説明

通信状態解析装置、通信状態解析方法および通信状態解析プログラム

【課題】 移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で正確に発見すること。
【解決手段】 CPU71は、プログラム81に従って、移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、その特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定する。そして、ディスプレイ62は、位置特定手段により特定された位置を地図上に表示するとともに、特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を地図上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体電話システムのエリア内での各所の電波状態の測定値に基づいて所定の通信状態の位置を特定し表示するための通信状態解析装置、通信状態解析方法および通信状態解析プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体電話サービスを提供する際、通信可能なエリア内では全域において良好な通信状態が得られることが求められる。ところが、基地局のアンテナの向き、電波出力などの設定によっては、エリア内でも、フェージング、マルチパス、干渉波などの影響で通信状態の悪い場所が発生する場合がある。
【0003】
従来、そのような通信状態が悪い位置を発見するために、多数の作業員を移動体電話システムのエリア内の各所へ赴かせて電波状態を計測している。そして、通信状態が悪い位置を発見すると、その都度、基地局のアンテナの向き、電波出力などの設定を調整して、そのような通信状態が悪い位置をなくし、エリア内の全域において良好な通信状態が得られるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多数の作業員によりエリア内の各所での電波状態を計測して通信状態が悪い位置を見つける方法では人件費を多く要する。また、人件費を減らすために少人数で計測を行おうとすると、エリア内全域の電波状態を計測するのに長い時間を要することになる。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で正確に発見することができ、さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる通信状態解析装置、通信状態解析方法および通信状態解析プログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0007】
本発明の通信状態解析装置は、移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、その特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段により特定された位置を地図上に表示するとともに、特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を地図上に表示する位置表示手段とを備えている。
【0008】
この通信状態解析装置を利用すると、エリア内に通信状態が悪い位置が複数あっても、それらを簡単に視認でき、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で発見することができる。さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【0009】
さらに、本発明の通信状態解析装置は、上記発明の通信状態解析装置に加え、位置表示手段が、特性値の計測時におけるDGPS用の補正情報の受信状態を地図上に表示するものである。
【0010】
この通信状態解析装置を利用すると、さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【0011】
さらに、本発明の通信状態解析装置は、上記発明の通信状態解析装置に加え、位置表示手段が、GPS衛星からの信号の受信状態に応じて、位置を示す画像の大きさ、色および図形のうちの少なくとも1つを変化させるものである。
【0012】
本発明の通信状態解析方法は、移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、その特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定するステップと、特定した位置を地図上に表示するステップと、特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を地図上に表示するステップとを備えている。
【0013】
この通信状態解析方法を利用すると、エリア内に通信状態が悪い位置が複数あっても、それらを簡単に視認でき、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で発見することができる。さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【0014】
