説明

通信システム

【課題】工場内で製品製造に関わるデータや制御信号を高安全性、高信頼性でP2P通信可能として製品製造工場での製品製造上の自由度、精度、効率等を飛躍的に高めることができる通信システムの提供。
【解決手段】工場内における製品製造のための通信システムにおいて、当該工場を、作業単位階層と、1つないし複数の作業単位により行われる1つの工程ないしは複数の工程の組み合わせを1つの工程単位としこれら工程単位個々からなる工程単位階層と、上記工程単位階層すべてを含めて製品を製造する製造単位階層との3階層で階層化し、任意の単位階層と他の単位階層との間、単位階層内部、および機械等内部、でのデータや制御信号等の送受信にはその少なくとも一部にP2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信を構築した通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械や装置が配置されているストック、移動、加工、組立て、検査、エージング等の各工程の1つもしくは複数の工程を有する製品製造工場に適した通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品製造工場では、製造目的である製品の製造のため各種機械や装置が配置されている。この機械や装置等にはセンサ等の入力機器や、アクチュエータ等の出力機器、それらをシーケンス制御やフィードバック制御やフィードフォワード制御等の各種制御をするコントローラからなる制御システムが組み込まれている。この制御システムでは入出力機器とコントローラとが有線接続されてデータや制御信号等の送受信が行われる一方で、これら送受信の一部または全部を無線で行うことも本出願人は検討している。無線通信は、もちろん有線配線を必要としないため、配線敷設が無く、有線配線が困難な回転等の移動体上のセンサや入出力機器との接続、また、製造目的に合わせた機械や設備等の配置変更等も容易、安価に行うことができる等の利点がある一方では、空間および液間内を電磁波や電磁誘導の形態でデータを送受信するものであるから、盗聴、混信、ノイズ、等により、通信上の安全性、信頼性等に課題があり、その実現達成は必ずしも容易ではなかった。
【0003】
一方、インターネットを用いて工場間のデータ通信を行うに際して無線通信と同様の盗聴、混信、ノイズ、等および受信者の成りすまし等の課題を解決すべく、例えば暗号技術を用いたVPN等での対応が急速に展開されつつある。VPNは、インターネットを利用し、送信側でデータを暗号化し、受信側でこれを復号し、両者が仮想的に専用線で1対1接続されている構成を実現するバーチャル・プライベート・ネットワークである(特許文献1参照)。
【0004】
このような現状の通信システム状況において、本出願人は特に製品製造工場において無線通信の有用性に着目しつつ、VPNの長所を活用して無線通信の課題を克服した通信システムの実現について鋭意研究を重ねていた。
【特許文献1】特開2006−217275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製品製造工場で無線通信の課題を克服し高信頼性と高安全性の無線通信を実現しその有用性を活用することにより製品製造工場における所望の有線では実現が困難であった加工、組立て、検査等の工程実現、製造の自由度、無線センサ設置による加工精度、等を達成できるようにした新規な通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による通信システムは、工場内における製品製造のための通信システムにおいて、当該工場を、機械や装置(機械等という)を用いて製品製造のために行われる加工、搬送、組立等の複数種の作業のいずれか1つないしは複数の組み合わせを1つの作業単位としこれら作業単位個々からなる作業単位階層と、1つないし複数の作業単位により行われる1つの工程ないしは複数の工程の組み合わせを1つの工程単位としこれら工程単位個々からなる工程単位階層と、上記工程単位階層すべてを含めて製品を製造する製造単位階層と、の3階層で階層化し、任意の単位階層と他の単位階層との間や、単位階層内部、および機械等内部でのデータや制御信号等の送受信にはその少なくとも一部にP2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信を構築したことを特徴とするものである。
