説明

通信制御装置、通信制御方法及び通信制御システム

【課題】二次システムの共存のための近隣検出に伴う負荷の集中を回避すること。
【解決手段】一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部と、前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知する干渉制御部と、を備える通信制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信制御方法、プログラム及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来の周波数リソースの枯渇を緩和するための対策の1つとして、周波数の二次利用についての議論が進められている。周波数の二次利用とは、あるシステムに優先的に割り当てられている周波数チャネルの一部又は全部を、他のシステムが二次的に利用することをいう。一般的に、周波数チャネルが優先的に割り当てられているシステムは一次システム(Primary System)、当該周波数チャネルを二次利用するシステムは二次システム(Secondary System)と呼ばれる。
【0003】
TVホワイトスペースは、二次利用が議論されている周波数チャネルの一例である。TVホワイトスペースは、一次システムとしてのTV放送システムに割り当てられている周波数チャネルのうち、地域に応じて当該TV放送システムにより利用されていないチャネルを指す。このTVホワイトスペースを二次システムに開放することで、周波数リソースの効率的な活用が実現され得る。TVホワイトスペースの二次利用を可能とするための物理層(PHY)及びMAC層の無線アクセス方式の仕様として、例えば、IEEE802.22、IEEE802.11af、及びECMA(European Computer Manufacturer Association)−392(CogNea)などの複数の標準仕様が存在する。
【0004】
IEEE802.19ワーキンググループは、異なる無線アクセス方式を使用する複数の二次システムを円滑に共存させることを目的とした検討を進めている。例えば、下記非特許文献1は、二次システムの共存(coexistence)のために求められる諸機能を、CM(Coexistence Manager)、CE(Coexistence Enabler)及びCDIS(Coexistence Discovery and Information Server)という3つの機能エンティティにグループ分けしている。CMは、主に共存のための意思決定(decision-making)を行う機能エンティティである。CEは、CMと二次利用ノードとの間の命令の伝達や情報の交換を仲介するインタフェースとなる機能エンティティである。CDISは、複数の二次システムの情報を一元的に管理するサーバとなる機能エンティティである。CDISは、互いに干渉する可能性のある近隣の二次システムを検出する近隣検出(Neighbor Discovery)機能をも有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Coexistence System Description」、[online]、[2011年3月17日検索]、インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.19/dcn/11/19-11-0011-01-0001-coexistence-system-description.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、互いに干渉する可能性のある近隣の二次システム(以下、近隣システムという)を検出するためには、各二次システムのカバレッジを計算するための様々なパラメータを収集することが求められる。そのため、1つの機能エンティティが一元的に近隣検出を行おうとすると、二次システムの数が多い場合に、当該1つの機能エンティティの計算処理の負荷及びパラメータ収集に伴うトラフィックの負荷が増大する。これに対し、複数の機能エンティティが協調して近隣検出を行うことができれば、上述した負荷の集中を回避し、複数の二次システムを円滑に運用することができるものと期待される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部と、前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知する干渉制御部と、を備える通信制御装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードにおける通信制御方法であって、前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータ取得するステップと、取得された前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算するステップと、計算された前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知するステップと、を含む通信制御方法が提供される。
【0009】
また、本開示によれば、一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードと、前記二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードと、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードと、を含み、前記制御ノードは、前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部、前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部、及び前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を前記検出ノードへ通知する干渉制御部、を備える、通信制御システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本開示によれば、二次システムの共存のための近隣検出に伴う負荷の集中を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に関連する通信システムの概要について説明するための説明図である。
【図2】共存支援のための3つの機能エンティティの相関を示す説明図である。
【図3】機能エンティティの配置の一例を示す説明図である。
【図4】一般的な近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】二次システムの位置関係の第1の例を示す説明図である。
【図6】二次システムの位置関係の第2の例を示す説明図である。
【図7】CMに相当する通信制御装置の一実施形態に係る構成の一例を示すブロック図である。
【図8】CDISに相当する通信制御装置の一実施形態に係る構成の一例を示すブロック図である。
【図9】一実施形態においてCMが生成するカバレッジ情報の第1の例について説明するための説明図である。
【図10】図9に例示したカバレッジ情報に基づく近隣システムの検出について説明するための説明図である。
【図11】一実施形態においてCMが生成するカバレッジ情報の第2の例について説明するための説明図である。
【図12】一実施形態においてCDISが生成する近隣システムリストの一例について説明するための第1の説明図である。
