説明

通信装置

【課題】送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できるとともに、消費電力の低減が可能な送信方式の場合には消費電力を低減できる通信装置を提供する。
【解決手段】受信手段による通信開始信号及び発信元識別信号の受信を検知する検知手段(S103、S107)と、検知手段による検知結果に基づいて、通信開始信号及び発信元識別信号の検知順序及び検知間隔の少なくとも一方を特定する特定手段(S104、S106、S109)と、特定手段による特定結果に基づいて、その後の通信待機時に復調手段を動作可能状態、又は動作可能状態より消費電力が少ない待機状態にする制御手段(S104、S107、S110)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話回線を通じて通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話回線を通じて通信を行う通信装置において、発信元識別信号を復調する通信モデムを備え、通信待機時には通信モデムへの電力供給を停止し、通信開始信号を検知すると通信モデムに電力を供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この通信装置によると、通信待機時に通信モデムへの電力供給を停止することにより消費電力を低減できるとともに、通信開始信号を検知すると通信モデムに電力を供給することにより、その後に受信する発信元識別信号を復調できる。
【特許文献1】特開平11−346279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電話交換機が通信装置に通信開始信号及び発信元識別信号を送信する送信方式は国によって異なり、通信開始信号を送信する前に発信元識別信号を送信したり、通信開始信号を送信した後に間をおかずに発信元識別信号を送信したりする場合がある。
従来の通信装置によると、このような送信方式の違いに対応しきれず、発信元識別信号を復調し損ねる虞がある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できるとともに、消費電力の低減が可能な送信方式の場合には消費電力を低減できる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明は、通信装置であって、電話回線を通じて通信開始信号及び発信元識別信号を受信する受信手段と、前記受信手段で受信した前記発信元識別信号を復調する復調手段と、前記受信手段による前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の受信を検知する検知手段と、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の検知順序及び検知間隔の少なくとも一方を特定する特定手段と、前記特定手段による特定結果に基づいて、その後の通信待機時に前記復調手段を動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない待機状態にする制御手段と、を備える。
この発明によると、通信開始信号及び発信元識別信号の検知順序及び検知間隔の少なくとも一方に基づいてその後の通信待機時に復調手段を動作可能状態、又は動作可能状態より消費電力が少ない待機状態にすることにより、送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できるとともに、消費電力の低減が可能な送信方式の場合には消費電力を低減できる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明の通信装置であって、前記制御手段は、前記通信開始信号より先に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を動作可能状態にする。
この発明によると、通信開始信号が送信される前に発信元識別信号が送信されても、発信元識別信号を復調できる。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明の通信装置であって、前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知された後に前記発信元識別信号が検知されなかった場合は、通信待機時であるか否かによらず、前記復調手段を待機状態にする。
発信元識別信号は必ずしも送信されるとは限らない。この発明によると、発信元識別信号の受信が検知されない場合、言い換えると発信元識別信号が送信されない場合は、通信待機時であるか否かによらず復調手段を待機状態にすることにより、消費電力を低減できる。
【0008】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明の通信装置であって、待機状態の前記復調手段を起動してから動作可能状態になるまでの時間を前記復調手段の起動時間というとき、前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知されてから前記復調手段の起動時間以内に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を動作可能状態にする。