【0007】
上記製品には部品、半完成品、完成品を含む。
【0008】
上記P2P(ピア・ツウ・ピア)とは、1つの無線通信側に複数の無線通信側が1:n無線通信することが可能な状況下で、上記1つの無線通信側が、上記複数の無線通信側の中の1つの無線通信側との間で1:1無線通信することに仮想的に絞りこんでP2P無線通信するものであり、このことから本発明ではこの無線通信方式を説明の都合でバーチャル・プライベート・ワイヤレス(VPWL:ertial rivate ireess)通信と称することがある。
【0009】
この無線通信側には作業単位階層では機械等内部における複数の無線センサと、コントローラ内の1つの無線ブリッジとの間、工程単位階層や製造単位階層では複数の工程単位の中で1つの工程単位と1つの工程単位との間、等がある。これら各単位階層ではVPWL通信を行うことができる。以下、必要に応じてVPWL通信と言うことがある。なお、VPWL通信には他のアクセスポイントを介さずに無線ノード同士が直接通信するもので自動中継機能を有する通信モードであるインフラストラクチャモードVPWL通信や、自動中継機能を有すアドホックモードVPWL通信を含む。またこれらは中継機能やハブ機能のあるアクセスポイント経由の通信も含む。
【0010】
ここでの無線ノードは、無線コントローラ、無線センサ、無線I/O機器、無線中継器、等である。例えば無線センサは、センサヘッド、無線通信を行なう通信部と、センサドライブや通信部制御やデータ等の暗号化、等の処理を行なうCPU等を備える。無線I/O機器も入出力部、無線通信を行なう通信部と、入出力ドライバや通信部制御やデータや制御信号等の暗号化、等の処理を行なうCPU等を備える。
【0011】
本発明では、任意の単位階層と他の単位階層との間や、単位階層内部、および機械等内部でのデータや制御信号等の送受信にVPWL通信する通信システムであるので、有線配線が困難な回転等の移動体上のセンサや入出力機器との接続、配線敷設コストが削減される等の上記述べた利点は勿論のこと、同時に無線通信における課題である漏洩、盗聴、混信、等も防止され必要なところとのみP2P通信でき、通信上の高安全性、高信頼性を確保することができ、製品製造工場での製品製造上の自由度、精度や効率等を飛躍的に高めることができるようになった。特に、有線前提の通信システム構成がFA(ファクトリオートメーション)に耐え得るVPWL通信を積極的に構成に加えることにより有線では実現が困難であった加工、組立て、検査等の工程の機能の向上が可能な次世代FAシステムを構築することができるようになる。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、各単位階層内部で3以上の無線ノード間の無線通信が存在する場合では、これら無線ノード間ではメッシュ型ネットワークでのP2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信を行うことである。
【0013】
この態様では、無線ノードの配置数が3以上になると、それら無線ノード間でのVPWL通信はメッシュ型無線とすることにより、通信の迂回電送や安全確保や搭載無線送受信部の出力、周波数等の能力を超える遠距離無線通信を確保することができるようになる。なお、作業単位階層や工程単位階層の規模が大きい単位階層では有効であり、VPWL通信は例えば指向性アンテナ、各種電磁シールド、周波数チャンネル切り替え等のハードウエアに、暗号ロジック、IPv6(インターネット・プロトコル・バージョン・6)準拠のアドレッシング体系などのソフトウエアを組み合わせてVPWLを構築するのが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい一態様は、上記作業単位階層では、機械等をシーケンス制御やフィードバック制御やフィードフォワード、等をするコントローラと、このコントローラに機械等やワークの状態を入力する入力機器と、コントローラからの制御信号やデータに応答して機械等を制御する出力機器とを含み、少なくとも一部の入力機器は、コントローラに対してVPWL通信することである。
【0015】
