】
ICタグは、情報端末機(パーソナルコンピュータなど)に接続した書き込み記録や読
み取りができる手段(リーダライター)のヘッド部に接触または所定間隔を保持して対峙
させ、リーダライタ側のアンテナから発振する情報に基づく所定周波数の電波により、I
Cタグ側のアンテナに誘導起電力を発生させ、該アンテナに接続された回路により書き込
み信号または読み取り信号を発生させる。そして、誘導起電力による書き込み信号により
メモリにデータが記録され、誘導起電力による読み取り信号によりメモリに記録されてい
る情報が読み取られる。
【0015】
リーダライタによって、書き込みと読み取りの両方が可能であってもよいが、本発明に
おいては、情報の改ざんや不正使用を防止するため、メモリのビット線とワード線との間
の材料層を不可逆的に相変化する有機材料または無機材料とし、メモリへの書き込みは1
回とする。本発明のメモリ(記憶素子)の材料層に用いる有機材料または無機材料は、書
き込み時に相変化して電気抵抗率及び光学的特性が変化する。光学的特性の変化は、情報
の書き込み前後において、メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれた材料が不透明のア
モルファス状態から透明な結晶状態に変化する。
【0016】
メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれる不可逆的に相変化する材料層として用いる
ことのできる無機材料は、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する無機材料、例えば、テ
ルル(Te)、酸化テルル(TeOx)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びビス
マス(Bi)から選択された複数を有する材料が挙げられる。
【0017】
また、メモリ(記憶素子)の2つの電極に挟まれる材料層としては、無機材料と有機材料
の混合層、例えば金属酸化物(モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物
、コバルト酸化物、銅酸化物等)と有機化合物とを含む材料層を用いることもでき、この
材料層を2つの電極に挟まれる積層の少なくとも一層としてもよい。
【0018】
なお、ICタグへの情報の書き込みは、ICタグを物品に取り付ける前でもよいし、取り
付け後でもよい。
【0019】
メモリに光で情報データの書き込みを行う場合、その波長とは異なる波長の光を識別面を
有するメモリに照射して反射光を読み取るセンサを用いて、メモリの情報データの読み取
りを行う。
【0020】
また、無線通信信号のみを用いれば、まとめて情報を読み取り、情報端末機に記録する
こともできる。また、情報の改ざんや不正使用を防止するのであれば、物品の流通におい
て少なくとも2回、具体的にはICタグへの情報の書き込みを行った直後と、最後にIC
タグから情報を読み取る時だけ照合すればよい。
【0021】
本明細書で開示する発明の構成は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメ
モリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、 前記メモリセルアレイは、
第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード
線とを有し、前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、
前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、前記メモリは、記録され
た情報を光学読み取り手段により読み取る識別面を有することを特徴とする半導体装置で
ある。
【0022】
また、上記構成に加えて、前記メモリに記憶されたデータを無線信号により読み取られ
た第1のデータと前記メモリの識別面から光学読み取り手段により得られた第2のデータ
とを照合する照合手段を有することを特徴としている。照合手段により読み取りエラーを
低減できる。
【0023】
また、光学読み取り手段と無線信号による読み取り手段とに限定されず、他の発明の構
成は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御す
る回路と、アンテナとを有し、前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線
と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、前記ビット線と前
記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、前記ビット線と前記ワード線の
一方または両方は透光性を有し、前記メモリは、記録された同一の情報を複数の異なる読
み取り手段により読み取られることを特徴とする半導体装置である。
【0024】
また、上記各構成において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態
にのみ相変化し、前記ビット線と前記ワード線との間の電気抵抗が変化することを特徴と
している。このような特徴を有する構造とすることで、メモリへの書き込みは1回として
、情報の改ざんや不正使用を防止する。
【0025】
また、上記各構成において、前記材料層は、光の照射により第1の状態から第2の状態
にのみ相変化し、前記識別面で相変化が読み取れることを特徴としている。このような特
徴を有する構造とすることで、情報書き込み済みかどうかを簡単に識別することができる

【0026】
また、上記各構成において、前記メモリを制御する回路は、薄膜トランジスタを有して
いることを特徴としている。このような特徴を有する構造とすることで、曲げに強い半導
体装置とすることができる。また、ペンタセンなどの有機材料を用いた薄膜トランジスタ
を用いてもよい。
【0027】
また、上記各構成において、前記半導体装置は、前記アンテナと接続する回路を有し、
該回路は薄膜トランジスタを有していることを特徴としている。このような特徴を有する
構造とすることで、前記メモリを制御する回路と前記アンテナと接続する回路とを同一工
程で作製することができる。
【0028】
また、上記各構成において、前記メモリを制御する回路と、前記アンテナと接続する回
路は、同一基材上に形成されていることを特徴としている。このような特徴を有する構造
とすることで、大面積基板を用いて大量生産を行い、1個あたりの単価を下げることがで
きる。
【0029】
また、上記各構成において、前記半導体装置は、基材と封止材とで密封されており、識
別面を識別するため、前記基材と前記封止材の一方または両方は透光性を有していること
を特徴としている。また、前記半導体装置は、透光性を有する積層フィルムで密封包装さ
れていてもよい。
また、上記格構成において、前記半導体装置は、基材と封止材とで狭持されており、前記
基材及び前記封止材は、樹脂を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明により、光学的作用と電気的作用の両方によるデータの書き込みと、光学読み取
り装置と電気信号読み取り装置の両方によるデータの読み取りとを可能とする記憶回路を
備えた半導体装置を実現できる。
【0031】
また、本発明により、ICタグの偽造防止、セキュリティの向上を図ることができる。
本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの書き込
みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記のみが可能である。従って、書き
換えによる偽造を防止することができ、且つ、新たなデータを追加して書き込むことがで
きる。つまり、本発明は、書き換え不可の記憶回路を有する半導体装置を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の半導体装置の上面図および断面図。
【図2】本発明の半導体装置の上面図および断面図。
【図3】本発明の半導体装置の等価回路図。
【図4】本発明の半導体装置のブロック図。
【図5】本発明の半導体装置の記憶部における上面図および断面図。
【図6】本発明の半導体装置の記憶部における等価回路図。
【図7】レーザ照射装置を説明する図。
【図8】電圧が印加された記憶素子の一部の写真図である。
【図9】電圧印加前後での記憶素子の反射スペクトルを示すグラフである。
【図10】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図11】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図12】電圧印加後の記憶素子の断面TEM写真を示す図。
【図13】電圧印加後の記憶素子の断面TEM写真を示す図。
【図14】記憶素子の電流電圧特性を示す図。
【図15】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0034】
(実施の形態1)
非接触でデータを送受信する機能を有する本発明の半導体装置の一例を図1(A)およ