通信開始信号が送信された後に間をおかずに発信元識別信号が送信される場合、通信開始信号の検知をトリガーとして復調手段を起動するようにすると、復調手段の起動時間以内に発信元識別信号を受信してしまう可能性があり、その場合には発信元識別信号を復調できない。
この発明によると、通信開始信号の受信が検知されてから復調手段の起動時間以内に発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に復調手段を動作可能状態にするので、通信開始信号が送信された後に間をおかずに発信元識別信号が送信されても発信元識別信号を復調できる。
【0009】
第5の発明は、第4の発明の通信装置であって、前記受信手段は動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない状態であって前記通信開始信号を受信可能な待機状態とに切り替え可能であり、前記制御手段は、通信待機時に前記受信手段を待機状態にし、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記通信開始信号が検知されてから時間をおいて前記受信手段を動作可能状態に切り替える。
通信開始信号が検知されてから受信手段を動作可能状態に切り替える場合、通信開始信号の受信が検知されたときに直ちに動作可能状態に切り替えるのではなく、通信開始信号の受信が検知されてから時間をおいて切り替えることにより、通信開始信号の受信が検知されたときに直ちに動作可能状態に切り替える場合に比べ、消費電力をより低減できる。
【0010】
第6の発明は、第1〜第5のいずれかの発明の通信装置であって、前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知されてから前記復調手段の起動時間より長い時間が経過した後に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を待機状態にする。
この発明によると、通信待機時に復調手段を待機状態にすることにより、消費電力を低減できる。
【0011】
第7の発明は、第6の発明の通信装置であって、前記制御手段は、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記復調手段を起動する。
この発明によると、通信待機時に通信開始信号の受信が検知されると復調手段を起動することにより、発信元識別信号を復調できる。
【0012】
第8の発明は、第7の発明の通信装置であって、前記制御手段は、通信待機時に前記通信開始信号の受信が検知されると、前記通信開始信号と前記発信元識別信号との検知間隔から前記復調手段の起動時間を減じた時間が経過したときに前記復調手段を起動する。
この発明によると、通信待機時に通信開始信号の受信が検知されたときに直ちに復調手段を起動するのではなく、通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔から復調手段の起動時間を減じた時間が経過したときに起動するので、消費電力をより低減できる。
【0013】
第9の発明は、第6〜第8のいずれかの発明の通信装置であって、前記受信手段は動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない状態であって前記通信開始信号を受信可能な待機状態とに切り替え可能であり、前記制御手段は、通信待機時に前記受信手段を待機状態にし、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記復調手段を起動してから時間をおいて前記受信手段を動作可能状態に切り替える。
受信手段の起動時間が短い場合には、通信開始信号が検知されてから受信手段を動作可能状態に切り替えても、発信元識別信号を受信するより前に受信手段を動作可能状態にすることができる。この場合は、通信待機時に受信手段を待機状態にすることにより、消費電力をより低減できる
通信開始信号が検知されてから受信手段を動作可能状態に切り替える場合、受信手段の方が復調手段より起動時間が短い場合には、復調手段を起動してから時間をおいて受信手段を動作可能状態に切り替えることにより、消費電力をより低減できる。
【0014】
第10の発明は、第1〜第9のいずれかの発明の通信装置であって、前記特定手段は、複数回の通信における前記検知手段の検知結果に基づいて、前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の検知間隔を特定する。
信号の検知間隔はばらつくことがあり、1回の通信で得られる検知結果のみに基づいて検知間隔を特定するようにすると、復調手段を必ずしも適切に制御できないこともあり得る。
この発明によると、複数回の通信における検知手段の検知結果に基づいて特定するので、より適切に制御できる。
【0015】