本発明の好ましい一態様は、規模が小さい作業単位階層では、例えば電波指向性アンテナ機能を含むアンテナ機能および漏洩防止機能を兼ね備えた漏洩同軸ケーブルや電磁誘導方式の通信、等を用いることである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の通信システムによれば、工場内で製品製造に関わるデータや制御信号、その他の各種信号等をVPWL方式により高安全性、高信頼性を確保して通信することができるので、製品製造工場での製品製造の有線では実現が困難であった加工、組立て、検査等の工程実現、製造の自由度、無線センサ設置による加工精度、等をアップすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る通信システム(以下、本通信システムと略称する)を説明する。図1は、本通信システムの概略構成を示す。
【0018】
図1で示すように本通信システムでは当該通信システムが適用される工場1を、通信の高安全性、高信頼性のため、作業単位階層2と、工程単位階層4と、製造単位階層6との3階層で階層化する。
【0019】
作業単位階層2は、加工機械、搬入機械、組立装置、在庫保管庫、搬出機械等の各種機械、装置(以下、機械等8)を用いて製品製造のために行われる加工、搬送、組立等の複数種の作業9のいずれか1つないしは複数の組み合わせを1つの作業単位10としこれら作業単位10個々からなる階層である。製品には、製品材料、製品を構成する各種部品、製品に至るまでの半完成品、完成品としての製品を含む。製品の製造には製造工程の段階で各種の作業がある。製品材料、部品製造、ユニット組立、ユニット検査、製品組立、製品検査、等において、それぞれの段階での作業がある。また、工場の規模の大小により、機械等や作業単位も各種各様である。作業単位10も加工だけで1つの作業単位10を構成する場合や、加工と搬送との2つの作業で1つの作業単位10を構成する作業もある。この作業単位階層2は機械や装置のセルレベルである。
【0020】
工程単位階層4は、1つないし複数の作業単位10により行われる1つの工程ないしは複数の工程の組み合わせを1つの工程単位12としこれら工程単位12個々からなる階層である。1つの製品の製造工程を複数の工程単位12に分割し、分割した個々の工程単位12内に1つないし複数の工程が含まれ、各工程に1つないし複数の作業単位10が属している。
【0021】
製造単位階層6は、工程単位階層12すべてを含めて製品を製造する階層であり、工場サーバ34を有する。
【0022】
そして、実施の形態の通信システムでは、上記3つの単位階層2,4,6において、任意の単位階層と他の単位階層との間、単位階層内部、および作業単位階層2における機械等8の内部、でのデータや制御信号等の送受信においてその少なくとも一部に高信頼性、高安全性のVPWL方式によるP2P無線通信を構築したことにより、製品製造工場での有線では実現が困難であった加工、組立て、検査等の工程実現、製造の自由度、無線センサ設置による加工精度等、をアップ可能としたものである。
【0023】
図2に作業単位階層2内部の作業単位10におけるVPWL方式によるP2P通信例を示す。図2には作業単位階層2内部の機械等8の図示を略している。作業単位10では上記したように機械等8、例えば加工機械、搬入機械、組立装置、在庫保管庫、搬出機械等の各種機械、装置を用いて作業9を行うものであり、複数種の作業9のいずれか1つないしは複数の組み合わせを1つの作業単位10としている。そして作業単位階層2は、これら作業単位10個々からなる階層である。
【0024】
図2では作業単位10内で機械等8で作業9を実施するうえでのVPWL通信例であり、例えば加工機械の加工動作をシーケンス制御やフィードバック制御やフィードフォワード、等をするコントローラ(P2P)14と、このコントローラ(P2P)14に機械等8や図示略の加工対象であるワークの状態を検出入力する入力機器である無線センサ16や有線センサ18と、ロータリエンコーダ20等と、コントローラ(P2P)14からの制御信号に応答して機械等8を制御する出力機器であるモータ22、アクチュエータ24等を含む。コントローラ(P2P)14と有線センサ18、ロータリエンコーダ20、モータ22、アクチュエータ24等はドライバ26によりコントローラ(P2P)14に有線接続されている。