【図13】一実施形態においてCDISが生成する近隣システムリストの一例について説明するための第2の説明図である。
【図14】一実施形態に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図15】第1の変形例に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図16】第2の変形例に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
また、以下の順序で説明を行う。
1.システムの概要
1−1.システムの全体的な構成
1−2.機能エンティティの説明
1−3.機能エンティティの配置例
1−4.一般的な近隣検出に関する処理の流れ
1−5.一実施形態に関する課題の説明
2.一実施形態に係る装置の構成例
2−1.CM
2−2.CDIS
2−3.データ例
3.一実施形態に係る処理の流れ
4.変形例
4−1.第1の変形例
4−2.第2の変形例
5.まとめ
【0014】
<1.システムの概要>
[1−1.システムの全体的な構成]
図1は、本発明の一実施形態に関連する通信システムの概要について説明するための説明図である。
【0015】
図1を参照すると、一次システムを構成する一次送信局10及び複数の一次受信局12が示されている。一次送信局10は、サービスエリア14の内部に位置する一次受信局12に一次システムのサービスを提供する。一次送信局10は、例えば、TV放送の放送局であってもよく、又はセルラ通信方式の無線基地局若しくは中継局であってもよい。一次送信局10がTV放送の放送局である場合には、一次受信局12は、TV放送の受信用アンテナ及びチューナを有する受信機である。また、一次送信局10がセルラ通信方式の無線基地局である場合には、一次受信局12は、当該セルラ通信方式に従って動作する無線端末である。なお、以下の説明では、一次送信局10及び一次受信局12を一次利用ノードと総称する場合がある。
【0016】
一次送信局10は、パケットベースネットワーク16上に位置するデータサーバ20と接続される。パケットベースネットワーク16は、インターネット又は一次システムのバックボーンネットワークなどであってよい。データサーバ20は、周波数チャネルの二次利用に関するデータを記憶するデータベースを有するサーバ装置である。データサーバ20には、1つ以上の通信制御装置30が接続される。通信制御装置30は、一次システムに割り当てられた周波数チャネルを利用する複数の二次システム間の共存を制御するために導入される装置である。
【0017】
図1には、さらに、複数の二次利用ノード40及び42が示されている。二次利用ノード40は、一次システムに割り当てられた周波数チャネルを利用して、サービスエリア44の内部に位置する二次利用ノード42へ二次システムのサービス(以下、二次通信サービスという)を提供する装置である。一次システムがTV放送システムである場合には、二次利用ノード40は、マスタTVBD(TV Band Device)とも呼ばれる。二次利用ノード40は、典型的には、測位機能(Geo-location function)及び通信制御装置30へアクセスする機能を有する。また、二次利用ノード40は、直接的にデータサーバ20へアクセス可能であってもよい。二次利用ノード42は、各サービスエリア44内に位置し、二次利用ノード40により提供される二次通信サービスを利用する装置である。一次システムがTV放送システムである場合には、二次利用ノード42は、スレーブTVBDとも呼ばれる。二次利用ノード42は、原則として、近隣の二次利用ノード40の許可を得た上で無線信号を送信する。
【0018】
二次利用ノード40は、二次システムの運用を開始するに際して、二次システムに関する情報をデータサーバ20に登録する。そして、二次利用ノード40は、データサーバ20から提供される制御情報に基づいて、二次システムを運用する。しかし、図1に示した状況のように、複数の二次システムが並行して運用される場合には、二次システム間での信号の衝突や、各二次システムから送信される信号に起因する干渉が重なり合って一次システムに致命的な影響を及ぼすというリスクが生じ得る。特に、各二次システムが用いる無線アクセス方式が異なる場合には、二次システム間で連携しながらシステムを運用することが困難であるため、上述したリスクは一層高まる。そこで、IEEE802.19ワーキンググループは、複数の二次システムの共存を円滑に支援するための仕組みを検討している(上記非特許文献1参照)。IEEE802.19において、二次システムの共存を支援するための諸機能は、CM、CE及びCDISという3つの機能エンティティにグループ分けされる(図2参照)。
【0019】
[1−2.機能エンティティの説明]
(1)CM(Coexistence Manager)
CMは、共存のための意思決定(decision-making)を行う機能エンティティである。CMは、一次システムに関する情報、利用可能なチャネルに関する情報及び二次システムに関する情報を取得する。CMによる情報の取得元は、CDIS、他のCM及び(CEを介してアクセスされる)二次利用ノードなどである。CMは、これら情報に基づいて、自らの制御下にある二次利用ノードがどの周波数チャネルを用いて二次システムを運用すべきかを決定する。CMは、各二次利用ノードについて、最大送信電力、推奨される無線アクセス方式、及び位置データの更新の周期などの追加的な制御パラメータをさらに決定してもよい。そして、CMは、決定したパラメータに従って、各二次利用ノードに二次システムを運用させ又は二次システムを再構成させる。
【0020】
(2)CE(Coexistence Enabler)
CEは、CMと二次利用ノードとの間の命令の伝達や情報の交換を仲介するインタフェースとなる機能エンティティである。例えば、CEは、二次利用ノードが有する情報をCMが使用し得る形式に変換し、変換した情報をCMへ伝達する。また、CEは、CMからの二次システムの共存についての命令を二次利用ノードが実行し得る形式に変換し、変換した命令を二次利用ノードに伝達する。
【0021】
(3)CDIS(Coexistence Discovery and Information Server)
CDISは、複数の二次システムの情報を管理するサーバとなる機能エンティティである。例えば、CDISは、各二次利用ノードからCE及びCMを介して二次システムに関する情報を収集する。また、CDISは、一次システムに関する情報及び利用可能なチャネルに関する情報をデータサーバ20から収集する。そして、CDISは、収集した情報をデータベースに蓄積する。CDISにより蓄積された情報は、CMによる共存のための意思決定の際に使用される。CDISは、複数のCMの中からのマスタCM(複数のCMを統括し、集中的に意思決定を行うCM)の選択を行ってもよい。また、CDISは、互いに干渉する可能性のある近隣の二次システムを検出する近隣検出機能を有する。
【0022】
図1に示した通信制御装置30の各々には、上述した3種類の機能エンティティのうち少なくとも1つが実装される。なお、一部の機能エンティティは、個々の二次利用ノード40に実装されてもよい。また、一部の機能エンティティは、データベース20と同一の装置に実装されてもよい。
【0023】
[1−3.機能エンティティの配置例]
上述した3つの機能エンティティは、例えば、図3に示すように各装置に配置され得る。なお、ここで説明する機能エンティティの配置は一例に過ぎず、他の配置もまた使用されてよい。
【0024】