第11の発明は、第1〜第10のいずれかの発明の通信装置であって、前記受信手段に接続されている電話線を検出する検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出手段で電話線が検出されない場合は、通信待機時であるか否かによらず前記復調手段を待機状態にする。
この発明によると、消費電力を低減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できるとともに、消費電力の低減が可能な送信方式の場合には消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図5によって説明する。
(1)ファクシミリ装置1の電気的構成
図1は、ファクシミリ装置1(通信装置の一例)の電気的構成を示すブロック図である。ファクシミリ装置1は、通信部11、スキャナ部12、プリンタ部13、操作部14、制御部15などで構成されている。
【0018】
通信部11は、電話線40を介して電話交換機16に接続されており、外部のファクシミリ装置と所定のファクシミリ通信手順に従って画像データの送受信を行う。
スキャナ部12は、原稿がセットされる原稿台、原稿台にセットされている原稿を一枚ずつ搬送するADF(Auto Document Feeder)、ADFによって搬送される原稿を読み取るリニアイメージセンサ、リニアイメージセンサから出力される画素信号に基づいて画像データを生成する画像処理部などで構成されている。スキャナ部12で生成した画像データは通信部11によってファクシミリ送信される。
【0019】
プリンタ部13は、印刷用紙などの被記録媒体がセットされる用紙トレイ、用紙トレイにセットされている被記録媒体を一枚ずつ搬送する搬送機構、搬送機構によって搬送される被記録媒体にレーザー方式、インクジェット方式、熱転写方式などで画像を形成する画像形成部などで構成されている。通信部11でファクシミリ受信した画像データはプリンタ部13によって被記録媒体に印刷される。
【0020】
操作部14は、電話番号を入力するための番号ボタンやファクシミリ送信を指示するための送信ボタンなどの複数のボタンやLCD(Liquid Crystal Display)などで構成されている。
制御部15は、CPU、ROM、RAMなどを備えており、ファクシミリ装置1の各部を制御する。
【0021】
図2は、通信部11の構成を示すブロック図である。通信部11は、NCU(Network Control Unit)部17、通信モデム18、電力供給部19、ファクシミリ制御部20などで構成されている。
ファクシミリ制御部20(検知手段、特定手段、制御手段、検出手段の一例)はASICとして構成されている。ファクシミリ制御部20は通信部11の各部を制御して画像データの送受信を行うとともに、電力供給部19を制御してNCU部17及び通信モデム18への電力供給を制御する。
【0022】
NCU部17(受信手段、検知手段、検出手段の一例)は電話線40を介して電話交換機16に接続されており、電話回線の接続/切断を制御する。また、NCU部17は通信開始信号の種類(Ringing、1st Ringing、極性反転信号など)に応じた複数の信号線21(21a〜21b)によってファクシミリ制御部20に電気的に接続されており、電話交換機16から通信開始信号を受信すると、受信した通信開始信号に応じた信号線21をONにする。これによりファクシミリ制御部20は通信開始信号の受信を検知する。また、NCU部17は電話交換機16から発呼側の電話番号を示す発信元識別信号などのDTMF(Dual Tone Multi Frequency)信号、あるいはFSK(frequency shift keying)信号を受信すると、受信したDTMF信号あるいはFSK信号(以下、単にDTMF信号という)を増幅して通信モデム18に出力する。
【0023】
通信モデム18(復調手段、検知手段の一例)は、NCU部17から出力されたDTMF信号を復調して制御部15(図1参照)に出力する。また、通信モデム18は信号線22によってファクシミリ制御部20に電気的に接続されており、DTMF信号を復調すると信号線22をONにする。これによりファクシミリ制御部20はDTMF信号の受信を検知する。
【0024】
電力供給部19(制御手段の一例)は、NCU部17、通信モデム18、及びファクシミリ制御部20に電力を供給する。ファクシミリ制御部20は電力供給部19を制御することによりNCU部17及び通信モデム18への電力供給をそれぞれ独立して制御することができる。
通信モデム18は電力供給部19からの電力供給が停止するとDTMF信号を復調不能な待機状態になり、電力が供給されるとDTMF信号を復調可能な動作可能状態になる。待機状態にある通信モデム18への電力供給を開始(起動)してから通信モデム18が動作可能状態になるまでに要する時間(起動時間)は比較的長く、本実施形態では700msであるとする。
【0025】
NCU部17は電力供給部19からの電力供給が停止すると通信モデム18にDTMF信号を出力不能な待機状態になり、電力が供給されると通信モデム18にDTMF信号を出力可能な動作可能状態になる。ただし、NCU部17は待機状態であっても通信開始信号を受信して信号線21をONにすることができるように構成されている。NCU部17は通信モデム18に比べて比較的短時間に待機状態から動作可能状態に復帰できる。