ドライバ26はコントローラ(P2P)14に有線接続されている。コントローラ(P2P)14は無線ブリッジ(中継機およびハブを含む)28を備える。無線ブリッジ28は、無線センサ16からのデータを無線で受信し、コントローラ(P2P)14に所定の処理をさせ、外部の工場サーバや他のコントローラ等へ無線送信することもできる。有線センサ18からのセンサ信号はドライバ26からコントローラ(P2P)14に与えられ、無線ブリッジ28で外部へと無線送信もできる。また、外部からの無線データや無線制御信号等は無線ブリッジ28で受信され、コントローラ(P2P)14に入力される。コントローラ(P2P)14は無線センサ16や無線IOに無線ブリッジを経由して指示し、有線でドライバ26を通じてモータ22等を駆動制御する。図2では無線通信は点線(…)で、有線通信は実線(―)で示す。作業単位10内に複数の無線センサ16が配備されている場合、無線センサ16から無線ブリッジ28には1:n無線通信されるが、無線ブリッジ28は無線センサ16に対して無線ハブや周波数チャンネル切り替え等でP2P通信を実現するので、この例では無線センサ16と無線ブリッジ28とはインフラストラクチャモードによるVPWL通信である。もちろん、上記は一例であり、センサ等の入力機器や表示装置等の出力機器は必要に応じて無線、有線を用いるとよく、また、有線が適さないで費用もかかるセンサや入出力機器はインフラストラクチャモード、アドホックモードのいずれのモードによる無線を適宜に用いることができる。また、作業単位10間は図2では一部に二重点線で示し、図3でも二重点線で示すようにメッシュ型無線(N:M通信)を用いることができるが、この場合も、任意の作業単位10からは他の複数の作業単位10とは1:nの関係であるが、他の複数の作業単位10の中から1つの作業単位10とのP2P無線通信を行うVPWL通信することができる。
【0025】
また、作業単位10間では、パラレル通信、シリアル通信、デバイスネット、CC−Link(ISO規格参照)、等を用いることが出来る。
【0026】
図4に工程単位階層4を構成する複数の工程単位12の中の任意1つの工程単位12におけるVPWL方式の通信例を示す。10aは加工機械により加工を行う作業単位であり、10bは搬入機械により搬入を行う作業単位であり、10cは搬出機械により搬出を行う作業単位であり、10dは在庫装置により入出庫する作業単位である。そしてこの工程単位12での通信例は、上記作業単位10a−10dそれぞれが備えるコントローラ(P2P)14内の無線ブリッジ28と工程単位12内のコントローラ30が備える無線ブリッジ32とP2P(ピア・ツウ・ピア)方式のVPWL通信を行う。
【0027】
また、工程単位12がコントローラ(P2P)14を備えない場合、図5で示すように工程単位12内の無線センサ16が工程単位12内のコントローラ30が備える無線ブリッジ32とP2P(ピア・ツウ・ピア)方式のVPWL通信を行うようにしてもよい。
【0028】
工程単位12間は図6で示すようにそれぞれのコントローラ30が備える無線ブリッジ32により、メッシュ型のP2P(ピア・ツウ・ピア)方式のVPWL通信を行うようにしてもよい。また、工程単位12間では、パラレル通信、シリアル通信、デバイスネット、CC−Link、などを用いることができる。
【0029】
図7に製造単位階層6において複数の工程単位12との通信例を示す。工程単位12はそれぞれ無線ブリッジ32を備え、これら無線ブリッジ32間では互いにメッシュ型無線通信を行うと共に、工程単位12それぞれの無線ブリッジ32と製造単位階層6の工場サーバ34との間でメッシュ型無線通信を行う。この製造単位階層6でも各工程単位12間、工程単位12と工場サーバ34との間でVPWL方式の通信を行う。そして、製造単位階層6全体では、社内のイントラネット36と有線または無線通信を行う。この場合もまた、工程単位12間では、パラレル通信、シリアル通信、デバイスネット、CC−Link、さらにProfiBus、FL−net、工業用イーサネット(登録商標)等を用いることが出来る。このイントラネット36はイーサネット(登録商標)やファイヤーワイヤ(ISO1394)等を用いることができる。
【0030】