び図1(B)に示す。なお、図1(A)は、本発明の半導体装置の上面図を指しており、
図1(B)は図1(A)に対応する側面図の模式図である。
【0035】
図1(A)に示す本発明の半導体装置は、同一基材101上に複数の回路(記憶部とデー
タ送受信部)が集積された構成を有している。記憶部とデータ送受信部は隣り合うように
配置され、ノイズの重畳や、回路間における相互作用を低減している。記憶部は、識別面
を有するメモリセルアレイ103aと、デコーダ回路104、105と、セレクタ回路1
06と、読み取り及び書き込み回路107とを少なくとも有している。また、データ送受
信部は、アンテナ102と、該アンテナに接続する集積回路108とを少なくとも有して
いる。アンテナ102は印刷法によって形成してもよいし、フォトリソ法を用いて集積回
路の配線と同一工程で作成してもよい。
【0036】
また、デコーダ回路104、105と、セレクタ回路106と、読み取り及び書き込み
回路107と、アンテナに接続する集積回路108は、TFTで構成されており、同一工
程で同一基材上に作製することができる。
【0037】
また、図1(A)に示す半導体装置の上面図は、データを書き込む前のものであり、識
別面を有するメモリセルアレイ103aは、識別面全体が一様となっている。
【0038】
続いて、データの書き込みを行う際の動作について図1(C)および図1(D)を用い
て説明する。図1(A)に示す半導体装置に光を照射してメモリセルアレイに書き込むと
、図1(C)に示すように照射された部分が変化して、ある模様パターン109の識別面
を有するメモリセルアレイ103bとなる。
【0039】
光学的作用によりデータを書き込む際の側面図を図1(D)に示す。図1(D)に示す
ように、メモリに光を照射する書き込み手段(ライター)110と、該書き込み手段11
0を制御する制御手段111とによって、メモリセルアレイに対して光を選択的に照射し
、ある模様パターン109の識別面を得る。
【0040】
メモリセルアレイは、記憶素子を有するメモリセルがマトリクス状に設けられたもので
あり、その記憶素子は、ビット線を構成する第1の導電層と、ワード線を構成する第2の
導電層と、第1の導電層と第2の導電層の間に設けられた有機化合物層を有する。TFT
と記憶素子とが両方1つの領域に設けられ、マトリクス状に配置されている場合において
は、メモリセルとは記憶素子とTFTとを含めたものを指す。また、記憶素子のみが1つ
の領域に設けられてマトリクス状に配置されている場合においては、メモリセルとは記憶
素子のみを指す。
【0041】
レーザー光などの光を透光性を有する第2の導電層を通過させて有機化合物層に照射する
と、レーザ光の照射により、有機化合物層が相変化もしくは破壊されて、結果的に記憶素
子の光学特性または電気抵抗が変化する。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を
「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、記憶素子にレーザ光を照射
して光学特性を変える、もしくは電気抵抗を変えればよい。
【0042】
例えば、有機化合物層の材料やレーザ光の強度を調整することにより、アモルファス状態
で不透明であった有機化合物層は、レーザー光の照射により結晶化して透光性を有する材
料に変化させることができる。また、レーザ光を照射して、有機化合物層を絶縁化するこ
とによりデータの書き込みを行ってもよい。
【0043】
また、有機化合物層として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤
)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部分の導電
率が増加し、未照射の部分は導電しない。この場合も、選択された有機化合物層にレーザ
光を照射することにより、記憶素子の抵抗値が変化することを利用してデータの書き込み
を行う。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1
」のデータを書き込む際は、選択された記憶素子にレーザ光を照射して導電率を増加させ
る。
【0044】
また、光を照射する書き込み手段110に代えて、電気信号による書き込み手段112
を用いてもよい。この場合、電気信号による書き込み手段112と、電気信号による書き
込み手段112を制御する制御手段113により、アンテナ102に対して電気信号を送
受信させ、ある模様パターンの識別面を得る。この模様パターンの存在が人間の目で識別
できれば、メモリに書き込みがされているかどうかを判別することができる。また、模様
パターンをバーコードのように光学式に読み取りやすく符号化したものとしてもよい。
【0045】
また、光を照射する書き込み手段110に加えて、電気信号による書き込み手段112
の両方を用いて同一のデータをメモリに書き込みを行って書き込みエラーを防止してもよ
い。
【0046】
また、図1(C)では分かりやすいように模様パターンの識別面を示したが、人間の目
で識別できる必要はなく、ある波長の光を用いた光読み取り装置を用いて識別できる模様
パターンとしてもよい。
【0047】
続いて、データの読み取りを行う際の動作について図1(E)および図1(F)を用いて
説明する。
【0048】
データの読み取りは、第1の導電層と第2の導電層の間に電圧を印加して、記憶素子の抵
抗値を読み取る電気信号読み取り装置115と、光を照射して模様パターンを読み取る光
学読み取り装置114の両方により行う。同時に情報の読み取りを行ってもよいし、個別
に情報の読み取りを行ってもよい。光学読み取り装置114としてはイメージスキャナや
CCDカメラなどの撮像装置を用いることができる。電気信号読み取り装置115として
は、アンテナを有するリードライターを用いることができる。
【0049】
光学的作用や電気的作用の印加によりメモリにデータの書き込みを行った場合、光学的
作用や電気的作用を加えていない透光率と、光学的作用や電気的作用を加えた記憶素子の
透光率は異なる値となる。このような光学特性の相違による模様を光学的に読み取ること
により、データの読み取りを行う。
【0050】
可視光での視認でメモリの模様が確認できるのであれば、メモリにデータが書き込まれ
ているかどうかの確認ができる。従来のメモリは、光学読み取り装置や人間の目でデータ
の確認はできなかった。
【0051】
また、光学的作用や電気的作用の印加によりメモリにデータの書き込みを行った場合、光
学的作用や電気的作用を加えていない記憶素子の抵抗値と、光学的作用や電気的作用を加
えた記憶素子の抵抗値は異なる値となる。このような抵抗値の相違を電気的に読み取るこ
とにより、データの読み取りを行う。
【0052】
方式の異なる2つの読み取り装置で得られたデータは照合手段116によって照合が行わ
れ、その照合結果は、情報端末117に送られ、確認が可能となる。本発明により読み取
りエラーを低減できる。なお、情報端末117と照合手段116との接続は、配線コード
で接続されていてもよいし、通信によってデータのやりとりを行ってもよい。
【0053】
また、書き込み装置(ライター)と、読み取り装置(リーダー)とがあるが、両者を1
個の装置にまとめて、いわゆるリードライターの構成にしたものを用いてもよい。
【0054】
また、メモリの模様の一部を人間の目で文字や数字が判別できるものとすれば、無線チ
ップとは別に、視覚で確認できる表示札やラベルを添付する必要がなくなる。
【0055】
また、本発明において、メモリとアンテナは同一基板上に形成されており、一方がはが
れたり、他のものと付け替えられたりする恐れはない。さらに、電気的に接続しているた
め、切り離すことも困難である。また、メモリは有機化合物を用いており、偽造するため
分解して構造を知ろうとしても有機化合物は酸素などの大気に触れると変質しやすく、メ
モリに使用している有機化合物を特定するのは困難なため、偽造防止を図ることができる

【0056】
(実施の形態2)
本発明の半導体装置は、複数の回路が集積された構成を有し、複数の薄膜トランジスタ
を含む層と、複数の記憶素子を含む層が順に積層された構成を有する。また、複数の記憶
素子を含む層の周囲の位置と重なる箇所に、アンテナとして機能する導電層が設けられた
封止フィルムで記憶素子を封止した構成を有する。
【0057】
図2(A)に上面図の一例を示す。記憶部は、識別面を有するメモリセルアレイ203と
、デコーダ回路204、205と、セレクタ回路206と、読み取り及び書き込み回路2
07とを少なくとも有している。また、データ送受信部は、アンテナに接続する集積回路
208とを少なくとも有している。これらの回路は、同一基材上に形成しているが、アン
テナ202は、封止フィルムに設けてあり、導電性微粒子で集積回路208と接続してい
る。
【0058】
また、本発明の半導体装置の断面構造の一例について図2(B)を用いて説明する。ま
た、図2(A)または図2(B)に対応する等価回路図を図3に示す。
【0059】
同一基材上には、マトリクス状にTFTが配置された記憶部が設けられている。また、記
憶部周辺に設けられる集積回路もTFTなどの半導体素子で構成され、図2(B)では代
表的に用いられることの多いCMOS回路(nチャネル型TFT211aとpチャネル型
TFT211bとを相補的に組み合わせた回路)を示している。CMOS回路とは、少な