本発明の通信状態解析プログラムは、移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、その特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定する位置特定手段、並びに、位置特定手段により特定された位置を地図上に表示させるとともに、特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を地図上に表示させる位置表示制御手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0015】
この通信状態解析プログラムを利用すると、エリア内に通信状態が悪い位置が複数あっても、それらを簡単に視認でき、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で発見することができる。さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で正確に発見することができ、さらに、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる通信状態解析装置、通信状態解析方法および通信状態解析プログラムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
まず、通信状態測定装置について説明する。
【0019】
図1は、通信状態測定装置1の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示す通信状態測定装置1において、プラットホーム回路11は、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)機などといった移動体電話機の通信回路を模擬した回路を有し、その回路により図示せぬ基地局との間で通信した際の電波状態を示す、例えばBER(Bit Error Rate)値、RSSI(Receive Signal Strength Indicator)値といった所定の特性値を時系列に沿って計測する回路である。なお、移動体電話機の通信回路を模擬した回路とは、移動体電話機の内部回路のうちの、基地局との間で所定のプロトコルで通信するベースバンド回路の部分を抽出したものである。
【0021】
また、GPS受信機12は、図示せぬGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を受信して、現在位置を検知する位置検知手段である。
【0022】
さらに、記録装置13は、プラットホーム回路11により所定の時間間隔で計測された、例えばBER値、RSSI値といった所定の特性値を、その計測時刻においてGPS受信機12により検知された現在位置の情報に関連付けてハードディスク装置(以下、HDDという)などの記録媒体21に順次記録する記録手段である。なお、記録装置13を、記録媒体21としてのHDDを内蔵したコンピュータとして実現し、プラットホーム回路11およびGPS受信機12からの信号をUSB(Universal Serial Bus)などのインタフェースを介して受け取るようにしてもよい。
【0023】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0024】
プラットホーム回路11は、基地局との間で回線の確立を試み、そのときの例えばBER値、RSSI値といった所定の特性値を、所定の時間間隔(例えば10分の1秒間隔)で計測し、記録装置13へ順次供給する。
【0025】
一方、GPS受信機12は、GPS衛星からの電波を受信して、この通信状態測定装置1の現在位置を随時計算し、現在位置の位置情報である緯度および経度を記録装置13へ供給する。
【0026】
記録装置13は、所定の時間間隔でプラットホーム回路11から上記特性値を供給されると、その時刻における現在位置の緯度および経度とともに、その特性値を記録媒体21に記録していく。図2は、図1に示す通信状態測定装置1の記録媒体21に記録される測定データの様式の一例を示す図である。
【0027】
このように動作する通信状態測定装置1を、例えば自動車、自動二輪、自転車などといった移動体に設置または配置して、その移動体をエリア内で移動させることにより、エリア内の各所における電波状態に対応する特性値が順次記録媒体21に記録される。
【0028】
図3は、図1に示す通信状態測定装置1の移動軌跡32の一例を示す図である。図3に示すように、通信状態測定装置1をエリア31内で、例えば移動軌跡32のように可能な限り全域を通るように移動させる。これにより、エリア31内の各所における電波状態に対応する特性値が得られるため、その各所での特性値に基づいて、エリア31の全域で通信状態が良好になるように、このエリア31を管轄する基地局の設定(アンテナの向きや電波出力など)を調整することが可能となる。