図3を参照すると、通信制御装置30aにCDIS、2つの通信制御装置30bにそれぞれCMが配置されている。一方の通信制御装置30bには、第1のCM(CM#A)が配置され、二次利用ノード40a及び40bが属する。他方の通信制御装置30bには、第2のCM(CM#B)が配置され、二次利用ノード40c及び40dが属する。二次利用ノード40aは、二次利用ノード42aと共に二次システムN1を運用する。二次利用ノード40bは、二次利用ノード42bと共に二次システムN2を運用する。二次利用ノード40cは、二次利用ノード42cと共に二次システムN3を運用する。二次利用ノード40dは、二次利用ノード42dと共に二次システムN4を運用する。二次利用ノード40a、40b、40c及び40dには、それぞれCEが配置される。このように、各二次システムを運用するマスタデバイスである各二次利用ノード40は、CMとインタラクションするためのCEを少なくとも有する。
【0025】
[1−4.一般的な近隣検出に関する処理の流れ]
図3の例の通り機能エンティティが配置される場合、一般的な近隣検出に関する処理は図4に示すような流れで行われ得る。
【0026】
図4を参照すると、まず、二次利用ノード40a及び40bは、各二次システムのカバレッジ(即ち、通信範囲、あるいはサービスエリアの範囲)を計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS11)。同様に、二次利用ノード40c及び40dもまた、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS12)。ここで収集されるパラメータは、例えば、各二次利用ノードの位置、アンテナ高さ、最大送信電力、アンテナ利得及び最小受信感度のうち少なくとも1つを含む。
【0027】
次に、二次利用ノード40a及び40bは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#A)30bへ送信する(ステップS13)。同様に、二次利用ノード40b及び40cは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#B)30bへ送信する(ステップS14)。通信制御装置(CM#A)30bは、取得したパラメータリストを通信制御装置(CDIS)30aへ転送する(ステップS15)。同様に、通信制御装置(CM#B)30bは、取得したパラメータリストを通信制御装置(CDIS)30aへ転送する(ステップS16)。
【0028】
通信制御装置(CDIS)30aは、取得したパラメータリストを用いて、配下の全ての二次システムのカバレッジを計算する(ステップS20)。次に、通信制御装置(CDIS)30aは、二次システムの各組合せについて干渉の可能性を判定し、近隣システムを検出する(ステップS30)。そして、通信制御装置(CDIS)30aは、検出された近隣システムの組合せを記述した近隣システムリストを、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bへ提供する(ステップS41、S42)。
【0029】
次に、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bは、互いに干渉する可能性のある二次システムが存在することを近隣システムリストが示している場合に、干渉を抑制するための交渉を行う(ステップS50)。例えば、ここでの交渉によって、近隣システムの利用チャネル、無線アクセス方式及び最大送信電力のうち少なくとも1つが調整され得る。そして、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bの一方又は双方は、交渉の結果を各二次システムの構成に反映させるために、システムの構成又は再構成を二次利用ノード40に指示する(ステップS61、S62)。
【0030】
[1−5.一実施形態に関する課題の説明]
図4に示した近隣検出に関する処理の流れでは、共存システム内のCDISが、配下の全ての二次システムを対象として、一元的に近隣検出を行う。近隣検出を行うためには、全ての二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをCDISが収集することが求められる。しかし、二次システムの数が増加すると、CDISによるパラメータ収集に伴うトラフィックの負荷がネットワークに悪影響を与える恐れがある。また、近隣検出のための計算処理の負荷がCDISの処理容量を超える恐れもある。
【0031】
例えば、図5を参照すると、二次利用ノード40aにより運用される二次システムN1のカバレッジと、二次利用ノード40bにより運用される二次システムN2のカバレッジとが重なっている。従って、二次システムN1及びN2は、互いに近隣システムである。二次利用ノード40a及び40bは通信制御装置(CM#A)30bに属するため、通信制御装置(CM#A)30bは、二次システムN1及びN2が互いに近隣システムであることを把握することができる。また、二次利用ノード40cにより運用される二次システムN3のカバレッジと、二次利用ノード40dにより運用される二次システムN4のカバレッジとが重なっている。従って、二次システムN3及びN4は、互いに近隣システムである。二次利用ノード40c及び40dは通信制御装置(CM#B)30bに属するため、通信制御装置(CM#B)30bは、二次システムN3及びN4が互いに近隣システムであることを把握することができる。このような状況において、図6に示すように、さらに二次システムN5を運用する新たな二次利用ノード40eが出現し、二次利用ノード40eが通信制御装置(CM#A)30bに属するとする。二次システムN5のカバレッジは、二次システムN2及び二次システムN3の双方と重なっている。しかし、通信制御装置(CM#A)30bは、二次システムN3の存在及びそのカバレッジを知らないため、二次システムN5と二次システムN3とが互いに干渉することを認識できない。また、通信制御装置(CM#B)30bは、二次システムN5の出現及びそのカバレッジを知らないため、二次システムN3と二次システムN5とが互いに干渉することを認識できない。
【0032】
即ち、複数の二次システムが参加する共存システムにおいて、CMをまたがって二次システム間の干渉の可能性を判定するノードの存在は欠かせないものである。しかし、上述したように、既存の仕組みにおけるCDISの計算処理の負荷及びパラメータ収集に伴うトラフィックの負荷は、複数の二次システムの円滑な運用を妨げる恐れがある。
【0033】
また、複数の通信事業者(放送事業者も含む)がシステムを運用する場合には、各事業者にとって、システムの詳細なパラメータを他の事業者に公開することを避けたいというニーズも生じ得る。しかし、1つのCDISが全ての二次システムのパラメータを収集する構成においては、そのようなニーズを満たすことが難しい。
【0034】
そこで、次節より説明する実施形態では、一般的なCDISの機能の一部をCMが肩代わりし、CMからCDISへ送信されるデータ量を削減することにより、上述した負荷の問題を回避すると共に、複数の事業者により運用されるシステムの円滑な共存をも可能とする。
【0035】
<2.一実施形態に係る装置の構成例>
[2−1.CM]
図7は、本実施形態に係る通信制御装置30bの構成の一例を示すブロック図である。通信制御装置30bは、CMに相当する装置である。なお、ここでは、説明の簡明さの観点から、近隣検出に関する機能以外のCMの機能についての説明を省略する。図7を参照すると、通信制御装置30bは、第1通信部110、第2通信部120、記憶部130及び制御部140を備える。
【0036】