くとも一つのnチャネル型TFTと一つのpチャネル型TFTとを有する回路(インバー
タ回路、NAND回路、AND回路、NOR回路、OR回路、シフトレジスタ回路、サン
プリング回路、D/Aコンバータ回路、A/Dコンバータ回路、ラッチ回路、バッファ回
路など)を指している。また、配線212cによって他の回路と接続を行っている。
【0060】
各TFT210a、210b、211a、211bは第1の層間絶縁膜214を有してい
る。また、各TFTを覆うように第2の絶縁層215が設けられ、該第2の絶縁層上に複
数の記憶素子が設けられている。図2(B)ではデータが書き込まれていない記憶素子と
データが書き込まれている記憶素子の2つを図示している。
【0061】
記憶部にマトリクス状に配置されている記憶素子221は、ビット線Bx(1≦x≦m)
を構成する第1の導電層212aと、ワード線Wy(1≦y≦n)を構成する第2の導電
層214aと、第1の導電層212aと第2の導電層214aの間に設けられた有機化合
物層213aを有する。隣接する有機化合物層213aの間には、隔壁216が設けられ
る。また、第1の導電層212aと第2の導電層214aはストライプ状に、互いに交差
するように設けられている。
【0062】
また、データの書き込みを光学的作用により行った記憶素子も図2(B)に示している
。データの書き込みを光学的作用により行う場合、第1の導電層212aと第2の導電層
214aのうち、一方又は両方は透光性を有することが必要である。透光性を有する導電
層は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明な導電性材料を用いて形成するか、又は、
透明な導電性材料でなくても、光を透過する厚さで形成する。
【0063】
データの書き込みを光学的作用により行った場合、データが書き込まれた記憶素子の有機
化合物層213bの光学的特性は、データの書き込み前の有機化合物層213aと異なっ
ており、メモリセルアレイ203の識別面に模様となって現れる。
【0064】
また、ビット線を構成する第1の導電層212bと、ワード線を構成する第2の導電層2
14bとの電極間で電気的に短絡させた状態を記憶素子へのデータの書き込みとしてもよ
い。一対の電極間で電気的に短絡させる場合には、先にpチャネル型TFT210bが電
気的に短絡してしまわないようにマルチゲート構造とすることが好ましい。
【0065】
また、記憶素子や回路は、信頼性を向上させるため、保護膜で覆ってもよい。
【0066】
また、記憶素子や回路は、接着層217によって封止板218で封止されている。封止
板218には予めアンテナ202が印刷されており、基材201上に設けられた配線と導
通するように接続されている。また、アンテナ202の位置は、該アンテナと接続する集
積回路208と一部重なってもよい。
【0067】
また、データの書き込みや読み取りを光学的作用により行う場合、少なくともデータの
書き込みや読み取りを行う側に設けられている部材の材料は透光性とする。例えば、封止
板側から光学的作用によりデータの書き込みや読み取りを行う場合、封止板の材料、接着
層217の材料、第2の導電層214a、214bの材料は透光性を有する材料を用いる
。また、基材側から光学的作用によりデータの書き込みや読み取りを行う場合、基材の材
料、第1の層間絶縁層の材料、第2の層間絶縁層の材料、第1の導電層の材料は透光性を
有する材料を用いる。
【0068】
上記構成を有する半導体装置において、記憶素子221は、一対の導電層(第1の導電層
と第2の導電層)間に有機化合物層が挟まれた単純な構造を有することを特徴とする。上
記特徴により、作製が簡単であるために安価な半導体装置及びその作製方法を提供するこ
とができる。また、高集積化が容易なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置及びそ
の作製方法を提供することができる。
【0069】
なお、記憶素子の構成によっては、複数の記憶素子を含む層に対して、レーザ光を用いた
光学的作用によりデータの書き込みを行う場合がある。そのような場合、複数の記憶素子
を含む層と、基板上の導電層とが重ならないようにする。
【0070】
また、本発明の半導体装置は、単結晶半導体層をチャネル部とした複数の電界効果トラン
ジスタを含む層上に、複数の記憶素子を含む層を積層した構成を有することを特徴とし、
上記特徴により、小型な半導体装置を提供することができる。
【0071】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの
書き込みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記が可能であることを特徴と
する。上記特徴により、書き換えによる偽造を防止することができ、新たなデータを追加
して書き込むことができる。従って、高機能化と高付加価値化を実現した半導体装置及び
その作製方法を提供することができる。
【0072】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本
発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタ
ガ型TFTに適用することが可能である。
【0073】
また、本発明は図2(B)のTFT構造に限定されず、必要があればチャネル形成領域
とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域を有する低濃度ドレイン(LD
D:Lightly Doped Drain)構造としてもよい。この構造はチャネル
形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領域またはドレイン領域との
間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、この領域をLDD領域と呼
んでいる。さらにゲート絶縁膜を介してLDD領域をゲート電極と重ねて配置させた、い
わゆるGOLD(Gate−drain Overlapped LDD)構造としても
よい。
【0074】
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0075】
(実施の形態3)
本発明の半導体装置のブロック図を図4に示す。
【0076】
図4中の点線で囲まれた本発明の半導体装置20は、非接触でデータを交信する機能を
有し、電源回路11、クロック発生回路12、データ復調/変調回路13、他の回路を制
御する制御回路14、インターフェイス回路15、記憶回路16、データバス17、アン
テナ(アンテナコイル)18を有する。
【0077】
電源回路11は、アンテナ18から入力された交流信号を基に、半導体装置20の内部の
各回路に供給する各種電源を生成する回路である。クロック発生回路12は、アンテナ1
8から入力された交流信号を基に、半導体装置20の内部の各回路に供給する各種クロッ
ク信号を生成する回路である。データ復調/変調回路13は、電気的リードライタ19a
と交信するデータを復調/変調する機能を有する。制御回路14は、記憶回路16を制御
する機能を有する。アンテナ18は、電磁界或いは電波の送受信を行う機能を有する。電
気的リードライタ19aは、半導体装置との交信、制御及びそのデータに関する処理を制
御する。なお、半導体装置は上記構成に制約されず、例えば、電源電圧のリミッタ回路や
暗号処理専用ハードウエアといった他の要素を追加した構成であってもよい。
【0078】
記憶回路16は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた記憶素子を有することを特徴
とする。有機化合物層が挟まれた記憶素子は、光学的リードライタ19bによってもデー
タを読み取ることができる。
【0079】
また、光学的リードライタ19bによって得られたデータと、電気的リードライタ19a
とで得られたデータとを照合手段21により照合することで書き込みエラーや読み取りエ
ラーを防止することができる。
【0080】
また、光学的リードライタ19bによって記憶回路にデータを書き込むこともでき、電気
的リードライタ19aで記憶回路にデータを書き込むこともできる。
【0081】
なお、記憶回路16は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた記憶素子のみを有して
いてもよいし、他の構成の記憶回路を有していてもよい。他の構成の記憶回路とは、例え
ば、マスクROM(Read Only Memory)、PROM(Programm
able Read Only Memory)、EPROM(Electricall
y Programmable Read Only Memory)、またはEEPR
OM(Electrically Erasable Programmable Re
ad Only Memory)から選択される1つ又は複数に相当する。
【0082】
また、図4では、電気的リードライタ19aと、光学的リードライタ19bとを用いた
例を示したが、特に限定されず、異なる確認手段であればよい。また、3つ以上の異なる
確認手段を用いてもよい。
【0083】
また、本実施の形態は、実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることが
できる。
【0084】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行う
こととする。
【実施例1】
【0085】
図6を用いて、本発明の半導体装置の構成とその動作について説明する。本発明の半導
体装置は、記憶部とアンテナ部とを有する。記憶部は、メモリセルがマトリクス状に設け
られたメモリセルアレイ522と、デコーダ回路523、524と、セレクタ回路525
と、読み取り書き込み回路526とを有する。メモリセルは、記憶素子530を有する。
非接触でデータを送受信するアンテナ部は、アンテナ502とアンテナに接続する集積回
路520とを有する。
【0086】
次に、メモリセルアレイ522を実際に作成したときの上面構造と断面構造について説明
する(図5(A)、図5(C)参照)。
【0087】
記憶素子530は、ビット線Bx(1≦x≦m)を構成する第1の導電層527と、ワー
ド線Wy(1≦y≦n)を構成する第2の導電層528と、第1の導電層527と第2の
導電層528の間に設けられた有機化合物層529を有する(図5(A)参照)。第1の
導電層527と、有機化合物層529と、第2の導電層528の積層体が記憶素子530
に相当する。隣接する有機化合物層529の間には、絶縁層533が設けられる。また、
複数の記憶素子530上に、絶縁層534が設けられる。ビット線Bxを構成する第1の
導電層527は、第1の方向に延在して設けられ、ワード線Wyを構成する第2の導電層
528は、第1の方向と垂直な第2の方向に延在して設けられる。つまり、第1の導電層
527と第2の導電層528はストライプ状に、互いに交差するように設けられる。
【0088】
なお、本実施例においては、記憶素子530に対するデータの書き込みを光学的作用によ
り行う。従って、第1の導電層527と第2の導電層528のうち、一方又は両方は透光
性を有することが必要である。透光性を有する導電層は、インジウム錫酸化物(ITO)
等の透明な導電性材料を用いて形成するか、又は、透明な導電性材料でなくても、光を透
過する厚さで形成する。
【0089】
記憶素子に用いる有機化合物層529は、例えば、4、4’−ビス[N−(1−ナフチル
)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−
(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,
4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:T
DATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−
アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(
N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:
DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物
やフタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジル
フタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物等の正孔輸送性の高い物質
を用いることができる。
【0090】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、電子輸送性が高い有機化
合物材料を用いることができ、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:
Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq
)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq
)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(
略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる
材料や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn
(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称
:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体など
の材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−
5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD
)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ
ール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル
)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TA
Z)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4
−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナン
トロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等の化合物等を用い
ることができる。
【0091】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、4−ジシアノメチレン−
2−メチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−
ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7
,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,
5−ジシアノ−1,4−ビス(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリ
ジル−9−エニル)ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、ク
マリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq
)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や
9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テ
トラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等が挙げられる。また、上記有機化合物材料
を分散してなる層を形成する場合に母体となる材料としては、9,10−ジ(2−ナフチ
ル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)等のアントラセン誘
導体、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)等のカルバゾー
ル誘導体、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp
)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBO
X)などの金属錯体等を用いることができる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミ
ニウム(略称:Alq)、9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DN
A)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム
(略称:BAlq)等を用いることができる。
【0092】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529の他の材料として、ポリスチレンスルホン酸
(略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)や
、ポリアニリン(略称:PAni)、ポリビニルカルバゾール(略称:PVK)などを用
いることもできる。
【0093】
また、記憶素子に用いる有機化合物層529には、光学的作用により、電気抵抗が変化す
る材料を用いることができる。例えば、光を吸収することによって酸を発生する化合物(
光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることができる。共役高分子として、ポリア
セチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェ
ニレンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスル
ホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホ
ン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF
6塩等を用いることができる。
【0094】
次に、上記構成を有する記憶回路にデータの書き込みを行う際の動作について説明する。
データの書き込みは、光学的作用により行う。透光性を有する導電層側(ここでは第2の
導電層528とする)から、レーザ照射装置532により、有機化合物層529にレーザ
光を照射することにより、データの書き込みを行う。
【0095】
レーザ光の照射は、全てのメモリセル521に対して行ってもよいし、選択的に行っても
よい。例えば、形成したばかりの有機化合物層529が非晶質状態の場合、非晶質状態の
ままにするときはレーザ光を照射せず、結晶状態に変化させるときはレーザ光を照射する
とよい(図5(B)2参照)。つまり、レーザ光を選択的に照射することで、データの書
き込みを行ってもよい。このように、レーザ光を選択的に照射する場合は、パルス発振の
レーザ照射装置を用いて行うとよい。
【0096】
より詳しくは、選択された記憶素子530が含む有機化合物層529にレーザ光を照射し
て有機化合物層529を破壊、或いは結晶化させる。有機化合物層529が破壊、或いは
結晶化すると、有機化合物層の光学的特性が変化する。また、結晶化された有機化合物層
の場合は、導電率が向上し、他の記憶素子と比較すると電気抵抗値が大幅に小さくなる。
また、破壊された有機化合物層の場合は、絶縁化し、他の記憶素子と比較すると電気抵抗
値が大幅に大きくなる。このように、レーザ光の照射により、記憶素子530の光学的特
性や電気抵抗値が変化することを利用してデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を
照射していない記憶素子を「0」のデータとする場合、「1」のデータを書き込む際は、
記憶素子にレーザ光を照射して光学的特性や電気抵抗値を変化させる。
【0097】
また、有機化合物層529として、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸
発生剤)をドープした共役高分子を用いた場合、レーザ光を照射すると、照射された部分
の導電率が増加し、未照射の部分は導電しない。この場合も、選択された有機化合物層5
29にレーザ光を照射することにより、記憶素子530の抵抗値が変化することを利用し
てデータの書き込みを行う。例えば、レーザ光を照射していない記憶素子を「0」のデー
タとする場合、「1」のデータを書き込む際は、選択された記憶素子にレーザ光を照射し
て導電率を増加させる。
【0098】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の導電層527と有機化合物層529の間に
、整流性を有する素子を設けてもよい(図5(C)参照)。整流性を有する素子とは、ゲ
ート電極とドレイン電極を接続したトランジスタ、又はダイオードである。ここでは、半
導体層544、545を含むPN接合ダイオードを設けた場合を示す。半導体層544、
545のうち、一方はN型半導体であり、他方はP型半導体である。このように、整流性
があるダイオードを設けることにより、1つの方向にしか電流が流れないために、誤差が
減少し、読み出しマージンが向上する。なお、ダイオードを設ける場合、PN接合を有す
るダイオードではなく、PIN接合を有するダイオードやアバランシェダイオード等の、
他の構成のダイオードを用いてもよい。
【0099】
続いて、電気的にデータの読み取りを行う際の動作について図6(A)および図6(B)
を用いて説明する。ここでは、読み取り書き込み回路526は、抵抗素子546とセンス
アンプ547を含む構成とする。但し、読み取り書き込み回路526の構成は上記構成に
制約されず、どのような構成を有していてもよい。
【0100】
データの読み取りは、第1の導電層527と第2の導電層528の間に電圧を印加して、
記憶素子530の抵抗値を読み取ることにより行う。例えば、上述したように、有機化合
物層529にレーザ光を照射することによりデータの書き込みを行った場合、光学作用を
加えていない記憶素子の抵抗値と、光学的作用を加えた記憶素子の抵抗値の相違を電気的
に読み取ることにより、データの読み取りを行う。
【0101】
また、有機化合物層529に、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生
剤)をドープした共役高分子を用いた場合も同様であり、光学的作用を加えていない記憶
素子の電気抵抗値と、光学的作用を加えた記憶素子の電気抵抗値の相違を電気的に読み取
ることにより、データの読み取りを行う。
【0102】
例えば、メモリセルアレイ522が含む複数の記憶素子530から、x列目y行目に配置
された記憶素子530のデータの読み取りを行う場合、まず、デコーダ回路523、52
4、セレクタ回路525により、x列目のビット線Bxと、y行目のワード線Wyを選択
する。そうすると、記憶素子530と、抵抗素子546とは、直列に接続された状態とな
る。ここで、記憶素子530を抵抗素子と見なすと、直列に接続された2つの抵抗素子の
両端に電圧が印加されると、ノードαの電位は、記憶素子530の抵抗値に従って、抵抗
分割された電位となる。ノードαの電位は、センスアンプ547に供給され、当該センス
アンプ547において、「0」と「1」のどちらの情報を有しているかを判別され、その
後、センスアンプ547において判別された「0」と「1」の情報を含む信号は、外部に
供給される。
【0103】
上記の方法によると、記憶素子530の情報は、抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電
圧値で読み取っている。しかしながら、電流値を比較する方法でもよい。これは、例えば
、電気的作用を加えていない記憶素子530と、電気的作用を加えた記憶素子530の抵
抗値の相違に起因した電流値の相違を利用するものである。このように電流値の相違を電
気的に読み取ることにより、データの読み取りを行ってもよい。
【0104】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の導電層527と有機化合物層529の間に
、整流性を有する素子を設けてもよい。整流性を有する素子とは、ゲート電極とドレイン
電極を接続したトランジスタ、又はダイオードである。整流性があるダイオードを設ける
ことにより、1つの方向にしか電流が流れないために、誤差が減少し、読み取りマージン
が向上する。なお、ダイオードを設ける場合、PN接合を有するダイオードではなく、P
IN接合を有するダイオードやアバランシェダイオード等の、他の構成のダイオードを用
いてもよい。
【0105】
また、光学的にデータの読み取りを行う際の動作について説明する。実施の形態1にも
記述したように、本実施例の記憶素子はマトリクス状に配置され、一方または両方の電極
が透光性を有しており、有機化合物層529を確認できる識別面を有している。データの
書き込みによって有機化合物層529の光学的特性が変化するため、データが書き込まれ
た記憶素子とデータが書き込まれていない記憶素子とにより識別面にパターンが形成され
る。このパターンを光学的読み取り装置によってパターンデータを取り込んで解析するこ
とによって、データの読み取りを行う。
【0106】
このように、本実施例の半導体装置は、光学的な読み取り装置と電気的な読み取り装置
との両方でデータの読み取りが可能であり、それらを照合させることで読み取りエラーを
低減することができる。
【0107】
また、本実施例の半導体装置は、光学的な書き込み装置と電気的な書き込み装置との両
方でデータの書き込みが可能であり、書き込みエラーを低減することができる。
【0108】
加えて、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれ
た単純な構造の記憶素子を有することを特徴とし、上記特徴により、作製が簡単であるた
めに安価な半導体装置及びその作製方法を提供することができる。また、高集積化が容易
なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置及びその作製方法を提供することができる

【0109】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの
書き込みを行うものであり、不揮発性であって、データの追記が可能であることを特徴と
する。上記特徴により、書き換えによる偽造を防止してセキュリティを確保しつつ、新た
なデータを追加して書き込むことができる。従って、高機能化と高付加価値化を実現した
半導体装置及びその作製方法を提供することができる。
【0110】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、または実施の形態3と自由に組み合わ
せることができる。
【実施例2】
【0111】
本実施例では、光学的作用により、記憶回路にデータの書き込みを行う際に用いるレーザ
照射装置について図7を参照して説明する。
【0112】
レーザ照射装置1001は、レーザ光を照射する際の各種制御を実行するコンピュータ1