【0029】
以上のように、通信状態測定装置1は、移動体電話機の通信回路を模擬した回路を有し、その回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値を時系列に沿って計測するプラットホーム回路11と、現在位置を検知するGPS受信機12と、プラットホーム回路11により時系列に沿って計測された所定の特性値(BER値、RSSI値など)を、その時にGPS受信機12により検知された現在位置の情報(緯度、経度)に関連付けて順次記録する記録装置13とを備えている。これにより、この通信状態測定装置1を移動体に設置などしてエリア31内を移動するだけでエリア31内各所の電波状態を把握することができるため、移動体電話システムのエリア31内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で発見することができる。
【0030】
また、通信状態測定装置1は別の形態も可能である。図4は、別の形態の通信状態測定装置1Aの構成を示すブロック図である。
【0031】
図4に示す通信状態測定装置1Aにおいて、プラットホーム回路11Aは、図1のプラットホーム回路11と同様に所定の特性値を測定する機能を有し、GPS受信機12Aからトリガ信号を供給されたときに各所定の特性値を計測し、記録装置13Aに供給する回路である。すなわち、これにより、記録装置13Aは、このトリガ信号が出力されたときの各所定の特性値を現在位置の情報に関連付けて記録することになる。
【0032】
また、GPS受信機12Aは、図1のGPS受信機12と同様に現在位置を検知する機能を有し、GPS衛星から受信される信号に同期してトリガ信号を出力する装置である。
【0033】
図5は、図4におけるGPS受信機12Aの構成例を示すブロック図である。図5に示すGPS受信機12Aにおいて、アンテナ101は、GPS衛星からの電波を感受するアンテナである。受信回路102は、アンテナ101を介して各GPS衛星からの電波を受信し、受信信号を復調して、C/A(Coarse Acquisition)コード、P(Precise)コード、Yコードを抽出する回路である。
【0034】
また、復号回路103は、スペクトラム拡散されたPN(Pseudo-Noise)符号であるC/Aコード、およびP(またはY)コードをGPS衛星からのデータに復号するとともに、いずれかのコード(例えばC/Aコード)の位相に基づいて各GPS衛星までの擬似距離を演算し、その際、擬似距離の演算に使用したコードの符号列に同期したタイミング信号を出力する回路である。
【0035】
演算回路104は、復号回路103により得られた少なくとも3つのGPS衛星についての擬似距離、エフェメリス情報、アルマナック情報などに基づいて、現在位置を算出する回路である。なお、これらの情報から現在位置を算出する処理はよく知られている方法を用いればよい。また、現在位置の誤差を低減する場合には少なくとも4つのGPS衛星からの擬似距離を使用する。
【0036】
トリガ回路105は、復号回路103により出力されるタイミング信号、すなわち、擬似距離の演算に使用したコードの符号列に同期したタイミング信号のすべてに同期して、あるいは、そのタイミング信号のうち、実際に現在位置の算出に使用される擬似距離についてのタイミング信号のみに同期して、トリガ信号を出力する回路である。
【0037】
さらに、記録装置13Aは、図1の記録装置13と同様に、例えばBER値、RSSI値といった所定の特性値を、その計測時刻においてGPS受信機12Aにより検知された現在位置の情報に関連付けて記録媒体21に順次記録する機能を有し、さらに、その現在位置の情報に関連付けてGPS衛星からの信号(GPS信号)の受信状態を記録する装置である。図6は、図4に示す通信状態測定装置1Aの記録媒体21に記録される測定データの様式の一例を示す図である。
【0038】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0039】
GPS受信機12Aでは、受信回路102がアンテナ101を介して各GPS衛星からの信号を受信する。GPS衛星からの信号には、C/AコードおよびP(またはY)コードが含まれるL1信号と、P(またはY)コードが含まれるL2信号とがある。受信回路102は、このL1信号およびL2信号を復調して、C/AコードおよびP(またはY)コードを抽出し、復号回路103に供給する。
【0040】
C/Aコードでは、1023ビットで1つのPN符号が構成される。そして、このC/Aコードは1.023MHzのビットレートを有するので、C/Aコードの伝送時間は、1つのPN符号あたり1ミリ秒である。
【0041】
復号回路103は、各GPS衛星からのPN符号列をデータに復号し、そのデータ(エフェメリス情報、アルマナック情報およびその他の情報)を演算回路104に供給する。
【0042】