図8に作業単位階層2において無線センサ16と無線ブリッジ28とを漏洩同軸ケーブル38を用いたP2P(ピア・ツウ・ピア)方式のVPWL通信例を示す。点線(…)で無線センサ16と無線ブリッジ28とは、空間40、漏洩同軸ケーブル38を通じて無線通信されることを示す。漏洩同軸ケーブル38内においてもデータや信号等はTEMモード(Transvers Electro Magnetic Mode)で無線通信される。
【0031】
図9に専用チップ化されアンテナ内蔵の無線センサ16と、放射電界強度、周波数、環境、等によって定められる特定位置および形状の網線部に開けられたスロットがアンテナとして機能する漏洩同軸ケーブル38とを示し、これらの周辺筐体、機構、衝立等はシールド塗料等で電磁シールド37されている。代表的な例として、トンネル内のFM放送や列車無線などのアンテナ兼無線伝送路として利用されている。38aは受信アンテナスロット、38bは無線受信アンテナを示す。43は無線コントローラないし無線センサコントローラであり、送信アンテナ38bとインピーダンスマッチングして接続されデータ等を送受信することができるようになっている。
【0032】
漏洩同軸ケーブル38はスロット長を電波の1/4波長の整数倍にするとそのスロットから発射される電波は指向性を持っている。漏洩同軸ケーブル38は適切なスロットを設けることで、必要最低限の漏洩且つ必要充分な伝送機能41がえられ、VPWL通信を実現できる。
【0033】
無線センサ16と無線ブリッジ28は漏洩同軸ケーブル38で直接接続してもよいが、無線センサ16と漏洩同軸ケーブル38を直接接続できない場合は空間40が介在している。この空間40が近距離の場合では無線センサ16から漏洩同軸ケーブル38は電磁誘導によりデータ等を無線通信することができる。この電磁誘導の場合、無線センサ16からの無線信号は距離の2乗で急減衰するから他への漏洩もなく、使用周波数も異なる。したがって無線センサ16からの無線信号は空間があっても上記漏洩同軸ケーブル38から無線ブリッジ28にP2P(ピア・ツウ・ピア)方式での無線通信となる。また電磁誘導方式は無線での電力供給が容易にできるという特長もある。また、無線ブリッジ28には同じく図8で示すように複数の無線センサ16からの無線信号が入力され、無線ブリッジ28側からはn:1無線通信なるが、無線センサ16側からは1:1無線通信となり、P2P(ピア・ツウ・ピア)方式のVPWL通信となる。上記空間40はターゲットの電波伝送路以外は、機構部、衝立などに電磁吸収効果のある塗料やシートで電磁シールドすることが好ましい。あるいは空間40だけでなく無線センサ16が備えるアンテナから漏洩同軸ケーブル38に至る伝送路への電磁シールドは効果がある。無線センサ16と漏洩同軸ケーブル38との間、漏洩同軸ケーブル38と無線ブリッジ28との間ではインピーダンスマッチングさせることが好ましい。漏洩同軸ケーブル38を用いると、データや信号等の漏洩や混信が防止され、また、必要最低限の電波出力で伝送できるので、バッテリタイプの無線センサ16では省電力を図ることができて好ましい。
【0034】
図10では発信側(センサ/IO)45と受信側(漏洩同軸ケーブルとの接続部など)47との電磁誘導送受信部49,51による漏洩同軸ケーブル接続の構築例を示す。図10では電波の減衰は距離に反比例であり、電磁誘導の減衰は距離の2乗に反比例であるので、圧倒的に電磁誘導通信(非接触通信という)が減衰する。現実に非接触通信は数mmから数10mmでの通信である。減衰が激しいので短距離通信になるが漏洩や混信には強く、VPWL通信の高信頼性通信にも適している。電磁誘導はL(インダクタンス)によるトランス結合での伝搬の場合、信号だけではなく、相当程度の電力を供給できる。移動体に設置されたセンサ/IOの電力供給もできる。13.56MHzはSUICAなどのマネーカードやRFIDに、135KHzは給油システムや工場内通信にもちいられている。多くの関連(応用、システム)特許がある。本VPWLは、絶対ID化、暗号化等の最新のソフトウエア技術を取り込んだシステム(例:非接触センサ〜電磁誘導〜漏洩同軸ケーブル〜コントローラ)である。
【0035】
図11に作業単位階層2における作業単位10での通信例を示す。図11(a)の作業単位10内では機械等8に1つの無線センサ16とコントローラ(P2P)14内の無線ブリッジ28との間での通信例、図11(b)に複数のインフラストラクチャモード無線センサ16とコントローラ(P2P)14内の無線ブリッジ28との通信例、図11(c)にアドホックモードの複数の無線センサ16とコントローラ(P2P)14内の無線ブリッジ28との間の通信例を示す。いずれもVPWL方式の通信例を示す。