第1通信部110は、通信制御装置30bと二次利用ノード40との間の通信を仲介する通信インタフェースである。第1通信部110は、任意の無線通信プロトコル又は有線通信プロトコルをサポートし、通信制御装置30bと1つ以上の二次利用ノード40との間の通信接続を確立する。
【0037】
第2通信部120は、通信制御装置30bと他の通信制御装置30との間の通信を仲介する通信インタフェースである。第2通信部120は、典型的には、パケットベースの(有線又は無線の)通信プロトコルをサポートし、通信制御装置30bと他の通信制御装置30との間の通信接続を確立する。
【0038】
記憶部130は、半導体メモリ又はハードディスクなどの記憶媒体により構成され、通信制御装置30bによる処理のためのプログラム及びデータを記憶する。記憶部130により記憶されるデータには、例えば、二次利用ノード40から収集されるパラメータリスト、後に説明する制御部140において生成されるカバレッジ情報、及び通信制御装置30aから提供される近隣システムリストが含まれ得る。
【0039】
制御部140は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサに相当する。制御部140は、記憶部130又は他の記憶媒体に記憶されるプログラムを実行することにより、本実施形態に係るCMの機能を動作させる。より具体的には、制御部140は、パラメータ取得部142、計算部144及び干渉制御部146を含む。
【0040】
パラメータ取得部142は、一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する各二次利用ノード40から、第1通信部110を介して、二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得する。本明細書において、二次システムのカバレッジとは、各二次システムのサービスエリアあるいは通信可能なエリアの地理的な範囲をいう。サービスエリアの外周に設けられ得るガードエリアの範囲もまた、カバレッジに含まれてよい(含まれなくてもよい)。二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータとは、例えば、各二次利用ノードの位置、アンテナ高さ、最大送信電力、アンテナ利得及び最小受信感度のうち少なくとも1つについてのパラメータであってよい。
【0041】
計算部144は、パラメータ取得部142により取得されるパラメータを用いて、各二次システムのカバレッジを計算する。
【0042】
例えば、計算部144は、第1の手法として、“Method for point-to-area predictions for terrestrial services in the frequency range 30 mhz to 3000mhz”(International Telecommunications Commission(ITU), RECOMMENDAION ITU-R P1546-3, 2007)に記載された伝播路カーブを利用する手法に従って、各二次システムのカバレッジを計算してもよい。第1の手法によれば、アンテナ高さ及び電界強度から通信距離(一定の場所率及び一定の時間率で通信が可能である距離)を導くための実測値に基づく統計的な曲線(伝播路カーブ)が、予め記憶部130により記憶される。そして、計算部144は、二次利用ノード40の最大送信電力を電界強度に変換し、二次利用ノード40のアンテナ高さ及び電界強度に対応する通信距離を、伝播路カーブから取得する。この通信距離が、二次利用ノード40により運用される二次システムのカバレッジの半径となる。
【0043】
その代わりに、計算部144は、第2の手法として、奥村・秦カーブの市街地モデル(“デジタルワイヤレス伝送技術”(三瓶政一著,Pearson Education Japan,pp.16-19)参照)における評価式を利用する手法に従って、各二次システムのカバレッジを計算してもよい。この場合、計算部144は、二次利用ノード40の最大送信電力と二次利用ノード42の最小受信感度から、許容される最大の経路損失を算出する。そして、計算部144は、算出された経路損失及びアンテナ高さを評価式に代入することにより、通信距離を算出する。この通信距離が、二次利用ノード40により運用される二次システムのカバレッジの半径となる。
【0044】
また、計算部144は、二次利用ノード42によるセンシングの結果として特定の位置において二次システムの無線信号が受信されない場合には、当該位置を二次システムのカバレッジから除外してもよい。
【0045】
干渉制御部146は、計算部144により計算される配下の各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、二次システム間の干渉の可能性を判定して近隣システムを検出する検出ノードへ通知する。本実施形態では、上記検出ノードは、CDISを有する通信制御装置30aである。干渉制御部146からCDISへ通知されるカバレッジ情報は、複数の地理的な区画の各々が各二次システムのカバレッジに属するか否かを示すマップ情報であってもよい。その代わりに、上記カバレッジ情報は、各二次システムのカバレッジの基準位置(例えば、マスタTVBDである二次利用ノード40の位置)と径とを示す情報であってもよい。カバレッジ情報の具体的な例について、後により詳細に説明する。通信制御装置30aは、各通信制御装置30bの干渉制御部146からカバレッジ情報が通知されると、二次システムの各組合せについて互いの干渉の可能性を判定し、近隣システムを検出する。そして、通信制御装置30aは、検出された近隣システムのリストを各通信制御装置30bへ提供する。
【0046】
干渉制御部146は、配下の二次システムと他の通信制御装置30bにより制御される二次システムとが互いに近隣システムであることが通信制御装置30aから提供される近隣システムリストにおいて示されると、当該近隣システム間の干渉を抑制するために、他の通信制御装置30bとの間で交渉を行う。例えば、干渉制御部146は、近隣システム間で異なる周波数チャネルを利用することができる場合には、いずれか一方又は双方の二次システムの利用チャネルを変更させてもよい。また、干渉制御部146は、近隣システムの双方がメッシュプロトコルをサポートしている無線アクセス方式を使用できる場合には、それら近隣システムに共通の周波数チャネルを割り当ててメッシュネットワークを形成させてもよい。また、干渉制御部146は、近隣システムのいずれか一方又は双方が最大送信電力を下げてカバレッジを縮小することを許容できる場合には、最大送信電力の引き下げを二次システムに指示してもよい。それにより、近隣システム間の干渉が抑制される。
【0047】
[2−2.CDIS]
図8は、本実施形態に係る通信制御装置30aの構成の一例を示すブロック図である。通信制御装置30aは、CDISに相当する装置である。なお、ここでは、説明の簡明さの観点から、近隣検出に関する機能以外のCDISの機能についての説明を省略する。図8を参照すると、通信制御装置30aは、通信部150、記憶部160及び制御部170を備える。
【0048】
通信部150は、通信制御装置30aとデータサーバ20及び他の通信制御装置30との間の通信を仲介する通信インタフェースである。通信部150は、典型的には、パケットベースの(有線又は無線の)通信プロトコルをサポートし、通信制御装置30aと他の装置との間の通信接続を確立する。
【0049】
記憶部160は、半導体メモリ又はハードディスクなどの記憶媒体により構成され、通信制御装置30aによる処理のためのプログラム及びデータを記憶する。記憶部160により記憶されるデータには、例えば、通信制御装置30bから通知される各二次システムについてのカバレッジ情報、及び後に説明する制御部170において生成される近隣システムリストが含まれ得る。