【0026】
なお、本実施形態では通信モデム18への電力供給を停止することによって通信モデム18を待機状態にしているが、通信モデム18を起動したときにより短い起動時間で動作可能状態になれるように、待機状態のときにも動作可能状態より消費電力が少ない範囲で通信モデム18に電力を供給してもよい。
【0027】
(2)通信開始信号及び発信元識別信号の送信方式
図3は、電話交換機がファクシミリ装置1に通信開始信号及び発信元識別信号を送信する送信方式を示すタイミングチャートである。
図中の「DATA」は発信元識別信号を示しており、図中の「Ringing」、「1st Ringing」、「極反(極性反転信号)」、及び「Single Burst Ringing」は各国における通信開始信号を示している。
【0028】
図示するように電話交換機がファクシミリ装置1に通信開始信号及び発信元識別信号を送信する送信方式は国によって異なっている。
例えば国Aの場合は、電話交換機は通信開始信号(Ringing)を送信する前に発信元識別信号を送信する。この場合、通信待機時に通信モデム18を待機状態にしておいたとすると、通信モデム18が動作可能でない状態のときに発信元識別信号を受信してしまうことになり、発信元識別信号を復調できない。従って、国Aの場合は通信待機時に通信モデム18を動作可能状態にしておくことが望ましい。
【0029】
また、例えば国Gの場合は、電話交換機は通信開始信号(極性反転信号)を送信した後、300ms〜800msという比較的短い時間をおいて発信元識別信号を送信する。例えば、通信開始信号を送信してから発信元識別信号を送信するまでの時間が500msであるとする。この場合、通信待機時に通信モデム18を待機状態にしておき、通信開始信号を受信してから通信モデム18を起動するようにすると、通信モデム1の起動時間は700msであるので、通信モデム18が動作可能状態になる前に発信元識別信号を受信してしまい、発信元識別信号を復調できない。従って、国Gの場合も、通信待機時に通信モデム18を動作可能状態にしておくことが望ましい。
【0030】
また、例えば国Fの場合は、電話交換機は通信開始信号(Single Burst Ringing)を送信した後、1500msという比較的長い時間をおいて発信元識別信号を送信する。この場合、通信待機時に通信モデム18を待機状態にしておき、通信開始信号を受信してから通信モデム18を起動するようにしても、発信元識別信号を受信する前に通信モデム18が動作可能状態になり、発信元識別信号を復調できる。この場合は、通信待機時に通信モデム18を待機状態にしておくことにより、通信モデム18によって消費される電力を低減できる。
【0031】
(3)通信モデム18及びNCU部17の省電力通信モード
ファクシミリ装置1には、送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できるようにするために、且つ消費電力の低減が可能な送信方式の場合には消費電力を低減できるようにするために、通信開始信号及び発信元識別信号の検知順序及び検知間隔に応じた複数の省電力通信モードが用意されている。
【0032】
ファクシミリ制御部20は、例えば工場出荷直後は通信待機時であるか否かによらず通信モデム18及びNCU部17を動作可能状態にし、工場出荷後に最初にファクシミリ受信を行うとき、通信開始信号及び発信元識別信号の受信を検知し、その検知結果に基づいてそれらの検知順序及び検知間隔を特定する。そして、ファクシミリ制御部20はその特定結果に基づいて省電力通信モードを選択する。
【0033】
ところで、本実施形態ではNCU部17も動作可能状態と待機状態とに切り替え可能である。NCU部17についても検知順序及び検知間隔の特定結果に基づいて動作可能状態と待機状態とを制御すると、より消費電力を低減できる。そこで、以下の説明では通信モデム18に加え、NCU部17の状態も制御する場合を例に説明する。
【0034】
(3−1)省電力通信モード1
図4Aは、省電力通信モード1を説明するためのタイミングチャートである。図4Aでは国Aの場合の通信開始信号及び発信元識別信号の検知結果を併せて示している。
省電力通信モード1では、通信待機時であるか否かによらず通信モデム18及びNCU部17を常に動作可能状態にする。国Aのように通信開始信号が送信される前に発信元識別信号が送信される場合には、省電力通信モード1を選択することにより、通信待機時に通信モデム18及びNCU部17が動作可能状態になり、発信元識別信号を復調できる。
【0035】
(3−2)省電力通信モード2
図4Bは、省電力通信モード2を説明するためのタイミングチャートである。図4Bでは国Gの場合の通信開始信号及び発信元識別信号の検知結果を併せて示している。
省電力通信モード2では、通信モデム18については通信待機時であるか否かによらず常に動作可能状態にし、一方、NCU部17については、通信待機時には待機状態にし、通信開始信号の受信を検知するとNCU部17を起動する。