また、復号回路103は、各GPS衛星からのC/AコードあるいはP(またはY)コードと同様のC/AコードあるいはP(またはY)コードを生成し、生成したC/AコードあるいはP(またはY)コードと、受信したC/AコードあるいはP(またはY)コードとの位相誤差に基づいて、GPS衛星からこのGPS受信機12Aまでの信号伝達時間を計算し、その信号伝達時間からGPS衛星とこのGPS受信機12Aとの間の擬似距離を計算し、演算回路104に供給する。
【0043】
さらに、復号回路103は、受信したC/AコードあるいはP(またはY)コードの1PN符号ごとに、タイミング信号をトリガ回路105に供給する。
【0044】
トリガ回路105は、そのタイミング信号のいずれかに同期してトリガ信号をプラットホーム回路11に供給する。なお、トリガ回路105は、GPS衛星からの信号が所定の時間以上途絶え、復号回路103からのタイミング信号が所定の時間以上途絶えた場合にも所定のスケジュールに従ってトリガ信号を出力するようにしてもよい。
【0045】
この際、例えばC/AコードのPN符号に同期してタイミング信号が生成されると、このタイミング信号は1ミリ秒周期となる。したがって、すべてのタイミング信号に同期してトリガ信号を出力する場合、トリガ回路105は、1ミリ秒周期でトリガ信号を出力することとなる。
【0046】
他方、演算回路104による演算に起因して信号受信から現在位置情報出力までに1ミリ秒以上の遅延があり、1ミリ秒周期で演算回路104が現在位置情報を計算することが困難な場合には、トリガ回路105が、N個のタイミング信号に1回の割合でトリガ信号を出力するようにしてもよい。
【0047】
例えば、演算回路104による現在位置情報の演算に要する時間が100ミリ秒であれば、100ミリ秒に1回の割合で現在位置情報を算出することができるので、100(N=100)回に1回の割合で、そのときに使用される擬似距離の計算に使用されるPN符号に対応するタイミング信号に同期して100ミリ秒周期でトリガ信号が出力される。
【0048】
なお、この場合、n個(n≧3)のGPS衛星のうちのいずれか1または複数のコードについてトリガ信号が出力されるようにすればよい。あるいは、複数のGPS衛星からのコードの受信タイミングを平均化などにより加工して、トリガ信号のタイミングを決定するようにしてもよい。
【0049】
なお、ここでは、タイミング信号を周期的に選択してトリガ信号を生成するようにしているが、復号回路103がタイミング信号を出力せずにトリガ回路105がPN符号の符号列を監視し所定の周期でトリガ信号を出力するようにしてもよい。
【0050】
そして、GPS受信機12Aのトリガ回路105からトリガ信号が供給されると、プラットホーム回路11は、その時点の所定の特性値を計測し、記録装置13Aに供給する。一方、GPS受信機12Aの演算回路104は、そのトリガ信号に対応する擬似距離などに基づいて、GPSからの信号の受信時の現在位置を算出し、記録装置13Aに供給する。
【0051】
このようにして、現在位置情報がGPS受信機12Aの演算回路104から記録装置13Aに供給されるとともに、その現在位置情報の算出に使用されたGPS衛星からの信号の受信時における所定の特性値が、プラットホーム回路11から記録装置13Aに供給される。
【0052】
そして、記録装置13Aは、その現在位置情報(現在位置の緯度および経度)とその所定の特性値とを関連づけて記録媒体21に記録していく。
【0053】
また、この際、記録装置13Aは、GPS受信機12Aの受信回路102により得られるその時点のGPS衛星からの信号の受信状態を、その現在位置情報およびその所定の特性値に関連づけて記録媒体21に記録する。
【0054】
以上のように、GPS受信機12Aが、GPS衛星からの信号に同期してトリガ信号を出力し、記録装置13Aが、トリガ信号が出力されたときの各所定の特性値を、GPS衛星からの信号の受信時に対する現在位置の情報に関連付けて記録するので、GPS衛星からの信号の受信位置と、所定の特性値の測定位置との誤差がほぼなくなり、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置をより正確に発見することができる。
【0055】
また、プラットホーム回路11がトリガ信号を供給されたときに各所定の特性値を計測して記録装置13Aに供給するので、GPS衛星からの信号を受信したときに所定の特性値を測定するため、確実にGPS衛星からの信号の受信位置と、所定の特性値の測定位置との誤差を小さくすることができる。すなわち、現在位置は信号受信時から演算回路104による計算時間だけ後に出力されるが、特性値は信号受信時に計測されるため、上記誤差が小さくなる。
【0056】
さらに、GPS衛星からのC/AコードおよびP(またはY)コードのいずれかに同期してトリガ信号を出力するので、GPS衛星までの距離の測定に使用されている符号の検出タイミングに基づいて所定の特性値の計測タイミングが決定されるため、確実にGPS衛星からの信号の受信位置と、所定の特性値の測定位置との誤差を小さくすることができる。
【0057】