【0036】
図12に無線センサ16の構成例を示す。無線センサ16は、CPUバス40を備える。このCPUバス40に、CPU(ROM,RAM等を含む)42、専用送受信専用LSI44、汎用IOドライバ46、一次バッテリ48、外部電源供給部50、各種センサインターフェース52がCPUバス接続されている。外部電源供給部50にソーラセル等の外部電源54、各種センサインターフェース52に各種センサヘッド56、汎用IOドライバ46に各種IO、スイッチ等58が接続されている。専用送受信専用LSI44は送受信制御回路60、送信回路62、受信回路64を備える。また、SWとLED66はモード切換等のスイッチや運転状態の表示部を構成し、CPU42により制御されるようになっている。
【0037】
CPU42内のROMは、送受信専用LSI44の送受信制御回路60の動作およびコントローラ(P2P)14の無線ブリッジ28との接続および無線モード、周波数等の切り替えおよびSWとLED66制御などのプログラムを記憶しており、このプログラムに従い、CPU42は、送受信専用LSI44の送受信動作およびセンサドライブ、入出力ドライブなどを制御する。
【0038】
センサインターフェース52は、1つまたは複数のセンサヘッド56を制御し、の検出信号をCPU42で認識し、入力させるインタ−フェースである。
【0039】
実施の形態のVPWL通信の電波は、特定小電力無線、Zigbee無線、Bluetooth無線、UWB(ウルトラワイドバンド)、無線LAN(IEEE802.11)等の広範囲をカバーする無線通信である。
【0040】
なお、メッシュ型無線通信ではP2P無線通信を確立するために送信データ等の送受信に認証機能や否認防止機能のある暗号ロジックを合わせて用いることが好ましく、例えば図13で示すように、ワンタイムパスワード方式の暗号認証子を用いることができる。図13では、無線センサ16等の入出力機器や工場サーバ34等の通信源70から無線ブリッジ28や他の工場サーバ24等の通信先72にデータや制御信号を平文でVPWL通信を行うと共に、その平文をハッシュ処理や乱数処理部74で処理すると共に暗号化部76で暗号化し、ワンタイムパスワード方式の暗号認証子(タグ)としてメッセージを復号化部78で復号すると共に、タグ一致判定回路部80で一致であればGOとしてメッセージを受理し、一致しなければNGとしてメッセージを不受理する。この場合、タグ一致判定回路部80では上記判定のためハッシュ処理や乱数処理部82で平文の処理出力を入力する。
【0041】
また、さらに高信頼度のP2P伝送やVPWLシステムの無線ノード数が増大する場合、IPv6規格準拠によるアドレス体系やTDD(時分割複信)等のソフトウエアを合わせて用いることにより高信頼度のVPWL通信を構築することができる。さらに、各単位階層間を無線ブリッジ28でVPWL通信を構築したが、ゲートウエイやハブなどでVPWL通信を構築することもできる。実施の形態では工場を3階層化したが、1階層、あるいは2階層でも実施することができる。さらに、作業単位10では漏洩同軸ケーブル38を用いたが、その他の各種の指向性アンテナ、PLC(電力線搬送通信)等を用いることができる。
【0042】
以上説明した実施の形態の通信システムでは、工場内のデータや制御信号等の送受信にVPWL方式により通信するシステムであるので、有線配線を必要としないため、配線敷設がコストが削減され、有線配線が困難な回転等の移動体上のセンサや入出力機器との接続、また、製造目的に合わせた機械や設備等の配置変更等も容易、安価に行うことができる等の利点は勿論のこと、盗聴、混信、等もなく、通信上の高安全性、高信頼性のP2P通信を確保することができ、製品製造工場での製品製造上の自由度、精度や効率等を飛躍的に高めることができる。特に、有線前提の通信システム構成がFA(ファクトリオートメーション)に耐え得るVPWL通信を積極的に構成に加わることにより有線では実現が困難であった加工、組立て、検査等の工程の機能向上可能な次世代FAシステムを構築することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る通信システムが適用される工場の階層構成を示す図である。