【0036】
NCU部17を起動するとき、ファクシミリ制御部20は通信開始信号の受信を検知したときに直ちにNCU部17を起動するのではなく、通信開始信号の受信を検知してから時間をおいて起動する。例えば、ファクシミリ制御部20は通信開始信号の受信を検知すると、通信開始信号と発信元識別番号との検知間隔T11から、NCU部17を起動してからNCU部17が動作可能状態になるまでの起動時間T13を減じた時間T12(=T11−T13)が経過したときに起動する。これにより、発信元識別信号を受信する前にNCU部17を動作可能状態にすることができるとともに、通信開始信号の受信を検知したときに直ちにNCU部17を起動する場合に比べ、NCU部17によって消費される電力を低減できる。
【0037】
国Gのように通信開始信号が送信された後に通信モデム18の起動時間以内に発信元識別信号が送信される可能性がある場合には、省電力通信モード2を選択することにより、発信元識別信号を復調しつつ、NCU部17によって消費される電力を低減できる。
【0038】
(3−3)省電力通信モード3
図4Cは、省電力通信モード3を説明するためのタイミングチャートである。図4Cでは国Fの場合の通信開始信号及び発信元識別信号の検知結果を併せて示している。
省電力通信モード3では、通信待機時に通信モデム18及びNCU部17を待機状態にする。そして、通信待機時に通信開始信号の受信を検知すると、通信モデム18及びNCU部17を起動する。
【0039】
通信モデム18を起動するとき、ファクシミリ制御部20は通信開始信号の受信を検知すると直ちに通信モデム18を起動するのではなく、通信開始信号の受信を検知してから時間をおいて起動する。例えば、通信開始信号の受信を検知すると、通信開始信号と発信元識別番号との検知間隔T21から、通信モデム18を起動してから通信モデム18が動作可能状態になるまでの起動時間T22を減じた時間T23(=T21−T22)が経過したときに起動する。これにより、通信開始信号の受信を検知したときに直ちに通信モデム18を起動する場合に比べ、通信モデム18によって消費される電力を低減できる。
【0040】
NCU部17については省電力通信モード3と同様であり、通信待機時に通信開始信号を受信すると、通信開始信号と発信元識別番号との検知間隔T21から、NCU部17を起動してからNCU部17が動作可能状態になるまでの時間T13を減じた時間T24(=T21−T13)が経過したときにNCU部17を起動する。
【0041】
国Fのように通信開始信号が送信された後に通信モデム18の起動時間よりも長い時間をおいて発信元識別信号が送信される場合には、省電力通信モード3を選択することにより、発信元識別信号を復調しつつ、通信モデム18及びNCU部17によって消費される電力を低減できる。
【0042】
(3−4)省電力通信モード4
図4Dは、省電力通信モード4を説明するためのタイミングチャートである。省電力通信モード4では、通信待機時であるか否かによらず通信モデム18及びNCU部17を待機状態にする。
発信元識別信号は必ずしも送信されるとは限らず、例えば利用者と通信業者との契約によって発信元識別信号が送信されないように設定される場合もある。発信元識別信号が送信されない場合には省電力通信モード4を選択することにより、通信モデム18及びNCU部17によって消費される電力を低減できる。
【0043】
(4)省電力通信モードの選択
図5は、省電力通信モードを選択する処理の流れを示すフローチャートである。
S101では、ファクシミリ制御部20はNCU部17に接続されている電話線40を検出する。具体的には例えば、ファクシミリ制御部20はNCU部17を介して搬送波(キャリア)を検出することにより電話線40を検出する。ファクシミリ制御部20は、電話線40を検出できなかった場合はS102に進み、電話線40を検出できた場合はS103に進む。
【0044】
S102では、電話線40が検出されない場合は、そもそもNCU部17が発信元識別信号や通信開始信号を受信できない状態であるので、ファクシミリ制御部20は「省電力通信モード4」を選択する。
S103では、ファクシミリ制御部20は通信開始信号又は発信元識別信号のいずれかを受信するまで待機し、いずれかの信号を受信するとS104に進む。
【0045】
S104では、ファクシミリ制御部20は通信開始信号又は発信元識別信号のどちらを受信したかを判定する。ファクシミリ制御部20は発信元識別信号を受信した場合はS105に進み、通信開始信号を受信した場合はS106に進む。
S105では、ファクシミリ制御部20は「省電力通信モード1」を選択する。
【0046】
S106では、ファクシミリ制御部20は通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔の測定を開始する。
S107では、ファクシミリ制御部20は発信元識別信号を受信するまで待機する。ファクシミリ制御部20は通信開始信号の受信を検知してから一定時間が経過しても発信元識別信号を受信しなかった場合は108に進み、一定時間以内に発信元識別信号を受信した場合はS109に進む。
【0047】