さらに、GPS受信機12Aは、C/AコードおよびP(またはY)コードのうちのいずれかの符号列において、GPS衛星までの距離の計測に使用する符号のタイミングに同期してトリガ信号を出力するので、C/AコードおよびP(またはY)コードのうちのいずれかの符号列の周期の所望の整数(N)倍に、所定の特性値の計測タイミングを決定することができる。
【0058】
さらに、GPS受信機12Aが、GPS衛星からの信号が所定の時間以上途絶えた場合にも、所定のスケジュールに従ってトリガ信号を出力するので、GPS衛星からの信号の受信状態が一時的に悪い場合でも、所定のスケジュールに従い継続して各地点での電波状態を計測することができる。
【0059】
さらに、記録装置21Aが、現在位置の計測時のGPS衛星からの信号の受信状態を現在位置の情報に関連付けて記録するので、後処理において、GPS衛星からの信号の受信状態を考慮した上でエリア内の各地点での通信状態を知ることができる。
【0060】
さらに、通信状態測定装置1は別の形態も可能である。図7は、さらに別の形態の通信状態測定装置1Bの構成を示すブロック図である。
【0061】
図7に示す通信状態測定装置1Bにおいて、カーナビゲーションシステム41は、GPS受信機12A、車軸などに取り付けられたロータリーエンコーダから車速パルスを検出する車速パルスセンサ51、車両の走行方位を検出するジャイロセンサ52、並びに、GPS受信機12Aによる現在位置情報と車速パルスセンサ51およびジャイロセンサ52からの情報に基づいて現在位置を計算する制御回路53を有する位置検知手段である。
【0062】
なお、図7におけるその他の構成要素については図4のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
次に、上記装置の動作について説明する。
【0064】
カーナビゲーションシステム41は、GPS受信機12Aにより得られる現在位置情報を、車速パルスセンサ51により得られる車速情報およびジャイロセンサ52により得られる走行方位情報に基づいて必要に応じて補正し、補正後の現在位置情報を記録装置13Aに供給する。また、カーナビゲーションシステム41は、GPS受信機12Aにより現在位置情報が得られない場合にも、過去の位置情報、車速情報の履歴および走行方位情報の履歴などに基づいて、現在位置を計算する。
【0065】
また、カーナビゲーションシステム41は、GPS受信機12Aからのトリガ信号をプラットホーム回路11にそのまま供給するとともに、GPS受信機12Aにより現在位置情報が得られない場合には、現在位置を計算する際にトリガ信号をプラットホーム回路11に供給する。
【0066】
なお、その他の動作については図4のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
なお、上記の他、車速パルスから得られる車両の速度に応じて、カーナビゲーションシステム41により現在位置を計算する時間間隔を調整するようにしてもよい。
【0068】
以上のように、カーナビゲーションシステム41が、GPS受信機12A、車速パルスセンサ51およびジャイロセンサ52を有するので、GPS衛星からの信号の受信状態が一時的に悪い場合でも、現在位置を正確に測定でき、ひいては、各地点での電波状態を正確に計測することができる。
【0069】
また、GPS衛星からの信号が所定の時間以上途絶えた場合にも、カーナビゲーションシステム41が所定のスケジュールに従ってトリガ信号を出力するので、カーナビゲーションシステムを使用することで装置を安価にしつつ、GPS衛星からの信号の受信状態が一時的に悪い場合でも、所定のスケジュールに従い継続して各地点での電波状態を計測することができる。
【0070】
さらに、通信状態測定装置は、GPS受信機12Aとして、DGPS(Differential GPS)受信機を有し、記録装置13Aが現在位置の計測時の補正情報の受信状態を現在位置の情報に関連付けて記録するようにしてもよい。
【0071】
DGPS受信機は、一般に、図示せぬGPS受信基地局で得られた測定誤差に基づく補正情報をFM多重方式などにより取得し、その補正情報に基づいて、現在位置情報を補正し、測定精度を向上させる。
【0072】
さらに、この通信状態測定装置におけるDGPS受信機は、その補正情報の受信状態として、補正情報を使用して現在位置情報を補正したか否かなどを記録装置13Aに供給し、現在位置などを記録する際にそれらに関連付けて記録する。
【0073】
なお、その他については、上述の通信状態測定装置1A,1Bと同様であるので、その説明を省略する。
【0074】
以上のように、この通信状態測定装置は、位置検知手段としてDGPS受信機を有し、記録装置13Aが現在位置の計測時の補正情報の受信状態を現在位置の情報に関連付けて記録するので、DGPSに基づいて高精度で現在位置を測定することができるとともに、後処理において、DGPSの補正情報の受信状態を考慮した上でエリア内の各地点での通信状態を知ることができる。
【0075】
次に、本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置について説明する。