002と、レーザ光を出力するレーザ発振器1003と、電源1004と、レーザ光を減
衰させるための光学系1005と、レーザ光の強度を変調するための音響光学変調器10
06と、レーザ光の断面を縮小するためのレンズや光路を変更するためのミラー等で構成
される光学系1007と、X軸ステージ及びY軸ステージを有する移動機構1009と、
コンピュータ1002から出力される制御データを変換するD/A変換部1010と、D
/A変換部から出力されるアナログ電圧に応じて、音響光学変調器1006を制御するド
ライバ1011と、移動機構1009を駆動するための信号を出力するドライバ1012
と、被照射物上にレーザ光の焦点を合わせるためのオートフォーカス機構1013とを有
する(図7参照)。レーザ発振器1003には、紫外光、可視光、又は赤外光を発振する
ことが可能なレーザ発振器を用いることができ、具体的には、KrF、ArF、、XeC
l、Xe等のエキシマレーザ発振器、He、He−Cd、Ar、He−Ne、HF等の気
体レーザ発振器、YAG、GdVO、YVO、YLF、YAlOなどの結晶にCr
、Nd、Er、Ho、Ce、Co、Ti又はTmをドープした結晶を使った固体レーザ発
振器、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザ発振器を用い
ることができる。
【0113】
次に、上記構成を有するレーザ照射装置1001の動作について説明する。まず、基板1
014が移動機構1009に装着されると、コンピュータ1002は図外のカメラによっ
て、レーザ光を照射する記憶素子の位置を検出する。次いで、コンピュータ1002は、
検出した位置データに基づいて、移動機構1009を移動させるための移動データを生成
する。続いて、コンピュータ1002が、ドライバ1011を介して音響光学変調器10
06の出力光量を制御することにより、レーザ発振器1003から出力されたレーザ光は
、光学系1005によって減衰された後、音響光学変調器1006によって所定の光量に
なるように光量が制御される。一方、音響光学変調器1006から出力されたレーザ光は
、光学系1007で光路及びビームスポット形状を変化させ、レンズで集光した後、基板
1014上に該レーザ光を照射する。このとき、コンピュータ1002が生成した移動デ
ータに従い、移動機構1009をX方向及びY方向に移動制御する。この結果、所定の場
所にレーザ光が照射され、レーザ光の光エネルギー密度が熱エネルギーに変換され、基板
1014上に設けられた記憶素子に選択的にレーザ光が照射される。なお、上記の記載に
よると、移動機構1009を移動させてレーザ光の照射を行う例を示しているが、光学系
1007を調整することによってレーザ光をX方向およびY方向に移動させてもよい。
【0114】
上記のようなレーザ照射装置を用いて、レーザ光を照射することによりデータの書き込み
を行う本発明は、データの書き込みを簡単に行うことができる。従って、大量のデータの
書き込みを短時間で行うことができる。
【0115】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、または実施例1と自由
に組み合わせることができる。
【実施例3】
【0116】
本実施例では、基板上に記憶素子を作製し、その記憶素子に電気的作用によりデータの書
き込みを行ったときの光学的特性の変化を調べた実験の結果について説明する。
【0117】
記憶素子は、基板上に、第1の導電層、金属酸化物と有機化合物とを含む層、有機化合物
層、第2の導電層の順に積層した素子である。
【0118】
金属酸化物としては、正孔輸送性物質に対し電子受容性を示す物質か、または電子輸送輸
送性物質に対し電子供与性を示す物質かのいずれかを用いることが好ましい。このような
金属酸化物の具体例として、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、
コバルト酸化物、銅酸化物等の他、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、マグネシウム酸
化物、ナトリウム酸化物等、アルカリ金属酸化物若しくはアルカリ土類金属酸化物等が挙
げられる。正孔輸送性物質及び電子輸送性物質の中から選ばれる物質であることが好まし
い。
【0119】
また、金属酸化物と有機化合物とを含む層において、有機化合物としては、正孔輸送性物
質または電子輸送性物質のいずれかを用いることが好ましい。ここで、正孔輸送性物質と
は、電子よりも正孔の輸送性が高い物質である。また、電子輸送性物質とは、正孔よりも
電子の輸送性が高い物質である。金属酸化物と有機化合物とを含む層において、金属酸化
物が正孔輸送性物質に対し電子受容性を示す物質であるとき、有機化合物は正孔輸送性物
質であることが好ましい。また、金属酸化物と有機化合物とを含む層において、金属酸化
物が電子輸送性物質に対し電子供与性を示す物質であるとき、有機化合物は電子輸送性物
質であることが好ましい。
【0120】
本実施例では、第1の導電層は酸化珪素及びインジウム錫酸化物を含む透明導電膜を用い
、金属酸化物と有機化合物とを含む層は、MoOxと4,4’−ビス[N−(1−ナフチ
ル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)とをモル比1:1とした層とす
る。金属酸化物と有機化合物とを含む層は80nmの膜厚で形成した。この金属酸化物と
有機化合物とを含む層上に設けられる有機化合物層は、4,4’−ビス{N−[4−(N
,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:D
NTPD)とする。また、有機化合物層は50nmの膜厚で形成した。また、第2の導電
層はアルミニウムにより形成した。
【0121】
上記記憶素子をマトリクス状に複数配置してメモリセルアレイを形成し、デコーダ回路と
、セレクタ回路と、読み出しおよび書き込み回路とで記憶回路を構成する。デコーダ回路
、セレクタ回路により、1つの記憶素子を選択する。そして、選択された記憶素子に所定
の電圧を印加して、大電流を流し、記憶素子の一対の導電層間を短絡させる。短絡した記
憶素子は、電圧が印加されていない記憶素子と比較すると電気抵抗値が大幅に小さくなる
。このように、電気的作用を加えることにより、記憶素子の電気抵抗値が変化することを
利用してデータの書き込みを行う。例えば、電気的作用を加えていない記憶素子を「0」
のデータとする場合、「1」のデータを書き込む場合、選択された記憶素子に電圧を印加
して大電流を流すことによって、短絡させる。
【0122】
また、記憶素子の第1の導電層と第2の導電層とに所定の電圧を印加し、絶縁破壊して
、一対の導電層を短絡させると記憶素子は光学的にも変化する。短絡後の記憶素子を一部
拡大した写真図を図8に示す。図8に示すように記憶素子は部分的に変色しており、変色
した部分は短絡した部分である。
【0123】
また、所定の電圧を印加する前後での記憶素子の状態の違いを調べるため、測定した反
射スペクトルを図9に示す。図9に示すように、電圧を印加して変色した変色部中心は、
電圧印加前に比べて反射率が半分以下に低減している。また、電圧を印加して変色した変
色部周辺も電圧印加前に比べて反射率が低減している。
【0124】
このように、変色していない記憶素子を「0」のデータと識別し、変色した記憶素子を
「1」のデータと識別することもできる。識別手段としては、イメージスキャナやCCD
カメラなどの光学読み取り装置を用いればよい。また、記憶素子への書き込み処理が行わ
れたかどうかを判断するだけなら、目視でも確認が可能である。
【0125】
なお、本実施例では、記憶素子に所定の電圧を印加して短絡させることによりデータを書
き込む例を示したが、特に限定されず、例えば、記憶素子にレーザ光を照射して、一対の
導電層間に挟まれた有機化合物層を絶縁破壊させることによりデータを書き込む形態とし
てもよい。
【0126】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、または実施
例2と自由に組み合わせることができる。
【実施例4】
【0127】
本実施例では、基板上に記憶素子を作製し、その記憶素子に電気的作用によりデータの書
き込みを行ったときの電流電圧特性を調べた実験の結果について説明する。記憶素子は、
基板上に、第1の導電層、第1の有機化合物層、第2の有機化合物層、第2の導電層の順
に積層した素子であり、第1の導電層は酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物(ITS
Oと略称されることがある)、第1の有機化合物層は4,4’−ビス[N−(3−メチル
フェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPDと略称されることがある)、
第2の有機化合物層は、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ
]−ビフェニル(α−NPDと略称されることがある)、第2の導電層はアルミニウム、
により形成した。また、第1の有機化合物層は10nm、第2の有機化合物層は50nm
の膜厚で形成した。
【0128】
まず、電気的作用によりデータの書き込みを行う前と、電気的作用によりデータを書き込