S108では、ファクシミリ制御部20は発信元識別番号が送信されない送信方式であるとして、「省電力通信モード4」を選択する。
S109では、ファクシミリ制御部20は通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔の計測を終了する。
S110では、ファクシミリ制御部20は計測した検知間隔が通信モデム18の起動時間以下であるか否かを判定する。ファクシミリ制御部20は、検知間隔が通信モデム18の起動時間以下である場合はS111に進み、通信モデム18の起動時間を超えている場合はS112に進む。
【0048】
S111では、ファクシミリ制御部20は「省電力通信モード3」を選択する。
S112では、ファクシミリ制御部20は「省電力通信モード2」を選択する。
【0049】
以上により省電力通信モードの選択が終了する。以上の処理の結果、図3に示す各国では次のように省電力通信モードが選択されることになる。ただし、ここでは国C及び国Gにおける通信開始信号及び発信元識別信号の検知間隔は700ms以下であり、国D及び国Eにおける検知間隔は700msよりも長かったものとする。
省電力通信モード1・・・国A
省電力通信モード2・・・国C、国G
省電力通信モード3・・・国B、国D、国E、国F
【0050】
ファクシミリ制御部20は、省電力通信モードを選択すると、その後は選択した省電力通信モードの設定に従ってNCU部17及び通信モデム18への電力供給を制御する。
【0051】
(5)実施形態の効果
以上説明した本発明の実施形態1に係るファクシミリ装置1によると、通信開始信号及び発信元識別信号の検知順序及び検知間隔に基づいてその後の通信待機時に通信モデム18を動作可能状態又は待機状態にすることにより、電話交換機がファクシミリ装置1に信号を送信する送信方式が異なっても発信元識別信号を復調できる。
【0052】
更に、ファクシミリ装置1によると、通信開始信号より先に発信元識別信号の受信が検知された場合(例えば国A)は、通信待機時に通信モデム18を動作可能状態(省電力通信モード1)にするので、通信開始信号が送信される前に発信元識別信号が送信されても、発信元識別信号を復調できる。
【0053】
更に、ファクシミリ装置1によると、通信開始信号の受信が検知された後に発信元識別信号が検知されなかった場合は、通信待機時であるか否かによらず、通信モデム18を待機状態(省電力通信モード4)にするので、消費電力を低減できる。
【0054】
更に、ファクシミリ装置1によると、通信開始信号の受信が検知されてから通信モデム18の起動時間以内に発信元識別信号の受信が検知された場合(例えば国G)は、通信待機時に通信モデム18を動作可能状態(省電力通信モード2)にするので、通信開始信号が送信された後に間をおかずに発信元識別信号が送信されても発信元識別信号を復調できる。
【0055】
更に、ファクシミリ装置1によると、省電力通信モード2の場合は通信待機時にNCU部17を待機状態にするので消費電力をより低減できるとともに、通信開始信号の受信が検知されてから時間をおいてNCU部17を起動することにより、通信開始信号の受信が検知されたときに直ちにNCU部17を起動する場合に比べ、消費電力をより低減できる。
【0056】
更に、ファクシミリ装置1によると、通信開始信号の受信が検知されてから通信モデム18の起動時間より長い時間が経過した後に発信元識別信号の受信が検知された場合(例えば国F)は、通信待機時に通信モデム18を待機状態(省電力通信モード3)にするので、消費電力を低減できる。
【0057】
更に、ファクシミリ装置1によると、省電力通信モード3の場合に、通信待機時にファクシミリ制御部20によって通信開始信号の受信が検知されると通信モデム18を起動するので、発信元識別信号を復調できる。
【0058】
更に、ファクシミリ装置1によると、省電力通信モード3の場合に、通信待機時に通信開始信号の受信が検知されると、通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔から通信モデム18の起動時間を減じた時間が経過したときに通信モデム18を起動するので、通信待機時に通信開始信号の受信が検知されたときに直ちに通信モデム18を起動する場合に比べ、消費電力をより低減できる。
【0059】
更に、ファクシミリ装置1によると、省電力通信モード3の場合は通信待機時にNCU部17を待機状態にするので消費電力をより低減できるとともに、通信待機時にファクシミリ制御部20によって通信開始信号の受信が検知されると、通信モデム18を起動してから時間をおいてNCU部17を起動するので、消費電力をより低減できる。
【0060】
更に、ファクシミリ装置1によると、電話線40が検出されない場合は、通信待機時であるか否かによらず通信モデム18を待機状態(省電力通信モード4)にするので、消費電力を低減できる。
【0061】
<実施形態2>
通信開始信号及び発信元識別信号の検知間隔はばらつくことがあり、1回の通信のみに基づいて検知間隔を特定するようにすると、通信モデム18及びNCU部17の状態を必ずしも適切に制御できないこともあり得る。