【0050】
制御部170は、CPU又はDSPなどのプロセッサに相当する。制御部170は、記憶部160又は他の記憶媒体に記憶されるプログラムを実行することにより、本実施形態に係るCDISの機能を動作させる。より具体的には、制御部170は、データ管理部172及び近隣検出部174を含む。
【0051】
データ管理部172は、複数の二次システムの共存のための様々な情報を管理する。例えば、データ管理部172は、一次システムに関する情報(例えば、一次システムのカバレッジ、一次受信局の位置、二次利用可能なチャネルのリストなど)をデータサーバ20から定期的に取得し、取得した情報を記憶部160に記憶させる。また、データ管理部172は、通信制御装置30bから通知される二次システムに関する情報(例えば、上述したカバレッジ情報)を記憶部160に記憶させる。そして、データ管理部172は、通信制御装置30bからの要求に応じて、記憶部160に記憶させた情報を通信制御装置30bに提供する。
【0052】
近隣検出部174は、通信制御装置30bから通信部150を介して二次システムのカバレッジ情報が通知されると、複数の二次システム間の干渉の可能性を判定する。例えば、近隣検出部174は、カバレッジが重なり合う二次システムの間で干渉の可能性があると判定してもよい。また、近隣検出部174は、カバレッジが重なっていなくても、カバレッジの外周の間の最短距離が所定の閾値を下回る場合に、二次システムの間で干渉の可能性があると判定してもよい。近隣検出部174は、干渉の可能性のある二次システムの組合せを検出すると、当該二次システムを近隣システムとして記述する近隣システムリストを生成する。そして、近隣検出部174は、生成した近隣システムリストを通信制御装置30bへ提供する。近隣システムリストの具体的な例について、後により詳細に説明する。
【0053】
[2−3.データ例]
(1)カバレッジ情報
(1−1)第1の例
図9は、本実施形態において通信制御装置30bが生成するカバレッジ情報の第1の例について説明するための説明図である。図9の左上には、地理的領域を区分することにより形成される複数の区画が示されている。通信制御装置30bの計算部144は、各二次システムについて、このような1つ以上の区画にまたがって存在するサービスエリア44の範囲をカバレッジとして計算する。そして、計算部144は、算出したカバレッジに各区画が属するか否かを示すビットマップ形式のカバレッジ情報を生成する。図9の右下には、カバレッジに属しない区画をゼロ、カバレッジに属する区画を1、基準位置を含むカバレッジの中央の区画を2に設定した二次システムNiについてのカバレッジ情報が示されている。なお、図9の例に限定されず、各区画の形状は矩形以外のいかなる形状であってもよい(例えば、三角形又は六角形など)。
【0054】
図10は、図9に例示したカバレッジ情報に基づく近隣システムの検出について説明するための説明図である。図10の上段には、通信制御装置30bから通信制御装置30aに通知され得る2つの二次システムNi及びNjについてのカバレッジ情報が示されている。通信制御装置30aの近隣検出部174は、カバレッジ情報の各区画について、2つのカバレッジ情報の値の論理積をそれぞれ計算する。その結果、図10の下段に示したような、カバレッジが重複する区画のみがゼロ以外の値となるビットマップが導かれる。このようにビットマップがゼロ以外の値を含む場合、2つの二次システムは互いに干渉する可能性があると判定され得る。また、上記ビットマップが値“2”を含む場合、一方の二次システムのマスタデバイスである二次利用ノード40からの無線信号が他方の二次システムの二次利用ノード40に直接到達し得ることが把握される。
【0055】
このように、カバレッジ情報の第1の例が採用される場合、通信制御装置30aの近隣検出部174は、単純な論理積の演算を繰り返すことで、二次システム間の干渉の可能性を容易に判定することができる。
【0056】
なお、カバレッジ情報の第1の例において、各区画の値は、各区画において想定される二次システムの無線信号の電力レベルを示してもよい。それにより、カバレッジ情報のデータ量は増加するものの、通信制御装置30aの近隣検出部174により干渉の可能性のみならず干渉の強さをも詳細に推定することが可能となる。
【0057】
(1−2)第2の例
図11は、本実施形態において通信制御装置30bが生成するカバレッジ情報の第2の例について説明するための説明図である。第2の例において、カバレッジ情報は、各二次システムのカバレッジの基準位置と径とをリスト形式で示す情報である。
【0058】
図11の左には、通信制御装置(CM#A)30bから通信制御装置(CDIS)30aへ通知されるカバレッジ情報が示されている。当該カバレッジ情報は、図6に例示した二次システムN1、N2及びN5の二次システムID、基準位置(二次利用ノード40の位置)及び径(例えば、基準位置を中心とするサービスエリアの半径)を含む。さらに、本実施形態では、カバレッジ情報において、二次システムごとにカバレッジが変更されたか否かを示す変更区分が付与される。図11の例では、二次システムN5のカバレッジ情報が新たに追加されたことを、二次システムN5についての変更区分(「新規」)が示している。図11の右には、通信制御装置(CM#B)30bから通信制御装置(CDIS)30aへ通知されるカバレッジ情報が示されている。当該カバレッジ情報は、図6に例示した二次システムN3及びN4の二次システムID、基準位置及び径を含む。
【0059】
通信制御装置30aの近隣検出部174は、このようなカバレッジ情報が通知されると、カバレッジ情報に含まれる二次システムの各組合せについて、基準位置の間の距離と2つの径とに基づいて、二次システム間の干渉の可能性を判定する。例えば、基準位置の間の距離が径の和よりも小さい場合には、2つの二次システムのカバレッジが重なっている。また、例えば、基準位置の間の距離が一方の径よりも小さい場合には、一方の二次システムのマスタデバイスである二次利用ノード40からの無線信号が他方の二次システムの二次利用ノード40に直接到達し得ることが把握される。これらいずれの場合にも、近隣検出部174は、二次システム間に干渉の可能性があると判定し得る。
【0060】
近隣検出部174は、例えば、いずれかの二次システムが新たに追加された場合には、当該新たな二次システムと他の二次システムとの間の干渉の可能性のみを判定してもよい。図11の例では、近隣検出部174は、二次システムN5と他の二次システムとの間の干渉の可能性のみを追加的に判定し得る。
【0061】
(2)近隣システムリスト
図12及び図13は、本実施形態において通信制御装置30aが生成する近隣システムリストの一例について説明するため説明図である。
【0062】
図12の近隣システムリストは、図5に例示した二次システム間の位置関係を前提としている。図12の近隣システムリストは、CM#Aに属する二次システムN1とCM#Aに属する二次システムN2とが近隣システムの関係にあること(ペアID:A01)、及びCM#Bに属する二次システムN3とCM#Bに属する二次システムN4とが近隣システムの関係にあること(ペアID:B01)を示している。これら2つのペアはいずれも、共通するCMに属する近隣システムのペアである。このような近隣システムを、ここではCM内(Intra−CM)近隣システムという。一方、異なるCMに属する近隣システムを、CM間(Inter−CM)近隣システムという。図12の近隣システムリストには、CM間近隣システムは存在しない。
【0063】