んだ後の、記憶素子の電流電圧特性の測定結果について、図10を用いて説明する。図1
0は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット261は電気的作用によりデータを書き込
み前の記憶素子の電流電圧特性、プロット262は電気的作用によりデータを書き込んだ
後の記憶素子の電流電圧特性を示す。図10から、データの書き込み前と、データの書き
込み後とで、記憶素子の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印加電圧1V
では、データ書き込み前の電流値は4.8×10−5mAであるのに対し、データ書き込
み後の電流値は1.1×10mAであり、データの書き込み前と、データの書き込み後
では、電流値に7桁の変化が生じている。このように、データの書き込み前と、データの
書き込み後では、記憶素子の抵抗値に変化が生じており、この記憶素子の抵抗値の変化を
、電圧値又は電流値により読み取れば、記憶回路として機能させることができる。
【0129】
なお、上記のような記憶素子を記憶回路として用いる場合、データの読み出し動作の度に
、記憶素子には所定の電圧値(短絡しない程度の電圧値)が印加され、その抵抗値の読み
取りが行われる。従って、上記の記憶素子の電流電圧特性には、読み出し動作を繰り返し
行っても、つまり、所定の電圧値を繰り返し印加しても、変化しないような特性が必要と
なる。そこで、データの読み出し動作を行った後の記憶素子の電流電圧特性の測定結果に
ついて、図11を用いて説明する。なお、この実験では、データの読み出し動作を1回行
う度に、記憶素子の電流電圧特性を測定した。データの読み出し動作は合計5回行ったの
で、記憶素子の電流電圧特性の測定は計5回行った。また、この電流電圧特性の測定は、
電気的作用によりデータの書き込みが行われて抵抗値が変化した記憶素子と、抵抗値が変
化していない記憶素子の、2つの記憶素子に対して行った。
【0130】
図11は、横軸が電圧値、縦軸が電流値、プロット271は電気的作用によりデータの書
き込みが行われて抵抗値が変化した記憶素子の電流電圧特性、プロット272は抵抗値が
変化していない記憶素子の電流電圧特性を示す。プロット271から分かるように、抵抗
値が変化していない記憶素子の電流電圧特性は、電圧値が1V以上のときに特に良好な再
現性を示す。同様に、プロット272から分かるように、抵抗値が変化した記憶素子の電
流電圧特性も、電圧値が1V以上のときに特に良好な再現性を示す。上記の結果から、デ
ータの読み出し動作を複数回繰り返し行っても、その電流電圧特性は大きく変化せず、再
現性は良好である。上記の記憶素子を記憶回路として用いることができる。
【0131】
また、データを書き込んだ後の記憶素子は、データを書き込む前に比べて、部分的に有
機化合物層の膜厚が変化している。この膜厚の変化を光学的読み取り装置で読み取ること
ができる。
【0132】
ここで、有機化合物層を単層とした記憶素子のデータ書き込み前後での膜厚の変化を調
べた実験結果を以下に示す。
【0133】
記憶素子は、下地絶縁膜が140nmの膜厚で設けられた基板上に、第1の導電層(下部
電極)、有機化合物層、第2の導電層(上部電極)の順に積層した素子である。第1の導
電層は、酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を用い、有機化合物層は4,4’−ビス
[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(TPD)を用い
、第2の導電層はアルミニウムを用いて形成した。下部電極は105nmの膜厚とし、上
部電極は270nmの膜厚とした。また、有機化合物層(TPD)は50nmの膜厚で形
成した。記憶素子のサイズは2mm×2mmとした。
【0134】
そして、有機化合物層を単層とした記憶素子へ電圧を印加してデータ書き込みを行った
ところ、記憶素子の表面に凹凸が形成された。TPDはもともと50nmであったが、デ
ータ書き込み後は厚い箇所で90nm、薄い箇所で15nmに変化した。厚い箇所の断面
TEM写真を図12に示し、薄い箇所の断面TEM写真を図13に示す。このように、デ
ータを書き込んだ後の記憶素子は、データを書き込む前に比べて、部分的に有機化合物層
の膜厚が変化している。
【0135】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、
または実施例3と自由に組み合わせることができる。
【実施例5】
【0136】
本実施例では、基板上に記憶素子部を作製し、その記憶素子部に電気的作用によりショ
ートさせてデータの書き込みを行った結果について説明する。
【0137】
記憶素子部は、基板上に第1の導電層、有機化合物層(有機化合物材料と無機化合物材
料との混合層と、有機化合物材料からなる層との積層)、第2の導電層の順に積層した素
子である(以下、素子構造1と記す)。なお、第1の導電層は、酸化珪素とインジウム錫
酸化物の化合物を用いた。有機化合物層は、有機化合物材料と無機化合物材料との混合層
と、有機化合物材料からなる層との積層構造を用いた。有機化合物材料と無機化合物材料
との混合層は、α−NPDとMoOとを共蒸着により成膜した。有機化合物材料からな
る層は、TPDを用いた。第2の導電層は、アルミニウムを用いた。
【0138】
また、上記構成を有する記憶素子部と比較するため、基板上に第1の導電層、有機化合
物材料からなる層、第2の導電層の順に積層した素子を形成した(以下、素子構造2と記
す)。第1の導電層としては酸化珪素とインジウム錫酸化物の化合物を用い、有機化合物
材料からなる層としてはTPDを用い、第2の導電層としてはアルミニウムを用いて形成
した。つまり、上記構成から有機化合物材料と無機化合物材料との混合層を除いた構成と
なっている。
【0139】
次に、電気的作用により記憶素子部をショートさせてデータ書き込みを行う前と、電気
的作用により記憶素子部をショートさせてデータ書き込みを行った後の、素子構造1と素
子構造2のそれぞれの電流電圧特性の測定結果を図14に示す。なお、図14において、
横軸は電圧値(V)、縦軸は電流密度(mA/cm)を示している。また、図14にお
いて、プロット281aは電気的作用を加えることより記憶素子部をショートさせる前の
素子構造1の電流電圧特性、プロット281bは電気的作用を加えることにより記憶素子
部をショートさせた後の素子構造1の電流電圧特性を示す。また、プロット282aは電
気的作用を加えることより記憶素子部をショートさせる前の素子構造2の電流電圧特性、
プロット282bは電気的作用を加えることにより記憶素子部をショートさせた後の素子
構造2の電流電圧特性を示す。
【0140】
図14から、記憶素子部をショートさせる前と、ショートさせた後とで、素子構造1お
よび素子構造2の電流電圧特性には大きな変化がみられる。例えば、印過電圧1Vでは、
記憶素子部をショートさせる前の素子構造1、素子構造2の電流密度はそれぞれ1.6×
10−4mA/cm、2.4×10−4mA/cmであるのに対し、記憶素子部をシ
ョートさせた後の素子構造1、素子構造2の電流密度はそれぞれ2.5×10mA/c
、4.3×10mA/cmであり、記憶素子部をショートさせる前とショートさ
せた後では、電流値に6桁の変化が生じている。つまり、記憶素子部をショートさせた後
には素子構造1および素子構造2の抵抗値がショートさせる前の抵抗値に比べ大幅に減少
している。
【0141】
このように、記憶素子部をショートさせる前と、記憶素子部をショートした後では、記
憶素子部の抵抗値に変化が生じており、この素子構造1または素子構造2の抵抗値の変化
を、電圧値又は電流値により読み取ることによって、記憶回路として機能させることがで
きる。
【0142】
また、図14より、素子構造1と素子構造2に電気的作用を加えることにより記憶素子
部をショートさせる際の電圧はそれぞれ、9.6V、18.2Vであり、素子構造1の方
が低い電圧で記憶素子部をショートさせることが可能であった。つまり、有機化合物層と
して、有機化合物材料からなる層に無機化合物材料と有機化合物材料との混合層を積層さ
せて設けることにより、記憶素子をショートさせてデータを書き込む際の駆動電圧を低く
することが可能となる。その結果、有機化合物層に有機化合物材料からなる層に加えて、
有機化合物材料と無機化合物材料との混合層を設けることによって、記憶素子部の厚膜化
と低消費電力化を同時に達成することができる。
【0143】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、
実施例3、または実施例4と自由に組み合わせることができる。
【実施例6】
【0144】
本発明の半導体装置の用途は広範にわたるが、例えば、本発明の半導体装置20の一形態
である無線タグは、紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書
籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類
及び電子機器等に設けて使用することができる。
【0145】
紙幣、硬貨とは、市場に流通する金銭であり、特定の地域で貨幣と同じように通用するも
の(金券)、記念コイン等を含む。有価証券類とは、小切手、証券、約束手形等を指す(