そこで、実施形態2では、通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔に基づいて省電力通信モード2か又は省電力通信モード3を選択するとき、1回のファクシミリ受信のみに基づいて検知間隔を特定するのではなく、複数回のファクシミリ受信に基づいて検知間隔を特定する。
【0062】
具体的には例えば、実施形態2に係るファクシミリ装置(以下、単にファクシミリ装置という)は、例えば工場出荷後、ファクシミリ受信を3回行うまでは通信待機状態であるか否かによらず通信モデム18及びNCU部17を動作可能状態にする。そして、ファクシミリ装置はファクシミリ受信を行う毎に通信開始信号と発信元識別信号との検知間隔を計測し、ファクシミリ受信を3回行うと、それら3回のファクシミリ受信の中で検知間隔の最小値を求める。そして、ファクシミリ装置は、求めた最小値が通信モデム18の起動時間以下であれば省電力通信モード2を選択し、最小値が起動時間よりも長ければ省電力通信モード3を選択する。
【0063】
検知間隔の最小値に基づいて省電力通信モードを選択するのは次の理由による。例えば、計測した検知間隔の最小値が500msであり、最大値が750msであったとする。500msは通信モデム18の起動時間(700ms)以内の時間である。通信モデム18の起動時間以内に発信元識別信号を受信する可能性がある場合は、発信元識別信号を復調し損ねることがないよう、省電力通信モード2を選択すべきである。ところが、検知間隔の最大値である750msに基づいて省電力通信モードを選択すると、省電力通信モード3を選択してしまうことになる。このため、本実施形態では検知間隔の最小値に基づいて省電力通信モードを選択する。
【0064】
以上説明した本発明の実施形態2に係るファクシミリ装置によると、複数回のファクシミリ受信に基づいて検知間隔を特定するので、より適切に制御できる。
【0065】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
(1)上記実施形態1〜3では通信開始信号及び発信元識別信号の検知順序及び検知間隔の両方に基づいて省電力通信モードを選択する場合を例に説明したが検知順序又は検知間隔のいずれか一方に基づいて選択してもよい。例えば国Aで使用される可能性がないのであれば検知間隔のみに基づいて選択してもよいし、例えば国Aか又は国Fでしか使用されないのであれば検知順序のみに基づいて選択してもよい。
【0067】
(2)上記実施形態ではNCU部17の状態も制御する場合を例に説明したが、NCU部17は通信モデム18に比べて消費電力が少ないので、NCU部17は常に動作可能状態にしてもよい。
【0068】
(3)上記実施形態1では、省電力通信モード2及び3のとき、通信開始信号を受信すると時間をおいてNCU部17を起動する場合を例に説明したが、通信開始信号を受信すると直ちにNCU部17を起動するようにしてもよい。
【0069】
(4)上記実施形態1では、省電力通信モード3のとき、通信開始信号を受信すると時間をおいて通信モデム18を起動する場合を例に説明したが、通信開始信号を受信すると直ちに通信モデム18を起動するようにしてもよい。
【0070】
(5)上記実施形態1では省電力通信モードの選択を工場出荷後の最初のファクシミリ受信のときに行う場合を例に説明したが、例えばファクシミリ装置に電源が投入されたときに毎回行うようにしてもよい。
【0071】
(6)上記実施形態では通信装置としてファクシミリ装置を例に説明したが、スキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を備えた所謂複合機に本発明を適用してもよいし、例えば発信元の電話番号(発信元識別信号を復調したデータ)を表示する機能を有する電話機に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信装置のブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る通信装置の通信部のブロック図。
【図3】各国の送信方式を示すタイミングチャート。
【図4A】本発明の一実施形態に係るタイミングチャート。
【図4B】本発明の一実施形態に係るタイミングチャート。
【図4C】本発明の一実施形態に係るタイミングチャート。
【図4D】本発明の一実施形態に係るタイミングチャート。
【図5】本発明の一実施形態に係るフローチャート。
【符号の説明】
【0073】
1…ファクシミリ装置(通信装置)
17…NCU部(受信手段、検知手段、検出手段)
18…通信モデム(復調手段、検知手段)
19…電力供給部(制御手段)
20…ファクシミリ制御部(検知手段、特定手段、制御手段、検出手段)
31…第2電力供給部
40…電話線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話回線を通じて通信開始信号及び発信元識別信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記発信元識別信号を復調する復調手段と、
前記受信手段による前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の受信を検知する検知手段と、