図12の例において、近隣システムの各ペアには、「クラス」という属性が付与されている。「クラス」は、例えば次のような近隣システム間の位置関係の分類を表す属性であってよい。
−クラスC1:マスタデバイス同士が無線通信可能である
−クラスC2:マスタデバイス同士は直接通信できないがカバレッジが重なっている
−クラスC3:一方の二次システムのカバレッジが他方に含まれている
−クラスC4:カバレッジは重なっていないものの距離が近いため干渉の可能性がある
このようなクラス属性は、CMが干渉を抑制するために二次システムの構成を調整する際に利用され得る。例えば、クラスC1のペアについては、マスタデバイス(例えば、TV放送システムにおけるTVBD)同士が直接的に無線通信することができる。そのため、2つの二次システムに共通する周波数チャネルを割当てることで、マスタデバイス間でスケジューリング情報を交換させ又はメッシュネットワークを形成させて、互いに干渉を与えることなく2つの二次システムを運用することができる。クラスC2のペアについては、マスタデバイス同士が直接的に無線通信することはできない。そのため、2つの二次システムにメッシュネットワークを形成させる場合には、例えばCMが各マスタデバイスに同期信号を供給することが求められ得る。クラスC3のペアについては、例えば、よりカバレッジの広い二次システムのマスタデバイスが他方の二次システムにおける信号の送信をもスケジューリングすることで、2つの二次システムを共存させることができる。このようなクラス分類は、図9又は図11に例示したカバレッジ情報を用いて、通信制御装置30aの近隣検出部174により決定され得る。
【0064】
図13の近隣システムリストは、図6に例示した二次システム間の位置関係を前提としている。図13の近隣システムリストは、図12の近隣システムリストに含まれるペアに加えて、3つの近隣システムのペアを含む。第1の新たなペアは、CM#Aに属する二次システムN2とCM#Aに属する二次システムN5とのCM内近隣システムのペア(ペアID:A02)である。第2の新たなペアは、CM#Aに属する二次システムN5とCM#Bに属する二次システムN3とのCM間近隣システムのペア(ペアID:A11)である。第3の新たなペアは、CM#Bに属する二次システムN3とCM#Aに属する二次システムN5とのCM間近隣システムのペア(ペアID:B11)である。ペアA11とペアB11とは、実質的には同じ近隣システムのペアである。
【0065】
通信制御装置30aの近隣検出部174は、このような近隣システムリストを各通信制御装置30bに提供する。
【0066】
<3.一実施形態に係る処理の流れ>
図14は、本実施形態に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
図14を参照すると、まず、二次利用ノード40a、40b及び40eは、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS11)。同様に、二次利用ノード40c及び40dもまた、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS12)。
【0068】
次に、二次利用ノード40a、40b及び40eは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#A)30bへ送信する(ステップS13)。かかるパラメータリストは、通信制御装置(CM#A)30bの第1通信部110により受信され、パラメータ取得部142により取得される。同様に、二次利用ノード40b及び40cは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#B)30bへ送信する(ステップS14)。かかるパラメータリストは、通信制御装置(CM#B)30bの第1通信部110により受信され、パラメータ取得部142により取得される。
【0069】
次に、通信制御装置(CM#A)30bの計算部144は、パラメータ取得部142により取得されたパラメータを用いて、配下の各二次システムのカバレッジを計算する(ステップS21)。そして、干渉制御部146は、計算部144により計算された各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、通信制御装置30aへ通知する(ステップS25)。
【0070】
また、通信制御装置(CM#B)30bの計算部144は、パラメータ取得部142により取得されたパラメータを用いて、配下の各二次システムのカバレッジを計算する(ステップS23)。そして、干渉制御部146は、計算部144により計算された各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、通信制御装置30aへ通知する(ステップS26)。
【0071】
通信制御装置(CDIS)30aの近隣検出部174は、これら通信制御装置30bから通知されたカバレッジ情報を用いて、二次システムの各組合せについて互いの干渉の可能性を判定し、近隣システムを検出する(ステップS30)。そして、近隣検出部174は、検出された近隣システムの組合せを記述した近隣システムリストを、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bへ提供する(ステップS41、S42)。
【0072】
次に、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bの干渉制御部146は、互いに干渉する可能性のある二次システムが存在することを近隣システムリストが示している場合に、干渉を抑制するための交渉を行う(ステップS50)。そして、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bの一方又は双方は、交渉の結果を各二次システムの構成に反映させるために、システムの構成又は再構成を二次利用ノード40に指示する(ステップS61、S62)。
【0073】
なお、図14に示した通信制御処理の流れは一例に過ぎない。即ち、通信制御処理を構成する各処理ステップは、例示された順序とは異なる順序で実行されてもよい。また、図14に示されていない処理ステップが追加的に実行され、又は一部の処理ステップの実行が省略されてもよい。
【0074】
<4.変形例>
[4−1.第1の変形例]
上述した実施形態では、二次システムの全ての組合せについて、CDISが干渉の可能性を判定する例を説明した。しかしながら、例えば、CMが、当該CMの配下の二次システムの各組合せについてカバレッジ情報を用いて干渉の可能性を判定し、CM内近隣システムを検出してもよい(即ち、通信制御装置30bもまた近隣検出部を備えてよい)。その場合には、CDISは、CMをまたがる二次システムの組合せについてのみ干渉の可能性を判定し、CM間近隣システムを検出する。それにより、CM内近隣システムの検出処理が複数のCMに分散されるため、CDISに掛かる負荷をより一層軽減することができる。
【0075】
図15は、そのような第1の変形例に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図15を参照すると、まず、二次利用ノード40a、40b及び40eは、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS11)。同様に、二次利用ノード40c及び40dもまた、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS12)。
【0076】