【0076】
図8は、本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置2の構成を示すブロック図である。
【0077】
図8に示す通信状態解析装置2において、コンピュータ61は、ROM72やHDD74に記憶されたプログラムを実行するCPU71、例えば起動時に必要なプログラムやデータを記憶するROM72、プログラム実行時にプログラムやデータを一時的に記憶するRAM73、各種プログラムやデータを格納するHDD74、外部装置との間でデータの授受を行うUSBなどといったインタフェース75、およびディスプレイ62に対して描画処理を行う描画回路76を有する装置である。
【0078】
なお、HDD74は、通信状態解析プログラム81、移動体電話システムのエリア内の地図データ82、エリア内の電波状態の測定データ83などを格納する記録媒体である。
【0079】
このうち、通信状態解析プログラム81は、測定データ83に基づいて、電波状態を示す所定の特性値が所定の条件を満たす通信状態が悪い位置を特定する位置特定手段、並びに、その位置特定手段により特定された通信状態が悪い位置を地図上に表示させる位置表示制御手段としてコンピュータ61を機能させるためのプログラムである。
【0080】
また、測定データ83は、エリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値を含むデータである。
【0081】
ディスプレイ62は、コンピュータ61により通信状態解析プログラム81に従って特定された位置を地図上に表示する位置表示手段としての表示装置である。
【0082】
次に、上記装置の動作について説明する。すなわち、本発明の実施の形態に係る通信状態解析方法について説明する。図9は、本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置2の動作について説明するフローチャートである。
【0083】
まず、コンピュータ61のCPU71は、通信状態解析プログラム81に従って、例えば上述(図1)の通信状態測定装置1から測定データ83を取得する(ステップS1)。この際、コンピュータ61は、例えば、インタフェース75を介して通信状態測定装置1,1A,1Bから測定データ83を取得し、図8に示すようにHDD74に格納する。あるいは、コンピュータ61は、通信状態測定装置1,1A,1Bから離脱させた記録媒体21を図示せぬ記録媒体駆動装置で駆動して例えば図2や図6に示すような測定データ83を読み込むようにしてもよい。さらには、無線通信などを利用して、通信状態測定装置1,1A,1Bからコンピュータ61へ測定データ83を伝送するようにしてもよい。
【0084】
次に、コンピュータ61のCPU71は、通信状態解析プログラム81に従って、測定データ83のうち各地点の測定値(BER値、RSSI値など)を、基地局からの信号を良好に受信、復調できずに通話などが困難になるか否か、すなわち通信状態が不良になるか否かの境界を示す所定の閾値とそれぞれ比較する(ステップS2)。
【0085】
そして、コンピュータ61のCPU71は、通信状態解析プログラム81に従って、ステップS2での比較結果に基づいて、通信状態が不良になると判断した位置(例えば緯度および経度)を特定する(ステップS3)。
【0086】
最後に、コンピュータ61のCPU71は、通信状態解析プログラム81に従って描画回路76を制御して、今回、通信状態を測定、解析しているエリアの地図データ82をHDD74から読み出し、そのエリアの地図の画像に、通信状態が不良である位置(以下、通信不良ポイントという)を示す画像を重畳した画像をディスプレイ62に表示させる(ステップS4)。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置2で表示されたエリアの地図と通信不良ポイントの一例を示す図である。図10では、エリアの地図の画像91に、3箇所の通信不良ポイントを示す画像92が重畳して表示されている。
【0088】
これにより、作業員がこの表示画像を見ることでエリア内の通信不良ポイントを確認し、このエリアを管轄する基地局の設定を調整することが可能となる。
【0089】
さらに、上述したような、GPS衛星からの信号の受信状態やDGPS用の補正情報の受信状態も測定データ83に併せて記録されている場合には、CPU71は、通信状態解析プログラム81に従って、それらの信号や情報の受信状態が悪い位置を示す画像をさらに重畳して表示するようにしてもよい。
【0090】
また、それらの受信状態に基づいて通信不調ポイントのGPSによる測定誤差を求め、その通信不調ポイントの測定誤差に応じて、通信不良ポイントを示す画像92の大きさ、色、図形などを変化させるようにしてもよい。
【0091】
以上のように、上記実施の形態によれば、コンピュータ61が、移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、その特性値が所定の条件を満たす通信不良ポイントを特定し、ディスプレイ62が、コンピュータ61により特定された通信不良ポイントを地図上に表示する。これにより、エリア内に通信不良ポイントが複数あっても、それらを簡単に視認でき、移動体電話システムのエリア内における通信状態が悪い位置を低コストかつ短時間で発見することができる。