【図2】図2は作業単位階層における作業単位内のVPWL通信システム例を示す図である。
【図3】図3は作業単位間のメッシュ型無線通信例を示す図である。
【図4】図4は工程単位階層における工程単位内のVPWL通信システム例を示す図である。
【図5】図5は工程単位階層における工程単位内の他のVPWL通信システム例を示す図である。
【図6】図6は工程単位間のメッシュ型無線通信例を示す図である。
【図7】図7は製造単位階層におけるVPWL通信システム例を示す図である。
【図8】図8は作業単位内の無線センサと無線ブリッジとの通信システム例を示す図である。
【図9】図9は無線センサと漏洩同軸ケーブルと無線コントローラとの接続を示す図である。
【図10】図10は発信側と受信側との電磁誘導送受信部によるVPWL構築を示す図である。
【図11】図11は作業単位における無線センサと無線ブリッジとの各種通信システム例を示す図である。
【図12】図12は、無線センサの構成例を示す図である。
【図13】図13は、VPWL通信のデータ(メッセージ)をワンタイムパスワード方式の認証子とともに伝送するシステム例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 工場
2 作業単位階層
4 工程単位階層
6 製造単位階層
8 機械等
10 作業単位
12 工程単位
14 コントローラ(P2P)
16 無線センサ
18 有線センサ
20 エンコーダ
22 モータ
28 無線ブリッジ
30 コントローラ
32 無線ブリッジ
34 工場サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内における製品製造のための通信システムにおいて、
当該工場を、機械や装置(機械等という)を用いて製品製造のために行われる加工、搬送、組立等の複数種の作業のいずれか1つないしは複数の組み合わせを1つの作業単位としこれら作業単位個々からなる作業単位階層と、1つないし複数の作業単位により行われる1つの工程ないしは複数の工程の組み合わせを1つの工程単位としこれら工程単位個々からなる工程単位階層と、上記工程単位階層すべてを含めて製品を製造する製造単位階層と、の3階層で階層化し、任意の単位階層と他の単位階層との間、単位階層内部、および機械等内部でのデータや制御信号等の送受信にはその少なくとも一部にP2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信を構築した、ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
各単位階層内部で3以上の無線ノード間の無線通信が存在する場合では、これらの無線ノード間では、メッシュ型無線でP2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
上記作業単位階層では、機械等をシーケンス制御するシーケンサ等のコントローラと、このコントローラに機械等やワークの状態を入力する入力機器と、コントローラからの制御信号やデータに応答して機械等を制御する出力機器とを含み、少なくとも一部の入出力機器とコントローラとの間では、無線ノードとして、P2P(ピア・ツウ・ピア)方式で無線通信する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
上記少なくとも一部の入出力機器が無線センサおよび無線入出力である、ことを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
上記P2P(ピア・ツウ・ピア)方式の無線通信のために電波指向性アンテナ機能を含むアンテナ機能および漏洩防止機能を兼ね備えた漏洩同軸ケーブルを用いたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−282188(P2008−282188A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125225(P2007−125225)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】