次に、二次利用ノード40a、40b及び40eは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#A)30bへ送信する(ステップS13)。同様に、二次利用ノード40b及び40cは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#B)30bへ送信する(ステップS14)。
【0077】
次に、通信制御装置(CM#A)30bは、取得したパラメータを用いて配下の各二次システムのカバレッジを計算し(ステップS21)、CM#Aに属する二次システムを対象として、CM内近隣システムを検出する(ステップS22)。同様に、通信制御装置(CM#B)30bは、取得したパラメータを用いて配下の各二次システムのカバレッジを計算し(ステップS23)、CM#Bに属する二次システムを対象として、CM内近隣システムを検出する(ステップS24)。
【0078】
次に、通信制御装置(CM#A)30bは、各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、通信制御装置30aへ通知する(ステップS25)。通信制御装置(CM#B)30bもまた、各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、通信制御装置30aへ通知する(ステップS26)。
【0079】
通信制御装置(CDIS)30aは、これら通信制御装置30bから通知されたカバレッジ情報を用いて、CM#AとCM#Bとをまたがる二次システムを対象として、CM間近隣システムを検出する(ステップS31)。そして、通信制御装置(CDIS)30aは、検出されたCM間近隣システムの組合せを記述した近隣システムリストを、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bへ提供する(ステップS41、S42)。その後の処理の流れは、図14に示した通信制御処理と同様であってよい。
【0080】
[4−2.第2の変形例]
ここまで、CMが配置される装置とは異なる装置にCDISが配置される例について主に説明した。しかしながら、CMが配置される複数の装置のうちの1つにCDISが配置されてもよい。また、本明細書で開示した技術は、IEEE802.19以外の仕様(例えば、ETSI(European Telecommunications Standards Institute)のRRS(Reconfigurable Radio Systems)など)に基づく共存システムにも適用可能である。その場合にも、複数の二次システムの間の干渉の可能性を判定して近隣システムを検出する検出ノードとは別に、各二次システムから収集されるパラメータを用いて各二次システムのカバレッジを計算する論理的なノードが設けられる。そして、カバレッジを計算するノードから検出ノードへ、カバレッジ情報が通知される。
【0081】
図16は、そのような第2の変形例に係る近隣検出のための通信制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図16を参照すると、まず、複数の通信制御装置30bの中から、近隣検出を行う検出ノードが予め選択される(ステップS10)。検出ノードは、例えば、各通信制御装置30bの性能、ケイパビリティ、空きリソースの容量又は配下の二次システムの少なさなどの観点から選択されてよい。図16の例では、通信制御装置(CM#B)30bが検出ノードとして選択されたものとする。
【0082】
二次利用ノード40a、40b及び40eは、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS11)。同様に、二次利用ノード40c及び40dもまた、各二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータをそれぞれ収集する(ステップS12)。
【0083】
次に、二次利用ノード40a、40b及び40eは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#A)30bへ送信する(ステップS13)。同様に、二次利用ノード40b及び40cは、収集したパラメータを含むパラメータリストをそれぞれ通信制御装置(CM#B)30bへ送信する(ステップS14)。
【0084】
次に、通信制御装置(CM#A)30bは、取得したパラメータを用いて配下の各二次システムのカバレッジを計算する(ステップS21)。そして、通信制御装置(CM#A)30bは、計算した各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、通信制御装置(CM#B)30bへ通知する(ステップS27)。一方、通信制御装置(CM#B)30bもまた、取得したパラメータを用いて配下の各二次システムのカバレッジを計算する(ステップS23)。
【0085】
次に、通信制御装置(CM#B)30bは、通信制御装置(CM#A)30bから通知されたカバレッジ情報及び自ら生成したカバレッジ情報を用いて、二次システムの各組合せについて互いの干渉の可能性を判定し、近隣システムを検出する(ステップS30)。そして、通信制御装置(CM#B)30bは、検出された近隣システムの組合せを記述した近隣システムリストを、通信制御装置(CM#A)30bへ提供する(ステップS41)。次に、通信制御装置(CM#A)30b及び通信制御装置(CM#B)30bは、互いに干渉する可能性のある二次システムが存在する場合に、干渉を抑制するための交渉を行う(ステップS50)。その後の処理の流れは、図14に示した通信制御処理と同様であってよい。
【0086】
<5.まとめ>
ここまで、図1〜図16を用いて、一実施形態及びその変形例について詳細に説明した。本明細書で開示した技術によれば、CMとしての機能を有する通信制御装置において、二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを用いて各二次システムのカバレッジが計算され、計算された各二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報が近隣検出を行う検出ノードへ通知される。従って、データ量の多いカバレッジ計算用のパラメータが検出ノードへ送信されないため、ネットワーク上のトラフィックの負荷が軽減される。また、検出ノードにおいて多くの二次システムのカバレッジを計算しなくてよいため、検出ノードの計算処理の負荷も軽減される。従って、負荷の集中が回避されることで、複数の二次システムを円滑に運用することが可能となる。また、上述した実施形態によれば、複数の事業者によって様々な二次システムが運用される場合にも、各事業者は、システムの詳細なパラメータを検出ノードを有する事業者に公開しなくてよい。そのため、複数の事業者により運用されるシステムの円滑な共存も可能となる。
【0087】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の制御処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより実行される。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本技術はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0089】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部と、
前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知する干渉制御部と、