前記検知手段による検知結果に基づいて、前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の検知順序及び検知間隔の少なくとも一方を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定結果に基づいて、その後の通信待機時に前記復調手段を動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない待機状態にする制御手段と、
を備える通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御手段は、前記通信開始信号より先に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を動作可能状態にする。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の通信装置であって、
前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知された後に前記発信元識別信号が検知されなかった場合は、通信待機時であるか否かによらず、前記復調手段を待機状態にする。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の通信装置であって、
待機状態の前記復調手段を起動してから動作可能状態になるまでの時間を前記復調手段の起動時間というとき、
前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知されてから前記復調手段の起動時間以内に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を動作可能状態にする。
【請求項5】
請求項4に記載の通信装置であって、
前記受信手段は動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない状態であって前記通信開始信号を受信可能な待機状態とに切り替え可能であり、
前記制御手段は、通信待機時に前記受信手段を待機状態にし、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記通信開始信号が検知されてから時間をおいて前記受信手段を動作可能状態に切り替える。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の通信装置であって、
待機状態の前記復調手段を起動してから動作可能状態になるまでの時間を前記復調手段の起動時間というとき、
前記制御手段は、前記通信開始信号の受信が検知されてから前記復調手段の起動時間より長い時間が経過した後に前記発信元識別信号の受信が検知された場合は、通信待機時に前記復調手段を待機状態にする。
【請求項7】
請求項6に記載の通信装置であって、
前記制御手段は、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記復調手段を起動する。
【請求項8】
請求項7に記載の通信装置であって、
前記制御手段は、通信待機時に前記通信開始信号の受信が検知されると、前記通信開始信号と前記発信元識別信号との検知間隔から前記復調手段の起動時間を減じた時間が経過したときに前記復調手段を起動する。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の通信装置であって、
前記受信手段は動作可能状態、又は前記動作可能状態より消費電力が少ない状態であって前記通信開始信号を受信可能な待機状態とに切り替え可能であり、
前記制御手段は、通信待機時に前記受信手段を待機状態にし、通信待機時に前記検知手段によって前記通信開始信号の受信が検知されると、前記復調手段を起動してから時間をおいて前記受信手段を動作可能状態に切り替える。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の通信装置であって、
前記特定手段は、複数回の通信における前記検知手段の検知結果に基づいて、前記通信開始信号及び前記発信元識別信号の検知間隔を特定する。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の通信装置であって、
前記受信手段に接続されている電話線を検出する検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出手段で電話線が検出されない場合は、通信待機時であるか否かによらず前記復調手段を待機状態にする。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−141401(P2010−141401A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313231(P2008−313231)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】