図15(A)参照)。図15(A)にその一例を示すように、小切手2001に識別面2
003を有する無線タグ2002が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読
み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認する認証機能を設けることがで
き、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。
【0146】
また、証書類とは、運転免許証、住民票等を指す(図15(B)参照)。図15(B)に
その一例を示すように、運転免許証2011に識別面2013を有する無線タグ2012
が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合
し、一致することを確認する認証機能を設けることができ、この認証機能を活用すれば、
偽造を防止することができる。
【0147】
また、無記名債券類とは、切手、物品引替券、各種ギフト券等を指す(図15(C)参照
)。図15(C)にその一例を示すように、物品引替券2021に識別面2023を有す
る無線タグ2022が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段と
の両方で情報を照合し、一致することを確認する認証機能を設けることができ、この認証
機能を活用すれば、偽造を防止することができる。
【0148】
また、包装用容器類とは、お弁当等の包装紙、ペットボトル、段ボール箱等を指す(図1
5(D)参照)。図15(D)にその一例を示すように、お弁当等の包装ラベル2031
に識別面2033を有する無線タグ2032が固定されている。識別面2033はデータ
の書き込みによって視認による値段確認も可能としている。また、無線通信信号読み取り
手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを確認することができ、
読み取りエラーを防止することができる。
【0149】
また、書籍類とは、書物、本等を指す(図15(E)参照)。図15(E)にその一例を
示すように、本2041に識別面2043を有する無線タグ2042が固定されている。
無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で情報を照合し、一致することを
確認することができ、読み取りエラーを防止することができる。
【0150】
また、記録媒体とは、DVDソフト、ビデオテープ等を指す(図15(F)参照)。図1
5(F)にその一例を示すように、DVDのケース2051に識別面2053を有する無
線タグ2052が固定されている。無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両
方で情報を照合し、一致することを確認することができ、読み取りエラーを防止すること
ができる。
【0151】
また、身の回り品とは、鞄、眼鏡等を指す。乗物類とは、自転車等の車両、船舶等を指す
。食品類とは、食料品、飲料等を指す。衣類とは、衣服、履物等を指す。保健用品類とは
、医療器具、健康器具等を指す。生活用品類とは、家具、照明器具等を指す。薬品類とは
、医薬品、農薬等を指す。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装
置(テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等を指す。
【0152】
また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に
本発明の半導体装置を設けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図ること
ができる。
【0153】
また、本発明の半導体装置は、一対の導電層間に有機化合物層が挟まれた単純な構造の記
憶素子を有するため、安価な半導体装置を用いた電子機器を提供することができる。また
、本発明の半導体装置は高集積化が容易なため、大容量の記憶回路を有する半導体装置を
用いた電子機器を提供することができる。
【0154】
また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、光学的作用又は電気的作用によりデータの
書き込みを行うものであり、無線通信信号読み取り手段と光学読み取り手段との両方で読
み出すことができる。また、本発明の半導体装置が含む記憶回路は、不揮発性であって、
データの追記が可能であることを特徴とする。上記特徴により、書き換えによる偽造を防
止することができ、新たなデータを追加して書き込むことができる。従って、高機能化と
高付加価値化を実現した半導体装置を用いた電子機器を提供することができる。
【0155】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、実施の形態3、実施例1、実施例2、実
施例3、実施例4、または実施例5と自由に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明を物流や商品等の物品および人物等の管理に応用すれば、セキュリティが極めて
安全で、効率性の高い識別無線タグシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0157】
11 電源回路
12 クロック発生回路
13 データ復調/変調回路
14 制御回路
15 インターフェイス回路
16 記憶回路
17 データバス
18 アンテナ
19a 電気的リードライタ
19b 光学的リードライタ
20 半導体装置
21 照合手段
101 基材
102 アンテナ
103a メモリセルアレイ(書き込み前)
103b メモリセルアレイ(書き込み後)
104 デコーダ回路
105 デコーダ回路
106 セレクタ回路
107 読み取り及び書き込み回路
108 集積回路
109 模様パターン
110 光を照射する書き込み手段
111 制御手段
112 電気信号による書き込み手段
113 制御手段
114 光学読み取り装置
115 電気信号読み取り装置
116 照合手段
117 情報端末
201 基材
202 アンテナ
203 メモリセルアレイ
204 デコーダ回路
205 デコーダ回路
206 セレクタ回路
207 読み取り及び書き込み回路
208 集積回路
210a pチャネル型TFT
210b pチャネル型TFT
211a nチャネル型TFT
211b pチャネル型TFT
212a 第1の導電層
212b 第1の導電層
212c 配線
213a 有機化合物層
213b 有機化合物層
214 第1の層間絶縁膜
214a 第2の導電層
214b 第2の導電層
215 第2の絶縁層
216 隔壁
217 接着層
218 封止板
221 記憶素子
502 アンテナ
520 集積回路
521 メモリセル
522 メモリセルアレイ
523 デコーダ回路
524 デコーダ回路
525 セレクタ回路
526 読み取り書き込み回路
527 第1の導電層
528 第2の導電層
529 有機化合物層
530 記憶素子
532 レーザ照射装置
533 絶縁層
534 絶縁層
544 半導体層
545 半導体層
546 抵抗素子
547 センスアンプ
1001 レーザ照射装置
1002 コンピュータ
1003 レーザ発振器
1004 電源
1005 光学系
1006 音響光学変調器
1007 光学系
1009 移動機構
1010 変換部
1011 ドライバ
1012 ドライバ
1013 オートフォーカス機構
1014 基板
2001 小切手
2002 無線タグ
2003 識別面
2011 運転免許証
2012 無線タグ
2013 識別面
2021 物品引替券
2022 無線タグ
2023 識別面
2031 包装ラベル
2032 無線タグ
2033 識別面
2041 本
2042 無線タグ
2043 識別面
2051 DVDのケース
2052 無線タグ
2053 識別面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリセルを含むメモリセルアレイを有するメモリと、前記メモリを制御する回路と、アンテナとを有し、
前記メモリセルアレイは、第1の方向に延在するビット線と、前記第1の方向と垂直な第2の方向に延在するワード線とを有し、前記ビット線と前記ワード線との間に不可逆的に相変化する材料層を有し、前記ビット線と前記ワード線の一方または両方は透光性を有し、前記メモリは、記録された情報を光学読み取り手段により読み取る識別面を有することを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図8】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−119752(P2011−119752A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9521(P2011−9521)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【分割の表示】特願2005−346794(P2005−346794)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】