を備える通信制御装置。
(2)
前記カバレッジ情報は、複数の地理的な区画の各々が前記カバレッジに属するか否かを示すマップ情報である、前記(1)に記載の通信制御装置。
(3)
前記カバレッジ情報は、前記カバレッジの基準位置と径とを示す情報である、前記(1)に記載の通信制御装置。
(4)
前記パラメータは、前記二次利用ノードの位置、アンテナ高さ、最大送信電力、アンテナ利得及び最小受信感度のうち少なくとも1つを示す、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(5)
前記干渉制御部は、他の通信制御装置により制御される近隣の二次システムが前記検出ノードにより検出されると、当該他の通信制御装置との間で二次システム間の干渉を抑制するための交渉を行う、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(6)
前記干渉制御部は、前記交渉によって、前記二次システム又は前記近隣の二次システムの利用チャネル、無線アクセス方式及び最大送信電力のうち少なくとも1つを調整する、前記(5)に記載の通信制御装置。
(7)
前記通信制御装置は、自装置に属する複数の二次システムから近隣の二次システムを検出する近隣検出部、をさらに備え、
前記検出ノードは、異なる通信制御装置に属する近隣の二次システムを検出する、
前記(1)〜(6)に記載の通信制御装置。
(8)
前記検出ノードは、1つ以上の二次システムのカバレッジを計算する機能をそれぞれ有する複数の通信制御装置のうちの1つである、前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(9)
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードにおける通信制御方法であって、
前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータ取得するステップと、
取得された前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算するステップと、
計算された前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知するステップと、
を含む通信制御方法。
(10)
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードと、
前記二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードと、
前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードと、
を含み、
前記制御ノードは、
前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部、
前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部、及び
前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を前記検出ノードへ通知する干渉制御部、
を備える、
通信制御システム。
【符号の説明】
【0090】
30a 検出ノード
30b 通信制御装置(制御ノード)
40 二次利用ノード
142 パラメータ取得部
144 計算部
146 干渉制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部と、
前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知する干渉制御部と、
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記カバレッジ情報は、複数の地理的な区画の各々が前記カバレッジに属するか否かを示すマップ情報である、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記カバレッジ情報は、前記カバレッジの基準位置と径とを示す情報である、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記パラメータは、前記二次利用ノードの位置、アンテナ高さ、最大送信電力、アンテナ利得及び最小受信感度のうち少なくとも1つを示す、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記干渉制御部は、他の通信制御装置により制御される近隣の二次システムが前記検出ノードにより検出されると、当該他の通信制御装置との間で二次システム間の干渉を抑制するための交渉を行う、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記干渉制御部は、前記交渉によって、前記二次システム又は前記近隣の二次システムの利用チャネル、無線アクセス方式及び最大送信電力のうち少なくとも1つを調整する、請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記通信制御装置は、自装置に属する複数の二次システムから近隣の二次システムを検出する近隣検出部、をさらに備え、
前記検出ノードは、異なる通信制御装置に属する近隣の二次システムを検出する、
請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記検出ノードは、1つ以上の二次システムのカバレッジを計算する機能をそれぞれ有する複数の通信制御装置のうちの1つである、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項9】
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードにおける通信制御方法であって、
前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータ取得するステップと、
取得された前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算するステップと、
計算された前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を、前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードへ通知するステップと、
を含む通信制御方法。
【請求項10】
一次システムに割り当てられた周波数チャネル上で二次システムを運用する二次利用ノードと、
前記二次利用ノードによる通信を制御する制御ノードと、
前記二次システムの近隣の二次システムを検出する検出ノードと、
を含み、
前記制御ノードは、
前記二次利用ノードから、前記二次システムのカバレッジを計算するためのパラメータを取得するパラメータ取得部、
前記パラメータ取得部により取得される前記パラメータを用いて、前記二次システムのカバレッジを計算する計算部、及び
前記計算部により計算される前記二次システムのカバレッジを表すカバレッジ情報を前記検出ノードへ通知する干渉制御部、
を備える、
通信制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−213071(P2012−213071A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78073(P2011−78073)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】