【0092】
また、上記実施の形態によれば、ディスプレイ62が特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を地図上に表示するので、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【0093】
さらに、上記実施の形態によれば、ディスプレイ62が特性値の計測時におけるDGPS用の補正情報の受信状態を地図上に表示するので、エリア内における通信不良ポイントなどの各地点の測位精度を簡単に視認できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】通信状態測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す通信状態測定装置の記録媒体に記録される測定データの様式の一例を示す図である。
【図3】図1に示す通信状態測定装置の移動軌跡の一例を示す図である。
【図4】別の形態の通信状態測定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図4におけるGPS受信機の構成例を示すブロック図である。
【図6】図4に示す通信状態測定装置の記録媒体に記録される測定データの様式の一例を示す図である。
【図7】さらに別の形態の通信状態測定装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置の動作について説明するフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係る通信状態解析装置で表示されたエリアの地図と通信不良ポイントの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1,1A,1B 通信状態測定装置
2 通信状態解析装置
61 コンピュータ(位置特定手段、位置表示制御手段)
62 ディスプレイ(位置表示手段)
81 通信状態解析プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、上記特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定する位置特定手段と、
上記位置特定手段により特定された上記位置を地図上に表示するとともに、上記特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を上記地図上に表示する位置表示手段と、
を備えることを特徴とする通信状態解析装置。
【請求項2】
前記位置表示手段は、前記特性値の計測時におけるDGPS用の補正情報の受信状態を前記地図上に表示することを特徴とする請求項1記載の通信状態解析装置。
【請求項3】
前記位置表示手段は、GPS衛星からの信号の受信状態に応じて、前記位置を示す画像の大きさ、色および図形のうちの少なくとも1つを変化させることを特徴とする請求項1記載の通信状態解析装置。
【請求項4】
移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、上記特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定するステップと、
特定した上記位置を地図上に表示するステップと、
上記特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を上記地図上に表示するステップと、
を備えることを特徴とする通信状態解析方法。
【請求項5】
移動体電話システムのエリア内の各所の位置情報、および、その位置での、移動体電話機の通信回路を模擬した回路により基地局との間で通信した際の電波状態を示す所定の特性値に基づいて、上記特性値が所定の条件を満たす通信状態の位置を特定する位置特定手段、並びに、
上記位置特定手段により特定された上記位置を地図上に表示させるとともに、上記特性値の計測時におけるGPS衛星からの信号の受信状態を上記地図上に表示させる位置表示制御手段、
としてコンピュータを機能させるための通信状態解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−20361(P2006−20361A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238140(P2005−238140)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【分割の表示】特願2001−212750(P2001−212750)の分割
【原出願日】平成13年7月12日(2001.7.12)
【出願人】(501440684)ボーダフォン株式会社 (654)
【Fターム(参考)】